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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20241203BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20241203BHJP
   H01Q 5/42 20150101ALI20241203BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q21/24
H01Q5/42
H01Q1/52
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023533496
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2022024160
(87)【国際公開番号】W WO2023282015
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2021112219
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】根本 崇弥
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-202204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0032154(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 21/24
H01Q 5/42
H01Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランドプレーンと、
平板状の第1給電素子と、
平板状の第2給電素子と、
前記第1給電素子に接続された第1給電線路と、
前記第2給電素子に接続された第2給電線路と
を備え、
前記グランドプレーン、前記第1給電素子、及び前記第2給電素子は、間隔を隔ててこの順番に積層されており、
前記第2給電線路の少なくとも一部は、前記グランドプレーンと同一の層内に配置され、前記グランドプレーンを平面視したとき前記第1給電素子と重なる位置に配置されているアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1給電素子の共振周波数が、前記第2給電素子の共振周波数より低い請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
平面視において、前記第1給電素子の面積が前記第2給電素子の面積より大きい請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2給電線路は、前記第2給電素子の2つの第2給電点に接続されており、前記第2給電素子の幾何中心と、2つの前記第2給電点のそれぞれを通過する2本の直線が直交する請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2給電線路は、前記第2給電素子の共振周波数の高周波信号を、2つの前記第2給電点に90°の位相差をつけて供給する請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2給電線路は、4つのポートを持つ90°ハイブリッド回路を含み、90°ハイブリッド回路の1つのポートに高周波信号が入力され、他の2つのポートが、それぞれ2つの前記第2給電点に接続されている請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2給電線路は、相対的に太い2本の伝送線路と、相対的に細い2本の伝送線路とが交互に接続された環状の伝送線路を含み、前記第2給電線路に高周波信号が入力される箇所と、2つの前記第2給電点のうち一方に接続された箇所との間の伝送線路が相対的に太く、2つの前記第2給電点の間に接続された伝送線路が相対的に細い請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第2給電線路は、1本の線路から分岐して2つの前記第2給電点に至る部分を含み、分岐点から2つの前記第2給電点までの電気長の差が、前記第2給電素子の共振周波数を持つ高周波信号の波長の1/4である請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1給電線路は、前記第1給電素子の少なくとも一つの第1給電点に接続されており、
平面視において、前記第1給電素子の幾何中心と前記第1給電点とを通過する直線と、前記第2給電素子の幾何中心と一方の前記第2給電点とを通過する直線とのなす角度が、35°以上55°以下である請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第1給電点は2つ設けられており、前記第1給電素子の幾何中心と、前記第1給電点のそれぞれを通過する2本の直線が直交する請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
さらに、
前記第2給電素子から間隔を隔てて配置され、平面視において前記第2給電素子と部分的に重なる平板状の第3給電素子と、
前記第3給電素子に接続された第3給電線路と
を備えた請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる2つの周波数帯域の電波を放射可能なスタック型のパッチアンテナが下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたスタック型のパッチアンテナは、グランドプレーン、その上に配置された低周波側の給電素子、及びその上に配置された高周波側の給電素子を含む。高周波側の給電素子の偏波方向と、低周波側の給電素子の偏波方向とのなす角度が、0°より大きく90°より小さい。これにより、アンテナ特性の低下が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/261806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給電素子に接続される給電線路の引き回しが複雑になると、給電線路のパターン設計が困難になる。例えば、給電線路用に導体層を増やさなければならない場合が生じ得る。給電線路の配置の自由度が高まると、パターン設計が容易になる。本発明の目的は、給電線路の配置の自由度を高めることが可能なアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
グランドプレーンと、
平板状の第1給電素子と、
平板状の第2給電素子と、
前記第1給電素子に接続された第1給電線路と、
前記第2給電素子に接続された第2給電線路と
を備え、
前記グランドプレーン、前記第1給電素子、及び前記第2給電素子は、間隔を隔ててこの順番に積層されており、
前記第2給電線路の少なくとも一部は、前記グランドプレーンと同一の層内に配置され、前記グランドプレーンを平面視したとき前記第1給電素子と重なる位置に配置されているアンテナ装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
従来、第2給電線路はグランドプレーンより下の層に配置される。これに対して本発明の一観点によるアンテナ装置においては、第2給電線路の少なくとも一部がグランドプレーンと同一の層内に配置される。すなわち、給電線路の配置の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施例によるアンテナ装置の断面図である。
図2図2Aは、第1実施例によるアンテナ装置の概略斜視図であり、図2Bは、第1実施例によるアンテナ装置の第2給電線路の等価回路図である。
図3図3A及び図3Bは、アンテナ装置の2つのシミュレーションモデルを示す斜視図である。
図4図4A及び図4Bは、それぞれ図3A及び図3Bのシミュレーションモデルの反射係数を示すグラフである。
図5図5A及び図5Bは、シミュレーション対象のアンテナ装置の断面図である。
図6図6は、図5A及び図5Bに示したシミュレーション対象のアンテナ装置のシミュレーション結果を示すグラフである。
図7図7A及び図7Bは、第1給電素子及び第2給電素子の給電点の位置に着目した平面図である。
図8図8は、角度θ=0°のときに、ポートP1、P2、P3のそれぞれから高周波信号を入力したときの反射係数S(1,1)、S(2,2)、S(3,3)のシミュレーション結果を示すグラフである。
図9図9A及び図9Bは、ポートP1から高周波信号を入力したときのポートP2、P3への通過係数S(1,2)、S(1,3)のシミュレーション結果を示すグラフである。
図10図10は、通過係数S(1,2)、S(1,3)と、角度θとの関係を示すグラフである。
図11図11は、第2実施例によるアンテナ装置の概略斜視図である。
図12図12Aは、第3実施例によるアンテナ装置の概略斜視図であり、図12Bは、第1給電素子及び第2給電素子の位置関係を示す平面図である。
図13図13は、第4実施例による通信装置に含まれるアンテナモジュールの断面図である。
図14図14は、第4実施例による通信装置のブロック図である。
図15図15は、第5実施例によるアンテナ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施例]
図1から図10までの図面を参照して、第1実施例によるアンテナ装置について説明する。
【0009】
図1は、第1実施例によるアンテナ装置の断面図である。
誘電体多層基板50が、1層目の導体層21、2層目の導体層22、3層目の導体層23、平板状の第1給電素子31、及び平板状の第2給電素子32を含む。1層目の導体層21は、グランドプレーン21G及び第2給電線路21Aを含む。グランドプレーン21G、第1給電素子31、及び第2給電素子32は、間隔を隔ててこの順番に積層されている。1層目の導体層21から見て第1給電素子31が配置された側を上側と定義する。
【0010】
1層目の導体層21の下側に、2層目の導体層22及び3層目の導体層23が間隔を隔てて順番に配置されている。2層目の導体層22は、グランドプレーン22G、2層目の第2給電線路22A、第1給電線路22B、22Cを含む。3層目の導体層23は、グランドプレーン23Gを含む。
【0011】
第2給電線路21Aは、グランドプレーン21Gを平面視したとき、第1給電素子31と重なる位置に配置されている。例えば、平面視において、第2給電線路21Aは第1給電素子31の外周線の内側に配置されている。第2給電線路21Aは、ビアVを介して2層目の第2給電線路22Aに接続されている。さらに、第2給電線路21Aは、第1給電素子31に設けられたクリアランスホールを通過する2つのビアVを介して第2給電素子32の2つの給電点32A、32Bに接続されている。第2給電線路21A、22Aを通して第2給電素子32に高周波信号が供給される。第2給電線路21Aを第2給電素子32に接続する2つのビアVは、平面視において、第2給電線路21Aを2層目の第2給電線路22Aに接続するビアVとは異なる位置に配置されている。平面視において、第1給電素子31と第2給電素子32とは、部分的に重なっている。
【0012】
第1給電線路22B、22Cは、それぞれ1層目のグランドプレーン21Gに設けられたクリアランスホールを通過するビアVを介して、第1給電素子31の給電点31A、31Bに接続されている。第1給電線路22B、22Cを通して第1給電素子31に高周波信号が供給される。
【0013】
平面視における第1給電素子31の寸法が、第2給電素子32の寸法より大きい。すなわち、第1給電素子31の共振周波数が第2給電素子32の共振周波数より低い。例えば、平面視において、第1給電素子31の面積が第2給電素子32の面積より大きい。
【0014】
次に、誘電体多層基板50及び導体部分の材料について説明する。例えば、誘電体多層基板50として、低温同時焼成セラミックス多層基板(LTCC多層基板)、低誘電率の液晶ポリマーからなる樹脂層を含む多層基板、フッ素系樹脂からなる樹脂層を含む多層基板、セラミックス多層基板等が用いられる。導体部分には、例えば、Al、Cu、Au、Ag、またはこれらの合金を主成分とする金属が用いられる。
【0015】
図2Aは、第1実施例によるアンテナ装置の概略斜視図である。図2Aにおいては、グランドプレーン21G、22G、23G(図1)の記載を省略している。第1給電素子31及び第2給電素子32は、ともに円形である。第1給電素子31の中心と第2給電素子32の中心とは、平面視において一致する。
【0016】
1層目の第2給電線路21Aは、平面視において円周状の形状を有し、第1給電素子31の外周線の内側に配置されている。図2Aにおいて、第2給電線路21Aを破線で示している。2層目の第2給電線路22Aが、ビアVを介して2層目の第2給電線路21Aに接続されている。さらに、第2給電線路21Aは、2つのビアVを介して、それぞれ第2給電素子32の2つの給電点32A、32Bに接続されている。この2つのビアVは、第1給電素子31に設けられたクリアランスホールを通過する。ポートP1から2層目の第2給電線路22A、及び1層目の第2給電線路21Aを介して給電点32A、32Bに高周波信号が供給される。
【0017】
図2Bは、第2給電線路21Aの等価回路図である。第2給電線路21Aは、90°ハイブリッド回路を構成している。すなわち、第2給電線路21Aは、特性インピーダンスがZの2本の伝送線路と、特性インピーダンスがZ/21/2の2本の伝送線路との組み合わせで構成される。特性インピーダンスがZ/21/2の2本の伝送線路の幅は、特性インピーダンスがZの2本の伝送線路の幅より太い。特性インピーダンスがZの2本の伝送線路と、特性インピーダンスがZ/21/2の2本の伝送線路とがリング状に交互に接続されている。各伝送線路の電気長は、第2給電素子32の共振周波数に相当する波長の1/4である。
【0018】
90°ハイブリッド回路の4つのポートのうち一つのポートに、第2給電線路22Aが接続されている。ポートP1から第2給電線路22Aを介して90°ハイブリッド回路に高周波信号が入力される。第2給電線路22Aに接続されたポートに対して特性インピーダンスZ/21/2を挟んで隣り合うポートが、給電点32Aに接続されている。第2給電線路22Aに接続されたポートに対して対角の位置のポートが、給電点32Bに接続されている。90°ハイブリッド回路の残りの一つのポートをPxと標記する。
【0019】
ポートP1から高周波信号を入力すると、一方の給電点32Bに出力される高周波信号の位相は、他方の給電点32Aに出力される高周波信号の位相より90°遅れる。ポートPxには、信号は出力されない。逆に、給電点32Bに入力される高周波信号に対して90°の位相遅れを持った高周波信号が給電点32Aに入力されると、ポートP1から高周波信号が出力され、ポートPxには出力されない。このように、第2給電線路21Aは、2つの給電点32A、32Bに、相互に90°の位相差を持たせて高周波信号を供給する機能を有する。
【0020】
例えば、図2Aに示したように、円周状の伝送線路の1/4周ごとに伝送線路の幅を増減することにより、90°ハイブリッド回路が構成される。円周の中心を挟んで相互に対向する部分の幅が等しく、隣り合う部分の幅が異なっている。すなわち、円周状の第2給電線路21Aは、相対的に幅の太い2つの部分と、細い2つの部分とを含む。なお、第2給電線路21Aを、円周以外の環状、例えば正方形の外周に沿う形状としてもよい。この場合、相互に対向する2つの辺に沿う部分の太さを等しくすればよい。
【0021】
2層目の第2給電線路22Aに接続された箇所と、給電点32Bに接続された箇所とを両端とする線分が、円周の中心を通過する。2層目の第2給電線路22Aに接続された箇所から給電点32Aに接続された箇所までの部分が相対的に太く、2つの給電点32Aと32Bとに接続された部分が相対的に細い。
【0022】
図2Aに示した第2給電素子32の中心から2つの給電点32A、32Bに向かって延びる2本の半径のなす中心角は90°である。この2つの給電点32A、32Bに、90°の位相差を持つ高周波信号が供給されるため、第2給電素子32から放射される電波は円偏波になる。
【0023】
図2Aに示す第1給電素子31の中心から2つの給電点31A、31Bに向かう2本の半径のなす中心角は90°である。給電点31A、31Bの一方に高周波信号を供給すると、第1給電素子31から放射される電波は直線偏波になる。給電点31A、31Bのそれぞれに90°の位相差を持つ高周波信号を供給すると、第1給電素子31から放射される電波は円偏波になる。
【0024】
1層目のグランドプレーン21G(図1)、第1給電素子31、及び第2給電素子32により、スタック型パッチアンテナが構成される。一般的なスタック型パッチアンテナでは、平面視において第1給電素子31と重なる領域のうち、給電用のビアVが通過するクリアランスホールを除いて、全域にグランドプレーン21G(図1)が配置される。これに対して第1実施例では、グランドプレーン21Gと同一の1層目の導体層21(図1)に、第2給電線路21Aが配置されている。
【0025】
以下、グランドプレーン21Gと同一の1層目の導体層21に第2給電線路21Aを配置する構成が、アンテナ特性に与える影響について説明する。
【0026】
第1給電素子31に高周波信号を供給すると、その縁とグランドプレーン21Gとの間に電界が集中する。第2給電線路21Aが配置された領域には電界が集中しないため、第2給電線路21Aが第1給電素子31の動作に与える影響は小さい。第2給電線路21Aが第1給電素子31の動作に与える影響が小さいことを確認するために、シミュレーションを行った。図3Aから図4Bまでの図面を参照して、このシミュレーション結果について説明する。
【0027】
図3A及び図3Bは、アンテナ装置の2つのシミュレーションモデルを示す斜視図である。図3Aに示したシミュレーションモデルは、第1実施例によるアンテナ装置(図1図2)と同様に、1層目の導体層21(図1)に第2給電線路21Aが配置されている。ポートP1から2層目の第2給電線路22A、1層目の第2給電線路21Aを介して第2給電素子32の2つの給電点32A、32Bに高周波信号が供給される。ポートP2、P3から、それぞれ第1給電線路22B、22Cを介して第1給電素子31の2つの給電点31A、31Bに高周波信号が供給される。
【0028】
図3Bに示したシミュレーションモデルでは、1層目の第2給電線路21A(図3A)が配置されていない。2つのポートP1、P6から、それぞれ第2給電線路22A、22Dを介して第2給電素子32の2つの給電点32A、32Bに高周波信号が供給される。ポートP2、P3から高周波信号を入力したときの反射係数S(2,2)、S(3,3)を求めた。
【0029】
図4A及び図4Bは、それぞれ図3A及び図3Bのシミュレーションモデルの反射係数を示すグラフである。横軸は周波数を単位「GHz」で表し、縦軸はSパラメータの値を単位「dB」で表す。図3A及び図3Bのいずれのシミュレーションモデルにおいても、第1給電素子31の共振周波数40GHzにおいて、反射係数S(2,2)、S(3,3)が下向きのピークを示している。このシミュレーションにより、グランドプレーン21G(図1)と同一の1層目の導体層21に第2給電線路21Aを配置しても、第1給電素子31の動作は、大きな影響を受けないことが確認された。
【0030】
また、一般的なパッチアンテナにおいては、給電素子と給電線路との間に、両者のアイソレーションを高めるためにグランドプレーンが配置される。ところが、第1実施例によるアンテナ装置においては、第2給電素子32(図1)と第2給電線路21A(図1)との間にグランドプレーンが配置されない。次に、図5Aから図6までの図面を参照して、第2給電素子32と第2給電線路21Aとの間にグランドプレーンが配置されない構成が、アンテナ特性に与える影響について説明する。
【0031】
第2給電素子32と第2給電線路21Aとのアイソレーションの程度を確認するために、シミュレーションを行った。
図5A及び図5Bは、アンテナ装置のシミュレーションモデルの断面図である。図5Aに示したシミュレーションモデルでは、第1実施例によるアンテナ装置の第2給電線路21Aに代えて、1層目の導体層21に配線21Xが配置されている。配線21Xの両端が、それぞれ2層目の導体層22に配置された配線22X、22Yに接続されている。
【0032】
1層目の導体層21に配置されたグランドプレーン21G及び配線21Xと、第2給電素子32との間に、第1給電素子31が配置されている。2層目の導体層22に配置された第2給電線路22Aから、グランドプレーン21G及び第1給電素子31を貫通するビアVを介して、第2給電素子32に高周波信号が供給される。第1給電素子31の共振周波数は40GHzであり、第2給電素子32の共振周波数は60GHzである。
【0033】
図5Bに示したシミュレーションモデルでは、図5Aに示したシミュレーションモデルから第1給電素子31が除去されている。
【0034】
第2給電線路22AがポートP1に接続され、配線22X、22Yが、それぞれポートP4、P5に接続される。ポートP1から高周波信号を入力したときの、ポートP1からポートP4、P5までのSパラメータS(1,4)、S(1,5)をシミュレーションにより求めた。
【0035】
図6は、シミュレーション結果を示すグラフである。横軸は周波数を単位「GHz」で表し、縦軸はSパラメータの計算値を単位「dB」で表す。図6のグラフ中の太い実線及び細い実線は、それぞれ図5Aに示したシミュレーションモデルの通過係数S(1,4)及びS(1,5)を示す。太い破線及び細い破線は、それぞれ図5Bに示したシミュレーションモデルの通過係数S(1,4)及びS(1,5)を示す。
【0036】
第1給電素子31が配置されているシミュレーションモデル(図5A)では、第1給電素子31が配置されていないシミュレーションモデル(図5B)と比べて、第2給電素子32の共振周波数60GHzの近傍において、S(1,4)、S(1,5)が10dB程度低下していることがわかる。これは、第2給電素子32と配線21Xとの間のアイソレーションが高いことを意味する。
【0037】
図5Aに示したように、第2給電素子32と配線21Xとの間に第1給電素子31を配置すると、両者のアイソレーションが高まることが確認された。これは、第1実施例によるアンテナ装置(図1図2)において、第2給電素子32と第2給電線路21Aとの間のアイソレーションの低下が抑制されることを意味する。第2給電素子32の共振周波数60GHzにおいて、S(1,4)、S(1,5)は-35dB以下である。これは、第1実施例によるアンテナ装置において、第2給電素子32と第2給電線路21Aとの間の十分なアイソレーションが確保されることを意味する。
【0038】
次に、図7Aから図10までの図面を参照して、第1給電素子31の給電点31A、31Bと、第2給電素子32の給電点32A、32Bとの好ましい位置関係について説明する。
【0039】
図7A及び図7Bは、第1給電素子31及び第2給電素子32の給電点の位置に着目した平面図である。第1給電素子31及び第2給電素子32の平面視における幾何中心をOと標記する。幾何中心Oから第1給電素子31の2つの給電点31A、31Bに向かう2本の半径のなす中心角α、及び幾何中心Oから第2給電素子32の2つの給電点32A、32Bに向かう2本の半径のなす中心角αは、ともに90°である。
【0040】
図7Aは、平面視において、幾何中心O、第1給電素子31の一方の給電点31A、及び第2給電素子32の一方の給電点32Aが1本の直線上に位置し、幾何中心O、第1給電素子31の他方の給電点31B、及び第2給電素子32の他方の給電点32Bも1本の直線上に位置する状態を示している。図7Bは、第1給電素子31の2つの給電点31A、31Bを、幾何中心Oを中心として角度θだけ回転移動させた状態を示している。図7Aに示した状態は、角度θ=0°の状態に相当する。
【0041】
ポートP1から第2給電線路22A、21Aを介して第2給電素子32の2つの給電点32A、32Bに高周波信号が供給される。ポートP2、P3から、それぞれ第1給電線路22B、22Cを介して第1給電素子31の給電点31A、31Bに高周波信号が供給される。
【0042】
図8は、角度θ=0°のときに、ポートP1、P2、P3のそれぞれから高周波信号を入力したときの反射係数S(1,1)、S(2,2)、S(3,3)のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は周波数を単位「GHz」で表し、縦軸はSパラメータの計算値を単位「dB」で表す。グラフ中の実線、太い破線、及び細い破線が、それぞれ反射係数S(1,1)、S(2,2)、S(3,3)を示す。周波数40GHzの近傍で第1給電素子31が共振し、60GHzの近傍で第2給電素子32が共振していることがわかる。反射係数S(1,1)、S(2,2)、S(3,3)の傾向は、角度θを変化させても大きな変化はなかった。
【0043】
図9A及び図9Bは、ポートP1から高周波信号を入力したときのポートP2、P3への通過係数S(1,2)、S(1,3)のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は周波数を単位「GHz」で表し、縦軸はSパラメータの計算値を単位「dB」で表す。グラフ中の実線及び破線が、それぞれ通過係数S(1,2)、S(1,3)示す。図9Aは、角度θ=0°の状態、図9Bは、角度θ=45°の状態のシミュレーション結果を示す。
【0044】
ポートP1から第2給電素子32に供給した高周波信号が、第1給電素子31に結合してポートP2、P3から出力される。第1給電素子31と第2給電素子32とのアイソレーションが高いことが好ましいことから、通過係数S(1,2)、S(1,3)が小さいことが好ましい。第2給電素子32の共振周波数60GHzにおいて、角度θ=0°のとき、S(1,2)=-13.5dBであり、S(1,3)=-10.62dBである。これに対して角度θ=45°のとき、S(1,2)=-19.59dBであり、S(1,3)=-17.64dBである。この結果から、角度θを0°にするよりも、45°にする方が、アイソレーションを高める点で好ましいことがわかる。
【0045】
角度θを0°から360°まで変化させて、通過係数S(1,2)、S(1,3)を求めた。
【0046】
図10は、通過係数S(1,2)、S(1,3)と、角度θとの関係を示すグラフである。横軸は角度θを単位「度」で表し、縦軸はSパラメータの計算値を単位「dB」で表す。グラフ中の太い破線及び細い破線が、それぞれ通過係数S(1,2)及びS(1,3)を表す。グラフ中の太い実線は、通過係数S(1,2)及びS(1,3)のうち値が大きい方(すなわち、特性が悪い方)の通過係数を連ねた線である。通過係数S(1,2)及びS(1,3)のうち値が大きい方の通過係数をSLと標記する。すなわち、SL=max(S(1,2)、S(1,3))である。角度θが45°、135°、225°、315°の近傍R45、R135、R225、R315で、通過係数SLが小さくなっていることがわかる。すなわち、角度θが45°+90°×n(n=0,1,2,3)の近傍で、通過係数SLが小さくなっていることがわかる。
【0047】
また、角度θ=45°+90°×n±10°の範囲で、角度θ=0°+90°×nの場合と比べて、通過係数SLが小さくなっている。すなわち、角度θ=45°+90°×n±10°の範囲で、アイソレーションを高める点で優位性が認められた。アイソレーションを高めるために、第1給電素子31の幾何中心O及び給電点31A、31Bとの一方を通過する直線と、第2給電素子32の幾何中心O及び給電点32A、32Bの一方を通過する直線とのなす角度(90°未満の方の角度)が35°以上55°以下になるように、給電点を配置することが好ましい。
【0048】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例では、第1給電素子31に対してグランドとして機能するグランドプレーン21G(図1)と同一の1層目の導体層21に、第2給電線路21Aを配置している。1層目の導体層21への給電線の配置を禁止する場合と比べて、給電線路の配置の自由度が高まる。第2給電線路21Aを他の導体層に配置する必要がなくなるため、他の導体層の配線の配置の自由度が高まるという優れた効果が得られる。その結果、導体層の層数の増大を抑制することができ、アンテナ装置の薄型化を図ることが可能になる。また、図3Aから図6までの図面を参照して説明したように、グランドプレーン21Gと同一の1層目の導体層21に第2給電線路21Aを配置しても、アンテナ特性に与える影響は小さい。
【0049】
次に、第1実施例の変形例について説明する。
第1実施例では、第2給電素子32の2つの給電点32A、32Bに90°の位相差をつけて高周波信号を供給する第2給電線路21Aを、90°ハイブリッド回路で構成しているが、第2給電線路21Aとして、他の構成の伝送線路を用いてもよい。例えば、1本の伝送線路から2本の伝送線路に分岐させ、分岐後の2本の伝送線路を、それぞれ給電点32A、32Bに接続してもよい。この場合、円偏波を放射させるためには、分岐点から2つの第2給電点32A、32Bまでの2本の伝送線路の電気長の差を、第2給電素子32の共振周波数に相当する波長の1/4にするとよい。
【0050】
第2給電素子32に無給電素子を装荷してもよい。第2給電素子32と無給電素子とを複共振させることにより、広帯域化を図ることができる。
【0051】
[第2実施例]
次に、図11を参照して第2実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1から図10までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0052】
図11は、第2実施例によるアンテナ装置の概略斜視図である。第1実施例によるアンテナ装置(図2)においては、第1給電素子31に2つの給電点31A、31Bを設け、第2給電素子32に2つの給電点32A、32Bを設けている。これに対して第2実施例では、第1給電素子31に1つの給電点31Aが設けられ、第2給電素子32に1つの給電点32Aが設けられている。
【0053】
第1実施例では、1層目の導体層21に配置された第2給電線路21A(図2)が円周状であるが、第2実施例では、第2給電線路21Aが、例えば直線状である。第2給電線路21Aの一端がビアVを介して第2給電素子32の給電点32Aに接続されている。第2給電線路21Aの他端は、ビアVを介して2層目の第2給電線路22Aに接続されている。2層目の導体層22に配置された配線22Eが、1層目の導体層21に配置された第2給電線路21Aと、平面視において交差する。
【0054】
給電点32Aと2層目の第2給電線路22Aとは、配線22Eから見て相互に反対側に配置されている。平面視において、第1給電素子31の幾何中心Oと給電点31Aとを通過する直線と、第2給電素子32の幾何中心Oと給電点32Aとを通過する直線とのなす角度をθと標記する。角度θを変化させると、第1給電素子31と第2給電素子32とのアイソレーションが変化する。
【0055】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例においても第1実施例と同様に、グランドプレーン21G(図1)と同一の1層目の導体層21(図1)に第2給電線路21Aが配置されている。このため、給電線路の配置の自由度が高まるという優れた効果が得られる。例えば、第2給電線路21Aと交差する配線22Eを、2層目の第2給電線路22Aと同一の2層目の導体層22(図1)に配置することが可能である。
【0056】
第2実施例では、第1給電素子31及び第2給電素子32から、直線偏波の電波が放射される。2つの直線偏波の偏波面が直交する場合に、第1給電素子31と第2給電素子32とのアイソレーションが最も高くなる。アイソレーションを高くするために、角度θを90°にすることが好ましい。なお、図10を参照して説明した第1実施例と同様の考え方により、角度θを80°以上100°以下にすることが好ましい。
【0057】
次に、第2実施例の変形例について説明する。第2実施例では、第1給電素子31及び第2給電素子32に、給電点を1つずつ設けているが、一方の給電素子に2つの給電点を設けてもよい。第2給電素子32に2つの給電点を設ける場合には、第1実施例(図2)と同様に、2つの給電点に供給される高周波信号に90°の位相差がつくように、第2給電線路21Aを配置するとよい。
【0058】
[第3実施例]
次に、図12A及び図12Bを参照して第3実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1から図10までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0059】
図12Aは、第3実施例によるアンテナ装置の概略斜視図であり、図12Bは、第1給電素子31及び第2給電素子32の位置関係を示す平面図である。第1実施例によるアンテナ装置では、第1給電素子31及び第2給電素子32が円形である。これに対して第3実施例では、第1給電素子31及び第2給電素子32が正方形である。第1給電素子31の2つの給電点31A、31Bが、第1給電素子31の相互に隣り合う2つの辺の中点と、第1給電素子31の幾何中心Oとを結ぶ線分上に配置されている。同様に、第2給電素子32の2つの給電点32A、32Bが、第2給電素子32の相互に隣り合う2つの辺の中点と、第2給電素子32の幾何中心Oとを結ぶ線分上に配置されている。
【0060】
第1実施例と同様に、第1給電素子31の幾何中心O及び第1給電素子31の一方の給電点31Aを通過する直線と、第2給電素子32の幾何中心O及び第2給電素子32の一方の給電点32Aを通過する直線とのなす角度(90°未満の角度)をθと標記する。第1実施例では、平面視において第2給電素子32が第1給電素子31の外周線の内側に配置されている。これに対して第3実施例では、第2給電素子32の頂点の近傍が、平面視において第1給電素子31の外側にはみ出す場合がある。
【0061】
第1実施例と同様に、グランドプレーン21Gと同一の1層目の導体層21に、第2給電線路21Aが配置されている。図12Aでは、第2給電線路21Aを直線状に示しているが、第1実施例(図2)と同様に第2給電線路21Aを円周状にしてもよい。
【0062】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例においても第1実施例と同様に、給電線路の配置の自由度が高まるという優れた効果が得られる。また、第1給電素子31と第2給電素子32とのアイソレーションを高めるために、角度θを35°以上55°以下にすることが好ましい。
【0063】
次に、第3実施例の変形例について説明する。第3実施例では、第1給電素子31及び第2給電素子32の平面視における形状を正方形にしているが、その他の形状にしてもよい。例えば、長方形、四隅を正方形状に切り欠いた方形状等にしてもよい。また、第1給電素子31及び第2給電素子32の一方を放形状にし、他方を円形にしてもよい。第1給電素子31及び第2給電素子32を種々の形状にすることが可能であるが、どのような形状の場合にも、第1給電素子31の共振周波数が第2給電素子32の共振周波数より低くなるようにするとよい。
【0064】
[第4実施例]
次に、図13及び図14を参照して第4実施例による通信装置について説明する。第4実施例による通信装置は、第1実施例から第3実施例までのいずれかの実施例によるアンテナ装置、またはこれらの変形例によるアンテナ装置を含んでいる。
【0065】
図13は、第4実施例による通信装置に含まれるアンテナモジュール100の断面図である。1枚の誘電体多層基板50に、複数のアンテナ素子30が設けられている。複数のアンテナ素子30は、一次元または二次元のアレイ状に配置されており、アレイアンテナを構成する。
【0066】
複数のアンテナ素子30の各々は、第1給電素子31及び第2給電素子32を含む。誘電体多層基板50は、その内部に1層目の導体層21、及びその下側の多層配線構造を含む。1層目の導体層21は、グランドプレーン21G、及びアンテナ素子30ごとに配置された第2給電線路21Aを含む。グランドプレーン21G、第2給電線路21A、第1給電素子31及び第2給電素子32の構成は、第1実施例から第3実施例までのいずれかの実施例によるアンテナ装置の構成と同一である。
【0067】
誘電体多層基板50の下面に高周波集積回路素子(RFIC)110が実装されている。高周波集積回路素子110は、誘電体多層基板50内に設けられた配線を介して、複数のアンテナ素子30の第1給電素子31及び第2給電素子32に接続されている。
【0068】
図14は、第4実施例による通信装置のブロック図である。第4実施例による通信装置は、アンテナモジュール100及びベースバンド集積回路素子(BBIC)135を含む。アンテナモジュール100は、高周波集積回路素子110及びアンテナ装置130を含む。アンテナ装置130は、複数のアンテナ素子30を含む。
【0069】
アンテナモジュール100は、ベースバンド集積回路素子135から入力されたベースバンド信号または中間周波信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ装置130から送信する。さらに、アンテナ装置130で受信された高周波信号をダウンコンバートしてベースバンド集積回路素子135に出力する。
【0070】
次に、高周波集積回路素子110の構成及び機能について説明する。高周波集積回路素子110は、複数の送受信系統120を備えている。複数の送受信系統120のそれぞれは、移相器115、減衰器114、スイッチ113、パワーアンプ112T、ローノイズアンプ112R、及びスイッチ111を含む。4つの送受信系統ごとに、合成分波器116、スイッチ117、ミキサ118、及び増幅回路119が備えられている。複数の送受信系統120には、アンテナ素子30の低周波側の第1給電素子31による送受信信号を処理する送受信系統120と、高周波側の第2給電素子32による送受信信号を処理する送受信系統120とが含まれる。
【0071】
ベースバンド集積回路素子135から増幅回路119に送信すべき信号が入力される。増幅回路119は、入力された信号を増幅し、ミキサ118が、増幅された信号をアップコンバートする。アップコンバートされた高周波信号が、スイッチ117を経由して合成分波器116に入力される。合成分波器116で分波された複数の高周波信号が、それぞれ送受信系統120の移相器115に入力される。
【0072】
移相器115で所定の位相遅れを受けた高周波信号が、減衰器114、スイッチ113、パワーアンプ112T、スイッチ111を経由して、アンテナ装置130のアンテナ素子30に供給される。
【0073】
アンテナ素子30で受信された高周波信号が、スイッチ111、ローノイズアンプ112R、スイッチ113、減衰器114、及び移相器115を経由して合成分波器116に入力される。合成分波器116で合成された受信信号が、スイッチ117を経由してミキサ118に入力される。ミキサ118は、受信信号をダウンコンバートする。ミキサ118でダウンコンバートされた信号が、増幅回路119を経由してベースバンド集積回路素子135に入力される。
【0074】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
第4実施例による通信装置は、第1実施例から第3実施例までのいずれかの実施例によるアンテナ装置を搭載している。このため、第1実施例から第3実施例までの実施例と同様に、アンテナ装置内の給電線路の配置の自由度が高まるという優れた効果が得られる。このため、誘電体多層基板50(図13)内の導体層の層数の増加を抑制することができる。導体層の層数の増加が抑制されるため、アンテナモジュールを薄型にすることが可能になる。
【0075】
[第5実施例]
次に、図15を参照して第5実施例によるアンテナ装置について説明する。以下、図1から図10までの図面を参照して説明した第1実施例によるアンテナ装置と共通の構成については説明を省略する。
【0076】
図15は、第5実施例によるアンテナ装置の断面図である。第1実施例によるアンテナ装置(図1)は、第1給電素子31と第2給電素子32との2つの給電素子を含んでいる。これに対して第5実施例によるアンテナ装置は、第1給電素子31及び第2給電素子32に加えて、第2給電素子32から間隔を隔てて配置された平板状の第3給電素子33を含んでいる。平面視において、第3給電素子33は第2給電素子32と部分的に重なっている。すなわち、第1給電素子31、第2給電素子32、及び第3給電素子33が、この順番に積み重ねられている。
【0077】
3層目の導体層23の下側に第3給電線路24Aが配置されている。第3給電線路24Aは、グランドプレーン23G、22G、21G、第1給電素子31、及び第2給電素子32に設けられたクリアランスホールを通るビアVを介して第3給電素子33に接続されている。
【0078】
第3給電素子33の共振周波数は、第2給電素子32の共振周波数より高い。例えば、平面視において、第3給電素子33の面積が第2給電素子32の面積より小さい。
【0079】
次に、第5実施例の優れた効果について説明する。
第5実施例によるアンテナ装置は、3つの周波数帯域の電波の送受信を行うことができる。また、第1実施例と同様にグランドプレーン21Gと同一の1層目の導体層21に第2給電線路21Aが配置されているため、給電線路の配置の自由度が高まるという優れた効果が得られる。
【0080】
次に、第5実施例の変形例について説明する。第5実施例では、第3給電素子33の共振周波数が第2給電素子32の共振周波数より高いが、その逆に第2給電素子32の共振周波数が第3給電素子33の共振周波数より高い構成としてもよい。この場合も、第1給電素子31の共振周波数は、第2給電素子32及び第3給電素子33の何れの共振周波数より低い。
【0081】
第5実施例では、グランドプレーン21Gと同一の1層目の導体層21に、第2給電素子32に接続された第2給電線路21Aが配置されている。第2給電線路21Aに代えて、または第2給電線路21Aに追加して、第3給電素子33に接続された給電線路を、1層目の導体層21に配置してもよい。この場合、1層目の導体層21に配置された給電線路は、平面視において第1給電素子31の外周線の内側に配置するとよい。
【0082】
第5実施例では、第1給電素子31、第2給電素子32、及び第3給電素子33の3つの給電素子が積み重ねられているが、4つ以上の平板状の給電素子を積み重ねてもよい。また、第5実施例では、第3給電素子33に接続された第3給電線路24Aを、3層目の導体層23の下側に配置しているが、2層目の導体層22に配置してもよい。
【0083】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0084】
21 1層目の導体層
21A 1層目の第2給電線路
21G グランドプレーン
21X 配線
22 2層目の導体層
22A 2層目の第2給電線路
22B、22C 第1給電線路
22D 2層目の第2給電線路
22E 配線
22G グランドプレーン
22X、22Y 配線
23 3層目の導体層
23G グランドプレーン
24A 第3給電線路
30 アンテナ素子
31 第1給電素子
31A、31B 給電点
32 第2給電素子
32A、32B 給電点
33 第3給電素子
50 誘電体多層基板
100 アンテナモジュール
110 高周波集積回路素子(RFIC)
111 スイッチ
112T パワーアンプ
112R ローノイズアンプ
113 スイッチ
114 減衰器
115 移相器
116 合成分波器
117 スイッチ
118 ミキサ
119 増幅回路
120 送受信系統
130 アンテナ装置
135 ベースバンド集積回路素子(BBIC)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15