(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】スプライスケーブル、特に高圧スプライスケーブル、およびケーブル、特に高圧ケーブルのスプライス接続方法
(51)【国際特許分類】
H02G 15/18 20060101AFI20241203BHJP
H02G 15/10 20060101ALI20241203BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20241203BHJP
H02G 15/08 20060101ALI20241203BHJP
H01R 4/70 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H02G15/18
H02G15/10
H02G1/14
H02G15/08
H01R4/70 D
(21)【出願番号】P 2023504657
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027711
(87)【国際公開番号】W WO2022025047
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】102020004613.4
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 高信
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ、ヴェンティスラフ
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00136154(EP,A2)
【文献】国際公開第99/021259(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/204063(WO,A1)
【文献】特開平07-073948(JP,A)
【文献】特開2007-317480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/00-15/196
H02G 1/14
H01R 4/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプライスケーブル(1)、特に高圧スプライスケーブルであって、
第1のシールド電線(2a)であって、少なくとも1つの導体(7a)、および外面(30a)が第1の外装(4a)で被覆された第1のシールド層(3a)を有する第1のシールド電線(2a)と、
第2のシールド電線(2b)であって、少なくとも1つの導体(7b)、および外面(30b)が第2の外装(4b)で被覆された第2のシールド層(3b)を有する第2のシールド電線(2b)と、
第3のシールド電線(2c)であって、少なくとも1つの導体(7c)、および外面(30c)が第3の外装(4c)で被覆された第3のシールド層(3c)を有する第3のシールド電線(2c)とを備え、
前記第1のシールド電線(2a)を構成する少なくとも1つの導体(7a)を第1の導体(7a)とし、前記第2のシールド電線(2b)を構成する少なくとも1つの導体(7b)を第2の導体(7b)とし、前記第3のシールド電線(2c)を構成する少なくとも1つの導体(7c)を第3の導体(7c)としたとき、前記第1の導体(7a)は、前記第2の導体(7b)および前記第3の導体(7c)に電気的に接続され、
前記スプライスケーブル(1)は、可撓性シールドチューブ(5)であって、第1の部分(50a)、および前記第1の部分(50a)に対して長手方向に隣接するかまたは離隔した第2の部分(50b)を有する可撓性シールドチューブ(5)を備え、
前記可撓性シールドチューブ(5)の前記第1の部分(50a)は、前記第1のシールド電線(2a)の露出部(31a)を実質的に包むように配置されるとともに、前記第1のシールド層(3a)に電気的に接続され、
前記可撓性シールドチューブ(5)の前記第2の部分(50b)は、前記第2のシールド電線(2b)の露出部(31b)および前記第3のシールド電線(2c)の露出部(31c)の両方を実質的に包むように配置されるとともに、前記第2のシールド層(3b)および前記第3のシールド層(3c)に電気的に接続され、
前記第1のシールド電線(2a)の前記露出部(31a)は、前記第1のシールド層(3a)のうち、前記第1のシールド層(3a)の外面(30a)が露出するように前記第1の外装(4a)が皮剥ぎされた部分を含み、前記第1のシールド層(3a)の前記第1の外装(4a)が皮剥ぎされた前記部分は、前記第1のシールド層(3a)のうち前記第1の外装(4a)で被覆された一対の部分(310a)の間に介在し、前記可撓性シールドチューブ(5)の内面(51)は、前記露出部(31a)において前記第1のシールド層(3a)の前記外面(30a)に実質的に当接するように配置され、かつ/または
前記第2のシールド電線(2b)の前記露出部(31b)は、前記第2のシールド層(3b)のうち、前記第2のシールド層(3b)の前記外面(30b)が露出するように前記第2の外装(4b)が皮剥ぎされた部分を含み、前記第2のシールド層(3b)のうち前記第2の外装(4b)が皮剥ぎされた前記部分は、前記第2のシールド層(3b)のうち前記第2の外装(4b)で被覆された一対の部分(310b)の間に介在し、前記可撓性シールドチューブ(5)の内面(51)は、前記露出部(31b)において前記第2のシールド層(3b)の前記外面(30b)に実質的に当接するように配置され、かつ/または、
前記第3のシールド電線(2c)の前記露出部(31c)は、前記第3のシールド層(3c)のうち、前記第3のシールド層(
3c)の前記外面(30c)が露出するように前記第3の外装(4c)が皮剥ぎされた部分を含み、前記第3のシールド層(3c)のうち前記第3の外装(4c)が皮剥ぎされた前記部分は、前記第3のシールド層(3c)のうち前記第3の外装(4c)で被覆された一対の部分(310c)の間に介在し、前記可撓性シールドチューブ(5)の内面(51)は、前記露出部(31c)において前記第3のシールド層(3c)の前記外面(30c)に実質的に当接するように配置され、
前記可撓性シールドチューブ(5)は、前記可撓性シールドチューブ(5)の前記内面(51)が、前記第1、第2、第3のシールド電線(2a,2b,2c)のうちの対応するシールド電線の前記露出部(31a,31b,31c)において、前記第1、第2、及び第3のシールド層(3a,3b,3c)の各々の前記外面(30a,30b,30c)に当接できるように、弾性変形可能な材料を備えている、スプライスケーブル(1)。
【請求項2】
前記可撓性シールドチューブ(5)は編組チューブである、請求項1に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項3】
前記第2のシールド電線(2b)および前記第3のシールド電線(2c)は、実質的に互いに隣接してかつ/または平行に配置されている、請求項1または請求項2に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの接続要素(6)をさらに備え、前記接続要素(6)は、前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第1のシールド電線(2a)、前記第2のシールド電線(2b)および前記第3のシールド電線(2c)に機械的かつ/または電気的に接続するように構成されている、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項5】
前記接続要素(6)は、少なくとも1つの第1の接着テープ(6a)および/または少なくとも1つの第2の接着テープ(6b)を有し、
前記第1の接着テープ(6a)は、前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第1のシールド電線(2a)に機械的かつ/または電気的に接続するよう、前記可撓性シールドチューブ(5)
の外面(52)の少なくとも一部分(520a)および前記第1の外装(4a)の外面(40a)の少なくとも一部分を包むように構成され、かつ/または
前記第2の接着テープ(6b)は、前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第2のシールド電線(2b)および前記第3のシールド電線(2c)に機械的かつ/または電気的に接続するよう、前記可撓性シールドチューブ(5)の前記外面(52)の少なくとも一部分(520b)、前記第2の外装(4b)の外面(40b)の少なくとも一部分、および前記第3の外装(4c)の外面(40c)の少なくとも一部分を包むように構成されている、請求項4に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項6】
前記接続要素(6)は、少なくとも1つの第1の結束バンドおよび/または少なくとも1つの第2の結束バンドを有し、
前記第1の結束バンドは、前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第1のシールド電線(2a)に機械的かつ/または電気的に接続するよう、前記可撓性シールドチューブ(5)
の外面(52)の少なくとも一部分(520a)を結束するように構成され、かつ/または
前記第2の結束バンドは、前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第2のシールド電線(2b)および前記第3のシールド電線(2c)に機械的かつ/または電気的に接続するよう、前記可撓性シールドチューブ(5)の前記外面(52)の少なくとも一部分(520b)を結束するように構成されている、請求項4または請求項5に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項7】
前記接続要素(6)は、少なくとも1つの第1のクランプおよび/または少なくとも1つの第2のクランプを有し、
前記第1のクランプは、前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第1のシールド電線(2a)に機械的かつ/または電気的に接続するよう、前記可撓性シールドチューブ(5)
の外面(52)の少なくとも一部分(520a)および前記第1の外装(4a)の外面(40a)の少なくとも一部分を圧着するように構成され、かつ/または
前記第2のクランプは、前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第2のシールド電線(2b)および前記第3のシールド電線(2c)に機械的かつ/または電気的に接続するよう、前記可撓性シールドチューブ(5)の前記外面(52)の少なくとも一部分(520b)、前記第2の外装(4b)の外面(40b)の少なくとも一部分、および前記第3の外装(4c)の外面(40c)の少なくとも一部分を圧着するように構成されている、請求項4、請求項5または請求項6のいずれか一項に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項8】
前記可撓性シールドチューブ(5)、前記第1の外装(4a)、前記第2の外装(4b)および前記第3の外装(4c)は、実質的に等しい厚さを有し、好ましくは、前記可撓性シールドチューブ(5)の厚さは、前記第1の外装(4a)、前記第2の外装(4b)および前記第3の外装(4c)の厚さよりも薄い、請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項9】
前記可撓性シールドチューブ(5)の前記第1の部分(50a)は、第1の開口(53a)を有し、前記可撓性シールドチューブ(5)の前記第2の部分(50b)は、第2の開口(53b)を有し、前記第1の開口(53a)の表面の広がりは、前記第2の開口(53b)の表面の広がりよりも
小さい、請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項10】
防水要素(9)をさらに備え、前記防水要素(9)は、前記可撓性シールドチューブ(5)を実質的に包むように構成され、前記防水要素(9)は、好ましくは、少なくとも前記可撓性シールドチューブ(5)上に成形されている、請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載のスプライスケーブル(1)。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載のスプライスケーブル(1)を備える電気回路。
【請求項12】
請求項
11に記載の電気回路を備える車両。
【請求項13】
ケーブル、特に高圧ケーブル(1)のスプライス接続方法であって、
第1のシールド電線(2a)であって、少なくとも第1の導体(7a)、および外面(30a)が第1の外装(4a)で被覆された第1のシールド層(3a)を有する第1のシールド電線(2a)を設ける工程、
第2のシールド電線(2b)であって、第2の導体(7b)および外面(30b)が第2の外装(4b)で被覆された第2のシールド層(3b)を有する第2のシールド電線(2b)を設ける工程、
第3のシールド電線(2c)であって、第3の導体(7c)、および外面(30c)が第3の外装(4c)で被覆された第3のシールド層(3c)を備える第3のシールド電線(2c)を設ける工程、
前記第1の導体(7a)を前記第2の導体(7b)および前記第3の導体(7c)に電気的に接続する工程、
第1の部分(50a)、および前記第1の部分(50a)に対して長手方向に隣接するかまたは離隔した第2の部分(50b)を有する可撓性シールドチューブ(5)を、前記可撓性シールドチューブ(5)の前記第1の部分(50a)が前記第1のシールド電線(2a)の露出部(31a)を実質的に包み、かつ前記可撓性シールドチューブ(5)の前記第2の部分(50b)が前記第2のシールド電線(2b)の露出部(31b)および前記第3のシールド電線(2c)の露出部(31c)の両方を実質的に包むように配置する工程、および
前記可撓性シールドチューブ(5)の前記第1の部分(50a)を前記第1のシールド層(3a)に電気的に接続し、前記可撓性シールドチューブ(5)の前記第2の部分(50b)を前記第2のシールド層(3b)および前記第3のシールド層(3c)の両方に電気的に接続する工程を含み、
前記第1のシールド電線(2a)の前記露出部(31a)は、前記第1のシールド層(3a)のうち、前記第1のシールド層(3a)の外面(30a)が露出するように前記第1の外装(4a)が皮剥ぎされた部分を含み、前記第1のシールド層(3a)の前記第1の外装(4a)が皮剥ぎされた前記部分は、前記第1のシールド層(3a)のうち前記第1の外装(4a)で被覆された一対の部分(310a)の間に介在し、前記可撓性シールドチューブ(5)の内面(51)は、前記露出部(31a)において前記第1のシールド層(3a)の前記外面(30a)に実質的に当接するように配置され、かつ/または
前記第2のシールド電線(2b)の前記露出部(31b)は、前記第2のシールド層(3b)のうち、前記第2のシールド層(3b)の前記外面(30b)が露出するように前記第2の外装(4b)が皮剥ぎされた部分を含み、前記第2のシールド層(3b)のうち前記第2の外装(4b)が皮剥ぎされた前記部分は、前記第2のシールド層(3b)のうち前記第2の外装(4b)で被覆された一対の部分(310b)の間に介在し、前記可撓性シールドチューブ(5)の内面(51)は、前記露出部(31b)において前記第2のシールド層(3b)の前記外面(30b)に実質的に当接するように配置され、かつ/または、
前記第3のシールド電線(2c)の前記露出部(31c)は、前記第3のシールド層(3c)のうち、前記第3のシールド層(
3c)の前記外面(30c)が露出するように前記第3の外装(4c)が皮剥ぎされた部分を含み、前記第3のシールド層(3c)のうち前記第3の外装(4c)が皮剥ぎされた前記部分は、前記第3のシールド層(3c)のうち前記第3の外装(4c)で被覆された一対の部分(310c)の間に介在し、前記可撓性シールドチューブ(5)の内面(51)は、前記露出部(31c)において前記第3のシールド層(3c)の前記外面(30c)に実質的に当接するように配置され、
前記可撓性シールドチューブ(5)は、前記可撓性シールドチューブ(5)の前記内面(51)が、前記第1、第2、第3のシールド電線(2a,2b,2c)のうちの対応するシールド電線の前記露出部(31a,31b,31c)において、前記第1、第2、及び第3のシールド層(3a,3b,3c)の各々の前記外面(30a,30b,30c)に当接できるように、弾性変形可能な材料を備えている、ケーブルのスプライス接続方法。
【請求項14】
前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第1のシールド電線(2a)に機械的かつ/または電気的に接続する少なくとも1つの接続要素(6)を設ける工程および/または
前記可撓性シールドチューブ(5)を前記第2のシールド電線(2b)および前記第3のシールド電線(2c)の両方に機械的かつ/または電気的に接続する少なくとも1つの接続要素(6)を設ける工程をさらに含む、請求項
13に記載のケーブルのスプライス接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプライスケーブル、特に高圧シールドスプライスケーブル、およびケーブル、特に高圧シールドケーブルのスプライス接続(SPLICING)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド電線、すなわちシールドケーブルは、共通のシールド層に取り囲まれた1つ以上の絶縁導体を備える電気ケーブルである。シールド層は、各絶縁導体を電磁ノイズから遮蔽するように構成されている。特に、シールド層により、信号に影響を及し得るのみならず上記ケーブルに電気的に接続されている機器および装置に干渉し得る電磁ノイズの影響を抑制することが可能となる。シールド層は、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された複数の編組素線を有する編組チューブであってもよい。あるいは、シールド層は、銅テープの非編組渦巻き巻線または導電性ポリマーの層であってもよい。シールド層は、通常、シールド電線の最外層に対応する外装ジャケットにより覆われている。
【0003】
シールド電線は、電磁ノイズの影響を抑制するために車両の高圧ワイヤハーネスにおいて一般に使用される。回路構造を簡略化するため、ケーブルスプライスが形成される場合が多い。ケーブルスプライスは、高圧回路において分岐を形成する。しかし、少なくとも1つの導体および導電性シールド層を備えるシールド電線は層状構造を有しているため、特に従来のケーブルスプライス接続技術を用いて、高圧シールドケーブルを有するスプライスケーブルを形成することはできない。実際、従来のスプライス接続技術では、ノンシールド電線の導体を接続することしかできない。
【0004】
しかし、高圧シールドケーブルをスプライス接続するための1つの技術が公知である。この公知の技術によれば、シールド層を電気的に接続するために剛性の金属ハウジングが使用される。一般に深絞り加工または金型鋳造加工によって成形される剛性の金属ハウジングは、隔離され、電気的に接続された導体を覆うように設けられている。剛性の金属ハウジングにより、スプライスにおいてシールドケーブルのシールド層間に電気的接続を形成することが可能となる。剛性の金属ハウジングはまた、圧着コネクタによりシールドケーブルに機械的に接続されている。加えて、剛性の金属ハウジングの下には、各導体を包み、シールド層から電気的に隔離するために、プラスチックハウジングが通常設けられている。最後に、金属ハウジングを覆うための防水要素が設けられ、スプライスケーブルに防水が施される。防水要素は、ゴムシールにより金属ハウジングに接続される場合がある。
【0005】
上記従来のスプライス接続技術の欠点は、スプライスケーブル内でシールド層を電気的に接続するために用いられる剛性の金属ハウジングに関連している。金属ハウジングの構造が剛性であるために、スプライス接続の形状は、金属ハウジングの形状によって決まる。換言すれば、剛性の金属ハウジングは、金属ハウジングの設計および/または形状と異なる構成で配置されたケーブルのスプライス接続には用いることができない。例えば、金属ハウジングが、3本のケーブルのうち2本がそれらの間に30°の角度が形成されるように配置された3本のケーブルのスプライス接続用に特別に設計されている場合、同じ金属ハウジングを、異なる角度、例えば、60°を形成するように配置されたケーブルのスプライス接続に用いることはできない。要するに、従来のスプライス接続技術で用いられている剛性の金属ハウジングは、金属ハウジングの設計および/または形状と異なる構成を有するシールドケーブルのスプライス接続に容易に適合させることはできない。
【0006】
従来のスプライス接続技術のさらなる短所は、シールドケーブルのスプライス接続に使用される多数の部品に関連している。上記技術によると、まず、導体が電気的に接続される。その後、各導体を包み、シールド層から電気的に隔離するために、第1のプラスチックハウジングが設けられる。このプラスチックハウジングは、通常、糊などの接着材またはネジなどの機械的手段によって互いに接続された一対の相補形シェルによって形成されている。次いで、隔離され、電気的に接続された導体およびプラスチックハウジングを覆うために、剛性の金属ハウジングが設けられる。この剛性の金属ハウジングは、圧着コネクタによってシールド層に接続される。最後に、剛性の金属ハウジングを覆うように防水要素を配置する。明らかに、上記公知のスプライス接続技術では、シールドケーブルのスプライス接続のために多数の組立部品および工程が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、スプライスケーブル、特に高圧スプライスケーブル、ならびに当該ケーブルを備える各電気回路および車両のより効率的な製造を可能にすることである。
【0008】
上記目的は、独立請求項の特徴によって解決され、特定の実施形態は従属請求項の主題である。
【0009】
一態様によれば、スプライスケーブル、特に高圧スプライスケーブルが提供され、当該スプライスケーブルは、第1のシールド電線であって、少なくとも1つの導体、および外面が第1の外装で被覆された第1のシールド層を有する第1のシールド電線と、第2のシールド電線であって、少なくとも1つの導体、および外面が第2の外装で被覆された第2のシールド層を有する第2のシールド電線と、第3のシールド電線であって、少なくとも1つの導体、および外面が第3の外装で被覆された第3のシールド層を有する第3のシールド電線とを備え、上記第1の導体は、上記第2の導体および上記第3の導体に電気的に接続され、上記スプライスケーブルは、可撓性シールドチューブであって、第1の部分、および上記第1の部分に対して長手方向に隣接するかまたは離隔した第2の部分を有する可撓性シールドチューブを備え、上記可撓性シールドチューブの上記第1の部分は、上記第1のシールド電線の露出部を実質的に包むように配置されるとともに、上記第1のシールド層に電気的に接続され、上記可撓性シールドチューブの上記第2の部分は、上記第2のシールド電線の露出部および上記第3のシールド電線の露出部の両方を実質的に包むように配置されるとともに、上記第2のシールド層および上記第3のシールド層に電気的に接続されている。一実施形態によれば、可撓性シールドチューブは、編組チューブであってもよい。有利には、可撓性シールド編組チューブは、シールド電線の構成に関係なく任意のシールド層を接続することができる。
【0010】
特に、上記第2のシールド電線および上記第3のシールド電線は、実質的に互いに隣接してかつ/または平行に配置されていてもよい。有利には、この構成により、上記スプライスケーブルによって接続されたシールド電線の損傷が防止されるか、少なくとも低減される。
【0011】
さらに特には、上記第1のシールド電線の上記露出部は、上記第1のシールド層のうち、上記第1のシールド層の外面が露出するように上記第1の外装が皮剥ぎされた部分を含んでいてもよく、第1のシールド層の上記第1の外装が皮剥ぎされた上記部分は、上記第1のシールド層のうち上記第1の外装で被覆された一対の部分の間に介在していてもよく、上記可撓性シールドチューブの内面は、上記露出部において上記第1のシールド層の上記外面に実質的に当接するように配置されていてもよく、かつ/または
上記第2のシールド電線の上記露出部は、上記第2のシールド層のうち、上記第2のシールド層の上記外面が露出するように上記第2の外装が皮剥ぎされた部分を含んでいてもよく、上記第2のシールド層のうち上記第2の外装が皮剥ぎされた上記部分は、上記第2のシールド層のうち上記第2の外装で被覆された一対の部分の間に介在し、上記可撓性シールドチューブの内面は、上記露出部において上記第2のシールド層の上記外面に実質的に当接するように配置されていてもよく、かつ/または、
上記第3のシールド電線の上記露出部は、上記第3のシールド層のうち、上記第3のシールド層の上記外面が露出するように上記第3の外装が皮剥ぎされた部分を含んでいてもよく、上記第3のシールド層のうち上記第3の外装が皮剥ぎされた上記部分は、上記第3のシールド層のうち上記第3の外装で被覆された一対の部分の間に介在し、上記可撓性シールドチューブの内面は、上記露出部において上記第3のシールド層の上記外面に実質的に当接するように配置されていてもよい。
【0012】
さらに特には、上記スプライスケーブルは、少なくとも1つの接続要素を備えていてもよく、接続要素は、上記可撓性シールドチューブを上記第1のシールド電線、上記第2のシールド電線および上記第3のシールド電線に機械的かつ/または電気的に接続するように構成されていてもよい。
【0013】
さらに特には、上記接続要素は、少なくとも1つの第1の接着テープおよび/または少なくとも1つの第2の接着テープを有していてもよい。上記第1の接着テープは、上記可撓性シールドチューブを上記第1のシールド電線に機械的かつ/または電気的に接続するよう、上記可撓性シールドチューブの上記外面の少なくとも一部分および上記第1の外装の外面の少なくとも一部分を包むように構成されていてもよく、上記第2の接着テープは、上記可撓性シールドチューブを上記第2のシールド電線および上記第3のシールド電線に機械的かつ/または電気的に接続するよう、上記可撓性シールドチューブの上記外面の少なくとも一部分、上記第2の外装の外面の少なくとも一部分、および上記第3の外装の外面の少なくとも一部分を包むように構成されていてもよい。有利には、可撓性シールドチューブとシールド層との間の接続処理が簡略化される。
【0014】
さらに特には、上記接続要素は、少なくとも1つの第1の結束バンドおよび/または少なくとも1つの第2の結束バンドを有していてもよい。上記第1の結束バンドは、上記可撓性シールドチューブを上記第1のシールド電線に機械的かつ/または電気的に接続するよう、上記可撓性シールドチューブの上記外面の少なくとも一部分を結束するように構成されていてもよい。上記第2の結束バンドは、上記可撓性シールドチューブを上記第2のシールド電線および上記第3のシールド電線に機械的かつ/または電気的に接続するよう、上記可撓性シールドチューブの上記外面の少なくとも一部分を結束するように構成されていてもよい。有利には、可撓性シールドチューブとシールド層との間の接続処理が簡略化される。
【0015】
さらに特には、上記接続要素は、少なくとも1つの第1のクランプおよび/または少なくとも1つの第2のクランプを有していてもよい。上記第1のクランプは、上記可撓性シールドチューブを上記第1のシールド電線に機械的かつ/または電気的に接続するよう、上記可撓性シールドチューブの上記外面の少なくとも一部分および上記第1の外装の外面の少なくとも一部分を圧着するように構成されていてもよい。上記第2のクランプは、上記可撓性シールドチューブを上記第2のシールド電線および上記第3のシールド電線に機械的かつ/または電気的に接続するよう、上記可撓性シールドチューブの上記外面の少なくとも一部分、上記第2の外装の外面の少なくとも一部分、および上記第3の外装の外面の少なくとも一部分を圧着するように構成されていてもよい。有利には、可撓性シールドチューブとシールド層との間の接続処理が簡略化される。
【0016】
さらに特には、上記可撓性シールドチューブ、上記第1の外装、上記第2の外装および上記第3の外装は、実質的に等しい厚さを有していてもよく、好ましくは、上記可撓性シールドチューブの厚さは、上記第1の外装、上記第2の外装および上記第3の外装の厚さよりも薄くてもよい。有利には、この構成により、シールドケーブルと可撓性シールドチューブとの間の接続部分における高低差の発生が防止されるか、少なくとも低減され、それにより、スプライスケーブルの防水性が向上する。
【0017】
さらに特には、上記可撓性シールドチューブの上記第1の部分は、第1の開口を有していてもよく、上記可撓性シールドチューブの上記第2の部分は、第2の開口を有していてもよく、上記第1の開口の表面の広がりは、上記第2の開口の表面の広がりよりも低い。
【0018】
さらに特には、上記スプライスケーブルは、防水要素をさらに備えていてもよく、上記防水要素は、上記可撓性シールドチューブを実質的に包むように構成されていてもよい。好ましくは、上記防水要素は、少なくとも上記可撓性シールドチューブ上に成形されていてもよい。
【0019】
別の態様によれば、上記記載に係るスプライスケーブルを備える電気回路が提供される。さらに、上記記載に係るスプライスケーブルを有する電気回路を備える車両も提供される。
【0020】
本発明のさらなる態様は、ケーブル、特に高圧ケーブルのスプライス接続方法に向けられており、当該方法は、
第1のシールド電線であって、少なくとも第1の導体、および外面が第1の外装で被覆された第1のシールド層を有する第1のシールド電線を設ける工程、
第2のシールド電線であって、第2の導体および外面が第2の外装で被覆された第2のシールド層を有する第2のシールド電線を設ける工程、
第3のシールド電線であって、第3の導体、および外面が第3の外装で被覆された第3のシールド層を備える第3のシールド電線を設ける工程、
上記第1の導体を上記第2の導体および上記第3の導体に電気的に接続する工程、
第1の部分、および上記第1の部分に対して長手方向に隣接するかまたは離隔した第2の部分を有する可撓性シールドチューブを、上記可撓性シールドチューブの上記第1の部分が上記第1のシールド電線の露出部を実質的に包み、かつ上記可撓性シールドチューブの上記第2の部分が上記第2のシールド電線の露出部および上記第3のシールド電線の露出部の両方を実質的に包むように配置する工程、および
上記可撓性シールドチューブの上記第1の部分を上記第1のシールド層に電気的に接続し、上記可撓性シールドチューブの上記第2の部分を上記第2のシールド層および上記第3のシールド層の両方に電気的に接続する工程を含む。
【0021】
特定の実施形態によれば、上記方法は、
上記可撓性シールドチューブを上記第1のシールド電線に機械的かつ/または電気的に接続する少なくとも1つの接続要素を設ける工程および/または
上記可撓性シールドチューブを上記第2のシールド電線および上記第3のシールド電線の両方に機械的かつ/または電気的に接続する少なくとも1つの接続要素を設ける工程をさらに含む。
【0022】
上記によると、シールドケーブルをスプライス接続するために必要な部品点数が低減されたスプライスケーブル、特に高圧スプライスケーブルが提供される。
【0023】
具体的には、組立工数がしかるべく低減された、(特に、高圧)シールドケーブルのスプライス接続のための技術が提供される。したがって、高圧シールドケーブルのスプライス接続プロセスが簡略化される。
【0024】
さらに、(特に、高圧)シールドケーブルのスプライス接続に使用することができ、かつシールドケーブルの構成の影響を受けない、汎用(特に、高圧)スプライスケーブル技術が提供される。
【0025】
しかも、上述のスプライスケーブルにより、軽量でかつ費用対効果の高いスプライス接続が可能となる。したがって、上記スプライスケーブルにより、ハイブリッド車両や電動車両などの高圧ネットワークの能力を効率的に拡張することも可能となる。
【0026】
本発明の上述の目的および他の目的、特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明および添付図面によって、より明らかとなろう。実施形態を個別に説明するが、それらの個々の特徴は、さらに別の実施形態と組み合わされ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るスプライスケーブルの前部の軸側投影図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るスプライスケーブルの後部の軸側投影図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態のスプライスケーブルの側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態のスプライスケーブルの平面図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係るケーブルのスプライス接続方法を示す平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係るケーブルのスプライス接続方法を示す平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係るケーブルのスプライス接続方法を示す平面図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に係るケーブルのスプライス接続方法を示す平面図である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態に係るケーブルのスプライス接続方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上記図面を参照し、本発明の一実施形態のスプライスケーブル1、特に高圧スプライスケーブルについてここで説明する。具体的には、スプライスケーブル1は、特に、1つの入力線と2つ(またはそれ以上)の出力線とを有するY字配電(またはスプリッタ)ユニットに接続して使用され得る。本明細書において、「高圧」という用語は、実質的に約40ボルトを超える電圧値(例えば、約48V)および/または約900Vまでの直流電圧の電圧値を特に意図したものである。さらに、スプリッタユニットとして機能する典型的なスプライスケーブルは、いくつかの高電圧部品に、例えば、約5A~約300Aの電力を分配することができる。
【0029】
したがって、実施形態に係るスプライスケーブル1は、電圧値が実質的に約40ボルトを超える電気回路における使用に適したスプライスケーブルである。
【0030】
図1~
図4を参照すると、スプライスケーブル1は、組み立てられた状態で示されている。スプライスケーブル1は、第1のシールド電線2a、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cを備える。
図1および
図2に示すように、第1のシールド電線2aは、スプライスケーブル1の第1の側100aに配置されており、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、スプライスケーブル1の第2の側100bに実質的に配置されている。スプライスケーブル1の第1の側100aは、スプライスケーブル1の第2の側100bに実質的に対向している。特に、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、実質的に隣接してかつ/または実質的に互いに平行に配置されていてもよい。好ましくは、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、特定の(事前に決定されるかまたは事前に決定可能な)距離にわたって、例えば、実質的に、シールド電線が互いに接続された領域において、実質的に互いに平行であってもよい。
【0031】
図1および
図2に示すように、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、実質的に互い分岐するように配置されていてもよい。換言すれば、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、互いの間に角度「α」を形成するように配置されていてもよい。角度「α」は、好ましくは、180°未満であってもよく、より好ましくは、90°未満であってもよく、さらに好ましくは、約45°であってもよい。
図10を参照すると、第1のシールド電線2aは、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cに電気的に接続されている。シールド電線2a、2bおよび2cは、スプライスケーブル1の中間(特に、中央)部100cにおいて電気的に接続されている。シールド電線2a、2b、2c間の電気的接続については、以下の節において詳述する。
【0032】
次に
図5に移り、第1のシールド電線2aの構造についてここで説明する。本発明の一実施形態に係るシールド電線の構造の詳細な説明は第1のシールド電線2aについてのみ行うが、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cもまた第1のシールド電線2aに関して以下に説明される構造に類似するかまたはこれと実質的に同様の構造を有する。換言すれば、第1のシールド電線2a、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、実質的に同じ構造を有する。
図5に示すように、第1のシールド電線2aは、少なくとも1つの導体7a、少なくとも1つの絶縁層8a、少なくとも1つの第1のシールド層3aおよび少なくとも1つの第1の外装4aをこの順で備える。特に、第1のシールド電線2aは、単一の導体7aを有していてもよい。あるいは、第1のシールド電線2aは、特に、撚り合わせられるかまたは互いに実質的に平行に配置された複数の導体7aを有していてもよい。
【0033】
導体7aは、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の電気エネルギーの伝導に適した任意の材料または電気エネルギーの伝導に適した他の金属材料で構成され得る単線および/または撚線を有していてもよい。特に、導体7aは、丸線として、すなわち、略円形状の断面を有して形成されていてもよい。あるいは、導体7aは、例えば、略正方形状、略矩形状、略六角形状等の略多角形状の断面を有していてもよい。第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、特に、類似の構造または実質的に同じ構造を有し、かつ/または、特に、第1のシールド電線2aの導体7aについて説明した材料と同じ材料で実質的に構成された、少なくとも1つの導体7bおよび少なくとも1つの導体7cをそれぞれ備える。少なくとも1つの導体7a、7b、7cは、特に、約2.5mm2~約120mm2の範囲の断面寸法を有していてもよい。
【0034】
図5を参照すると、第1のシールド電線2aは、電気絶縁性材料で形成された第1の絶縁層8aを備える。第1の絶縁層8aは、少なくとも1つの導体7aの外面を、導体7aが電気的に隔離されるよう、一体にあるいはひとまとまりに覆うように配置されている。第1の絶縁層8aは、導体7aを電気的に隔離するのに適した任意の材料で形成されていてもよい。例えば、絶縁層8aは、熱可塑性ポリマー材料から形成されていてもよい。特に、絶縁層8aは、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレン(PE)樹脂もしくはポリプロピレン(PP)樹脂、またはシリコーンゴム(SiR)等から形成されるかまたはこれを含んでいてもよい。第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、第2の絶縁層8bおよび第3の絶縁層8cをそれぞれ備える。絶縁層8bおよび8cは、類似の構造または同じ構造を実質的に有し、かつ/または、特に、第1のシールド電線2aの絶縁層8aに関して説明した材料と同じ材料で実質的に形成されている。
【0035】
引き続き
図5を参照すると、第1のシールド電線2aは、第1のシールド層3aを有する。第1のシールド層3aは、絶縁層8aの外面を一体にあるいはひとまとまりに覆うように配置されている。特に、第1のシールド層3aは、筒状の編組要素を有していてもよい。さらに特には、筒状の編組要素は、導電性材料で形成された複数の電線に編み組み処理または編み処理を施すことによって形成されていてもよい。例えば、筒状の編組要素を形成する電線は、任意の適した金属材料で形成されていてもよい。特に、シールド層3aは、電線2a、2bおよび2cに影響を与え得る電磁ノイズを抑制するのに適した金属材料で形成されていてもよい。好ましくは、シールド層3aは、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されていてもよい。シールド層3aの電線の表面は、例えば、ニッケルまたは銀または金でめっきが施されていてもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、第1のシールド層3aは、導電性(例えば、金属)箔または導電性(例えば、金属)テープを特に含む箔シールディングを有していてもよい。特に、シールド層3aは、編組シールド層と、導電性成分および非導電性成分を含む複合箔シールディング(ALU-PET箔など)との両方を備えていてもよく、複合箔の導電性成分は、編組シールド層に電気的に接触していてもよい。
【0036】
換言すれば、シールド層3aは、導体7aを電磁ノイズから遮蔽するように構成された層である。これに代えて、あるいはこれに加えて、第1のシールド層3aは、絶縁層8aの外面上に渦巻形構成を形成するように配置された金属箔を有していてもよい。説明はしないが、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cのそれぞれは、第2のシールド層3および第3のシールド層3cをそれぞれ備える。シールド層3bおよび3cは、実質的に同じ構造、構成、適合性を有し、かつ/または第1のシールド電線2aの第1のシールド層3aに関して説明した材料と同じ材料で実質的に形成されている。
【0037】
引き続き
図5を参照すると、第1のシールド電線2aは、第1の外装4aを備える。第1の外装4aは、シールド層3aの外面30aを一体にあるいはひとまとまりに覆うように配置されている。すなわち、第1のシールド層3aの外面30aは、第1の外装4aで一体にあるいはひとまとまりに被覆されている。
図5に示すように、外装4aは、第1のシールド電線2aの実質的に最も外側の層である。好ましくは、外装4aは、電気絶縁性材料を含む。より好ましくは、外装4aは、第1のシールド電線2aを電気的に隔離するように構成された材料で形成されてもよく、特に、防水性を付与するものであってもよい。特に、第1の外装4aは、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂もしくはポリプロピレン(PP)樹脂またはシリコーンゴム(SiR)等の熱可塑性ポリマー材料で形成されるかまたはこれを含んでいてもよい。具体的には説明しないが、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cのそれぞれは、第2の外装4bおよび第3の外装4cをそれぞれ備える。第2の外装4bおよび第3の外装4cは、実質的に同じ構造、構成、適合性を有し、かつ/または第1のシールド電線2aの第1の外装4aに関して説明した材料と同じ材料で構成されていてもよい。
【0038】
要約すると、第1のシールド電線2aに関して上記で説明した構造、配置および材料は、第2のシールド電線2bの構造、配置および材料ならびに/または第3のシールド電線2cの構造、配置および材料に実質的に対応していてもよい。換言すれば、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cは、特に、第1のシールド電線2aの導体7a、絶縁層8a、シールド層3aおよび/または外装4aに関して上記で説明した構造、配置、形状および材料と同じ構造、配置、形状および材料を含む。完全を期すため、
図8~
図14に示すように、第2のシールド電線2bは、第2の導体7b、第2の絶縁層8bと、外面30が第2の外装4bで被覆された第2のシールド層3bとを有する。第3のシールド電線2cは、第3の導体7cと、第3の絶縁層8cと、外面30が第3の外装4cで被覆された第3のシールド層3cとを有する。
【0039】
図7および
図10を参照すると、本発明の一実施形態に係るスプライスケーブル1において、第1のシールド電線2aの第1の導体7aは、第2のシールド電線2bの第2の導体7bおよび第3の導体7cの第3の導体7cとに電気的に接続されている。好ましくは、第1の導体7aは、
図7に詳細に示すように、第2の導体7bおよび第3の導体7cに溶接されていてもよい。より好ましくは、第1の導体7aは、第2の導体7bおよび/または第3の導体7cに、超音波溶接され、超音波を用いて溶接され、抵抗溶接され、磁気パルス溶接され、はんだ付けされ、ろう付けされ、かつまたは圧着されていてもよい。特に、第1の導体7a、第2の導体7bおよび/または第3の導体7cのそれぞれの端部は、実質的に互いに平行して配置され、それにより、互いに電気的に接続されていてもよい。特に、第1の導体7aは、
図7に示すように、第2の導体7bと第3の導体7cとの間に介在し、かつこれらと電気的に接続されていてもよい。
【0040】
次に
図7および
図11を参照すると、スプライスケーブル1は、スプライスケーブル1の中間(特に、中央)部100c、特に、導体7a、7bおよび7cが互いに電気的に接続された部分に設けられた隔離層10を備えていてもよい。特に、絶縁層10は、第1の導体7a、第2の導体7bおよび第3の導体7cをスプライスケーブル1の中間(特に、中央)部100c、特に、導体7a、7bおよび7cが互いに電気的に接続された部分を実質的に覆うように配置された熱収縮チューブ状要素および/または絶縁テープ(シリコーンテープなど)であるかまたはこれを有していてもよい。隔離層10は、導体7a、7bおよび7cを電気的に隔離するように構成された層であってもよい。例えば、隔離層10は、導体7a、7bおよび7cを電気的に隔離するのに適した材料を含んでいてもよい。加えて、隔離層10は、所与の温度を超えて加熱された際に収縮可能な材料で形成されるかまたはこれを含む収縮チューブ要素を備えていてもよく、それによって、加熱された際、収縮チューブ要素は収縮により、実質的に、その下にある電気的に接続された導体7a、7bおよび7cの形を取る。特に、隔離層10は、熱可塑性ポリマー材料であってもよい。具体的には、隔離層10は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、バイトン(登録商標)(特に、高温環境および/または腐食環境用)、ネオプレン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)および/またはカイナー(登録商標)を含む様々な熱プラスチックで形成されるかまたはこれらのうちのいずれかを含んでいてもよい。さらに具体的には、これらのポリマーの他に、隔離層10は、隔離層10を電気的に接続された導体7a、7bおよび7cなど、その下にある構造に対する接着を促進する接着ライニングおよび/またはその上に設けられた任意のテーピング(例えば、シリコーンテープ等)を含んでいてもよい。
【0041】
図11に示すように、隔離層10は、第1、第2および第3のシールド電線2a、2b、2cのそれぞれの絶縁層8a、8bおよび8cのそれぞれの少なくとも露出部分と重なるように構成されていてもよい。この構成によれば、隔離層10により、特に、第1のシールド電線2aの絶縁層8aを、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cのそれぞれの絶縁層8bおよび8cに継ぎ目なく接続することが可能となる。
【0042】
次に
図6~
図8および
図12を参照すると、スプライスケーブル1は、可撓性シールドチューブ5をさらに備える。シールドチューブ5は、可撓性要素として形成されており、すなわち、シールドチューブ5の形状は、シールドチューブ5によって包まれている部分の形状に実質的に適合させることが可能である。したがって、可撓性シールドチューブ5が略直線形状の要素を包んでいる場合、可撓性シールドチューブ5は、包まれている要素の形状に実質的に対応する略直線状の形状を概ね取ることができ、可撓性シールドチューブ5が略円弧状の要素を包んでいる場合、可撓性シールドチューブ5は、対応する略円弧状の形状を概ね取ることができる。可撓性シールドチューブ5は、電気的に接続された導体7a、7b、7cと、絶縁層8a、8b、8cの少なくとも一部と、電気的に接続された導体7a、7b、7cを包むかまたは囲む隔離層10と、第1のシールド層3a、第2のシールド層3bおよび第3のシールド層3cのそれぞれの少なくとも一部とを含む、スプライスケーブルのサブアセンブリ100dを一体にあるいはひとまとまりに包むように構成された略筒状の要素であってもよい。
【0043】
可撓性シールドチューブ5は、長手方向に互い隣接するかまたは離隔した第1の部分50aおよび第2の部分50bを有する。具体的には、可撓性シールドチューブ5の第1の部分50aは、可撓性シールドチューブ5の第1の端部であってもよく、可撓性シールドチューブ5の第2の部分50bは、可撓性シールドチューブ5の第1の端部に実質的に長手方向に対向する、可撓性シールドチューブ5の第2端部であってもよい。
図12に示すように、可撓性シールドチューブ5の第1の部分50aは、第1のシールド電線2aの露出部31aを実質的に包むかまたは囲むように配置され、可撓性シールドチューブ5の第2の部分50bは、第2のシールド電線2bの露出部31bおよび第3のシールド電線2cの露出部31cの両方を実質的に包むかまたは囲むように配置されている。特に、第1のシールド電線2a、第2のシールド電線2bおよび/または第3のシールド電線2cのそれぞれの露出部31a、31b、31cは、それぞれ、第1のシールド電線2a、第2のシールド電線2bおよび/または第3のシールド電線2cのそれぞれの露出端部であってもよい。
【0044】
さらに特には、第1のシールド電線2a、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cのそれぞれの露出部31a、31bおよび31cは、第1、第2および第3の外装4a、4b、4cの一部が皮剥ぎされて第1、第2および第3のシールド層3a、3b、3cのそれぞれの外面30a、30b、30cが露出した、第1、第2および第3のシールド層3a、3b、3cの露出部または露出端部であってもよい。
【0045】
引き続き
図6~
図8および
図12を参照すると、可撓性シールドチューブ5の第1の部分50aは、第1のシールド層3aに電気的に接続されるためのものであり、可撓性シールドチューブ5の第2の部分50bは、第2のシールド層3bと第3のシールド層3cとの両方に電気的に接続されるためのものである。
【0046】
図7および
図8に示すように、可撓性シールドチューブ5の第1の部分50aは、第1のシールド電線2aが配置される略円形状の第1の開口53aを規定している。したがって、可撓性シールドチューブ5の内面51は、可撓性シールドチューブ5と第1のシールドケーブル2aの第1のシールド層3aとの間に電気的接続が得られるよう、第1のシールド層3aの外面30aに実質的に当接するように配置されていてもよい。同様に、可撓性シールドチューブ5の第2の部分50bは、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cが配置される略円形状の第2の開口53bを規定している。特に、可撓性シールドチューブ5の内面51は、可撓性シールドチューブ5と第2のシールド電線2bの第2のシールド層3bとの間、および可撓性シールドチューブ5と第3のシールド電線2cの第3のシールド層3cとの間に電気的接続が得られるよう、第2のシールド層3bの外面30bおよび第3のシールド層3cの外面30cの両方に実質的に当接するように配置されていてもよい。
【0047】
特に、
図6および
図8に示すように、第1の開口の領域である、第1の部分50aにおける第1の開口53aの表面の広がり(断面B-B)は、可撓性シールドチューブ5の第2の部分50bにおける第2の開口53bの表面の広がり(断面D-D)よりも低くてもよく、第2の開口は、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cを包むように構成されている。換言すれば、可撓性シールドチューブ5は、特に、テーパ状の円錐形状を実質的に有するテーパ状チューブとして形成されていてもよい。
【0048】
特に、可撓性シールドチューブ5は、編組チューブであってもよい。好ましくは、編組チューブ5は、導電性材料で形成された複数の電線に編み組み処理または編み処理を施すことによって形成されていてもよい。例えば、可撓性シールドチューブ5を形成する電線は、電磁ノイズの影響を抑制するように構成された適切な金属材料で形成されていてもよい。可撓性シールドチューブ5は、銅、銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金、銅とポリエステル(モノフィラメントまたはマルチフィラメント)やアルミニウムとポリエステル(モノフィラメントまたはマルチフィラメント)などの金属樹脂複合体で形成されていてもよい。シールドチューブ5の電線の表面は、ニッケル、銀または金でめっきが施されていてもよい。
【0049】
したがって、シールド電線2a、2bおよび2cが電気的に接続されたスプライスケーブル1もまた、各シールド電線と同様、電磁ノイズの影響から遮蔽され得る。これに代えて、あるいはこれに加えて、可撓性シールドチューブ5は、電気的に接続された導体7a、7b、7cと、電気的に接続された導体7a、7b、7cを包む隔離層10と、第1のシールド層3a、第2のシールド層3bおよび第3のシールド層3cの少なくとも一部とを含む、スプライスケーブルのサブアセンブリ100dを包むように配置された金属箔(銅/PET箔またはアルミニウム/PET箔などの)または金属層を有していてもよい。
【0050】
さらに特には、可撓性シールドチューブ5は、可撓性シールドチューブ5がサブアセンブリ100dを弾性的に包むことを可能にする弾性特性あるいは弾力特性を可撓性シールドチューブ5に付与するように弾性変形可能な材料を備えていてもよい。換言すれば、可撓性シールドチューブ5は、その下にあるサブアセンブリ100dの形状を実質的に取るよう、弾性的あるいは弾力的にサブアセンブリ100dに付着するように構成されていてもよい。
【0051】
特に、
図6、
図8および
図10に示すように、第1のシールド電線2aの露出部31aは、第1のシールド層3aのうち、第1のシールド層3aの外面30aが露出するように第1の外装4aの一部が皮剥ぎされた部分を含んでいてもよい。好ましくは、第1のシールド層3aのうち第1の外装4aが皮剥ぎされた部分は、第1のシールド層3aのうち第1の外装4aで被覆された一対の部分310aの間に介在していてもよい。特に、可撓性シールドチューブ5の内面51は、外装4aで被覆された一対の部分310aの間の露出部31aにおいて第1のシールド層3aの外面30aに実質的に当接するように配置されていてもよい。より好ましくは、第1のシールド電線2aの露出部31aは、第1のシールド電線2aの露出端部であってもよい。
【0052】
特に、第2のシールド電線層2bの露出部31bは、第2のシールド層3bのうち、第2のシールド層3bの外面30bが露出するように第2の外装4bが皮剥ぎされた部分を含んでいてもよい。好ましくは、第2のシールド層3bのうち第2の外装4bが皮剥ぎされた部分は、そうされずに第2の外装4bで被覆された第2のシールド層3bの一対の部分310bの間に介在していてもよい。特に、可撓性シールドチューブ5の内面51は、外装4bで被覆された一対の部分310bの間に介在する露出部31bにおいて第2のシールド層3bの外面30bに実質的に当接するように配置されていてもよい。より好ましくは、第1のシールド電線2aの露出部31aは、第1のシールド電線2aの実質的に露出した端部であってもよい。特に、第3のシールド電線の露出部31cは、第3のシールド層3cのうち、第3のシールド層3cの外面30cが実質的に露出するように第3の外装4cが皮剥ぎされた部分を含んでいてもよい。第3のシールド層3cのうち第3の外装4cが皮剥ぎされた露出部は、第3のシールド層3cのうち第3の外装4cで被覆された一対の部分310cの間に介在していてもよい。特に、可撓性シールドチューブ5の内面51は、第3のシールド層の一対の部分310cの間に介在する露出部31cにおいて第3のシールド層3cの外面30cに実質的に当接するように配置されていてもよい。より好ましくは、第3のシールド電線2cの露出部31cは、実質的に、第3のシールド電線2cの露出端部であってもよい。
【0053】
あるいは、第1のシールド電線2aの露出部31aは、導体7aの皮剥ぎされた部分との間に介在し得る、第1のシールド層3aの露出端部を含んでいてもよく、導体7aの皮剥ぎされた部分は、第2の導体7bと、第3の導体7cと、第1のシールド層3aのうち第1の他の外装4aで被覆された部分とに電気的に接続されている。換言すれば、本実施形態によれば、第1のシールド層3aの露出部は、導体7aの露出部と第1の外装4aの一部分との間に介在していてもよい。同様に、第2のシールド電線層2bの露出部31bおよび第3のシールド電線層2cの露出部3cは、第1のシールド電線2aの露出部31aに関して説明したこのような別構成を有していてもよい。
【0054】
図6、
図8および
図10に示すように、スプライスケーブル1は、少なくとも1つの接続要素6をさらに備えていてもよい。接続要素6は、可撓性シールドチューブ5を第1のシールド電線2a、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cに機械的かつ/または電気的に接続するように構成された要素であってもよい。
【0055】
図6、
図8および
図10に示すように、接続要素6は、少なくとも1つの第1の接着テープ6aおよび/または少なくとも1つの第2の接着テープ6bを有していてもよい。接着テープ6a、6bは、電気を伝導する電線を電気的に絶縁することを可能にする電気絶縁性テープであってもよい。
図13に示すように、第1の接着テープ6aは、可撓性シールドチューブ5を第1のシールド電線2aに機械的かつ/または電気的に接続するよう、可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分520a、好ましくは、端部と、第1の外装4aの外面40aの少なくとも一部分とを包むかまたは囲むように実質的に構成されていてもよい。換言すれば、接着テープ6aは、例えば、可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分および第1の外装4aの外面40aの少なくとも一部分の両方を覆う渦巻形構成を実質的に形成することにより、スプライスケーブル1に巻き付けられていてもよい。この構成により、可撓性シールドチューブ5を第1のシールド電線2a、特に第1のシールド層3aに継ぎ目なく接続することができる。
【0056】
第2の接着テープ6bは、可撓性シールドチューブ5を第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cに機械的かつ/または電気的に接続するよう、可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分520b、好ましくは端部と、第2の外装4bの外面40bの少なくとも一部分と、第3の外装4cの外面40cの少なくとも一部分とを包むかまたは覆うように構成されていてもよい。換言すれば、第2の接着テープ6bは、可撓性シールドチューブ5の外面52ならびに第2および第3の外装4b、4cのそれぞれの外面40bおよび40cの両方を覆う渦巻形構成を実質的に形成することにより、スプライスケーブル1に巻き付けられていてもよい。この構成により、可撓性シールドチューブ5を第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2c、特に第2のシールド層3bおよび第3のシールド層3cに、実質的に継ぎ目なく、機械的かつ/または電気的に接続することができる。
【0057】
特に、少なくとも1つの接続要素6は、少なくとも1つの第1の結束バンドおよび少なくとも1つの第2の結束バンド(添付図面に図示せず)を有していてもよい。結束バンドは、可撓性シールドチューブ5の外面52を一体的に取り囲み、かつ、結束バンドを可撓性シールドチューブ5に結び付けた際に、可撓性シールドチューブ5をシールド電線2a、2b、2cの下側分(シールド電線のうち可撓性チューブ5によって包まれている部分、すなわち、シールド電線2a、2b、2cの露出部31a、31b、31c)上に永久的に結束するように構成されていてもよい。第1の結束バンドは、可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分520a、好ましくは端部を第1のシールド電線2aの第1のシールド層3aの下側の露出端部31aにわたって結束するように構成されていてもよい。この構成によれば、可撓性シールドチューブ5は、第1のシールド電線2a、特に第1のシールド層3aに、継ぎ目なく(電気的かつ/または機械的に)接続が可能である。
【0058】
第2の結束バンドは、可撓性シールドチューブ5の外面52のうち可撓性シールドチューブ5の外面52の他方の部分520aに長手方向において対向する少なくとも一部分520b、好ましくは、端部を結束するように構成されていてもよい。特に、第2の結束バンドは、可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分520bを第2のシールド電線および第3のシールド電線2bおよび2cの下側の露出部31bおよび31cにわたって結束するように構成されていてもよい。この構成によれば、可撓性シールドチューブ5は、したがって、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cに継ぎ目なく(電気的かつ/または機械的に)接続が可能である。
【0059】
特に、添付図面には図示されていないが、接続要素6は、第1のクランプもしくは圧着コネクタおよび/または第2のクランプもしくは圧着コネクタを有していてもよい。第1のクランプあるいは圧着コネクタは、可撓性シールドチューブ5を第1のシールド電線2aに機械的かつ/または電気的に接続するよう、可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分520a、好ましくは端部と、第1の外装4aの外面40aの少なくとも一部分とを包むかまたは囲み、かつこれらを一体に圧着する(変形によって)ように構成されていてもよい。第2のクランプまたは圧着コネクタは、可撓性シールドチューブ5を第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cに機械的かつ/または電気的に接続するよう、可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分520b、好ましくは端部と、第2の外装4bの外面40bの少なくとも一部分と、第3の外装4cの外面40cの少なくとも一部分とを包むかまたは囲み、かつこれらを一体に圧着する(変形によって)ように構成されていてもよい。
【0060】
特に、可撓性シールドチューブ5、第1の外装4a、第2の外装4bおよび第3の外装4cは、実質的に等しい厚さを有していてもよい。好ましくは、可撓性シールドチューブ5の厚さは、第1の外装4a、第2の外装4bおよび第3の外装4の厚さよりも薄くてもよい。有利には、第1、第2および第3の外装4a、4b、4cの厚さよりも薄い厚さを有するように可撓性シールドチューブ5を構成することにより、接着テープが巻きつけられる箇所において高低差が生じることが回避される。
【0061】
特に
図7~
図9および
図14に示すように、スプライスケーブル1は、防水要素またはケース9をさらに備えていてもよい。防水要素9は、スプライスケーブル1に防水性を付与するよう、可撓性シールドチューブ5をスプライスケーブル1の中央部100cにおいて実質的に包むように構成されていてもよい。防水要素9は、例えば、防水モールドであってもよい。防水要素9は、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーであってもよい。好ましくは、防水要素9は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂もしくはポリプロピレン樹脂またはポリウレタン樹脂(PUR)で形成されていてもよい。
【0062】
特に、防水要素9は、スプライスケーブル1のうち導体7a、7b、7cが電気的に接続された中央部100cと、可撓性シールドチューブ5と、接着テープ6a、6b等の接続要素6とを囲むように構成された2つの連結可能な相補形シェルを有していてもよい。
【0063】
スプライスケーブル1は、電気回路、特に高圧回路の一部であってもよい。換言すれば、スプライスケーブル1は、電気回路、特に高圧電気回路の分岐であってもよい。電気回路は、例えば、ハイブリッド車両や電動車両などの車両の電気回路であってもよい。応用例としては、電動モーター、充電ユニット、蓄電ユニット、高圧(HV)ユニット、空調コンプレッサおよび/または正温度係数(PTC)補助ヒータおよび/または充電ソケットから充電ユニットへの車両内接続に電力を提供するための電気回路が挙げられる。スプライスケーブル1は、自動車内、例えば、エンジンルーム内のセンサケーブル、制御ケーブルおよび/または電力ケーブルにも使用され得る。これに代えて、あるいはこれに加えて、スプライスケーブル1は、一般の電源線に関連して、また、電気通信分野において使用され得る。特に、スプライスケーブル1は、具体的には、スプリッタユニット、特に、具体的には1つの入力線および2つ(またはそれ以上)の出力線を有するY字配電(またはスプリッタ)ユニットとして使用され得る。
【0064】
次に
図10~
図14を参照し、本発明の一実施形態に係るケーブルのスプライス接続方法についてここで説明する。
【0065】
これに従い、第1のシールドケーブル2aを第2のシールドケーブル3aおよび第3のシールドケーブル4aにスプライス接続する。
【0066】
図10に示すように、特定の第1工程に従って、第1のシールド電線2a、第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cを設ける。第1のシールド電線2aは、第1の導体7a、および外面30aが第1の外装4aで被覆された第1のシールド層3aを有する。第2のシールド電線2bは、第2の導体7b、および外面30bが第2の外装4bで被覆された第2のシールド層3bを有する。第3のシールド電線2cは、第3の導体7c、および外面30cが第3の外装4cで被覆された第3のシールド層3cを有する。
【0067】
図10に示すように、特定の第2工程に従って、第1の導体7aを少なくとも第2の導体7bおよび/または第3の導体7bに電気的に接続する。導体7a、7bおよび7cを電気的に接続するため、各導体7a、7bおよび7c(特にその端部)を少なくとも部分的に露出させるように、各シールド電線2a、2b、2cの外装4a、4b、4c、シールド層3a、3b、3cおよび絶縁層8a、8b、8cを皮剥ぎする。第1の導体7aを、次いで、第2の導体7bおよび第3の導体7cに電気的に接続する。例えば、導体7a、7bおよび7cは、固相接合により、好ましくは超音波溶接により、電気的に接続してもよい。あるいは、各導体同士をはんだ付けしてもよい。またあるいは、導体7a、7bおよび7cを、これらの間に電気的接続が形成されるよう、実質的に互いに接触するように構成してもよい。好ましくは、導体7a、7bおよび7cは、これらの間の電気的接続を維持するよう、互いに機械的に接続(例えば、型締めなどにより)してもよい。
【0068】
特に、第1の導体7aを、第2の導体7bと第3の導体7cとの間に介在させ、かつ第1の側方の第2の導体7bおよび第2の側方の第3の導体7との両方に電気的に接続してもよい。
【0069】
図11に示すように、スプライス接続方法の特定の第3(任意)工程において、隔離層10を設けてもよい。隔離層10は、特に、スプライスケーブル1のうち導体7a、7b、7cが電気的に接続された中央部100cにおいて第1の導体7a、第2の導体7bおよび第3の導体7cを包んで覆うのに適した筒状要素であってもよい。隔離層10は、上述のような導体7a、7bおよび7cを電気的に隔離するように構成された層であってもよい。特に、隔離層10は、導体7a、7bおよび7cを電気的に隔離するのに適した材料を含んでいてもよい。
【0070】
加えて、隔離層10は、隔離層自体の材料に依存する所与の温度を超えて加熱された際に収縮可能な材料を(例えば、チューブ要素の形態で)含んでいてもよい。したがって、所与の温度を超えて加熱されると、隔離層10は、導体上で収縮するとともに、その下にある電気的に接続された導体7a、7bおよび7cの形を取る。
【0071】
図11に示すように、隔離層10は、まず、スプライスケーブル1上に、特に、スプライスケーブル1のうち導体7a、7b、7cが電気的に接続された中央部100cを覆うように、導入されてもよい。その後、隔離層10を、次いで、加熱素子(
図11においては不図示)によって加熱し、導体7a、7bおよび7c上で収縮させ、これらを埋め込んでもよい。あるいは、隔離層10を、スプライスケーブル1、特に電気的に接続された導体7a、7bおよび7cに巻き付けるかまたはテープ留めしてもよい。
【0072】
次に
図12を参照すると、上記方法の特定の第4工程に従って、可撓性シールドチューブ5を設ける。可撓性シールドチューブ5は、第1の部分50aと、第1の端部50aと長手方向に対向する第2の部分50bとを有し、可撓性シールドチューブ5の第1の部分50aは、第1のシールド電線2aの露出部31aを実質的に包むように構成され、可撓性シールドチューブ5の第2の部分50bは、第2のシールド電線2bの露出部31bおよび第3のシールド電線2cの露出部31cの両方を実質的に包むように構成されている。
図12に示すように、可撓性シールドチューブ5は、第1のシールド電線2aの露出部31a、第2のシールド電線2bの露出部31bおよび第3のシールド電線2cの露出部31cを実質的に包むように、スプライスケーブル1上に導入されてもよい。
【0073】
次いで、可撓性シールドチューブ5の第1の部分50aを第1のシールド層3aに電気的に(直接的にまたは間接的に)接続し、かつ/または可撓性シールドチューブ5の第2の部分50bを第2のシールド層3bおよび第3のシールド層3cの両方に電気的に接続する。これにより、可撓性シールドチューブ5のシールド機能が特に実現される。
【0074】
この関連において、
図13に示すように、また、スプライス接続方法の特定の第5工程に従って、可撓性シールドチューブ5を第1のシールド電線2a、第2のシールド電線2bおよび/または第3のシールド電線2cに機械的かつ/または電気的に接続するように構成された少なくとも1つの接続要素6を設ける。上述のように、接続要素6は、少なくとも1つの第1の接着テープ6aおよび/もしくは少なくとも1つの第2の接着テープ6bならびに/または少なくとも1つの第1の結束バンドおよび/もしくは少なくとも1つの第2の結束バンド、ならびに/または少なくとも1つの第1のクランプおよび/もしくは少なくとも1つの第2のクランプを有していてもよい。
図13は第1の接着テープ6aおよび第2の接着テープ6bを有する接続要素6を示しているが、接続要素6が結束バンドおよび/またはクランプを有する場合、接着テープに関して本明細書で説明した手順と同じ手順を用いることができる。
【0075】
図13に示すように、可撓性シールドチューブ5を第1のシールド電線2aに接続するように、第1の接着テープ6aを可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分520aおよび第1の外装4aの外面40aの少なくとも一部分に巻き付けてもよい。換言すれば、接着テープ6aを可撓性シールドチューブ5および第1の外装4aに巻き付けることにより、可撓性シールドチューブ5を第1のシールド電線2aに接続することができる。
【0076】
第2の接着テープ6bは、可撓性シールドチューブ5の外面52の少なくとも一部分520bと、第2の外装4bの外面40bの少なくとも一部分と、第3の外装4cの外面40cの少なくとも一部分とに巻き付けてもよい。したがって、第2の接着テープ6bをスプライスケーブル1の上記の部分に巻き付けることにより、可撓性シールドチューブ5を第2のシールド電線2bおよび第3のシールド電線2cに機械的に接続することができる。
【0077】
最後に、
図14に示すように、上記スプライス接続方法の特定の第6(任意)工程に従って、防水要素9を設けてもよい。防水要素9は、スプライスケーブル1に防水性を付与するよう、スプライスケーブル1の中央部100cにおいて可撓性シールドチューブ5を実質的に一体的に包むかまたは囲むように構成されてもよい。
【0078】
具体的には、防水要素1は、防水モールドであってもよい。防水要素9は、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーで形成されていてもよい。例えば、防水要素9は、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂もしくはポリプロピレン樹脂、またはポリウレタン樹脂(PUR)で形成されていてもよい。特に、防水要素は、スプライスケーブル1のうち導体が電気的に接続された中央部を実質的に包むように構成された2つ以上の連結可能な相補形シェルを有していてもよい。
図14に示すように、これら2つの相補形シェルは、可撓性シールドチューブ5を包む可撓性シールドチューブ5に被着してもよい。ひとたび防水ケース9によって包まれると、スプライスケーブル1は、実質的に防水となる。
【符号の説明】
【0079】
1 スプライスケーブル(高圧スプライスケーブル)
100a スプライスケーブルの第1の側
100b スプライスケーブルの第2の側
100c スプライスケーブルの中央部
100d スプライスケーブルのサブアセンブリ
2a,2b,2c 第1、第2および第3のシールド電線
3a,3b,3c 第1、第2および第3のシールド層
4a,4b,4c 第1、第2および第3の外装
5 可撓性シールドチューブ
6 接続要素
6a,6b 第1および第2の接着テープ
7a,7b,7c 第1、第2および第3の導体
8a,8b,8c 第1、第2および第3の絶縁層
9 防水要素またはケース
10 隔離層
30a,30b,30c 第1、第2、第3のシールド層の外面
31a,31b,31c 第1、第2および第3のシールド層の露出端部
40a,40b,40c 第1、第2および第3の外装の外面
50a,50b 可撓性シールドチューブの第1および第2の(端)部分
51 可撓性シールドチューブの内面
52 可撓性シールドチューブの外面
310a,310b,310c 外装で被覆された一対の部分
520a,520b 可撓性シールドチューブの外面の一部分
α 第2のシールド電線と第3のシールド電線との間に形成される角度