(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】燃料配管の保護構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/01 20060101AFI20241203BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20241203BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20241203BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60K15/01 A
B60K13/04 A
B62D25/20 G
F02M37/00 321B
(21)【出願番号】P 2023580018
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005578
(87)【国際公開番号】W WO2023152945
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和真
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第0412067(EP,A1)
【文献】特開2019-177705(JP,A)
【文献】特開2019-25937(JP,A)
【文献】特開2007-276614(JP,A)
【文献】特開平5-58346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/00-13/06,15/01
B62D 25/20
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの車幅方向中央部において上方に突出して車両前後方向に延びた形状に形成されるバックボーンと、前記バックボーンの内側に配置される排気浄化触媒と、前記バックボーンを車幅方向に挟んで車両前後方向に延びる一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバの間を車幅方向に架け渡されてサスペンション装置を支持するサスクロスとを備えた車両において、エンジンルーム内のエンジンと前記エンジンルーム外の燃料タンクとを接続する燃料配管の保護構造であって、
前記燃料配管が、
車両前後方向に延在し、前記エンジンに至る前方部と、
前記バックボーンの外側かつ前記前方部よりも車幅方向外側で車両前後方向に延在し、前記燃料タンクに至る後方部と、
前記サスクロス及び前記排気浄化触媒の各々に対して離隔して、前記排気浄化触媒よりも前方かつ前記サスクロスよりも後方で車幅方向に延在し、前記前方部の後端と前記後方部の前端とを接続する中間部と、を有する
ことを特徴とする、燃料配管の保護構造。
【請求項2】
前記中間部が、車両前後方向で前記排気浄化触媒の前端と同等の位置に配置される
ことを特徴とする、請求項1記載の燃料配管の保護構造。
【請求項3】
前記バックボーンの内側で前記排気浄化触媒の上方を覆う遮熱板を備え、
前記中間部が、前記バックボーンの内側において前記遮熱板よりも上方を通って前記前方部に接続される
ことを特徴とする、請求項1または2記載の燃料配管の保護構造。
【請求項4】
前記前方部が、前記バックボーンの内側に配置される
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料配管の保護構造。
【請求項5】
前記バックボーンの内側を通って前記エンジンルーム内のモータと前記バックボーンの後方に配置されるバッテリとを接続する高電圧線が内挿された中空の電線管と、
前記バックボーンが形成される前記フロアパネルの前端から上方に向かって延設されるダッシュパネルとを備え、
前記燃料配管の前記前方部及び前記電線管が、前記バックボーンの上面及び前記ダッシュパネルに沿って配索されるとともに、側面視において前記前方部が前記電線管よりも前記ダッシュパネルに近い位置に配置される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の燃料配管の保護構造。
【請求項6】
前記燃料配管の前記前方部及び前記電線管のうち、前記ダッシュパネルに沿って配索される部分について、正面視で前記前方部及び前記電線管が重ならないように車幅方向に離隔して配索される
ことを特徴とする、請求項5記載の燃料配管の保護構造。
【請求項7】
前記ダッシュパネルの前側面にて車幅方向に延びて設けられるダッシュクロスを備え、
前記燃料配管の前記前方部及び前記電線管が、ブラケットを介して前記ダッシュクロスに固定されるとともに、
前記エンジン及び前記モータが、前記ダッシュクロスよりも下方に配置される
ことを特徴とする、請求項5または6記載の燃料配管の保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、エンジンルーム内のエンジンとエンジンルーム外の燃料タンクとを接続する燃料配管の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルーム内にエンジンを配置するとともにエンジンルーム外に燃料タンクを配置し、これらの間を燃料配管で接続した車両が知られている。この種の車両では、エンジンが車両前部に配置されるとともに、燃料タンクが車両後部に配置される。また、燃料配管はフロアパネルの下方において車両前後方向に配索される(特開2009-68349号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンルーム内に配置される各種装置(エンジン,モータ,補機等)は、例えば車両の前突時に外力を受けて車両後方側へと移動することがある。一方、車両後方側へと移動した各種装置と燃料配管とが干渉してしまうと、燃料配管の破損や変形によって燃料漏れが生じるおそれがある。したがって燃料配管は、たとえ各種装置が車両後方側へと移動してきた場合であっても、干渉が生じにくいレイアウトで配索することが好ましい。従来の車両においてはこのような点が十分に考慮されておらず、改善の余地がある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、燃料配管の保護性能を高めることができるようにした燃料配管の保護構造を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の燃料配管の保護構造は、以下に開示する態様または適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
開示の燃料配管の保護構造は、フロアパネルの車幅方向中央部において上方に突出して車両前後方向に延びた形状に形成されるバックボーンと、前記バックボーンの内側に配置される排気浄化触媒と、前記バックボーンを車幅方向に挟んで車両前後方向に延びる一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバの間を車幅方向に架け渡されてサスペンション装置を支持するサスクロスとを備えた車両において、エンジンルーム内のエンジンと前記エンジンルーム外の燃料タンクとを接続する燃料配管の保護構造である。
前記燃料配管は、車両前後方向に延在し、前記エンジンに至る前方部と、前記バックボーンの外側かつ前記前方部よりも車幅方向外側で車両前後方向に延在し、前記燃料タンクに至る後方部と、前記サスクロス及び前記排気浄化触媒の各々に対して離隔して、前記排気浄化触媒よりも前方かつ前記サスクロスよりも後方で車幅方向に延在し、前記前方部の後端と前記後方部の前端とを接続する中間部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の燃料配管の保護構造によれば、排気浄化触媒よりも前方かつサスクロスよりも後方に燃料配管の中間部を配設することで、後退してきたサスクロスとの干渉による燃料配管の変形や破損を防止しつつ、排気浄化触媒から燃料配管への熱害を防止できる。したがって、燃料配管の保護性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】燃料配管の保護構造の要部を説明するための斜視図である。
【
図2】燃料配管の保護構造が適用された車両の構造を説明するための下面図である。
【
図3】燃料配管の保護構造を説明するための断面図(側面視)である。
【
図4】燃料配管の保護構造を説明するための断面図(正面視)である。
【
図5】燃料配管の保護構造を説明するための断面図(背面視)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示の燃料配管の保護構造は、以下の実施例によって実施されうる。
【実施例】
【0010】
[1.構成]
図1は、実施例としての燃料配管8,9の保護構造に関する要部構造を示す斜視図であり、
図2は、その保護構造が適用された車両1の構造を説明するための下面図(下面側から見上げた図)である。
図2に示す車両1は、駆動源としてのエンジン16(内燃機関)及びモータ18(電動機)と走行用のバッテリ19とを搭載するハイブリッド車両(またはプラグインハイブリッド車両)である。プラグインハイブリッド車両とは、バッテリ19に対する外部充電が可能なハイブリッド車両を意味する。プラグインハイブリッド車両には、外部充電設備からの電力が送給される充電ケーブルを差し込むための充電口(インレット)が設けられる。
【0011】
エンジン16及びモータ18は、車両1の前部に配置されるエンジンルーム10の内部に収容される。このエンジンルーム10の内部には、エンジン16及びモータ18のほか、各種補機類や低圧バッテリ,トランスアクスル等が収容されうる。
図1に示すように、エンジンルーム10は、車室足元の前面をなすダッシュパネル4よりも前方側に配置される。ダッシュパネル4は、車室の正面をなすフロアパネル2の前端から上方に向かって迫り上がった曲面状に形成される。また、ダッシュパネル4の表面のうち前方側の面には、車幅方向に延在するダッシュクロス5(ダッシュクロスメンバ)が取り付けられる。ダッシュクロス5の左右両端部は、サイドメンバ6に接続される。これによりダッシュパネル4が補強され、形状安定性が向上する。
【0012】
フロアパネル2における車幅方向の中央部には、車幅方向に延在するバックボーン3(バックボーンフレーム)が設けられる。バックボーン3は、断面形状が上に凸になるように板面を屈曲させて形成された部位(車幅方向中央部において上方に突出した形状の部位)であり、車両前後方向に延びた形状に形成される。
図1に示すバックボーン3は、エンジンルーム10に隣接して配置された例であって、エンジンルーム10から後方に向かって延びるように配置されている。バックボーン3の内側には、エンジン16の排気通路14(排気管)やこれに介装される排気浄化触媒15が配置される。なお、車両1がFR車や4WD車である場合には、図示しないプロペラシャフトを排気通路14に並べてバックボーン3の内側に配置してもよい。
【0013】
排気通路14及び排気浄化触媒15とバックボーン3との間には、遮熱板13が介装される。遮熱板13の形状は、バックボーン3の形状に対応するようにハット型断面の溝状に形成される。
図1では、バックボーン3の下方を覆う程度の大きさの遮熱板13を例示しているが、より大きなサイズにしてもよい。例えば、遮熱板13による遮蔽領域を排気通路14の配索形状に対応するように車両後方まで拡張してもよい。
【0014】
フロアパネル2の表面のうち下方側の面には、車両前後方向に延在するサイドメンバ6が取り付けられる。サイドメンバ6は、バックボーン3を車幅方向に挟んで左右一対設けられる。サイドメンバ6の前端は、ダッシュパネル4よりも前方(車両1の前端部)に向かってエンジンルーム10の内部に延びており、サイドメンバ6の後端は、バックボーン3よりも後方(車両1の後端部)に向かって延びている。
図1に示す例では、サイドメンバ6が、ダッシュパネル4よりも前方において、前輪の車軸を避けるようにクランク状に屈曲した形状となっている。
【0015】
左右一対のサイドメンバ6の間には、前輪のサスペンション装置を支持するクロスメンバであるサスクロス7(フロントサスクロスメンバ)が架け渡される。このサスクロス7は、ダッシュパネル4よりも前方側に配置される。
図1に示す例では、サスクロス7が、サイドメンバ6のクランク状に屈曲した部分よりも後方において、左右のサイドメンバ6を車幅方向に接続するように設けられている。
【0016】
エンジン16に供給される燃料を貯留する燃料タンク17は、エンジンルーム10外に配置される。同様に、モータ18の駆動電力を貯留するバッテリ19も、エンジンルーム10外に配置される。
図1に示す例では、バックボーン3よりも後方のフロアパネル2を下方に凹ませてなるバッテリ配置用掘り込み部20が形成され、その内側にバッテリ19が配置されている。また、燃料タンク17は、
図2に示すように、バッテリ19(バッテリ配置用掘り込み部20)よりも後方においてサイドメンバ6の下方に取り付けられている。燃料タンク17の近傍には、燃料蒸気を回収するための図示しないキャニスターが配置される。本件では、キャニスターが燃料タンク17(タンクアセンブリ)に含まれるものとする。
【0017】
エンジン16と燃料タンク17との間には、燃料をエンジン16に供給するための燃料配管8,9が設けられる。燃料配管8,9には、エンジン16の燃料噴射装置に液体燃料を供給するためのメイン配管8と、キャニスターで回収された燃料蒸気をエンジン16の吸気系に供給するためのベーパ配管9とが含まれる。
図2に示す例では、これらの燃料配管8,9がほぼ同一の経路でほぼ平行に配索されている。
【0018】
図1に示すように、メイン配管8には前方部8Aと中間部8Bと後方部8Cとが設けられ、ベーパ配管9にも前方部9Aと中間部9Bと後方部9Cとが設けられる。前方部8A,9Aは、燃料配管8,9の全体において前部に相当する部位であって、車両前後方向に延在し、エンジン16に至る部位である。前方部8A,9Aは、例えばバックボーン3の内側(あるいはバックボーン3の外側であってバックボーン3の下方に隣接する位置)において、遮熱板13よりも上側に配索される。バックボーン3の内側からはみ出した部分も、前方部8A,9Aに含まれるものと捉えてもよい。また、後方部8C,9Cは、燃料配管8,9の全体において後部に相当する部位であって、バックボーン3の外側で車両前後方向に延在し、燃料タンク17に至る部位である。
【0019】
中間部8B,9Bは、燃料配管8,9の全体において前方部8A,9Aと後方部8C,9Cとに挟まれた部位であって、車幅方向に延在し、前方部8A,9Aの後端と後方部8C,9Cの前端とを接続する部位である。中間部8B,9Bの位置は、
図1に示すように、サスクロス7及び排気浄化触媒15の各々に対して離隔して設定され、排気浄化触媒15よりも前方かつサスクロス7よりも後方に設定される。中間部8B,9Bは、バックボーン3の内側において、遮熱板13よりも上方を通って前方部8A,9Aに接続される。
【0020】
図1中に破線で示すサスクロス7は、燃料配管8,9に対するサスクロス7の相対位置を把握しやすくするために記載されたものである。サスクロス7は、例えば車両1の前突によってエンジン16やモータ18が外力を受けたときに、それらに押されて車両後方側へと移動するおそれがある。したがって、仮に中間部8B,9Bの位置を
図1に示す状態よりも前方側に設定すれば、中間部8B,9Bがサスクロス7に近づくことから、サスクロス7とフロアパネル2との間に挟まれやすくなり、破損や変形によって燃料漏れが生じやすくなってしまう。これに対し、中間部8B,9Bをサスクロス7から離隔させることにより、サスクロス7との干渉が生じにくくなり、燃料配管8,9の変形や破損が防止される。これにより、燃料配管8,9の保護性能が向上する。
【0021】
また、仮に中間部8B,9Bの位置を
図1に示す状態よりも後方側に設定すれば、中間部8B,9Bが排気浄化触媒15に近づくことから、排気熱の影響を受けやすくなってしまう。これに対し、中間部8B,9Bを排気浄化触媒15から離隔させることにより、燃料配管8,9が排気熱の影響を受けにくくなり、熱害の発生(熱による燃料配管8,9の変形や破損)が防止される。加えて、排気浄化触媒15が遮熱板13よりも下方に配置されるのに対し、中間部8B,9Bは遮熱板13よりも上方で前方部8A,9Aに接続される。したがって、中間部8B,9Bに対する排気熱の影響がより確実に阻止される。
【0022】
本実施例では、
図2に示すように、中間部8B,9Bが車両前後方向で排気浄化触媒15の前端(コーン部)と同等の位置に配置される。言い換えれば、前方部8A,9Aと中間部8B,9Bとの間の屈曲箇所が、ちょうど排気浄化触媒15の前端に位置するようなレイアウト(配索経路)となっている。このようなレイアウトにより、熱害が防止される範囲でサスクロス7と中間部8B,9Bとの離隔距離が最大化される。したがって、サスクロス7との干渉防止効果が高まり、燃料配管8,9の保護性能がさらに向上する。
【0023】
モータ18とバッテリ19との間には、電力を伝達するための高電圧線(PN線)が内挿された中空の電線管11が設けられる。電線管11は、例えばジャバラ配管(配線用フレキ管)であり、その内側を高電圧線が通っている。電線管11は、燃料配管8,9に沿って、バックボーン3の内側(遮熱板13よりも上方)を通るように配索される。電線管11の前端は、モータ18(例えばインバータ)に接続される。また、電線管11の後端は、フロアパネル2に穿孔された開口部を通ってバッテリ19に接続される。
【0024】
図3及び
図4は、燃料配管8,9の前方部8A,9Aと電線管11との関係を示す断面図である。
図3は、車幅方向の中心面に沿った鉛直面で車両1を切断し、車両1の左側から右側へと眺めた状態(側面視)を示す。
図4は、
図3の切断面に垂直な鉛直面のうちダッシュパネル4よりも前方を通る鉛直面で車両1を切断し、車両1の前方から後方へと眺めた状態(正面視)を示す。
【0025】
図3に示すように、燃料配管8,9の前方部8A,9A及び電線管11は、バックボーン3の上面及びダッシュパネル4に沿ってほぼL字状に配索される部分を有する。前方部8A,9A及び電線管11は、例えばブラケット12を介してダッシュクロス5に固定されるとともに、第二ブラケット22を介してバックボーン3の上面(フロアパネル2)に固定される。ブラケット12はL字状の部分のうち上方端部に配置され、第二ブラケット22はL字状の部分のうち下方端部に配置される。また、前方部8A,9A及び電線管11は、ブラケット12よりも上方において、前方に向かって延出するように屈曲した形状に形成される。
【0026】
好ましくは、燃料配管8,9の前方部8A,9Aが、
図3に示すような側面視において、電線管11よりもダッシュパネル4に近い位置(車両後方側)を通るように配置される。つまり、燃料配管8,9が電線管11よりもボデー側に位置するような配索レイアウトを設定することが好ましい。このようなレイアウトにより、仮にエンジンルーム10内の各種装置が車両後方側へと移動してきたとしても、電線管11が前方部8A,9Aの前方をガードするように働き、燃料配管8,9の保護性能が向上する。
【0027】
より好ましくは、燃料配管8,9の前方部8A,9Aが、電線管11よりもフロアパネル2に近い位置(車両上方側)を通るように配置される。つまり、バックボーン3の上面から燃料配管8,9までの上下方向の離隔距離を短く設定するとともに、バックボーン3の上面から電線管11までの上下方向の離隔距離を長く設定することが好ましい。このようなレイアウトにより、仮に遮熱板13が各種装置に押圧されて変形することで車両上方側へと移動してきたとしても、電線管11が燃料配管8,9をガードするように働き、燃料配管8,9の保護性能がさらに向上する。
【0028】
燃料配管8,9の前方部8A,9A及び電線管11のうち、ダッシュパネル4に沿って上下方向に配索される部分は、正面視で前方部8A,9A及び電線管11が重ならないように車幅方向に離隔して配索されることが好ましい。例えば、
図4に示すように、正面視で前方部8A,9Aと電線管11とが車幅方向にずれた位置を通るように、各々の配索経路を設定することが好ましい。このようなレイアウトにより、仮にエンジンルーム10内の各種装置が車両後方側へと移動してきたとしても、電線管11と前方部8A,9Aとが接触しにくくなり、燃料配管8,9の保護性能がさらに向上する。
【0029】
図3に示すように、エンジン16はダッシュクロス5よりも下方に配置されることが好ましい。モータ18についても同様であり、ダッシュクロス5よりも下方に配置されることが好ましい。このようなレイアウトにより、エンジン16及びモータ18が外力を受けて車両後方側へと移動してきたとしても、エンジン16及びモータ18とブラケット12との接触が回避されやすくなる。これにより、燃料配管8,9や電線管11の保護性能がさらに向上する。
【0030】
図5は、燃料配管8,9の後方部8C,9Cの配設位置を説明するための断面図である。ここでは、
図3の切断面に垂直な鉛直面のうちバッテリ19を通る鉛直面で車両1を切断し、車両1の後方から前方へと眺めた状態(背面視)を示す。燃料配管8,9の後方部8C,9Cは、サイドメンバ6とバッテリ配置用掘り込み部20とに挟まれた配管溝21の内部において、フロアパネル2の近傍に配設される。
【0031】
バッテリ配置用掘り込み部20の下端位置(最も路面に近い部分の上下方向位置)は、サイドメンバ6の下端位置とほぼ同じ高さに設定される。配管溝21は、それらの下端位置よりも上方に凹んだ溝状となる。このような配管溝21の内部に後方部8C,9Cを配置することで、例えば悪路走行時のチッピングに対する燃料配管8,9の保護性能が向上する。また、配管溝21の上端部であるフロアパネル2の近傍に後方部8C,9Cを配置することで、保護性能がさらに改善される。
【0032】
[2.作用,効果]
(1)本実施例の燃料配管8,9は、前方部8A,9Aと中間部8B,9Bと後方部8C,9Cとを有する。前方部8A,9Aは、車両前後方向に延在し、エンジン16に至る部位である。後方部8C,9Cは、バックボーン3の外側で車両前後方向に延在し、燃料タンク17に至る部位である。中間部8B,9Bは、サスクロス7及び排気浄化触媒15の各々に対して離隔して、排気浄化触媒15よりも前方かつサスクロス7よりも後方で車幅方向に延在し、前方部8A,9Aの後端と後方部8C,9Cの前端とを接続する部位である。
【0033】
このように、排気浄化触媒15よりも前方かつサスクロス7よりも後方に燃料配管8,9の中間部8B,9Bを配設することで、サスクロス7及び排気浄化触媒15の各々に対する離隔距離を確保でき、後退してきたサスクロス7との干渉による燃料配管8,9の変形や破損を防止しつつ、排気浄化触媒15から燃料配管8,9への熱害の発生(熱による燃料配管8,9の変形や破損)を防止できる。したがって、燃料配管8,9の保護性能を高めることができる。
【0034】
(2)上記の実施例では、例えば
図2に示すように、燃料配管8,9の中間部8B,9Bが、車両前後方向で排気浄化触媒15の前端と同等の位置に配置される。これにより、排気浄化触媒15による熱害が防止される範囲でサスクロス7と中間部8B,9Bとの離隔距離を最大限まで大きくすることができる。したがって、サスクロス7との干渉防止効果を高めることができ、燃料配管8,9の保護性能をさらに向上させることができる。
【0035】
(3)上記の実施例では、例えば
図1に示すように、燃料配管8,9の中間部8B,9Bが、バックボーン3の内側において遮熱板13よりも上方を通って前方部8A,9Aに接続される。これにより、排気浄化触媒15による燃料配管8,9への熱害を確実に防止でき、燃料配管8,9の保護性能を高めることができる。また、遮熱板13よりも上方に電線管11を通すことで、電線管11への熱害を確実に防止でき、電線管11の保護性能を高めることができる。
【0036】
(4)上記の実施例では、前方部8A,9Aがバックボーン3の内側に配置される。これにより、前方部8A,9Aがダッシュパネル4とサスクロス7との間に挟まれにくくなる。したがって、燃料配管8,9の保護性能をさらに高めることができる。
【0037】
(5)上記の実施例では、例えば
図3に示すように、燃料配管8,9の前方部8A,9A及び電線管11が、バックボーン3の上面及びダッシュパネル4に沿って配索されうる。また、燃料配管8,9の前方部8A,9Aは、電線管11よりもダッシュパネル4に近い位置に配置されうる。このようなレイアウトにより、前方部8A,9Aの前方(
図3中の左側)を電線管11でガードすることができる。したがって、仮にエンジンルーム10内の各種装置が車両後方側へと移動してきたとしても、その各種装置が燃料配管8,9と干渉することを防止でき、燃料配管8,9の保護性能を高めることができる。
【0038】
(6)上記の実施例では、例えば
図4に示すように、正面視で前方部8A,9Aと電線管11とが重ならないように車幅方向に離隔して配索されうる。このように、前方部8A,9Aと電線管11とを車幅方向にずらして配置することで、仮に電線管11が各種装置に押圧されて車両後方側へ移動したとしても、電線管11と前方部8A,9Aとの直接的な接触を防止することができる。したがって、燃料配管8,9の保護性能を高めることができる。
【0039】
(7)上記の実施例では、例えば
図3に示すように、燃料配管8,9の前方部8A,9A及び電線管11が、ブラケット12を介してダッシュクロス5に固定されうる。このように、燃料配管8,9及び電線管11をダッシュクロス5に取り付けることで、これらの固定状態を安定させることができる。また、エンジン16やモータ18をダッシュクロス5よりも下方に配置すれば、これらの装置が前突時に後方へ移動してきたとしても、ブラケット12に対する直撃を回避できる。したがって、燃料配管8,9や電線管11の保護性能を高めることができる。
【0040】
[3.その他]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は、必要に応じて取捨選択でき、あるいは、適宜組み合わせることができる。
【0041】
上記の実施例では、メイン配管8とベーパ配管9とが別設された燃料配管8,9を例示したが、これらを一体化させてもよい。例えば、液体燃料の流路と燃料蒸気の流路とが一つの管内で独立して設けられた二重管を用いて、同様の配管構造を形成してもよい。少なくとも、燃料配管8,9の中間部8B,9Bがサスクロス7及び排気浄化触媒15の各々に対して離隔するように、中間部8B,9Bの位置を排気浄化触媒15よりも前方かつサスクロス7よりも後方に設定することで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本件は、燃料配管を有する車両(エンジンが搭載されたエンジン車両やハイブリッド車両)の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
2 フロアパネル
3 バックボーン(バックボーンフレーム)
4 ダッシュパネル
5 ダッシュクロス(ダッシュクロスメンバ)
6 サイドメンバ
7 サスクロス(フロントサスクロスメンバ)
8 メイン配管(燃料配管)
9 ベーパ配管(燃料配管)
8A,9A 前方部
8B,9B 中間部
8C,9C 後方部
10 エンジンルーム
11 電線管
12 ブラケット
13 遮熱板
14 排気通路
15 排気浄化触媒
16 エンジン
17 燃料タンク
18 モータ
19 バッテリ
20 バッテリ配置用掘り込み部
21 配管溝
22 第二ブラケット