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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ベールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/32 20220101AFI20241203BHJP
   D21B 1/08 20060101ALI20241203BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20241203BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20241203BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20241203BHJP
【FI】
B09B3/32 ZAB
D21B1/08
D21H27/30 C
B09B101:85
B09B101:75
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024054009
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 明裕
(72)【発明者】
【氏名】辻 和政
(72)【発明者】
【氏名】石川 友美子
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-296395(JP,A)
【文献】特開2003-251646(JP,A)
【文献】特表2006-523785(JP,A)
【文献】特開2010-246531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/32
D21B 1/08
D21H 27/30
B09B 101/85
B09B 101/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙片を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有し、
前記古紙片の坪量が、100g/m以上であり、
前記古紙片における、紙基材層中のサイズ剤の含有量が、0.2質量%以上2.1質量%以下であり、
前記古紙片の24時間の吸水度が、15%以上85%以下である、
ベールの製造方法。
【請求項2】
前記古紙片の折曲強度が、20gf以上350gf以下である、請求項1に記載のベールの製造方法。
【請求項3】
前記古紙片の面積の中央値が、20cm以上200cm以下である、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【請求項4】
ベールの密度が、0.3t/m以上1.0t/m以下である、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【請求項5】
前記古紙片における樹脂層を構成する樹脂が、ポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、およびエチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【請求項6】
前記古紙片における樹脂層の坪量が、5g/m 以上120g/m 以下である、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【請求項7】
前記古紙片における紙基材層の坪量が、80g/m 以上400g/m 以下である、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【請求項8】
前記古紙片が、さらに金属層を有する、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【請求項9】
ベール成形圧力が、500kN/m以上2500kN/m以下である、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【請求項10】
ベール成形前に、古紙を破砕する破砕工程を有する、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【請求項11】
ベール成形前に、古紙または古紙片を洗浄する洗浄工程を有する、請求項1または2に記載のベールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物の削減や環境問題に対する関心の高まりから、世界的に脱プラスチックへの取り組みが加速している。そのため、さまざまな製品において、プラスチックの使用量を低減するために、プラスチックのみであった原料を、紙とプラスチックとを組み合わせた紙原料に変更する取り組みがされている。
従来、樹脂層がラミネートされた古紙は禁忌品として古紙利用されていなかったが、廃棄物の削減や環境問題に対する関心の高まりから、ラミネートされた古紙の利用が求められるようになっている。
一般に、古紙は、リサイクルするために、一時的にベールの状態にして保管がされる。
【0003】
特許文献1には、古紙、廃カートンなどといった廃物である圧縮可能な被圧縮物からベールを形成するための装置として、実質的に直方体状の形状を有すると共に、少なくとも1つの圧縮室と前記圧縮室内部を駆動手段によってプレス方向に往復動可能なプレス板とを有するプレスハウジングを備えた装置が開示されている。
また、特許文献2には、紙、段ボールなどを圧縮するベール・プレスとして、チャンバー内で往復動するピストン機構により圧縮してベール化する材料を受け入れるロード・チャンバーと、ロード・チャンバーの出口部分に形成され、圧縮された材料を摩擦力によって保持し、保持された材料に新たな材料をピストン機構によって押し付けるチョーク・チャンバーとを有する形式のベール・プレスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-521312号公報
【文献】国際公開第1998/33643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、特許文献1および2に開示されているようなベールを成形する装置によって、古紙がベールに形成され、その後リサイクルに供されることとなる。しかしながら、紙基材層の他に、さらに樹脂層などを有するような古紙は、ベール形状を維持できず崩れてしまう場合があった。また、成形されたベールの状態によっては、離解性が不十分となり、リサイクル性が低下する場合があった。
本発明の目的は、成形されたベールの形状保持性に優れ、さらに該ベールに含まれる古紙の離解性にも優れる、ベールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙片を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有するベールの製造方法において、古紙片の坪量が特定の値以上であり、かつ、吸水度が一定の範囲であることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1] 少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙片を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有し、前記古紙片の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙片の24時間の吸水度が、15%以上85%以下である、ベールの製造方法。
[2] 前記古紙片の折曲強度が、20gf以上350gf以下である、[1]に記載のベールの製造方法。
[3] 前記古紙片の面積の中央値が、20cm以上200cm以下である、[1]または[2]に記載のベールの製造方法。
[4] ベールの密度が、0.3t/m以上1.0t/m以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載のベールの製造方法。
[5] 前記古紙片における、紙基材層中のサイズ剤の含有量が、0.2質量%以上2.1質量%以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のベールの製造方法。
[6] 前記古紙片が、さらに金属層を有する、[1]~[5]のいずれか1つに記載のベールの製造方法。
[7] ベール成形圧力が、500kN/m以上2500kN/m以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のベールの製造方法。
[8] ベール成形前に、古紙を破砕する破砕工程を有する、[1]~[7]のいずれか1つに記載のベールの製造方法。
[9] ベール成形前に、古紙または古紙片を洗浄する洗浄工程を有する、[1]~[8]のいずれか1つに記載のベールの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形されたベールの形状保持性に優れ、さらに該ベールに含まれる古紙片の離解性にも優れる、ベールの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ベールの製造方法]
本実施形態のベールの製造方法は、少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙片(以下、単に「古紙片」ともいう)を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有し、前記古紙片の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙片の24時間の吸水度が、15%以上85%以下である。
本実実施形態のベールの製造方法によれば、成形されたベールの形状保持性に優れ、さらに該ベールに含まれる古紙片の離解性にも優れる。この理由について定かではないが、以下のように考えられる。
一般的に、樹脂層を含む古紙片は、離解処理を行う際に、該樹脂層により水の浸透が妨げられるため、離解性が低下する傾向があった。また、樹脂層を含む古紙片や坪量が100g/m以上である古紙片は、圧縮した場合でも、元の広がった状態に戻る力が大きいため、該古紙片を含むベールは、形状の維持が困難である傾向があった。
これに対し、本実施形態のベールの製造方法は、古紙片の24時間の吸水度が15%以上であることで、得られるベールをリサイクルに供する際に、古紙片へ水が十分に浸透するため、離解性が向上されると考えられる。また、古紙片の24時間の吸水度が85%以下であることで、古紙片を洗浄した場合や、得られるベールが保管中に雨にさらされた場合など、ベールが水分を含むような状態になった際に、該水分の影響でベールの形状が崩れることが抑制され、得られるベールの形状保持性が向上されると考えられる。
【0009】
古紙片の坪量は、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、100g/m以上であり、好ましくは120g/m以上600g/m以下、より好ましくは140g/m以上500g/m以下、さらに好ましくは160g/m以上400g/m以下、よりさらに好ましくは180g/m以上300g/m以下である。
古紙片の坪量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0010】
古紙片の24時間の吸水度は、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、15%以上85%以下であり、好ましくは30%以上75%以下、より好ましくは45%以上65%以下である。
古紙片の吸水度は、例えば古紙片の紙基材層中のサイズ剤の含有量等によって調整される。なお、古紙片の24時間の吸水度は、古紙片を水に24時間浸漬させた際の、古紙片の質量の増加量の割合から求められ、具体的には実施例に記載の方法により求められる。
【0011】
(古紙片)
本実施形態において、ベールの原料となる古紙片は、少なくとも樹脂層および紙基材層を有する。
〔樹脂層〕
古紙片における樹脂層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロンなどのポリアミド、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、スチレン-アクリル系共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。また、古紙片が樹脂層を複数有する場合、各樹脂層を構成する樹脂は、同一でもよく、異なっていてもよい。
これらの中でも、樹脂層を構成する樹脂としては、リサイクル性の観点から、好ましくはポリオレフィン、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)から選ばれる1種以上、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびエチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)から選ばれる1種以上、さらに好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から選ばれる1種以上である。
【0012】
古紙片における樹脂層の厚さは、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、好ましくは5μm以上130μm以下、より好ましくは10μm以上110μm以下、さらに好ましくは15μm以上90μm以下、よりさらに好ましくは20μm以上70μm以下である。なお、古紙片が複数の樹脂層を有する場合、前記古紙片における樹脂層の厚さは、それぞれの樹脂層の合計の厚さを示す。
【0013】
古紙片における樹脂層の坪量は、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、好ましくは5g/m以上120g/m以下、より好ましくは10g/m以上100g/m以下、さらに好ましくは15g/m以上80g/m以下、よりさらに好ましくは20g/m以上60g/m以下である。なお、古紙片が複数の樹脂層を有する場合、前記古紙片における樹脂層の坪量は、それぞれの樹脂層の合計の坪量を示す。
【0014】
〔紙基材層〕
紙基材層としては、植物由来の木材パルプを主成分として一般的に用いられている紙であれば特に制限はない。木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、晒クラフトパルプ(BKP)、未晒クラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。
これらの中でも紙基材層は、リサイクル性の観点から、好ましくは広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプから選ばれる1種以上を含み、より好ましくは広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選ばれる1種以上、さらに好ましくは広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)から選ばれる1種以上を含む。
【0015】
また、紙基材層は顔料塗工層を有していてもよい。顔料塗工層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。顔料塗工層は、顔料およびバインダーを含有することが好ましい。顔料としては、特に限定されないが、重質炭酸カルシウム、カオリン、プラスチックピグメント等が挙げられる。バインダーとしても、特に限定されないが、澱粉、スチレン-アクリル系共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス、オレフィン-カルボン酸エマルジョン共重合体ラテックス等が挙げられる。
【0016】
古紙片における紙基材層の厚さは、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、好ましくは100μm以上600μm以下、より好ましくは120μm以上550μm以下、さらに好ましくは150μm以上500μm以下、よりさらに好ましくは200μm以上450μm以下である。
なお、古紙片が複数の紙基材層を有する場合、前記古紙片における紙基材層の厚さは、それぞれの紙基材層の合計の厚さを示す。
【0017】
古紙片における紙基材層の坪量は、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、好ましくは80g/m以上400g/m以下、より好ましくは100g/m以上350g/m以下、さらに好ましくは120g/m以上300g/m以下、よりさらに好ましくは150g/m以上250g/m以下である。
なお、古紙片が複数の紙基材層を有する場合、前記古紙片における紙基材層の坪量は、それぞれの紙基材層の合計の坪量を示す。
【0018】
本実施形態において、古紙片は、上記樹脂層および紙基材層以外に、適宜その他の層を有してもよい。その他の層としては、例えば、金属層、印刷層および接着剤層などが挙げられる。
【0019】
〔金属層〕
本実施形態において、古紙片は、さらに金属層を有してもよい。本実施形態において、古紙片の金属層は、アルミニウムを含むことが好ましい。また、本実施形態において、古紙片の金属層は、アルミニウム箔であることがより好ましい。
古紙片が金属層を含む場合、古紙片における金属層の厚さは、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは3μm以上40μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下、よりさらに好ましくは6μm以上20μm以下である。
なお、古紙片が複数の金属層を有する場合、前記古紙片における金属層の厚さは、それぞれの金属層の合計の厚さを示す。
金属層の厚さが1μm以上であることで、得られるベールを離解処理した際に、金属層の微細化が抑制されるため、離解処理がより効率化される。また、金属層の厚さが50μm以下であることで、古紙片への水分の浸透が妨げられ難いため、離解性がより向上される。
【0020】
古紙片が金属層を含む場合、古紙片における金属層の坪量は、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、好ましくは8g/m以上30g/m以下、より好ましくは10g/m以上27g/m以下、さらに好ましくは12g/m以上24g/m以下、よりさらに好ましくは14g/m以上22g/m以下である。
なお、古紙片が複数の金属層を有する場合、前記古紙片における金属層の坪量は、それぞれの金属層の合計の坪量を示す。
【0021】
〔印刷層〕
本実施形態において、古紙片は、印刷層を有してもよい。
印刷層としては、例えば、紙基材層に設けられた印刷層が挙げられる。印刷層は、油性インキ、水性インキ、バイオマスインキなどの公知のインキを用いて形成されていてもよい。また、印刷される内容は、模様、図柄、情報(成分、賞味期限、QRコード(登録商標)など)であってもよい。また、印刷層は、印刷層が施される層において、一面に形成されていてもよく、一部に形成されていてもよい。
【0022】
本実施形態において、古紙片の折曲強度は、好ましくは20gf以上350gf以下、より好ましくは25gf以上300gf以下、さらに好ましくは30gf以上200gf以下、よりさらに好ましくは35gf以上100gf以下、一層好ましくは40gf以上70gf以下である。
折り曲げ強度の下限は特に制限されないが、製造上の観点から下限は20gf以上であることが好ましい。また、折曲強度が350gf以下であることで、古紙片が元の形状に戻ろうとする力が抑制されるため、ベールの形状保持性がより向上される。
本実施形態において、古紙片の折曲強度は、古紙片の紙基材層への紙力増強剤の添加量、古紙片の坪量および古紙片の厚さを調整することにより、所望の範囲とすることができる。
古紙片の折曲強度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0023】
〔接着剤層〕
本実施形態において、古紙片は、さらに接着剤層を有してもよい。接着剤層は、主に、古紙が金属層を有する場合に、金属層と紙基材層と接着するため、および/または金属層と樹脂層とを接着するために形成される。
接着剤層を構成する樹脂としては、例えば、エチレン-メタクリル酸共重合樹脂(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合樹脂(EAA)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂(IO)、エチレン-メチルアクリレート共重合樹脂(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂(EBA)等が挙げられる。
【0024】
本実施形態において、古紙片の面積の中央値は、好ましくは20cm以上200cm以下、より好ましくは30cm以上180cm以下、さらに好ましくは40cm以上150cm以下、よりさらに好ましくは50cm以上120cm以下、一層好ましくは60cm以上90cm以下である。
古紙片の面積の中央値が20cm以上であることで、得られるベールの形状保持性がより向上される。また、古紙片の面積の中央値が200cm以下であることで、離解性がより向上される。
古紙片の面積の中央値は、実施例に記載の方法により測定される。
【0025】
本実施形態において、古紙片における、紙基材層中のサイズ剤の含有量は、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、好ましくは0.2質量%以上2.1質量%以下、より好ましくは0.4質量%以上1.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以上1.6質量%以下である。
なお、古紙片における紙基材層中のサイズ剤の含有量は、ベールの成形前後で変化しない。すなわち、古紙片における紙基材層中のサイズ剤の含有量は、得られるベールに含まれる古紙片における紙基材層中のサイズ剤の含有量と同様である。また、古紙片における紙基材層中のサイズ剤の含有量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0026】
本実施形態において、古紙片における紙基材層中のサイズ剤としては、例えば、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等が挙げられる。
【0027】
本実施形態において、古紙片における、紙基材層を作製する際のパルプスラリー中の原料パルプ100質量部に対する紙力増強剤の添加量は、得られるベールの形状保持性向上および離解性向上の観点から、好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下、より好ましくは0.7質量部以上1.3質量部以下、さらに好ましくは0.9質量部以上1.1質量部以下である。また、紙基材層中の紙力増強剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.7質量%以上1.3質量%以下、さらに好ましくは0.9質量%以上1.1質量%以下である。
なお、古紙片における紙基材層中の紙力増強剤の含有量は、ベールの成形前後で変化しない。すなわち、古紙片における紙基材層中の紙力増強剤の含有量は、得られるベールに含まれ古紙片における紙基材層中の紙力増強剤の含有量と同様である。
【0028】
本実施形態において、古紙片における紙基材層中の紙力増強剤としては、乾燥紙力増強剤および湿潤紙力増強剤が挙げられる。乾燥紙力増強剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また、湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0029】
上記古紙片としては、例えば、飲食品用容器、紙袋、および紙製カトラリ由来の古紙片などが挙げられる。飲食品用容器としては、例えば、液体容器、食品用容器などが挙げられ、より具体的には、紙トレー、アセプティック容器、紙カップ、牛乳パックなどが挙げられる。これらの中でも、上記古紙片としては、アセプティック容器古紙片および紙カップ古紙片から選ばれる1種以上であることが好ましい。
アセプティック容器古紙片は、例えば、下記の(a1)~(a2)の構成を有する。なお、下記構成について、右側に記載の層が、アセプティック容器として用いられた際に、内容物と接触していた層を示す。また、下記の構成において、「(印刷層)」および「(接着剤層)」は任意の層であり、必要に応じ、有してもよく、有していなくてもよい。また、下記構成において、紙基材層は上述した顔料塗工層を有していてもよく、該顔料塗工層上に印刷層が設けられていてもよい。また、下記構成において、「樹脂層」は、1層でもよく、2層以上でもよい。
(a1):樹脂層/(印刷層)/紙基材層/樹脂層/金属層/(接着剤層)/樹脂層
(a2):樹脂層/(印刷層)/紙基材層/樹脂層/樹脂層(バリア層)/(接着剤層)/樹脂層
【0030】
紙カップ古紙片は、例えば、下記の(b1)~(b4)の構成を有することが好ましい。なお、下記構成について、右側に記載の層が、紙カップとして用いられた際に、内容物と接触していた層を示す。また、下記の構成において、「(印刷層)」および「(接着剤層)」は任意の層であり、必要に応じ、有してもよく、有していなくてもよい。また、下記構成において、紙基材層は上述した顔料塗工層を有していてもよく、該顔料塗工層上に印刷層が設けられていてもよい。また、下記構成において、「樹脂層」は、1層でもよく、2層以上でもよい。
(b1):(印刷層)/紙基材層/樹脂層/(接着剤層)/金属層/(接着剤層)/樹脂層
(b2):(印刷層)/紙基材層/樹脂層/(接着剤層)/樹脂層
(b3):樹脂層/(印刷層)/紙基材層/樹脂層
(b4):(印刷層)/樹脂層/紙基材層/樹脂層
【0031】
(成形工程)
本実施形態は、少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙片を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有する。成形工程におけるベール成形装置としては、公知のベール成形装置を適宜使用すればよい。
【0032】
形成工程において、ベール形成圧力は、好ましくは500kN/m以上2500N/m以下、より好ましくは1000kN/m以上2300N/m以下、さらに好ましくは1200kN/m以上2000N/m以下である。
ベール成形圧力が上記範囲内であることにより、得られるベールの密度が、後述の所望のベールの密度の範囲になるため、得られるベールの形状保持性および離解性が、より向上される。
【0033】
(破砕工程)
本実施形態は、ベール成形前に、古紙を破砕する破砕工程を有することが好ましい。すなわち、本実施形態のベールの製造方法は、上記成形工程の前に、古紙を破砕する破砕工程を有することが好ましい。破砕工程を有することで、成形工程に供する古紙片が適度な大きさに揃えられるため、例えば得られるベールからパルプ繊維を回収するようなリサイクルに供する際、離解処理がより効率化され、離解性がより向上される。また、得られるベールの形状保持性がより向上される。
破砕工程に用いる破砕機としては、破砕後の古紙片の大きさに合わせて、1軸破砕機、2軸破砕機などを適宜用いることが好ましい。また、破砕工程を実施する際に、同時に後述の洗浄工程を実施する場合、破砕洗浄機などを適宜用いることが好ましい。
なお、本実施形態において、破砕工程を有さない場合は、破砕されていない古紙をそのまま古紙片としてもよい。
【0034】
破砕工程において、破砕機のフック数は、古紙片の面積の中央値を所望の範囲内とする観点から、好ましくは2以上10以下、より好ましくは4以上8以下である。
【0035】
(洗浄工程)
本実施形態は、ベール成形前に、古紙または古紙片を洗浄する洗浄工程を有することが好ましい。すなわち、本実施形態のベールの製造方法は、上記成形工程の前に、古紙または古紙片を洗浄する洗浄工程を有することが好ましい。また、本実施形態のベールの製造方法が、洗浄工程の前に破砕工程を有する場合、洗浄工程は、破砕工程後の古紙片を洗浄する工程であることが好ましい。
洗浄工程において、古紙片を洗浄する洗浄水としては、通常、水が用いられる。
洗浄工程は、破砕工程前に実施してもよく、破砕工程後で成形工程前に実施してもよく、破砕工程と洗浄工程を同時に行ってもよい。これらの中でも、洗浄効率の観点から、破砕工程後で成形工程前に洗浄工程を実施すること、または破砕工程と洗浄工程を同時に実施することが好ましく、破砕工程と洗浄工程を同時に実施することがより好ましい。
洗浄工程に用いる装置としては、公知の装置を適宜用いることができる。また、破砕工程と洗浄工程を同時に実施する場合は、破砕洗浄機などを適宜用いることが好ましい。
【0036】
[ベール]
本実施形態において、ベールは、上記のベールの製造方法によって得ることができる。そのため、本実施形態におけるベールは、形状保持性に優れ、また、該ベールに含まれる古紙片の離解性に優れる。
【0037】
本実施形態において、ベールの密度は、好ましくは0.3t/m以上1.0t/m以下、より好ましくは0.4t/m以上0.8t/m以下、さらに好ましくは0.5t/m以上0.7t/m以下である。
ベールの密度が0.3t/m以上であることで、ベール内で古紙片同士が十分に密着しているため、形状保持性がより向上される。また、ベールの密度が1.0t/m以下であることで、ベール内で古紙片が必要以上に押し固められている状態であることを抑制できるため、リサイクルに供する際に、ベールがほぐしやすくなり、離解性が向上される。
【0038】
本実施形態において、得られるベールは、上記の古紙片を原料としている。また、上記古紙片は、ベール成形前後で、構成やその他物性は変化しない。すなわち、本実施形態において、ベールに含まれる古紙片の態様は、上記のベールの製造方法で例示した古紙片と同様である。
本実施形態において、得られるベールは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記古紙片以外のその他の古紙を含んでもよい。また、本実施形態において、得られるベールは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記古紙片以外の異物を含んでもよい。異物としては、ストロー、飲食品用容器のキャップ、飲食品用容器の蓋等が挙げられる。本実施形態において、得られるベール中の上記古紙片の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【実施例
【0039】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により、限定的に解釈されるべきものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。また、実施例および比較例の操作は、特に断らない限り、23±1℃、50±2%RHの条件で行った。
【0040】
[ベールの製造方法]
<実施例1>
(古紙片)
古紙片として、表1の構成1の古紙片を用いた。
実施例1の古紙片の紙基材層は、原料パルプ(パルプ配合(質量比):針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)/広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)=40/60、再離解フリーネス(CSF):550mL)100質量部に対し、サイズ剤としてロジンサイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-881)を1.0質量部、紙力増強剤としてポリアクリルアミド系紙力増強剤(荒川化学工業株式会社製、PS117)を1.0質量部、硫酸バンドを1.0質量部添加した紙料(パルプスラリー)から得られたものを用いた。
(破砕工程・洗浄工程)
古紙片を破砕洗浄機(A-tech株式会社製、紙容器リサイクル装置 PPRS)に投入し、フック数6の刃で破砕し、水で洗浄した。
(ベール成形工程)
古紙片約60kgを、ベール圧縮機(油研工業株式会社製、YB-32M-PA-10、ベールサイズ:640×430×350mm)に投入し、ベール成形圧力1800kN/mのベール成形圧力で圧縮することでベールを得た。
【0041】
<実施例2>
古紙片として、表1の構成2の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1700kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
なお、実施例2の古紙片の紙基材層は、原料パルプ(パルプ配合(質量比):針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)/広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)=40/60、再離解フリーネス(CSF):440mL)100質量部に対し、サイズ剤としてロジンサイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-881)を1.5質量部、紙力増強剤としてポリアクリルアミド系紙力増強剤(荒川化学工業株式会社製、PS117)を1.0質量部、硫酸バンドを1.0質量部添加した紙料(パルプスラリー)から得られたものを用いた。
【0042】
<実施例3>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.5質量部である構成1の古紙片を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0043】
<実施例4>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.8質量部である構成1の古紙片を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0044】
<実施例5>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.2質量部である構成1の古紙片を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0045】
<実施例6>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.5質量部である構成1の古紙片を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0046】
<実施例7>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)への紙力増強剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.1質量部である構成1の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1850kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0047】
<実施例8>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)への紙力増強剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.2質量部である構成1の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1900kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0048】
<実施例9>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)への紙力増強剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.9質量部である構成1の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1700kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0049】
<実施例10>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)への紙力増強剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.8質量部である構成1の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1650kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0050】
<実施例11>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.2質量部である構成2の古紙片を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0051】
<実施例12>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.4質量部である構成2の古紙片を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0052】
<実施例13>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.8質量部である構成2の古紙片を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0053】
<実施例14>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して2.0質量部である構成2の古紙片を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0054】
<実施例15>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)への紙力増強剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.1質量部である構成2の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1800kN/mとしたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0055】
<実施例16>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)への紙力増強剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して1.2質量部である構成2の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1850kN/mとしたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0056】
<実施例17>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)への紙力増強剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.9質量部である構成2の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1650kN/mとしたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0057】
<実施例18>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)への紙力増強剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.8質量部である構成2の古紙片を用いたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1600kN/mとしたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0058】
<実施例19>
破砕工程における刃のフック数を3としたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1900kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0059】
<実施例20>
破砕工程における刃のフック数を9としたこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を1700kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0060】
<実施例21>
ベール成形工程におけるベール成形圧力を1400kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0061】
<実施例22>
ベール成形工程におけるベール成形圧力を2200kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0062】
<実施例23>
破砕工程・洗浄工程を実施しなかったこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を2200kN/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0063】
<実施例24>
破砕工程・洗浄工程を実施しなかったこと、およびベール成形工程におけるベール成形圧力を2000kN/mとしたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0064】
<比較例1>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して0.1質量部である構成1の古紙片を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてベールを得た。
【0065】
<比較例2>
古紙片として、紙基材層を製造する際の紙料(パルプスラリー)へのサイズ剤の添加量が、原料パルプ100質量部に対して2.2質量部である構成2の古紙片を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてベールを得た。
【0066】
実施例および比較例で用いた古紙片の構成を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
[評価・測定方法]
<24時間の吸水度>
実施例および比較例で用いた古紙片を絶乾させた後、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて、96時間調湿した。調湿した古紙片約10gを、水1L(水温:23±1℃)に24時間浸漬させた後、古紙片を回収した。回収した古紙片を吸水紙(ADVANTEC社製、No.26、190mm×190mm)に挟んだ状態とした後、金属ローラ(10kg)を圧力を加えずに1往復転がし、余分な水分を除去し、これを水に浸漬後の古紙片とした。水に浸漬前後の古紙片の質量を測定し(1mgの単位まで測定)、下記計算式より吸水度を求め、これを、古紙片の24時間の吸水度とした。
[吸水度(%)]=([水に浸漬後の古紙片の質量(g)]-[水に浸漬前の古紙片の質量(g)])/[水に浸漬前の古紙片の質量(g)]×100
【0069】
<折曲強度>
実施例および比較例で用いた古紙片を絶乾させた後、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて、96時間調湿した。調湿した古紙片から、古紙片サンプル(幅38mm×長さ70mm)を作製し、曲げ剛さ測定器(BST-150M、あさひ総研製)を用いて、該古紙片サンプルの折曲強度を測定した。
【0070】
<古紙片の面積の中央値>
実施例および比較例で用いた古紙片約100gを、ふるい(φ:20mm)にかけて微小古紙片を除去し、残った古紙片をEPSON Scanを用いてスキャンし、画像を取得した。スキャンした画像を、ImageJを用いて解析し、各古紙片の面積を取得することで面積の中央値を算出した。
【0071】
<サイズ剤含有量>
実施例および比較例で得られたベールから、無作為に古紙片を採取し、これを絶乾させた。絶乾後の古紙片について、樹脂層等の紙基材層以外の層を、顕微鏡下で層の境界を確認しつつ、研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて研削して除去し、紙基材層を回収した。
回収した紙基材層より、紙基材層中の添加剤を、以下の測定条件で熱分解ガスクロマトグラフィー(GCMS)を用いて定量した。定量は、既知の濃度のロジンサイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-881)を標品として検量線を作成し、これを基に行った。
(測定条件)
・熱分解炉温度:450℃
・測定時温度条件:100~325℃まで、15℃/minで昇温し測定
・使用カラム:HP-5MS(アジレント・テクノロジー社製)
【0072】
<ベール密度>
ベール成形工程の際に投入した古紙片の重さと、得られたベールの体積から、ベール密度を算出した。
【0073】
<形状保持性>
実施例および比較例で得られたベールに対し、側面のみ5本のPPバンド(もりや産業株式会社製、型番:12 J-S1)を、コードレスハンディ梱包機(ストラパック株式会社製、STB73、引締め強さ900N)を用いて等間隔に巻き、その上にストレッチフィルム(トラスコ中山株式会社製、SF18-500)をベール側面全体が1周覆われるように巻いた。
ベールと地面との間にフォークリフトの爪を直接入れて、垂直に1m持ち上げた後、地面に下ろした。その後、ベールと地面との間からフォークリフトの爪を引き抜く際の、ベールの脱落の様子を確認し、下記の評価基準で評価した。
(評価基準)
A:古紙片がベールから15cm未満の距離にまで広がって脱落していた。
B:古紙片がベールから15cm以上30cm未満の距離にまで広がって脱落していた。
C:古紙片がベールから30cm以上45cm未満の距離にまで広がって脱落していた。
D:古紙片がベールから45cm以上の距離にまで広がって脱落していた。
【0074】
<離解性>
実施例および比較例で得られたベールより、絶乾質量で60gの古紙片を採取し、離解機(熊谷理機工業株式会社製、No.2532)を用いて15分間離解を行い、固形濃度3質量%のパルプスラリーを得た。その後、得られたパルプスラリーを、フラットスクリーン(熊谷理機工業株式会社製、No. 230703、スリット 6カット)に、流量:10L/分で15分間の条件で投入した。フラットスクリーンを通過しなかった残渣物の絶乾質量から残渣率を求め、下記計算式で繊維回収率を求め、離解性の指標とした。
繊維回収率(%)={1-([残渣率(%)]/100)}/古紙片の坪量における紙基材層の坪量の割合×100
残渣率(%)=[フラットスクリーンを通過しなかった残渣物の絶乾質量(g)]/[フラットスクリーンに投入したパルプスラリーの固形分質量(g)]×100
(評価結果)
A:繊維回収率が90%以上
B:繊維回収率が70%以上90%未満
C:繊維回収率が50%以上70%未満
D:繊維回収率が50%未満
【0075】
実施例および比較例における、測定・評価結果について、表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2より、実施例1~24で得られたベールは、古紙片の24時間の吸水度が15%以上85%以下であるため、形状保持性に優れ、さらに離解性に優れることが確認された。
一方、比較例1で得られたベールは、古紙片の24時間の吸水度が85%よりも大きいため、形状保持性が劣る結果となった。また、比較例2で得られたベールは、古紙片の24時間の吸水度が10%未満であることから、離解性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のベールの製造方法は、上記の特徴を有することから、成形されたベールの形状保持性に優れ、さらに該ベールに含まれる離解性にも優れる。
【要約】
【課題】成形されたベールの形状保持性に優れ、さらに該ベールに含まれる古紙片の離解性にも優れる、ベールの製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも樹脂層および紙基材層を有する古紙片を、圧縮成形してベールを得る成形工程を有し、前記古紙片の坪量が、100g/m以上であり、前記古紙片の24時間の吸水度が、15%以上85%以下である、ベールの製造方法。
【選択図】なし