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  • 特許-ガス冷却システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ガス冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20241203BHJP
   F25J 3/06 20060101ALI20241203BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F25J1/00 B
F25J3/06
C10L3/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023520742
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2021023255
(87)【国際公開番号】W WO2022239259
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2021081870
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤 公博
(72)【発明者】
【氏名】野間 弘道
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-210077(JP,A)
【文献】特開2015-210078(JP,A)
【文献】特表2020-507736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0289963(US,A1)
【文献】特表2012-514180(JP,A)
【文献】特開昭58-183901(JP,A)
【文献】特表2020-535378(JP,A)
【文献】特開2016-169837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00
F25J 3/06
C10L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを主成分とする冷却対象ガスを冷却する冷却装置と、
前記冷却装置によって冷却された前記冷却対象ガスを減圧する第1減圧部と、
前記第1減圧部によって減圧されることで得られる液化ガスの窒素濃度が所定範囲内に収まるように調整する窒素調整部と、
前記窒素調整部によって窒素濃度が調整された液化ガスを減圧する第2減圧部と、
前記第2減圧部によって減圧されることで得られる気液混合物を気液分離する気液分離ドラムと、
前記気液分離ドラムによって分離された液化ガスを昇圧するポンプと、
を備え、
前記冷却装置は、前記ポンプによって昇圧された液化ガスで前記冷却対象ガスを冷却するガス冷却システム。
【請求項2】
前記冷却対象ガスを昇圧して超臨界流体とするコンプレッサを備え、
前記冷却装置は、
前記超臨界流体を冷却する予冷部と、
前記超臨界流体と、前記ポンプによって昇圧された液化ガスとを熱交換させる熱交換器と、
を有し、
前記ポンプの吐出圧は、前記熱交換器内において、前記液化ガスのうちの少なくとも一部が相変化する圧力である請求項1に記載のガス冷却システム。
【請求項3】
前記第1減圧部は、前記超臨界流体を気液混合物に相変化させる請求項2に記載のガス冷却システム。
【請求項4】
前記窒素調整部は、前記第1減圧部によって減圧されることで得られる前記気液混合物から窒素を除去して、前記液化ガスの窒素濃度が所定範囲内に収まるように調整する請求項3に記載のガス冷却システム。
【請求項5】
前記窒素調整部は、前記第1減圧部によって減圧されることで得られる前記気液混合物を構成する分離後ガスからメタンを回収する請求項4に記載のガス冷却システム。
【請求項6】
前記予冷部は、非可燃性冷媒によって前記超臨界流体を冷却する請求項2から5のいずれか1項に記載のガス冷却システム。
【請求項7】
メタンを主成分とする冷却対象ガスを昇圧して超臨界流体とするコンプレッサと、
前記超臨界流体を冷却する予冷部と、
前記超臨界流体と、冷媒とを熱交換させる熱交換器と、
前記熱交換器によって冷却された前記超臨界流体を減圧する第1減圧部と、
前記第1減圧部によって減圧されることで得られる液化ガスを減圧する第2減圧部と、
前記第2減圧部によって減圧されることで得られる気液混合物を気液分離する気液分離ドラムと、
前記気液分離ドラムによって分離された液化ガスを昇圧するポンプと、
を備え、
前記熱交換器は、前記ポンプによって昇圧された液化ガスを冷媒として前記超臨界流体を冷却し、
前記ポンプの吐出圧は、前記熱交換器内において、前記液化ガスのうちの少なくとも一部が相変化する圧力であるガス冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス冷却システムに関する。本出願は2021年5月13日に提出された日本特許出願第2021-81870号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(NG:Natural Gas)を原産地から輸送する場合、体積を小さくするために、天然ガスを冷却して液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を製造する。液化天然ガスを製造する、非可燃性冷媒を用いた技術として、複数の熱交換器、複数のエクスパンダー、および、複数のコンプレッサを備え、窒素冷却剤を冷媒として用いるデュアルエクスパンダープロセスの製造装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表平10-501053号公報号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術では、機器構成が複雑であり、装置自体が高価になってしまうという問題がある。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑み、従来よりも簡易な機器構成により液化ガスを製造することが可能なガス冷却システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るガス冷却システムは、メタンを主成分とする冷却対象ガスを冷却する冷却装置と、冷却装置によって冷却された冷却対象ガスを減圧する第1減圧部と、第1減圧部によって減圧されることで得られる液化ガスの窒素濃度が所定範囲内に収まるように調整する窒素調整部と、窒素調整部によって窒素濃度が調整された液化ガスを減圧する第2減圧部と、第2減圧部によって減圧されることで得られる気液混合物を気液分離する気液分離ドラムと、気液分離ドラムによって分離された液化ガスを昇圧するポンプと、を備え、冷却装置は、ポンプによって昇圧された液化ガスで冷却対象ガスを冷却する。
【0007】
また、上記ガス冷却システムは、冷却対象ガスを昇圧して超臨界流体とするコンプレッサを備え、上記冷却装置は、超臨界流体を冷却する予冷部と、超臨界流体と、ポンプによって昇圧された液化ガスとを熱交換させる熱交換器と、を有し、ポンプの吐出圧は、熱交換器内において、液化ガスのうちの少なくとも一部が相変化する圧力であってもよい。
【0008】
また、上記第1減圧部は、超臨界流体を気液混合物に相変化させてもよい。
【0009】
また、上記窒素調整部は、第1減圧部によって減圧されることで得られる気液混合物から窒素を除去して、液化ガスの窒素濃度が所定範囲内に収まるように調整してもよい。
【0010】
また、上記窒素調整部は、第1減圧部によって減圧されることで得られる気液混合物を構成する分離後ガスからメタンを回収してもよい。
【0011】
また、上記予冷部は、非可燃性冷媒によって超臨界流体を冷却してもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る他のガス冷却システムは、メタンを主成分とする冷却対象ガスを昇圧して超臨界流体とするコンプレッサと、超臨界流体を冷却する予冷部と、超臨界流体と、冷媒とを熱交換させる熱交換器と、熱交換器によって冷却された超臨界流体を減圧する第1減圧部と、第1減圧部によって減圧されることで得られる液化ガスを減圧する第2減圧部と、第2減圧部によって減圧されることで得られる気液混合物を気液分離する気液分離ドラムと、気液分離ドラムによって分離された液化ガスを昇圧するポンプと、を備え、熱交換器は、ポンプによって昇圧された液化ガスを冷媒として超臨界流体を冷却し、ポンプの吐出圧は、熱交換器内において、液化ガスのうちの少なくとも一部が相変化する圧力である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、従来よりも簡易な機器構成により液化ガスを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係るガス冷却システムを説明する図である。
図2図2は、実施形態に係る窒素調整部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
[ガス冷却システム100]
図1は、本実施形態に係るガス冷却システム100を説明する図である。なお、図1中、実線の矢印は、流体の流れを示す。ガス冷却システム100は、メタン(CH)を主成分とする冷却対象ガスを冷却する。本実施形態では、冷却対象ガスとして、ガス田から採取される天然ガスNGを例に挙げて説明する。天然ガスNGは、メタンおよび窒素(N)を少なくとも含む。また、本実施形態に係るガス冷却システム100は、非可燃性冷媒のシステムである。
【0017】
図1に示すように、ガス冷却システム100は、ブースタコンプレッサ110と、徐熱部112と、冷却装置120と、第1減圧部130と、第1気液分離ドラム140と、窒素調整部150と、第2減圧部160と、第2気液分離ドラム170と、ポンプ180と、フラッシュガスコンプレッサ190とを含む。
【0018】
ブースタコンプレッサ110(コンプレッサ)は、天然ガスNGおよび後述する循環天然ガスCG(例えば、30℃、1.5MPaG)を昇圧する。ブースタコンプレッサ110による昇圧過程で、天然ガスNGおよび循環天然ガスCGは、超臨界流体SFとなる。ブースタコンプレッサ110の吐出圧は、例えば、7.0MPaGである。
【0019】
徐熱部112は、ブースタコンプレッサ110によって昇圧されることで高温となった超臨界流体SFを徐熱(冷却)する。徐熱部112は、例えば、空冷装置、または、水冷装置である。徐熱部112によって徐熱された超臨界流体SFは、例えば、35℃、7.0MPaGである。
【0020】
冷却装置120は、超臨界流体SFを冷却する。冷却装置120は、予冷部122と、熱交換器124とを含む。本実施形態において、予冷部122は、非可燃性冷媒(例えば、二酸化炭素)で、超臨界流体SFを冷却する。
【0021】
熱交換器124は、超臨界流体SFと、後述するポンプ180によって昇圧された液化天然ガスLNG(液化ガス)とを熱交換させる。熱交換器124は、被冷却流路124aと、冷却流路124bとを含む。被冷却流路124aは、超臨界流体SFが通過する流路である。冷却流路124bは、後述するポンプ180によって昇圧された液化天然ガスLNGが通過する流路である。熱交換器124において、超臨界流体SFと、液化天然ガスLNGとは、対向流の関係となる。
【0022】
熱交換器124は、超臨界流体SFをさらに冷却する。熱交換器124の出口の超臨界流体SFは、例えば、-140℃、6.9MPaGである。
【0023】
第1減圧部130は、熱交換器124(冷却装置120)によって冷却された超臨界流体SF(天然ガスNG)を減圧する。本実施形態において、第1減圧部130は、ハイドロリックタービン(動力回収タービン)である。第1減圧部130は、超臨界流体SFを気液混合物MYに相変化させる。なお、第1減圧部130は、例えば、-140℃、6.9MPaGの超臨界流体SFを減圧して、0.2MPaG以上0.3MPaG以下(例えば、0.25MPaG)の気液混合物MYに相変化させる。
【0024】
また、第1減圧部130は、超臨界流体SFを減圧することで動力を回収する。第1減圧部130が動力(エネルギー)を回収することで、第1減圧部130の出口における減圧時の蒸発分を少なくすることができる。第1減圧部130によって回収された動力は、上記ブースタコンプレッサ110の動力として利用される。
【0025】
第1気液分離ドラム140は、気液混合物MYを気液分離する。第1気液分離ドラム140において分離された分離後ガスNRは、窒素調整部150に導かれる。上記したように、天然ガスNGは、メタンおよび窒素を含む。窒素の沸点は、メタンの沸点よりも低い。このため、分離後ガスNRガス(窒素富化ガス)の窒素濃度は、天然ガスNGよりも高い。例えば、分離後ガスNRガスの窒素濃度は、10体積%である。
【0026】
窒素調整部150は、第1減圧部130によって減圧されることで得られる液化ガスLAの窒素濃度が所定範囲内に収まるように調整する。本実施形態において、窒素調整部150は、気液混合物MYから窒素を除去して、第1気液分離ドラム140に貯留される液化ガスLAの窒素濃度を調整する。本実施形態において、窒素調整部150は、分離後ガスNRから窒素を除去する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る窒素調整部150を説明する図である。なお、図2中、実線の矢印は、気液混合物MY、液化ガスLA、および、液化ガスMLの流れを示す。また、図2中、破線の矢印は、分離後ガスNRおよび排気ガスEXの流れを示す。
【0028】
図2に示すように、窒素調整部150は、コンプレッサ152と、メタン回収部154とを含む。
【0029】
コンプレッサ152は、分離後ガスNRを昇圧して、メタン回収部154に導く。コンプレッサ152は、分離後ガスNR(例えば、0.25MPaG)を、例えば、0.6MPaGに昇圧する。
【0030】
メタン回収部154には、分離後ガスNRおよび液化天然ガスLNG(例えば、-155℃、0.6MPaG)が導かれる。メタン回収部154は、分離後ガスNRからメタンを回収する。メタン回収部154は、液化天然ガスLNGと分離後ガスNRとを接触させる(洗浄する)ことで、分離後ガスNRに含まれるメタンを液化天然ガスLNGに吸収させる。メタン回収部154において生成されたメタン富化液化ガスLM(メタンを吸収した液化天然ガスLNG)は、後述する第2気液分離ドラム170に導かれる。なお、メタン富化液化ガスLMは、例えば、-135℃、0.6MPaGである。
【0031】
一方、メタン回収部154において、メタンが除去された分離後ガスNRは、排気ガスEXとして外部に排気される。排気ガスEXは、例えば、ガス冷却システム100が設けられるプラントの燃料として利用される。
【0032】
不図示の中央制御部は、液化ガスLAの窒素濃度が、所定範囲(例えば、0.5mol%以上2mol%以下)となるように、コンプレッサ152の流量を制御する。これにより、中央制御部は、第1気液分離ドラム140の圧力を制御し、また、メタン回収部154に導かれる液化天然ガスLNGの流量を制御する。
【0033】
なお、中央制御部は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してガス冷却システム100全体を管理および制御する。
【0034】
図1に戻って説明すると、第2減圧部160は、窒素調整部150によって窒素濃度が調整された液化ガスLAを減圧する。本実施形態において、第2減圧部160は、減圧弁である。第2減圧部160は、液化ガスLAを減圧(フラッシュ(気化冷却))して、例えば、-155℃、0.05MPaGの気液混合物MZとする。
【0035】
第2気液分離ドラム170(気液分離ドラム)は、気液混合物MZを気液分離する。
【0036】
ポンプ180は、第2気液分離ドラム170によって気液混合物MZから分離された液化天然ガスLNG(液化ガス)を昇圧する。本実施形態において、ポンプ180の吐出圧は、熱交換器124内において、液化天然ガスLNG(液化ガス)のうちの少なくとも一部が相変化(気化)する圧力である。ポンプ180の吐出圧は、所定の下限圧力以上、所定の上限圧力以下の範囲である。下限圧力は、例えば、1.0MPaGである。上限圧力は、例えば、2.0MPaGである。例えば、ポンプ180は、液化天然ガスLNGを1.6MPaGに昇圧する。ポンプ180は、熱交換器124において熱交換する際に気化する温度をずらすために、液化天然ガスLNGを昇圧する。なお、ポンプ180の吐出圧は、機械式の圧力計、または、受圧素子を含む圧力計によって測定することができる。
【0037】
こうして、昇圧された液化天然ガスLNGは、製品として出荷されたり、LNG利用先に供給されたりする。また、昇圧された液化天然ガスLNGの一部は、冷却装置120の熱交換器124に導かれた後、予冷部122に導かれ、冷却装置120において天然ガスNGを冷却する冷媒の一部として冷熱回収される。
【0038】
フラッシュガスコンプレッサ190は、第2気液分離ドラム170で分離されたフラッシュガスFGを昇圧する。例えば、フラッシュガスコンプレッサ190は、フラッシュガスFGを1.5MPaGに昇圧する。フラッシュガスコンプレッサ190によって昇圧されたフラッシュガスFGは、予冷部122に導かれ、冷媒の一部として冷熱回収される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るガス冷却システム100は、天然ガスNGを冷却する冷媒として、製造した液化天然ガスLNGを用いる。これにより、ガス冷却システム100は、従来技術のデュアルエクスパンダープロセスと比較して、冷媒専用の圧縮機や冷却器を一部省略することができる。したがって、ガス冷却システム100は、機器構成を簡素化することができ、液化に要するコストを低減することが可能となる。
【0040】
また、ガス冷却システム100の予冷部122は、非可燃性冷媒で、超臨界流体SFを冷却する。このため、ガス冷却システム100は、非可燃性冷媒を用いた予冷部122との併用で、液化天然ガスLNGを安価に製造することができる。
【0041】
また、上記したように、天然ガスNGには、メタンに加えて微量の窒素が含まれる。窒素の沸点はメタンの沸点よりも低いため、第2減圧部160によって減圧されることで生じるフラッシュガスFGには、メタンに優先して窒素が含まれることになる。このため、窒素調整部150を備えない場合、フラッシュガスFGをブースタコンプレッサ110に返送すると、ガス冷却システム100の運転時間の経過に伴い、冷却対象ガスとしての天然ガスNGの窒素濃度が増加し(天然ガスNGに窒素が濃縮され)、フラッシュガスFGの量が増加してしまう。また、天然ガスNGの窒素濃度が増加しすぎると液化効率が低下する。このため、窒素調整部150を備えない場合、フラッシュガスFGを廃棄しなければならず、フラッシュガスFGに含まれるメタンも廃棄されてしまうという問題が生じる。
【0042】
そこで、上記したように、ガス冷却システム100は、気液混合物MYから窒素を除去する窒素調整部150を備える。これにより、ガス冷却システム100は、フラッシュガスFGの増加を防止し、フラッシュガスFGを所定の目標量に維持することができる。なお、目標量は、フラッシュガスFGをブースタコンプレッサ110に返送した場合、ブースタコンプレッサ110で昇圧後の天然ガスNGの窒素濃度が、効率よく液化される窒素濃度となるフラッシュガスFGの量である。したがって、ガス冷却システム100は、フラッシュガスFGをブースタコンプレッサ110(予冷部122)に返送しても、天然ガスNGの窒素濃度を、効率よく液化できる濃度に維持することができる。このため、ガス冷却システム100は、フラッシュガスFGに含まれるメタンが不要に廃棄されてしまう事態を回避することが可能となる。また、フラッシュガスFGを目標量に維持できるため、ガス冷却システム100は、フラッシュガスコンプレッサ190の動力の増加を防止することが可能となる。
【0043】
なお、液化ガスLAの窒素濃度が、上記所定範囲の下限値(例えば、0.5mol%)未満であると、第2減圧部160による冷却効率が低下する。一方、液化ガスLAの窒素濃度が、上記所定範囲の上限値(例えば、2mol%)を上回ると、フラッシュガスFGが目標量を上回ってしまう。
【0044】
そこで、上記したように、窒素調整部150は、第2減圧部160に導かれる液化ガスLAの窒素濃度を上記下限値以上とする。これにより、ガス冷却システム100は、第2減圧部160による冷却効率を向上させることができる。したがって、第2減圧部160によって減圧されることで生成される液化天然ガスLNGの温度を低くすることが可能となる。つまり、ガス冷却システム100は、ポンプ180によって熱交換器124に導かれる液化天然ガスLNGの温度を低くすることができ、熱交換器124による超臨界流体SFの冷却を効率よく行うことが可能となる。
【0045】
また、上記したように、窒素調整部150は、第2減圧部160に導かれる液化ガスLAの窒素濃度を上記上限値以下とする。これにより、ガス冷却システム100は、第2気液分離ドラム170で生成されるフラッシュガスFGを目標量に維持することが可能となる。
【0046】
また、上記したように、熱交換器124は、超臨界流体SFを液化天然ガスLNGにより冷却する。熱交換器124において、超臨界流体SFの流量よりも液化天然ガスLNGの流量をできるだけ小さくすることが望ましい。そこで、熱交換器124は、液化天然ガスLNGの相変化による潜熱を利用し、より少ない流量の液化天然ガスLNGによって超臨界流体SFを冷却する。液化天然ガスLNGの流量をより少なくするためには、熱交換器124に導かれる液化天然ガスLNGの圧力を低くして、相変化温度を低くする必要がある。一方、熱交換器124に導かれる液化天然ガスLNGの圧力が低くなりすぎるとブースタコンプレッサ110に導かれる循環天然ガスCGの圧力が低くなり、ブースタコンプレッサ110の動力が大きくなってしまう。また、熱交換器124に導かれる液化天然ガスLNGの圧力が高くなりすぎると、相変化温度が高くなり、熱交換器124において液化天然ガスLNGが相変化しなくなってしまう。
【0047】
そこで、熱交換器124に導かれる液化天然ガスLNGの相変化温度を適切に設定する必要がある。このため、熱交換器124に導かれる液化天然ガスLNGを昇圧するポンプ180の吐出圧を、所定の下限圧力以上、所定の上限圧力以下の範囲とする。なお、下限圧力は、ブースタコンプレッサ110の動力が過剰に増加しない圧力である。これにより、ポンプ180は、ブースタコンプレッサ110の動力の過剰な増加を防止することが可能となる。
【0048】
また、上限圧力は、熱交換器124内において、液化天然ガスLNGのうちの少なくとも一部が相変化する圧力である。これにより、熱交換器124は、液化天然ガスLNGの潜熱で超臨界流体SFを冷却することができる。したがって、熱交換器124は、超臨界流体SFよりも少量の液化天然ガスLNGで、超臨界流体SFを冷却することが可能となる。
【0049】
また、上記したように、第1減圧部130は、超臨界流体SFを気液混合物MYに相変化させる。したがって、第1減圧部130は、超臨界流体SFを効率よく冷却することができる。また、第1減圧部130は、窒素を分離後ガスNRに移動させることが可能となる。これにより、窒素調整部150は、効率よく窒素を除去することができる。
【0050】
また、上記したように、窒素調整部150は、メタン回収部154を備える。これにより、メタン回収部154は、液化天然ガスLNG(液化ガスLA)のメタン濃度を増加させることができる。
【0051】
[変形例]
上記実施形態において、ガス冷却システム100が、ガス田から採取される天然ガスNG、つまり、メタンに加えて窒素を含むガスを冷却する場合を例に挙げた。このため、窒素調整部150は、気液混合物MYから窒素を除去することで、第2減圧部160に導かれる液化ガスLAの窒素濃度を調整する。
【0052】
しかし、ガス冷却システム100が、再生可能天然ガス(RNG:Renewable NG)、合成天然ガス(SNG:Synthetic NG)等の窒素をほとんど含まない冷却対象ガスを冷却する場合、窒素調整部150は、液化ガスLAに窒素を添加して、液化ガスLAの窒素濃度を最適化する。
【0053】
この場合、窒素調整部150は、ブースタコンプレッサ110入口の天然ガスNGに窒素を添加して、第2減圧部160に導かれる液化ガスLAの窒素濃度を上記下限値以上、上記上限値以下とする。
【0054】
これにより、変形例に係るガス冷却システム100は、第2減圧部160による冷却効率を向上させることができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、上記実施形態において、窒素調整部150がメタン回収部154を備える構成を例に挙げた。しかし、窒素調整部150は、メタン回収部154を備えずともよい。窒素調整部150は、少なくとも、第1減圧部130によって減圧されることで得られる液化ガスLAの窒素濃度を調整することができればよい。
【0057】
また、上記実施形態において、中央制御部は、液化ガスLAの窒素濃度が、所定範囲となるように、コンプレッサ152の流量を制御することにより、第1気液分離ドラム140の圧力を制御し、また、メタン回収部154に導かれる液化天然ガスLNGの流量を制御する場合を例に挙げた。しかし、天然ガスNGの窒素濃度が略一定である場合、中央制御部は、コンプレッサ152の流量を制御せず(第1気液分離ドラム140の圧力を制御せず)、また、メタン回収部154に導かれる液化天然ガスLNGの流量を制御せずともよい。この場合、液化ガスLAの窒素濃度が、0.5mol%以上2mol%以下となるように、コンプレッサ152の流量、ならびに、メタン回収部154に導かれる液化天然ガスLNGの流量が設計される。
【0058】
また、上記実施形態および変形例において、ガス冷却システム100が窒素調整部150を備える構成を例に挙げた。しかし、ガス冷却システム100は、窒素調整部150を備えずともよい。すなわち、ガス冷却システムは、メタンを主成分とする冷却対象ガスを昇圧して超臨界流体SFとするブースタコンプレッサ110と、超臨界流体SFを冷却する予冷部122と、超臨界流体SFと、冷媒とを熱交換させる熱交換器124と、熱交換器124によって冷却された超臨界流体SFを減圧する第1減圧部130と、第1減圧部130によって減圧されることで得られる液化ガスを減圧する第2減圧部160と、第2減圧部160によって減圧されることで得られる気液混合物を気液分離する気液分離ドラム(第2気液分離ドラム170)と、気液分離ドラムによって分離された液化ガスを昇圧するポンプ180と、を備え、熱交換器124は、ポンプ180によって昇圧された液化ガスを冷媒として超臨界流体SFを冷却し、ポンプの吐出圧は、熱交換器124内において、液化ガスのうちの少なくとも一部が相変化する圧力である。
【0059】
ガス冷却システムのポンプ180は、吐出圧を上記下限圧力以上、上限圧力以下とする。上記したように、下限圧力は、ブースタコンプレッサ110の動力が過剰に増加しない圧力である。これにより、ポンプ180は、ブースタコンプレッサ110の動力の過剰な増加を防止することが可能となる。
【0060】
同様に、上限圧力は、熱交換器124内において、液化天然ガスLNGのうちの少なくとも一部が相変化する圧力である。これにより、熱交換器124は、液化天然ガスLNGの潜熱で超臨界流体SFを冷却することができる。したがって、熱交換器124は、超臨界流体SFよりも少量の液化天然ガスLNGで、超臨界流体SFを冷却することが可能となる。
【0061】
本開示は、供給圧の低い再生可能天然ガスを効率的に液化することができるため、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」、および、目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0062】
100:ガス冷却システム 110:ブースタコンプレッサ(コンプレッサ) 120:冷却装置 122:予冷部 124:熱交換器 130:第1減圧部 150:窒素調整部 160:第2減圧部 170:第2気液分離ドラム(気液分離ドラム) 180:ポンプ
図1
図2