(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】発泡樹脂形成性組成物、ポリウレア系樹脂発泡体、及びポリウレア系樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20241203BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20241203BHJP
C08G 18/64 20060101ALI20241203BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/32 037
C08G18/64 015
C08G18/32 025
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2023575471
(86)(22)【出願日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2023029901
(87)【国際公開番号】W WO2024053366
(87)【国際公開日】2024-03-14
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2022143136
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】河野 和起
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-125143(JP,A)
【文献】特開昭58-113150(JP,A)
【文献】特公昭47-035799(JP,B1)
【文献】国際公開第2022/138302(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111333904(CN,A)
【文献】国際公開第2023/195269(WO,A1)
【文献】INAGAKI Fuyuhiko et al.,CO2-Selective Absorbents in Air:Reverse Lipid Bilayer Structure Forming Neutral Carbamic Acid in Wa,J.Am.Chem.Soc.,米国,2017,vol.139,p.4639-4642,DOI:10.1021/jacs.7b01049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレア系樹脂発泡体を得るための発泡樹脂形成性組成物であって、
環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及び芳香族ポリアミン化合物(C)を含有し、
環状ポリアミン化合物(a1)が、m-キシリレンジアミン及びその誘導体、並びに1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であり、
ポリイソシアネート化合物(B)が、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1つであり、
芳香族ポリアミン化合物(C)が、下記式(IIIa)で示される化合物である、発泡樹脂形成性組成物。
【化1】
(式(IIIa)中、nは1~20である。)
【請求項2】
前記発泡樹脂形成性組成物中の、芳香族ポリアミン化合物(C)に対する環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)のモル比((A)/(C))が3/7~8/2である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項3】
芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価が
70~300mgKOH/gである、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項4】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリウレアを含有するポリウレア系樹脂発泡体を得るための発泡樹脂形成性組成物である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【化1】
(式(I)中、R
1は、環状ポリアミン化合物(a1)に由来する2価の炭化水素基及び芳香族ポリアミン化合物(C)に由来する2価の有機基であり、R
2は、ポリイソシアネート化合物(B)に由来する2価の炭化水素基である。)
【請求項5】
ポリイソシアネート化合物(B)がイソホロンジイソシアネートである、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項6】
環状ポリアミン化合物(a1)がm-キシリレンジアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項7】
環状ポリアミン化合物(a1)が1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項8】
環状ポリアミン化合物(a1)がm-キシリレンジアミン及び1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項9】
環状ポリアミン化合物(a1)がm-キシリレンジアミンである、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項10】
環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)以外の発泡剤の含有量が5質量%以下である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項11】
前記発泡樹脂形成性組成物中の、ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基数に対する環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)と芳香族ポリアミン化合物(C)の合計アミノ基数の比(前記アミノ基数/前記イソシアネート基数)が0.5以上1.5以下である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項12】
芳香族ポリアミン化合物(C)の分子量が
400~1500である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項13】
芳香族ポリアミン化合物(C)が、前記式(IIIa)で示される化合物であり、式(IIIa)中、nが2~6である、請求項1に記載の発泡樹脂形成性組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物を発泡成形してなるポリウレア系樹脂発泡体。
【請求項15】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリウレアを含有する、請求項14に記載のポリウレア系樹脂発泡体。
【化4】
(式(I)中、R
1は、環状ポリアミン化合物(a1)に由来する2価の炭化水素基及び芳香族ポリアミン化合物(C)に由来する2価の有機基であり、R
2は、ポリイソシアネート化合物(B)に由来する2価の炭化水素基である。)
【請求項16】
芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価が
100~300mgKOH/gである、請求項14に記載のポリウレア系樹脂発泡体。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物を発泡成形する工程を含む、ポリウレア系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項18】
環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させて、反応物(A)を得る工程、並びに、得られた反応物(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)及び芳香族ポリアミン化合物(C)を混合して発泡樹脂形成性組成物を得る工程を含む、請求項17に記載のポリウレア系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項19】
芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価が
100~300mgKOH/gである、請求項17に記載のポリウレア系樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂形成性組成物、ポリウレア系樹脂発泡体、及びポリウレア系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレア系樹脂は、ポリイソシアネートとポリアミンとの化学反応で生成されるウレア結合を有する樹脂化合物であり、防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性、速乾性、環境安全性等に優れており、例えば、合成皮革、人工皮革、接着剤、塗料等の各種分野で幅広く利用されている。
また、ポリウレア系樹脂を発泡させることにより、ポリウレア系樹脂に断熱性、遮音性、軽量性等の機能を付与することも検討されている。
ポリウレア系樹脂発泡体に関する技術としては、例えば、特許文献1及び2に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、イソシアヌレート構造を有し、イソシアヌレート化率が25~50%であるポリウレア発泡体が、優れた難燃性と燃焼時の保形性を有し、湿熱環境下における経時劣化を抑制でき、塗工時の被着体への接着性に優れ、接炎してもクラックが入りにくく、かつ、接炎による炭化が表面から深部へ進行しにくいことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、イソシアネート成分;イソシアネート反応性成分;発泡触媒及び/又はゲル化触媒から選ばれ、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミンを含んでなる触媒;特定のアミン成分;を含み、該アミン成分の合計量が0.05重量%~0.50重量%である組成物が、ホルムアルデヒドの放出が低減されたポリウレアフォームを製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6925554号公報
【文献】特開2019-206712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、発泡体を得るためには発泡剤が必要であり、より高い発泡性を得るためには、大量の発泡体を使用し、廃棄する必要があった。一方、ポリウレア系樹脂の原料として用いられるポリアミンは、二酸化炭素を吸収することができるため、廃棄される二酸化炭素を吸収する材料として有用である。
本発明は、環境負荷を低減でき、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体を得ることができる発泡樹脂形成性組成物、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体、及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、環状アミン化合物と二酸化炭素との反応物と芳香族アミンを、ポリウレア系樹脂発泡体を得るための原料として使用することにより、環境負荷の大きい従来の発泡剤の使用量を減らすことができ、ポリウレア系樹脂発泡体の製造時における環境負荷を低減できることを見出し、更に得られるポリウレア系樹脂発泡体の発泡性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。また、前記反応物は、環境中の二酸化炭素を吸収して製造することができることからも環境負荷の低減に資する。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す発泡樹脂形成性組成物、ポリウレア系樹脂発泡体、及びポリウレア系樹脂発泡体の製造方法が提供される。
【0009】
[1]ポリウレア系樹脂発泡体を得るための発泡樹脂形成性組成物であって、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及び芳香族ポリアミン化合物(C)を含有する、発泡樹脂形成性組成物。
[2]前記発泡樹脂形成性組成物中の、芳香族ポリアミン化合物(C)に対する環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)のモル比((A)/(C))が3/7~8/2である、前記[1]に記載の発泡樹脂形成性組成物。
[3]芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価が50~600mgKOH/gである、前記[1]又は[2]に記載の発泡樹脂形成性組成物。
[4]下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリウレアを含有するポリウレア系樹脂発泡体を得るための発泡樹脂形成性組成物である、前記[1]~[3]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
【化1】
(式(I)中、R
1は、置換基を有していてもよい環状構造を有する2価の炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香環構造を有する2価の有機基であり、R
2は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。なお、芳香環構造を有する2価の有機基は芳香環が窒素原子と結合している。)
[5]ポリイソシアネート化合物(B)がイソシアネート基を2つ以上有する化合物を含む、前記[1]~[4]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
[6]環状ポリアミン化合物(a1)が第一級炭素原子に結合したアミノ基を有する、前記[1]~[5]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
[7]環状ポリアミン化合物(a1)の環状構造が5員環及び6員環からなる群より選択される少なくとも一種を含む、前記[1]~[6]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
[8]環状ポリアミン化合物(a1)のアミノ基の数が2以上6以下である、前記[1]~[7]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
[9]環状ポリアミン化合物(a1)がキシリレンジアミン及びその誘導体、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、リモネンジアミン及びその誘導体、並びにイソホロンジアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を含む、前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
[10]環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)以外の発泡剤の含有量が5質量%以下である、前記[1]~[9]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
[11]前記発泡樹脂形成性組成物中の、ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基数に対する環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)と芳香族ポリアミン化合物(C)の合計アミノ基数の比(前記アミノ基数/前記イソシアネート基数)が0.5以上1.5以下である、前記[1]~[10]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
[12]芳香族ポリアミン化合物(C)が、下記式(III)で示される化合物である、前記[1]~[11]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
【化2】
(式(III)中、Xは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいポリオキシアルキレン基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及び単結合からなる少なくとも1つ、又はこれらを組み合わせた有機基である2価の有機基である。)
[13]芳香族ポリアミン化合物(C)が、下記式(IIIa)で示される化合物である、前記[1]~[12]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物。
【化3】
(式(IIIa)中、nは好ましくは1~20である。)
[14]前記[1]~[13]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物を発泡成形してなるポリウレア系樹脂発泡体。
[15]下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリウレアを含有する、前記[14]に記載のポリウレア系樹脂発泡体。
【化4】
(式(I)中、R
1は、置換基を有していてもよい環状構造を有する2価の炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香環構造を有する2価の有機基であり、R
2は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。なお、芳香環構造を有する2価の有機基は芳香環が窒素原子と結合している。)
[16]芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価が50~600mgKOH/gである、前記[14]又は[15]に記載のポリウレア系樹脂発泡体。
[17]前記[1]~[13]のいずれか1つに記載の発泡樹脂形成性組成物を発泡成形する工程を含む、ポリウレア系樹脂発泡体の製造方法。
[18]環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させて、反応物(A)を得る工程、並びに、得られた反応物(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)及び芳香族ポリアミン化合物(C)を混合して発泡樹脂形成性組成物を得る工程を含む、前記[17]に記載のポリウレア系樹脂発泡体の製造方法。
[19]芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価が50~600mgKOH/gである、前記[17]又は[18]に記載のポリウレア系樹脂発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境負荷を低減でき、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体を得ることができる発泡樹脂形成性組成物、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明の内容を限定しない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。本実施形態において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいといえる。本実施形態において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
【0012】
[発泡樹脂形成性組成物]
本発明の発泡樹脂形成性組成物は、ポリウレア系樹脂発泡体を得るための発泡樹脂形成性組成物であって、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及び芳香族ポリアミン化合物(C)を含有する、発泡樹脂形成性組成物である。
本発明の発泡樹脂形成性組成物は、前記の構成を有することで、環境負荷を低減でき、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体を得ることができる。
「発泡樹脂形成性組成物」とは、発泡樹脂、又は発泡樹脂からなる発泡体を得るための組成物をいい、発泡樹脂、又は発泡樹脂からなる発泡体の原料となる組成物である。
【0013】
本発明の発泡樹脂形成性組成物は、ポリウレア系樹脂発泡体を得るための発泡樹脂形成性組成物であるが、好ましくは、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリウレアを含有するポリウレア系樹脂発泡体を得るための発泡樹脂形成性組成物である。
【化5】
(式(I)中、R
1は、置換基を有していてもよい環状構造を有する2価の炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香環構造を有する2価の有機基であり、R
2は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。なお、芳香環構造を有する2価の有機基は芳香環が窒素原子と結合している。)
【0014】
R1は、置換基を有していてもよい環状構造を有する2価の炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香環構造を有する2価の有機基のいずれをも含む。前記2価の炭化水素基は、環状ポリアミン化合物(a1)に由来し、好ましい構造も環状ポリアミン化合物(a1)と同様である。前記2価の有機基は、芳香族ポリアミン化合物(C)に由来し、好ましい構造も芳香族ポリアミン化合物(C)と同様である。
ポリウレア中にR1として置換基を有していてもよい環状構造を有する2価の炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香環構造を有する2価の有機基の両方を含む。R1は、環状ポリアミン化合物(a1)に由来する2価の炭化水素基及び芳香族ポリアミン化合物(C)に由来する2価の有機基である。つまり、前記置換基を有していてもよい環状構造を有する2価の炭化水素基は、環状ポリアミン化合物(a1)に由来する2価の炭化水素基であり、置換基を有していてもよい芳香環構造を有する2価の有機基は、芳香族ポリアミン化合物(C)に由来する2価の有機基である。
R2は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。R2は、ポリイソシアネート化合物(B)に由来し、好ましい構造もポリイソシアネート化合物(B)と同様である。
R2は、ポリイソシアネート化合物(B)に由来する2価の炭化水素基である。前記置換基を有していてもよい2価の炭化水素は、ポリイソシアネート化合物(B)に由来する2価の炭化水素基である。
【0015】
本発明によれば、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
樹脂を成形するときの加熱により、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)から環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素が生成する。環状ポリアミン化合物(a1)は二酸化炭素を保持する能力が高く、吸水性が低い。そのため、十分な量の二酸化炭素が発泡に寄与することができ、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体が得られると考えられる。更に、芳香環に直接アミノ基が結合した芳香族ポリアミン化合物(C)が、発泡樹脂形成性組成物が発泡を開始すると同時に反応を開始するため、より発泡性が向上すると考えられる。また、環状ポリアミン化合物(a1)は二酸化炭素を保持する能力が高いため、環境中の二酸化炭素を吸収することができるだけでなく、その他の発泡剤の使用も減らすことができ、環境負荷も低減できる。
【0016】
<環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)>
本発明の発泡樹脂形成性組成物に含有される環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)は、前記発泡樹脂形成性組成物において、発泡剤として作用する。
つまり、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)を、ポリウレア系樹脂発泡体を成形するための発泡剤として使用することにより、環境負荷を低減でき、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体を得ることができる。
【0017】
環状ポリアミン化合物(a1)は、二酸化炭素との反応性及び発泡性をより向上させる観点から、第一級炭素原子に結合したアミノ基を有することが好ましい。このようなアミノ基は立体障害が小さく、二酸化炭素を吸収しやすいと考えられる。
環状ポリアミン化合物(a1)は、環状構造を有するポリアミン化合物である。環状ポリアミン化合物(a1)の環状構造としては、例えば、脂環式炭化水素構造、芳香族炭化水素構造、環の中にヘテロ原子を含む複素環式構造等が挙げられ、二酸化炭素との反応性及び発泡性をより向上させる観点から、脂環式炭化水素構造及び芳香族炭化水素構造から選択される少なくとも一種の構造を含むことが好ましく、芳香族炭化水素構造を含むことがより好ましい。
ここで、本実施形態において、脂環式炭化水素構造とは、芳香族性を有しない飽和又は不飽和の炭素と水素からなる環状構造のことをいい、環の中にヘテロ原子を含む複素環式構造は除かれる。また、複素環式構造とは、環を構成する原子の中にヘテロ原子を含む環構造のことをいう。
環状ポリアミン化合物(a1)は、シス体、トランス体、シス体とトランス体との混合物のいずれであってもよい。
【0018】
環状ポリアミン化合物(a1)の環状構造は、二酸化炭素との反応性及び発泡性をより向上させる観点から、5員環及び6員環からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、6員環を含むことがより好ましい。
また、環状ポリアミン化合物(a1)は、二酸化炭素との反応性及び発泡性をより向上させる観点から、環状構造を1つ有することが好ましい。すなわち、環状ポリアミン化合物(a1)は単環式化合物であることが好ましい。
環状ポリアミン化合物(a1)の脂環式炭化水素構造としては、例えばシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられる。上記の環構造の中でも、シクロペンタン環、シクロヘキサン環が好ましく、シクロヘキサン環がより好ましく、1,3-置換のシクロヘキサン環が更に好ましい。
【0019】
環状ポリアミン化合物(a1)のアミノ基の数は、二酸化炭素との反応性、硬化性及び発泡性をより向上させる観点から、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは2である。
また、アミノ基としては、二酸化炭素との反応性、硬化性及び発泡性をより向上させる観点から、窒素-水素結合を有するアミノ基が好ましく、第一級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ基がより好ましく、第一級アミノ基が更に好ましい。
【0020】
環状ポリアミン化合物(a1)は、好ましくはo-キシリレンジアミン及びその誘導体、m-キシリレンジアミン及びその誘導体、p-キシリレンジアミン及びその誘導体、並びに下記式(II)で示される化合物から選択される少なくとも一種である。
【0021】
【化6】
上記式(1)中、R
3~R
6はそれぞれ独立に水素原子、又はアミノ基、シアノ基、フェニル基、水酸基及びカルボキシ基から選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示し、R
7~R
12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基を示し、x及びyはそれぞれ独立に0以上6以下の整数を表し、x+yは1以上6以下であり、p及びqはそれぞれ独立に0以上4以下の整数であり、p及びqの少なくとも一方が1以上である。
【0022】
R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、又はアミノ基、シアノ基、フェニル基、水酸基及びカルボキシ基から選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、好ましくは水素原子、又はアミノ基、シアノ基及びフェニル基から選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子、又はアミノ基、シアノ基及びフェニル基から選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数1以上4以下のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子、又はアミノ基及びシアノ基から選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より更に好ましくは水素原子、又はアミノ基及びシアノ基から選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数2以上4以下のアルキル基であり、より更に好ましくは水素原子である。
R3~R6の炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、1以上であり、好ましくは2以上である。そして10以下であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下であり、更に好ましくは3以下である。
【0023】
R7~R12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上4以下の炭化水素基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子又はメチル基であり、更に好ましくは水素原子である。
R7~R12の炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、1以上4以下であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。
【0024】
p及びqは、それぞれ独立に、0以上、好ましくは1以上であり、そして4以下、好ましくは2以下、より好ましくは1である。ただし、p及びqの少なくとも一方が1以上である。
【0025】
x及びyは、それぞれ独立に、0以上6以下の整数を表し、x+yは1以上6以下である。二酸化炭素吸収量及び発泡性をより向上させる観点から、x+yは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、二酸化炭素吸収量及び発泡性をより向上させる観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4である。すなわち、脂環式炭化水素構造は5員環又は6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。x+yが4の場合、好ましくはxが1であり、yが3である。
【0026】
環状ポリアミン化合物(a1)は、二酸化炭素との反応性、硬化性及び発泡性を向上させる観点から、キシリレンジアミン及びその誘導体、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、リモネンジアミン及びその誘導体、イソホロンジアミン及びその誘導体、2,5-ビスアミノメチルフラン及びその誘導体、並びに、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、キシリレンジアミン及びその誘導体、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、リモネンジアミン及びその誘導体、並びにイソホロンジアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、キシリレンジアミン及びその誘導体、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、並びにイソホロンジアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましく、キシリレンジアミン及びその誘導体、並びにビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより更に好ましく、キシリレンジアミン及びその誘導体を含むことがより更に好ましい。
環状ポリアミン化合物(a1)としては、二酸化炭素との反応性、硬化性及び発泡性を向上させる観点から、キシリレンジアミン及びその誘導体、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、リモネンジアミン及びその誘導体、イソホロンジアミン及びその誘導体、2,5-ビスアミノメチルフラン及びその誘導体、並びに、2,5-ビス(アミノメチル)テトラヒドロフラン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、キシリレンジアミン及びその誘導体、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、リモネンジアミン及びその誘導体、並びにイソホロンジアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、キシリレンジアミン及びその誘導体、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、並びにイソホロンジアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましく、キシリレンジアミン及びその誘導体、並びにビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種がより更に好ましく、キシリレンジアミン及びその誘導体がより更に好ましい。
【0027】
キシリレンジアミン及びその誘導体としては、o-キシリレンジアミン及びその誘導体、m-キシリレンジアミン及びその誘導体、並びにp-キシリレンジアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられ、好ましくはm-キシリレンジアミン及びその誘導体、並びにp-キシリレンジアミン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であり、より好ましくはm-キシリレンジアミン及びその誘導体である。
ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体、並びにtrans-1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられ、好ましくは1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体である。
【0028】
これらのなかでも、環状ポリアミン化合物(a1)は、二酸化炭素との反応性及び発泡性を向上させる観点から、好ましくはm-キシリレンジアミン及びその誘導体、並びに1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であり、m-キシリレンジアミン及びその誘導体が更に好ましい。
【0029】
ここで、上記各種アミンの誘導体としては、例えば、アミノ基の水素原子のうちの少なくとも1つが、アミノ基、シアノ基及びフェニル基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、好ましくはアミノ基、シアノ基及びフェニル基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、より好ましくはアミノ基及びシアノ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、更に好ましくはアミノ基及びシアノ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい炭素数2以上4以下のアルキル基で置換された化合物が挙げられる。
また、上記各種アミンの誘導体としては、例えば、環状構造の水素原子のうちの少なくとも一部が炭素数1以上4以下の炭化水素基、好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基、更に好ましくメチル基で置換された化合物が挙げられる。
上記のように、環状ポリアミン化合物(a1)としては、アミン(1級アミン)が好ましい。すなわち、環状ポリアミン化合物(a1)は、二酸化炭素との反応性及び発泡性を向上させる観点から、好ましくはキシリレンジアミン、及びビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種である。
キシリレンジアミンとしては、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられ、好ましくはm-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンからなる群より選択される少なくとも一種であり、更に好ましくはm-キシリレンジアミンである。
ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとしては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、及びtrans-1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられ、好ましくは1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである。
【0030】
これらのなかでも、環状ポリアミン化合物(a1)は、二酸化炭素との反応性及び発泡性を向上させる観点から、好ましくはm-キシリレンジアミン及び1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種であり、m-キシリレンジアミンが更に好ましい。
【0031】
これらの環状ポリアミン化合物(a1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
以下の方法で測定される、環状ポリアミン化合物(a1)の二酸化炭素最大解離温度は、二酸化炭素の解離性を向上させ、発泡性を向上させる観点から、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下であり、更に好ましくは160℃以下であり、より更に好ましくは150℃以下であり、より更に好ましくは140℃以下であり、より更に好ましくは135℃以下であり、より更に好ましくは130℃以下である。上記二酸化炭素最大解離温度の下限値は特に限定されないが、例えば40℃以上である。
(方法)
二酸化炭素を吸収させた環状ポリアミン化合物(a1)を、昇温速度10℃/分で23℃から250℃まで加熱し、二酸化炭素の脱離に伴う吸熱量が最大になる温度を測定し、この温度を二酸化炭素最大解離温度とする。ここで、二酸化炭素を吸収させた環状ポリアミン化合物(a1)は、例えば、環状ポリアミン化合物(a1)5mmolを23℃、50%RHの空気中に24時間静置することにより調製することができる。
【0033】
環状ポリアミン化合物(a1)の酸解離定数(pKa)は、二酸化炭素吸収量及び発泡性をより向上させる観点から、好ましくは8.0以上であり、より好ましくは8.5以上であり、更に好ましくは9.0以上である。そして二酸化炭素の解離性を向上させ、発泡性をより向上させる観点から、好ましくは12.0以下であり、より好ましくは11.5以下であり、更に好ましくは11.0以下である。
環状ポリアミン化合物(a1)の酸解離定数は、酸塩基滴定法に基づく下記測定方法により求められる値である。
(1)環状ポリアミン化合物(a1)0.2gを精製水30mLに溶解する。
(2)上記(1)により得られた溶液を、電位差自動滴定装置(例えば京都電子工業株式会社製、AT-610)を用いて、0.1規定過塩素酸-酢酸溶液で滴定することにより酸解離定数(pKa)を算出する。
なお、測定時の温度は、25±2℃とする。
【0034】
環状ポリアミン化合物(a1)の分子量は、二酸化炭素を解離させる際の熱処理時の重量減少を抑制する観点から、好ましくは110以上であり、より好ましくは120以上であり、更に好ましくは130以上である。そして、二酸化炭素吸収量及び発泡性をより向上させる観点から、好ましくは250以下であり、より好ましくは200以下であり、更に好ましくは180以下である。
【0035】
以下の方法で測定される環状ポリアミン化合物(a1)の最大吸熱温度は、二酸化炭素を解離させる際の熱処理時の重量減少を抑制する観点から、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、更に好ましくは150℃以上である。そして、二酸化炭素吸収量及び発泡性を向上させる観点から、好ましくは260℃以下であり、より好ましくは230℃以下であり、更に好ましくは210℃以下であり、より更に好ましくは190℃以下である。
(方法)
環状ポリアミン化合物(a1)を、昇温速度10℃/分で23℃から350℃まで加熱し、環状ポリアミン化合物(a1)の揮発に伴う吸熱量が最大になる温度を測定し、この温度をアミン化合物(a1)の最大吸熱温度とする。
【0036】
環状ポリアミン化合物(a1)のアミン価は、二酸化炭素吸収量及び発泡性をより向上させる観点から、好ましくは400mgKOH/g以上であり、より好ましくは500mgKOH/g以上であり、更に好ましくは600mgKOH/g以上であり、より更に好ましくは650mgKOH/g以上であり、より更に好ましくは700mgKOH/g以上である。そして好ましくは1500mgKOH/g以下であり、より好ましくは1400mgKOH/g以下であり、更に好ましくは1300mgKOH/g以下であり、より更に好ましくは1100mgKOH/g以下であり、より更に好ましくは1000mgKOH/g以下であり、より更に好ましくは850mgKOH/g以下である。アミン価とは、化合物中のアミンの量を示し、化合物1g量を中和するのに要する酸と当量の水酸化カリウム(KOH)のmg数をいう。
アミン価はJIS K7237-1995に準じて、下記方法により測定することができる。
(1)環状ポリアミン化合物(a1)0.1gを酢酸20mLに溶解する。
(2)上記(1)により得られた溶液を、電位差自動滴定装置(例えば京都電子工業株式会社製、AT-610)を用いて、0.1規定過塩素酸-酢酸溶液で滴定することによりアミン価を算出する。
【0037】
環状ポリアミン化合物(a1)を23℃、50%RHの空気環境下、1週間静置したときの、下記式で算出される環状ポリアミン化合物(a1)の質量増加率は、発泡性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは18質量%以上であり、より更に好ましくは20質量%以上であり、より更に好ましくは23質量%以上である。そして、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下であり、より更に好ましくは30質量%以下であり、より更に好ましくは28質量%以下である。
環状ポリアミン化合物(a1)の質量増加率[質量%]=100×環状ポリアミン化合物(a1)の質量増加量(g)/(環状ポリアミン化合物(a1)の質量(g)+環状ポリアミン化合物(a1)の質量増加量(g))
環状ポリアミン化合物(a1)の質量増加率は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0038】
環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)は、例えば、環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させて、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素を反応させることにより得ることができる。すなわち、好ましい環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)の製造方法は、環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させて、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素を反応させる。
【0039】
二酸化炭素を含む気体は、二酸化炭素単体でもよく、二酸化炭素と不活性ガスとの混合物でもよい。二酸化炭素を含む気体として空気を用いることが簡便であり、好ましい。ここで「不活性ガス」とは、後述のポリウレア系樹脂発泡体を得る際の反応に影響を与えないガスのことをいう。不活性ガスとしては、窒素、酸素等が挙げられる。
二酸化炭素を含む気体の二酸化炭素濃度は、0.01体積%以上10体積%以下の気体に接触させることにより、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素を反応させて反応物(A)を得る工程を更に含むことが好ましい。
前記二酸化炭素濃度は、好ましくは0.01体積%以上であり、より好ましくは0.02体積%以上であり、更に好ましくは0.03体積%以上であり、そして、好ましくは10体積%以下であり、より好ましくは5体積%以下であり、更に好ましくは1体積%以下であり、より更に好ましくは0.5体積%以下であり、より更に好ましくは0.1体積%以下である。また、二酸化炭素濃度が0.01体積%以上10体積%以下の前記気体は空気であることが更に好ましい。
【0040】
環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させる方法には制限はないが、二酸化炭素を含む気体中に、環状ポリアミン化合物(a1)を30℃以下で、撹拌又は振とうしながら、前記質量増加率が目的の範囲となるまで保存することが好ましい。環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させるときの圧力には制限はないが、大気圧下又は加圧下で保存することが好ましく、大気圧下で保存することがより好ましい。
二酸化炭素を含む気体に接触させる時間は、上記に示した温度、圧力、気体に含まれる二酸化炭素の量によって調節すればよいが、二酸化炭素を含む気体として空気を用い、大気圧下で保存する場合には、二酸化炭素を含む気体に接触させる時間は、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは1日以上であり、更に好ましくは5日以上であり、より更に好ましくは10日以上であり、より更に好ましくは15日以上であり、より更に好ましくは30日以上である。上限には制限はないが、100日以下が好ましい。
【0041】
環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)は、好ましくは、カルバミン酸、カルバミン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0042】
環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)は、上記のように塩を形成しているが、反応物(A)に含まれる環状ポリアミン化合物(a1)由来の部分と二酸化炭素由来の部分のモル比[環状ポリアミン化合物(a1)/二酸化炭素]は、好ましくは70/30~30/70であり、より好ましくは60/40~40/60であり、更に好ましくは55/45~45/55である。
前記反応物(A)中の水分量は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下であり、より更に好ましくは5質量%以下である。水分量が前記範囲であることで発泡性を向上させることができる。
環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)は、前記のとおり、環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させて得ることができるが、その際に水分を加えないことが好ましい。
【0043】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
ポリイソシアネート化合物(B)は、イソシアネート基を2つ以上有する化合物を含んでいれば、特に限定されず、従来公知のものを使用できる。ポリイソシアネート化合物(A)は、好ましくはイソシアネート基を2つ以上有する化合物である。
イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、1,5-オクチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂環式イソシアネート化合物;2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート、p-もしくはm-キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物等が挙げられる。
イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリイソシアネートフェニルチオフォスフェート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、HDIやTDIのトリマーであるイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体等が挙げられる。
イソシアネート化合物(B)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
これらの中でも、ポリイソシアネート化合物(B)としては、イソシアネート基を2つ有するジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる群より選択される少なくとも1つがより好ましく、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及び1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群より選択される少なくとも1つが更に好ましく、イソホロンジイソシアネート(IPDI)がより更に好ましい。
【0045】
<芳香族ポリアミン化合物(C)>
本発明の発泡樹脂形成性組成物には、芳香族ポリアミン化合物(C)が含有される。
本発明の発泡樹脂形成性組成物における「芳香族ポリアミン化合物(C)」は、芳香環に直接アミノ基が結合したポリアミンをいう。
芳香族ポリアミン化合物(C)は、発泡樹脂形成性組成物が発泡を開始すると同時に反応を開始するためか、得られる発泡ポリウレア系樹脂が高分子量化し、更に発泡性が向上する。
芳香族ポリアミン化合物(C)は1分子中に複数のアミノ基を有しているが、芳香族ポリアミン化合物(C)1分子中に1つの芳香環のみを有している場合は1つの芳香環に複数のアミノ基を有しており、芳香族ポリアミン化合物(C)1分子中に複数の芳香環を有している場合は1つの芳香環に1つ又は複数のアミノ基を有しているが、芳香族ポリアミン化合物(C)は、1分子中に複数の芳香環を有しており、1つの芳香環に1つのアミノ基を有していることが好ましい。
【0046】
芳香族ポリアミン化合物(C)の芳香環は、5員環及び6員環からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
【0047】
芳香族ポリアミン化合物(C)のアミノ基の数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは2である。
また、アミノ基としては、窒素-水素結合を有するアミノ基が好ましく、第一級アミノ基及び第二級アミノ基からなる群より選択される少なくとも一種のアミノ基がより好ましく、第一級アミノ基が更に好ましい。
【0048】
芳香族ポリアミン化合物(C)は、好ましくは下記式(III)で示される化合物である。
【0049】
【化7】
(式(III)中、Xは2価の有機基である。)
【0050】
Xは2価の有機基であればよいが、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいポリオキシアルキレン基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及び単結合からなる少なくとも1つであり、これらを組み合わせた有機基であってもよい。
芳香族ポリアミン化合物(C)は、より好ましくは下記式(IIIa)で示される化合物である。式(IIIa)で示される化合物は、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートである。
【0051】
【化8】
(式(IIIa)中、nは好ましくは1~20である。)
【0052】
nは、発泡性を向上させる観点から、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~15であり、更に好ましくは2~10であり、より更に好ましくは2~6である。
前記式(IIIa)で示される化合物の市販品としては、クミアイ化学工業株式会社製の「エラスマー1000P」(分子量1238、アミン価84.8mgKOH/g)、「エラスマー650P」(分子量888、アミン価126mgKOH/g)、「エラスマー250P」(分子量488、アミン価220mgKOH/g);三井化学ファイン株式会社製の「エタキュア100プラス」(分子量178、アミン価89mgKOH/g)、「エタキュア300」(分子量214、アミン価107mgKOH/g)、「エタキュア420」(分子量310、アミン価155mgKOH/g)等が挙げられる。
芳香族ポリアミン化合物(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
芳香族ポリアミン化合物(C)の分子量は、好ましくは300~5000であり、より好ましくは300~2000であり、更に好ましくは300~1500であり、より更に好ましくは300~1000であり、より更に好ましくは300~700であり、より更に好ましくは400~600である。芳香族ポリアミン化合物(C)の分子量が上記範囲であることによって、発泡性を向上させることができ、更に得られるポリウレア系樹脂発泡体に柔軟性を与えることができる。
【0054】
芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価は、好ましくは50~1000mgKOH/gであり、より好ましくは50~600mgKOH/gであり、更に好ましくは50~400mgKOH/gであり、より更に好ましくは50~300mgKOH/gであり、より更に好ましくは70~300mgKOH/gであり、より更に好ましくは80~300mgKOH/gであり、より更に好ましくは100~300mgKOH/gである。アミン価とは、化合物中のアミンの量を示し、化合物1g量を中和するのに要する酸と当量の水酸化カリウム(KOH)のmg数をいう。芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価が上記範囲であることによって、発泡性を向上させることができ、更に得られるポリウレア系樹脂発泡体に柔軟性を与えることができる。
アミン価はJIS K7237-1995に準じて、下記方法により測定することができる。
(1)芳香族ポリアミン化合物(C)0.1gを酢酸20mLに溶解する。
(2)上記(1)により得られた溶液を、電位差自動滴定装置(例えば京都電子工業株式会社製、AT-610)を用いて、0.1規定過塩素酸-酢酸溶液で滴定することによりアミン価を算出する。
【0055】
<発泡樹脂形成性組成物の組成>
発泡樹脂形成性組成物は、前記のとおり、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及び芳香族ポリアミン化合物(C)を含有するが、以下の組成であることが好ましい。
【0056】
前記発泡樹脂形成性組成物中の、芳香族ポリアミン化合物(C)に対する環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)のモル比((A)/(C))は、好ましくは3/7~9/1であり、より好ましくは3/7~8/2であり、更に好ましくは4/6~8/2であり、より更に好ましくは5/5~8/2であり、より更に好ましくは5/5~7/3であり、より更に好ましくは6/4~7/3である。芳香族ポリアミン化合物(C)に対する環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)のモル比が上記範囲であることによって、発泡性を向上させることができ、更に得られるポリウレア系樹脂発泡体に柔軟性を与えることができる。
【0057】
発泡樹脂形成性組成物中の、ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基数に対する環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)と芳香族ポリアミン化合物(C)の合計アミノ基数の比(前記アミノ基数/前記イソシアネート基数)が、好ましくは0.5以上1.5以下となる量である。ポリイソシアネート化合物(B)中のイソシアネート基数に対する前記発泡剤(A)中のアミノ基数の比(前記アミノ基数/前記イソシアネート基数)は、発泡性を向上させる観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.6以上であり、更に好ましくは0.7以上であり、より更に好ましくは0.8以上であり、より更に好ましくは0.9以上である。同様の観点から、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.4以下であり、更に好ましくは1.3以下であり、より更に好ましくは1.2以下であり、より更に好ましくは1.1以下である。
【0058】
本発明の発泡樹脂形成性組成物には、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)以外の発泡剤が含まれていてもよいが、実質的に含まれないことが好ましい。発泡樹脂形成性組成物中の発泡剤(A)以外の発泡剤の含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、より更に好ましくは0.5質量%以下であり、より更に好ましくは0.1質量%以下であり、より更に好ましくは0質量%であり、含まれないことがより更に好ましい。
反応物(A)以外の発泡剤としては、例えば、クロロフルオロカーボン、フルオロカーボン等のフロン系のハロゲン含有炭化水素類;シクロペンタン等の脂環式炭化水素類;ジニトロペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の有機系発泡剤;炭酸水素ナトリウム等の無機系発泡剤が挙げられる。
【0059】
発泡樹脂形成性組成物には、さらに、充填材、可塑剤等の改質成分、揺変剤等の流動調整成分、顔料、レベリング剤、粘着付与剤、エラストマー微粒子、硬化促進剤、整泡剤、化学発泡剤等のその他の成分を用途に応じて含有させてもよい。
また、発泡樹脂形成性組成物には、溶媒を含んでいてもよいが、溶媒は実質的に含まないことが好ましい。溶媒を含まないことで、環境調和性が高く、簡便に発泡体を得ることができる。
ただし、本発明の効果を有効に得る観点から、発泡樹脂形成性組成物中の環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及び芳香族ポリアミン化合物(C)の合計含有量は、本発明に係る発泡樹脂形成性組成物に含まれる全固形分を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは98質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは100質量%以下である。
【0060】
<発泡樹脂形成性組成物の調製方法>
発泡樹脂形成性組成物の調製方法には特に制限はなく、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、芳香族ポリアミン化合物(C)、及び必要に応じ他の成分を公知の方法及び装置を用いて混合し、製造することができる。
【0061】
[ポリウレア系樹脂発泡体及びポリウレア系樹脂発泡体の製造方法]
本発明のポリウレア系樹脂発泡体は、前述した本発明に係る発泡樹脂形成性組成物を発泡成形してなる。したがって、本発明のポリウレア系樹脂発泡体は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリウレアを含有する。本発明のポリウレア系樹脂発泡体に含有される下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリウレアは、前記[発泡樹脂形成性組成物]の項で説明したものと同一である。
【化9】
(式(I)中、R
1は、置換基を有していてもよい環状構造を有する2価の炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香環構造を有する2価の有機基であり、R
2は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。なお、芳香環構造を有する2価の有機基は芳香環が窒素原子と結合している。)
【0062】
R1は、置換基を有していてもよい環状構造を有する2価の炭化水素基及び置換基を有していてもよい芳香環構造を有する2価の有機基のいずれをも含む。前記2価の炭化水素基は、環状ポリアミン化合物(a1)に由来し、好ましい構造も環状ポリアミン化合物(a1)と同様である。2価の有機基は、芳香族ポリアミン化合物(C)に由来し、好ましい構造も芳香族ポリアミン化合物(C)と同様である。
R2は、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。R2は、ポリイソシアネート化合物(B)に由来し、好ましい構造もポリイソシアネート化合物(B)と同様である。
【0063】
本発明のポリウレア系樹脂発泡体は、前記発泡樹脂形成性組成物を発泡成形してなるものであれば、製造方法には制限はないが、好ましいポリウレア系樹脂発泡体の製造方法は、前記発泡樹脂形成性組成物を発泡成形する工程を含む。
【0064】
発泡樹脂形成性組成物を発泡する工程では、例えば、発泡樹脂形成性組成物を加熱することにより、反応物(A)から環状ポリアミン化合物(a1)及び二酸化炭素を生成させ、二酸化炭素により発泡樹脂形成性組成物を発泡させるとともに、生成した環状ポリアミン化合物(a1)、芳香族ポリアミン化合物(C)及びポリイソシアネート化合物(B)の反応により発泡樹脂形成性組成物を硬化させる。このような方法により、ポリウレア系樹脂発泡体が得られる。
【0065】
発泡樹脂形成性組成物を発泡する工程における加熱温度及び加熱時間は適宜選択できるが、反応速度及び生産性、並びに原料の分解等を防止する観点からは、好ましくは50~250℃であり、より好ましくは100~200℃であり、更に好ましくは120~180℃である。また反応時間は、好ましくは10分間~12時間であり、より好ましくは15分間~4時間である。
また、発泡樹脂形成性組成物を発泡する工程における圧力は適宜選択できるが、大気圧下で発泡することが好ましい。
【0066】
ポリウレア系樹脂発泡体の製造方法に用いられる芳香族ポリアミン化合物(C)の分子量は、好ましくは300~5000であり、より好ましくは300~2000であり、更に好ましくは300~1500であり、より更に好ましくは300~1000であり、より更に好ましくは300~700であり、より更に好ましくは400~600である。芳香族ポリアミン化合物(C)の分子量が上記範囲であることによって、発泡性を向上させることができ、更に得られるポリウレア系樹脂発泡体に柔軟性を与えることができる。
【0067】
ポリウレア系樹脂発泡体の製造方法に用いられる芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価は、好ましくは50~1000mgKOH/gであり、より好ましくは50~600mgKOH/gであり、更に好ましくは50~400mgKOH/gであり、より更に好ましくは50~300mgKOH/gであり、より更に好ましくは70~300mgKOH/gであり、より更に好ましくは80~300mgKOH/gであり、より更に好ましくは100~300mgKOH/gである。アミン価とは、化合物中のアミンの量を示し、化合物1g量を中和するのに要する酸と当量の水酸化カリウム(KOH)のmg数をいう。芳香族ポリアミン化合物(C)のアミン価が上記範囲であることによって、発泡性を向上させることができ、更に得られるポリウレア系樹脂発泡体に柔軟性を与えることができる。
アミン価はJIS K7237-1995に準じて、下記方法により測定することができる。
(1)芳香族ポリアミン化合物(C)0.1gを酢酸20mLに溶解する。
(2)上記(1)により得られた溶液を、電位差自動滴定装置(例えば京都電子工業株式会社製、AT-610)を用いて、0.1規定過塩素酸-酢酸溶液で滴定することによりアミン価を算出する。
【0068】
本発明に係るポリウレア系樹脂発泡体の製造方法では、発泡樹脂形成性組成物を発泡する工程の前に、環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させることにより、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素を反応させて反応物(A)を得る工程を更に含むことが好ましい。つまり、本発明のポリウレア系樹脂発泡体の製造方法は、環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させて、反応物(A)を得る工程、並びに、得られた反応物(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)及び芳香族ポリアミン化合物(C)を混合して発泡樹脂形成性組成物を得る工程を含むことが好ましい。
【0069】
二酸化炭素を含む気体は、二酸化炭素単体でもよく、二酸化炭素と不活性ガスとの混合物でもよい。二酸化炭素を含む気体として空気を用いることが簡便であり、好ましい。ここで「不活性ガス」とは、後述のポリウレア系樹脂発泡体を得る際の反応に影響を与えないガスのことをいう。不活性ガスとしては、窒素、酸素等が挙げられる。
二酸化炭素を含む気体の二酸化炭素濃度は、0.01体積%以上10体積%以下の気体に接触させることにより、環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素を反応させて反応物(A)を得る工程を更に含むことが好ましい。
前記二酸化炭素濃度は、好ましくは0.01体積%以上であり、より好ましくは0.02体積%以上であり、更に好ましくは0.03体積%以上であり、そして、好ましくは10体積%以下であり、より好ましくは5体積%以下であり、更に好ましくは1体積%以下であり、より更に好ましくは0.5体積%以下であり、より更に好ましくは0.1体積%以下である。また、二酸化炭素濃度が0.01体積%以上10体積%以下の前記気体は空気であることが更に好ましい。
【0070】
環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させる方法には制限はないが、二酸化炭素を含む気体中に、環状ポリアミン化合物(a1)を30℃以下、撹拌又は振とうしながら、前記質量増加率が目的の範囲となるまで保存することが好ましい。環状ポリアミン化合物(a1)を、二酸化炭素を含む気体に接触させるときの圧力には制限はないが、大気圧下又は加圧下で保存することが好ましく、大気圧下で保存することがより好ましい。
【0071】
環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)は、好ましくは、カルバミン酸、カルバミン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定は以下の方法により行った。
【0073】
(環状ポリアミン化合物の酸解離定数(pKa))
アミン化合物の酸解離定数は、下記測定方法により求めた。
(1)環状ポリアミン化合物0.2gを精製水30mLに溶解した。
(2)上記(1)により得られた溶液を、電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、AT-610)を用いて、0.1規定過塩素酸-酢酸溶液で滴定することにより酸解離定数(pKa)を算出した。
なお、測定時の温度は、25±2℃とした。
【0074】
(環状ポリアミン化合物及び芳香族ポリアミン化合物のアミン価)
アミン価はJIS K7237-1995に準じて、下記測定方法により測定した。
(1)環状ポリアミン化合物又は芳香族ポリアミン化合物0.1gを酢酸20mLに溶解した。
(2)上記(1)により得られた溶液を、電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、AT-610)を用いて、0.1規定過塩素酸-酢酸溶液で滴定することによりアミン価を算出した。
【0075】
(環状ポリアミン化合物の最大吸熱温度)
環状ポリアミン化合物に対して、次のようにしてDTA測定を行い、環状ポリアミン化合物の最大吸熱温度を測定した。まず、環状ポリアミン化合物に対し、測定温度範囲23~350℃、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気の条件下で、示差熱重量測定計(製品名:DTG-60、株式会社島津製作所製)を用いて示差走査熱量測定を行った。これにより得られたDTA曲線から、環状ポリアミン化合物の揮発に伴う吸熱量が最大になる温度を算出し、その温度を環状ポリアミン化合物の最大吸熱温度とした。
【0076】
(環状ポリアミン化合物の二酸化炭素(CO2)最大解離温度)
開閉可能なデシケーター(内寸:370mm×260mm×272mm)内に二酸化炭素濃度計とシャーレを配置した。その後、環状ポリアミン化合物(5mmol)をデシケーター内のシャーレに加え、すぐに扉を閉め、デシケーター内に環状ポリアミン化合物を、23℃、50%RHの空気環境下、24時間静置した。なお、二酸化炭素の初期濃度は、約400ppmに調整した。
次いで、デシケーター内から環状ポリアミン化合物を取り出し、二酸化炭素を吸収させた環状ポリアミン化合物を得た。二酸化炭素を吸収させた環状ポリアミン化合物に対して、次のようにしてDSC測定を行い、環状ポリアミン化合物の二酸化炭素最大解離温度を測定した。まず、環状ポリアミン化合物に対し、測定温度範囲23~250℃、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気の条件下で、示差熱重量測定計(製品名:DTG-60、株式会社島津製作所製)を用いて示差走査熱量測定を行った。これにより得られたDSC曲線から、二酸化炭素の脱離に伴う吸熱量が最大になる温度を算出し、その温度を環状ポリアミン化合物の二酸化炭素最大解離温度とした。
【0077】
(環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)の水分量及び発泡剤の組成)
製造例で製造した反応物(A)の水分量及び反応物の組成は、有機微量元素分析装置(マイクロコーダー JM10、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製)を用いて測定した。
【0078】
(発泡性の評価)
ポリウレア系樹脂発泡体の体積増加率(倍、発泡倍率)により、発泡樹脂形成性組成物の発泡性を評価した。体積増加率は、底面形状(底面積)が固定されている直方体の容器中で発泡を行ったときの発泡後の厚さを発泡前の厚さで除したものである。体積増加率が大きいほど発泡性に優れていることを意味する。
【0079】
実施例において、環状ポリアミン化合物(a1)、ポリイソシアネート化合物(B)、及び芳香族ポリアミン化合物(C)としては以下のものを用いた。
(環状ポリアミン化合物(a1))
MXDA:メタキシリレンジアミン(酸解離定数(pKa):9.5、アミン価:824mgKOH/g、最大吸熱温度:183.5℃、二酸化炭素(CO2)最大解離温度:135.5℃、三菱瓦斯化学株式会社製)
(ポリイソシアネート化合物(B))
IPDI:イソホロンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製)
HDI:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製)
(芳香族ポリアミン化合物(C))
250P:エラスマー250P(ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、分子量(カタログ値)488、アミン価220mgKOH/g、クミアイ化学工業株式会社製)
1000P:エラスマー1000P(ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、分子量(カタログ値)1238、アミン価84.8mgKOH/g、クミアイ化学工業株式会社製)
【0080】
実施例1
(1)環状ポリアミン化合物(a1)と二酸化炭素との反応物(A)の製造(アミン化合物への二酸化炭素の吸収)
容器に、環状ポリアミン化合物であるMXDAを入れ、23℃、50%RHの空気環境下、1週間静置した。これにより、MXDAと空気中の二酸化炭素を反応させて、MXDAと二酸化炭素との反応物(MXDAの炭酸塩)を得た。ここで、反応ムラを抑制するために、適宜、環状ポリアミン化合物が入っている容器を振り、未反応のMXDAが生じないようにした。得られた反応物(MXDAの炭酸塩)の水分量は0質量%であった。
次いで、MXDAの質量増加量を測定し、以下の式から環状ポリアミン化合物の質量増加率を算出した。質量増加率は、24.1質量%であった。
環状ポリアミン化合物の質量増加率[質量%]=100×環状ポリアミン化合物の質量増加量(g)/(初期の環状ポリアミン化合物の質量(g)+環状ポリアミン化合物の質量増加量(g))
【0081】
(2)発泡樹脂形成性組成物の製造
前記MXDAと二酸化炭素との反応物(A)(MXDAの炭酸塩)に、ポリイソシアネート化合物(B)であるIPDI、芳香族ポリアミン化合物(C)である250Pを加え、1分間撹拌混合し、発泡樹脂形成性組成物を得た。なお、MXDAと二酸化炭素との反応物と250Pの量は、250Pに対するMXDAと二酸化炭素との反応物のモル比((A)/(C))を6/4とし、IPDIの量は、MXDAと250Pのアミノ基数の合計/IPDIのイソシアネート基数が、モル比で1/1となるようにした。
【0082】
(3)ポリウレア系樹脂発泡体の製造
(2)で得られた発泡樹脂形成性組成物を底面が12cm×12cmの直方体の型に、厚さが約3mmとなるように入れ、熱風乾燥機を用いて、加熱温度150℃、加熱時間30分の条件で加熱し、発泡樹脂形成性組成物を硬化及び発泡させた。これにより、ポリウレア系樹脂発泡体を得た。また、目視により、得られたポリウレア系樹脂発泡体に発泡構造が形成されていることを確認した。また、得られたポリウレア系樹脂発泡体について、発泡性の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0083】
実施例2~4及び比較例1~2
実施例1(1)と同様にして得られたMXDAと二酸化炭素との反応物と、250Pの量を表1に示す比率に変更した以外は実施例1と同様にしてポリウレア系樹脂発泡体をそれぞれ得た。なお、比較例1は250Pを用いず、比較例2はMXDAと二酸化炭素との反応物を用いなかった。
得られたポリウレア系樹脂発泡体について、発泡性の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
実施例5
ポリイソシアネート化合物(B)であるIPDIをHDIに変更した以外は実施例1と同様にしてポリウレア系樹脂発泡体を得た。
得られたポリウレア系樹脂発泡体について、発泡性の評価をおこなった。得られた結果を表2に示す。
【0086】
実施例6~9及び比較例3~4
実施例1(1)と同様にして得られたMXDAと二酸化炭素との反応物と、250Pの量を表2に示す比率に変更した以外は実施例5と同様にしてポリウレア系樹脂発泡体をそれぞれ得た。なお、比較例3は250Pを用いず、比較例4はMXDAと二酸化炭素との反応物を用いなかった。
得られたポリウレア系樹脂発泡体について、発泡性の評価をおこなった。得られた結果を表2に示す。
【0087】
【0088】
実施例10
芳香族ポリアミン化合物(C)である250Pを1000Pに変更した以外は実施例1と同様にしてポリウレア系樹脂発泡体を得た。
得られたポリウレア系樹脂発泡体について、発泡性の評価をおこなった。得られた結果を表3に示す。
【0089】
実施例11~14及び比較例5~6
実施例1(1)と同様にして得られたMXDAと二酸化炭素との反応物と、1000Pの量を表3に示す比率に変更した以外は実施例10と同様にしてポリウレア系樹脂発泡体をそれぞれ得た。なお、比較例5は1000Pを用いず、比較例6はMXDAと二酸化炭素との反応物を用いなかった。
得られたポリウレア系樹脂発泡体について、発泡性の評価をおこなった。得られた結果を表3に示す。
【0090】
【0091】
実施例15
ポリイソシアネート化合物(B)であるIPDIをHDIに変更した以外は実施例10と同様にしてポリウレア系樹脂発泡体を得た。
得られたポリウレア系樹脂発泡体について、発泡性の評価をおこなった。得られた結果を表4に示す。
【0092】
実施例16~18及び比較例7~8
実施例1(1)と同様にして得られたMXDAと二酸化炭素との反応物と、1000Pの量を表4に示す比率に変更した以外は実施例15と同様にしてポリウレア系樹脂発泡体をそれぞれ得た。なお、比較例7は1000Pを用いず、比較例8はMXDAと二酸化炭素との反応物を用いなかった。
得られたポリウレア系樹脂発泡体について、発泡性の評価をおこなった。得られた結果を表4に示す。
【0093】
【0094】
表1~4より、実施例の発泡樹脂形成性組成物によれば、環境負荷の大きい従来の発泡剤を使用しなくても、発泡性が向上したポリウレア系樹脂発泡体を作製できることが分かる。また、実施例の発泡樹脂形成性組成物は、環境中の二酸化炭素を吸収して製造することができることからも環境負荷の低減に資するものである。