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特許7597263乗客コンベアのシャフトの異常検出装置及びエレベーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】乗客コンベアのシャフトの異常検出装置及びエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20241203BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B66B3/00 R
B66B5/02 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024047591
(22)【出願日】2024-03-25
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 康司
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/150341(WO,A1)
【文献】特開2013-001538(JP,A)
【文献】特開2009-161319(JP,A)
【文献】特表2017-525891(JP,A)
【文献】特開2019-184525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00 - 3/02
B66B 5/00 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの動力を伝達するシャフトの異常検出装置であって、
前記シャフトの回転を検出して、第1信号を送出する第1センサーと、
前記第1センサーに対して前記シャフトの軸方向に離れた位置に配置され、前記シャフトの回転を検出して、第2信号を送出する第2センサーと、
前記第1信号と前記第2信号を受信し、前記シャフトの異常を検出する検出部と、
を具える、乗客コンベアのシャフトの異常検出装置。
【請求項2】
かごを昇降させる駆動部に、上流からモーター、ブレーキ装置及び減速機を並べて配置しており、前記シャフトは、基端が前記モーターから上流側に飛び出し、先端が前記ブレーキ装置を貫通して前記減速機に連結された駆動シャフトであって、
前記第1センサー又は前記第2センサーの一方は、前記モーターから上流側に飛び出た前記シャフトの基端近傍、他方は、前記ブレーキ装置と前記減速機との間で前記シャフトの回転を検出するよう配置される、
請求項1に記載の乗客コンベアのシャフトの異常検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記第1信号と前記第2信号が所定のパターンで受信される場合に前記シャフトは異常なしと判断し、前記パターンからずれている場合に前記シャフトは異常であると判断する、
請求項2に記載の乗客コンベアのシャフトの異常検出装置。
【請求項4】
前記第1信号と前記第2信号は、何れもオン/オフ信号であり、前記シャフトに異常がない場合、前記第1信号と前記第2信号は、オン信号が重ならず、前記第1信号と前記第2信号のオン信号が重なったときに、前記検出部は、前記シャフトは異常であると判断する、
請求項3に記載の乗客コンベアのシャフトの異常検出装置。
【請求項5】
前記第1センサー及び前記第2センサーは、近接センサーである、
請求項4に記載の乗客コンベアのシャフトの異常検出装置。
【請求項6】
前記乗客コンベアは、エレベーターであり、
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の乗客コンベアのシャフトの異常検出装置と、
かごを昇降させる駆動部と、
前記駆動部への給電を遮断させる安全回路と、
を有し、
前記駆動部は、モーター、ブレーキ装置及び減速機を並べて配置しており、前記シャフトは、基端が前記モーターから上流側に飛び出し、先端が前記ブレーキ装置を貫通して前記減速機に連結された駆動シャフトであって、
前記第1センサー又は前記第2センサーの一方は、前記モーターから上流側に飛び出た前記シャフトの基端近傍、他方は、前記ブレーキ装置と前記減速機との間で前記シャフトの回転を検出するよう配置され、
前記検出部は、前記シャフトの異常を検出すると、前記安全回路を遮断させる、
乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターやエスカレーターなどの乗客コンベアに用いられるシャフトの異常を検出する装置及び之を具えたエレベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターやエスカレーターなどの乗客コンベアでは、モーターの回転駆動力は、シャフトを介して伝達される。たとえば、エレベーターでは、モーターのシャフトと減速機のシャフトを連結し、モーターと減速機との間にブレーキ装置を取り付けている。
【0003】
経年劣化や地震などにより、シャフトに捻れや折損などの異常が生じることがある。モーターが駆動中にシャフトに異常が生じた場合、モーターは駆動を続けているからブレーキ装置は作動しない。一般にはかごはカウンターウェイトよりも軽量であるから、シャフトが折損すると、かごは上昇方向に移動して、エレベーターシャフトの上端近傍に設けられたリミットスイッチに検知されて強制停止することになる。
【0004】
特許文献1では、駆動シーブの速度を検出するレゾルバと、調速機に主ロープの速度を検出するレゾルバを取り付け、両レゾルバの信号を比較することで、駆動シーブと主ロープ間の滑りを検出するエレベーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2015/083407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、主ロープの滑りを検知するものであって、シャフトの捻れや折損を検知するものではない。
【0007】
本発明の目的は、乗客コンベアのシャフトの捻れや折損などの異常を即座に検知できる検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乗客コンベアのシャフトの異常検出装置は、
乗客コンベアの動力を伝達するシャフトの異常検出装置であって、
前記シャフトの回転を検出して、第1信号を送出する第1センサーと、
前記第1センサーに対して前記シャフトの軸方向に離れた位置に配置され、前記シャフトの回転を検出して、第2信号を送出する第2センサーと、
前記第1信号と前記第2信号を受信し、前記シャフトの異常を検出する検出部と、
を具える。
【0009】
かごを昇降させる駆動部に、上流からモーター、ブレーキ装置及び減速機を並べて配置しており、前記シャフトは、基端が前記モーターから上流側に飛び出し、先端が前記ブレーキ装置を貫通して前記減速機に連結された駆動シャフトであって、
前記第1センサー又は前記第2センサーの一方は、前記モーターから上流側に飛び出た前記シャフトの基端近傍、他方は、前記ブレーキ装置と前記減速機との間で前記シャフトの回転を検出するよう配置することができる。
【0010】
前記検出部は、前記第1信号と前記第2信号が所定のパターンで受信される場合に前記シャフトは異常なしと判断し、前記パターンからずれている場合に前記シャフトは異常であると判断することができる。
【0011】
前記第1信号と前記第2信号は、何れもオン/オフ信号であり、前記シャフトに異常がない場合、前記第1信号と前記第2信号は、オン信号が重ならず、前記第1信号と前記第2信号のオン信号が重なったときに、前記検出部は、前記シャフトは異常であると判断することができる。
【0012】
前記第1センサー及び前記第2センサーは、近接センサーである。
【0013】
本発明の乗客コンベアは、エレベーターであり、
上記何れかに記載の乗客コンベアのシャフトの異常検出装置と、
かごを昇降させる駆動部と、
前記駆動部への給電を遮断させる安全回路と、
を有し、
前記駆動部は、モーター、ブレーキ装置及び減速機を並べて配置しており、前記シャフトは、基端が前記モーターから上流側に飛び出し、先端が前記ブレーキ装置を貫通して前記減速機に連結された駆動シャフトであって、
前記第1センサー又は前記第2センサーの一方は、前記モーターから上流側に飛び出た前記シャフトの基端近傍、他方は、前記ブレーキ装置と前記減速機との間で前記シャフトの回転を検出するよう配置され、
前記検出部は、前記シャフトの異常を検出すると、前記安全回路を遮断させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の乗客コンベアのシャフトの異常検出装置によれば、第1信号と第2信号からシャフトの以上を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明のシャフトの異常検出装置を取り付けたエレベーターのシャフトの説明図である。
図2図2は、シャフトの先端側の第1検知部と第1センサーの位置関係を説明する図であって、(a)はシャフト先端が矩形、(b)は半円柱状の実施形態である。
図3図3は、ブレーキ装置と減速機の間に配置された第2被検知部と第2センサーの位置関係を示す図である。
図4図4は、(a)第1被検知部が矩形のシャフトの第1信号のオン/オフ信号のパターン、(b)第2被検知部がブロック片の第2信号のオン/オフ信号のパターン、(c)第1信号と第2信号のオン信号が重ならない正常パターン、(d)第1信号と第2信号のオン信号が重なる異常検出のパターンである。
図5図5は、(a)第1被検知部が半円柱状のシャフトの第1信号のオン/オフ信号のパターン、(b)第2被検知部がブロック片の第2信号のオン/オフ信号のパターン、(c)第1信号と第2信号のオン信号が重ならない正常パターン、(d)第1信号と第2信号のオン信号が重なる異常検出のパターンである。
図6図6は、検出部のブロック図である。
図7図7は、検出部の外観写真である。
図8図8は、正常時の第1信号、第2信号、異常検出リレー、安全回路、ブレーキ装置、かごの速度の状態を示すグラフである。
図9図9は、図8の7.44秒から7.49秒の拡大図である。
図10図10は、シャフトの基端側に第1センサーを取り付けた写真であり、(a)は片持ち支持の例、(b)は両持ち支持の例である。
図11】ブレーキ装置と減速機との間に第2センサーを取り付けた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では、乗客コンベアとしてエレベーターを例示して説明を行なうが、乗客コンベアはエスカレーターであってもよい。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーターの駆動部10の概略構成図である。エレベーターは、利用者が搭乗するかごとかごに釣り合うカウンターウェイトをエレベーターシャフト内で主ロープにより連繋し、シーブで吊下して構成される。シーブは駆動部10に連繋されて回転可能となっている。
【0018】
駆動部10は、図1に示すように、巻上機となるモーター11と、ブレーキ装置12、減速機13を含む。モーター11、ブレーキ装置12及び減速機13は、モーター11を上流側として、ブレーキ装置12を中流、減速機13を下流側に配置している。
【0019】
モーター11、ブレーキ装置12及び減速機13は、駆動シャフトとなるシャフト14で連結されている。シャフト14は、基端14aがモーター11の上流側から飛び出した構造であり、先端側が減速機13に伸びている。シャフト14は継ぎ目のない1本の形態でもよいし、ボルト止め等により複数のシャフトを連結した形態であってもよい。また、図11に示すように、ブレーキ装置12のブレーキドラム12aとシャフト14が一体回転可能に連結されている場合、本発明では、一体回転するブレーキドラム12aもシャフト14に含む。
【0020】
モーター11は、シャフト14を回転駆動する電動機である。モーター11は、たとえばインバーター制御方式のものを例示できるが、これに限定されるものではない。
【0021】
ブレーキ装置12は、シャフト14の回転を制動する制動装置である。ブレーキ装置12は、たとえばドラム式電磁ブレーキ装置(図11参照)やディスク式電磁ブレーキ装置を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
減速機13は、シャフト14の回転を減速して、シーブを駆動する。減速機13は、ヘリカルギア式、ウォームギア式などを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
駆動部10は、乗場呼びやかご呼びに応じて、制御盤20により制御される。制御盤20には、エレベーターの一般的な構成として安全回路21が設けられている。安全回路21は、エレベーターの駆動部10や制御機器、かごの走行や戸開、戸閉に故障や不具合が生じた場合、或いは、地震や浸水などを検知してエレベーターの給電を遮断して、かごを安全に停止させるための安全装置である。
【0024】
本発明のエレベーターは、シャフト14の異常検出装置30を配置している。異常検出装置30は、第1センサー31と第2センサー32、これらセンサー31,32の出力信号を受信して異常を検出する検出部33を含む構成である。
【0025】
第1センサー31、第2センサー32は、シャフト14の回転を検出して、それぞれ第1信号、第2信号を送出するセンサーである。たとえば、センサー31,32は、近接センサーを採用することができる。近接センサーとして、静電容量型、誘導型、磁気型の近接センサーを挙げることができるが、これに限定されるものではない。また、センサー31,32は、近接センサーに限定されず、フォトカプラーなどであってもよい。
【0026】
第1センサー31と第2センサー32は、シャフト14の軸方向に離れた位置に配置する。センサー31,32間の距離が長いほど、シャフト14の異常検出領域を広く採ることができるため望ましい。
【0027】
図1の実施例では、第1センサー31は、シャフト14の基端14aの近傍、すなわち、モーター11の上流側から飛び出た部分を検出可能に配置し、第2センサー32は、ブレーキ装置12と減速機13との間の位置で検出可能に配置している。
【0028】
センサー31,32を近接センサーとした場合、シャフト14には、センサー31,32により検知可能な被検知部51,52を設ける。
【0029】
第1センサー31により検知される第1被検知部51は、たとえば、図2(a)に示すようにシャフト14の基端14aを矩形とした場合には、矩形の角部であり、また、図2(b)に示すようにシャフト14の基端14aを半円柱状や蒲鉾形状とした場合には円弧部分が第1被検知部51となる。第1センサー31は、図に示すように、第1被検知部51の移行路に接近して配置することができる。
【0030】
第2センサー32により検知される第2被検知部52は、図3に示すようにシャフト14の断面が円形の場合、シャフト14の周面の一部を凸形状とした形態を挙げることができる。既存のシャフト14の場合、第2被検知部52は、シャフト14の周面にブロック片52aを取り付けた形態とすることができる。ブロック片52aは金属製の結束バンド52bでシャフト14に装着できる。第2センサー32は、図に示すように、第2被検知部52の移行路に接近して配置することができる。
【0031】
第1センサー31は第1被検知部51を検知して、第1信号を送出する。また、第2センサー32は第2被検知部52を検知して、第2信号を送出する。第1信号、第2信号は夫々オン/オフ信号とすることができ、たとえば、センサー31,32は、被検知部51,52を検知した場合にオン信号、被検知部51,52を検知していない間はオフ信号を送出する構成とすることができる。なお、第1信号、第2信号は、High/Low信号、0/1信号などであってもよい。
【0032】
第1センサー31と第2センサー32から送出される第1信号、第2信号は、図1に示すように検出部33で受信される。検出部33は、第1信号と第2信号を所定のパターンで受信した場合にはシャフト14は正常、第1信号と第2信号が所定のパターンからずれて受信される場合にはシャフト14は異常と判断する。なお、所定のパターンについては実施例にて説明する。
【0033】
検出部33は、安全回路21に電気的に接続されており、検出部33は、シャフト14が異常と判断すると、安全回路21に異常の発生を報知し、安全回路21がかごの運行を停止させればよい。第1信号と第2信号は、シャフト14の1回転中に送出されるから、第1センサー31と第2センサー32の間、たとえば、モーター11とブレーキ装置12との間でシャフト14に捻りや折損などの異常が発生したことを即座に検出してかごの運行を停止できる。
【0034】
なお、異常検出装置30は、新規エレベーターに組み込むことはもちろん、既存のエレベーターにも容易に後付けすることができる。異常検出装置30は比較的安価に作製することができるという利点もある。
【実施例
【0035】
<第1実施例>
検出部33の信号検出の所定のパターンを例示する。なお、第1センサー31、第2センサー32は、被検知部51,52を検知するとオン信号、被検知部51,52の検知がないとオフ信号を送出するものとする。
【0036】
図4(a)は、第1被検知部51が図2(a)に示すように、基端14aが矩形のシャフト14の角部である場合の第1信号のオン/オフ信号のパターンである。図4(b)は、第2被検知部52が図3に示すブロック片52aである場合の第2信号のオン/オフ信号のパターンである。シャフト14が1回転する間に、第1信号は4回のオン信号を含み、第2信号は1回のオン信号を含む。シャフト14の1周期中、第1信号のオン:オフの比率は84:16であり、第2信号のオン:オフの比率は3:97としている。シャフト14の回転数を16.6rpsとした場合、シャフト14の1周期は約0.06秒である。
【0037】
第1信号と第2信号は、図4(c)に示すように、オン信号が重ならないパターンがシャフト14に異常のない正常状態、シャフト14に捻りは折損が発生して図4(d)に示すように第1信号のオン信号と第2信号のオン信号が重なったときにはシャフト14に異常ありとすることが望ましい。この構成を実現するためには、第1被検知部51に対する第2被検知部52の角度をずらす必要がある。具体的には、図2(a)に示すように、第1被検知部51が0°、90°、180°、270°となるようにシャフト14を構成したとき、第2被検知部52はたとえば45°に位置するように配置すればよい。
【0038】
このようにオン信号が重ならないパターンを正常、オン信号が重なると異常としたのは、異常検出装置30が故障したときに、エレベーターの運行を妨げないようにするためである。すなわち、センサー31,32の取付位置のずれや、センサー31,32の破損、故障が生じた場合には、該当するセンサーからはオフ信号が送出されるから、オン信号が重なってシャフト14が異常と判断されることを防止できる。
【0039】
もちろん、第1信号がオンのとき、第2信号がオンを正常とし、第1信号と第2信号が共にオンになったときに異常と判断するパターンであってもよい。また、第1信号がオフのとき第2信号がオン、或いは、第1信号がオンのとき第2信号がオフを正常とし、第1信号と第2信号が共にオン又は共にオフとなったときに異常と判断するパターンであってもよい。
【0040】
なお、かごが走行中にシャフト14に折損が発生した場合、上記のとおり即座に異常を検知できるが、乗員を含めたかごの重量とカウンターウェイトの重量バランスがアンバランスな積載であると、偶々かごがカウンターウェイトの重さにより定格速度走行してしまうことがある。たとえば、積載量が少ないかご上昇走行の場合である。この場合、かごが定格走行中はシャフト14の異常を検知できないが、かごが停止すべき乗場階床に近づいてモーター11が減速したときに、センサー31,32の信号が所定のパターンからずれるから、シャフト14の異常を検知できる。
【0041】
<第2実施例>
図5(a)は、第1被検知部51が半円柱状のシャフト14の円弧部である場合の第1信号のオン/オフ信号のパターンである。図5(b)の第2被検知部52は第1実施例と同じである。この場合、オン信号が重ならない正常パターンは図5(c)、オン信号が重なった異常パターンは図5(d)のようになる。
【0042】
<第3実施例>
図6は、異常検出装置30の具体的な回路構成を示している。異常検出装置30は、電源回路40と、電源回路40から電源を受けて作動する第1センサー31、第2センサー32が接続されている。第1センサー31と第2センサー32は夫々第1LED41、第2LED42が直列に接続されている。また、第1LED41と連動して作動する第1トランジスタ44、第2LED42と連動して作動する第2トランジスタ45が直列に接続されており、これらには異常検出時に点灯する異常検出LED43が接続されている。また、異常検出LED43と連動する異常検出トランジスタ46と異常を検知したときに動作して自己ホールドする異常検出リレー47を具える。異常検出リレー47の接点は安全回路21に追加しておく。
【0043】
なお、第1LED41と第1トランジスタ44、第2LED42と第2トランジスタ45、異常検出LED43と異常検出トランジスタ46は夫々カードリレーから構成することができる。
【0044】
正常時は、第1センサー31と第2センサー32は何れか一方がオフであるため、第1トランジスタ44と第2トランジスタ45は同時に通電状態にはならない。このため、異常検出LED43は非点灯のままである。
【0045】
この構成の異常検出装置30は、シャフト14に異常が発生し、第1センサー31と第2センサー32が同時にオンになると、第1LED41、第2LED42に連動して、第1トランジスタ44と第2トランジスタ45がオンになり、異常検出LED43が点灯する。これにより、異常検出トランジスタ46がオンになって、異常検出リレー47をオンにさせ、異常検出リレー47は、安全回路21を遮断して駆動部10の給電を遮断してかごを停止させることができる。
【0046】
図7は、上記異常検出装置30の検出部33の外観写真である。図6には示していないが電源回路40の電源LED48と、上記した第1LED41、第2LED42、異常検出LED43が並んでいる。検出部33は、メンテナンス時に作業員が視認可能な位置に配置され、正常時は、電源LED48が点灯、第1LED41と第2LED42が点滅を繰り返す。異常検出LED43は消灯状態を維持する。シャフト14の異常が生ずると、異常検出LED43が点灯するから視認により異常発生箇所がシャフト14であることを知ることができる。なお、異常発生時にはエレベーターの電源リセットにより復旧することが望ましい。
【0047】
図8は、第1信号、第2信号、異常検出リレー47のオン/オフ、安全回路21のオン/オフ、ブレーキ装置12のオン/オフ、かごの速度を示すグラフであって、正常時から故意にシャフト14に異常を発生させたシミュレーション結果を示している。また、図9図8の7.44秒から7.49秒の拡大図である。
【0048】
図8を参照すると、約2秒から加速を開始してかごが加速し、定格速度に移行した後、7.44秒過ぎにシャフト14に異常を発生させた。その結果、図9に示すように第1信号と第2信号が共にオンになり(図9のA)、その後、異常検出リレー47は遅れ1.3msでオン作動し(同B)、安全回路21はオフまでに遅れ12.2ms(同C)、安全回路21によりブレーキ装置12がオフされて作動するまでに遅れ25.2ms(同D)であった。また、かごの速度停止開始は遅れ112ms、かごの停止は遅れ1092msであった。本実施例によれば、シャフト14の異常検出からかごの停止まで2071msであった。
【0049】
なお、第1信号と第2信号が共にオンになってから、異常検出リレー47は5ms以内でオン作動し、安全回路21はオフまでに15ms以内、安全回路21によりブレーキ装置12がオフされて作動するまでに100ms以内、かごの停止まで1500ms以内であることが望ましい。
【0050】
このように本発明のシャフト14の異常検出装置30により、短時間でシャフト14の異常を検出してかごを停止できることで、エレベーターの安全性を高めることができる。
【0051】
<第4実施例>
図10は、シャフト14の基端14a側に第1センサー31を取り付けた写真である。図10(a)は片持ち支持の例、図10(b)は両持ち支持の例である。図10(a)では、L字型の取付部材60をモーターケーシング11aに装着し、取付部材60には、シャフト14の基端14aと対向し、第1被検知部51となる角部の移行路に接近して第1センサー31を取り付けている。また、図10(b)ではコ字状の取付部材60をモーターケーシング11aに装着し、第1センサー31を取り付けている。何れの場合も、強固に第1センサー31を取り付けでき、モーター11やブレーキ装置12が作動しても、第1センサー31に位置ずれや揺れは生じなかった。
【0052】
図11は、ブレーキ装置12と減速機13との間に第2センサー32を取り付けた写真である。第2検知部であるブロック片52aは、ブレーキドラム12aに結束バンド52b(写真では視認できない)で装着されている。第2センサー32の取付部材61は、L字型金具62,63を下脚62aと上脚63aが逆向きになるように縦脚62b,63bどうしをボルト止めして構成し、下脚62aを駆動部のフレーム10aに装着している。取付部材61は、L字型金具63の上脚63aをブロック片の移行路に接近させ、第2センサー32を取り付けている。本形態によれば、第2センサー32の高さはL字型金具62,63の縦脚62b,63bのボルト止め位置を変えることで容易に調整できる。
【0053】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0054】
たとえば、上記実施形態では、エレベーターを例示して、シャフトの異常検出装置30を説明しているが、エレベーターに限らずエスカレーターなどの乗客コンベアにも本発明は適用可能である。また、本発明のシャフトの異常検出装置30は、シャフトにより動力を伝達する種々の機構のシャフトの異常検出に用いることができ、その種の機構として産業機械や工作機械、家庭用電気機器、車両、列車、航空機、船舶などを挙げることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 駆動部
11 モーター
12 ブレーキ装置
13 減速機
14 シャフト
21 安全回路
30 異常検出装置
31 第1センサー
32 第2センサー
33 検出部
51 第1被検知部
52 第2被検知部
【要約】
【課題】本発明の目的は、乗客コンベアのシャフトの捻れや折損などの異常を即座に検知できる検知装置を提供する。
【解決手段】本発明の乗客コンベアのシャフト14の異常検出装置30は、乗客コンベアの動力を伝達するシャフトの異常検出装置であって、前記シャフトの回転を検出して、第1信号を送出する第1センサー31と、前記第1センサーに対して前記シャフトの軸方向に離れた位置に配置され、前記シャフトの回転を検出して、第2信号を送出する第2センサー32と、前記第1信号と前記第2信号を受信し、前記シャフトの異常を検出する検出部33と、を具える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11