(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】アスファルトフィニッシャ、アスファルトフィニッシャの施工支援システム
(51)【国際特許分類】
E01C 19/48 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
E01C19/48 A
(21)【出願番号】P 2023511312
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022015211
(87)【国際公開番号】W WO2022210614
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2021057824
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】美濃 寿保
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-031908(JP,U)
【文献】実開平04-122709(JP,U)
【文献】国際公開第2020/196539(WO,A1)
【文献】特開2018-190228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタと、
前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、
前記ホッパ内の前記舗装材を前記トラクタの後側へ搬送するコンベアと、
前記コンベアにより搬送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、
前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、
アスファルトフィニッシャの前方から近づくダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれに関するデータを取得する取得部と、
オペレータから受け付けられる所定の入力、又は、撮像装置若しくは距離センサにより取得される、アスファルトフィニッシャの前方の様子を表すデータに基づき、前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記取得部により取得されるデータに基づき、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれ
量を表す第1の情報
、又は、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれを抑制するための戻し量を表す第2の情報を
前記ダンプトラックの運転者が認識可能なように前記ダンプトラックに向かって出力する出力部、及び
前記所定の入力、又は、前記撮像装置若しくは前記距離センサにより取得されるデータに基づき、前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記取得部により取得されるデータに基づき、前記第1の情報
又は前記第2の情報を
前記ダンプトラックの運転者に通知するために外部に送信する送信部の少なくとも一方と、を備える、
アスファルトフィニッシャ。
【請求項2】
前記出力部を備える場合、前記出力部は、
前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記ダンプトラックが前記ホッパに対する前記舗装材の供給のための所定位置に到達するまでの残りの距離
に関する情報を前記
ダンプトラックの運転者が認識可能なように前記ダンプトラックに向かって出力し、
前記送信部を備える場合、前記送信部は、
前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記ダンプトラックが前記ホッパに対する前記舗装材の供給のための前記所定位置に到達するまでの残りの距離に関する情報を
前記ダンプトラックの運転者に通知するために前記外部に送信する、
請求項
1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項3】
前記第1の情報は、前
記ずれ
量が所定範囲から逸脱する場合における前記所定範囲からの逸脱量を表す情報であり、
前記第2の情報は、前
記ずれ
量が前記所定範囲から逸脱する場合における前記所定範囲からの逸脱状態を解消するための
、又は前記ずれ量をゼロにするための前記戻し量
を表す情報
である、
請求項1
又は2に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項4】
前記第1の情報は、前記ずれ量が所定範囲から逸脱する場合における第1の注意喚起情報であって、前記ずれ量の前記所定範囲からの逸脱の程度に応じ
て内容
が可変さ
れる前記第1の注意喚起情報である、
請求項
1又は2に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項5】
前記第1の注意喚起情報は、前記ずれ量の前記所定範囲からの逸脱の程度が相対的に小さい
場合、前記所定範囲から逸脱していることを通知する情報、又は前記所定範囲に対する前記ずれ量の逸脱状態からの解消を促す情報
であり、前記ずれ量の前記所定範囲からの逸脱の程度が相対的に大きい
場合、前記ダンプトラックの減速又は停止を指示する情報
である、
請求項
4に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項6】
前記出力部を備える場合、前記出力部は、
前記撮像装置又は前記距離センサにより取得されるデータに基づき、アスファルトフィニッシャの前方から後退して近づいてくる、又はその可能性のある前記ダンプトラックが認識されると、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれに関する情報を前記ダンプトラックに向かって出力する動作を開始し、
前記送信部を備える場合、前記送信部は、
前記撮像装置又は前記距離センサにより取得されるデータに基づき、アスファルトフィニッシャの前方から後退して近づいてくる、又はその可能性のある前記ダンプトラックが認識されると、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれに関する情報を前記外部に送信する動作を開始する、
請求項1
乃至5
の何れか一項に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項7】
前記出力部を備える場合、前記出力部は、
前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの間に所定の物体が存在する場合、
前記ダンプトラックの運転者が認識可能なように前記ダンプトラックに向かって第2の注意喚起情報を出力し、
前記送信部を備える場合、前記送信部は、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの間に前記所定の物体が存在する場合、
前記ダンプトラックの運転者に通知するために前記外部に前記第2の注意喚起情報を送信する、
請求項1
乃至6の何れか一項に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項8】
前記出力部は、前記ダンプトラックに向かって情報を表示する表示部、及び前記ダンプトラックに向かって情報を音で出力する音出力部の少なくとも一方を含む、
請求項1
乃至7
の何れか一項に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項9】
トラクタと、前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、前記ホッパ内の前記舗装材を前記トラクタの後側へ搬送するコンベアと、前記コンベアにより搬送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、を有するアスファルトフィニッシャの施工支援システムであって、
アスファルトフィニッシャの前方から近づくダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれに関するデータを取得する取得部と、
オペレータから受け付けられる所定の入力、又は、撮像装置若しくは距離センサにより取得される、アスファルトフィニッシャの前方の様子を表すデータに基づき、前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記取得部により取得されるデータに基づき、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれ
量を表す第1の情報
、又は、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれを抑制するための戻し量を表す第2の情報を前記ダンプトラックに向かって出力する出力部、及び
前記所定の入力、又は、前記撮像装置若しくは前記距離センサにより取得されるデータに基づき、前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記取得部により取得されるデータに基づき、前記第1の情報
又は前記第2の情報を
前記ダンプトラックの運転者に通知するために外部に送信する送信
部の少なくとも一方
と、を備える、
アスファルトフィニッシャの施工支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アスファルトフィニッシャ、及びアスファルトフィニッシャの施工支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタと、ホッパと、ホッパ内の舗装剤をトラクタの後ろ側へ搬送するコンベアと、コンベアで搬送された舗装材を敷き拡げるスクリュと、スクリュ後方で舗装材を敷き均すスクリードとを備えるアスファルトフィニッシャが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
アスファルトフィニッシャは、前方に隣接するダンプトラックの荷台からホッパに舗装材の供給を受けながら、アスファルト舗装の施工を行う。この際、ダンプトラックの運転者は、ダンプトラックを後退させながら、アスファルトフィニッシャにダンプトラックを近づけ、舗装材をホッパに供給するための所定の位置まで接車させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ(ホッパ)とが左右方向(車幅方向)にずれた状態で、ダンプトラックが上記の所定の位置まで接車すると、そのズレ量によっては、ホッパの側部に接触する可能性がある。また、ホッパの側部と接触することなく接車が行われたとしても、施工対象の道路のカーブ部分では、ダンプトラックの向きとアスファルトフィニッシャの向きとの間に差異が生じる。そのため、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとが左右方向にずれた状態では、ダンプトラックのリアオーバーハングがホッパの側部の内側に接触する可能性がある。
【0006】
そこで、ダンプトラックのアスファルトフィニッシャへの接車時における左右方向のズレを抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
トラクタと、
前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、
前記ホッパ内の前記舗装材を前記トラクタの後側へ搬送するコンベアと、
前記コンベアにより搬送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、
前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、
アスファルトフィニッシャの前方から近づくダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれに関するデータを取得する取得部と、
オペレータから受け付けられる所定の入力、又は、撮像装置若しくは距離センサにより取得される、アスファルトフィニッシャの前方の様子を表すデータに基づき、前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記取得部により取得されるデータに基づき、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれ量を表す第1の情報、又は、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれを抑制するための戻し量を表す第2の情報を前記ダンプトラックの運転者が認識可能なように前記ダンプトラックに向かって出力する出力部、及び前記所定の入力、又は、前記撮像装置若しくは前記距離センサにより取得されるデータに基づき、前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記取得部により取得されるデータに基づき、前記第1の情報又は前記第2の情報を前記ダンプトラックの運転者に通知するために外部に送信する送信部の少なくとも一方と、を備える、
アスファルトフィニッシャが提供される。
【0008】
また、本開示の他の実施形態では、
トラクタと、前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、前記ホッパ内の前記舗装材を前記トラクタの後側へ搬送するコンベアと、前記コンベアにより搬送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、を有するアスファルトフィニッシャの施工支援システムであって、
アスファルトフィニッシャの前方から近づくダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれに関するデータを取得する取得部と、
オペレータから受け付けられる所定の入力、又は、撮像装置若しくは距離センサにより取得される、アスファルトフィニッシャの前方の様子を表すデータに基づき、前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記取得部により取得されるデータに基づき、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれ量を表す第1の情報、又は、前記ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれを抑制するための戻し量を表す第2の情報を前記ダンプトラックに向かって出力する出力部、及び前記所定の入力、又は、前記撮像装置若しくは前記距離センサにより取得されるデータに基づき、前記ダンプトラックが前方からアスファルトフィニッシャに近づいていると判断される際に、前記取得部により取得されるデータに基づき、前記第1の情報又は前記第2の情報を前記ダンプトラックの運転者に通知するために外部に送信する送信部の少なくとも一方と、を備える、
アスファルトフィニッシャの施工支援システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述の実施形態によれば、ダンプトラックのアスファルトフィニッシャへの接車時における左右方向のズレを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】アスファルトフィニッシャの一例を示す図である。
【
図1B】アスファルトフィニッシャの一例を示す図である。
【
図1C】アスファルトフィニッシャの一例を示す図である。
【
図2】前方監視システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】前方監視システムの動作の第1例を説明する図である。
【
図4】前方監視システムの動作の第2例を説明する図である。
【
図5】前方監視システムの動作の第3例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
[全体構成]
まず、
図1A~
図1Cを参照して、本実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100の全体構成について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100の一例を示す図である。具体的には、
図1A~
図1Cは、それぞれ、アスファルトフィニッシャ100の左側面図、上面図、及び背面図である。以下、前、後、左、右、上、及び下の方向は、アスファルトフィニッシャ100から見た方向として用いる。
【0014】
尚、
図1A~
図1Cでは、スクリード3が車幅方向(左右方向)で最も伸張された状態が示される。
【0015】
図1A~
図1Cに示すように、アスファルトフィニッシャ100は、トラクタ1と、ホッパ2と、及びスクリード3で構成される。
【0016】
トラクタ1は、アスファルトフィニッシャ100の本体部に相当し、アスファルトフィニッシャ100を走行させる。トラクタ1は、例えば、走行用油圧モータを用いて、前輪及び後輪を回転させることにより、アスファルトフィニッシャ100を走行させる。走行用油圧モータは、アスファルトフィニッシャに搭載される油圧源(例えば、走行用油圧ポンプ)から作動油の供給を受けて回転する。
【0017】
また、トラクタ1には、コントローラ30、メインモニタ60、運転席61、撮像装置62、音声出力装置63、及びインジケータ64等が搭載される。
【0018】
コントローラ30は、例えば、
図1A~
図1Cに示すように、トラクタ1のフレーム1a内に格納される。
【0019】
メインモニタ60及び運転席61は、例えば、
図1A~
図1Cに示すように、トラクタ1の上面に設置されるキャブに設けられる。
【0020】
撮像装置62及び音声出力装置63は、例えば、
図1A~
図1Cに示すように、トラクタ1の上面の前端中央部に設置される。
【0021】
インジケータ64は、例えば、
図1A~
図1Cに示すように、トラクタ1の右側部に設置される。また、インジケータ64は、トラクタ1の左側部に設置されてもよいし、トラクタ1の右側部及び左側部の双方に設置されてもよい。つまり、ホッパ2に舗装材を供給するためにアスファルトフィニッシャ100の前方から後退しながら近づいてくるダンプトラックの運転者が直接或いはルームミラーやサイドミラーを介して間接的に視認可能であれば、任意の場所に設置されてよい。
【0022】
また、インジケータ64は、例えば、
図1Bに示すように、使用時にトラクタ1のフレーム1aの右側部から外側に張り出し、且つ、スクリード3の端部3bよりも内側となるように配置されてよい。また、インジケータ64は、例えば、
図1Bに示すように、非使用時にアスファルトフィニッシャ100の車幅内に収まるように折り畳み可能に構成されてもよい。
【0023】
ホッパ2は、ダンプトラックの荷台から供給される舗装材を受け入れる。舗装材は、例えば、アスファルト混合物等である。
【0024】
図1A~
図1Cに示すように、ホッパ2は、トラクタ1の前部に設けられる。ホッパ2は、ホッパシリンダ2aによって車幅方向(左右方向)に開閉可能に構成される。アスファルトフィニッシャ100は、通常、ホッパ2を全開状態にして舗装材運搬車両としてのダンプトラックの荷台から舗装材を受け入れる。また、アスファルトフィニッシャ100は、ダンプトラックの荷台から舗装材を受け入れているときも、プッシュローラ2bを介してダンプトラックを前方に押しながら走行(施工)を継続する。ホッパ2の内部に受け入れられた舗装材は、コンベア及びスクリュを用いてスクリード3に給送される。
【0025】
スクリード3は、スクリュによって路盤に敷き拡げられる舗装材を敷き均す。スクリード3は、トラクタ1によって牽引される浮動スクリードであり、レベリングアーム3aを介してトラクタ1と連結される。
【0026】
[前方監視システムの一例]
次に、
図1A~
図1Cに加え、
図2を参照して、アスファルトフィニッシャ100に搭載される前方監視システム150の一例について説明する。
【0027】
図2は、前方監視システム150の構成の一例を示す図である。
【0028】
前方監視システム150(施工支援システムの一例)は、アスファルトフィニッシャ100の前方を監視する。
【0029】
例えば、前方監視システム150は、アスファルトフィニッシャ100の前方からホッパ2への舗装材の補給のために後退して近づいてくるダンプトラックの接近状況を監視する機能(以下、「ダンプ接近状況監視機能」をユーザに提供する。
【0030】
また、例えば、前方監視システム150は、アスファルトフィニッシャ100の前方から後退して近づいてくるダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間の物体の存否を監視する機能(以下、「物体存否監視機能」)をユーザに提供してもよい。物体監視機能は、ダンプ接近状況監視機能が有効な場合に実行される付随的機能であってよい。
【0031】
前方監視システム150は、コントローラ30と、メインモニタ60と、撮像装置62と、音声出力装置63と、インジケータ64とを含む。
【0032】
コントローラ30は、前方監視システム150による各種の前方監視機能(例えば、ダンプ接近状況監視機能や物体存否監視機能等)に関する制御を行う。
【0033】
コントローラ30は、前方監視システム150の専用コントローラであってもよいし、アスファルトフィニッシャ100の他の機能に関する制御にも併用されるコントローラであってもよい。また、前方監視システム150に関するコントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分担されてもよい。
【0034】
コントローラ30の機能は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。コントローラ30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の補助記憶装置、及び外部との入出力用のインタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPUに実行させることにより、各種機能を実現する。
【0035】
コントローラ30は、機能部として、判定部31と、注意喚起部32とを含む。
【0036】
メインモニタ60は、アスファルトフィニッシャ100の運転者に各種情報を表示する。メインモニタ60は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイである。メインモニタ60は、コントローラ30の制御下で各種情報を表示することができる。また、メインモニタ60は、アスファルトフィニッシャ100の運転者の操作入力を受ける入力装置(例えば、ボタン、トグル、レバー、液晶ディスプレイのパネルに組み込まれるタッチパネル等)を含んでいてもよい。
【0037】
撮像装置62(取得部の一例)は、アスファルトフィニッシャ100の前方空間を撮像し、その空間の画像(撮像画像)を取得する。撮像装置62は、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、距離画像カメラ、デプスカメラ、三次元カメラ、赤外線カメラ等を含んでよい。撮像装置62は、取得した画像データを出力し、撮像装置62から出力される画像データは、コントローラ30に取り込まれる。
【0038】
また、前方監視システム150は、撮像装置62に代えて、或いは、加えて、アスファルトフィニッシャ100の前方空間の物体との距離を計測可能な距離センサ(取得部の一例)を含んでもよい。距離センサは、例えば、LIDAR(Light Detecting and Ranging)、ミリ波レーダ、超音波センサ等を含んでよい。距離センサから出力される計測結果に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれてよい。
【0039】
音声出力装置63は、アスファルトフィニッシャ100の前方を含む周囲に向けて音声を出力する。音声出力装置63は、例えば、スピーカやブザー等である。音声出力装置63は、コントローラ30の制御下で、アスファルトフィニッシャ100の前方のダンプトラックの運転者やダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの間の作業者等に向かって所定の音を出力することができる。また、音声出力装置63は、例えば、コントローラ30の制御下で、音声メッセージを出力してもよい。
【0040】
インジケータ64(表示部の一例)は、視覚情報を表示し、アスファルトフィニッシャ100の前方のダンプトラックの運転者や作業者等からその視覚情報が視認可能なように構成される。例えば、インジケータ64は、その表示領域が前方に向くように配置される。インジケータ64は、例えば、マトリクス状に配置される多数のLED(Light Emitting Diode)、液晶パネル、有機ELパネル等による小型電光掲示板である。
図1A~
図1Cに示すように、インジケータ64は、コントローラ30が格納されているフレーム1aよりも上、即ち、インジケータ64は、フレーム1aの上面よりも高い位置に配置される。インジケータ64は、コントローラ30の制御下で各種情報を表示することができる。例えば、インジケータ64は、アスファルトフィニッシャ100の前方の舗装材を積載したダンプトラックの運転者に後退指示を表示し、ダンプトラックの後退が可能であること等をその運転者に知らせてよい。
【0041】
判定部31は、撮像装置62や距離センサの出力データに基づき、前方監視機能に関する各種判定を行う。
【0042】
判定部31は、例えば、ダンプ接近状況監視機能に関する判定を行う。
【0043】
具体的には、判定部31は、ホッパ2に舗装材を補給するダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100の前方から後退して近づいてくる場合に、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲内か否かを判定してよい。ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量は、ダンプトラックの車幅方向の中心軸と、アスファルトフィニッシャ100(ホッパ2)の車幅方向(左右方向)の中心軸との間の左右方向のずれ量を表す。例えば、判定部31は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量を、簡易的に、ダンプトラックの後端部の車幅方向の中央と、アスファルトフィニッシャ100の車幅方向(左右方向)の中央とのズレ量と判断してよい。また、判定部31は、ダンプトラックの車幅方向の中心軸と、アスファルトフィニッシャ100の車幅方向(左右方向)の中心軸とが平行でない場合を考慮してもよい。ダンプトラックの車幅方向の中心軸と、アスファルトフィニッシャ100の車幅方向(左右方向)の中心軸とが平行でない場合とは、ダンプトラックの後退方向がアスファルトフィニッシャ100の車長方向に対して斜めにずれている場合に相当する。例えば、判定部31は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量を、アスファルトフィニッシャ100から見た所定の前後位置における双方の中心軸のズレ量と判断してもよい。所定の前後位置は、例えば、ホッパ2の前端位置等であってよい。
【0044】
所定範囲は、ダンプトラックの後輪タイヤとプッシュローラ2bとが接触する接車位置(以下、単に「接車位置」)までダンプトラックが到達したときに、ダンプトラックの荷台とホッパ2とがある程度の余裕を持って接触しない左右方向の範囲として規定される。所定範囲は、予め規定される範囲として固定されていてもよいし、ダンプトラックの車幅方向の大きさや前方監視システム150が搭載されるアスファルトフィニッシャ100の車幅方向の大きさ等に応じて可変されてもよい。
【0045】
判定部31は、例えば、既知の画像処理技術や機械学習による画像認識技術を適用し、アスファルトフィニッシャ100の前方のダンプトラックを認識すると共に、ダンプトラックの車幅方向の中心軸(中央)を認識する。そして、判定部31は、認識したダンプトラックの車幅方向の中心軸(中央)のアスファルトフィニッシャ100を基準とする左右位置に基づき、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲内か否かを判定してよい。また、判定部31は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲を逸脱している場合、その逸脱量及び逸脱方向(左方向或いは右方向)を併せて出力してよい。
【0046】
ダンプ接近状況監視機能は、アスファルトフィニッシャ100のオペレータから受け付けられる所定の入力に応じて、有効(ON)及び無効(OFF)が手動で切り換えられてよい。つまり、オペレータは、ダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100の前方から舗装材の補給のために近づいてくる状況を視認し、メインモニタ60の入力装置等を通じて所定の入力を行い、ダンプ接近状況監視機能を有効(ON)にしてよい。この場合、判定部31は、例えば、ダンプ接近状況監視機能が有効な状態に切り換えられると、撮像装置62の画像データに基づき、アスファルトフィニッシャ100の前方のダンプトラックを認識する。そして、判定部31は、アスファルトフィニッシャ100の前方のダンプトラックを認識すると、所定の制御周期ごとに、繰り返し、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との車幅方向のずれ量を演算し、そのずれ量が所定範囲内か否かを判定する。当該判定処理は、例えば、ダンプトラックが所定の接車位置に到達すること、ダンプトラックが認識されなくなること、及びダンプ接近状況監視機能が無効(OFF)にされることの何れかの条件が成立するまで継続されてよい。
【0047】
また、ダンプ接近状況監視機能は、自動で有効(ON)及び無効(OFF)が切り換えられてもよい。この場合、前方監視システム150には、予備機能として、ホッパ2に舗装材を補給するダンプトラックがアスファルトフィニッシャ100の前方から後退して近づいてくる状況を自動認識する機能(以下、「ダンプ接近認識機能」)が設けられてよい。コントローラ30は、例えば、ダンプ接近状況監視機能の無効(OFF)の状態において、所定の制御周期ごとに、撮像装置62の撮像画像に基づき、アスファルトフィニッシャ100の前方から後退して近づいてくる或いは後退して近づいてくる可能性のあるダンプトラックの認識を試みる処理を繰り返す。この際、コントローラ30は、ダンプトラックの荷台の舗装材の有無を考慮してダンプトラックの認識処理を行ってもよい。そして、コントローラ30は、アスファルトフィニッシャ100の前方から後退して近づいてくる或いは近づいてくる可能性のあるダンプトラックを認識すると、自動でダンプ接近状況監視機能を有効(ON)の状態に移行させてよい。
【0048】
また、判定部31は、例えば、物体存否監視機能に関する判定を行ってもよい。
【0049】
具体的には、判定部31は、アスファルトフィニッシャ100の前方から後退して近づいてくるダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間の監視対象の物体(以下、「監視物体」)の存在の有無を判定する。監視物体には、例えば、作業者等の人、ロードコーン、ランマ、タンパ等の小型機械が含まれてよい。判定部31は、例えば、既知の画像処理技術や機械学習等による画像認識技術を適用し、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間の前後位置に存在する物体の有無を認識すると共に、物体を認識した場合その物体の種類を認識してよい。そして、判定部31は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間に物体を認識し且つその物体の種類が監視物体に相当するか否かを判定することにより、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間の監視物体の有無を判定してよい。
【0050】
注意喚起部32は、判定部31の判定結果に基づき、音声出力装置63、インジケータ64等を通じて、アスファルトフィニッシャ100のオペレータ、ダンプトラックの運転者、周囲の作業者等に注意喚起を促す。具体的には、注意喚起部32は、判定部31と同期して、所定の制御周期ごとに、判定部31の判定結果に基づき、アスファルトフィニッシャ100のオペレータ、ダンプトラックの運転者、周囲の作業者等に注意喚起を促すための処理を繰り返す。
【0051】
注意喚起部32は、例えば、判定部31によるダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲内であるか否かの判定結果に基づき、ダンプトラックの運転者に対する注意喚起を行う。
【0052】
具体的には、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲内であると判定される場合、インジケータ64にそのままの状態で後退可能である旨を表示させてよい(後述の
図3参照)。これにより、ダンプトラックの運転者は、ルームミラーやサイドミラーを通じて、インジケータ64の表示内容を確認し、現在の状態のままでダンプトラックを後退させてよいことを認識することができる。
【0053】
一方、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲を逸脱していると判定される場合、インジケータ64に注意喚起情報を表示させてよい(後述の
図4参照)。例えば、注意喚起部32は、ずれ量やずれの方向等のずれが生じていることを通知する情報(以下、「左右ずれ通知情報」)をインジケータ64に表示させてよい。また、例えば、注意喚起部32は、ずれ量が所定範囲から逸脱していることを通知する情報(例えば、逸脱方向や逸脱量等を表す情報)(以下、「逸脱通知情報」)をインジケータ64に表示させてもよい。これにより、ダンプトラックの運転者は、ダンプトラックのアスファルトフィニッシャ100に対する左右方向のずれの発生、及びずれの方向やその程度を認識し、その認識に応じて、ダンプトラックの左右位置を修正することができる。また、例えば、注意喚起部32は、所定範囲からのずれ量の逸脱状態の解消を促す情報(以下、「逸脱解消情報」)をインジケータ64に表示させてもよい。逸脱解消情報には、例えば、ずれ量を所定範囲内に戻すための方向や戻し量等を表す情報が含まれてよい。また、逸脱解消情報には、例えば、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ自体を解消する、即ち、略ゼロにするための方向や戻し量等を表す情報が含まれてもよい。これにより、ダンプトラックの運転者は、逸脱状態を解消するためのダンプトラックの左右位置の修正の方向や程度を直接的に把握し、実行することができる。また、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲を逸脱している場合、音声出力装置63を通じて、ダンプトラックの運転者に向かって逸脱通知情報や逸脱解消情報を伝えてもよい。
【0054】
また、注意喚起部32は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量の所定範囲からの逸脱の程度に応じて、注意喚起情報の内容(レベル)を変更してもよい。例えば、注意喚起部32は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量の所定範囲からの逸脱の程度が相対的に小さい場合、上記の逸脱通知情報や逸脱解消情報をインジケータ64に表示させてよい。一方、注意喚起部32は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量の所定範囲からの逸脱の程度が相対的に大きい場合、ダンプトラックに後退の減速或いは停止を指示する情報(以下、「減速・停止指示情報」)をインジケータ64に表示させてよい(後述の
図5参照)。音声出力装置63が用いられる場合についても同様であってよい。ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量の所定範囲からの逸脱の程度が相対的に小さい場合は、例えば、ダンプトラックが接車位置まで後退したときにホッパ2との接触の可能性は低いが、距離が非常に狭くなる場合に相当する。また、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量の所定範囲からの逸脱の程度が相対的に大きい場合は、例えば、ダンプトラックが接車位置まで後退したときにホッパ2と衝突する可能性が高い場合に相当する。これにより、注意喚起部32は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量の所定範囲からの逸脱の程度に合わせて注意喚起情報のレベルを変更し、運転者に適切な運転操作を促すことができる。
【0055】
また、注意喚起部32は、例えば、判定部31によるダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間に監視物体の存否の判定結果に基づき、ダンプトラックの運転者や周囲の作業者に注意喚起を行う。
【0056】
具体的には、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間に監視物体が存在すると判定される場合、インジケータ64に注意喚起情報を表示させる。例えば、注意喚起部32は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間に監視物体が存在することを表す情報(以下、「監視物体存在情報」)をインジケータ64に表示させてよい。これにより、ダンプトラックの運転者は、監視物体の存在を認識した上で、バックミラーやサイドミラーでその存在を確認しながらダンプトラックの後退運転を行い、監視物体とダンプトラックとの接触を回避することができる。また、例えば、注意喚起部32は、ダンプトラックの減速或いは停止を指示する情報(減速・停止指示情報)をインジケータ64に表示させてもよい。これにより、ダンプトラックの運転者は、指示に従ってダンプトラックを減速或いは停止させ、直接的に、監視物体とダンプトラックとの接触を回避することができる。また、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間に監視物体が存在すると判定される場合、音声出力装置63を通じて、ダンプトラックの運転者や周囲の作業者等に向かって監視物体存在情報を伝えてもよい。また、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間に監視物体が存在すると判定される場合、音声出力装置63を通じて、ダンプトラックの運転者に向かって減速・停止指示情報を伝えてもよい。
【0057】
このように、本例では、アスファルトフィニッシャ100に設置される音声出力装置63やインジケータ64を通じて、ダンプトラックの運転者に接車時における支援情報を通知することができる。
【0058】
[前方監視システムの動作の具体例]
次に、
図1A~
図1C、
図2に加え、
図3~
図5を参照して、前方監視システムの動作の具体例について説明する。
【0059】
<前方監視システムの動作の第1例>
図3は、前方監視システム150の動作の第1例を説明する図である。具体的には、
図3は、アスファルトフィニッシャ100の前方から舗装材の補給のためにダンプトラック200が後退して近づいてくる状況の第1例を示す左側面
図300A及び上面
図300Bである。
【0060】
図3にて、一点鎖線で示す範囲RM1は、ダンプトラック200のルームミラーM1に映る空間範囲を表し、二点鎖線で示す範囲RM2は、ダンプトラック200の右サイドミラーM2に映る空間範囲を表す。以下、
図4、
図5についても同様である。
【0061】
図3に示すように、本例では、ダンプトラック200の車幅方向の中心軸とアスファルトフィニッシャ100の車幅方向の中心軸とが左右方向で略同じ位置に揃っている。その結果、コントローラ30(判定部31)は、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の左右方向のずれ量が略ゼロであり、所定範囲内にあると判定する。そのため、コントローラ30(注意喚起部32)は、そのまま後退可能であることを示す情報をインジケータ64に表示させている。
【0062】
具体的には、インジケータ64は、コントローラ30(注意喚起部32)の制御下で、その表示領域における上下方向の中央部64Aにダンプトラックがそのまま後退可能であることを示す"○"の画像を表示している。これにより、運転者は、ルームミラーM1や右サイドミラーM2を通じて、インジケータ64を確認し、現在の状態で後退しても問題がないことを把握することができる。
【0063】
また、インジケータ64は、コントローラ30の制御下で、その表示領域の上下方向の上部64Bに接車位置までの残りの距離の情報("残り 5.0m")を表示する。コントローラ30は、撮像装置62や距離センサの出力データに基づき、撮像装置62或いは距離センサとダンプトラック200との間の前後方向の位置関係を認識し、ダンプトラック200から接車位置までの残り距離を演算してよい。これにより、運転者は、接車位置までの残り距離を数値として具体的に把握することができる。また、インジケータ64には、コントローラ30の制御下で、ダンプトラック200から接車位置までの残り距離を表す文字情報が左右反転された鏡文字で表示される。これにより、ルームミラーM1や右サイドミラーM2を通じて、インジケータ64を確認したときに、ダンプトラック200の運転者は、残りの距離を表す文字情報を適切に認識することができる。以下、後述の第2例、第3例の場合についても同様である。
【0064】
尚、ダンプトラック200から接車位置までの残りの距離を表す情報は、文字情報に代えて、或いは、加えて、他の形式の情報としてインジケータ64に表示されてもよい。以下、後述の第2例、第3例についても同様である。例えば、ダンプトラック200から接車位置までの残りの距離は、連続的に変化する或いは段階的に(離散的に)変化するバーグラフよって、インジケータ64に表示されてもよい。この場合、ダンプトラック200の運転者は、インジケータ64に表示されるバーグラフの変化より、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100との間の距離を視覚的に認識することができる。
【0065】
<前方監視システムの動作の第2例>
図4は、前方監視システム150の動作の第2例を説明する図である。具体的には、
図4は、アスファルトフィニッシャ100の前方から舗装材の補給のためにダンプトラック200が後退して近づいてくる状況の第2例を示す左側面
図400A及び上面
図400Bである。
【0066】
図4に示すように、本例では、アスファルトフィニッシャ100の車幅方向の中心軸に対して、ダンプトラック200の車幅方向の中心軸の右方向へのずれGP1が生じている。その結果、コントローラ30(判定部31)は、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の左右方向のずれ量が所定範囲から逸脱していると判定する。また、ずれGP1は、所定範囲からの逸脱の程度が相対的に小さく、このままの状態でダンプトラック200が接車位置まで後退してもホッパ2に衝突する可能性は低いものの、接車位置のダンプトラック200の荷台とホッパ2の内壁との距離が非常に狭くなる。そのため、コントローラ30(注意喚起部32)は、注意喚起情報として逸脱解消情報をインジケータ64に表示させている。
【0067】
具体的には、インジケータ64は、コントローラ30(注意喚起部32)の制御下で、その表示領域における上下方向の中央部64Aに、所定範囲からのずれ量の逸脱状態を解消するための戻し方向(本例では、左方向)を示す矢印画像("→")を表示している。また、インジケータ64は、コントローラ30(注意喚起部32)の制御下で、その表示領域における上下方向の下部64Cに、所定範囲からのずれ量の逸脱状態を解消するための戻し量(本例では、50cm)を示す情報("50cm戻す")を表示している。これにより、運転者は、ルームミラーM1や右サイドミラーM2を通じて、インジケータ64を確認し、ダンプトラック200の左右方向の位置を左側に50cmだけ修正すべきであることを容易に認識することができる。また、インジケータ64には、コントローラ30の制御下で、所定範囲からのずれ量の逸脱状態を解消するための戻し量を表す文字情報が左右反転された鏡文字で表示される。これにより、ルームミラーM1や右サイドミラーM2を通じて、インジケータ64を確認したときに、ダンプトラック200の運転者は、所定範囲からのずれ量の逸脱状態を解消するための戻し量を表す文字情報を適切に認識することができる。
【0068】
尚、アスファルトフィニッシャ100の前からインジケータ64を直接見ると、矢印画像が右方向に見えるが、ルームミラーM1や右サイドミラーM2を通じてインジケータ64をみることで、矢印画像が左方向に見える。また、インジケータ64は、コントローラ30(注意喚起部32)の制御下で、逸脱解消情報に代えて、逸脱通知情報を表示してもよい。具体的には、インジケータ64は、逸脱通知情報として、その表示領域における上下方向の中央部64Aに逸脱方向(本例では、右方向)を示す矢印画像("←")を表示し、下部64Cに逸脱量(本例では、50cm)を示す情報を表示してもよい。
【0069】
また、上述の第1例の場合と同様、インジケータ64は、コントローラ30の制御下で、その表示領域の上下方向の上部64Bに接車位置までの残りの距離の情報("残り 5.0m")を表示する。これにより、上述の第1例の場合と同様、運転者は、接車位置までの残り距離を数値として具体的に把握することができる。
【0070】
<前方監視システムの動作の第3例>
図5は、前方監視システム150の動作の第3例を説明する図である。具体的には、
図4は、アスファルトフィニッシャ100の前方から舗装材の補給のためにダンプトラック200が後退して近づいてくる状況の第3例を示す左側面
図500A及び上面
図500Bである。
【0071】
図5に示すように、本例では、アスファルトフィニッシャ100の車幅方向の中心軸に対して、ダンプトラック200の車幅方向の中心軸の右方向へのずれGP2が生じている。その結果、コントローラ30(判定部31)は、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100の左右方向のずれ量が所定範囲から逸脱していると判定する。また、ずれGP2は、所定範囲からの逸脱の程度が相対的に大きく、このままの状態でダンプトラック200が接車位置まで後退するとホッパ2に衝突する可能性は高い。そのため、コントローラ30(注意喚起部32)は、注意喚起情報として減速・停止指示情報をインジケータ64に表示させている。
【0072】
具体的には、インジケータ64は、コントローラ30(注意喚起部32)制御下で、その表示領域における上下方向の中央部64Aに、ダンプトラック200の後退停止を指示する情報("×")を表示している。また、インジケータ64は、コントローラ30(注意喚起部32)の制御下で、その表示領域における上下方向の下部64Cに、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100との接触の可能性を示す情報("接触します")を表示している。これにより、ダンプトラック200の運転者は、ルームミラーM1や右サイドミラーM2を通じて、インジケータ64を確認し、一旦、ダンプトラック200の後退を停止させ、前進しながら左右方向の位置合わせを行うことができる。そして、ダンプトラックの運転者は、アスファルトフィニッシャ100に対する左右方向の位置を適切に調整した上で、再度、アスファルトフィニッシャ100に向けてダンプトラック200を後退させることができる。また、インジケータ64には、コントローラ30の制御下で、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100との接触の可能性を示す文字情報が左右反転された鏡文字で表示される。これにより、ルームミラーM1や右サイドミラーM2を通じて、インジケータ64を確認したときに、ダンプトラック200の運転者は、ダンプトラック200とアスファルトフィニッシャ100との接触の可能性を示す文字情報を適切に認識することができる。
【0073】
また、上述の第1例等の場合と同様、インジケータ64は、コントローラ30の制御下で、その表示領域の上下方向の上部64Bに接車位置までの残りの距離の情報("残り 5.0m")を表示する。これにより、上述の第1例の場合と同様、運転者は、接車位置までの残り距離を数値として具体的に把握することができる。
【0074】
[前方監視システムの他の例]
次に、
図2を援用して、前方監視システム150の他の例について説明する。
【0075】
本例では、前方監視システム150は、音声出力装置63やインジケータ64に代えて
或いは、加えて、ダンプトラックのキャビン内のモニタや音声出力装置を用いて、アスファルトフィニッシャ100の前方のダンプトラックの運転者に情報を伝えてよい。また、前方監視システム150は、音声出力装置63やインジケータ64に代えて、或いは、加えて、運転者がダンプトラックのキャビンに持ち込むユーザ端末を用いて、アスファルトフィニッシャ100の前方のダンプトラックの運転者に情報を伝えてもよい。ユーザ端末は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のコンピュータ端末等の運転者がダンプトラックのキャビンに持ち込み可能な可搬型の端末装置(携帯端末)を含む。この場合、ダンプトラックのキャビンのモニタやユーザ端末に表示される各種の文字情報は、インジケータ64に表示される文字情報と異なり、鏡文字でなく、左右反転されていない通常の文字で表示される。運転者がルームミラーM1や右サイドミラーM2を介することなく直接視認することが可能だからである。
【0076】
具体的には、コントローラ30(送信部の一例)は、内蔵される或いは外部接続される通信装置を利用し、所定の通信回線を通じて、ダンプトラック及びユーザ端末の少なくとも一方に情報を含む信号を送信してよい。その結果、ダンプトラックのキャビン内のモニタは、ダンプトラックに搭載される通信装置を通じてアスファルトフィニッシャ100から受信される信号に基づき、運転者に向けて情報を表示することができる。また、ダンプトラックのキャビン内の音声出力装置は、ダンプトラックに搭載される通信装置を通じてアスファルトフィニッシャ100から受信される信号に基づき、運転者に向けて音により情報を通知することができる。また、ユーザ端末は、自端末に搭載される通信装置を通じてアスファルトフィニッシャ100から受信される信号に基づき、表示領域に情報を表示したり、スピーカを通じて音で情報を出力したりし、運転者に情報を通知することができる。また、ダンプトラックの通信装置とアスファルトフィニッシャ100の通信装置とは、直接、近距離通信により通信可能に接続されてもよい。
【0077】
具体的には、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲内であると判定される場合、そのまま後退可能である旨の情報を含む信号をダンプトラックやユーザ端末に送信してよい。
【0078】
一方、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲を逸脱していると判定される場合、注意喚起情報を含む信号をダンプトラックやユーザ端末に送信してよい。注意喚起情報には、上述の如く、逸脱通知情報、逸脱解消情報、減速・停止指示情報等が含まれる。
【0079】
また、注意喚起部32は、判定部31によりダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間に監視物体が存在すると判定される場合、注意喚起情報を含む信号をダンプトラックやユーザ端末に送信してよい。注意喚起情報には、上述の如く、監視物体存在情報や減速・停止指示情報等が含まれる。
【0080】
このように、本例では、ダンプトラックのキャビンに設置されるモニタ、音声出力装置やダンプトラックの運転者がキャビンに持ち込むユーザ端末(携帯端末)を通じて、ダンプトラックの運転者に接車時における支援情報を通知することができる。
【0081】
尚、本例と上述の一例とは、組み合わせられてもよい。即ち、前方監視システム150は、インジケータ64を用いたダンプトラックの運転者への支援情報の通知、及びダンプトラックやユーザ端末との間の通信を用いたダンプトラックの運転者への支援情報の通知の双方を実施可能であってもよい。
【0082】
[作用]
次に、本実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)の作用について説明する。
【0083】
本実施形態では、アスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)は、前方のダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれに関する情報をダンプトラックに向かって表示するインジケータ64を備える。
【0084】
これにより、アスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)は、インジケータ64を用いて、ダンプトラックの運転者に、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれの有無やその程度等を把握させることができる。そのため、アスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)は、ダンプトラックの運転者によるダンプトラックのアスファルトフィニッシャ100への接車のための運転操作を適切に支援し、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との接触を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態では、アスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの左右方向のずれに関するデータを取得する撮像装置62や距離センサ等を備えてよい。そして、インジケータ64は、撮像装置62や距離センサ等により取得されるデータに基づくダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量が所定範囲から逸脱する場合に、ダンプトラックに向かって注意喚起情報を表示してよい。
【0086】
これにより、アスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャとの間のずれ量が相対的に大きい状況において、ダンプトラックの運転者に対して注意喚起を促すことができる。
【0087】
また、本実施形態では、インジケータ64は、ダンプトラックがホッパ2に対する舗装材の供給のための所定位置(接車位置)に到達するまでの残りの距離をダンプトラックに向かって表示してよい。
【0088】
これにより、ダンプトラックの運転者は、接車位置までの残り距離を具体的な数値として容易に把握することができる。
【0089】
また、本実施形態では、インジケータ64は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれの程度(例えば、ずれ量自体や所定範囲からの逸脱量)をダンプトラックに向かって表示してよい。また、インジケータ64は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれを抑制するための戻し量(例えば、所定範囲からの逸脱を解消するための戻し量やずれ自体を解消するための戻し量)をダンプトラックに向かって表示してもよい。
【0090】
これにより、ダンプトラックの運転者は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との間のずれを解消する運転操作のために必要な情報を具体的な数値として把握することができる。そのため、アスファルトフィニッシャ100は、ダンプトラックの運転者によるダンプトラックのアスファルトフィニッシャ100への接車のための運転操作をより適切に支援し、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との接触を抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態では、インジケータ64は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれ量の所定範囲からの逸脱の程度に応じて、注意喚起情報の内容を可変させてよい。
【0092】
これにより、アスファルトフィニッシャ100は、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との接触の可能性に合わせて、注意喚起の内容(レベル)を変化させることができる。そのため、アスファルトフィニッシャ100は、ダンプトラックの運転者によるダンプトラックのアスファルトフィニッシャ100への接車のための運転操作をより適切に支援し、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との接触を抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態では、アスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)は、前方のダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれに関する情報を外部(例えば、ダンプトラックやその運転者のユーザ端末)に送信するコントローラ30を備えてもよい。
【0094】
これにより、アスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)は、外部の機器を通じて、ダンプトラックの運転者に、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との左右方向のずれの有無やその程度等を把握させることができる。そのため、アスファルトフィニッシャ100(前方監視システム150)は、ダンプトラックの運転者によるダンプトラックのアスファルトフィニッシャ100への接車のための運転操作を適切に支援し、ダンプトラックとアスファルトフィニッシャ100との接触を抑制することができる。
【0095】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0096】
最後に、本願は、2021年3月30日に出願した日本国特許出願2021-057824号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0097】
1 トラクタ
1a フレーム
2 ホッパ
2a ホッパシリンダ
2b プッシュローラ
3 スクリード
3a レベリングアーム
3b 端部
30 コントローラ(送信部)
31 判定部
32 注意喚起部
60 メインモニタ
61 運転席
62 撮像装置
63 音声出力装置
64 インジケータ(表示部)
100 アスファルトフィニッシャ
150 前方監視システム
200 ダンプトラック