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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】リフレクトアレイユニット
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024114139
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2023178255の分割
【原出願日】2023-10-16
【審査請求日】2024-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】正田 亮
(72)【発明者】
【氏名】今井 順平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晶彦
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-048465(JP,A)
【文献】特開2013-115756(JP,A)
【文献】特開2021-175054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子パターン、誘電体層、およびグランド層を含むリフレクトアレイが平面内に複数配置され、
前記リフレクトアレイの間にはユニットスペースが存在し、
前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、
前記反射制御領域は全ての前記リフレクトアレイで同一であり、
前記リフレクトアレイが正方形の四隅に配置された配置パターン(「正方配置パターン」という)を有し、
前記正方配置パターンを構成する前記リフレクトアレイに加え、中央に配置する前記リフレクトアレイを含むことを特徴とする、リフレクトアレイユニット。
【請求項2】
素子パターン、誘電体層、およびグランド層を含むリフレクトアレイが平面内に複数配置され、
前記リフレクトアレイの間にはユニットスペースが存在し、
前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、
前記反射制御領域は全ての前記リフレクトアレイで同一であり、
前記リフレクトアレイが正方形の四隅に配置された配置パターン(「正方配置パターン」という)を有し、
前記正方配置パターンを構成する前記リフレクトアレイに加え、前記正方配置パターンの正方形と中央を同じくし対角線に沿って拡大されてなる正方形の四隅に配置する前記リフレクトアレイを含むことを特徴とする、リフレクトアレイユニット。
【請求項3】
前記拡大されてなる正方形の辺上に配置する前記リフレクトアレイを含むことを特徴とする、請求項に記載のリフレクトアレイユニット。
【請求項4】
素子パターン、誘電体層、およびグランド層を含むリフレクトアレイが平面内に複数配置され、
前記リフレクトアレイの間にはユニットスペースが存在し、
前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、
前記反射制御領域は全ての前記リフレクトアレイで同一であり、
前記リフレクトアレイが正方形の四隅に配置された配置パターン(「正方配置パターン」という)を有し、
互に大きさの異なる前記正方配置パターンを有し、
一方の大きさの前記正方配置パターンは、xy平面の第二および第四象限に配置され、かつ他方の大きさの前記正方配置パターンは、xy平面の第一および第三象限に配置され、
第一から第四象限に配置された前記正方配置パターンの間には所定のユニットスペースが存在することを特徴とする、リフレクトアレイユニット。
【請求項5】
前記リフレクトアレイが、支持体上に配置されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一つに記載のリフレクトアレイユニット。
【請求項6】
前記支持体の比誘電率が1以上1.5以下であることを特徴とする、請求項に記載のリフレクトアレイユニット。
【請求項7】
前記素子パターンの形状はクロスパッチを含み、
前記反射制御領域内において、前記素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxまたは/かつy軸方向の幅である第二素子幅wyは、少なくとも2つの単位セルそれぞれに配置される素子パターン毎に異なることを特徴とする、請求項1~のいずれか一つに記載のリフレクトアレイユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクトアレイユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
社会におけるデジタル化の進展により、無線通信におけるデータ通信速度が飛躍的に向上し、それに伴う電磁波の高周波化が進んでいる。しかし、電磁波は周波数が高くなるにつれて直進性が高くなるため、建物の影等に電磁波が回り込まず、通信ができない領域である不感地帯が生じやすい。
これらの理由から、広範囲における5G・6G通信を実現するためには、基地局数を増やす必要がある。しかし、基地局を増やすためには多額のコストを要するため、基地局の数を早急に増やすのは難しい状況にある。近年これらの課題を解決すべく、電磁波の方向を制御する技術が注目を集めている。
【0003】
このような技術のなかで、十字型の反射素子を用いた反射板が開発されている。特許文献1には、以下の点が開示されている。
メタサーフェス反射板は、誘電体基板、誘電体基板の底面に設けられ、全ての向きの偏波に対しメタサーフェス反射板を透過させない金属グラウンド層、および、アーム長の異なる2種以上の十字型の金属共振器を有する複数のスーパーセルを備える。金属共振器を有するスーパーセルは、誘電体基板の上面に形成され、入射波の垂直偏波および水平偏波を反射させ、所定周波数での電磁波を要求される位相で異常波反射させる回折格子の周期で配列されている。
【0004】
特許文献2には、第1及び第2の配列群を含むマルチビームリフレクトアレイが開発されている。
第1の配列群は第1の素子配列を複数個含み、第2の配列群は第2の素子配列を複数個含み、前記第1及び第2の素子配列の各々は、所定の方向に整列した複数の素子を含み、該複数の素子の内の2つの素子各々が反射する電波の位相差は、該2つの素子の間隔と該素子による反射角に対する三角関数の値との積に比例するよう設計することで、所定の波長の電波が前記第1の配列群により反射される場合の反射角が、前記所定の波長の電波が前記第2の配列群により反射される場合の反射角と異なり、マルチビームリフレクトアレイとすることができる。
【0005】
特許文献3には、電波反射体を有する構造体が開発されている。
入射波が正反射したときの反射波の強度が、反射面に曲率を設け、入射波に対して-30dB以上となる構造体とすることで、空間の広い範囲に電波を届けることができる。
【0006】
特許文献4には、1GHz~170GHzの周波数帯から選択される所望の帯域の電波を反射する反射面を有するパネルとパネルを支持する支持体とを備える電磁波反射装置が開発されている。
支持体が導電性のフレームとパネルの端部を受けるスリットからなり、スリットにパネルを設置し電磁波反射装置により、屋内外で移動体通信の電波伝搬が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-48465号公報
【文献】特許第5480855号公報
【文献】国際公開第2022/163813号
【文献】国際公開第2022/196338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属反射板は、正反射の為、基地局の電波を反射させ不感地帯(通信ができない領域)に電波を届ける際の設置位置は限定的であるのに対し、通常のリフレクトアレイ(メタサーフェス反射板)は、素子のパターンを調整することで正反射とは異なる方向に反射(非対称反射)させることが可能で、不感地帯に電波を届ける際の設置位置や角度に自由度がある。
【0009】
ところがリフレクトアレイ(メタサーフェス反射板)は連結して面積を増加させる程、反射強度を増加させることが可能だが、反射波の指向性が高まり反射領域は狭域化するので不感地帯に対し広範囲に電波を届けることができないという問題がある。特許文献1、3、4にはこの点の課題認識がそもそも開示されていない。
【0010】
更に、素子パターンを備えるリフレクトアレイは、素子パターンに寸法誤差が生じると、各領域における反射位相が設計値から大きく変化する傾向があり、所望方向の反射強度が低下することがある。また、複数の配列群からなると設計が煩雑になる上、製造時の良品率低下の原因になってしまう。特許文献2は狭域化の問題に対して反射角の異なる2種類のリフレクタを併用することが開示されているが、設計が複雑になり良品率低下のリスクがある。
【0011】
そこで、本発明は、反射角を自由に設計でき、空間の広い範囲に電波を届けること(広域化)が可能で良品率の高いリフレクトアレイユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のリフレクトアレイユニットの一つは、素子パターン、誘電体層、およびグランド層を含むリフレクトアレイが平面内に複数配置され、前記リフレクトアレイの間にはユニットスペースが存在し、前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、前記反射制御領域は全ての前記リフレクトアレイで同一であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反射角を自由に設計でき、空間の広い範囲に電波を届けること(広域化)が可能で良品率の高いリフレクトアレイユニットを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第一実施形態に係るリフレクトアレイユニットの構成の一例を示す平面図である。
図2図2は、第一実施形態に係るリフレクトアレイユニットの構成の一例を示す断面図である。
図3図3は、リフレクトアレイユニットの構成を示す斜視図である。
図4図4は、機能層7の配置の一例を示す図である。
図5図5は、機能層の配置の他の例を示す図である。
図6図6は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。
図7図7は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。
図8図8は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。
図9図9は、第二実施形態に係るリフレクトアレイユニットの構成の一例を示す平面図である。
図10図10は、第二実施形態に係るリフレクトアレイユニットの構成の一例を示す断面図である。
図11図11は、従来技術におけるリフレクトアレイの設置例を示す模式図である。
図12図12は、本発明の実施形態におけるリフレクトアレイの設置例を示す模式図である。
図13図13は、比較例1に係る単位リフレクトアレイの平面図と反射特性を示す図である。
図14図14は、比較例2に係るリフレクトアレイの平面図と反射特性を示す図である。
図15図15は、比較例3に係るリフレクトアレイの平面図と反射特性を示す図である。
図16図16は、実施例1に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図17図17は、実施例2に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図18図18は、実施例3に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図19図19は、実施例4に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図20図20は、実施例5に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図21図21は、実施例6に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図22図22は、実施例7に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図23図23は、実施例8に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図24図24は、実施例9に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である
図25図25は、実施例10に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図26図26は、実施例11に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図27図27は、実施例12に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。
図28図28は、実施例13に係るリフレクトアレイユニットの平面図、断面図および反射特性を示す図である
図29図29は、実施例14に係るリフレクトアレイユニットの平面図、断面図および反射特性を示す図である。
図30図30は、実施例15に係るリフレクトアレイユニットの平面図、断面図および反射特性を示す図である。
図31図31は、実施例16に係るリフレクトアレイユニットの平面図、断面図および反射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0016】
(用語の説明)
本開示において、「リフレクトアレイ(電磁波反射板)」とは、電磁波を反射させる部材であり、入射角度と反射角度が異なる非対称反射が可能な部材である。
「リフレクトアレイユニット(電磁波反射板集合体)」とは、複数のリフレクトアレイの集合体であって、電磁波の反射波のうち入射角度と反射角度が異なる非対称反射を主な成分とし、複数の方向に電磁波を反射させる部材である。
以下の説明において、xyz座標系を適用し、xy平面(単に「平面」ということもある。)上にリフレクトアレイが配置されるとする。
【0017】
「反射制御領域」とは、リフレクトアレイを構成する領域の一部を指す。反射制御領域は、その領域に入射した電磁波を所定の方向へ反射させることができる最小の領域である。そして、リフレクトアレイは、反射制御領域を1つ以上組み合わせて構成される。反射制御領域という場合、電磁波が入射領域に平行な方向にある2次元の領域に加えて、領域に垂直な方向に形成される層構造をも含むものとする。
また、「単位セル」とは、反射制御領域を区分した領域を指す。単位セルには1つの素子パターンが含まれる。
【0018】
「θi」は入射波の入射角度を示す。x軸方向の入射角度をθix、y軸方向の入射角度をθiyとする。また、「θr」は反射波の反射角度を示す。x軸方向の反射角度をθrx、y軸方向の反射角度をθryとする。
また、x軸方向の角度θxは、+z軸方向から+x軸方向に向かう方向に広がる場合を正の角度(0°から180°)によって表し、+z軸方向から-x軸方向に向かう方向に広がる場合を負の角度(0°から-180°)によって表す。同様に、y軸方向の角度θyは、+z軸方向から+y軸方向に向かう方向に広がる場合を正の角度(0°から180°)によって表し、+z軸方向から-y軸方向に向かう方向に広がる場合を負の角度(0°から-180°)によって表す。
【0019】
素子パターン(素子)の素子長については、x軸方向の素子長はlxと表記され、y軸方向の素子長はlyと表記される。また、素子幅については、x軸方向の素子幅はwx、y軸方向の素子幅はwyと表記される。
【0020】
[第一実施形態]
(リフレクトアレイユニットの構成)
図1、2を参照して、第一実施形態に係るリフレクトアレイユニット30の構成を説明する。図1は、第一実施形態に係るリフレクトアレイユニット30の構成の一例を示す平面図である。また図2は、第一実施形態に係るリフレクトアレイユニット30の構成の一例を示す断面図である。リフレクトアレイユニット30は、複数のリフレクトアレイ20を平面に配置し、隣り合うリフレクトアレイの間にユニットスペースを有する集合体である。隣り合うリフレクトアレイ20の間にユニットスペース6を有することで非対称反射を主な成分とし、それ以外の複数の方向に電磁波を反射させることができる。
【0021】
より詳しくは、基準非対称反射(後述)の±1度の範囲を除くいずれか2つ以上の角度に、レーダー散乱断面積RCSが-15dBsm以上の反射を得ることができ、かつ、RCSが最大値となるピーク角度と別のピーク角度に生じる反射のRCSは、最大値の10dBsm以内となる。これにより、不感地帯の領域が大きい場合でも、領域全体に電磁波を届けることができ、通信接続や通信速度を安定させることができる。
【0022】
ユニットスペース6は、空気層、または誘電率1以上1.5以下の樹脂層であることが好ましい。ユニットスペース6が導電材料であると、非対称反射に加え、正反射が混在し不要なマルチパス反射を引き起こす原因となる。
【0023】
(リフレクトアレイの構成)
リフレクトアレイ20は、複数の素子パターン1を平面に周期的に配置してなる1または複数の反射制御領域5からなり、非対称反射の方向を所望の値にすることができる(所望の値に設定した非対称反射を「基準非対称反射」ということもある。)。リフレクトアレイ20は、素子パターン(素子)1、誘電体層2、グランド層(地板)3を少なくとも含む。リフレクトアレイ20に含まれる反射制御領域5の数は所望の反射強度によって適宜設定すればよく、図1は3つの反射制御領域5からなるリフレクトアレイ20の例が記載されている。本開示において特に断りのない限り3つの反射制御領域5からなるリフレクトアレイ20を用いて説明するが、リフレクトアレイ20の構成はこれに限られるものではない。
【0024】
次に図3を参照して、リフレクトアレイ20の構成をより詳細に説明する。図3は、リフレクトアレイ20の構成を示す斜視図である。図3のリフレクトアレイ20は、x軸に沿って電磁波の所定の非対称反射を生じさせるものである。図3のリフレクトアレイ20は反射制御領域5と同一の反射制御領域がx軸方向およびy軸方向に複数並べられた構成を有しているところ、図3において、リフレクトアレイ20に含まれる反射制御領域を代表して反射制御領域5を実線で示している。反射制御領域5には、単位セル4、4、4、…4(以下、単位セルを特定せずに言う場合には「単位セル4」ともいう。nは2以上の正の整数。)が含まれる。単位セル4は、反射制御領域5をx軸方向に沿って等間隔に分割した部分である。nは、x軸方向において反射制御領域を単位セルに分割する場合の分割数である。単位セル4のx軸方向のサイズ(長さ)をsx、y軸方向のサイズをsyとし、反射制御領域5のx軸方向のサイズをLx、y軸方向のサイズをLyとする場合、sx=Lx/n、sy=Lyである。なお、図3において、反射制御領域5はx軸方向に並んだn個の単位セル4によって構成され、リフレクトアレイ20には複数の反射制御領域5が含まれる構成が示されているが、本開示はこのような構成に限定されない。反射制御領域はy軸に並ぶ単位セルによって構成されてもよいし、x軸およびy軸に並ぶ単位セルを含む構成であってもよい。反射制御領域の構成については後述する。
【0025】
(素子パターンの構成)
単位セル4の+z軸方向を向く面には、素子パターンが形成されている。分割数nを用いて、単位セル4、単位セル4、…単位セル4と表す。単位セル4には素子パターン1が形成される。単位セル4には素子パターン1が形成される。単位セル4には素子パターン1が形成される。単位セル4には素子パターン1が形成される。
また、反射制御領域の領域内および同一の反射制御領域が隣接する領域間において、素子パターンは均等な間隔をおいて配置される。具体的には、反射制御領域5の領域内の各素子パターンについて、x軸方向において隣り合う素子パターン同士の最近接間隔の大きさ(以下、「ギャップ」ともいう。)をgxとする場合、反射制御領域5の領域内において、素子パターン1から1は、gxが等間隔に配置される。また、反射制御領域5の素子パターン1とx軸方向において反射制御領域5に隣接する反射制御領域5x(破線表示、素子パターン1 が形成された単位セル4 、素子パターン1 が形成された単位セル4 、…素子パターン1 が形成された単位セル4 を含む。)の素子パターン1 の間のギャップをGxとする場合、図3においてはGxとgxは等しい。
なお、反射制御領域5の素子パターンとy軸方向において反射制御領域5に隣接する反射制御領域5y(破線表示、素子パターン1 が形成された単位セル4 、素子パターン1 が形成された単位セル4 、…素子パターン1 が形成された単位セル4 を含む。)の素子パターンの間のギャップは、図3においては均一でGyとして示される。
【0026】
反射制御領域内において、各素子パターンは、ほかの素子パターンとはわずかずつ異なる形状を有している。ここで、素子パターン1から素子パターン1に示された素子パターンの形状を、クロスパッチということがある。クロスパッチとは、xy平面において、2つの方形パッチが直交した形状を指す。素子パターン1は、x軸方向のサイズである素子長lx1とy軸方向のサイズである素子幅wy1を有する方形パッチと、y軸方向のサイズである素子長ly1とx軸方向のサイズである素子幅wx1を有する方形パッチが、重心の位置を共通として直交した形状を有する。同様に、素子パターン1は、素子長lxnと素子幅wynを有する方形パッチと、素子長lynと素子幅wxnを有する方形パッチが、重心の位置を共通として直交した形状を有する。素子長および素子幅の設定方法については後述する。
【0027】
(各構成の説明、設計方法)
(層の構成)
図4および図5を参照して、リフレクトアレイ20の層構成を説明する。図4および図5は、リフレクトアレイ20の層構成の一例を示す図である。リフレクトアレイ20は、少なくとも素子パターン1、誘電体層2、グランド層3が+z軸方向から-z軸方向に向かう向きに積層された構成を有している。以下の説明において、素子パターン1、誘電体層2、グランド層3の3層からなる構成を「基本構成」という。実用上、リフレクトアレイ20は基本構成の素子パターン1側あるいはグランド層3側、もしくは両方に各種機能性を有する層(以下、「機能層」ともいう)を単数あるいは複数積層させることが好ましい。以下の説明において、素子パターン1と誘電体層2とグランド層3以外のリフレクトアレイに含まれる層について、層の種類を特定せずに示す場合、「機能層」ということがある。
【0028】
必要に応じて、素子パターン1と誘電体層2の間、またはグランド層3と誘電体層2の間に、それぞれの密着力を向上させるための層が形成されていてもよい。また、密着力を向上させる用途の他の用途に用いられる層が形成されていてもよい。なお、リフレクトアレイ20の製造過程において生じた中間生成物が層状に形成され、リフレクトアレイ20に残る場合もある。
【0029】
機能層としては例えば、リフレクトアレイ20が設置される場所の景観に配慮した意匠を施した意匠層や、リフレクトアレイ20を壁や天井等の支持体に容易に設置できるようにするための設置層や、基本構成を保護するための保護層や、各層を積層させるための接着層が挙げられる。
【0030】
図4は、機能層7の配置の一例を示す図である。素子パターン1側への積層方式は、リフレクトアレイ20aのように複数の素子パターン1同士の間の空隙を埋めるよう機能層7を積層してもよいし(図4(a))、リフレクトアレイ20bのように複数の素子パターン1同士の間の空隙を維持したまま素子パターン1の上面に接するよう機能層7を積層してもよいし(図4(b))、リフレクトアレイ20cのように素子パターン1の上面と接しないよう機能層7を積層してもよい(図4(c))。なお、リフレクトアレイ20aから20cにおいて機能層7を除いた構成を共通とした場合、リフレクトアレイ20aから20cはそれぞれ異なる反射特性を有する。このため、機能層7の積層方式を変更することによって、リフレクトアレイの特性を変更することも可能である。
【0031】
図5は、機能層の配置の他の例を示す図である。図5においては、機能層として保護層8、接着層9、意匠層10、設置層11の配置例を示す。図5(a)は、素子パターン1およびグランド層3を覆うように保護層8が積層され、さらに素子パターン1側には接着層9を介して意匠層10を、グランド層側には接着層9を介して設置層11を備えるリフレクトアレイ20dを示す。図5(b)は、グランド層側に接着層9を介して設置層11を備え、素子パターン1側には空隙を隔てて意匠層10を備えるリフレクトアレイ20eを示す。
【0032】
(反射制御領域)
リフレクトアレイ20は少なくとも1つの反射制御領域を含む。反射制御領域の配置の仕方によって、リフレクトアレイの性質を変更することが可能である。例えば、ある波長の電磁波がある入射角度で入射した場合に、反射方向が共通である反射制御領域を周期的に配置することにより、リフレクトアレイに、単一方向への反射を行う特性を付与することが可能である。また、ある波長の電磁波がある入射角度で入射した場合に、反射方向がそれぞれ異なる反射制御領域を含むリフレクトアレイを構成することにより、複数の方向へ電磁波を散乱させる特性を付与することも可能である。また、反射制御領域ごとに反射方向を所定の角度ずつずらす構成とすることによって、特定の箇所へ電磁波を集める特性を付与することも可能である。設計時に、リフレクトアレイに適用が予定される周波数を、以下「動作周波数」とする。
【0033】
反射制御領域のx軸方向のサイズLxは、動作周波数の波長をλ、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrxとし、θix≠-θrxの場合、例えば式(1)によって決定される。
【数1】
【0034】
また、反射制御領域のy軸方向のサイズLyは、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のy軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のy軸成分をθryとし、θiy≠-θryの場合、例えば式(2)によって決定される。
【数2】
【0035】
(単位セルと反射位相の関係)
図6から図8を参照して、単位セルと反射位相の関係を説明する。図6から図8は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。反射制御領域5は少なくとも2つの単位セルを有する。ここで、図6(a)はリフレクトアレイ20fに入射する電磁波(入射波)の方向およびリフレクトアレイ20fから反射する電磁波(反射波)の方向を示す。別の言い方をすると、太い実線で描かれた矢印が波面の進行方向を示しており、リフレクトアレイ20fに向かう矢印が入射波の波面の進行方向を示し、リフレクトアレイ20fから離れる方向の矢印が反射波の波面の進行方向を示す。また、図6(b)はリフレクトアレイ20fをz軸方向から見た平面図を示す。図7および図8における(a)および(b)も、図6における(a)および(b)の関係と同様である。
【0036】
単位セルは、入射した電磁波を所定の位相差で反射させる作用を有する。反射制御領域内において、それぞれの単位セルが異なる反射位相を示すことから、反射制御領域から発生する反射波の波面である反射波面が入射角度と反射角度が等しくなる場合の反射角度から傾き、入射角度と反射角度が等しくなる対称反射とは異なる反射である非対称反射が実現する。
【0037】
リフレクトアレイ20fにx軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合(図6(a)に示されるようにθix≠-θrx)には、反射制御領域5a内のx軸方向に沿って異なる反射位相を示す単位セルが配置される(図6(b))。反射制御領域5aは、分割数n=3とし、x軸方向に配置された3つの単位セルを有している。反射制御領域5aのx軸方向のサイズLxは式(1)によって決定され、単位セルのx軸方向のサイズはLx/3である。この例に代表されるような、反射角のy軸成分が対称反射(θiy=-θry)の場合、Lyは式(2)によって決定される必要がなく、任意の値をとり得る。しかし、設計のしやすさから、便宜的にLxおよび分割数nからサイズが決定された正方形の単位セルを用いることとし、LyはLx/3と等しくされる。
【0038】
同様に、リフレクトアレイ20gにy軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合(図7(a)に示されるようにθiy≠-θry)には、反射制御領域5b内のy軸方向に沿って異なる反射位相を示す単位セルを配置する(図7(b))。ここで、m(mは2以上の正の整数)は、y軸方向において反射制御領域を単位セルに分割する場合の分割数とする。反射制御領域5bは、分割数m=3とし、y軸方向に配置された3つの単位セルを有している。反射制御領域5bのy軸方向のサイズLyは式(2)によって決定され、単位セルのy軸方向のサイズはLy/3である。反射角度のx軸成分は対称反射であるため、Lxは式(1)によって決定される必要はなく、任意の値をとり得る。しかし、設計のしやすさから、便宜的にLyおよび分割数mからサイズが決定された正方形の単位セルを用いることとし、LxはLy/3と等しくされる。
【0039】
図8(a)はリフレクトアレイと電磁波の関係を示し、図8(a1)は電磁波をzx面に射影した場合を示し、図8(a2)は電磁波をzy面に射影した場合を示す。リフレクトアレイ20hにx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとする場合(図8(a1)に示されるようにθix≠-θrxかつ図8(a2)に示されるようにθiy≠-θry)には、反射制御領域5c内において、x軸方向には反射位相が異なる単位セルを配置し、また、y軸方向においても反射位相が異なる単位セルを配置する(図8(b))。反射制御領域5cは、x軸方向に3つの単位セルを配置しy軸方向に3つの単位セルを配置した9つの単位セルを含む。反射制御領域5cにおける分割数は、x軸方向の分割数n=3とy軸方向の分割数m=3を用いて、3×3=9と表すことも可能である。反射制御領域5cのx軸方向のサイズLxは式(1)によって決定され、y軸方向のサイズLyは式(2)によって決定される。単位セルのx軸方向のサイズは、Lxとnから決定され、Lx/3である。単位セルのy軸方向のサイズは、Lyとmから決定され、Ly/3である。入射波のx軸方向成分およびy軸方向成分のいずれも非対称反射する。このため、反射波面の進行方向のx軸方向成分は入射波面の進行方向のx軸方向成分は異なり、かつ反射波面の進行方向のy軸方向成分は入射波面の進行方向のy軸方向成分と異なる(図8(a))。
なお、gxは、反射制御領域5cの領域内における素子パターン間のx軸方向のギャップを示す。gyは、反射制御領域5cの領域内における素子パターン間のy軸方向のギャップを示す。x軸方向において素子パターン間の間隔gxは等しく、また、y軸方向において素子パターン間の間隔gyは等しい。gxとgyは異なる場合が示されているが、gxとgyは等しくともよい。
また、Gxは、反射制御領域5cの素子パターンとx軸方向において反射制御領域5cに隣接する反射制御領域の素子パターンの間のギャップを示す。Gyは、反射制御領域5cの素子パターンとy軸方向において反射制御領域5cに隣接する反射制御領域の素子パターンの間のギャップを示す。反射制御領域5cと同一の反射制御領域がx軸方向(またはy軸方向)の位置を変えずにy軸方向(またはx軸方向)に隣接する場合、gxとGxは等しく、またgyとGyは等しい。
【0040】
(反射制御領域内の反射位相の分布、表面インピーダンスの分布)
反射制御領域内における反射位相の分布は、例えば式(3)、(4)に従うように決定される。ここで、動作周波数の波長をλ(m)、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、y軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrx、y軸成分をθry、反射制御領域内のx軸と平行な任意の座標x1、x2における反射位相をそれぞれφx1、φx2とし、座標x1、x2の距離をdx、Φx1、Φx2の反射位相差をΔΦxとする。また、y軸と平行な任意の座標y1、y2における反射位相をそれぞれφy1、φy2とする。反射制御領域にx軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(3)を満たしていることが好ましく、反射制御領域にy軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(4)を満たしていることが好ましい。また、反射制御領域がx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとする場合、式(3)および式(4)のいずれをも満たしていることが好ましい。
【数3】
【数4】
【0041】
また、反射位相ではなく、表面インピーダンスの分布を反射制御領域内に適用することもできる。その場合、表面インピーダンスの分布は例えば式(5)、および式(6)により表される。ここで、Zsxは反射制御領域のx軸方向と平行な表面インピーダンス分布、Zsyは反射制御領域のy軸方向と平行な表面インピーダンス分布、ηは入射波のインピーダンスとする。また、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、y軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrx、y軸成分をθryとする。
なお、x1およびx2は反射制御領域内の相対座標としてのx座標を示し、反射制御領域における任意の座標において基準x=0をとり得る。同様に、y1およびy2は反射制御領域内の相対座標としてのy座標を示し、反射制御領域における任意の座標において基準y=0をとり得る。
また、kは反射波の波数である。jは虚数単位を示す。反射制御領域にx軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(5)を満たしていることが好ましく、反射制御領域にy軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(6)を満たしていることが好ましい。また、反射制御領域がx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとする場合、式(5)および式(6)のいずれをも満たしていることが好ましい。
【数5】
【数6】
【0042】
その他の表面インピーダンスの分布としては、例えば式(7)、および式(8)により表される。反射制御領域がx軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合、式(7)を満たしていることが好ましく、反射制御領域がy軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合、式(8)を満たしていることが好ましい。また、反射制御領域がx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとする場合、式(7)、式(8)を同時に満たしていることが好ましい。
【数7】
【数8】
【0043】
なお、上述の式(3)から式(8)は、反射位相の分布および表面インピーダンスの分布を設計する場合に用いられる設計式の一例を示すものである。本開示はこれら式(3)から式(8)を用いる場合に限定されるものではなく、他の設計式を適宜選択することが可能である。
【0044】
[第二実施形態]
図9、10を参照して、第二実施形態に係るリフレクトアレイユニット30の構成を説明する。図9は、第二実施形態に係るリフレクトアレイユニット30の構成の一例を示す平面図である。また図10は、第二実施形態に係るリフレクトアレイユニット30の構成の一例を示す断面図である。複数のリフレクトアレイ20がユニットスペース6を挟んで支持体12上に配置されてリフレクトアレイユニット30を形成する点で第一実施形態と異なる他は同様の構成であるので詳細な説明は省略する。
支持体12は樹脂などの誘電体で構成され、空気の誘電率(誘電率1)に近い誘電率を持つ媒質が好ましい。そしてリフレクトアレイユニットを設置する場所に応じて支持体の硬さを適宜調整してもよい。支持体を所定の大きさの規格サイズに設定すれば屋内外の建築材や道路、通信機材など幅広い部材に対し容易に運搬、装着が可能になる。
【0045】
<実施例>
図11は、従来技術におけるリフレクトアレイの設置例を示す模式図である。そして図12は、本発明の実施形態におけるリフレクトアレイの設置例を示す模式図である。基地局31から送信される入射波はリフレクトアレイユニット30で非対称反射され電波遮蔽物32により生ずる不感地帯33の中の電波領域34に電波を届けることができる。従来技術では電波領域34が狭域化してしまうのに対し(図11)、本発明の実施形態に係るリフレクトアレイユニット30を用いると電波領域34が広域化することができ従来技術に比べより広い範囲の不感地帯に電波を届けることができる。
【0046】
実施例、比較例におけるシミュレーションは有限要素法で行い、リフレクトアレイユニットには、平面波が照射されているものとして計算を行った。
実環境においては、リフレクトアレイユニットに平面波が照射されるよう基地局とリフレクトアレイユニットの距離を加味して各々を適宜設置すれば良い。リフレクトアレイユニットと不感地帯の距離も同様に、リフレクトアレイユニットの反射波が平面波になるよう、各々を適宜設置すれば良い。
平面波となる距離は遠方界距離を目安とすれば良い。例えば、リフレクトアレイユニットが正方形の場合、基地局の入射波とリフレクトアレイユニットの法線となす面と平行なリフレクトアレイユニットの1辺の長さd、波長λに対し、遠方界距離x=2d/λとなる。具体的な例として、d=0.3mのリフレクトアレイユニット、周波数4.6GHzの基地局の場合、リフレクトアレイユニットと基地局、不感地帯の間を2.76m以上、離せば良い。ただし上述した例は目安であり、リフレクトアレイユニットと基地局または不感地帯との距離が遠方界距離より短いからといって本発明の効果が得られないわけではない。
【0047】
以下に実施例、比較例について説明する。
(比較例1)
まず実施例の対象となるリフレクトアレイユニットを構成し、離間配置する際の単位となるリフレクトアレイ(以下、「単位リフレクトアレイ」という。)に関する比較例1を説明する。表1は、比較例1に係る単位リフレクトアレイの構成データである。また図13は、比較例1に係る単位リフレクトアレイの平面図と反射特性を示す図である。図13(a)は平面図で、図13(b)は反射特性である。なお比較例1に係る単位リフレクトアレイの断面は図2におけるリフレクトアレイ20の断面図と同様である。以下の説明において同一部分の符号は省略する。
【表1】
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのCGP-500を用いた単位リフレクトアレイ20を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とした。
【0048】
動作周波数を27.2GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=33°、θrx=0°、θiy=0°、θry=0°に設定し、式(1)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを20.238mmに決定した。
【0049】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは6.746mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子幅のみが異なるとし、具体的には素子長はlx1=lx2=lx3=ly1=ly2=ly3=3.25mmとし、同一素子パターン内の素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。素子幅wに対する単位セルの反射位相をHFSSを使用して解析した。
なお単位セルpにおいて、x軸方向の素子長をlxp、y軸方向の素子長をlyp、x軸方向の素子幅をwxp、y軸方向の素子幅をwypとする。ただし、lxpとlypが等しい場合には添え字x、yを省略し、wxpとwypが等しい場合には添え字x、yを省略し、単位セルを特定しない場合には添え字pを省略ことがある。
【0050】
次に、単位セルの解析結果を踏まえ、式(8)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子幅wを決定した。素子幅wはそれぞれwl=1.582mm、w2=2.955mm、w3=0.319mmとした。
【0051】
リフレクトアレイ20は、図13(a)に示すように、同一の反射制御領域5がx軸方向およびy軸方向に1個×3個(その結果単位セルがx軸方向およびy軸方向に3個×3個)並ぶことでxy平面におけるサイズは20.238mm角となった。x軸と平行の偏波をθix=33゜、θiy=0゜でリフレクトアレイ20に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0052】
図13(b)は、比較例1に係る単位リフレクトアレイ20の反射特性を示す図である。横軸は反射角度θry、縦軸はRCS(レーダー反射断面積)とした。RCSは実質的に反射波の強度に対応する値である。θix=33゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向(基準非対称反射方向)に最大値で反射し、そのRCSは-19.12dBsmであった。
【0053】
以下実施例、比較例の反射特性を評価するにあたり、上述したように基準非対称反射の±1度の範囲を除くいずれか2つ以上の角度に、レーダー散乱断面積RCSが-15dBsm以上の反射を得ることができ、かつ、RCSが最大値となるピーク角度と別のピーク角度に生じる反射のRCSは、最大値の10dBsm以内となる場合に合格と判断することとする。合格基準を満たす反射特性であれば、基準非対称反射方向以外の方向にも所定強度のピークを有する反射光が発生し、全体として十分な強度で電波領域34を広域化することが可能となる。
比較例1ではRCSが最大となる基準非対称反射方向のピーク強度の値がそもそも-15dBsmに達していないので不合格となる。
【0054】
(比較例2)
図14は、比較例2に係るリフレクトアレイの平面図と反射特性を示す図である。図14(a)は平面図であり、図14(b)は反射特性である。
図14(a)に示すように、比較例2は単位リフレクトアレイ20を2個×2個敷き詰めた構成をとるリフレクトアレイである以外は比較例1と同様である。
またHFSSを用いて解析したところ、図14(b)に示すように、θix=33゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向(基準非対称反射方向)に最大値で反射し、そのRCSは-6.97dBsmであった。
比較例2では基準非対称反射方向と別の角度にピークをもつ反射光が発生するが(-25°で-18.01dBsm)、最大値との差が10dBsmより大きいことから不合格となる。
【0055】
(比較例3)
図15は、比較例3に係るリフレクトアレイの平面図と反射特性を示す図である。図15(a)は平面図であり、図15(b)は反射特性である。
図15(a)に示すように、比較例3は単位リフレクトアレイ20を3個×3個敷き詰めた構成をとるリフレクトアレイである以外は比較例1と同様である。
またHFSSを用いて解析したところ、図15(b)に示すように、θix=33゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向(基準非対称反射方向)に最大値で反射し、そのRCSは0.26dBsmであった。
比較例3では基準非対称反射方向と別の角度にピークをもつ反射光が発生するが(―15°でー12.26dBsm、15°でー13.01dBsm)、いずれも最大値との差が10dBsmより大きいことから不合格となる。
【0056】
次にリフレクトアレイユニットに関する実施例について説明する。
以下の説明において、リフレクトアレイの間のユニットスペースの長さというときは、離間配置された隣り合うリフレクトアレイの間に生ずる隙間の平均距離を意味する。
(実施例1)
図16は、実施例1に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図16(a)は平面図であり、図16(b)は反射特性である。
図16(a)に示すように、実施例1に係るリフレクトアレイユニット30は、2個×2個の単位リフレクトアレイ20を敷き詰めた比較例2のリフレクトアレイに対し、単位リフレクトアレイ0.5個分のユニットスペースをあけて配置した単位リフレクトアレイの集合体から構成される。各単位リフレクトアレイ20の間のユニットスペースの長さは10.119mmで、リフレクトアレイユニット30の外形の一辺の長さは50.595mmとなる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図16(b)に示すように、θix=33゜で入射した電磁波が基準非対称反射方向であるθrx=0゜の反射光から2つの反射光に分かれる反射特性を示した。
【0057】
図16(b)に示すように前記2つの反射光のピークは-9°のRCS-8.39dBsm、9°の-8.59dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0058】
(実施例2)
図17は、実施例2に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図17(a)は平面図であり、図17(b)は反射特性である。
図17(a)に示すように、実施例2に係るリフレクトアレイユニット30は、2個×2個の単位リフレクトアレイ20を敷き詰めた比較例2のリフレクトアレイに対し、単位リフレクトアレイ0.75個分のユニットスペースをあけて配置した単位リフレクトアレイの集合体から構成される。各単位リフレクトアレイ20の間のユニットスペースの長さは15.1785mmで、リフレクトアレイユニット30の外形の一辺の長さは55.6545mmとなる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図17(b)に示すように、θix=33゜で入射した電磁波が基準非対称反射方向であるθrx=0゜の反射光から3つの反射光に分かれる反射特性を示した。なお特性としては実施例1の反射特性(図16(b))と後述する実施例3の反射特性(図18(b))の間の振る舞いが見られる。
【0059】
図17(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-12°のRCS-9.14dBsm、4°の-7.26dBsm、20°の-14.63dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0060】
(実施例3)
図18は、実施例3に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図18(a)は平面図であり、図18(b)は反射特性である。
図18(a)に示すように、実施例3に係るリフレクトアレイユニット30は、2個×2個の単位リフレクトアレイ20を敷き詰めた比較例2のリフレクトアレイに対し、単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけて配置した単位リフレクトアレイの集合体から構成される。各単位リフレクトアレイ20の間のユニットスペースの長さは20.238mmで、リフレクトアレイユニット30の外形の一辺の長さは60.714mmとなる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図18(b)に示すように、θix=33゜で入射した電磁波が基準非対称反射方向であるθrx=0゜の反射光から3つの反射光に分かれる反射特性を示した。特に外形の一辺の長さが同じでユニットスペースのない比較例3と比べるとユニットスペースの存在が反射特性の広域化に与える影響が顕著に示された。
【0061】
図18(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-15°のRCS-9.81dBsm、0°の-6.80dBsm、14°の-10.58dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0062】
(実施例4)
図19は、実施例4に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図19(a)は平面図であり、図19(b)は反射特性である。
図19(a)に示すように、実施例4に係るリフレクトアレイユニット30は、2個×2個の単位リフレクトアレイ20を敷き詰めた比較例2のリフレクトアレイに対し、単位リフレクトアレイ1.5個分のユニットスペースをあけて配置した単位リフレクトアレイの集合体から構成される。各単位リフレクトアレイ20の間のユニットスペースの長さは30.357mmで、リフレクトアレイユニット30の外形の一辺の長さは70.833mmとなる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図19(b)に示すように、θix=33゜で入射した電磁波が基準非対称反射方向であるθrx=0゜の反射光から4つの反射光に分かれる反射特性を示した。なお特性としては実施例3の反射特性(図18(b))と後述する実施例5の反射特性(図20(b))の間の振る舞いが見られる。
【0063】
図19(b)に示すように前記4つの反射光のピークは-18°のRCS-11.43dBsm、―6°の-7.49dBsm、6°の-7.59dBsm、18°の-12.53dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0064】
(実施例5)
図20は、実施例5に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図20(a)は平面図であり、図20(b)は反射特性である。
図20(a)に示すように、実施例5に係るリフレクトアレイユニット30は、2個×2個の単位リフレクトアレイ20を敷き詰めた比較例2のリフレクトアレイに対し、単位リフレクトアレイ2個分のユニットスペースをあけて配置した単位リフレクトアレイの集合体から構成される。各単位リフレクトアレイ20の間のユニットスペースの長さは40.476mmで、リフレクトアレイユニット30の外形の一辺の長さは80.952mmとなる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図20(b)に示すように、θix=33゜で入射した電磁波が基準非対称反射方向であるθrx=0゜の反射光から5つの反射光に分かれる反射特性を示した。
【0065】
図20(b)に示すように前記5つの反射光のピークは-21°のRCS-13.04dBsm、―10°の-8.48dBsm、0°の-7.00dBsm、10°の-8.59dBsm、20°の-14.21dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0066】
(実施例6)
図21は、実施例6に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図21(a)は平面図であり、図21(b)は反射特性である。
図21(a)に示すように、実施例6に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけて構成された実施例3に係るリフレクトアレイユニットの中央に単位リフレクトアレイを追加した構成をとる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図21(b)に示すように、3つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)は実施例3の場合とほぼ変わらなかった。一方0°のRCSは実施例3の値よりも大きく、中央の単位リフレクトアレイからの反射が寄与しているものと推察される。
【0067】
図21(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-15°のRCS-12.35dBsm、0°の-4.87dBsm、15°の-13.11dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0068】
(実施例7)
図22は、実施例7に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図22(a)は平面図であり、図22(b)は反射特性である。
図22(a)に示すように、実施例7に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ1.5個分のユニットスペースをあけて構成された実施例4に係るリフレクトアレイユニットの中央に単位リフレクトアレイを追加した構成をとる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図22(b)に示すように、4つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)は実施例4の場合とほぼ変わらなかった。一方―15°未満の角度のRCSは実施例4の値よりも減少し、15°より大きい角度のRCSは実施例4の値よりも増加する傾向を示した。
【0069】
図22(b)に示すように前記4つの反射光のピークは-18°のRCS-14.11dBsm、―6°の-5.53dBsm、6°の-10.15dBsm、18°の-10.55dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0070】
(実施例8)
図23は、実施例8に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図23(a)は平面図であり、図23(b)は反射特性である。
図23(a)に示すように、実施例8に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ2個分のユニットスペースをあけて構成された実施例5に係るリフレクトアレイユニットの中央に単位リフレクトアレイを追加した構成をとる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図23(b)に示すように、5つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)は実施例5の場合とほぼ変わらなかった。一方0°、±20°付近のRCSは実施例5の値より減少し、±10°付近のRCSは実施例5の値より増加する傾向を示した。
【0071】
図23(b)に示すように前記5つの反射光のピークは-21°のRCS-15.68dBsm、―10°の-6.46dBsm、0°の-9.56dBsm、10°の-6.1dBsm、21°の-16.82dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0072】
(実施例9)
図24は、実施例9に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図24(a)は平面図であり、図24(b)は反射特性である。
図24(a)に示すように、実施例9に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけつつリフレクトアレイの数を増加させたもので、単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけてなる実施例3に係るリフレクトアレイユニットを中央に配置し、さらに対角線にそって単位リフレクトアレイ1個分あけて延長した四隅にリフレクトアレイを配置した構成をとる。本実施例のリフレクトアレイユニット30の外形の一辺の長さは141.666mmとなる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図24(b)に示すように、3つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)は実施例3の場合とほぼ変わらなかった。一方各ピーク角度のRCSは実施例3の値よりも増加する傾向を示した。
【0073】
図24(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-16°のRCS-4.18dBsm、0°の-0.78dBsm、16°の-5.00dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0074】
(実施例10)
図25は、実施例10に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図25(a)は平面図であり、図25(b)は反射特性である。
図25(a)に示すように、実施例10に係るリフレクトアレイユニット30は、実施例9と同様に単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけつつリフレクトアレイの数を増加させたもので、実施例9に係るリフレクトアレイユニットに対し、外形の4つの各辺に単位リフレクトアレイを1個分のユニットスペースをあけて2個ずつ追加した構成をとる。本実施例のリフレクトアレイユニット30の外径の一辺の長さは141.666mmとなる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図24(b)に示すように、3つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)は実施例3、9の場合とほぼ変わらなかった。一方各ピーク角度のRCSは実施例3、9の値よりも増加する傾向を示した。
【0075】
図24(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-16°のRCS2.03dBsm、0°の5.33dBsm、16°の0.99dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0076】
(実施例11)
図26は、実施例11に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図26(a)は平面図であり、図26(b)は反射特性である。
図26(a)に示すように、実施例11に係るリフレクトアレイユニット30は、実施例9に係るリフレクトアレイユニットから中央に配置した実施例3に係るリフレクトアレイユニットを取り除いた構成をとる。各単位リフレクトアレイ20の間のユニットスペースの長さは101.19mmで、リフレクトアレイユニット30の外形の一辺の長さは141.666mmとなる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図26(b)に示すように、実施例3、9、10のように顕著なピーク強度をもつ反射光に分かれるというよりも、ほぼ同じピーク強度を有する反射光が多数発生する傾向を示した。
【0077】
図26(b)に示すように実施例3、9、10に対応する3つの反射光のピークは-16°のRCS-10.29dBsm、0°の-6.90dBsm、16°の-11.05dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0078】
(実施例12)
図27は、実施例12に係るリフレクトアレイユニットの平面図と反射特性を示す図である。図27(a)は平面図であり、図27(b)は反射特性である。
図27(a)に示すように、実施例12に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ0.5個分のユニットスペースをあけてなる実施例1のリフレクトアレイユニット2個をxy平面の第二、第四象限に、また単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけてなる実施例3のリフレクトアレイユニット2個をxy平面の第一、第三象限に、互いに単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースを有するように組み合わせて配置した構成をとる。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分で透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図27(b)に示すように、反射特性は実施例1と実施例3の反射特性の重ね合わせになる様子がみられた。
【0079】
図27(b)に示すように実施例3、9、10に対応する3つの反射光のピークは-15°のRCS0.52dBsm、0°の-0.68dBsm、14°の-0.14dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0080】
支持体12を備えた第二実施形態の実施例について以下に説明する。
(実施例13)
図28は、実施例13に係るリフレクトアレイユニットの平面図、断面図および反射特性を示す図である。図28(a―1)は平面図であり、図28(a―2)は断面図であり、図28(b)は反射特性である。
図28(a―1)(a-2)に示すように、実施例13に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけてなる実施例3のリフレクトアレイユニットが支持体12上に配置した構成をとる。支持体12はポリスチレンを材料とするスタイロフォームで、厚さ30mm、誘電率ε‘=1.02、tanδ=0で構成される。支持体以外の構成は実施例3と同様である。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分や支持体を透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図28(b)に示すように、3つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)やRCSなど反射特性は実施例3の場合とほぼ変わらなかった。
【0081】
図28(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-15°のRCS-9.71dBsm、0°の-6.41dBsm、14°の-10.39dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0082】
(実施例14)
図29は、実施例14に係るリフレクトアレイユニットの平面図、断面図および反射特性を示す図である。図29(a―1)は平面図であり、図29(a―2)は断面図であり、図29(b)は反射特性である。
図29(a―1)(a-2)に示すように、実施例14に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけてなる実施例3のリフレクトアレイユニットが支持体12上に配置した構成をとる。支持体12はアクリルを材料とするアクリル板で、厚さ30mm、誘電率ε‘=3.3、tanδ=0で構成される。支持体以外の構成は実施例3と同様である。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分や支持体を透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図29(b)に示すように、3つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)は実施例3の場合とほぼ変わらなかったが、基準非対称反射方向(0°)のピーク強度は減少し正反射方向(33°)のRCSが増加するなど全体的に反射が散逸する傾向がみられた。
【0083】
図29(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-15°のRCS-6.91dBsm、―1°の-7.42dBsm、14°の-11.51dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0084】
(実施例15)
図30は、実施例15に係るリフレクトアレイユニットの平面図、断面図および反射特性を示す図である。図30(a―1)は平面図であり、図30(a―2)は断面図であり、図30(b)は反射特性である。
図30(a―1)(a-2)に示すように、実施例15に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけてなる実施例3のリフレクトアレイユニットが支持体12上に配置した構成をとる。支持体12はポリスチレンを材料とするスタイロフォームで、厚さ5mm、誘電率ε‘=1.02、tanδ=0で構成される。支持体以外の構成は実施例3と同様である。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分や支持体を透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図30(b)に示すように、3つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)やRCSなど反射特性は実施例3の場合とほぼ変わらなかった。
【0085】
図30(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-15°のRCS-9.48dBsm、0°の-6.39dBsm、14°の-10.57dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0086】
(実施例16)
図31は、実施例16に係るリフレクトアレイユニットの平面図、断面図および反射特性を示す図である。図31(a―1)は平面図であり、図31(a―2)は断面図であり、図31(b)は反射特性である。
図31(a―1)(a-2)に示すように、実施例16に係るリフレクトアレイユニット30は、単位リフレクトアレイ1個分のユニットスペースをあけてなる実施例3のリフレクトアレイユニットが支持体12上に配置した構成をとる。支持体12はアクリルを材料とするアクリル板で、厚さ5mm、誘電率ε‘=3.3、tanδ=0で構成される。
支持体以外の構成は実施例3と同様である。
平面波でリフレクトアレイユニット30に照射される入射光はユニットスペース部分や支持体を透過するものもあるが、HFSSを用いて解析したところ、図31(b)に示すように、3つに分かれる反射光のピーク強度を示す反射方向(ピーク角度)は実施例3の場合とほぼ変わらなかったが、基準非対称反射方向(0°)のピーク強度は減少し正反射方向(33°)のRCSが増加するなど全体的に反射が散逸する傾向がみられた。
【0087】
図31(b)に示すように前記3つの反射光のピークは-15°のRCS-9.49dBsm、―1°の-5.99dBsm、14°の-9.91dBsmにみられる。したがって基準非対称反射方向の±1度の範囲を除く角度に、RCSがー15dBsm以上のピーク強度を有する2以上の反射光を有し、最大値とそれ以外のRCSの差が10dBsm以内であることから合格となる。
【0088】
(考察)
以上の実施例において、リフレクトアレイp個分のユニットスペースというときは、実際にはリフレクトアレイに含まれる反射制御領域の長さのp倍を意味する(ただし反射制御領域の長さは、反射制御領域に含まれる複数の単位セルが並ぶ方向の長さ(Lx)を意味する。)。したがって実施例の結果によると、ユニットスペースの長さが反射制御領域の長さの0.75(3/4)であるリフレクトアレイユニットに対し、基準非対称反射方向の反射角度の前後に十分なピーク強度を有する反射光が分裂するように発生し広域化が実現されることから、少なくとも反射制御領域の長さの1/3以上であれば同様の効果が実現可能である。そしてユニットスペースの長さが増加するに従い、基準非対称反射方向の前後に分裂する反射光の数が増加する傾向がみられ、より広域に反射波を届けることが可能となる。
【0089】
特にユニットスペースの長さが反射制御領域の長さのn倍(nは自然数)の場合、基準非対称反射方向と同様の方向にもピーク強度を有する反射光が発生することから、設計が容易となり好ましい(実施例3、5)。
これに対し、ユニットスペースの長さが反射制御領域の長さの(n+1/2)倍(nは0または自然数)の場合、基準非対称反射方向にピーク強度を有する反射光は発生せず、その前後の角度でほぼ同じピーク強度を有する反射光が発生する傾向がみられた(実施例1、4)。
【0090】
ユニットスペースの長さが反射制御領域の長さのn倍(nは自然数)で、かつ 正方配置する四隅のリフレクトアレイに加えリフレクトアレイユニットの中央にリフレクトアレイを配置する場合、基準非対称反射方向のピーク強度が増加する場合がある(実施例6)。
【0091】
ユニットスペースの長さを一定にして配置するリフレクトアレイの数を増加させた場合、リフレクトアレイの数が多くなるほど反射のピーク強度は増加する傾向がみられた(実施例9、10)。
【0092】
ユニットスペースの長さが異なるリフレクトアレイユニットを混在させて配置した構成のリフレクトアレイユニットの反射特性は、構成要素となるそれぞれのリフレクトアレイの反射特性の重ね合わせになる(実施例12)。
【0093】
支持体を備えるリフレクトアレイユニットの場合、支持体の誘電率が3.3程度の高い値をとると反射特性において、基準非対称反射方向のピーク強度が減少し正反射方向のRCSが増加するなど全体的に反射が散逸する傾向がみられることから、誘電率は1以上1.5以下であることが望ましい(実施例13~16)。また当該数値範囲の誘電率の樹脂などの誘電体であればユニットスペースに充填する材料として用いることができる。
【0094】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、単位リフレクトアレイの構成は比較例1で説明した素子パターン、単位セル、反射制御領域などの例に限られるものではない。またリフレクトアレイユニットは必ずしも複数のリフレクトアレイを平面に配置することに限定されず、本発明の趣旨の範囲内で曲面に配置することも可能である。
【0095】
本発明の内容となり得る態様を以下に述べる、ただしこれに限られるものではない。
(態様1)
素子パターン、誘電体層、およびグランド層を含むリフレクトアレイが平面内に複数配置され、
前記リフレクトアレイの間にはユニットスペースが存在し、
前記リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、
前記反射制御領域は全ての前記リフレクトアレイで同一であることを特徴とするリフレクトアレイユニット。
(態様2)
前記ユニットスペースの長さが、前記反射制御領域の長さの1/3以上であることを特徴とする、態様1に記載のリフレクトアレイユニット。
(態様3)
前記ユニットスペースの長さが、前記反射制御領域の長さの自然数倍であることを特徴とする、態様1に記載のリフレクトアレイユニット。
(態様4)
前記ユニットスペースの長さがいずれも同一であることを特徴とする、態様1~3のいずれか一つに記載のリフレクトアレイユニット。
(態様5)
正方配置する四隅の前記リフレクトアレイに加え、中央に配置する前記リフレクトアレイを含むことを特徴とする、態様1~4のいずれか一つに記載のリフレクトアレイユニット。
(態様6)
前記リフレクトアレイが、支持体上に配置されていることを特徴とする、態様1~5のいずれか一つに記載のリフレクトアレイユニット。
(態様7)
前記支持体の比誘電率が1以上1.5以下であることを特徴とする、態様6に記載のリフレクトアレイユニット。
(態様8)
前記素子パターンの形状はクロスパッチを含み、
前記反射制御領域内において、前記素子パターンのx軸方向の幅である第一素子幅wxまたは/かつy軸方向の幅である第二素子幅wyは、少なくとも2つの単位セルそれぞれに配置される素子パターン毎に異なることを特徴とする、態様1~7のいずれか一つに記載のリフレクトアレイユニット。
【符号の説明】
【0096】
1、1―1、1 ―1 、1 ―1 …素子パターン、
2…誘電体層、
3…グランド層、
4、4-4、4 -4 、4 -4 …単位セル、
5、5a―5c、5x、5y…反射制御領域、
6…ユニットスペース
7 機能層、
8 保護層、
9 接着層、
10 意匠層、
11 設置層、
12…支持体
20、20a-20h…リフレクトアレイ
30…リフレクトアレイユニット
31…基地局
32…電波遮蔽物
33…不感地帯
34…電波領域
【要約】
【課題】本発明は、反射角を自由に設計でき、空間の広い範囲に電波を届けること(広域化)が可能で良品率の高いリフレクトアレイユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のリフレクトアレイユニットは、素子パターン、誘電体層、およびグランド層を含むリフレクトアレイが平面内に複数配置され、リフレクトアレイの間にはユニットスペースが存在し、リフレクトアレイは少なくとも1つの反射制御領域を含み、反射制御領域は全ての前記リフレクトアレイで同一であることを特徴とする。ユニットスペースの長さは、反射制御領域の長さの1/3以上でよく、反射制御領域の長さの自然数倍であることが好ましい。正方配置する四隅のリフレクトアレイに加え、中央にリフレクトアレイを配置する構成も含まれる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
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図29
図30
図31