(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】道路劣化診断装置、道路劣化診断方法、及び、道路劣化診断プログラム
(51)【国際特許分類】
E01C 23/01 20060101AFI20241203BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241203BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
E01C23/01
G08G1/00 J
G08G1/13
(21)【出願番号】P 2023506401
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2021010379
(87)【国際公開番号】W WO2022195677
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-07-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】十文字 奈々
(72)【発明者】
【氏名】菅原 千里
(72)【発明者】
【氏名】中野 学
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-026353(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066117(WO,A1)
【文献】特開2007-309832(JP,A)
【文献】特開2019-175020(JP,A)
【文献】特開2013-139671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
G08G 1/00
G08G 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面状態とその路面状態における
画像に基づく道路劣化の検出結果の信頼度との関係を示す
第1の関係情報と、路面状態とその路面状態における加速度に基づく道路劣化の検出結果の信頼度との関係を示す第2の関係情報とを含む信頼度テーブルを記憶する記憶手段と、
移動体で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出する劣化検出手段と、
前記道路劣化の検出に用いた前記画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音を取得したときに前記移動体が走行した道路の路面状態を検出する路面状態検出手段と、
前記移動体で取得された前記画像に基づき前記道路劣化が検出された場合、前記信頼度テーブルの前記第1の関係情報に基づいて当該検出結果の信頼度を決定し、前記移動体で取得された前記加速度に基づき前記道路劣化が検出された場合、前記信頼度テーブルの前記第2の関係情報に基づいて当該検出結果の信頼度を決定する信頼度決定手段と、
を備えた、道路劣化診断装置。
【請求項2】
前記劣化検出手段は、前記移動体で取得された前記画像に基づき検出された前記道路劣化と、前記加速度に基づき検出された前記道路劣化と、から道路劣化の統合的な指標を算出し、
前記信頼度決定手段は、前記第1の関係情報に基づいて決定された前記道路劣化の検出結果の信頼度と、前記第2の関係情報に基づいて決定された前記道路劣化の検出結果の信頼度と、から前記統合的な指標の信頼度を決定する、
請求項
1に記載の道路劣化診断装置。
【請求項3】
前記移動体が走行した道路を表す地図上に、検出された前記道路劣化を示す情報と、決定された前記道路劣化の検出結果の信頼度を示す情報と、を重畳して表示させる表示制御手段をさらに備える、
請求項1
又は2に記載の道路劣化診断装置。
【請求項4】
前記道路の路面状態は、水濡れ、積雪、凍結、マンホール、及び、ジョイントのうちの一以上である、
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の道路劣化診断装置。
【請求項5】
前記信頼度決定手段は、前記路面状態が検出された場合に、前記道路劣化の検出結果の信頼度を、検出されない場合に比べて低くする、
請求項
4に記載の道路劣化診断装置。
【請求項6】
前記劣化検出手段は、前記路面状態が検出された場合に、前記音とともに取得された前記画像または前記加速度を、前記道路劣化の検出対象から除外する、
請求項
4に記載の道路劣化診断装置。
【請求項7】
路面状態とその路面状態における
画像に基づく道路劣化の検出結果の信頼度との関係を示す
第1の関係情報と、路面状態とその路面状態における加速度に基づく道路劣化の検出結果の信頼度との関係を示す第2の関係情報とを含む信頼度テーブルを記憶し、
移動体で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出し、
前記道路劣化の検出に用いた前記画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音を取得したときに前記移動体が走行した道路の路面状態を検出し、
前記移動体で取得された前記画像に基づき前記道路劣化が検出された場合、前記信頼度テーブルの前記第1の関係情報に基づいて当該検出結果の信頼度を決定し、前記移動体で取得された前記加速度に基づき前記道路劣化が検出された場合、前記信頼度テーブルの前記第2の関係情報に基づいて当該道路劣化の検出結果の信頼度を決定する、
道路劣化診断方法。
【請求項8】
コンピュータに、
路面状態とその路面状態における
画像に基づく道路劣化の検出結果の信頼度との関係を示す
第1の関係情報と、路面状態とその路面状態における加速度に基づく道路劣化の検出結果の信頼度との関係を示す第2の関係情報とを含む信頼度テーブルを記憶し、
移動体で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出し、
前記道路劣化の検出に用いた前記画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音を取得したときに前記移動体が走行した道路の路面状態を検出し、
前記移動体で取得された前記画像に基づき前記道路劣化が検出された場合、前記信頼度テーブルの前記第1の関係情報に基づいて当該検出結果の信頼度を決定し、前記移動体で取得された前記加速度に基づき前記道路劣化が検出された場合、前記信頼度テーブルの前記第2の関係情報に基づいて当該道路劣化の検出結果の信頼度を決定する、
処理を実行させる道路劣化診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路劣化診断装置、道路劣化診断方法、及び、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両により収集した画像や加速度を分析することにより道路劣化を検出するシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、道路に関する測定情報として、例えば車両の速度、車両の加速度、走行音、路面形状、外気温度、路面の摩擦係数、降雨量及び路面温度等を採用することが開示されている。また、特許文献2には、速度データや位置データ、音声データなどのセンシングデータに基づいて、道路の異常を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-153903号公報
【文献】特開2013-139671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような画像分析や加速度分析による道路劣化検出では、天候や路上の人工物等の影響によって、十分な精度の検出結果が得られないことがある。例えば、画像分析によるひび割れ率の算出では、雨天の場合、水溜まり等が路面に発生するため、ひび割れ率の値の精度が低くなる。また、加速度分析による道路劣化検出でも、例えば、IRI(International Roughness Index)の算出において、マンホールを通過した際の加速度が、マンホールの影響を受けることにより、IRIの値の精度が低くなる。
【0006】
このように、画像や加速度による道路劣化の検出結果は、天候や路上の人工物等の影響を受けるため、検出結果を提示する際に、それらの影響による検出結果の信頼度を提供することが望ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された技術では、道路劣化の検出の信頼度について考慮されていない。
【0008】
本開示の目的の一つは、上述の課題を解決し、画像や加速度による道路劣化検出において、検出結果の信頼度を提供できる、道路劣化検出装置、道路劣化検出方法、及び、記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様における道路劣化診断装置は、移動体で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出する劣化検出手段と、前記道路劣化の検出に用いた前記画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音取得時の路面状態を検出する路面状態検出手段と、検出した前記路面状態に基づき、前記道路劣化の検出結果の信頼度を決定する信頼度決定手段と、を備える。
【0010】
本開示の一態様における道路劣化診断方法は、移動体で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出し、前記道路劣化の検出に用いた前記画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音取得時の路面状態を検出し、検出した前記路面状態に基づき、前記道路劣化の検出結果の信頼度を決定する。
【0011】
本開示の一態様における記録媒体は、コンピュータに、移動体で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出し、前記道路劣化の検出に用いた前記画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音取得時の路面状態を検出し、検出した前記路面状態に基づき、前記道路劣化の検出結果の信頼度を決定する、処理を実行させるプログラムが記録された記録媒体。
【発明の効果】
【0012】
本開示の効果は、画像や加速度による道路劣化検出において、検出結果の信頼度を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態における、道路劣化診断システム10の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態における、道路劣化診断装置20の構成の例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における、センサ情報の例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態における、劣化情報の例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態における、信頼度決定処理を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態における、信頼度テーブルの例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態における、劣化情報の表示の例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態における、信頼度決定処理を示すフローチャートである。
【
図9】第2の実施形態における、検出対象テーブルの例を示す図である。
【
図10】第2の実施形態における、道路劣化の検出対象の判別結果の例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態における、劣化情報の例を示す図である。
【
図12】第2の実施形態における、劣化情報の表示の例を示す図である。
【
図13】第3の実施形態における、道路劣化診断装置1の構成を示すブロック図である。
【
図14】コンピュータ500のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。
(システム構成)
はじめに、第1の実施形態における、道路劣化診断システムの構成を説明する。
図1は、第1の実施形態における、道路劣化診断システム10の構成を示すブロック図である。
図1を参照すると、道路劣化診断システム10は、道路劣化診断装置20、表示装置30、移動体である、複数の車両40_1、40_2、…40_N(Nは自然数)(以下、まとめて、車両40とも記載)を含む。また、車両としては、自動車(自動四輪車)、自動二輪車や自転車等を含む。
【0015】
車両40は、ドライブレコーダーのカメラ等の撮像装置により、道路を走行しながら、道路(路面)の画像を撮像(取得)する。また、車両40は、道路を走行しながら、加速度センサにより、道路の路面の凹凸を加速度(上下方向の振動)として検出(取得)する。さらに、車両40は、道路を走行中に、小型のマイク等により音を取得する。小型のマイクは、例えば、車両40のフロントフェンダー内(タイヤハウスまたはホイールハウス)等、風切り音を抑えられる箇所に設置される。車両が走行する際に発する音である走行音は、取得する音の一例である。以下、本実施形態では、車両40の小型のマイク等により取得される音を、走行音として説明する。
【0016】
車両40は、GPS(Global Positioning System)等の位置検出センサにより、上述の画像、加速度、及び、走行音取得時の位置を取得する。車両40は、車両ID(IDentifier)、日時、位置、及び、当該日時、位置で取得した画像、加速度、走行音を含むセンサ情報を、道路劣化診断装置20へ送信する。ここで、加速度は、例えば、センサ情報の時刻の前後所定時間、あるいは、位置の前後所定距離の間で取得された加速度の時系列でもよい。同様に、走行音は、例えば、センサ情報の時刻の前後所定時間、あるいは、位置の前後所定距離の間で取得された走行音の時系列でもよい。
【0017】
道路劣化診断装置20は、車両40から送信されるセンサ情報に含まれる、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づいて、道路劣化を検出する。さらに、道路劣化診断装置20は、走行音に基づいて、路面状態を検出し、検出した路面状態に基づいて、道路劣化の検出結果に対する信頼度を算出する。道路劣化診断装置20は、道路劣化の検出結果及び信頼度を表示装置30に表示させる。
【0018】
道路劣化診断装置20及び表示装置30は、例えば、事業者の設備管理施設に配置される。道路劣化診断装置20及び表示装置30は、一体でも別体でもよい。また、道路劣化診断装置20は、事業者の設備管理施設以外に配置されてもよい。この場合、道路劣化診断装置20は、クラウドコンピューティングシステムにより実現されてもよい。
【0019】
センサ情報に基づく道路劣化の検出方法には、画像解析や加速度解析を用いた公知技術が用いられる。画像解析を用いた検出としては、例えば、AI(Artificial Intelligence)を用いて道路劣化を解析する方法が挙げられる。また、加速度解析を用いた検出としては、例えば、路面に対して垂直方向の加速度を用いた路面の凹凸の程度を検出する方法が挙げられる。また、走行音に基づく路面状態の検出方法には、例えば、走行音の音圧や周波数を用いて検出する方法が挙げられる。
【0020】
図2は、第1の実施形態における、道路劣化診断装置20の構成の例を示すブロック図である。道路劣化診断装置20は、
図2に示すように、センサ情報取得部21、センサ情報記憶部22、劣化検出部23、路面状態検出部24、信頼度決定部25、劣化情報記憶部26、及び、表示制御部27を含む。
【0021】
センサ情報取得部21は、車両40からセンサ情報を取得する。センサ情報取得部21は、取得したセンサ情報をセンサ情報記憶部22に出力する。
【0022】
センサ情報記憶部22は、センサ情報取得部21が出力したセンサ情報を記憶する。
【0023】
図3は、第1の実施形態における、センサ情報の例を示す図である。
図3に示すセンサ情報の例では、センサ情報の送信元の車両40を識別する車両ID、日時、位置、画像、加速度、及び、走行音に関する情報を含む。日時は、車両40が画像、加速度、及び、走行音を取得した日時を示す。位置は、画像及び加速度を取得した位置を示す。
【0024】
図3では、例えば、車両ID「Car01」の日時「T0001」及び「T0002」と、車両ID「Car02」の日時「T0201」及び「T0202」とは、異なる車両40で、異なる時間帯(または異なる日)に、同じ場所におけるセンサ情報であることを示している。
【0025】
劣化検出部23は、移動体である車両40で取得された、センサ情報に含まれる、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出する(道路劣化の度合いを示す指標の値を算出する)。劣化検出部23は、道路劣化の検出結果を、劣化情報として、劣化情報記憶部26に記憶させる。
【0026】
図4は、第1の実施形態における、劣化情報の例を示す図である。
図4の例では、劣化情報は、路面状態の検出結果、道路劣化の検出結果(劣化指標の算出結果)、及び、当該道路劣化の検出結果の信頼度、を含んでいる。
【0027】
路面状態検出部24は、センサ情報に含まれる走行音に基づき、センサ情報取得時(走行音取得時)の路面状態を検出する。路面状態検出部24は、劣化情報において、道路劣化の検出結果に関連付けて、路面状態を設定してもよい。
【0028】
信頼度決定部25は、検出した路面状態に基づき、道路劣化の検出結果の信頼度を決定する。信頼度決定部25は、劣化情報において、道路劣化の検出結果に関連付けて、信頼度を設定する。信頼度の決定方法については、後述する。
【0029】
劣化情報記憶部26は、劣化情報を記憶する。
【0030】
表示制御部27は、劣化情報を、所定の表示態様で、例えば、表示装置に表示させる。
【0031】
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
(信頼度決定処理)
信頼度決定処理について説明する。信頼度決定処理は、各車両40から送信されるセンサ情報に含まれる、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出し、当該センサ情報に含まれる走行音に基づき、路面状態を検出して、当該路面状態に基づき、道路劣化の検出に対する信頼度を決定する処理である。
【0032】
図5は、第1の実施形態における、信頼度決定処理を示すフローチャートである。
【0033】
道路劣化診断システム10において、道路劣化診断装置20のセンサ情報取得部21は、車両40から送信されるセンサ情報(例えば、車両ID、日時、位置、画像、加速度、及び、走行音)を取得する(ステップS11)。例えば、センサ情報取得部21は、
図3のようなセンサ情報を取得する。センサ情報取得部21は、取得したセンサ情報を、センサ情報記憶部22に記憶させる。
【0034】
劣化検出部23は、各センサ情報に含まれる、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出する(ステップS12)。劣化検出部23は、道路劣化の検出結果を、劣化情報として、劣化情報記憶部26に記憶させる。ここで、劣化検出部23は、上述したような公知の方法により、道路劣化の度合いを示す指標の値を算出する。劣化検出部23は、例えば、画像に基づき、ひび割れ率、わだち掘れ量を算出する。また、劣化検出部23は、例えば、加速度に基づき、平坦性、IRI値(International Roughness Index)を算出する。さらに、劣化検出部23は、算出したひび割れ率、わだち掘れ量、及び、平坦性に基づき、これらを統合した指標であるMCI(Maintenance Control Index)値を算出する。例えば、劣化検出部23は、
図3のセンサ情報に基づき、
図4のように道路劣化を検出(各指標の値を算出)する。
【0035】
路面状態検出部24は、各センサ情報に含まれる走行音に基づき、当該センサ情報取得時の路面状態を検出する(ステップS13)。路面状態検出部24は、検出した路面の状態を劣化情報に設定する。路面状態検出部24は、走行音の音圧や周波数を解析することにより、路面状態を検出する。路面状態検出部24は、路面状態の違いによる、走行音の特徴的な周波数や音圧等を予め学習しておくことで、走行音に基づく路面状態の検出を行う。路面状態検出部24は、路面状態として、天候による状態(乾燥(雨や雪等ではない)、水濡れ小(小雨で水溜りなし)、水濡れ大(水溜りあり)、積雪、凍結)や、人工物の存在(マンホール、ジョイント等)を検出する。例えば、例えば、劣化検出部23は、
図3のセンサ情報に基づき、
図4のように路面状態を検出する。
【0036】
信頼度決定部25は、ステップS13において検出した路面状態に基づき、各センサ情報に基づく道路劣化の検出結果の信頼度を決定する(ステップS14)。信頼度決定部25は、決定した信頼度を劣化情報に設定する。ここで、信頼度決定部25は、例えば、信頼度テーブルに基づき、信頼度を決定する。信頼度テーブルは、路面状態とその路面状態における道路劣化の検出結果の信頼度との関係を示すテーブルである。信頼度テーブルは、予め、管理者等により、図示しない信頼度テーブル記憶部等に保存されている。
【0037】
図6は、第1の実施形態における、信頼度テーブルの例を示す図である。信頼度は、
図6に示すように、画像に基づく道路劣化の検出結果に対する信頼度(以下、信頼度(画像)とも記載)と、加速度に基づく道路劣化の検出結果に対する信頼度(以下、信頼度(加速度)とも記載)と、に分けられている。これは、天候等による路面状態の違いにより、画像に基づく道路劣化の検出結果と、加速度に基づく道路劣化の検出結果とにおいて、信頼度に違いが生じるためである。
【0038】
例えば、路面状態が水濡れ小(小雨で水溜りなし)の場合、路面が濡れることで路面の色が濃くなり、劣化検出部23は、例えば、画像に基づく路面と、ひび割れとの区別が難しくなる。それに対して、加速度に基づく路面の凹凸の検出では、劣化検出部23は、小雨による路面の変化に影響を受けることなく検出できる。そのため、
図6の例では、路面状態が水濡れ小の場合、信頼度(画像)が「中」、信頼度(加速度)が「高」になっている。
【0039】
また、路面状態が水濡れ大(水溜りあり)の場合、路面のひびに水溜りができることで、劣化検出部23は、例えば、画像に基づいてひび割れを検出できない。それに対して、加速度に基づく路面の凹凸の検出では、劣化検出部23は、水溜り等の影響を受けることなく検出できる。そのため、
図6の例では、路面状態が水濡れ大の場合、信頼度(画像)が「低」、信頼度(加速度)が「高」になっている。
【0040】
また、
図6の例では、水濡れ小及び水濡れ大の場合以外、信頼度(画像)と、信頼度(加速度)とは、同じである。
【0041】
なお、信頼度テーブルにおいて信頼度が「中」や「低」に対応する路面状態を、第1の状態とも記載する。
【0042】
信頼度決定部25は、画像に基づく道路劣化の検出結果(例えば、ひび割れ率、わだち掘れ量)に対しては、検出した路面状態に対応する信頼度(画像)を付与する。また、信頼度決定部25は、加速度に基づく道路劣化の検出結果(例えば、平坦性、IRI)に対しては、検出した路面状態に対応する信頼度(加速度)を付与する。さらに、信頼度決定部25は、MCIのように、画像に基づく道路劣化の検出結果と加速度に基づく道路劣化の検出結果とから算出される統合的な指標について、信頼度(画像)と信頼度(加速度)とに基づき所定のルールにより決定した信頼度(以下、信頼度(統合)とも記載)を付与してもよい。この場合、信頼度決定部25は、例えば、信頼度(画像)と信頼度(加速度)とのうち低い方を信頼度(統合)としてもよい。
【0043】
例えば、信頼度決定部25は、
図6の信頼度テーブルを用いて、
図4のように、信頼度を決定する。より具体的には、日時「T0001」及び「T0002」において、路面状態が「乾燥」であるため、信頼度決定部25は、
図6の信頼度テーブルを参照して、ひび割れ率、わだち掘れ量に対する信頼度(画像)に「高」、平坦性、IRIに対する信頼度(加速度)に「高」、MCIに対する信頼度(統合)に「高」を付与する。また、日時「T0101」及び「T0102」では、路面状態が「水濡れ小」であるため、信頼度決定部25は、
図6の信頼度テーブルを参照して、ひび割れ率、わだち掘れ量に対する信頼度(画像)に「中」、平坦性、IRIに対する信頼度(加速度)に「高」、MCIに対する信頼度(統合)に「中」を付与する。また、日時「T0201」及び「T0202」では、日時「T0001」及び「T0002」と同じ位置でセンサ情報が取得されているが、路面状態が「水濡れ大」で異なる。信頼度決定部25は、日時「T0201」及び「T0202」において、ひび割れ率、わだち掘れ量に対する信頼度(画像)に「低」、平坦性、IRIに対する信頼度(加速度)に「高」、MCIに対する信頼度(統合)に「低」を付与する。
【0044】
表示制御部27は、劣化情報を、所定の表示態様で、例えば、表示装置30に表示させる(ステップS15)。ここで、表示制御部27は、劣化情報に含まれる道路劣化の検出結果を、当該検出結果に対する信頼度とともに表示させる。
【0045】
図7は、第1の実施形態における、劣化情報の表示の例を示す図である。表示制御部27は、例えば、道路地図上の各道路区間について、ユーザにより指定された日時の検出結果(指標の値)と信頼度を表示させる。ここで、表示制御部27は、例えば、算出された指標のうち、ユーザにより選択された指標の値を、その値に応じたレベルの表示態様で、表示させる。また、表示制御部27は、選択された指標に対する信頼度を、その信頼度の表示態様で表示させる。
【0046】
図7の例では、指標としてMCIが選択されており、各道路区間について、MCIの値に応じたレベル「大」、「中」及び「小」が、それぞれを異なる濃淡の矩形で表示されている。また、
図7の例では、各道路区間について、MCIに対する信頼度(統合)「高」、「中」及び「低」が、それぞれ記号「H」、「M」及び「L」で表示されている。
【0047】
さらに、表示制御部27は、表示された矩形がクリックやタップ、マウスオーバーされた場合、当該矩形の位置の路面状態、各指標の値、及び、信頼度を表示させてもよい。例えば、
図7の例では、矩形A1が、クリックやタップ、マウスオーバーされた場合に、矩形A1の位置の路面状態、各指標の値、及び、信頼度が、「劣化検出の詳細」に表示されている。
【0048】
以上により、第1の実施形態の動作が完了する。
【0049】
なお、上述した説明では、ステップS12の道路劣化を検出する処理を、ステップS13の路面状態を検出する処理を先に行ったが、ステップS13を先に行ってもよい。また、道路劣化の検出結果の表示態様として矩形を用いたが、これに限らず、矢印等の他の表示態様で、道路劣化の検出結果を表示させてもよい。さらに、道路劣化の検出結果を濃淡で表し、その信頼度を記号で表したが、それらに限らず、道路劣化の検出結果を色の違いで表し、その信頼度を濃淡で表してもよい。
(第1の実施形態の効果)
第1の実施形態によれば、画像や加速度による道路劣化検出において、検出結果の信頼度を提供できる。その理由は、劣化検出部23が、車両40で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出し、路面状態検出部24が、道路劣化の検出に用いた画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音取得時の路面状態を検出し、信頼度決定部25が、検出した路面状態に基づき、道路劣化の検出結果の信頼度を決定するためである。
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、道路劣化診断装置20が、信頼度の低い画像や加速度を用いた道路劣化の検出を行わないようにする。第2の実施形態における道路劣化診断装置20の構成は、第1の実施形態における道路劣化診断装置20の構成と同様である。ただし、信頼度の低い画像や加速度を用いた道路劣化の検出を行わないようにするために、第2の実施形態における道路劣化診断装置20では、劣化検出部23の動作が第1の実施形態と異なる。第2の実施形態において、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
第2の実施形態における道路劣化診断装置20では、劣化検出部23は、路面状態検出部24により走行音に基づいて検出された路面状態が所定の状態(後述する第2の状態)である場合に、当該走行音とともに取得された画像及び加速度のうち少なくとも一方を、道路劣化の検出対象から除外する。
【0051】
次に、第2の実施形態の動作について説明する。
(信頼度決定処理)
図8は、第2の実施形態における、信頼度決定処理を示すフローチャートである。
【0052】
まず、センサ情報取得部21は、車両40から送信されるセンサ情報(例えば、車両ID、日時、位置、画像、加速度、及び、走行音)を取得する(ステップS21)。
【0053】
路面状態検出部24は、各センサ情報に含まれる走行音に基づき、当該センサ情報取得時の路面状態を検出する(ステップS22)。
【0054】
劣化検出部23は、ステップS22において検出された路面状態に基づいて、センサ情報に含まれる画像及び加速度のうち少なくとも一方を道路劣化の検出対象とするかどうかを判別する(ステップS23)。ここで、劣化検出部23は、例えば、検出対象テーブルに基づき、道路劣化の検出対象から除外するか否かを決定する。検出対象テーブルは、路面状態とその路面状態におけるセンサ情報に含まれる画像や加速度を道路劣化の検出対象とするかどうか(要/否)を示すテーブルである。検出対象テーブルは、予め、管理者等により、図示しない検出対象テーブル記憶部等に保存されている。
【0055】
図9は、第2の実施形態における、検出対象テーブルの例を示す図である。
図9の検出対象テーブルでは、
図6の信頼度テーブルで信頼度が「低」の路面状態に対応する劣化検出対象に「否」が設定されている。劣化検出部23は、検出した路面状態が、例えば、「水濡れ大」、「積雪」、「凍結」、「マンホール」、及び、「ジョイント」のような場合、路面状態の検出に使用した走行音を含むセンサ情報の画像を道路劣化の検出対象から除外する。また、劣化検出部23は、検出した路面状態が、例えば、「積雪」、「凍結」、「マンホール」、及び、「ジョイント」のような場合、路面状態の検出に使用した走行音を含むセンサ情報の加速度を道路劣化の検出対象から除外する。
【0056】
なお、検出対象テーブルにおいて劣化検出対象が「否」に対応する路面状態を、第2の状態とも記載する。
【0057】
図10は、第2の実施形態における、道路劣化の検出対象の判別結果の例を示す図である。
図10の例では、太字で表された画像が道路劣化の検出対象から除外されることを示している。例えば、路面状態検出部24は、
図3のセンサ情報に対して、
図10のように路面状態を検出する。そして、劣化検出部23は、
図9の検出対象テーブルを用いて、
図10のように、検出対象から除外する画像や加速度を決定する。より具体的には、日時「T0201」及び「T0202」において、路面状態が「水濡れ大」と検出されているので、劣化検出部23は、太字で表された画像「P0201」及び「P0202」を道路劣化の検出対象から除外する。
【0058】
劣化検出部23は、各センサ情報において、ステップS23において道路劣化の検出対象とした画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出する(ステップS24)。劣化検出部23は、例えば、
図10において、道路劣化の検出対象とした画像、及び、加速度に基づいて、道路劣化を検出する。
【0059】
信頼度決定部25は、ステップS22において検出した路面状態に基づき、各センサ情報に基づく道路劣化の検出結果の信頼度を決定する(ステップS25)。
【0060】
図11は、第2の実施形態における、劣化情報の例を示す図である。例えば、信頼度決定部25は、
図6の信頼度テーブルを用いて、
図11のように、信頼度を決定する。
図11の例では、日時「T0201」及び「T0202」において、道路劣化の検出対象から除外された画像に基づく道路劣化の指標である「ひび割れ率」及び「わだち掘れ量」が算出されていない。また、画像に基づく道路劣化の指標と、加速度に基づく道路劣化の指標とを統合した劣化指標である「MCI値」も算出されていない。
【0061】
表示制御部27は、劣化情報を、所定の表示態様で、例えば、表示装置に表示させる(ステップS15)。
図12は、第2の実施形態における、劣化情報の表示の例を示す図である。
図12の例では、
図7に示した第1の実施形態における劣化情報の表示の例と異なり、信頼度「低」となる道路劣化の検出が予め除外されているので、信頼度が「H」及び「M」の二種類が表示されている。
【0062】
以上により、第2の実施形態の動作が完了する。
(第2の実施形態の効果)
第2の実施形態によれば、画像や加速度による道路劣化検出を効率的に実行できる。その理由は、劣化検出部23が、路面状態として所定の状態が検出された場合に、当該所定の状態が検出された音とともに取得された画像及び加速度のうち少なくとも一方を、道路劣化の検出対象から除外するためである。これにより、低い信頼度の道路劣化検出結果しか得られない画像や加速度を検出対象から予め除外することができ、検出処理が効率化される。
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。
【0063】
図13は、第3の実施形態における、道路劣化診断装置1の構成を示すブロック図である。
図13を参照すると、道路劣化診断装置1は、劣化検出部2、路面状態検出部3、及び、信頼度決定部4を含む。劣化検出部2、路面状態検出部3、及び、信頼度決定部4は、それぞれ、劣化検出手段、路面状態検出手段、及び、信頼度決定手段の一実施形態である。
【0064】
劣化検出部2は、移動体で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出する。路面状態検出部3は、道路劣化の検出に用いた画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音取得時の路面状態を検出する。信頼度決定部4は、検出した前記路面状態に基づき、道路劣化の検出結果の信頼度を決定する。
【0065】
次に、第3の実施形態の効果を説明する。
【0066】
第3の実施形態によれば、画像や加速度による道路劣化検出において、検出結果の信頼度を提供できる。その理由は、劣化検出部2が、移動体で取得された、画像及び加速度のうち少なくとも一方に基づき、道路劣化を検出し、路面状態検出部3が、道路劣化の検出に用いた画像及び加速度のうち少なくとも一方とともに取得された音に基づき、当該音取得時の路面状態を検出し、信頼度決定部4が、検出した前記路面状態に基づき、道路劣化の検出結果の信頼度を決定するためである。
【0067】
(ハードウェア構成)
上述した各実施形態において、道路劣化診断装置1、20の各構成要素は、機能単位のブロックを示している。各装置の各構成要素の一部又は全部は、コンピュータ500とプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。このプログラムは、不揮発性記録媒体に記録されていてもよい。不揮発性記録媒体は、例えば、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)やDVD(Digital Versatile Disc)、SSD(Solid State Drive)、等である。
【0068】
図14は、コンピュータ500のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図14を参照すると、コンピュータ500は、例えば、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、プログラム504、記憶装置505、ドライブ装置507、通信インタフェース508、入力装置509、出力装置510、入出力インタフェース511、及び、バス512を含む。
【0069】
プログラム504は、各装置の各機能を実現するための命令(instruction)を含む。プログラム504は、予め、ROM502やRAM503、記憶装置505に格納される。CPU501は、プログラム504に含まれる命令を実行することにより、各装置の各機能を実現する。例えば、道路劣化診断装置1、20のCPU501がプログラム504に含まれる命令を実行することにより、センサ情報取得部21、劣化検出部23、路面状態検出部24、信頼度決定部25、及び、表示制御部27の機能を実現する。また、RAM503は、各装置の各機能において処理されるデータを記憶してもよい。例えば、道路劣化診断装置1、20のRAM503が、センサ情報記憶部22、及び、劣化情報記憶部26のデータ(センサ情報及び劣化情報)等を記憶してもよい。
【0070】
ドライブ装置507は、記録媒体506の読み書きを行う。通信インタフェース508は、通信ネットワークとのインタフェースを提供する。入力装置509は、例えば、マウスやキーボード等であり、オペレータ等からの情報の入力を受け付ける。出力装置510は、例えば、ディスプレイであり、オペレータ等へ情報を出力(表示)する。入出力インタフェース511は、周辺機器とのインタフェースを提供する。バス512は、これらハードウェアの各構成要素を接続する。なお、プログラム504は、通信ネットワークを介してCPU501に供給されてもよいし、予め、記録媒体506に格納され、ドライブ装置507により読み出され、CPU501に供給されてもよい。
【0071】
なお、
図14に示されているハードウェア構成は例示であり、これら以外の構成要素が追加されていてもよく、一部の構成要素を含まなくてもよい。
【0072】
各装置の実現方法には、様々な変形例がある。例えば、各装置は、構成要素毎にそれぞれ異なるコンピュータとプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。また、各装置が備える複数の構成要素が、一つのコンピュータとプログラムとの任意の組み合わせにより実現されてもよい。
【0073】
また、各装置の各構成要素の一部または全部は、プロセッサ等を含む汎用または専用の回路(circuitry)や、これらの組み合わせによって実現されてもよい。これらの回路は、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0074】
また、各装置の各構成要素の一部又は全部が複数のコンピュータや回路等により実現される場合、複数のコンピュータや回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。
【0075】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施形態における構成は、本開示のスコープを逸脱しない限りにおいて、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1、20 道路劣化診断装置
2、23 劣化検出部
3、24 路面状態検出部
4、25 信頼度決定部
10 道路劣化診断システム
21 センサ情報取得部
22 センサ情報記憶部
26 劣化情報記憶部
27 表示制御部
500 コンピュータ
501 CPU
502 ROM
503 RAM
504 プログラム
505 記憶装置
506 記録媒体
507 ドライブ装置
508 通信インタフェース
509 入力装置
510 出力装置
511 入出力インタフェース
512 バス