(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H01L29/78 652S
H01L29/78 652F
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 653A
(21)【出願番号】P 2023569042
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2022024141
(87)【国際公開番号】W WO2023119693
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2021206356
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手賀 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 佑一郎
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113566(JP,A)
【文献】特開2011-071161(JP,A)
【文献】特開2009-194065(JP,A)
【文献】特開2017-162991(JP,A)
【文献】特開2019-165206(JP,A)
【文献】特開2021-027138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739、29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板(12)と、
前記半導体基板の上面(12a)に設けられており、それぞれが前記上面において第1方向に延びており、前記上面において前記第1方向に対して交差する第2方向に間隔を開けて配列されている複数のトレンチ(22)と、
前記各トレンチの内面を覆っているゲート絶縁膜(24)と、
前記各トレンチ内に配置されており、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(26)、
を備えており、
前記半導体基板が、
前記半導体基板の前記上面に露出しており、前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているn型のソース領域(30)と、
前記ソース領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているp型のボディ(32)領域と、
前記ボディ領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しており、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型のドリフト領域(34)と、
それぞれが対応する前記トレンチの底面で前記ゲート絶縁膜に接するように前記第1方向に延びているとともに前記ドリフト領域に接しているp型の複数の底部領域(36)と、
それぞれが前記ボディ領域の下側に配置されており、それぞれが前記ボディ領域に接続されており、それぞれが前記第2方向に延びており、それぞれが前記各底部領域に接しており、前記第1方向に間隔を空けて配置されているp型の複数の電界緩和領域(38、138)と、
それぞれが前記半導体基板の前記上面に露出しており、それぞれが前記ボディ領域に接しているp型の複数のコンタクト領域(31)、
を有しており、
前記複数のトレンチの間に位置する半導体領域が、トレンチ間半導体領域であり、
前記半導体基板を上側から平面視したときに、前記各トレンチ間半導体領域と前記各電界緩和領域が重なっている重複範囲(40、140)が複数個存在し、
前記複数の重複範囲が、前記コンタクト領域が設けられている複数のコンタクト重複範囲(40a、140a)と、前記コンタクト領域が設けられていない複数の非コンタクト重複範囲(40b、140b)を有しており、
前記コンタクト重複範囲と前記非コンタクト重複範囲が、前記第1方向において交互に配置されている、
半導体装置(10、10
0、300、400)。
【請求項2】
前記コンタクト重複範囲と前記非コンタクト重複範囲が、前記第2方向において交互に配置されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記各電界緩和領域と前記ボディ領域の間に、前記ボディ領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているn型の上部ドリフト領域(42)が設けられている、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極の前記上面を覆っており、前記半導体基板の前記上面の上部にコンタクトホール(28a)を有している層間絶縁膜(28)と、
前記層間絶縁膜の上面と前記コンタクトホールの内面に跨る範囲を覆っており、前記コンタクトホール内で前記半導体基板の前記上面に接しており、前記層間絶縁膜によって前記ゲート電極から絶縁されている上部電極(14)、
をさらに備えており、
前記上部電極が、
前記コンタクトホールの内部に配置されたタングステン含有層(14a)と、
前記層間絶縁膜の前記上面と前記タングステン含有層の上面を覆っているアルミニウム含有層(14b)、を備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板(12)と、
前記半導体基板の上面(12a)に設けられており、それぞれが前記上面において第1方向に延びており、前記上面において前記第1方向に対して交差する第2方向に間隔を開けて配列されている複数のトレンチ(22)と、
前記各トレンチの内面を覆っているゲート絶縁膜(24)と、
前記各トレンチ内に配置されており、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(26)、
を備えており、
前記半導体基板が、
前記半導体基板の前記上面に露出しており、前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているn型のソース領域(30)と、
前記ソース領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているp型のボディ(32)領域と、
前記ボディ領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しており、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型のドリフト領域(34)と、
それぞれが対応する前記トレンチの底面で前記ゲート絶縁膜に接するように前記第1方向に延びているとともに前記ドリフト領域に接しているp型の複数の底部領域(36)と、
それぞれが前記ボディ領域の下側に配置されており、それぞれが前記ボディ領域に接続されており、それぞれが前記第2方向に延びており、それぞれが前記各底部領域に接しており、前記第1方向に間隔を空けて配置されているp型の複数の
第1電界緩和領域
(138)と、
それぞれが前記ボディ領域の下側に配置されており、それぞれが前記ボディ領域に接続されており、それぞれが前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延びており、それぞれが前記各底部領域に接しており、前記第3方向に交差する方向に間隔を空けて配置されているp型の複数の第2電界緩和領域(238)と、
それぞれが前記半導体基板の前記上面に露出しており、それぞれが前記ボディ領域に接しているp型の複数のコンタクト領域(31)、
を有しており、
前記複数のトレンチの間に位置する半導体領域が、トレンチ間半導体領域であり、
前記半導体基板を上側から平面視したときに、前記各トレンチ間半導体領域と前記各
第1電界緩和領域が重なっている
第1重複範囲
(140)が複数個存在し、
前記複数の
第1重複範囲が、前記コンタクト領域が設けられている複数の
第1コンタクト重複範囲
(140a)と、前記コンタクト領域が設けられていない複数の
第1非コンタクト重複範囲
(140b)を有しており、
前記
第1コンタクト重複範囲と前記
第1非コンタクト重複範囲が、前記第1方向において交互に配置されて
おり、
前記半導体基板を上側から平面視したときに、前記各トレンチ間半導体領域と前記各第2電界緩和領域が重なっている第2重複範囲(240)が複数個存在し、
前記複数の第2重複範囲が、前記コンタクト領域が設けられている複数の第2コンタクト重複範囲(240a)と、前記コンタクト領域が設けられていない複数の第2非コンタクト重複範囲(240b)を有しており、
前記第2コンタクト重複範囲と前記第2非コンタクト重複範囲が、前記第1方向において交互に配置されている、
半導体装置(
200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月20日に出願された日本特許出願特願2021-206356の関連出願であり、この日本特許出願に基づく優先権を主張するものであり、この日本特許出願に記載された全ての内容を、本明細書を構成するものとして援用する。
【0002】
本明細書に開示の技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第10586845号明細書には、半導体基板と、半導体基板の上面に間隔を空けて配列されている複数のトレンチと、各トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜と、各トレンチ内に配置されたゲート電極を備える半導体装置が開示されている。半導体基板は、n型の複数のソース領域と、p型のボディ領域と、p型の複数のコンタクト領域と、p型の電界緩和領域と、n型のドリフト領域を有している。各ソース領域は、半導体基板の上面に露出しており、ゲート絶縁膜に接している。各ボディ領域は、ソース領域の下側でゲート絶縁膜に接している。各コンタクト領域は、半導体基板の上面に露出しており、ソース領域とゲート絶縁膜に接している。各電界緩和領域は、コンタクト領域の下側でゲート絶縁膜に接している。ドリフト領域は、ボディ領域と電界緩和領域に対して下側から接している。米国特許第10586845号明細書の半導体装置では、各ソース領域と各コンタクト領域が、各トレンチが延びる方向に沿って交互に配置されている。
【0004】
米国特許第10586845号明細書の半導体装置がオフするときには、ボディ領域及び電界緩和領域からドリフト領域内に空乏層が伸びる。この半導体装置では、複数の電界緩和領域の上部のそれぞれにコンタクト領域が設けられているため、半導体装置がオフするときに、電界緩和領域からコンタクト領域へホールが素早く流れ、電界緩和領域とドリフト領域の界面のpn接合に高い逆電圧が印加される。その結果、ドリフト領域内に空乏層が迅速に広がり、トレンチの下端近傍における電界集中が抑制される。
【発明の概要】
【0005】
米国特許第10586845号明細書の半導体装置では、多くのコンタクト領域が配置されているので、半導体基板の上面に露出するソース領域の面積が狭くなる。その結果、ソース領域のコンタクト抵抗が増大する。本明細書では、電界緩和領域の電位を安定させるとともに、ソース領域のコンタクト抵抗を低減することができる技術を提供する。
【0006】
本明細書が開示する半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上面に設けられており、それぞれが前記上面において第1方向に延びており、前記上面において前記第1方向に対して交差する第2方向に間隔を開けて配列されている複数のトレンチと、前記各トレンチの内面を覆っているゲート絶縁膜と、前記各トレンチ内に配置されており、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極、を備えている。前記半導体基板が、ソース領域と、ボディ領域と、ドリフト領域と、複数の底部領域と、複数の電界緩和領域と、複数のコンタクト領域を有している。前記ソース領域は、前記半導体基板の前記上面に露出しており、前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているn型領域である。前記ボディ領域は、前記ソース領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているp型領域である。前記ドリフト領域は、前記ボディ領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しており、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されているn型領域である。前記各底部領域は、それぞれが対応する前記トレンチの底面で前記ゲート絶縁膜に接するように前記第1方向に延びているとともに前記ドリフト領域に接しているp型領域である。前記各電界緩和領域は、それぞれが前記ボディ領域の下側に配置されており、それぞれが前記ボディ領域に接続されており、それぞれが前記第2方向に延びており、それぞれが前記各底部領域に接しており、前記第1方向に間隔を空けて配置されているp型領域である。前記各コンタクト領域は、それぞれが前記半導体基板の前記上面に露出しており、それぞれが前記ボディ領域に接しているp型領域である。前記複数のトレンチの間に位置する半導体領域が、トレンチ間半導体領域であり、前記半導体基板を上側から平面視したときに、前記各トレンチ間半導体領域と前記各電界緩和領域が重なっている重複範囲が複数個存在し、前記複数の重複範囲が、前記コンタクト領域が設けられている複数のコンタクト重複範囲と、前記コンタクト領域が設けられていない複数の非コンタクト重複範囲を有しており、前記コンタクト重複範囲と前記非コンタクト重複範囲が、前記第1方向において交互に配置されている。
【0007】
上記の半導体装置では、半導体基板を上側から平面視したときに、トレンチ間半導体領域と電界緩和領域が重なっている複数の重複範囲を有している。複数の重複範囲には、複数のコンタクト重複範囲と複数の非コンタクト重複範囲が含まれる。コンタクト重複範囲は、コンタクト領域と電界緩和領域とが重なっている範囲である。すなわち、この半導体装置では、複数のコンタクト領域のそれぞれが、電界緩和領域の直上に配置されている。このため、半導体装置がオフするときに、コンタクト重複範囲では、ホールが底部領域から電界緩和領域を介してコンタクト領域に流れ、底部領域が低電位に維持される。また、コンタクト重複範囲と非コンタクト重複範囲とが、トレンチが延びる第1方向において交互に配置されている。このようにコンタクト重複範囲が分散して配置されているため、底部領域全体の電位が低電位で安定し、各底部領域からドリフト領域内へバランス良く空乏層が広がる。したがって、トレンチの下端近傍の電界集中をバランス良く抑制できる。また、非コンタクト重複範囲では、半導体基板の上面にソース領域を露出させることができるため、ソース領域の面積を確保することができる。コンタクト重複範囲と非コンタクト重複範囲とがトレンチが延びる第1方向において交互に配置されているので、非コンタクト重複範囲(すなわち、半導体基板の上面におけるソース領域の面積)を広く確保することができる。したがって、ソース領域のコンタクト抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図8】
図6のVIII-VIII線における断面図。
【
図10】実施例4の半導体装置の
図2に対応する断面図。
【
図11】実施例5の半導体装置の
図2に対応する断面図。
【
図12】参考例の半導体装置の
図2に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0010】
本明細書が開示する一実施形態では、前記コンタクト重複範囲と前記非コンタクト重複範囲が、前記第2方向において交互に配置されていてもよい。このような構成では、トレンチの下端近傍への電界集中をよりバランス良く抑制できるとともに、ソース領域のコンタクト抵抗をより均一に低減することができる。
【0011】
本明細書が開示する一実施形態では、前記各電界緩和領域と前記ボディ領域の間に、前記ボディ領域の下側で前記各トレンチ内の前記ゲート絶縁膜に接しているn型の上部ドリフト領域が設けられていてもよい。このような構成では、電界緩和領域が設けられている範囲においても、上部ドリフト領域が電流経路として機能する。すなわち、電界緩和領域の上部に位置するボディ領域に形成されるチャネルを効果的に利用することができる。このため、チャネル抵抗を低減することができる。
【0012】
本明細書が開示する一実施形態では、前記電界緩和領域は、第1電界緩和領域であり、前記重複範囲は、第1重複範囲であり、前記コンタクト重複範囲は、第1コンタクト重複範囲であり、前記非コンタクト重複範囲は、第1非コンタクト重複範囲であってよい。前記半導体基板が、p型の複数の第2電界緩和領域をさらに有してもよい。前記複数の第2電界緩和領域のそれぞれが、前記ボディ領域の下側に配置されており、前記ボディ領域に接続されており、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に延びており、前記各底部領域に接してもよい。前記複数の第2電界緩和領域が、前記第3方向に交差する方向に間隔を空けて配置されてもよい。前記半導体基板を上側から平面視したときに、前記各トレンチ間半導体領域と前記各第2電界緩和領域が重なっている第2重複範囲が複数個存在してもよい。前記複数の第2重複範囲が、前記コンタクト領域が設けられている複数の第2コンタクト重複範囲と、前記コンタクト領域が設けられていない複数の第2非コンタクト重複範囲を有してもよい。前記第2コンタクト重複範囲と前記第2非コンタクト重複範囲が、前記第1方向において交互に配置されていてもよい。
【0013】
上記の構成では、複数の第1電界緩和領域と複数の第2電界緩和領域のそれぞれが、互いに異なる方向に延びるように設けられている。このため、各第1電界緩和領域の間隔、及び、各第2電界緩和領域の間隔のそれぞれを広くした場合であっても、半導体装置の耐圧を確保することができる。また、各電界緩和領域の間隔を広くすることができるため、トレンチ間半導体領域において、広い範囲にドリフト領域を配置することができ、オン抵抗を低減することができる。
【0014】
本明細書が開示する一実施形態では、前記ゲート電極の前記上面を覆っており、前記半導体基板の前記上面の上部にコンタクトホールを有している層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の上面と前記コンタクトホールの内面に跨る範囲を覆っており、前記コンタクトホール内で前記半導体基板の前記上面に接しており、前記層間絶縁膜によって前記ゲート電極から絶縁されている上部電極、をさらに備えてもよい。前記上部電極が、前記コンタクトホールの内部に配置されたタングステン含有層と、前記層間絶縁膜の前記上面と前記タングステン含有層の上面を覆っているアルミニウム含有層、を備えてもよい。このような構成では、コンタクトホールの内部にタングステン含有層を配置することにより、コンタクトホールに起因する上部電極(アルミニウム含有層)の凹凸を低減することができる。また、タングステン含有層は、幅の狭いコンタクトホールを密に充填することができるため、半導体装置を微細化することができる。
【0015】
(実施例1)
図1~3は、実施例1の半導体装置10を示している。半導体装置10は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
図2及び
図3に示
すように、半導体装置10は、半導体基板12と、上部電極14と、下部電極16を有している。なお、
図1では、半導体基板12の上面12a上の電極層及び絶縁層の図示が省略されている。半導体基板12は、SiC(炭化シリコン)により構成されている。ただし、半導体基板12の材料は特に限定されず、例えば、Si(シリコン)やGaN(窒化ガリウム)等の他の半導体材料であってもよい。以下では、半導体基板12の上面12aに平行な一方向をx方向といい、半導体基板12に平行でx方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。
【0016】
図1に示すように、半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ22が設けられている。各トレンチ22は、y方向に沿って長く延びている。各トレンチ22は、互いに平行に延びている。各トレンチ22は、x方向に間隔を空けて配列されている。
図2及び
図3に示すように、各トレンチ22内には、ゲート絶縁膜24とゲート電極26が配置されている。ゲート絶縁膜24は、各トレンチ22の内面を覆っている。ゲート電極26は、各トレンチ22の内部に配置されている。ゲート電極26は、ゲート絶縁膜24によって半導体基板12から絶縁されている。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ゲート電極26の上面と半導体基板12の上面12aは、層間絶縁膜28によって覆われている。層間絶縁膜28には、複数のコンタクトホール28aが形成されている。各コンタクトホール28aは、隣接する2つのトレンチ22の間の範囲にそれぞれ設けられている。すなわち、コンタクトホール28aは、x方向においてゲート電極26が設けられていない範囲に配置されている。各コンタクトホール28aは、層間絶縁膜28の上面から下面まで貫通している。
【0018】
上部電極14は、層間絶縁膜28の上面とコンタクトホール28aの内面に跨る範囲を覆っている。上部電極14は、タングステン含有層14aとアルミニウム含有層14bを有している。タングステン含有層14aは、コンタクトホール28aの内部に配置されている。タングステン含有層14aは、コンタクトホール28aの底部で半導体基板12の上面12aに接している。タングステン含有層14aは、その上面が層間絶縁膜28の上面に対して略平坦となるように形成されている。タングステン含有層14aは、層間絶縁膜28によってゲート電極26から絶縁されている。アルミニウム含有層14bは、層間絶縁膜28の上面とタングステン含有層14aの上面の略全域を覆っている。本実施例では、タングステン含有層14aはタングステンにより構成されており、アルミニウム含有層14bはアルミニウムとシリコンの合金によって構成されている。しかしながら、タングステン含有層14aは、タングステンを主成分として含有する金属層であればよく、アルミニウム含有層14bは、アルミニウムを主成分として含有する金属層(アルミニウム単体を含む)であればよい。
【0019】
下部電極16は、半導体基板12の下面12bに設けられている。下部電極16は、半導体基板12の下面12bの略全域に接している。
【0020】
半導体基板12の内部には、ソース領域30、複数のコンタクト領域31、ボディ領域32、ドリフト領域34、ドレイン領域35、複数の底部領域36、及び複数の電界緩和領域38が設けられている。
【0021】
ソース領域30は、n型領域である。
図1~
図3に示すように、ソース領域30は、隣接するトレンチ22の間に位置する半導体領域(以下、トレンチ間半導体領域という。)のそれぞれに設けられている。ソース領域30は、半導体基板12の上面12aに露出する位置に設けられており、上部電極14(タングステン含有層14a)にオーミック接触している。各ソース領域30は、トレンチ間半導体領域の両側に位置する2つのトレンチ22内のゲート絶縁膜24に接している。
【0022】
ボディ領域32は、p型領域である。
図2及び
図3に示すように、ボディ領域32は、ソース領域30と後述するコンタクト領域31の下側に配置されている。ボディ領域32は、ソース領域30及びコンタクト領域31に対して下側から接している。ボディ領域32は、ソース領域30の下側で各トレンチ22内のゲート絶縁膜24に接している。
【0023】
ドリフト領域34は、n型領域である。
図2及び
図3に示すように、ドリフト領域34は、ボディ領域32と後述する電界緩和領域38の下側に配置されている。ドリフト領域34は、ボディ領域32及び電界緩和領域38に対して下側から接している。
図3に示すように、ドリフト領域34は、電界緩和領域38が設けられていない範囲において、ボディ領域32の下側で各トレンチ22内のゲート絶縁膜に接している。ドリフト領域34は、各トレンチ間半導体領域から各トレンチ22の下側の領域まで分布している。ドリフト領域34は、ボディ領域32によってソース領域30から分離されている。
【0024】
ドリフト領域34の下側には、ドレイン領域35が設けられている。ドレイン領域35は、ドリフト領域34よりもn型不純物濃度が高いn型領域である。ドレイン領域35は、ドリフト領域34に対して下側から接している。ドレイン領域35は、半導体基板12の下面12bにおいて下部電極16にオーミック接触している。
【0025】
各底部領域36は、p型領域である。各底部領域36は、対応するトレンチ22の底面で各トレンチ22内のゲート絶縁膜24に接している。各底部領域36は、対応するトレンチ22の底面に沿ってy方向に長く延びている。底部領域36は、ドリフト領域34に接している。
【0026】
各電界緩和領域38は、p型領域である。
図2に示すように、各電界緩和領域38は、ボディ領域32に対して下側から接している。
図1では、各電界緩和領域38をグレーハッチングにより示している。
図1に示すように、各電界緩和領域38は、各トレンチ22と交差する方向(x方向)に長く延びている。各電界緩和領域38は、各トレンチ22が延びる方向(y方向)に間隔を空けて配置されている。すなわち、
図1に示すように、半導体基板12を上側から平面視すると、各トレンチ22と各電界緩和領域38とが格子状に配置されている。
図2に示すように、各電界緩和領域38は、トレンチ22の下端よりも下側まで延びており、底部領域36の側面に接している。各底部領域36は、各電界緩和領域38よりも下側まで延びている。各電界緩和領域38の側面及び下面は、ドリフト領域34によって囲まれている。
【0027】
各コンタクト領域31は、p型領域である。各コンタクト領域31は、ボディ領域32よりも高いp型不純物濃度を有している。
図1及び
図2に示すように、各コンタクト領域31は、トレンチ間半導体領域に設けられている。各トレンチ間半導体領域に、複数のコンタクト領域31が設けられている。各コンタクト領域31は、半導体基板12の上面12aに露出しており、上部電極14にオーミック接触している。
図1に示すように、各コンタクト領域31の側面は、ソース領域30に囲まれている。
図2に示すように、各コンタクト領域31は、その下面においてボディ領域32に接している。
【0028】
上述したように、各電界緩和領域38の上端は、ボディ領域32に接続されている。したがって、各底部領域36は、電界緩和領域38を介してボディ領域32に接続されている。このため、各底部領域36は、電界緩和領域38、ボディ領域32、及びコンタクト領域31を介して、上部電極14に接続されている。したがって、各底部領域36の電位は、上部電極14の電位と略等しい。
【0029】
図1に示すように、半導体装置10では、半導体基板12を上側から平面視したときに、トレンチ間半導体領域と各電界緩和領域38とが重なっている複数の重複範囲40(すなわち、グレーハッチングされた領域)が存在している。以下では、複数の重複範囲40のうち、コンタクト領域31が設けられている重複範囲40をコンタクト重複範囲40aといい、コンタクト領域31が設けられていない重複範囲40を非コンタクト重複範囲40bという。コンタクト重複範囲40aでは、コンタクト領域31が電界緩和領域38と重なるように配置されている。非コンタクト重複範囲40bには、コンタクト領域31が配置されておらず、電界緩和領域38の上部では、ソース領域30が半導体基板12の上面12aに露出している。半導体装置10では、コンタクト重複範囲40aと非コンタクト重複範囲40bとが、トレンチ22が延びる方向(y方向)において交互に配置されるように構成されている。すなわち、y方向における各重複範囲40に対して、1つおきにコンタクト領域31が配置されている。また、コンタクト重複範囲40aと非コンタクト重複範囲40bとは、電界緩和領域38が延びる方向(x方向)においても交互に配置されるように構成されている。すなわち、x方向における各重複範囲40に対して、1つおきにコンタクト領域31が配置されている。
【0030】
半導体装置10の使用時には、下部電極16に上部電極14よりも高い電位が印加される。ゲート電極26にゲート閾値以上の電圧を印加すると、ゲート絶縁膜24に接する範囲のボディ領域32にチャネルが形成され、半導体装置10がオンする。ゲート電極26に印加する電圧をゲート閾値未満まで低下させると、チャネルが消失し、半導体装置10がオフする。
【0031】
半導体装置10がオフしている状態では、下部電極16の電位が上部電極14の電位よりも遥かに高い。この状態では、ドリフト領域34は、下部電極16に近い電位を有する。また、上述したように、底部領域36は、上部電極14と略等しい電位を有する。このため、ドリフト領域34と底部領域36の界面のpn接合に高い逆電圧が印加される。したがって、各底部領域36からドリフト領域34内に、空乏層が広範囲に広がる。これにより、トレンチ22の下端近傍での電界集中が抑制され、半導体装置10の耐圧が確保される。
【0032】
次に、半導体装置10がオフするときの動作について詳細に説明する。半導体装置10がオフして下部電極16の電位が上昇すると、底部領域36から電界緩和領域38、ボディ領域32、及びコンタクト領域31を介して上部電極14へホールが流れる。このようにホールが流れることで、底部領域36の電位が低電位に維持される。コンタクト重複範囲40aでは、ホールが底部領域36からコンタクト領域31を介して上部電極14に達するまでの経路が短い。上述したように、コンタクト重複範囲40aと非コンタクト重複範囲40bは、x方向及びy方向において交互に配置されている。したがって、コンタクト重複範囲40a(すなわち、コンタクト領域31)が、半導体基板12の上面において、略均等に分散して配置されている。したがって、非コンタクト重複範囲40bでも、底部領域36からコンタクト領域31を介して上部電極14に達するまでの経路はそれほど長くない。したがって、底部領域36の全体で、底部領域36から上部電極14にホールが素早く排出される。これにより、下部電極16の電位の上昇に伴う底部領域36の電位の上昇が抑制され、底部領域36の電位が上部電極14の電位と略同じ電位に維持される。その結果、底部領域36の周囲に空乏層が迅速に広がり、トレンチ22の下端近傍での電界集中が効果的に抑制される。
【0033】
また、半導体装置10では、非コンタクト重複範囲40bにおいては、ソース領域30が半導体基板12の上面12aに露出している。コンタクト重複範囲40aと非コンタクト重複範囲40bとが、x方向及びy方向において交互に配置されているので、非コンタクト重複範囲40b(すなわち、ソース領域30の面積)を確保することができ、ソース領域30と上部電極14とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0034】
なお、実施例1では、x方向及びy方向の双方において、コンタクト重複範囲40aと非コンタクト重複範囲40bとが交互に配置されていた。しかしながら、コンタクト重複範囲40aと非コンタクト重複範囲40bとは、x方向において交互に配置されていなくてもよく、少なくともy方向においてこれらが交互に配置されていれば、トレンチ22の下端近傍での電界集中の抑制とソース領域30のコンタクト抵抗の低減とを両立することができる。以下に説明する他の実施例についても同様である。
【0035】
(実施例2)
次に、
図4及び
図5を参照して、実施例2の半導体装置100について説明する。
図4に示すように、実施例2の半導体装置100では、各電界緩和領域138が延びる方向が実施例1と異なっている。各電界緩和領域138は、各トレンチ22と交差するm方向に長く延びている。m方向は、各トレンチ22が延びる方向(y方向)に直交する方向(x方向)に対して所定の角度だけ傾斜した方向である。
図5に示すように、半導体基板12の内部のその他の構成(ソース領域30、ボディ領域32、ドリフト領域34等)は実施例1と同様である。
【0036】
実施例2では、実施例1と同様に、コンタクト重複範囲140aと非コンタクト重複範囲140bとが、トレンチ22が延びる方向(y方向)において交互に配置されるように構成されている。すなわち、y方向における各重複範囲140に対して、1つおきにコンタクト領域31が配置されている。コンタクト重複範囲140aと非コンタクト重複範囲140bとは、電界緩和領域138が延びる方向(m方向)においても交互に配置されるように構成されている。すなわち、m方向における各重複範囲140に対して、1つおきにコンタクト領域31が配置されている。なお、実施例2では、x方向においてコンタクト重複範囲140aと非コンタクト重複範囲140bとが交互に配置されていない。x方向では、各重複範囲140に対して、コンタクト重複範囲140aと非コンタクト重複範囲140bのいずれかが連続して配置されている。
【0037】
本実施例においても、コンタクト重複範囲140aと非コンタクト重複範囲140bとが、y方向及びm方向において交互に配置されているため、トレンチ22の下端近傍での電界集中の抑制と、ソース領域30のコンタクト抵抗の低減とを両立することができる。
【0038】
(実施例3)
次に、
図6~
図9を参照して、実施例3の半導体装置200について説明する。
図6に示すように、実施例3の半導体装置200では、半導体基板12が、実施例2の電界緩和領域138(以下、第1電界緩和領域138という。)に加えて、第1電界緩和領域138とは異なる方向(n方向)に延びるp型の複数の第2電界緩和領域238を有している。n方向は、各トレンチ22が延びる方向(y方向)及び第1電界緩和領域138が延びる方向(m方向)と交差する方向であり、y方向に直交するx方向に対して所定の角度だけ傾斜した方向である。
【0039】
図6に示すように、半導体基板12を上側から平面視したときに、第1電界緩和領域138と第2電界緩和領域238とは、トレンチ22と重なる範囲において交差している。
図7に示すように、各第1電界緩和領域138と各第2電界緩和領域238とは、トレンチ22の側面に接する範囲で接続されている。各第1電界緩和領域138と各第2電界緩和領域238とは、互いが接続されている範囲において底部領域36に接している。
図8に示すように、第1電界緩和領域138と第2電界緩和領域238とが接続されていない断面においては、ボディ領域32の下側において、各トレンチ22の側面にドリフト領域34が接している。
【0040】
実施例3では、実施例1及び実施例2と同様に、トレンチ間半導体領域と第2電界緩和領域238とが重なっている複数の重複範囲240において、コンタクト重複範囲240aと非コンタクト重複範囲240bとが、トレンチ22が延びる方向(y方向)において交互に配置されるように構成されている。すなわち、y方向における各重複範囲240に対して、1つおきにコンタクト領域31が配置されている。また、
図6及び
図9に示すように、実施例3では、コンタクト重複範囲240aが、第2電界緩和領域238が延びる方向(n方向)において、各重複範囲240に対して間隔を空けて配置されるように(すなわち、連続して配置されないように)構成されている。
【0041】
実施例3の半導体装置200では、複数の第1電界緩和領域138と複数の第2電界緩和領域238のそれぞれが、互いに異なる方向(m方向及びn方向)に延びるように設けられている。このため、各第1電界緩和領域138の間隔、及び、各第2電界緩和領域238の間隔のそれぞれを広くした場合であっても、ホールが底部領域36から各電界緩和領域138、238を介して効率良くコンタクト領域31に流れ、半導体装置200の耐圧を確保することができる。また、各電界緩和領域138、238の間隔を広くすることができるため、トレンチ間半導体領域において、広い範囲にドリフト領域34を配置することができ、オン抵抗を低減することができる。
【0042】
なお、各電界緩和領域138、238が設けられている範囲では、n型のドリフト領域34がゲート絶縁膜24に接していないため、ボディ領域32に形成されるチャネルに電流が流れ難い。しかしながら、本実施例では、第1電界緩和領域138と第2電界緩和領域238とが、トレンチ22と重なる範囲で交差するので、ボディ領域32に形成されたチャネルから広範囲のドリフト領域34に電子が流れることができる。このため、オン抵抗が増大することが抑制される。
【0043】
(実施例4)
次に、
図10を参照して、実施例4の半導体装置300について説明する。
図10は、実施例1の
図2に対応する断面である。実施例4では、ボディ領域32と電界緩和領域38の間に、n型の上部ドリフト領域42が設けられている。上部ドリフト領域42は、ボディ領域32に下側から接しており、ボディ領域32の下側でゲート絶縁膜24に接している。上部ドリフト領域42は、ボディ領域32によってソース領域30から分離されている。上部ドリフト領域42の下端は、各トレンチ22の下端よりも上側に位置している。上部ドリフト領域42の下側には、電界緩和領域38が配置されている。電界緩和領域38は、上部ドリフト領域42に対して下側から接している。図示していないが、上部ドリフト領域42は、電界緩和領域38が設けられていない断面(実施例1の
図3に対応する断面)において、ドリフト領域34に接続されている。
【0044】
実施例4の半導体装置300では、電界緩和領域38が設けられている範囲においても、上部ドリフト領域42が電流経路として機能する。すなわち、電界緩和領域38の上部に位置するボディ領域32に形成されるチャネル(
図2の断面において形成されるチャネル)を効果的に利用することができる。このため、チャネル抵抗を低減することができる。
【0045】
(実施例5)
次に、
図11を参照して、実施例5の半導体装置400について説明する。
図11は、実施例1の
図2に対応する断面である。実施例5では、実施例1と比較して、各底部領域36の厚み(z方向の長さ)が短い。実施例5では、各底部領域36の下端が、各電界緩和領域38の下端よりも上側に位置している。すなわち、電界緩和領域38が設けられている範囲では、各底部領域36はドリフト領域34に接しておらず、電界緩和領域38に周囲を囲まれている。
【0046】
実施例5の半導体装置400では、実施例1と比較して底部領域36の厚みが薄い。ドリフト領域34内に突出する底部領域36の距離が短いので、トレンチ間半導体領域を流れた電子が、より広範囲のドリフト領域34に流れ込むことができ、オン抵抗を低減することができる。
【0047】
(参考例)
次に、
図12を参照して、参考例の半導体装置500について説明する。参考例の半導体装置500は、底部領域36を有してない点で実施例1の半導体装置10と異なっている。その他の構成は、実施例1と同様である。参考例の半導体装置500では、底部領域36が設けられていない。しかしながら、各電界緩和領域38がトレンチ22の下端よりも下側まで延びている。各トレンチ22が延びる方向(y方向)に間隔を空けて複数の電界緩和領域38が設けられているため、半導体装置500がオフしている状態では、各電界緩和領域38からドリフト領域34内に広がる空乏層によって、トレンチ22の下端近傍での電界集中を抑制することができる。また、半導体装置500では、底部領域36を形成しないため、製造工程を低減することができる。
【0048】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。