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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】記録システム、処理装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/42 20060101AFI20241203BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20241203BHJP
   B65H 37/06 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B41J11/42
B65H37/04
B65H37/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023212755
(22)【出願日】2023-12-18
(62)【分割の表示】P 2019175247の分割
【原出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2024015443
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山口 竣平
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸平
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136946(JP,A)
【文献】特開2013-010230(JP,A)
【文献】特開2012-066929(JP,A)
【文献】特開2010-033071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42
B65H 37/04
B65H 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部により記録が行われた媒体を積載する積載部と、
前記積載部に積載された媒体の束に処理を行う処理部と、を備え、
前記積載部への媒体の送り込みを制御する制御部は、前記記録部により記録が行われる媒体の膨潤に係わる情報に基づいて、前記積載部に積載される媒体の最大枚数を決定し、
前記媒体の膨潤に係わる情報は、媒体の厚みに関する情報を含み、
前記厚みが厚い場合は、前記厚みが薄い場合よりも、前記最大枚数が多い、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項2】
請求項1に記載の記録システムにおいて、前記膨潤に係わる情報は、媒体が用紙である場合の紙目の方向に関する情報を含み、
前記制御部は、取得した前記紙目の方向に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定する、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の記録システムにおいて、前記記録部は、媒体に液体を吐出することで記録を行い、
前記膨潤に係わる情報は、媒体に吐出される液体の量に関する情報を含み、
前記制御部は、取得した前記液体の量に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定する、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の記録システムにおいて、前記制御部は、ユーザーにより指定された、前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数が、前記膨潤に係わる情報に基づき決定した前記最大枚数を超える場合、ユーザーに対し警告を発し、
前記警告に対するユーザーの指示に基づき、指定された処理を行う、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項5】
請求項に記載の記録システムにおいて、ユーザーの指示に基づく前記指定された処理は、ユーザーにより指定された、前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数を維持し、且つ前記記録部での記録品質を維持したまま処理を行う第1処理と、
ユーザーにより指定された、前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数を維持しつつ、前記記録部での記録品質及び前記記録部から前記積載部までの媒体の搬送条件の少なくともいずれかを変更して前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数が前記最大枚数以下となる様に処理を行う第2処理と、を含む、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の記録システムにおいて、前記処理部は、前記積載部と対向する位置に、媒体を綴じる綴じ手段と、前記綴じ手段による綴じ位置で媒体を折る折り手段と、を備える、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項7】
請求項1または請求項に記載の記録システムにおいて、前記記録部は、媒体に液体を吐出することで記録を行い、
前記処理部は、前記積載部と対向する位置に、媒体を綴じる綴じ手段と、前記綴じ手段による綴じ位置で媒体を折る折り手段と、を備え、
前記膨潤に係わる情報は、媒体において前記綴じ手段と前記積載部との間を通過する領域に対して吐出される液体の量に関する情報を含み、
前記制御部は、取得した前記液体の量に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定する、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の記録システムにおいて、前記記録部は、独立した記録ユニットを構成し、
前記積載部及び前記処理部は、独立した処理ユニットを構成し、
前記制御部は、前記記録ユニットに設けられ、前記記録ユニットから前記処理ユニットの制御を行う、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の記録システムにおいて、前記記録部は、独立した記録ユニットを構成し、
前記積載部及び前記処理部は、独立した処理ユニットを構成し、
前記制御部は、前記処理ユニットに設けられ、前記記録ユニットから前記処理ユニットに前記膨潤に係わる情報が送られる、
ことを特徴とする記録システム。
【請求項10】
媒体に記録を行う記録部により記録が行われた媒体を積載する積載部と、
前記積載部に積載された媒体の束に処理を行う処理部と、を備え、
前記積載部に積載される媒体の最大枚数が、媒体の厚みに係わる情報に基づいて、決定され、
前記厚みが厚い場合は、前記厚みが薄い場合よりも、前記最大枚数が多い、
ことを特徴とする処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に記録を行う記録部と、前記記録部により記録が行われた媒体を積載する積載部と、前記積載部に積載された媒体の束に処理を行う処理部と、を備えた記録システムに関する。
また本発明は、媒体に記録を行う記録部により記録が行われた媒体を積載する積載部と、前記積載部に積載された媒体の束に処理を行う処理部と、を備えた処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に所定の処理を行う媒体処理装置には、媒体を積載する積載部で重ねられた複数枚の媒体にステープル処理やパンチング処理を行うものや、積載部で重ねられた複数枚の媒体の幅方向の中央を綴じる中綴じ処理を行った後、媒体を綴じ位置で折る折り処理を行って、冊子体を形成するものがある。尚このような媒体処理装置は、独立したユニットとして構成され、記録装置の外部に設けられて全体として一つのシステムを構成する場合や、媒体に記録を行う記録部とともに一の筐体に内蔵されて一つのシステムを構成する場合等、種々の形態が採用される。
【0003】
一例として特許文献1には、記録装置の一例である画像形成装置の横に、媒体処理装置の一例であるシート処理装置が設けられた構成が開示されている。このシート処理装置は、搬送されるシートを略垂直状態で集積するスタッカ部と、このスタッカ部内に設けられ、シート束のシート搬送方向の中程の綴じ位置を金属ステープルで中綴じする第1の綴じ処理部と、シート束の搬送方向の中程の綴じ位置を金属ステープルを用いることなく中綴じする第2の綴じ処理部と、シート束を中折りする折り処理部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-023085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体に対し液体を吐出することで記録を行う場合、媒体は液体を吸収することによって膨潤し、カールする。従ってこのカールについて一定の程度を考慮して、媒体処理装置が備える積載部での、媒体の最大枚数を一律に決定してしまうと、実際のカールが当初の想定より小さい場合には処理できる媒体の枚数が不必要に抑制されることとなり、逆に実際のカールが当初の想定より大きい場合には装置内部で紙詰まりが発生する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為の、本発明の記録システムは、媒体に記録を行う記録部と、前記記録部により記録が行われた媒体を積載する積載部と、前記積載部に積載された媒体の束に処理を行う処理部と、を備え、前記積載部への媒体の送り込みを制御する制御部は、前記記録部により記録が行われる媒体の膨潤に係わる情報に基づいて、前記積載部に積載される媒体の最大枚数を決定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】記録システムの全体構成を示す図。
図2】中綴じ折り機構の側面図。
図3】中綴じ折り機構における媒体の動きを示す図。
図4】中綴じ折り機構における媒体の動きを示す図。
図5】中綴じ処理に関する判断処理の流れを示すフローチャート。
図6】スタック部の最大枚数の決定処理の流れを示すフローチャート。
図7】用紙におけるインク吐出量のむらを求める方法の一例を示す図。
図8】用紙において綴じユニットとスタック部との間を通過する領域の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る記録システムは、媒体に記録を行う記録部と、前記記録部により記録が行われた媒体を積載する積載部と、前記積載部に積載された媒体の束に処理を行う処理部と、を備え、前記積載部への媒体の送り込みを制御する制御部は、前記記録部により記録が行われる媒体の膨潤に係わる情報に基づいて、前記積載部に積載される媒体の最大枚数を決定することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記積載部への媒体の送り込みを制御する制御部は、前記記録部により記録が行われる媒体の膨潤に係わる情報に基づいて、前記積載部に積載される媒体の最大枚数を決定するので、実際に生じる媒体の膨潤に係わる情報から、前記最大枚数を処理毎に最適化できる。これにより前記最大枚数が実際の媒体の膨潤に適合せず、その結果前記最大枚数が不必要に抑制されたり、また前記積載部で媒体の詰まりが発生する虞を抑制できる。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記膨潤に係わる情報は、媒体が用紙である場合の紙目の方向に関する情報を含み、前記制御部は、取得した前記紙目の方向に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定することを特徴とする。
媒体が用紙である場合には、紙目の方向によって膨潤に起因するカールの傾向が変わるが、本態様によれば、前記膨潤に係わる情報は、媒体が用紙である場合の紙目の方向に関する情報を含み、前記制御部は、取得した前記紙目の方向に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定するので、前記最大枚数の処理毎の最適化を、適切に行うことができる。 尚、紙目とは、用紙の製造過程上の条件によって、用紙の長手方向或いは短手方向に沿って形成される繊維の流れであり、用紙は紙目と直交する方向には曲がりにくく、紙目と平行な方向には曲がりやすい性質を有する。
【0011】
第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記膨潤に係わる情報は、媒体の厚みに関する情報を含み、前記制御部は、取得した前記厚みに関する情報に基づき、前記最大枚数を決定することを特徴とする。
媒体の膨潤に起因するカールの傾向は、媒体の厚みに応じて変わるが、本態様によれば前記膨潤に係わる情報は、媒体の厚みに関する情報を含み、前記制御部は、取得した前記厚みに関する情報に基づき、前記最大枚数を決定するので、前記最大枚数の処理毎の最適化を、適切に行うことができる。
【0012】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記記録部は、媒体に液体を吐出することで記録を行い、前記膨潤に係わる情報は、媒体に吐出される液体の量に関する情報を含み、前記制御部は、取得した前記液体の量に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定することを特徴とする。
【0013】
媒体の膨潤に起因するカールの傾向は、媒体に吐出される液体の量に応じて変わるが、本態様によれば前記膨潤に係わる情報は、媒体に吐出される液体の量に関する情報を含み、前記制御部は、取得した前記液体の量に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定するので、前記最大枚数の処理毎の最適化を、適切に行うことができる。
【0014】
第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記制御部は、ユーザーにより指定された、前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数が、前記膨潤に係わる情報に基づき決定した前記最大枚数を超える場合、ユーザーに対し警告を発し、前記警告に対するユーザーの指示に基づき、指定された処理を行うことを特徴とする。
【0015】
ユーザーにより指定された、前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数が、前記膨潤に係わる情報に基づき決定した前記最大枚数を超える場合、つまり不具合が生じる虞がある場合でも、一律に処理を中止するのでは、ユーザーの利便性を低下させる虞がある。
本態様によれば、前記制御部は、ユーザーにより指定された、前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数が、前記膨潤に係わる情報に基づき決定した前記最大枚数を超える場合、ユーザーに対し警告を発し、前記警告に対するユーザーの指示に基づき、指定された処理を行うので、ユーザービリティが向上する。
【0016】
第6の態様は、第5の態様において、ユーザーの指示に基づく前記指定された処理は、ユーザーにより指定された、前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数を維持し、且つ前記記録部での記録品質を維持したまま処理を行う第1処理と、ユーザーにより指定された、前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数を維持しつつ、前記記録部での記録品質及び前記記録部から前記積載部までの媒体の搬送条件の少なくともいずれかを変更して前記処理部で処理を行う媒体の束の枚数が前記最大枚数以下となる様に処理を行う第2処理と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、ユーザーは前記第1処理を選択することで、ジャム発生の可能性を認識しつつ、当初予定通りの処理を試みることが出来る。また、ユーザーは前記第2処理を選択することで、当初予定通りの処理枚数を維持し、且つジャムを抑制しながら、前記処理部で処理を行うことができる。
【0018】
第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記処理部は、前記積載部と対向する位置に、媒体を綴じる綴じ手段と、前記綴じ手段による綴じ位置で媒体を折る折り手段と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記処理部は、前記積載部と対向する位置に、媒体を綴じる綴じ手段と、前記綴じ手段による綴じ位置で媒体を折る折り手段と、を備える構成において、上述した第1から第5の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0019】
第8の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記記録部は、媒体に液体を吐出することで記録を行い、前記処理部は、前記積載部と対向する位置に、媒体を綴じる綴じ手段と、前記綴じ手段による綴じ位置で媒体を折る折り手段と、を備え、前記膨潤に係わる情報は、媒体において前記綴じ手段と前記積載部との間を通過する領域に対して吐出される液体の量に関する情報を含み、前記制御部は、取得した前記液体の量に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定することを特徴とする。
【0020】
前記綴じ手段は、その性質上、媒体が通過する面に凹凸が多く、媒体が引っ掛かり易いが、逆に媒体において前記綴じ手段と前記積載部との間を通過しない領域では、カールが生じても前記凹凸への引っ掛かりは生じないと言える。また、前記綴じ手段と前記積載部との間の領域は狭くなり易く、媒体と他の部材との摩擦や、媒体同士の摩擦の影響を大きくうけてしまい、ジャムが発生し易いと言える。そこで本態様では、前記膨潤に係わる情報は、媒体において前記綴じ手段と前記積載部との間を通過する領域に対して吐出される液体の量に関する情報を含み、前記制御部は、取得した前記液体の量に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定するので、前記最大枚数を不必要に抑制する必要がなく、前記最大枚数の最適化を、より適切に行うことができる。
【0021】
第9の態様は、第1から第8の態様のいずれかにおいて、前記記録部は、独立した記録ユニットを構成し、前記積載部及び前記処理部は、独立した処理ユニットを構成し、前記制御部は、前記記録ユニットに設けられ、前記記録ユニットから前記処理ユニットの制御を行うことを特徴とする。
本態様によれば、前記記録部が、独立した記録ユニットを構成し、前記積載部及び前記処理部が、独立した処理ユニットを構成し、前記制御部が、前記記録ユニットに設けられ、前記記録ユニットから前記処理ユニットの制御を行う構成において、上述した第1から第7の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0022】
第10の態様は、第1から第8の態様のいずれかにおいて、前記記録部は、独立した記録ユニットを構成し、前記積載部及び前記処理部は、独立した処理ユニットを構成し、前記制御部は、前記処理ユニットに設けられ、前記記録ユニットから前記処理ユニットに前記膨潤に係わる情報が送られることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記記録部が、独立した記録ユニットを構成し、前記積載部及び前記処理部が、独立した処理ユニットを構成し、前記制御部が、前記処理ユニットに設けられ、前記記録ユニットから前記処理ユニットに前記膨潤に係わる情報が送られる構成において、上述した第1から第7の態様のいずれかの作用効果が得られる。
【0024】
第11の態様に係る処理装置は、媒体に記録を行う記録部により記録が行われた媒体を積載する積載部と、前記積載部に積載された媒体の束に処理を行う処理部と、を備え、前記積載部に積載される媒体の最大枚数が、前記記録部により記録が行われる媒体の膨潤に係わる情報に基づいて決定されることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、前記積載部に積載される媒体の最大枚数が、前記記録部により記録が行われる媒体の膨潤に係わる情報に基づいて決定されるので、実際に生じる媒体の膨潤に係わる情報から、前記最大枚数を処理毎に最適化できる。これにより、前記最大枚数が不必要に抑制されたり、また装置内部で媒体の詰まりが発生する虞を抑制できる。
【0026】
以下、本発明を具体的に説明する。
各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であり、X軸方向が装置奥行き方向を示し、Y軸方向が装置幅方向を示し、Z軸方向が装置高さ方向を示している。
【0027】
<<<記録システムの概略>>>
図1に示す記録システム1は、一例として、図1の右方から左方に向かって順に記録ユニット2と、中間ユニット3と、第1ユニット5と、第1ユニット5に対して着脱可能な処理装置或いは処理ユニットとしての第2ユニット6とを備えている。
【0028】
記録ユニット2は、搬送される媒体に記録を行う。中間ユニット3は、記録後の媒体を記録ユニット2から受け入れて第1ユニット5に受け渡すものであり、主として媒体を反転させる機能、および媒体の乾燥を促進させる機能を果たす。第1ユニット5には、受け入れた媒体に乾燥処理を施す乾燥部50と、記録ユニット2における記録後の媒体を束にして端を綴じる端綴じ処理を行う端綴じ部42が設けられている。第2ユニット6には、記録ユニット2における記録後の媒体の束の中央を綴じて折り、冊子体にする中綴じ折り機構70が設けられている。尚、以下では記録後の媒体の束の中央を綴じる処理、及びそれに続いて媒体の束を折る処理を、簡略化して「中綴じ処理」と称することとする。
以下、記録ユニット2、中間ユニット3、第1ユニット5、第2ユニット6の順に詳しく説明する。
【0029】
<<<記録ユニットについて>>>
記録ユニット2は、媒体に記録を行う記録部としてのラインヘッド20を備えるプリンター部10と、スキャナー部11を備える複合機として構成されている。本実施形態においてラインヘッド20は、液体の一例であるインクを媒体に吐出して記録を行う、所謂インクジェット式の記録ヘッドとして構成されている。
プリンター部10の下部には、複数の媒体収容カセット12を備えるカセット収容部14が設けられている。媒体収容カセット12に収容された媒体Pが、実線で示される給送経路21を通ってラインヘッド20による記録領域に送られて、記録動作が行われる。ラインヘッド20による記録後の媒体は、ラインヘッド20の上方に設けられる記録後排出トレイ13に媒体を排出するための経路である第1排出経路22か、中間ユニット3に媒体を送るための経路である第2排出経路23か、のいずれかに送られる。
【0030】
図1において、第1排出経路22を破線で示し、第2排出経路23を一点鎖線で示している。第2排出経路23は記録ユニット2の+Y方向に延設され、媒体を隣接する中間ユニット3の受入経路30に受け渡す。
【0031】
また、記録ユニット2は、図1において二点鎖線で示される反転用経路24を備え、媒体の第1面への記録後に、媒体を反転して第2面への記録を行う両面記録が可能に構成されている。尚、給送経路21、第1排出経路22、第2排出経路23、及び反転用経路24のそれぞれには、媒体を搬送する手段の一例として、図示を省略するローラー対が一対以上配置されている。
【0032】
記録ユニット2には、記録ユニット2における媒体の搬送や記録に係る動作を制御する制御部25が設けられている。尚、記録システム1は、記録ユニット2、中間ユニット3、第1ユニット5、及び第2ユニット6が互いに機械的及び電気的に接続されて、記録ユニット2から第2ユニット6まで媒体を搬送可能に構成されている。尚本実施形態における制御部25は、記録ユニット2に接続された中間ユニット3、第1ユニット5、及び第2ユニット6における各種動作の制御を行うことができる。
【0033】
記録ユニット2は操作部19を備え、操作部19から、記録ユニット2、中間ユニット3、第1ユニット5、及び第2ユニット6での各種処理に関する種々の設定、及び実行指令を入力することができるように構成されている。また操作部19は表示パネル(不図示)を備えており、この表示パネルに、各種情報を表示できる様に構成されている。
尚、記録システム1に外部コンピューター(不図示)が接続されている場合には、この外部コンピューターにおいて、操作部19で行う各種設定や実行指令と同様の各種設定や実行指令を行うことが出来る。
【0034】
<<<中間ユニットについて>>>
続いて中間ユニット3について説明する。図1に示される中間ユニット3は、記録ユニット2から受け入れた媒体を第1ユニット5に受け渡す。中間ユニット3は、記録ユニット2と第1ユニット5との間に配置されている。記録ユニット2の第2排出経路23を搬送された媒体は、受入経路30から中間ユニット3に受け入れられて、第1ユニット5に向けて搬送される。尚、受入経路30は、図1において実線で示されている。
【0035】
中間ユニット3において、媒体を搬送する搬送経路は二つある。一つ目の搬送経路は、受入経路30から図1において点線で示す第1スイッチバック経路31を経て、合流経路33に搬送される経路である。二つ目の経路は、受入経路30から図1において二点鎖線で示す第2スイッチバック経路32を経て、合流経路33に搬送される経路である。
第1スイッチバック経路31は矢印A1方向に媒体を受け入れた後、矢印A2方向に媒体をスイッチバックさせる経路である。第2スイッチバック経路32は矢印B1方向に媒体を受け入れた後、矢印B2方向に媒体をスイッチバックさせる経路である。
【0036】
受入経路30は、分岐部35において第1スイッチバック経路31と第2スイッチバック経路32とに分岐している。分岐部35には、媒体の送り先を第1スイッチバック経路31と第2スイッチバック経路32とのいずれかに切り換える不図示のフラップが設けられている。
【0037】
また、第1スイッチバック経路31と第2スイッチバック経路32は合流部36において合流している。したがって、媒体が受入経路30から第1スイッチバック経路31または第2スイッチバック経路32のいずれに送られても、共通の合流経路33を経て第1ユニット5に媒体を受け渡すことができる。
【0038】
中間ユニット3は、記録ユニット2からラインヘッド20による直近の記録面を上にした状態で媒体を受入経路30に受け入れるが、合流経路33において媒体は湾曲反転されて、直近の記録面が下を向いた状態になる。
したがって、直近の記録面が下を向いた状態の媒体が、中間ユニット3の+Y方向から第1ユニット5の第1搬送経路43に受け渡される。
尚、受入経路30、第1スイッチバック経路31、第2スイッチバック経路32、及び合流経路33のそれぞれには、媒体を搬送する手段の一例として、図示を省略するローラー対が一つ以上配置されている。
【0039】
記録ユニット2において、複数の媒体に連続して記録を行う場合、中間ユニット3に入った媒体は、第1スイッチバック経路31を通る搬送経路と、第2スイッチバック経路32を通る搬送経路と、に交互に送られる。このことによって、中間ユニット3における媒体搬送のスループットを高めることができる。
【0040】
また、本実施形態のラインヘッド20のように、媒体に対して液体、具体的にはインクを吐出して記録を行う構成である場合、後段の第1ユニット5や第2ユニット6で処理を行う際に媒体が湿っていると、記録面が擦れたり、媒体の整合性が不良となったりすることがある。
記録後の媒体を、記録ユニット2から中間ユニット3を介して第1ユニット5に受け渡すことにより、記録後の媒体が第1ユニット5に送られるまでの搬送時間を長くとり、第1ユニット5或いは第2ユニット6に到達するまでに、媒体をより乾燥させることができる。
【0041】
<<<第1ユニットについて>>>
続いて、第1ユニット5について説明する。図1に示される第1ユニット5は、-Y方向の下方に中間ユニット3から媒体を受け入れる受け入れ部41を備えている。中間ユニット3の合流経路33を搬送される媒体は、受け入れ部41から第1ユニット5内に入り、第1搬送経路43に受け渡される。
【0042】
第1ユニット5は、受け入れ部41から受け入れた媒体に対し処理を行う乾燥部50と、受け入れ部41から受け入れた媒体に対し、或いは乾燥部50で処理された媒体に対して処理を行う端綴じ部42と、を備えている。
第1ユニット5は、受け入れ部41から受け入れた媒体を端綴じ部42に送る第1搬送経路43と、第2分岐部D2で第1搬送経路43から分岐して媒体を乾燥部50に送る第2搬送経路44と、を備えている。第2分岐部D2には、媒体の送り先を第1搬送経路43と第2搬送経路44との間で切り換える不図示のフラップが設けられている。
【0043】
端綴じ部42は、例えば媒体の片側の角部や媒体の片側の一辺など、媒体の端部を綴じる端綴じ処理を行う構成部である。端綴じ部42は、一例としてステープラーを備えて構成されている。
乾燥部50は、媒体に乾燥処理を施す構成部である。本実施形態において、乾燥部50は、媒体を加熱することにより媒体を乾燥させる。乾燥部50の詳細な構成は後で説明するが、乾燥部50による乾燥処理後の媒体は、端綴じ部42、または第2ユニット6に設けられる中綴じ折り機構70のいずれかに送られる。
【0044】
また、第1ユニット5は、受け入れ部41から受け入れた媒体にパンチ処理を行うパンチ処理部46を備えている。パンチ処理部46は、第1ユニット5に受け入れられた媒体が通る第1搬送経路43の、受け入れ部41に近い位置に設けられており、第1搬送経路43の上流でパンチ処理を実行可能に構成されている。尚、受け入れ部41から受け入れた媒体に対し、パンチ処理部46によるパンチ処理は施されても施されなくてもよい。
【0045】
受け入れ部41から受け入れた媒体は、図1に示される第1搬送経路43を通って処理トレイ48、或いは後述する第2ユニット6へ送ることができる。処理トレイ48において媒体は、搬送方向の後端を揃えて処理トレイ48にスタックされる。所定の枚数の媒体Pが処理トレイ48にスタックされたら、媒体Pの後端に対し、端綴じ部42による端綴じ処理を行うことができる。第1ユニット5は、+Y方向に媒体を排出する第2排出部62を備えている。尚、第1ユニット5は、第2排出部62の他、後述する第1排出部61及び第3排出部63を備え、これらからも媒体を排出可能に構成されている。
【0046】
端綴じ部42で処理された媒体は、不図示の排出手段によって第2排出部62から第1ユニット5の装置外に排出されるとともに、第2排出部62から排出される媒体を受ける第1トレイ40に載置される。第1トレイ40は、第1ユニット5から+Y方向に突出して設けられている。本実施形態において第1トレイ40は、ベース部40aと延長部40bを備え、延長部40bはベース部40aに収納可能に構成されている。
【0047】
また、第1搬送経路43には、第2分岐部D2の下流の第3分岐部D3で第1搬送経路43から分岐する第3搬送経路45が接続されている。第3分岐部D3には、媒体の送り先を第1搬送経路43と第3搬送経路45との間で切り換える不図示のフラップが設けられている。
【0048】
第1ユニット5の上部には、上部トレイ49が設けられている。第3搬送経路45は、第3分岐部D3から前述した第3排出部63まで連なり、第3搬送経路45を搬送された媒体は、不図示の排出手段によって第3排出部63から上部トレイ49に排出される。つまり、受け入れ部41から受け入れた媒体は、端綴じ部42を経由せずに、上部トレイ49に排出することができる。
【0049】
第1搬送経路43には、第1分岐部D1で第1搬送経路43から分岐し、第1合流部G1で第1搬送経路43に再び合流する重ね経路64が設けられている。重ね経路64は、媒体を二枚重ねて乾燥部50または端綴じ部42に送る重ね処理部47を構成する。先行して搬送される先行媒体を重ね経路64に送り、第1搬送経路43を搬送される後続媒体と先行媒体を第1合流部G1で合流させることにより、先行媒体と後続媒体とを重ねて第1合流部G1より下流に搬送することができる。尚、重ね処理部47は、重ね経路64を複数設け、三枚以上の媒体を重ねて下流に送る構成としてもよい。
【0050】
第1ユニット5において、重ね処理部47は、乾燥部50に対し鉛直下方に位置するとともに、乾燥部50、端綴じ部42、及び重ね処理部47が、鉛直方向から見て、すなわち上面から見て重なる部位を有する。尚、乾燥部50及び重ね処理部47のみ、または端綴じ部42及び重ね処理部47のみが重なる構成でもよい。
乾燥部50、端綴じ部42、及び重ね処理部47がこのような位置関係で配置されることにより、装置の水平方向寸法の増大を抑制して装置の小型化を実現できる。
【0051】
尚、第1ユニット5において、第1搬送経路43、第2搬送経路44、及び第3搬送経路45のそれぞれには、媒体を搬送する手段の一例として、図示を省略するローラー対が一対以上配置されている。
【0052】
続いて、第1ユニット5に設けられた乾燥部50について説明する。
乾燥部50は、媒体の乾燥処理を行う乾燥処理部としてのヒートローラー対51と、ヒートローラー対51を含み、媒体を周回搬送可能なループ状搬送経路52と、を備えている。第1搬送経路43から分岐した第2搬送経路44は、ヒートローラー対51の上流でループ状搬送経路52に合流しており、第2搬送経路44に設けられた搬送ローラー対68によって媒体を送り、ループ状搬送経路52に導入することができる。
【0053】
ヒートローラー対51は、本実施形態では下方のローラーが不図示の駆動源により駆動される乾燥駆動ローラーであり、上方のローラーが乾燥駆動ローラーの回転に従動回転する乾燥従動ローラーである。乾燥駆動ローラーは、不図示のヒーターにより加熱され、これにより乾燥駆動ローラーが発熱し、媒体の乾燥が行われる。但し、ヒートローラー対51を構成するローラーのうち少なくとも一方が加熱される構成であればよく、双方が加熱される構成であっても良い。
【0054】
但し、中間ユニット3から送られる媒体は、直近の記録面が下を向いた状態で、第1ユニット5の受け入れ部41から第1搬送経路43を経由して第2搬送経路44に入る。そして媒体は、直近の記録面が下を向いた状態でヒートローラー対51にニップされる。したがってヒートローラー対51のうち、加熱されるローラーが、媒体の直近の記録面に接触するローラーであることが好ましい。
【0055】
乾燥部は、ループ状搬送経路52を備えており、ループ状搬送経路52において媒体を周回搬送可能に構成されているので、媒体を複数回、周回搬送することにより、ヒートローラー対51による乾燥処理を複数回施すことができる。したがって、媒体をより確実に乾燥させることができる。
また、ループ状搬送経路52を備えることにより、例えば、ヒートローラー対51を搬送経路に複数設ける場合に比して、装置のコストアップを抑制できるとともに、消費電力を抑制できる。
【0056】
記録システム1において、ヒートローラー対51による加熱は、記録ユニット2に設けられた制御部25によって制御される。制御部25は、条件に応じてヒートローラー対51の加熱を制御することができる。条件としては、例えば媒体の種別や剛性、厚み、坪量等の他、記録ユニット2における記録時に媒体に吐出されたインクの吐出量、媒体への記録が両面記録か片面記録か、乾燥する際の温度や湿度等の環境条件等が挙げられる。
これらの条件に応じてヒートローラー対51による加熱を制御することにより、媒体をより適切に乾燥することができる。ヒートローラー対51による加熱の制御は、例えば、加熱の有無、加熱する場合の温度、加熱する場合に余熱を行うか否か、ヒートローラー対51の加熱を開始するタイミング等が挙げられる。
【0057】
また、ヒートローラー対51において、一方の乾燥従動ローラーはバネ等の不図示の押圧手段により他方の乾燥駆動ローラーに対して押圧されており、押圧手段による押圧力を変更可能に構成することができる。押圧手段による押圧を変更する押圧力変更手段(不図示)を制御部25で制御することにより、ヒートローラー対51におけるニップ圧を調整することができる。ヒートローラー対51におけるニップ圧は、条件に応じて変更することが好ましい。条件としては、ヒートローラー対51による加熱を制御する場合と同様の条件を用いることができる。
【0058】
ループ状搬送経路52には、第4搬送経路59が接続されている。第4搬送経路59は、第1搬送経路43に第2合流部G2で合流し、ヒートローラー対51による乾燥処理後の媒体を第1搬送経路43に戻す経路である。
また、ループ状搬送経路52には、第5搬送経路60が接続されている。第5搬送経路60は、第1排出部61に連なる経路であり、ヒートローラー対51による乾燥処理後の媒体を第2ユニット6に向けて送り出す経路である。
そして第1ユニット5は、乾燥部50で処理された媒体を第1排出部61に送る第1状態と、乾燥部50で処理された媒体を端綴じ部42に送る第2状態と、を切り換え可能な切り換え部材としての切換フラップ(不図示)を備えている。
【0059】
尚、乾燥部50は、ループ状搬送経路52を有しない構成とすることも可能である。 また、本実施形態においては、媒体を外部から加熱することにより媒体を乾燥させる乾燥部50について説明したが、乾燥部50は、例えば媒体に対して風を当てることにより媒体を乾燥させる構成とすることも可能である。
【0060】
<<<第2ユニットについて>>>
続いて第2ユニット6について説明する。
第2ユニット6は、第1ユニット5の第1トレイ40の下側において、第1ユニット5に対して着脱可能に設けられている。
第1ユニット5の第1排出部61から第2ユニット6に受け渡された媒体は、搬送経路69を搬送されて、中綴じ折り機構70に送られる。中綴じ折り機構70は、媒体を積載する積載部としてのスタック部71を備え、このスタック部71に積載された媒体束を中綴じ位置で綴じた後、中綴じ位置で折って冊子体にすることができる。
【0061】
中綴じ折り機構70による中綴じ処理後の媒体束Mは、図1に示される第2トレイ65に排出される。第2トレイ65は媒体排出方向である+Y方向の先端に規制部66を備え、第2トレイ65に排出された媒体束Mが媒体排出方向に第2トレイ65からはみ出す、或いは第2トレイ65から落下することを抑制する。符号67は、第2ユニット6から排出される媒体束Mを第2トレイ65にガイドするガイド部67である。
【0062】
続いて、図1及び図2を参照して中綴じ折り機構70の構成について更に説明する。第2ユニット6には、搬送経路69に設けられ、媒体Pを搬送する送り手段としての送りローラー対75と、媒体Pを積載する積載部としてのスタック部71と、スタック部71にスタックされた媒体に中綴じ処理を行う処理部70aが設けられている。処理部70aは、スタック部71にスタックされた複数枚の媒体Pから成る媒体束Mを綴じ位置で綴じる綴じ機構72と、媒体束Mを綴じ位置で折る折り手段としての折りローラー対73と、を備えている。
【0063】
図2に示されるように、スタック部71には、スタックされた媒体Pの下流端E1を整合させる整合部76と、パドル81とが設けられている。送りローラー対75は、不図示の駆動源により駆動される駆動ローラー75aと、駆動ローラー75aの回転に従動回転する従動ローラー75bと、を備え、駆動ローラー75aは、制御部25によって制御されて回転する。
【0064】
図2において、スタック部71は、送りローラー対75によって搬送される媒体Pを搬送方向+R下流が下方を向く傾斜姿勢で支持する支持面85を備え、支持面85と対向する対向面86との間に媒体Pを受け入れてスタックする。パドル81は、搬送方向+Rにおいて送りローラー対75と整合部76との間に設けられ、媒体Pに接触しつつ回転軸82を軸として回転することにより、媒体Pを整合部76に向けて移動させる。
【0065】
図2において符号Gは、搬送経路69とスタック部71とが合流する合流位置Gを示している。また、本実施形態における綴じ位置は、スタック部71にスタックされた媒体Pの搬送方向+Rにおける中央部Cである。媒体Pは、送りローラー対75によって搬送経路69からスタック部71に送られる。
スタック部71には、スタック部71にスタックされた媒体Pの搬送方向+Rの下流端E1に当接可能な整合部76と、スタック部71にスタックされた媒体Pの搬送方向+Rの上流端E2に当接可能な当接部77とが設けられている。
【0066】
整合部76及び当接部77は、スタック部71における媒体Pの搬送方向+Rと、その逆方向-Rとの双方に移動可能に構成されている。整合部76及び当接部77は、例えば、不図示の駆動源の動力によって動作するラックピニオン機構やベルト移動機構等を用い、搬送方向+R及び逆方向-Rに移動させることができる。整合部76及び当接部77の移動は、スタック部71におけるスタック動作について説明する際に詳述する。
【0067】
合流位置Gの下流には、スタック部71にスタックされた媒体束Mを搬送方向+Rにおける所定の位置で綴じる綴じ機構72が設けられている。綴じ機構72は、一例としてステープラーであり、綴じ手段の一例である綴じ部72aにおいて媒体束Mを綴じる。綴じ部72aは、媒体の幅方向であるX軸方向に間隔を空けて複数設けられている。前述したように、綴じ手段72は搬送方向において媒体束Mの中央部Cを綴じ位置として媒体束Mを綴じるように構成されている。
【0068】
綴じ機構72の下流には、折りローラー対73が設けられている。対向面86は、折りローラー対73のニップ位置Nに対応する位置が開口しており、スタック部71から折りローラー対73への媒体束Mの進入路78が形成されている。対向面86の進入路78の入り口には、スタック部71から綴じ位置である中央部Cをニップ位置Nに誘う斜面が形成されている。
【0069】
スタック部71を挟んで折りローラー対73の反対側には、図2及び図3に示すようにスタック部71から退避した退避状態と、図4の左図のように、スタック部71にスタックされた媒体束Mの綴じ位置に対して進出した進出状態と、を切り換え可能なブレード74を備えている。符号79は支持面85に設けられた孔部79であり、孔部79をブレード74が通ることができる。
【0070】
<<<中綴じ処理の際の媒体の搬送について>>>
次に、図2図4を参照して、第2ユニット6において媒体Pを搬送して中綴じ処理を行い、排出するまでの基本的な流れについて説明する。
図2において、スタック部71に送られてくる媒体Pは自重により整合部76に向けて移動するとともに、媒体Pが一枚搬送されてくる毎にパドル81が回転されて、媒体Pが整合部76に向けて突き当てられる。
図2は、スタック部71に複数枚重ねられた媒体Pが媒体束Mとしてスタックされている状態を示している。
【0071】
尚、スタック部71に媒体を受け入れる際、整合部76は、図2に示されるように、搬送経路69とスタック部71との合流位置Gから整合部76までの距離が、媒体Pの長さよりも長くなるように配置されている。このことにより、搬送経路69から搬送される媒体Pの上流端E2が搬送経路69に残ることなく、媒体Pがスタック部71に受け入れられる。スタック部71の搬送方向+Rにおける整合部76の位置は、媒体Pのサイズに応じて変えることができる。
【0072】
スタック部71に所定枚数の媒体Pがスタックされたら、媒体束Mの搬送方向+Rにおける中央部Cを綴じ部72aで綴じる綴じ処理を行う。搬送経路69からスタック部71への媒体Pの搬送が終わった時点では、図2に示されるように、中央部Cは綴じ部72aの位置からずれているので、図3の左図に示されるように整合部76を-R方向に移動させて、媒体束Mの中央部Cを綴じ部72aと対向する位置に配置する。更に、当接部77を+R方向に移動させて媒体束Mの上流端E2に当接させる。整合部76と当接部77とにより媒体束Mの下流端E1と上流端E2とを整合させて、媒体束Mの中央部Cを綴じ部72aで綴じる。
【0073】
媒体束Mを綴じ部72aで綴じたら、図3の右図に示すように、整合部76を+R方向に移動させ、綴じた中央部Cが、折りローラー対73のニップ位置Nと対向する位置に配置されるように媒体束Mを移動させる。自重により媒体束Mが整合部76と当接した状態を保ったまま、整合部76のみを+R方向に移動させることにより、媒体束Mを+R方向に移動させることができる。尚、当接部77を、媒体束Mの上流端E2に当接した状態を維持する様に+R方向に移動させてもよい。
【0074】
続いて、媒体束Mの中央部Cが折りローラー対73のニップ位置Nと対向する位置に配置されたら、図4の左図に示されるように、ブレード74を+S方向に進出させて中央部Cを折りローラー対73に向けて撓ませる。撓んだ媒体束Mの中央部Cが進入路78を通って、媒体束Mが折りローラー対73のニップ位置Nに向かって移動される。
【0075】
媒体束Mの中央部Cが折りローラー対73にニップされたら折りローラー対73が回転され、図4の右図に示されるように、媒体束Mが折りローラー対73のニップ圧により中央部Cで折られつつ、第2トレイ65(図1参照)に向けて排出される。
また、中央部Cが折りローラー対73にニップされた後、整合部76は+R方向に移動し、図2の状態に戻ってスタック部71における次の媒体Pの受け入れに備える。
【0076】
尚、搬送経路69には、媒体Pの中央部Cに折り筋を付ける折り筋形成手段を設けることができる。折りローラー対73による折り位置となる中央部Cに折り筋を付けることにより媒体束Mを中央部Cで折り易くすることができる。
【0077】
<<<第2ユニットでの媒体処理枚数の制限について>>>
続いて中綴じ折り機構70での媒体処理枚数の制限について説明する。
媒体に対し液体の一例であるインクを吐出することで記録を行う場合、媒体はインクを吸収することによって膨潤し、カールする。更に、媒体へのインク吐出による媒体の水分量増加によって媒体同士の摩擦力や、媒体と他の部材との摩擦力が大きくなる。従って上記のカールや、インク吐出による媒体の水分量増加について一定の程度を考慮して、中綴じ折り機構70が備えるスタック部71に積載される媒体の最大枚数を一律に決定してしまうと、実際の上記カールや上記の水分量増加の程度が当初の想定より小さい場合などには処理できる媒体の枚数が不必要に抑制されることとなり、逆に実際の上記カールや上記の水分量増加の程度が当初の想定より大きい場合などには中綴じ折り機構70で紙詰まりが発生する虞がある。
【0078】
そこで制御部25(図1参照)は、ラインヘッド20により記録が行われる媒体の膨潤に係わる情報に基づいて、スタック部71に積載される媒体の最大枚数、換言すれば、スタック部71に送り込める媒体枚数の上限を決定する。尚、以下ではこれを「スタック部71における最大枚数」或いは単に「最大枚数」と称することとする。
これにより、スタック部71における最大枚数が不必要に抑制されたり、また中綴じ折り機構70で媒体の詰まりが発生する虞を抑制できる。
【0079】
以下、更に詳しく説明する。図5は、制御部25によって実行される、中綴じ処理に関する判断処理の流れを示している。図5に示す処理は、制御部25が備える不図示の記憶手段に記憶されたプログラムを制御部25が実行することで実現される。
制御部25は、操作部19(図1参照)から一連の記録ジョブの実行開始指令を受けた際、その記録ジョブが第2ユニット6での中綴じ処理を含むものである場合(ステップS101においてYes)、スタック部71における最大枚数を決定する(ステップS102)。このステップS102の詳細は、後に説明する。
尚、記録ジョブが中綴じ処理を含まない場合(ステップS101においてNo)、指定された設定に基づいて記録ジョブの実行を開始する(ステップS106)。
【0080】
次いで、ユーザーにより指定された中綴じ処理枚数が、ステップS102で決定した最大枚数を超えているか否かを判断し(ステップS103)、超えている場合には(ステップS103においてYes)、操作部19(図1参照)が備える表示パネル(不図示)に警告表示を出す(ステップS104)。
【0081】
この警告表示は、例えば「中綴じ処理枚数が上限を超えています。処理を選択して下さい。」という警告メッセージ表示とすることができる。
制御部25は、この警告に対するユーザーの指示に基づき、指定された処理を行う。これにより、ユーザー指定枚数がスタック部71における最大枚数を超えている場合、つまり不具合が生じる虞がある場合でも、一律に処理を中止する場合に比べて、ユーザービリティが向上する。
【0082】
本実施例において上記の「指定された処理」は、第1処理、第2処理、及び記録ジョブのキャンセルを含む。ユーザーは、操作部19を介して、第1処理、第2処理、及び記録ジョブのキャンセル、のいずれかを指示入力する。
第1処理は、中綴じ処理でのユーザー指定枚数を維持し、且つラインヘッド20による記録品質を維持しつつ以降の処理をそのまま行うものであり(ステップS105においてYes)、ユーザーはこの処理を選択することにより、ジャム発生の可能性を認識しつつ、当初予定通りの処理を試みることが出来る。
第2処理は、中綴じ処理でのユーザー指定枚数を維持しつつ、ラインヘッド20による記録品質及びラインヘッド20からスタック部71までの媒体の搬送条件の少なくともいずれかを変更して、ユーザー指定枚数がスタック部71における最大枚数以下となる様に処理を行うものであり、以下ではこの処理をジャム回避モードと称する(ステップS106)。ユーザーはこの第2処理即ちジャム回避モードを選択することで、当初予定通りのユーザー指定枚数を維持し、且つジャムを抑制しながら、中綴じ折り機構70での処理を行うことができる。
【0083】
ジャム回避モードは、上述したように、ラインヘッド20による記録に際しての記録品質、及びラインヘッド20からスタック部71までの用紙搬送条件、乾燥部50におけるループ状搬送経路52での搬送速度、ループ状搬送経路52での媒体の周回数、乾燥部50におけるヒーターによる加熱温度の少なくともいずれかを変更するものである。ラインヘッド20による記録に際しての記録品質の変更は、例えば記録濃度を下げることが挙げられる。用紙搬送条件の変更は、主として用紙の乾燥を促進させる為のものであり、例えば用紙の搬送速度を下げる、用紙を用紙搬送経路の途中で停止させる、などが挙げられる。
ループ状搬送経路52での搬送速度の変更は、例えば搬送速度を下げる、などが挙げられる。ループ状搬送経路52での媒体の周回数の変更は、例えば、周回数を増やす、などが挙げられる。乾燥部50におけるヒーターによる加熱温度の変更は、例えば、加熱温度を上げる、などが挙げられる。
尚、上記の第1処理及び第2処理は一例であり、その他の処理であっても良いし、或いは更に第3処理或いはそれ以上の処理を追加し、その中から選択するようにしても良い。
その様な他の処理の一例として、ユーザーに対し、用紙種類の変更を促したり、中綴じ処理でのユーザー指定枚数を減らすことを促したりすることが考えられる。
【0084】
第1処理が選択された場合(ステップS105においてYes)、及び第2処理が選択された場合(ステップS106においてYes)、制御部25はその内容に沿って記録ジョブの実行を開始する(ステップS107)。第1処理及び第2処理のいずれも選択されなかった場合、即ち記録ジョブのキャンセルが選択された場合(ステップS105においてNo、ステップS106においてNo)、制御部25は記録ジョブの実行を中止する。
【0085】
続いて、図6を参照してスタック部71における最大枚数の決定処理の詳細について説明する。図6は、制御部25によって実行される、スタック部71における最大枚数の決定処理の流れを示している。図6に示す処理は、制御部25が備える不図示の記憶手段に記憶されたプログラムを制御部25が実行することで実現される。
制御部25は、記録が行われる媒体の膨潤に係わる情報に基づいて、スタック部71における最大枚数を決定する。媒体の膨潤とは、例えば媒体が用紙であり、液体がインクである場合に、用紙がインクを吸収することに伴って生じる膨潤であり、膨潤は更にカールを引き起こす。以下では、媒体の一例として用紙を挙げて説明する。
そして用紙の膨潤に係わる情報とは、用紙の膨潤に影響を及ぼす全ての要因のうち、少なくとも一つに関する情報である。
【0086】
用紙の膨潤に影響を及ぼす要因に関する情報には、例えば用紙情報、記録内容を挙げることができる。
用紙情報には、用紙サイズ、用紙の縦横、紙厚、紙目方向、コート層の有無、等の要因が含まれる。用紙情報は、プリンタドライバから取得することができる。尚、紙目方向については、例えばユーザーが操作部19で入力しても良いし、或いは装置の仕向先に応じて予めその他の用紙情報、例えば用紙サイズと用紙の縦横に紐づけて記憶させておいても良い。用紙の紙目方向は、装置の仕向先、具体的には装置が使用される国によって一定の傾向が存在する為である。また、GPS(global positioning system)を記録システム1に設け、その情報をもとに、用紙の紙目方向を判断するように構成しても良い。
【0087】
記録内容には、用紙における記録領域の位置、記録領域の大きさ、記録領域の形状、記録領域におけるインク吐出量、両面記録の有無、両面記録の場合のおもて面とうら面の記録内容の相違、等の要因が含まれる。
【0088】
尚、用紙情報に関し、例えば紙厚が厚いほど膨潤し難く、カールし難いと言える。また、コート層を有する用紙は、プリンタドライバ上において「光沢紙」や「インクジェット用紙」などと称される場合があり、このような用紙は、プリンタドライバ上において「普通紙」と称される、コート層を備えない用紙に比べて、膨潤し難く、カールし難いと言える。
【0089】
また記録内容に関し、例えば記録領域が用紙の面積に占める割合が大きいほど、膨潤し易く、カールし易いと言える。また、記録領域におけるインク吐出量が多いほど、膨潤し易く、カールし易いと言える。また、用紙の領域におけるインク吐出量のむらが多いほど、膨潤にむらが生じ、カールし易いと言える。ここで、用紙の領域におけるインク吐出量のむらは、用紙を幾つかの領域に分け、例えば図7に示す用紙Pの様に領域a1、a2、a3、a4、a5、a6を設定し、インク吐出量の最も多い領域と少ない領域との間におけるインク吐出量の差で求めることができる。
また、用紙に片面記録が行われる場合は、両面記録が行われる場合と比べて、おもて面とうら面の水分量の差が大きいので、カールし易いと言える。また、両面記録が行われる場合においては、おもて面とうら面の記録内容の相違が顕著であるほど、膨潤にむらが生じ、カールし易いと言える。おもて面とうら面の記録内容の相違は、例えばおもて面のインク吐出量とうら面のインク吐出量の差で求めることができる。
【0090】
また、制御部25は、スタック部71における用紙の最大枚数を決定する際に、記録が行われる用紙の乾燥状態に影響を及ぼす要因に関する情報を考慮するようにしてもよい。

用紙の乾燥状態に影響を及ぼす要因に関する情報には、例えば環境情報を挙げることができる。環境情報には、例えば、温度、湿度などの要因が含まれる。尚、記録システム1において記録ユニット2には環境情報取得部18(図1参照)が設けられており、制御部25(図1参照)は、環境情報取得部18から記録ユニット2内部の温度、湿度を取得できる。
尚、環境情報に関し、例えば温度が低いほど、または湿度が高いほど乾燥しにくいため、用紙間の摩擦力が大きくなりやすく、用紙のコシが弱くなりやすい。即ち、ジャムが発生しやすいと言える。
【0091】
制御部25の記憶手段には、以上のような性質に基づいて定められた最大枚数設定情報が保持されており、制御部25はこの最大枚数設定情報を参照して、スタック部71における最大枚数を決定する。
尚、用紙情報、記録内容、環境情報、のこれら用紙の膨潤に係わる情報は、全て考慮しても良いし、いずれか一つ、或いは二つを考慮しても良い。その設定はユーザー操作により行うことができ、ユーザーは操作部19(図1参照)により、考慮する情報を選択でき、その選択を設定値として保存することができる。
【0092】
図6に示す様に、制御部25は、設定された情報に基づき、用紙情報を取得する場合には(ステップS201においてYes)、用紙情報を取得し(ステップS202)、記録内容を取得する場合には(ステップS203においてYes)、記録内容を取得し(ステップS204)、環境情報を取得する場合には(ステップS205においてYes)、環境情報を取得する(ステップS206)。
そして設定情報を読み込み(ステップS207)、最大枚数を決定する(ステップS208)。
【0093】
表1に、設定情報の一例を示す。この例では、用紙の膨潤に係わる情報として、記録内容のうち記録濃度Pd(%)を採用し、環境情報のうち湿度Hm(%)を採用している。
ここで記録濃度Pd(%)とは、インク吐出量に対応して増減する値であり、1枚の用紙の記録可能領域への最大インク打込可能量(g)に対する、総インク吐出量(g)の割合である。つまり、記録濃度Pd(%)=[総インク吐出量(g)/最大インク打込可能量(g)]×100である。1枚の用紙の記録可能領域への最大インク打込可能量(g)は、記録ユニット2に設けられるラインヘッド20による単位面積当たりにおける最大インク打込可能量(g)から求めることができる。
また、これに限られず、記録濃度(%)は、1枚の用紙の面積に対してインクが吐出された面積の割合とすることもできる。
【0094】
【表1】
【0095】
表1における数値は、スタック部71における最大枚数の一例である。例えば、湿度Hm=0%、記録濃度Pd=20%の場合、最大枚数は20枚となる。また、湿度Hm=100%、記録濃度Pd=20%の場合、最大枚数は18枚となる。
湿度Hm(%)が高くなるほど、最大枚数は減り、また記録濃度Pd(%)が高くなるほど、最大枚数は減る。
この様な設定情報は、用紙種別毎に設定され、保存されている。
【0096】
尚、この様な設定情報に代えて、例えば最大枚数を数式で求めても良い。例えば、最大枚数の規定値Mに対し、用紙の膨潤に係わる要因毎に係数kを設定しておき、規定値Mに係数kを順次乗じていき、最終的に得られた値を、スタック部71における最大枚数としても良い。尚、規定値Mは、スタック部71における最大積載高さを用紙厚で割ることで求めることができる。
表2に、湿度Hm(%)に応じて設定される係数kaの一例を示す。この様に用紙の膨潤に係わる要因について、条件毎に係数を設定し、最大枚数の規定値Mに乗じることで、スタック部71における最大枚数を求めることができる。
【0097】
【表2】
【0098】
また、用紙サイズ、紙厚、紙目方向、コート層の有無、については、膨潤ひいてはカールによる用紙変形の方向や変形量を求めるのに用いることができる。例えば、用紙の膨潤に伴うカールは、紙目方向と交差する方向に発生し易く、その際に紙目方向と交差する方向の用紙サイズが大きいほど、カールによる変形量が大きくなる。そしてカールによる用紙の変形量だけ、スタック部71における最大積載高さが減るため、スタック部71における最大枚数は、そのぶん減ることになる。
また、用紙はスタック部71において搬送方向+Rに向かって下向き傾斜となる様に傾斜姿勢に支持されるため、自重の作用によって用紙はスタック部71上において搬送方向+Rで撓みが形成され易くなる。そのため用紙の紙目方向がX軸方向即ち媒体幅方向に沿っている場合、紙目方向が搬送方向+Rに沿っている場合よりも、搬送方向+Rの剛性は低くなり、相対的に撓みが形成され易くなる。この様に紙目方向に関する情報を、用紙変形の方向や変形量を求めるのに用いることもできる。
【0099】
以上説明したように上記実施例では、制御部25は、取得した紙目の方向に関する情報に基づき、スタック部71における最大枚数を決定するので、前記最大枚数の処理毎の最適化を、適切に行うことができる。
【0100】
また上記実施例では、制御部25は、取得した用紙厚に関する情報に基づき、スタック部71における最大枚数を決定するので、前記最大枚数の処理毎の最適化を、適切に行うことができる。
【0101】
また上記実施例では、制御部25は、取得した用紙に吐出されるインク量に関する情報に基づき、前記最大枚数を決定するので、前記最大枚数の処理毎の最適化を、適切に行うことができる。
【0102】
尚、用紙の膨潤に係わる情報の一例である記録内容に関し、用紙において綴じ機構72とスタック部71との間を通過する領域に対して吐出されるインクの量に関する情報を含めることもでき、制御部25は、取得した前記インクの量に関する情報に基づき、最大枚数を決定することもできる。
即ち綴じ機構72は、その性質上、用紙が通過する面に凹凸が多く、用紙が引っ掛かり易いが、逆に用紙において綴じ機構72とスタック部71との間を通過しない領域では、膨潤に起因するカールが生じても綴じ機構72の凹凸への引っ掛かりは生じないと言える。
具体的には、図2において位置kから+R方向に入り込む領域は、膨潤に起因するカールによって綴じ機構72への用紙の引っ掛かりが生じ易い領域である。図8は用紙Pの一例を示しており、領域a0は図2の位置kから+R方向に入り込む領域であり、領域b0はそれ以外の領域である。従って制御部25は、領域b0での記録内容を考慮せずに、領域a0での記録内容を考慮してスタック部71における最大枚数を決定できる。このことにより、スタック部71における最大枚数を不必要に抑制する必要がなく、スタック部71における最大枚数の最適化を、より適切に行うことができる。
【0103】
尚、上記実施例では、ラインヘッド20を備える記録ユニット2は独立したユニットであり、スタック部71及び綴じ機構72を備える第2ユニット6は独立したユニットであって、制御部25は、記録ユニット2に設けられ、記録ユニット2から第2ユニット6の制御を行う構成である。
【0104】
この様な構成に代えて、第2ユニット6に対し中綴じ折り機構70を制御する制御部(不図示)を設け、この制御部に対し、記録ユニット2の制御部25から膨潤に係わる情報を送り、その情報に基づき第2ユニット6が備える制御部が中綴じ折り機構70を制御する構成としても良い。
また中綴じ折り機構70を制御する制御部は、記録ユニット2や、第2ユニット6以外の装置に設けても良い。
また、第2ユニット6だけでなく、中間ユニット3、第1ユニット5に対してもそれぞれ制御部(不図示)を設け、これらの制御部が、記録ユニット2の制御部25からの情報に基づいて、中間ユニット3、第1ユニット5の動作をそれぞれ制御するようにしてもよい。
【0105】
尚、記録システム1においては、中間ユニット3及び第1ユニット5を省略しても良い。またその際、記録ユニット2と第2ユニット6をそれぞれ独立したユニットとしても良いし、記録ユニット2と第2ユニット6を一体化しても良い。即ち、より具体的には記録システムを、ラインヘッド20と、中綴じ折り機構70と、を含む様に構成しても良い。

以上の様に本明細書では、記録システム1とは、独立したユニットの集合体である場合と、一つのユニットで構成される場合と、のいずれであっても良い意味である。
【0106】
尚、本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0107】
1…記録システム、2…記録ユニット、3…中間ユニット、5…第1ユニット、6…第2ユニット、10…プリンター部、11…スキャナー部、12…媒体収容カセット、13…記録後排出トレイ、14…カセット収容部、18…環境情報取得部、19…操作部、20…ラインヘッド、21…給送経路、22…第1排出経路、23…第2排出経路、24…反転用経路、25…制御部、30…受入経路、31…第1スイッチバック経路、32…第2スイッチバック経路、33…合流経路、35…分岐部、36…合流部、40…第1トレイ、40a…ベース部、40b…延長部、41…受け入れ部、42…端綴じ部、43…第1搬送経路、44…第2搬送経路、45…第3搬送経路、46…パンチ処理部、47…重ね処理部、48…処理トレイ、49…上部トレイ、50…乾燥部、51…ヒートローラー対、52…ループ状搬送経路、59…第4搬送経路、60…第5搬送経路、61…第1排出部、62…第2排出部、63…第3排出部、64…重ね経路、65…第2トレイ、66…規制部、67…ガイド部、68…搬送ローラー対、69…搬送経路、70…中綴じ折り機構、70a…処理部、71…スタック部、72…綴じ機構、72a…綴じ部、73…折りローラー対、74…ブレード、75…送りローラー対、76…整合部、77…当接部、78…進入路、79…孔部、81…パドル、82…回転軸、85…支持面、86…対向面、P…媒体、M…媒体束、C…中央部、D1…第1分岐部、D2…第2分岐部、D3…第3分岐部、G1…第1合流部、G2…第2合流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8