(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】光送信機および光送信方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20241203BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20241203BHJP
【FI】
G02F1/01 B
H04B10/516
(21)【出願番号】P 2023535745
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048781
(87)【国際公開番号】W WO2022137517
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】ウー ミンチー
(72)【発明者】
【氏名】ル タヤンディエ ドゥ ガボリ エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】村岡 一志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正規
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0274621(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0037286(US,A1)
【文献】特開2014-146915(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106154592(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0028418(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0115980(US,A1)
【文献】特開2012-042796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0207483(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力するように構成された光源と、
前記光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐するように構成された分岐部と、
前記第1の分岐光を変調して、第1の変調光信号を出力するように構成された第1の光変調器と、
前記第2の分岐光を変調して、第2の変調光信号を出力するように構成された第2の光変調器と、
前記第1の変調光信号と前記第2の変調光信号の間の位相差を調整するように構成された第3の光変調器と、
前記第1の変調光信号および前記第2の変調光信号を合波して、結合光信号を出力するように構成された合波部と、
前記第1の光変調器に印加される第1のバイアス電圧、前記第2の光変調器に印加される第2のバイアス電圧および前記第3の光変調器に印加される第3のバイアス電圧のうちの一つである調整バイアス電圧を、前記結合光信号に基づいて調整するように構成された制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1のバイアス電圧、前記第2のバイアス電圧および
前記第3の
バイアス電圧のうち、前記調整バイアス電圧以外のバイアス電圧の値を維持し、
前記結合光信号のエラーを
MER(modulation error ratio)によって測定し、
前記エラーが閾値を超えているときには、前記調整バイアス電圧を調整し、
前記調整バイアス電圧の調整において、前記エラーが前記閾値を超えていないときには、前記調整バイアス電圧の値を維持し、
前記調整バイアス電圧を維持したあと特定の時間が経過したときに、再び前記エラーを評価する、
光送信機。
【請求項2】
前記制御部は、前記調整バイアス電圧の値を変化量だけ増加および減少させる、
請求項1に記載の光送信機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1のバイアス電圧、前記第2のバイアス電圧および前記第3の
バイアス電圧のうちの一つに基づいて、前記変化量を算出する、
請求項2に記載の光送信機。
【請求項4】
前記制御部は、前記光送信機の温度に基づいて、前記変化量を算出する、
請求項2又は3に記載の光送信機。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の分岐光を変調するための駆動信号のRMS値、または前記第2の分岐光を変調するための駆動信号のRMS値に基づいて前記変化量を算出する、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の光送信機。
【請求項6】
前記制御部は、前記光送信機の使用時間に基づいて、前記変化量を算出する、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の光送信機。
【請求項7】
光を出力することと、
前記光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐することと、第1の光変調器によって、前記第1の分岐光を変調して、第1の変調光信号を出力することと、
第2の光変調器によって、前記第2の分岐光を変調して、第2の変調光信号を出力することと、
第3の光変調器によって、前記第1の変調光信号と前記第2の変調光信号の間の位相差を調整することと、
前記第1の変調光信号および前記第2の変調光信号を合波して、結合光信号を出力することと、
前記第1の光変調器に印加される第1のバイアス電圧、前記第2の光変調器に印加される第2のバイアス電圧および前記第3の光変調器に印加される第3のバイアス電圧のうちの一つである調整バイアス電圧を、前記結合光信号に基づいて調整することと、
前記第1のバイアス電圧、前記第2のバイアス電圧および
前記第3の
バイアス電圧のうち、前記調整バイアス電圧以外のバイアス電圧の値を維持することと、
前記結合光信号のエラーを
MER(modulation error ratio)によって測定することと、
前記エラーが閾値を超えているときには、前記調整バイアス電圧を調整することと、
前記調整バイアス電圧の調整において、前記エラーが前記閾値を超えていないときには、前記調整バイアス電圧の値を維持することと、
前記調整バイアス電圧を維持したあと特定の時間が経過したときに、再び前記エラーを評価することと、
を含む光送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信機および光信号送信方法に関し、特に、ディザ信号を用いずに簡潔な構成で光変調器に対する自動バイアス制御を行う、光送信機および光信号送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークにおいて、光送信機は、光変調器によって駆動電圧に基づいて変調される光信号を出力する。光信号の品質は、光変調器の温度変動および経年劣化によって生じる動作点変動によって低下する。動作点変動を抑制するために、低周波数ディザ信号を用いた自動バイアス制御が光変調器に採用されている。しかしながら、低周波数ディザ信号を用いる場合、光変調器に印加される電圧の振幅が低周波数ディザ信号によって変化し、それにより光信号の品質が低下する。
【0003】
特許文献1は、光信号を変調する複数の変調領域を備える変調器において、ディザ信号を用いずに、複数の変調領域に印加される複数のバイアス電圧を制御する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方では、すべての変調領域に光検出器を配置することが必要であるため、特許文献1に開示された変調器の構成は複雑である。
【0006】
本発明の代表的な目的は、光送信機および光信号送信方法、特に、ディザ信号を用いずに簡潔な構成で光変調器に対する自動バイアス制御を行う、光送信機および光信号送信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な態様による光送信機は、
光を出力するように構成された光源と、
光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐するように構成された分岐部と、
第1の分岐光を変調して、第1の変調光信号を出力するように構成された第1の光変調器と、
第2の分岐光を変調して、第2の変調光信号を出力するように構成された第2の光変調器と、
第1の変調光信号と第2の変調光信号の間の位相差を調整するように構成された第3の光変調器と、
第1の変調光信号および第2の変調光信号を合波して、結合光信号を出力するように構成された合波部と、
第1の光変調器に印加される第1のバイアス電圧、第2の光変調器に印加される第2のバイアス電圧および第3の光変調器に印加される第3のバイアス電圧のうちの一つである調整バイアス電圧を、結合光信号に基づいて調整するように構成された制御部と、を備え、
制御部は、第1のバイアス電圧、第2のバイアス電圧および第3の電圧のうち、調整電圧以外のバイアス電圧の値を維持する。
【0008】
本発明の代表的な態様による光送信方法は、
光を出力することと、
光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐することと、
第1の光変調器によって、第1の分岐光を変調して、第1の変調光信号を出力することと、
第2の光変調器によって、第2の分岐光を変調して、第2の変調光信号を出力することと、
第3の光変調器によって、第1の変調光信号と第2の変調光信号の間の位相差を調整することと、
第1の変調光信号および第2の変調光信号を合波して、結合光信号を出力することと、
第1の光変調器に印加される第1のバイアス電圧、第2の光変調器に印加される第2のバイアス電圧および第3の光変調器に印加される第3のバイアス電圧のうちの一つである調整バイアス電圧を、結合光信号に基づいて調整することと、
第1のバイアス電圧、第2のバイアス電圧および第3の電圧のうち、調整電圧以外のバイアス電圧の値を維持することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明による代表的な利点は、ディザ信号を用いずに簡潔な構成で光変調器に対する自動バイアス制御を行うことである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による光送信機の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態による光送信機を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態による光送信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態による光送信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態による光送信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態による光送信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施形態による光送信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態による光送信機の変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態による光送信機の構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3の実施形態による光送信機の構成例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施形態による光送信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施形態
光送信機1について
図1に基づいて説明する。
図1は、光送信機1の構成例を示すブロック図である。光送信機1は、変調光信号を出力する。例えば、光送信機1は、直交振幅変調(Quadrature Amplitude Modulation;QAM)光信号を出力する。
【0012】
図1に示すとおり、光送信機1は、光源10、直交変調器20、DSP(Digital signal processor)30、AMP(Amplifier)35、PD(Photo didector)40、ADC(Analog to digital converter)45、エラー評価部50、バイアスコントローラ55、バイアス生成器60およびDAC(Digital to analog converter)65を備える。
【0013】
光源10は、連続光を出力する。例えば、光源10は、ダイオードレーザである。光源10は、直交変調器20に接続されている。
【0014】
図2は、直交変調器20の構成例を示すブロック図である。
図2に示すとおり、直交変調器20は、分岐部21、第1の光変調器22、第2の光変調器23、第3の光変調器24および合波部25を備える。
【0015】
図1に示すとおり、直交変調器20は、光源10およびDAC65と接続されている。直交変調器20は、光源10からの光を変調して、光送信機1の外部にQAM光信号を出力する。
【0016】
分岐部21は、光源10からの光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐する。分岐部21は、第1の分岐光を第1の光変調器22に出力する。分岐部21は、第2の分岐光を第2の光変調器23に出力する。
【0017】
第1の光変調器22は、第1の分岐光を変調して、第1の変調光信号を出力する。第1の光変調器22は、分岐部21、第3の光変調器24およびDAC65と接続されている。例えば、第1の光変調器22は、MZM(Mach―Zehnder Modulator)である。第1の光変調器22は、振幅変調方式を用いる。第1の光変調器22は、DAC65によって印加されるバイアス電圧(後述するVi)およびAMP35からの駆動信号に基づいて、第1の分岐光を変調する。
【0018】
第2の光変調器23は、第2の分岐光を変調して、第2の変調光信号を出力する。第2の光変調器23は、分岐部21、第3の光変調器24およびDAC65と接続されている。例えば、第2の光変調器23はMZMである。第2の光変調器23は、振幅変調方式を用いる。第2の光変調器23は、DAC65によって印加されるバイアス電圧(後述するVq)およびAMP35からの駆動信号に基づいて、第2の分岐光を変調する。
【0019】
第3の光変調器24は、第1の変調光信号と第2の変調光信号の間の位相差を調整する。第3の光変調器24は、第1の光変調器22、第2の光変調器23、合波部25およびDAC65と接続されている。例えば、第3の光変調器24は、MZI(Mach-Zehnder interferometer)である。第3の光変調器24は、DAC65によって印加されるバイアス電圧(後述するVp)に基づいて、第1の変調光信号と第2の変調光信号の間の位相差を調整する。具体的には、第3の光変調器24は、第1の変調光信号および第2の変調光信号が互いに直交するように、位相差を調整する。
【0020】
合波部25は、第1の変調光信号および第2の光変調信号を合波して、結合光信号を出力する。
【0021】
DSP30は、不図示のクライアント装置からのデータストリームに基づいてI信号およびQ信号をAMP35に出力する。AMP35は、I信号およびQ信号を増幅する。AMP35は、更に、駆動信号として、第1の光変調器22および第2の光変調器23それぞれに、I信号およびQ信号を出力する。
【0022】
PD40は、直交変調器20からの結合光信号をアナログ信号に変換して、アナログ信号をADC45に出力する。ADC45は、アナログ信号をデジタル信号に変換して、デジタル信号をエラー評価部50に出力する。
【0023】
エラー評価部50は、ADC45からのデジタル信号のMER(modulation error ratio)を測定する。エラー評価部50は、更に、MERが予め定められた閾値未満かどうかを判断する。具体的には、エラー評価部50は、QAM変調方式のための理想的なコンスタレーションを予め保存する。エラー評価部50は、理想的なコンスタレーションとデジタル信号から生成されるコンスタレーションとを比較することにより、デジタル信号のMERを測定する。エラー評価部50は、MERが予め定められた閾値未満かどうかを判断して、判断結果をバイアスコントローラ55に出力する。
【0024】
バイアスコントローラ55は、エラー評価部50からの判断結果に応じて、バイアス電圧Vi、VqおよびVpの値をセットする。バイアスコントローラ55は、MERが予め定められた閾値を超えていることを判断結果が示すときに、バイアス電圧Vi、VqおよびVpの値を変更する。バイアスコントローラ55は、MERが予め定められた閾値未満であることを判断結果が示すときに、バイアス電圧Vi、VqおよびVpの値を維持する。バイアスコントローラ55の詳細は後述する。
【0025】
バイアス生成器60は、バイアス電圧Vi、VqおよびVpの値を取得する。バイアス生成器は、バイアス電圧Vi、VqおよびVpに対応する振幅の電圧をDAC65に印加する。DAC65は、バイアス生成器から印加された電圧をアナログ信号に変換して、アナログ信号を直交変調器20に印加する。具体的には、DAC65は、バイアス電圧Viに対応する電圧を第1の光変調器22に印加する。DAC65は、バイアス電圧Vqに対応する電圧を第2の光変調器23に印加する。DAC65は、バイアス電圧Vpに対応する電圧を第3の光変調器24に印加する。
【0026】
次に、
図3、
図4、
図5、
図6および
図7に基づいて光送信機1の動作について説明する。
図3から7は、光送信機1の動作を示すフローチャートである。
【0027】
まず、光源10は、直交変調器20に光を出力する(S101)。直交変調器20の分岐部21は、光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐する(S102)。第1の光変調器22は第1の分岐光を変調し、第2の光変調器23は第2の分岐光を変調する(S103)。続いて、第1の光変調器22は、第1の変調光信号を出力する。第2の光変調器23は、第2の変調光信号を出力する。
【0028】
第3の光変調器24は、第1の変調光信号と第2の変調光信号の間の位相差を調整する(S104)。合波部25は、第1の変調光信号および第2の変調光信号を合波する(S105)。直交変調器20は、第1の変調光信号および第2の変調光信号を含む結合光信号を出力する(S106)。
【0029】
エラー評価部50は、直交変調器20からの結合光信号のエラーを評価する(S107)。具体的には、エラー評価部50は、結合光信号からMERを測定する。エラー評価部50は、MERが予め定められた閾値未満かどうか判断する(S108)。バイアスコントローラ55は、測定されたMERが閾値を超えていないときには(S108のNo)、バイアス電圧Vi、VqおよびVpの値を維持する。バイアスコントローラ55が値を維持したあと特定の時間が経過したときに(S109)、エラー評価部50は再び結合光信号のエラーを評価する(S107)。
【0030】
測定されたMERが閾値を超えているときには(S108のYes)、バイアスコントローラ55は、ΔViをバイアス電圧Viの値に加算し、バイアス電圧VqおよびVpの値を維持する(S110)。換言すれば、バイアスコントローラ55は、エラーが閾値を超えているときには、調整対象の電圧(以下、調整電圧と記載)(バイアス電圧Vi)を調整する。ΔViの値は、予め決定される。S110の処理において、バイアスコントローラ55は、ΔViだけ増加されたViの値をバイアス生成器60に与える。エラー評価部50は、ΔViだけ増加されたバイアス電圧Viが第1の光変調器22に印加されている間に、結合光信号のMERを測定する(S111)。
【0031】
バイアスコントローラ55は、ΔViをバイアス電圧Viの値から減算し、バイアス電圧VqおよびVpの値を維持する(S112)。S112の処理において、バイアスコントローラ55は、ΔViだけ減少したViの値をバイアス生成器60に与える。エラー評価部50は、増加された値に対応するバイアス電圧Viが第1の光変調器22に印加されている間に、結合光信号のMERを測定する(S113)。
【0032】
エラー評価部50は、更に、測定されたMERが予め定められた閾値未満かどうかを判断する(S114)。具体的には、エラー評価部50は、S111において測定されたMERとS113において測定されたMERのうちの小さい方のMERと、閾値とを比較する。バイアスコントローラ55は、MERが閾値を超えていないときには(S114のNo)、バイアス電圧Viの値を変更する(S115)。バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Viの値を、閾値と比較したMERが検出されたときに(S114のNo)印加されていたバイアス電圧Viの値に変更する。例えば、エラー評価部50が、閾値とS111において測定されたMERとを比較したときには、バイアス電圧ViはS115においてΔViだけ増加する。S115の後、バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Vi、VqおよびVpを維持する(S109)。換言すれば、S110およびS112でバイアス電圧Viを調整することによって結合光信号のエラーが閾値を超えないときには、バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Viが調整されたあとにバイアス電圧Viを維持する。
【0033】
測定されたMERが閾値を超えているときには(S114のYes)、バイアスコントローラ55は、ΔVqをバイアス電圧Vqの値に加算し、バイアス電圧ViおよびVpの値を維持する(S116)。換言すれば、バイアスコントローラ55は、エラーが閾値を超えているときには、調整電圧(バイアス電圧Vq)を調整する。ΔVqの値は、予め決定される。S116の処理において、バイアスコントローラ55は、ΔVqだけ増加されたVqの値をバイアス生成器60に与える。エラー評価部50は、ΔVqだけ増加されたバイアス電圧Vqが第2の光変調器23に印加されている間に、結合光信号のMERを測定する(S117)。
【0034】
バイアスコントローラ55は、ΔVqをバイアス電圧Vqの値から減算し、バイアス電圧ViおよびVpの値を維持する(S118)。S118の処理において、バイアスコントローラ55は、ΔVqだけ減少したVqの値をバイアス生成器60に与える。エラー評価部50は、増加された値に対応するバイアス電圧Vqが第2の光変調器23に印加されている間に、結合光信号のMERを測定する(S119)。
【0035】
エラー評価部50は、更に、測定されたMERが予め定められた閾値未満かどうかを判断する(S120)。具体的には、エラー評価部50は、S117において測定されたMERとS119において測定されたMERのうちの小さい方のMERと、閾値とを比較する。バイアスコントローラ55は、MERが閾値を超えていないときには(S120のNo)、バイアス電圧Vqの値を変更する(S121)。バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Vqの値を、閾値と比較したMERが検出されたときに印加されていたバイアス電圧Vqの値に変更する。例えば、閾値とS117において測定されたMERとを比較したときには、バイアス電圧VqはS121においてΔVqだけ増加する。S121の後、バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Vi、VqおよびVpを維持する(S109)。換言すれば、S116およびS118でバイアス電圧Vqを調整することによって結合光信号のエラーが閾値を超えないときには、バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Vqが調整されたあとにバイアス電圧Vqを維持する。
【0036】
測定されたMERが閾値を超えているときには(S120のYes)、バイアスコントローラ55は、ΔVpをバイアス電圧Vpの値に加算し、バイアス電圧ViおよびVqの値を維持する(S122)。換言すれば、バイアスコントローラ55は、エラーが閾値を超えているときには、調整電圧(バイアス電圧Vp)を調整する。ΔVpの値は、予め決定される。S122の処理において、バイアスコントローラ55は、ΔVpだけ増加されたVpの値をバイアス生成器60に与える。エラー評価部50は、ΔVpだけ増加されたバイアス電圧Vpが第3の光変調器24に印加されている間に、結合光信号のMERを測定する(S123)。
【0037】
バイアスコントローラ55は、ΔVpをバイアス電圧Vpの値から減算し、バイアス電圧ViおよびVqの値を維持する(S124)。S124の処理において、バイアスコントローラ55は、ΔVpだけ減少したVpの値をバイアス生成器60に与える。エラー評価部50は、増加された値に対応するバイアス電圧Vpが第3の光変調器24に印加されている間に、結合光信号のMERを測定する(S125)。
【0038】
エラー評価部50は、更に、測定されたMERが予め定められた閾値未満かどうかを判断する(S126)。具体的には、エラー評価部50は、S123において測定されたMERとS125において測定されたMERのうちの小さい方のMERと、閾値とを比較する。バイアスコントローラ55は、MERが閾値を超えていないときには(S126のNo)、バイアス電圧Vpの値を変更する(S127)。バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Vpの値を、閾値と比較したMERが検出されたときに印加されていたバイアス電圧Vpの値に変更する。例えば、閾値とS123において測定されたMERとを比較したときには、バイアス電圧VpはS121においてΔVpだけ増加する。S127の後、バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Vi、VqおよびVpを維持する(S109)。換言すれば、S122およびS124でバイアス電圧Vpを調整することによって結合光信号のエラーが閾値を超えないときには、バイアスコントローラ55は、バイアス電圧Vpが調整されたあとにバイアス電圧Vpを維持する。
【0039】
バイアスコントローラ55は、MERが閾値を超えているときには、ΔVi、ΔVqおよびΔVpの値を変更する(S128)。例えば、バイアスコントローラ55は、予め定められた値だけ、またはランダムに、ΔVi、ΔVqおよびΔVpの値を変更する。バイアスコントローラ55は、S128の処理の後に、ΔViをバイアス電圧Viの値に加算し、バイアス電圧VqおよびVpの値を維持する(S110)。送信機1の動作は、上記のように説明される。上記の動作説明において、送信機1はバイアス電圧Vi、Vp、Vqの順序でバイアス電圧を調整するが、順序はこの順序に限定されない。
【0040】
上記のように、光送信機1は、光源10、第1の光変調器22、第2の光変調器23、第3の光変調器24、合波部25および制御部を備える。制御部は、PD40、ADC45、エラー評価部50、バイアスコントローラ55、バイアス生成器60およびDAC65の組合せである。
【0041】
光源10は、光を出力する。分岐部21は、光源からの光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐する。第1の光変調器22は、第1の分岐光を変調して、第1の変調光信号を出力する。第2の光変調器23は、第2の分岐光を変調して、第2の変調光信号を出力する。第3の光変調器24は、第1の変調光信号と第2の変調光信号の間の位相差を調整する。合波部25は、第1の変調光信号および第2の変調光信号を合波して、結合光信号を出力する。制御部は、第1の光変調器22に印加される第1のバイアス電圧(バイアス電圧Vi)、第2の光変調器23に印加される第2のバイアス電圧(バイアス電圧Vq)および第3の光変調器24に印加される第3のバイアス電圧(バイアス電圧Vp)のうちの一つである調整バイアス電圧を、結合光信号に基づいて調整する。制御部は、更に、第1のバイアス電圧、第2のバイアス電圧および第3の電圧のうち、調整電圧以外のバイアス電圧の値を維持する。
【0042】
光送信機1は、調整電圧以外のバイアス電圧の値を維持すると共に、結合光信号を出力する。光送信機1は、さらに、結合光信号に基づいて調整電圧を調整する。結合光信号は調整電圧の調整だけに影響を受けるので、光送信機1は、光変調器に印加されるバイアス電圧を結合光信号に基づいて個別に調整することができる。その結果、すべての光変調器に対して光検出器を配置することは必要ないので、光送信機1は簡潔である。
【0043】
例えば、光送信機1は、S110からS113までの処理において、バイアス電圧Viを調整してバイアス電圧VqおよびVpを維持すると共に、結合光信号を出力する。光送信機1は、さらに、結合光信号に基づいて電圧Viを調整する。結合光信号はバイアス電圧Viの調整だけに影響を受けるので、光送信機1は、バイアス電圧Viを結合光信号に基づいて個別に調整することができる。送信機1は、結合光信号に基づいて同様にバイアス電圧VqおよびVpを調整するため、第1の光変調器22、第2の光変調器23および第3の光変調器24に対して光検出器を必要としない。その結果、光送信機1は簡潔である。
【0044】
次に、光送信機1Aについて説明する。光送信機1Aは、光送信機1の変形例である。光送信機1Aの構成および動作は、光送信機1と同じである。光送信機1Aは、追加処理を実行する点で、光送信機1と異なる。
【0045】
図8は、光送信機1に対する追加の処理を含む動作を示すフローチャートである。
図8に示すように、エラーが光送信機1AのS126の閾値を超えているときには、バイアスコントローラ55はΔVi、ΔVq、ΔVpの値を算出する(S126のYes)。
【0046】
具体的には、バイアスコントローラ55は、光送信機1Aの特性に基づいて、ΔVi、ΔVq、ΔVpの値を更新する。バイアスコントローラ55は、光送信機1Aの各特性に対して係数セットをあらかじめ保存する。例えば、光送信機1Aの特性は、光送信機1Aの使用時間、光送信機1Aの温度、AMP35から直交変調器20に印加される駆動信号のRMS値、S150の前のΔVi、ΔVq、ΔVpの値、およびバイアス電圧Vi、Vq、Vpの値を指す。バイアスコントローラ55は、係数と特性の値とを乗算することによって得られる値の合計を、新たなΔViとして算出する。光送信機1Aの特性は、上述のものに限定されない。
【0047】
使用時間は、光送信機1への入力電力から時間を監視する、不図示のタイマによって取得される。温度は、不図示の温度センサによって取得される。RMS値は、AMP35から直交変調器20に印加される電圧を監視するバイアスコントローラ55によって取得される。
【0048】
リッジ回帰分析によって、バイアスコントローラ55は、算出された値に対する係数に基づくL2ノルムを用いて、新たなΔViを更に算出してもよい。ラッソ回帰分析によって、バイアスコントローラ55は、算出された値に対する係数に基づくL1ノルムを用いて、新たなΔViを更に算出してもよい。
【0049】
バイアスコントローラ55は、温度、使用時間、第2の光変調器23に印加される駆動信号のRMS値、S150の前のΔVqの値およびバイアス電圧Vqの値に基づいて、新たなΔVqを更に算出する。バイアスコントローラ55は、温度、使用時間、S150の前のΔVpの値およびバイアス電圧Vpの値に基づいて、新たなΔVpを更に算出する。
【0050】
バイアスコントローラ55は、ΔVi、ΔVq、ΔVpの値を、S150で算出される新たなΔVi、ΔVq、ΔVpの値に変更する(S128)。上記のように、光送信機1Aの動作は説明される。
【0051】
上記の説明のように、バイアスコントローラ55は、光送信機1Aの特性に基づいて変更量(ΔVi、ΔVp、ΔVq)を更新する。それにより、送信機1Aが最適な光学変化量でバイアス電圧を調整することができるので、光送信機1Aは、エラーをより小さくするための処理の回数を低下させる。
第2の実施形態
【0052】
第2の実施形態における光送信システム2について、
図9に基づいて説明する。
図9は、光送信システム2の構成例を示すブロック図である。光送信システム2は、2つの光送信機1、PD40、ADC45、エラー評価部50、バイアスコントローラ55、バイアス生成器60およびDAC65を備える。光送信機1は、光源10、直交変調器20、DSP30およびAMP35を備える。PD40およびDAC65は、2つの光送信機1に接続されている。光送信システム2は、追加の光送信機1を備える点で、光送信機1と異なる。
【0053】
光送信システム2は、第1の実施形態において説明した動作を2つの光送信機1に対して実行する。具体的には、光送信システム2は、光送信機1のうちの一方を用いることにより、S101からS128まで処理を実行する。続いて、一方の光送信機1からの結合光信号のエラーが閾値を超えていないときには、光送信システム2は、他方の光送信機1からの結合光信号のエラーを評価し始める。具体的には、光送信システム2は、一方の光送信機1を用いてS109における処理を実行した後に、S107において他方の光送信機1からの結合光信号のエラーを評価する。
【0054】
上記のように、光送信システム2は説明される。上記の動作の説明において、送信機1Aはバイアス電圧Vi、Vp、Vqの順序でバイアス電圧を調整するが、順序はこの順序に限定されない。光送信システム2は、光送信機1と同様の構成を備える。その結果、光送信機1と同様に、すべての光変調器に対して光検出器を配置することは必要ないので、光送信システム2は簡潔である。
第3の実施形態
【0055】
第3の実施形態における光送信機3について、
図10に基づいて説明する。
図10は、光送信機3の構成例を示すブロック図である。光送信機3は、光源10、第1の光変調器22、第2の光変調器23、第3の光変調器24、合波部25および制御部70を備える。
【0056】
光源10は、光を出力する。分岐部21は、光源からの光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐する。第1の光変調器22は、第1の分岐光を変調して、第1の変調光信号を出力する。第2の光変調器23は、第2の分岐光を変調して、第2の変調光信号を出力する。第3の光変調器24は、第1の変調光信号と第2の変調光信号の間の位相差を調整する。合波部25は、第1の変調光信号および第2の変調光信号を合波して、結合光信号を出力する。制御部70は、第1の光変調器22に印加される第1のバイアス電圧(バイアス電圧Vi)、第2の光変調器23に印加される第2のバイアス電圧(バイアス電圧Vq)および第3の光変調器24に印加される第3のバイアス電圧(バイアス電圧Vp)のうちの一つである調整バイアス電圧を、結合光信号に基づいて調整する。制御部70は、更に、第1のバイアス電圧、第2のバイアス電圧および第3の電圧のうち、調整電圧以外のバイアス電圧の値を維持する。
【0057】
次に、送信機3の動作について、
図11に基づいて説明する。
図11は、送信機3の動作を示すフローチャートである。まず、光源10は、直交変調器20に光を出力する(S201)。直交変調器20の分岐部は、光を第1の分岐光および第2の分岐光に分岐する(S202)。第1の光変調器22は第1の分岐光を変調し、第2の光変調器23は第2の分岐光を変調する(S203)。続いて、第1の光変調器22は、第1の変調光信号を出力する。第2の光変調器23は、第2の変調光信号を出力する。
【0058】
第3の光変調器24は、第1の変調光信号と第2の変調光信号の間の位相差を調整する(S204)。合波部25は、第1の変調光信号および第2の変調光信号を合波する(S205)。直交変調器20は、第1の変調光信号および第2の変調光信号を含む結合光信号を出力する(S206)。制御部70は、結合光信号に基づいて調整バイアス電圧を調整し、第1のバイアス電圧、第2のバイアス電圧および第3の電圧のうち、調整電圧以外のバイアス電圧の値を維持する(S207)。
【0059】
上記のように、光送信機3は説明される。光送信機3は、光送信機1と同様の構成を備える。その結果、光送信機1と同様に、すべての光変調器に対して光検出器を配置することは必要ないので、光送信機3は簡潔である。
【0060】
本発明を、その実施形態を参照しながら、詳細に示して説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されない。特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨およびスコープから逸脱することなく、形態や細部に様々な変更がなされてよいということは、当業者には理解できるであろう。