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特許7597198荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20241203BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20241203BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20241203BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G06Q50/40
G06T7/70 A
G06T7/60 180B
B65G61/00 540
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023222042
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2024-06-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 隆生
(72)【発明者】
【氏名】古山 剛
(72)【発明者】
【氏名】野田 栄喜
(72)【発明者】
【氏名】岡本 朋之
【審査官】松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-334864(JP,A)
【文献】特開平11-011683(JP,A)
【文献】特開平11-211438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06T 7/70
G06T 7/60
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷量算出装置によって、トラックの積載部における荷量を算出する荷量算出方法であって、
前記荷量算出装置によって、
前記トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側から前記積載部を撮像した第1の積載画像を取得し、
前記第1の積載画像において、前記積載部と、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットと、を比較して、
下記<1>または<2>に基づいて、前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別して、前記荷山に含まれる前記荷物の量を算出する、トラックの荷量算出方法。
<1>前記積載部の床面における前記一方側の端辺を第1基準線として、前記第1基準線から前記車幅方向の他方側に向けた距離が前記積載部の幅以下となる範囲を前記所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<2>前記床面における前記一方側の端辺を第1基準線として、前記第1基準線から前記他方側に向けた距離が前記積載部の幅の半分以下となる範囲を前記所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする。
【請求項2】
荷量算出装置によって、トラックの積載部における荷量を算出する荷量算出方法であって、
前記荷量算出装置によって、
前記トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側から前記積載部を撮像した第1の積載画像を取得し、
前記第1の積載画像において、前記積載部と、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットと、を比較して、
下記<3>~<6>の何れかに基づいて、前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別して、前記荷山に含まれる前記荷物の量を算出する、トラックの荷量算出方法。
<3>前記積載部の床面における車両進行方向後側の端辺を後基準線とし、前記後基準線から車両進行方向前側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<4>前記床面における前記後側の端辺を後基準線とし、前記後基準線から前記前側に向けた距離が前記車両進行方向における積載部の長さの半分以上となる範囲を前記所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<5>前記床面における前記前側の端辺を前基準線とし、前記前基準線から前記後側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を荷量算出対象とする、
<6>前記床面における前記前側の端辺を前基準線とし、前記前基準線から前記後側に向けた距離が前記車両進行方向における前記積載部の長さの半分以下となる範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする。
【請求項3】
前記荷量算出装置によって、
さらに、下記<3>~<6>の何れかに基づいて、前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別して、前記荷山に含まれる前記荷物の量を算出する、請求項1に記載のトラックの荷量算出方法。
<3>前記床面における車両進行方向後側の端辺を後基準線とし、前記後基準線から車両進行方向前側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<4>前記床面における前記後側の端辺を後基準線とし、前記後基準線から前記前側に向けた距離が前記車両進行方向における積載部の長さの半分以上となる範囲を前記所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<5>前記床面における前記前側の端辺を前基準線とし、前記前基準線から前記後側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を荷量算出対象とする、
<6>前記床面における前記前側の端辺を前基準線とし、前記前基準線から前記後側に向けた距離が前記車両進行方向における前記積載部の長さの半分以下となる範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする。
【請求項4】
前記荷量算出装置によって、
さらに、前記トラックに対して前記一方側とは逆の他方側から前記積載部を撮像した第2の積載画像を取得し、
前記第2の積載画像において、前記積載部と、前記荷山における最下段のパレットと、を比較して、
下記<7>、または<8>に基づいて、前記パレットが前記積載部の第2の所定領域内にある場合に、前記荷山が前記荷量算出対象であると識別して、前記荷山に含まれる前記荷物の量を算出する、請求項1に記載のトラックの荷量算出方法。
<7>前記床面における前記他方側の端辺を第2基準線として、前記第2基準線から前記一方側に向けた距離が前記積載部の幅以下となる範囲を前記第2の所定領域とし、前記パレットが前記第2の所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<8>前記床面における前記他方側の端辺を第2基準線として、前記第2基準線から前記一方側に向けた距離が前記積載部の幅の半分以下となる範囲を前記第2の所定領域とし、前記パレットが前記第2の所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする。
【請求項5】
荷量算出装置によって、トラックの積載部に搭載された荷物が荷量算出対象であるか否かを識別する荷物識別方法であって、
前記荷量算出装置によって、
前記トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側から前記積載部を撮像した第1の積載画像を取得し、
前記第1の積載画像において、前記積載部と、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットと、を比較して、
下記<1>または<2>に基づいて、前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別する、トラックの荷物識別方法。
<1>前記積載部の床面における前記一方側の端辺を第1基準線として、前記第1基準線から前記車幅方向の他方側に向けた距離が前記積載部の幅以下となる範囲を前記所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<2>前記床面における前記一方側の端辺を第1基準線として、前記第1基準線から前記他方側に向けた距離が前記積載部の幅の半分以下となる範囲を前記所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする。
【請求項6】
荷量算出装置によって、トラックの積載部に搭載された荷物が荷量算出対象であるか否かを識別する荷物識別方法であって、
前記荷量算出装置によって、
前記トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側から前記積載部を撮像した第1の積載画像を取得し、
前記第1の積載画像において、前記積載部と、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットと、を比較して、
下記<3>~<6>の何れかに基づいて、前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別する、トラックの荷物識別方法。
<3>前記積載部の床面における車両進行方向後側の端辺を後基準線とし、前記後基準線から車両進行方向前側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<4>前記床面における前記後側の端辺を後基準線とし、前記後基準線から前記前側に向けた距離が前記車両進行方向における積載部の長さの半分以上となる範囲を前記所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<5>前記床面における前記前側の端辺を前基準線とし、前記前基準線から前記後側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を荷量算出対象とする、
<6>前記床面における前記前側の端辺を前基準線とし、前記前基準線から前記後側に向けた距離が前記車両進行方向における前記積載部の長さの半分以下となる範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする。
【請求項7】
前記荷量算出装置によって、
さらに、下記<3>~<6>の何れかに基づいて、前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別する、請求項5に記載のトラックの荷物識別方法。
<3>前記床面における車両進行方向後側の端辺を後基準線とし、前記後基準線から車両進行方向前側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<4>前記床面における前記後側の端辺を後基準線とし、前記後基準線から前記前側に向けた距離が前記車両進行方向における積載部の長さの半分以上となる範囲を前記所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする、
<5>前記床面における前記前側の端辺を前基準線とし、前記前基準線から前記後側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を荷量算出対象とする、
<6>前記床面における前記前側の端辺を前基準線とし、前記前基準線から前記後側に向けた距離が前記車両進行方向における前記積載部の長さの半分以下となる範囲を所定領域とし、前記パレットが前記所定領域にある前記荷山を前記荷量算出対象とする。
【請求項8】
トラックの積載部における荷量を算出する荷量算出装置であって、
前記トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側に設置され前記積載部を撮像して第1の積載画像を取得するカメラと、
請求項1~4の何れか一項に記載の荷量算出方法で前記荷量の量を算出する荷量管理要素と、を具備する、トラックの荷量算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラックの積載部に実際に積載されている荷量を把握する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の荷物を集荷および納入するためのトラックには、荷物を積載するための積載部が設けられている。
【0003】
近年、トラックの積載部に実際に積載されている荷量を把握する試みがなされている。トラックによる荷物の集荷や配送スケジュールを管理するため、トラックの積載部に適正な量の荷物が積載されているか否かを管理するため、または、積載部における適切な位置に荷物が積載されているか否かを管理するためである。
【0004】
荷量管理における作業者の関与を低減する方法の一つとして、トラックの積載部を撮像し、得られた積載画像を基に積載部の荷量や空きスペースを算出する方法を挙げることができる。
特許文献1および特許文献2には、トラックの積載部を撮像する技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3711839号
【文献】特開2022-170260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、トラックのウイングに設置したカメラで積載部を撮像し、得られた積載画像を基に当該積載部に積載されている荷量を算出する技術が紹介されている。
また特許文献2には、トラックおよびコンテナすなわちトラックの積載部をカメラで撮像する技術が紹介されている。
【0007】
上記した特許文献1に紹介されている技術および特許文献2に紹介されている技術のように、カメラを用いて積載部を撮像すれば、得られた画像を基にトラックの積載部に実際に積載されている荷量を把握し得ると考えられる。
【0008】
しかし実際には、単にカメラを用いて積載部を撮像するだけでは当該積載部に実際に積載されている荷量を正確に把握することは困難であり、特に積載部を撮像した画像を基に当該荷量を自動的に識別する場合には、当該荷量を正確に把握することは非常に困難であった。
【0009】
このため、トラックによる荷物の集荷や配送スケジュールを管理すべく、トラックの積載部に適正な量の荷物が積載されているか否かを管理すべく、または、積載部における適切な位置に荷物が積載されているか否かを管理すべく、トラックの荷量を信頼性高く把握し得る技術が望まれている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、トラックの荷量を信頼性高く把握し得る荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の荷量算出方法は、
トラックの積載部における荷量を算出する荷量算出方法であって、
前記トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側から前記積載部を撮像した第1の積載画像を取得し、
前記第1の積載画像において、前記積載部と、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットと、を比較して、
前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別して、前記荷山に含まれる前記荷物の量を算出する、トラックの荷量算出方法である。
【0012】
また、上記課題を解決する本発明の荷物識別方法は、
トラックの積載部に搭載された荷物が荷量算出対象であるか否かを識別する荷物識別方法であって、
前記トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側から前記積載部を撮像した第1の積載画像を取得し、
前記第1の積載画像において、前記積載部と、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットと、を比較して、
前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別する、トラックの荷物識別方法である。
【0013】
さらに、上記課題を解決する本発明の荷量算出装置は、
トラックの積載部における荷量を算出する荷量算出装置であって、
前記トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側に設置され前記積載部を撮像して第1の積載画像を取得するカメラと、
前記第1の積載画像において、前記積載部と、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットと、を比較して、前記パレットが前記積載部の所定領域内にある場合に、前記荷山が荷量算出対象であると識別して前記荷山に含まれる前記荷物の量を算出する荷量管理要素と、を具備する、トラックの荷量算出装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置によると、トラックの荷量を信頼性高く把握することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置における積み卸し拠点、トラック、積載部および荷山の位置関係を模式的に説明する説明図である。
図2】実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置において積載部を一方側から見た様子を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置における第1の積載画像を模式的に表す説明図である。
図4】実施例1の荷量算出方法および荷物識別方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体例を挙げて本発明の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置を説明する。
【0017】
なお、以下、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x~y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施形態中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0018】
既述したように、特許文献1に紹介されている技術および特許文献2に紹介されている従来の技術のように、単にカメラを用いて積載部を撮像するだけでは、当該積載部に実際に積載されている荷量を正確に把握することは困難であった。
【0019】
本発明の発明者は、上記の不具合がトラックの積載部を撮像する環境に密接に関係しているという着想を得た。
【0020】
積載部に積載されている荷量を把握する目的で当該積載部を撮像するためには、集荷時に積載部に荷物を積んだトラックが発車する直前、または出荷時にトラックの積載部から荷物を降ろす直前に撮像を行うことが好適である。このことを考慮すると、積載部を撮像する環境としては、荷物の集荷や納入を行うための荷物の積み卸し拠点が好適である。
【0021】
しかし、荷物の積み卸し拠点は多くのトラックが同時に利用する施設であり、図1に示すように、荷量算出対象であるトラックの近くに、荷量算出対象でないトラックが駐停車する場合もある。この場合、当該積み卸し拠点で積載部を撮像しようとすると、撮像対象であるトラックに対し撮像方向の先側に、撮像対象でないトラックが重なる。そしてその結果、図2に示すように、積載部を撮像し得られた画像には、荷量算出対象でないトラック、換言すると撮像対象でないトラックの積載部や、当該積載部にある荷物が写り込む虞がある。
【0022】
本発明の発明者は、積載部の画像に荷量算出対象でないトラックの積載部が写り込んでいる場合には、荷量算出対象であるトラックの積載部に積載された荷物と、荷量算出対象でないトラックの積載部に積載された荷物とを精度高く識別することが困難になることに気付いた。そして発明者は、その結果当該積載部に実際に積載されている荷量を正確に把握することもまた困難になることに想到した。
【0023】
本発明の発明者は、さらに考えを進めて、積載部の画像に荷量算出対象でないトラックの積載部が写り込んでいる場合に、荷量算出対象であるトラックの積載部に積載された荷物と、荷量算出対象でないトラックの積載部に積載された荷物とを精度高く識別することを志向し、鋭意検討を重ねた。そしてその結果、本発明の荷物識別方法、荷量算出方法および荷量算出装置を発明した。
【0024】
本発明の荷物識別方法では、トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側から積載部を撮像した第1の積載画像を取得する。積載部に荷物が搭載されていれば、当該第1の積載画像には、積載部自体に加えて、積載部に積載された荷物が、パレットに積まれた荷山の状態で写り込む。
【0025】
本発明の荷物識別方法では、上記の第1の積載画像に写っている荷物が、荷量算出対象であるトラックの積載部に積載されている荷物であるか、それとも荷量算出対象でないトラックの積載部に積載されている荷物であるか、を識別する。
【0026】
具体的には、本発明の荷物識別方法では先ず、上記の第1の積載画像において、積載部と、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットと、を比較する。そして、当該パレットが積載部の所定領域内にある場合に、その荷山が荷量算出対象であると識別する。本発明の荷物識別方法では、第1の積載画像における積載部と荷山における最下段のパレットとの位置関係に基づいてその荷山が荷量算出対象であるか否かを識別するともいい得る。
【0027】
積載部の外形は、荷物の有無に関係しない。このため、第1の積載画像に写っている荷物が、荷量算出対象であるトラックの積載部に積載されている荷物であるか、それとも荷量算出対象でないトラックの積載部に積載されている荷物であるかを識別する基準、すなわち、第1の積載画像における識別基準として、積載部自体を用いることは適切といい得る。
【0028】
一方、積載部に積載される荷物および当該荷物が積まれた荷山の外形は、積載部への荷物の積み卸しに伴って三次元的に変化する。このため荷山の外形自体を第1の積載画像における識別基準として用いることは適切とはいい難い。
【0029】
ここで、荷物が積まれた荷山における最下段のパレットは、積載部への荷物の積み卸しに伴い、出現したり消失したり、または、積載部の載置面上を二次元的に位置変化したりするだけである。したがって当該荷山における最下段のパレットは、第1の積載画像における識別基準として有用といい得る。
【0030】
このため本発明の荷物識別方法では第1の積載画像における識別基準として、積載部と、荷山における最下段のパレットと、の位置関係を採用した。
荷山における最下段のパレットが積載部の所定領域内にある場合に、当該荷山が荷量算出対象であると識別する。角度をかえていえば、荷山における最下段のパレットが積載部の所定領域内にない場合には、当該荷山が荷量算出対象でないと識別する。
これにより、第1の積載画像に写っている荷物が、荷量算出対象であるトラックの積載部に積載されている荷物であるか、それとも荷量算出対象でないトラックの積載部に積載されている荷物であるかを精度高く識別することが可能である。
【0031】
また、本発明の荷量算出方法によると、本発明の荷物識別方法によって荷量算出対象であると識別した荷山に含まれる荷物の量を算出する。このように本発明の荷物識別方法を用いた本発明の荷量算出方法によると、荷量算出対象であるトラックの荷量を精度高く算出することが可能である。
【0032】
本発明の荷量算出装置は、上記した本発明の荷量算出方法を実施し得るカメラおよび荷量管理要素を具備する装置である。このように本発明の荷量算出装置によると、荷量算出対象であるトラックの荷量を精度高く算出することが可能である。
【0033】
以下、本発明の荷物識別方法、荷量算出方法および荷量算出装置をその構成要素毎に説明する。なお特に説明なく単に本発明という場合には、本発明の荷物識別方法、荷量算出方法および荷量算出装置について包括的に言及しているものとする。
【0034】
また以下、必要に応じて、荷量算出対象であるトラックを対象トラックと称する場合があり、当該対象トラックの積載部を対象積載部と称する場合がある。また、荷山の最下段にあるパレットを、必要に応じて下パレットと称する場合がある。
参考までに、本発明でいうパレットとは、フォークリフトに代表される移動型リフト装置を用いて複数個の荷物を同時に運搬するための荷台を意味する。
【0035】
本発明では、先ず、対象トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側から積載部を撮像した第1の積載画像を取得する。ここでいう車幅方向の一方側とは、車幅方向における特定の一方側であれば良く、例えば、対象トラックの進行方向を前側とした場合の右側または左側であっても良いし、当該右側または左側を含む側、例えば、右側かつ後側や、右側かつ後側かつ上側等であっても良い。
【0036】
本発明において積載部を撮像するカメラは、第1の積載画像を取得するために、対象トラックに対して車外側かつ車幅方向の一方側に設置する。当該カメラは、動画を撮像可能なものであっても良いし静止画を撮像可能なものであっても良い。すなわち、当該カメラが撮像した第1の積載画像は、動画であっても静止画であっても良い。
【0037】
なおトラックの積載部とは、トラックのうち荷物を積載する部分をいい、トラックの荷室とも言い換え得る。
【0038】
本発明では、上記の第1の積載画像における積載部と、同じく第1の積載画像における荷山の最下段にあるパレットすなわち下パレットと、を比較する。なお、対象トラックとカメラとの位置関係によっては、第1の積載画像に複数の積載部が写っていることも考えられる。このような場合には、当該第1の積載画像において最も大きな積載部、すなわち、カメラに最も近い積載部を、対象積載部とすれば良い。
【0039】
積載部の荷山の数は、対象トラックの集荷や配送の状況に応じて変化し、種々の値をとり得る。したがって、第1の積載画像における荷山の数も1つだけである場合もあれば複数ある場合もある。さらには、荷山がない場合もある。
【0040】
第1の積載画像に荷山が複数ある場合には、各々の荷山について、その下パレットを対象積載部と比較すれば良い。
【0041】
上記のように、対象積載部と下パレットとを比較することで、当該下パレットが対象積載部の所定領域内にあるか否かを判断し得る。そして、当該下パレットが所定領域内にある場合に、当該下パレットを含む荷山が荷量算出対象であると識別することが可能になる。
【0042】
ここで、第1の積載画像において対象積載部に対する位置関係が同じ荷山であっても、識別基準としての所定領域の範囲によっては、荷量算出対象として識別される場合もあれば、荷量算出対象として識別されない場合もある。したがって、識別基準としての所定領域は、対象積載部に対して如何なる位置関係にある荷山を荷量算出対象として識別するか、ということに基づいて、適宜適切に設定すれば良い。
【0043】
一例として、(a)第1の積載画像において、車幅方向の一方側を基準として当該基準に近い側、換言するとカメラに近い側にある荷山を荷量算出対象とするものを挙げることができる。当該(a)によると、対象積載部に対して基準から遠い側、換言するとカメラから遠い側にある荷山を、荷量算出対象から除外できる。
【0044】
なお、上記(a)により荷量算出対象の識別を行う場合、第1の積載画像は単に対象トラックの一方側から積載部を撮像したものを用いるよりも、当該一方側を含む斜め方向から積載部を撮像したものを用いるのが好適である。具体的には、当該一方側かつ後側、当該一方側かつ前側、当該一方側かつ後側かつ上側、当該一方側かつ前側かつ上側等である。
【0045】
上記(a)においては、対象積載部の床面における車幅方向の一方側の端辺を第1基準線とし、当該第1基準線からの距離が所定以下の範囲を、所定領域とするのが好適である。
【0046】
例えば、上記の第1基準線から車幅方向の他方側に向けた距離が車幅方向における対象積載部の長さ(換言すると対象積載部の幅)以下となる範囲を所定領域とすれば、対象積載部よりも車幅方向の他方側にある荷山を荷量算出対象から除外して、それ以外の荷山を荷量算出対象とすることができる。
また、例えば第1基準線から車幅方向の他方側に向けた距離が対象積載部の幅の半分以下となる範囲を所定領域とすれば、対象積載部における車幅方向の一方側にある荷山だけを荷量算出対象とすることができる。
【0047】
また他の一例として、(b)第1の積載画像において、車両進行方向における所定の位置を基準として、当該基準に近い側にある荷山を荷量算出対象とするものを挙げることができる。当該(b)においては、対象積載部に対して基準から遠い側、換言すると対象積載部よりも車両進行方向の前側または後側にある荷山を、荷量算出対象から除外できる。
【0048】
上記(b)においては、(b-1)対象積載部の床面における車両進行方向後側の端辺を後基準線とし、当該後基準線から車両進行方向前側に向けた距離が所定以上の範囲、または、当該後基準線から車両進行方向後側に向けた距離が所定以下の範囲を、所定領域内とするのが好適である。
または、(b-2)対象積載部の床面における車両進行方向前側の端辺を前基準線とし、当該前基準線から車両進行方向後側に向けた距離が所定以上の範囲、または、当該前基準線から車両進行方向前側に向けた距離が所定以下の範囲を、所定領域内とするのも好適である。
【0049】
(b-1)においては、例えば、上記の後基準線から車両進行方向前側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とすれば、対象積載部よりも車両進行方向後側にある荷山を除外し、それ以外の荷山を荷量算出対象とすることができる。
【0050】
(b-2)においては、例えば、上記の前基準線から車両進行方向後側に向けた距離が0を超える範囲を所定領域とすれば、対象積載部よりも車両進行方向前側にある荷山を除外し、それ以外の荷山を荷量算出対象とすることができる。
【0051】
さらには、上記(b-1)においては、例えば後基準線から車両進行方向前側に向けた距離が車両進行方向における対象積載部の長さの半分以上となる範囲を所定領域とすれば、対象積載部における車両進行方向後側にある荷山を除外して、対象積載部における車両進行方向前側にある荷山を荷量算出対象とすることができる。
【0052】
同様に、上記(b-2)においては、例えば前基準線から車両進行方向後側に向けた距離が車両進行方向における対象積載部の長さの半分以下となる範囲を所定領域とすれば、対象積載部における車両進行方向後側にある荷山を除外して、対象積載部における車両進行方向前側にある荷山を荷量算出対象とすることができる。
【0053】
積載部にある荷山が少ない場合に、例えばトラックが急停車すると、荷山が積載部上を車両進行方向前側に向けて移動する場合がある。当該荷山の移動距離が過大であると、当該荷山が積載部の前壁に衝突し、当該荷山に含まれる荷物が損傷する虞もある。
【0054】
これに対して、荷山を積載部における車両進行方向前側に配置しておくことで、車両進行方向前側に向けた荷山の移動可能距離を短くすることができる。これにより、積載部にある荷山が少なくかつトラックが急停車した場合にも、荷山の過大な移動を抑制でき、ひいては、当該荷山に含まれる荷物の損傷を抑制できる。
【0055】
本発明では、上記(b-1)または(b-2)により対象積載部における車両進行方向前側にある荷山を荷量算出対象とすることで、当該荷量算出対象である荷山が少ないかまたはなく、かつ、荷量算出対象でない荷山がある場合に、作業者に注意喚起したり作業ロボットに荷山を配置し直す指示を出したりすることができる。これにより、対象積載部に荷量算出対象でない荷山がある場合に、当該荷山を積載部における車両進行方向前側に配置し直すことができ、当該荷山の車両進行方向前側に向けた移動可能距離を短くすることができる。そしてこれにより、対象積載部にある荷山が少なくかつトラックが急停車した場合にも、各荷山の過大な移動を抑制でき、当該荷山に含まれる荷物の損傷を抑制できる利点がある。
【0056】
上記(b-1)および(b-2)は、各々単独で実施しても良いし、上記(a)と組み合わせて実施しても良い。さらには、上記(a)および、後述する(c)および/または(d)と組み合わせて実施しても良い。
【0057】
本発明では、車幅方向の一方側から積載部を撮像した第1の積載画像を基に荷量算出対象を識別するが、これに加えてさらに、車幅方向の他方側から積載部を撮像した第2の積載画像を基に荷量算出対象を識別しても良い。
【0058】
以下、必要に応じて、第1の積載画像を基に識別された荷量算出対象を第1荷量算出対象と称し、第2の積載画像を基に識別された荷量算出対象を第2荷量算出対象と称することで両者を区別する場合がある。また、必要に応じて、第1の積載画像を得るためのカメラを第1のカメラと称し、第2の積載画像を得るためのカメラを第2のカメラと称することで両者を区別する場合がある。さらに、必要に応じて、第2の積載画像における荷山の下パレットを第2の下パレットと称する場合がある。
【0059】
第2荷量算出対象の識別を行う場合、具体的には、第2のカメラによって対象トラックに対して上記の一方側とは逆の他方側から対象積載部を撮像し、第2の積載画像を取得すれば良い。そして、当該第2の積載画像における積載部と、同じく第2の積載画像における荷山の下パレットと、を比較すれば良い。
なお、第2の積載画像に複数の積載部が写っている場合には、当該第2の積載画像において最も大きな積載部、すなわち、カメラに最も近い積載部を、対象積載部とすれば良い。
【0060】
上記のように、第2の積載画像において、対象積載部と、第2の下パレットすなわち第2の積載画像における荷山の下パレットと、を比較することで、当該第2の下パレットが対象積載部の所定領域内にあるか否かを判断し得る。そして、当該第2の下パレットが第2の所定領域内にある場合に、当該第2の下パレットを含む荷山が第2荷量算出対象であると識別することが可能である。
【0061】
この場合、第2の所定領域は、上記した第1の所定領域と同様に設定することができる。
一例として、(c)第2の積載画像において、車幅方向の他方側を基準として当該基準に近い側、換言すると第2のカメラに近い側にある荷山を第2荷量算出対象とするものを挙げることができる。当該(c)によると、対象積載部に対して基準から遠い側、換言すると第2カメラから遠い側、さらに換言すると車幅方向の一方側にある荷山を、第2荷量算出対象から除外できる。
【0062】
なお、上記(c)により荷量算出対象の識別を行う場合にも、第2の積載画像は単に対象トラックの他方側から積載部を撮像したものを用いるよりも、当該他方側を含む斜め方向から積載部を撮像したものを用いるのが好適である。具体的には、当該他方側かつ後側、当該他方側かつ前側、当該他方側かつ後側かつ上側、当該他方側かつ前側かつ上側等である。
【0063】
上記(c)においては、対象積載部の床面における車幅方向の他方側の端辺を第2基準線とし、当該第2基準線からの距離が所定以下の範囲を、第2の所定領域とすれば良い。
【0064】
例えば、上記の第2基準線から車幅方向の一方側に向けた距離が対象積載部の幅以下となる範囲を第2の所定領域とすれば、対象積載部よりも車幅方向の一方側にある荷山を除外し、それ以外の荷山を第2荷量算出対象とすることができる。
また、例えば第2基準線から車幅方向の一方側に向けた距離が対象積載部の幅の半分以下となる範囲を第2の所定領域とすれば、対象積載部における車幅方向の他方側にある荷山だけを荷量算出対象とすることができる。
【0065】
また他の一例として、上記(b)と同様に、(d)第2の積載画像において、車両進行方向における所定の位置を基準として、当該基準に近い側にある荷山を対象積載部とするものを挙げることができる。当該(d)においては、上記(b)と同様に、対象積載部に対して基準から遠い側、換言すると対象積載部よりも車両進行方向の前側または後側にある荷山を、荷量算出対象から除外できる。
【0066】
上記した第2の荷量算出対象の識別は、第1の荷量算出対象の識別を行った上で、第1の積載画像に荷山があり、かつ、荷量算出対象である荷山がないと判断した場合に行うのが合理的である。
【0067】
なお、第1の荷量算出対象の識別に加えて第2の荷量算出対象の識別を行う場合、上記(a)において第1基準線から車幅方向の他方側に向けた距離が対象積載部の幅よりも小さな範囲を所定領域とするのが好適である。そしてこの場合、例えば、第1基準線から車幅方向の他方側に向けた距離が対象積載部の幅の半分以下となる範囲を所定領域とするのがより好適である。上記(a)では第1荷量算出対象でないと識別した荷山を(c)で第2荷量算出対象と識別でき、荷量算出対象の識別を精度高く行い得るためである。
【0068】
第1の荷量算出対象の識別に加えて第2の荷量算出対象の識別を行う場合には、同一の荷山を第1荷量算出対象かつ第2荷量算出対象と識別することを抑制する必要がある。このため、第1の所定領域を小さく、かつ、第2の所定領域を小さく設定するのが好適である。
具体的には、(a)において第1基準線から車幅方向の他方側に向けた距離Waを短く設定し、かつ、(c)において第2基準線から車幅方向の一方側に向けた距離Wcを短く設定するのが好適である。
【0069】
より具体的には、Waが対象積載部の幅の1/5以下となる範囲を第1の所定領域としかつWcが対象積載部の幅の1/5以下となる範囲を第2の所定領域とする、Waが対象積載部の幅の1/8以下となる範囲を第1の所定領域としかつWcが対象積載部の幅の1/8以下となる範囲を第2の所定領域とする、または、Waが対象積載部の幅の1/10以下となる範囲を第1の所定領域としかつWcが対象積載部の幅の1/10以下となる範囲を第2の所定領域とするのが特に好適である。
【0070】
または、Waが50cm以下となる範囲を第1の所定領域としかつWcが50cm以下となる範囲を第2の所定領域とする、Waが30cm以下となる範囲を第1の所定領域としかつWcが30cm以下となる範囲を第2の所定領域とする、または、Waが20cm以下となる範囲を第1の所定領域としかつWcが20cm以下となる範囲を第2の所定領域とするのが特に好適である。
【0071】
なお、ここでいう距離Waおよび距離Wcは、それに関連する積載画像すなわち第1の積載画像または第2の積載画像に基づいて、一般的な方法で算出すれば良い。
【0072】
具体例を挙げると、先ず、実際の対象積載部につき予め各部の寸法または位置関係を測定し、これらの実測値として取得しておく。また、所定位置に設置した第1のカメラによって予め対象積載部を撮像して第1の積載画像を取得しておく。そして、実際の対象積載部における各部の寸法または位置関係の実測値と、第1の積載画像上における各部の寸法または位置関係とを関連づける。こうすることで、積載画像に基づいて距離Waおよび距離Wcを算出することが可能になる。これは、上記した後基準線から車両進行方向前側に向けた距離、後基準線から車両進行方向後側に向けた距離、前基準線から車両進行方向前側に向けた距離、および、前基準線から車両進行方向後側に向けた距離についても同様である。
【0073】
なお、上記した第1の積載画像上における各部の寸法等としては、第1の積載画像上における各部の寸法の実測値を用いても良いし、当該実測値にかえて第1の積載画像における各部の画像情報、例えば各部の画素数(具体的にはピクセル数)等を用いても良い。
【0074】
本発明では、上記のように各荷山につき識別を行い、第1荷量算出対象と識別された荷山につき、これに含まれる荷物の量を算出することで、対象トラックの荷量を信頼性高く把握することが可能になる。またこれに加えて、第2荷量算出対象と識別された荷山につき、これに含まれる荷物の量を算出することで、対象トラックの荷量をさらに信頼性高く把握することが可能になる。
【0075】
本発明において、第1の積載画像を基に荷山が第1の荷量算出対象であると識別する工程、および、第1の荷量算出対象であると識別された荷山に含まれる荷物の量を算出する工程は、既知の荷量管理要素により行うことができる。第2の積載画像を基に荷山が第2の荷量算出対象であると識別する工程、および、第2の荷量算出対象であると識別された荷山に含まれる荷物の量を算出する工程についても同様である。
【0076】
荷量管理要素は、上記の工程を行い得る機能を有するものであれば良く、その構造および構成は特に限定されない。当該荷量管理要素としては、例えば、CPU等の演算・制御装置と、メモリやハードディスク等の記憶装置とを具備するコンピュータを例示できる。
【0077】
ところで、一般的な積載部は、幅方向の一方または他方側から側面視すると概略矩形状をなすところ、第1カメラが取得した第1の積載画像や、第2カメラが取得した第2の積載画像において、当該積載部は歪んだ四角形状をなす場合が多い。これは、積み卸し拠点において第1カメラや第2カメラを積載部の真横に設置することが困難であること、および、第1の積載画像や第2の積載画像において積載部を矩形に写し取ることのできる画角の大きなカメラは高価であることに因る。
【0078】
本発明において、積載画像に基づいて第1荷量算出対象や第2荷量算出対象をより信頼性高く識別するためには、第1の積載画像や第2の積載画像を歪んだ四角形状から矩形または平行四辺形に戻す画像処理を行い、画像処理後の第1の積載画像や第2の積載画像を基に、上記の距離Waおよび距離Wcを算出することが好ましい。当該画像処理は既知の方法で行うことが可能であり、当該画像処理に用いるプログラム、アプリケーションまたはソフトウェアとしては、目的とする画像処理に必要な機能を有するものを適宜使用すれば良い。
【0079】
以下、具体例を挙げて本発明の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置を説明する。
【0080】
(実施例1)
図1は実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置における積み卸し拠点、トラック、積載部および荷山の位置関係を模式的に説明する説明図である。図2は実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置において積載部を一方側から見た様子を模式的に表す説明図である。図3は実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置における第1の積載画像を模式的に表す説明図である。図4は実施例1の荷量算出方法および荷物識別方法を説明するフローチャートである。
以下、実施例1で挙げる各方向は、各図に示す各方向を意味するものとする。
【0081】
実施例1の荷量算出装置1は、2つのカメラ2と当該カメラ2に接続されている荷量管理要素3とを具備する。
【0082】
このうちカメラ2は、荷物90の積み卸し拠点91において、対象トラック92tの車外であり積載部94の一方側と、当該積載部94の他方側とに各々設置されている。
【0083】
荷量管理要素3はAIを搭載したコンピュータであり、カメラ2と無線接続されている。カメラ2は当該荷量管理要素3によって制御されて、積載画像を動画として撮像する。カメラ2が取得した当該積載画像は、荷量管理要素3に伝送され蓄積される。
【0084】
積み卸し拠点91には、トラック92の積み卸しエリア93が多数設けられている。図1に示すように、各積み卸しエリア93は、トラック92が駐車可能な区画であり、建屋の床に描かれた線で囲われている。トラック92は入庫時には当該積み卸しエリア93の内側にあり、出庫時には当該積み卸しエリア93を出る。
【0085】
カメラ2は、各積み卸しエリア93に対して2個ずつ配置されている。一方のカメラ2である第1カメラ21は、積み卸しエリア93の一方側(左側)かつ後側かつ上側に配置され、他方のカメラ2である第2カメラ22は、積み卸しエリア93の他方側(右側)かつ後側かつ上側に配置されている。
【0086】
第1カメラ21は、対象トラック92tの積載部94を一方側(実施例1では助手席側)から撮像した第1の積載画像を取得する。第2カメラ22は、対象トラック92tの積載部94を他方側(実施例1では運転席側)から撮像した第2の積載画像を取得する。
【0087】
ここで、積み卸し拠点91には多数の積み卸しエリア93が設けられ、隣り合う積み卸しエリア93同士は比較的近くに位置する。したがって、積み卸しエリア93に駐停車している対象トラック92tの比較的近くに、その他のトラック92oが駐停車している場合がある。図1においては、その他のトラック92oは対象トラック92tの他方側に隣り合っている。
【0088】
このような環境で、対象トラック92tの積載部94を車外における車幅方向の一方側からみると、図2に示すように、対象トラック92tに対し車幅方向の他方側にその他のトラック92oが重なり、対象トラック92tの積載部94に、その他のトラック92oに積載された荷物90およびパレット95が荷山96の状態で写り込む。したがって、対象トラック92tに実際積載されている荷山96を荷量算出対象CTとして識別し、その他のトラック92oに由来する荷山96を荷量算出対象外Oとして排除する必要がある。
【0089】
実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1では、第1カメラ21により、対象トラック92tの積載部94を車外における車幅方向の一方側かつ後側かつ上側から撮像し、図3に示す第1の積載画像を得る。得られた第1の積載画像は、荷量管理要素3に伝送される。
【0090】
荷量管理要素3は、当該第1の積載画像において、積載部94の外形94OLを求める。そして当該積載部94の外形94OLを他の積載部94の外形等と比較して、対象トラック92tの積載部94すなわち対象積載部94tを確定する。
【0091】
また荷量管理要素3は、当該第1の積載画像において、対象積載部94tの床面94fにおける一方側の端辺を第1基準線FSとする。そして、当該第1基準線FSからの距離が所定以下の範囲を、第1の所定領域FAとする。
実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1では、第1基準線FSから他方側に向けた距離が、実際の対象積載部94tにおける実測値で20cm以下となる領域を、第1の所定領域FAとした。
【0092】
さらに荷量管理要素3は、第1の積載画像において、各荷山96の下パレット95Lと対象積載部94tとを比較する。そして、下パレット95Lの最下部であって一方側の端辺SEが対象積載部94tの第1の所定領域FA内にある場合に、その荷山96が第1の荷量算出対象であると識別する。そして荷量管理要素3は、この識別結果を基に、当該荷山96に含まれる荷物90の量を算出する。
【0093】
例えば図3に示す多くの荷山96のうち、端辺SEが対象積載部94tの第1の所定領域FA内にある荷山96fは、第1の荷量算出対象であると識別される。一方、端辺SEが対象積載部94tの第1の所定領域FA外にある荷山96sは、第1の荷量算出対象から排除される。
その他のトラック92oに由来する荷山96については、その端辺SEは第1の所定領域FA外にあるために、当然に、第1の荷量算出対象から排除される。
【0094】
これにより、実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1によると、第1の積載画像に写っている荷物90が、対象積載部94tに積載されている荷物90であるか、それとも、荷量算出対象でないトラック92oの積載部94に積載されている荷物90であるかを精度高く識別することが可能であり、ひいては、対象トラック92tの荷量を精度高く算出することが可能である。
【0095】
また、実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1では、さらに、第2カメラ22により、対象トラック92tの積載部94を他方側(実施例1では運転席側)から撮像した第2の積載画像を取得する。
【0096】
荷量管理要素3は、当該第2の積載画像を基に、上記と同様の方法で対象積載部94tを確定する。図示しないが、荷量管理要素3は、第2の積載画像において対象積載部94tの床面94fにおける他方側の端辺を第2基準線とする。そして、当該第2基準線からの距離が所定以下の範囲を、第2の所定領域とする。
実施例2の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1では、第2基準線から一方側に向けた距離が、実際の対象積載部94tにおける実測値で20cm以下となる領域を、第2の所定領域とした。
【0097】
さらに荷量管理要素3は、第2の積載画像において、各荷山96の下パレット95Lと対象積載部94tとを比較する。そして、下パレット95Lの最下部であって他方側の端辺が対象積載部94tの第2の所定領域内にある場合に、その荷山96が第2の荷量算出対象であると識別する。そして荷量管理要素3は、この識別結果を基に、当該荷山96に含まれる荷物90の量を算出する。
【0098】
例えば図3に示す多くの荷山96のうち、荷山96fについては、その下パレット95Lの最下部であって他方側の端辺が対象積載部94tの第2の所定領域外にあるため、第2の荷量算出対象から除外される。一方、荷山96sについては、その下パレット95Lの最下部であって他方側の端辺が対象積載部94tの第2の所定領域内にあるために、第2の荷量算出対象と識別される。
図1に示すその他のトラック92oに由来する荷山96については、第2の積載画像には写り込まないために、当然に、第2の荷量算出対象から排除される。
【0099】
実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1によると、対象積載部94tの一方側にある荷山96を第1の荷量算出対象として識別しその他の荷山96を第1の荷量算出対象から排除する。そして、対象積載部94tの他方側にある荷山96を第2の荷量算出対象として識別し、その他の荷山96を第2の荷量算出対象から排除する。
【0100】
これにより、実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1によると、第1の積載画像に写っている荷物90が、対象積載部94tに積載されている荷物90であるか、それとも、荷量算出対象でないトラック92oの積載部94に積載されている荷物90であるかを精度高く識別することが可能である。加えて、第2の積載画像に写っている荷物90が、対象積載部94tに積載されている荷物90であるか、それとも、荷量算出対象でないトラック92の積載部94に積載されている荷物90であるかを精度高く識別することが可能である。
【0101】
これにより、実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1によると、対象トラック92tの荷量を非常に精度高く算出することが可能である。
【0102】
以下、図4に示すフローチャートを用いて、実施例1の荷量算出方法および荷物識別方法をより具体的に説明する。
【0103】
先ず、第1カメラ21により得た第1の積載画像が荷量管理要素3に伝送されると、荷量管理要素3は全体処理を開始する(S1)。
【0104】
荷量管理要素3は、S1において、第1の積載画像からトラック92に似ている画像を抽出し、当該画像がトラック92であるか否かを判定する(S2)。
【0105】
次に、対象トラック92tの対象積載部94tにおける荷量算出(A)を行う(S3)。
S3においては、荷量算出(A)の処理開始(SA1)後に、先ず、第1の積載画像を読み込む学習を行う(SA2)。次いで、SA2の学習内容を基に推論を行う(SA3)。
なお、本全体処理S1に先だって、SA2に相当する学習を予め行っている学習済みモデルを荷量管理要素3に適用する場合には、当該SA2をスキップしても良い。
【0106】
SA3において、具体的には、第1の積載画像にある積載部94の四隅の座標を基に当該積載部94の外形を求める。第1の積載画像にトラック92が1台のみある場合には、当該トラック92を対象トラック92tと判定する。第1の積載画像に複数のトラック92がある場合には、各トラック92における積載部94の外形を比較し、積載部94の最も大きなトラック92を対象トラック92tと判定し、当該対象トラック92の積載部94を対象積載部94tと判定する。さらに、当該対象積載部94にあるパレット95を抽出する。
【0107】
上記のSA3後に、対象積載部94にあるパレット95につき下パレット判定(B)を行う(SA4)。
【0108】
SA4においては、具体的には、下パレット判定(B)の処理開始(SB1)後に、先ず、第1の積載画像における第1基準線FSを検出する(SB2)。次いで、第1の積載画像におけるパレット95を抽出する(SB3)。
【0109】
SB3で抽出した各パレット95の1つにつき、その四隅の座標を基に当該パレット95の外形を求める。そして、当該パレット95の認識枠座標(1)、より具体的には当該パレット95における上下方向(すなわち高さ方向)の中心座標を取得する(SB4)。
なお、ここでいうパレット95の四隅とは、積載部94を一方側(実施例1では助手席側)から撮像した第1の積載画像に写されている、パレット95の側面における四隅を意味する。当該四隅を基にパレット95の外形を求めることで、パレット95の側面における高さ方向の中心座標を取得することができる。
【0110】
次いで、第1基準線FSの中心座標(2)、より具体的には当該第1基準線FSにおける上下方向の中心座標を取得する(SB5)。
【0111】
そして、SB4で得たパレット95の認識軸座標(1)と、SB5で得た第1基準線FSの中心座標(2)と、を比較し、(1)-(2)>0であり、かつ、当該(1)-(2)が閾値以下であるか否かを判定する(SB6)。なお既述したように、実施例1においては、第1基準線FSから他方側に向けた距離が、実際の対象積載部94tにおける実測値で20cm以下となる領域を、第1の所定領域FAとした。したがって、ここでいう閾値とは実測値で20cmである。
【0112】
SB6において「(1)-(2)>0かつ閾値以下」である場合(SB6のY)、当該パレット95を、第1の荷量算出対象である荷山96における下パレット95Lと判定(SB7)する。そしてその後に、全てのパレット95について下パレット95Lの判定SB7が終了したか否かを判定する(SB8)。
全てのパレット95についてSB7が終了していれば、下パレット判定(B)を処理終了する(SB9)。また、全てのパレット95についてSB7が終了していなければ、SB3に戻る。
【0113】
SB6において「(1)-(2)>0かつ閾値以下」でない場合(SB6のN)、SB8に進み、全てのパレット95についてSB7が終了していれば下パレット判定(B)を処理終了する(SB9)。また、全てのパレット95についてSB7が終了していなければSB3に戻る。
【0114】
下パレット判定(B)の処理終了(SB9)後、当該下パレット95Lを含む荷山96を検出する(SA5)。既述したように当該荷山96は第1の荷量算出対象であるため、その後当該荷山96に含まれる荷量を算出する(SA6)。SA6の終了後、荷量算出(A)処理を終了(SA7)し、その結果をデータベースに登録(S4)して、全体処理を終了する(S5)。
【0115】
実施例1の実施例1の荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置1では、さらに、例えば図3に示す第1の積載画像において、車両進行方向における所定の位置を基準として、当該基準に近い側にある荷山96を荷量算出対象とすることも可能である。
【0116】
例えば、対象積載部94tの床面94fにおける車両進行方向前側の端辺を前基準線FRSとすることができる。そして、当該前基準線FRSから車両進行方向後側に向けた距離が、車両進行方向における対象積載部94tの長さの半分以下となる範囲を、第3の所定領域TAとすることもできる。
【0117】
この場合、下パレット95Lの最下部であって後側の端辺が当該第3の所定領域TA内にある荷山96を、第3の荷量算出対象と識別し、その他の荷山96を第3の荷量算出対象から排除することができる。これにより、第1の積載画像に写っている荷物90が、対象積載部94tに積載されている荷物90であるか、それとも、荷量算出対象でないトラック92の積載部94に積載されている荷物90であるかを精度高く識別することが可能であり、対象トラック92tの荷量を精度高く算出することが可能である。
【0118】
加えて、この場合には、第3の荷量算出対象である荷山96が少ないかまたはなく、かつ、第3の荷量算出対象でない荷山96がある場合に、作業者に注意喚起したり作業ロボットに荷山96を配置し直す指示を出したりすることができる。これにより、対象積載部94tに第3の荷量算出対象でない荷山96がある場合に、当該荷山96を対象積載部94tにおける車両進行方向前側に配置し直すことができる。これにより、当該荷山96の車両進行方向前側に向けた移動可能距離を短くすることができ、ひいては、対象積載部94tにある荷山96が少なくかつトラック92が急停車した場合にも、各荷山96の過大な移動を抑制でき、当該荷山96に含まれる荷物90の損傷を抑制することが可能である。
【0119】
以上本発明を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、当該実施形態等に記載した要素を適宜抽出し組み合わせて実施することや、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
また、本発明の明細書は、出願当初における各請求項の引用関係に止まらず各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0120】
1:トラックの荷量算出装置
2:カメラ
3:荷量管理要素
90:荷物
92:トラック
94:積載部
94f:積載部の床面
95:パレット
95L:荷山の最下段にあるパレット
96:荷山
FS:第1基準線
【要約】
【課題】トラックの荷量を信頼性高く把握し得る荷量算出方法、荷物識別方法および荷量算出装置を提供すること。
【解決手段】
トラック92の積載部94における荷量を算出する荷量算出方法であって、
前記トラック92に対して車外側かつ車幅方向の一方側から前記積載部94を撮像した第1の積載画像を取得し、
前記第1の積載画像において、前記積載部94と、荷物90が積まれた荷山96における最下段のパレット95とを比較して、
前記パレット95が前記積載部94の所定領域内にある場合に、前記荷山96が荷量算出対象であると識別して、前記荷山96に含まれる前記荷物90の量を算出する、トラック92の荷量算出方法。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4