(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】水処理プロセスのプロセス計算方法、計算プログラムおよび計算システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20241203BHJP
【FI】
C02F1/00 Z
(21)【出願番号】P 2024501926
(86)(22)【出願日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2024000200
【審査請求日】2024-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2023011786
(32)【優先日】2023-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 義之
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-188457(JP,A)
【文献】特開2018-167143(JP,A)
【文献】特開2017-966(JP,A)
【文献】特開2017-170274(JP,A)
【文献】特開2003-114989(JP,A)
【文献】特開2002-62927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 1/44
G06Q 50/00
G06Q 50/06
G05B 23/02
G05B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の水処理単位プロセスを有する水処理プロセスのプロセス計算方法であって、
水処理単位プロセスのユニットアイコンを配置及びユニットアイコン間を配線する工程によって形成された水処理プロセスフローについて、
前記ユニットアイコンに原水ユニットアイコンと、生産水ユニットアイコンまたは排水ユニットアイコンと、が少なくとも1つずつ含まれ、下記A工程からD工程を備える
ことを特徴とする水処理プロセスのプロセス計算方法。
A.
下記A1からA5の各工程を含む、前記ユニットアイコンの計算順を決定する工程
A1.前記原水ユニットアイコンの1つを選択し、選択されている前記原水ユニットアイコンの前記計算順に「1」を設定した後に、前記原水ユニットアイコンの選択を解除し、前記原水ユニットアイコンから出る流出配線を通過して1つ下流のユニットアイコンを選択し、下記A2工程に移行する工程
A2.前記A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの前記計算順に、前記水処理プロセスフローを形成する全ての前記ユニットアイコンに設定済みの計算順の最大値に1を加えた値を設定し、下記A3工程に移行する工程
A3.前記A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンが前記生産水ユニットアイコンまたは前記排水ユニットアイコンではない場合に下記A4工程に移行し、前記A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンが前記生産水ユニットアイコンまたは前記排水ユニットアイコンである場合に当該ユニットアイコンの選択を解除し下記A5工程に移行する工程
A4.前記A1および本A4および後述のA5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの選択を解除し、当該ユニットアイコンから出る流出配線の1つを通過して、1つ下流のユニットアイコンを選択し、前記A2工程に移行する工程
A5.前記水処理プロセスフローに、前記計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合に、当該流出配線が流入するユニットアイコンを選択して前記A2工程に移行し、前記計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がない場合に、前記A工程を終了する工程
B.前記A工程の後、前記計算順に沿って前記ユニットアイコン毎に処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算する工程
C.前記B工程の後、前記水処理プロセスフローについて物質収支またはエネルギー収支に矛盾が生じないよう原水または処理水の流量・水質・温度・水圧のうち前記B工程にて推算された少なくとも一つの項目を調整する工程
D.前記C工程の後、前記B工程及び前記C工程の繰り返し実行の要否を判定する工程
【請求項2】
前記A工程の前記ユニットアイコンの計算順を決定する工程の前または後に、
前記水処理プロセスフローについて流量の収支を計算する工程、
または、前記水処理プロセスフローについて水質の収支を計算する工程、
の少なくともいずれかを備えること、
を特徴とする請求項1に記載の水処理プロセスのプロセス計算方法。
【請求項3】
前記B工程において処理水の流量を推算した場合に、
前記C工程において前記ユニットアイコン毎の物質収支の誤差が予め定められた規定値以下となるよう、原水または処理水の流量を調整すること、
を特徴とする請求項
1に記載の水処理プロセスのプロセス計算方法。
【請求項4】
前記B工程の前記計算順に沿って前記ユニットアイコン毎に処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算する工程において、
前記水処理プロセスフローに流入配線が少なくとも2つ以上存在する混合ユニットアイコンが含まれる場合であって、
かつ当該ユニットアイコンの流入配線のうち少なくとも1つの流入配線の流量・水質・温度・水圧が入力または計算によって決定しており、少なくとも1つの別の流入配線の流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない場合に、
流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない前記流入配線に流量・水質・温度・水圧が決定している前記流入配線の流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上を入力して処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算すること、
を特徴とする請求項
1に記載の水処理プロセスのプロセス計算方法。
【請求項5】
前記ユニットアイコンが下記の少なくともいずれかであること、を特徴とする請求項
1に記載の水処理プロセスのプロセス計算方法。
1.水流(原水、生産水、排水)
2.水処理装置(沈降分離、浮上分離、遠心分離、凝集処理、撹拌処理、好気処理、嫌気処理、ろ過、圧搾、ろ布、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、促進酸化、
イオン交換、吸着、吸収、脱気、晶析、蒸留、熱交換、ミネラル添加)
3.エネルギー回収装置(逆転ポンプ式、水車式、圧力交換式、ターボチャージャー)
4.薬液注入装置
5.脱気装置
6.機器(ポンプ、ブロア、コンプレッサー)
7.配管接続(混合、分岐)
【請求項6】
前記水処理プロセスフローに循環の配線を備える場合に、
前記A4工程の後に移行する下記A6工程を備えるとともに、
前記A5工程において、前記計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合に、当該流出配線が流入するユニットアイコンを選択して前記A6工程に移行することを特徴とする、
請求項
1に記載の水処理プロセスのプロセス計算方法。
A6.前記A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの前記計算順が決定している場合に、前記A5工程に移行し、
前記A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの前記計算順が決定していない場合に、前記A2工程に移行する工程
【請求項7】
前記水処理プロセスフローに前記原水ユニットアイコンが2つ以上含まれる場合に、
前記A5工程において、
前記計算順が決定したユニットアイコンの1つ下流に、前記計算順が決定していないユニットアイコンがない場合に移行する下記A7工程を備えるとともに、
前記A2,A3,A4,A6の各工程が、前記A1,A4,A5,A7のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンを対象とするものであることを特徴とする、
請求項
6に記載の水処理プロセスのプロセス計算方法。
A7.前記水処理プロセスフローに、前記計算順が決定していない前記原水ユニットアイコンがある場合に、当該アイコンを選択して前記A2工程に移行し、
前記計算順が決定していない前記原水ユニットアイコンがない場合に前記A工程を終了する工程
【請求項8】
前記D工程の前記B工程及び前記C工程の繰り返し実行の要否を判定する工程おいて、
前記水処理プロセスフローの物質収支の誤差が予め定められた規定値以下である場合、
前記生産水ユニットアイコンおよび前記排水ユニットアイコンの少なくともいずれか1つにおける前記B工程の推算結果と前回推算結果との差異が予め定められた規定値以下である場合、
の少なくともいずれか、または両方を満たすまで、繰り返し実行を要すると判定することを特徴とする、
請求項
1に記載の水処理プロセスのプロセス計算方法。
【請求項9】
複数の水処理単位プロセスを有する水処理プロセスのプロセス計算をするためにコンピュータを、
水処理単位プロセスのユニットアイコンを配置及びユニットアイコン間を配線する水処理プロセスフロー入力手段によって形成され、水処理プロセスフロー記憶手段に保存された水処理プロセスフローについて、
前記水処理プロセスに、原水ユニットアイコンと、生産水ユニットアイコンまたは排水ユニットアイコンと、が少なくとも1つずつ含まれ、
下記AからD
の各手段で使用するために前記水処理プロセスフロー記憶手段から前記水処理プロセスフローを読み込む手段
として機能させることを特徴とする、水処理計算プログラム。
A.ユニットアイコン計算順決定ルール記憶手段に予め保存された
下記A1からA5の各手段からなる、前記ユニットアイコンの計算順を決定する手段
A1.前記原水ユニットアイコンの1つを選択し、選択されている前記原水ユニットアイコンの前記計算順に「1」を設定した後に、前記原水ユニットアイコンの選択を解除し、前記原水ユニットアイコンから出る流出配線を通過して1つ下流のユニットアイコンを選択し、下記A2手段に移行する手段
A2.前記A1および後述のA4,A5のいずれかの手段において選択されたユニットアイコンの前記計算順に、前記水処理プロセスフローを形成する全ての前記ユニットアイコンに設定済みの計算順の最大値に1を加えた値を設定し、下記A3手段に移行する手段
A3.前記A1および後述のA4,A5のいずれかの手段において選択されたユニットアイコンが前記生産水ユニットアイコンまたは前記排水ユニットアイコンではない場合に下記A4手段に移行し、前記A1および後述のA4,A5のいずれかの手段において選択されたユニットアイコンが前記生産水ユニットアイコンまたは前記排水ユニットアイコンである場合に当該ユニットアイコンの選択を解除し下記A5手段に移行する手段
A4.前記A1および本A4および後述のA5のいずれかの手段において選択されたユニットアイコンの選択を解除し、当該ユニットアイコンから出る流出配線の1つを通過して、1つ下流のユニットアイコンを選択し、前記A2手段に移行する手段
A5.前記水処理プロセスフローに、前記計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合に、当該流出配線が流入するユニットアイコンを選択して前記A2手段に移行し、前記計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がない場合に、前記A手段を終了する手段
B.前記計算順に沿って前記ユニットアイコン毎に処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算する手
段
C.前記水処理プロセスフローについて物質収支またはエネルギー収支に矛盾が生じないよう原水または処理水の流量・水質・温度・水圧のうち前記B手段にて推算された少なくとも一つの項目を調整する手
段
D.前記B手段及び前記C手段の繰り返し実行の要否を判定する手段、
水処理プロセス計算結果出力手段で使用するために、水処理プロセス計算結果記憶手段に水処理プロセス計算結果を保存する手
段
【請求項10】
前記A手段の前記ユニットアイコンの計算順を決定する手段の前または後に、
前記水処理プロセスフローについて流量の収支を計算する手段、
または、前記水処理プロセスフローについて水質の収支を計算する手段、
の少なくともいずれかとしてさらに前記コンピュータを機能させることを特徴とする、請求項
9に記載の水処理計算プログラム。
【請求項11】
前記B手段において処理水の流量を推算した場合に、
前記C手段が、前記ユニットアイコン毎の物質収支の誤差が予め定められた規定値以下となるよう、原水または処理水の流量を調整する、
ことを特徴とする請求項
9に記載の水処理計算プログラム。
【請求項12】
前記B手段の前記計算順に沿って前記ユニットアイコン毎に処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算する手段が、
前記水処理プロセスフローに流入配線が少なくとも2つ以上存在する混合ユニットアイコンが含まれる場合であって、かつ当該ユニットアイコンの流入配線のうち少なくとも1つの流入配線の流量・水質・温度・水圧が入力または計算によって決定しており、少なくとも1つの別の流入配線の流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない場合に、
流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない前記流入配線に流量・水質・温度・水圧が決定している前記流入配線の流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上を入力して処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算することを特徴とする、
請求項
9に記載の水処理計算プログラム。
【請求項13】
前記ユニットアイコンが下記の少なくともいずれかであることを特徴とする
請求項
9に記載の水処理計算プログラム。
1.水流(原水、生産水、排水)
2.水処理装置(沈降分離、浮上分離、遠心分離、凝集処理、撹拌処理、好気処理、嫌気処理、ろ過、圧搾、ろ布、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、促進酸化、
イオン交換、吸着、吸収、脱気、晶析、蒸留、熱交換、ミネラル添加)
3.エネルギー回収装置(逆転ポンプ式、水車式、圧力交換式、ターボチャージャー)
4.薬液注入装置
5.脱気装置
6.機器(ポンプ、ブロア、コンプレッサー)
7.配管接続(混合、分岐)
【請求項14】
前記水処理プロセスフローに循環の配線を備える場合に、
前記A4手段の後に、下記A6手段としてさらに前記コンピュータを機能させるとともに、
前記A5手段が、前記計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合に、当該流出配線が流入するユニットアイコンを選択して前記A6手段に移行することを特徴とする、
請求項
9に記載の水処理計算プログラム。
A6.前記A1,A4,A5のいずれかの手段において選択されたユニットアイコンの前記計算順が決定している場合に、前記A5手段に移行し、前記A1,A4,A5のいずれかの手段において選択されたユニットアイコンの前記計算順が決定していない場合に、前記A2手段に移行する手段
【請求項15】
前記水処理プロセスフローに前記原水ユニットアイコンが2つ以上含まれる場合に、
前記A5手段が、前記計算順が決定したユニットアイコンの1つ下流に、前記計算順が決定していないユニットアイコンがない場合に移行する下記A7手段としてさらに前記コンピュータを機能させるとともに、
前記A2,A3,A4,A6の各手段が、前記A1,A4,A5,A7のいずれかの手段において選択されたユニットアイコンを対象とするものであることを特徴とする、
請求項
14に記載の水処理計算プログラム。
A7.前記水処理プロセスフローに、前記計算順が決定していない前記原水ユニットアイコンがある場合に、当該アイコンを選択して前記A2手段に移行し、
前記計算順が決定していない前記原水ユニットアイコンがない場合に前記A手段を終了する手段
【請求項16】
前記D手段が、
前記水処理プロセスフローの物質収支の誤差が予め定められた規定値以下である場合、
前記生産水ユニットアイコンおよび前記排水ユニットアイコンの少なくともいずれか1つにおける前記B手段の推算結果と前回推算結果との差異が予め定められた規定値以下である場合、
の少なくともいずれか、または両方を満たすまで、前記B手段及び前記C手段の繰り返し実行を要すると判定することを特徴とする、
請求項
9に記載の水処理計算プログラム。
【請求項17】
請求項
9~16のいずれか1項に記載の水処理計算プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【請求項18】
請求項
17に記載の記録媒体がサーバーであって、前記サーバーにブラウザを介してアクセスして水処理プロセスの計算が可能なことを特徴とする水処理プロセス計算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水を処理して処理水を得る水処理プロセスのプロセス計算方法、計算プログラムおよび計算システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理プロセスは、沈降分離、浮上分離、遠心分離、凝集処理、撹拌処理、好気処理、嫌気処理、ろ過、圧搾、ろ布、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、促進酸化、イオン交換、吸着、吸収、脱気、晶析、蒸留、熱交換、ミネラル添加などの水処理装置を、原水性状および生産水用途に合わせて選択または組み合わせて使用している。
【0003】
またその中でも近年、膜分離法が、省エネルギー・スペース、および処理水質向上等の特長を有するため、様々な分野で拡大している。例えば、精密ろ過膜や限外ろ過膜の、河川水や地下水や下水処理水から工業用水や水道水を製造する浄水プロセスへの適用や、逆浸透膜の、海水淡水化への適用などがあげられる。また、これらの分離膜の前処理として、沈降分離、浮上分離、遠心分離、凝集処理を組み合わせて、分離膜の運転性を安定化したり、分離膜の後処理にイオン交換を組み合わせて、純水製造として活用したりと、様々な水処理プロセスが考案・導入されている。
【0004】
この様な水処理プロセスにおいては各水処理装置を用いた水処理プロセスの処理フローを予め定めて、その処理フローに沿って水収支計算、熱収支計算および物質収支計算などの水処理プロセスの計算をコンピュータ上のシミュレーションソフトで実行するのが一般的である。
【0005】
特許文献1には、反応器や蒸留塔などのユニットを計算機上で接続して化学プロセス全体を模擬し、上流側から順に各ユニットの設計計算を実施していくシーケンシャルモジュール型の計算方法を用いて、化学プロセスの定常状態を推定するシミュレーション計算について記載されている。
【0006】
しかしながら、循環する流れを含むプロセス、つまり上流側のユニットに下流側ユニットの計算結果が与えられるプロセスにおいては、上流側のユニットを計算する時点では計算に必要な入力情報が不足し計算が不可能となるため、この計算方法を適用することは困難な場合があった。
【0007】
また、特許文献2には、上述の課題を鑑み、水処理システムの処理フロー図の作成、初期値の設定、各水処理装置ユニットについて水収支、熱収支、物質収支をそれぞれ順番に計算した後、各ユニットの設計計算(逆浸透膜エレメントの必要本数、ポンプの所要動力などの計算)を行うシミュレーション計算が記載されている。
【0008】
しかし、実際の水処理プロセスにおいては、各ユニットの水収支、熱収支、物質収支、設計計算は相互に影響するため、上述の方法では計算精度が低くなる場合がある。加えて、実際の水処理システムの設計においては、装置の設置スペースなどの制限により逆浸透膜エレメントの本数など設計条件が予め定まっている場合があり、最後に設計計算を行う上述の方法では所定の設計条件を満たす水収支や物質収支などを探索しながら繰り返し計算する必要があり、多大な手間を要する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】日本国特開平7-311762号公報
【文献】日本国特許第6107303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、原水を処理して処理水を得る水処理プロセスにおいて、循環する流れを含む複雑なプロセスを含めたあらゆる水処理プロセスを精度よく、かつ迅速に計算する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、
複数の水処理単位プロセスを有する水処理プロセスのプロセス計算方法であって、
水処理単位プロセスのユニットアイコンを配置及びユニットアイコン間を配線する工程によって形成された水処理プロセスフローについて、下記A工程からD工程を備えることを特徴とする水処理プロセスのプロセス計算方法、を提供する。
A.予め定められたルールに基づいて前記ユニットアイコンの計算順を決定する工程
B.前記A工程の後、前記計算順に沿って前記ユニットアイコン毎に処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算する工程
C.前記B工程の後、前記水処理プロセスフローについて物質収支またはエネルギー収支に矛盾が生じないよう原水または処理水の流量・水質・温度・水圧のうち前記B工程にて推算された少なくとも一つの項目を調整する工程
D.前記C工程の後、前記B工程及び前記C工程の繰り返し実行の要否を判定する工程
【発明の効果】
【0012】
本発明の水処理プロセスのプロセス計算方法によれば、循環する流れを含む複雑なプロセスを含めたあらゆる水処理プロセスを精度よく、かつ迅速に計算することが可能であり、それに伴い水処理プロセスの正確かつ速やかな設計に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る水処理プロセスの一例を示すフロー図である。
【
図2】実施形態に係る計算方法の一例を示すフロー図である。
【
図3】実施形態に係る計算方法の一例を示すフロー図である。
【
図4】実施形態に係る計算方法の一例を示すフロー図である。
【
図5】実施形態に係る計算方法の一例を示すフロー図である。
【
図6】実施形態に係る計算方法の一例を示すフロー図である。
【
図7】実施形態に係る水処理プロセスの一例を示すフロー図である。
【
図8】実施形態に係る水処理プロセスの一例を示すフロー図である。
【
図9】実施形態に係る水処理プロセスの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す実施態様に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下では、限外ろ過膜および逆浸透膜を用いた水処理プロセスフローを例に説明するが、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0015】
本実施形態の水処理プロセスフローは、例えば、
図1に示すように、原水1を、限外ろ過膜2および逆浸透膜3の膜処理法で処理して生産水4を得るようなフローである。なお、水処理プロセスにおいては、水流として、原水、生産水および排水の3種類が必ず存在し、原水を各水処理装置で処理して、最終的に生産水と排水に分離される。原水は水処理プロセスで処理する溶液のことであり、河川水、地下水、海水、下水処理水、工場廃水、培養液などが例として挙げられる。
【0016】
原水1は、原水ポンプ5で限外ろ過膜2に送液されろ過される。
図1では、限外ろ過膜について記載したが、精密ろ過膜でも問題ない。また、限外ろ過膜または精密ろ過膜で使用される分離膜の孔径としては、多孔質であれば特に限定しないが、所望の被処理水の性質や水量によって、孔径が異なるものを使用することもある。分離膜の形状としては、中空糸膜、平膜、管状膜、モノリス膜等があるが、いずれでも構わない。また、分離膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、およびクロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリビニルアルコールおよびポリエーテルスルホンやセラミック等の無機素材からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含んでいると好ましく、さらに膜強度や耐薬品性の点からはポリフッ化ビニリデン(PVDF)がより好ましく、親水性が高く耐汚れ性が強いという点からはポリアクリロニトリルがより好ましい。
【0017】
また、ここまでは限外ろ過膜として説明してきたが、この膜をケーシングに挿入しモジュールとし、かつそのモジュールを運転条件(原水性状、ろ過水量)によって、複数本使用してユニットとすることが一般的である。膜ろ過方式としては全量ろ過型モジュールでもクロスフローろ過型であっても差し支えないが、エネルギー消費量が少ないという点から全量ろ過型である方が好ましい。さらに加圧型であっても浸漬型であっても差し支えないが、高流束運転が可能であるという点から加圧型である方が好ましい。また、膜の外側から原水を供給し、内側から透過水を得る外圧式であっても、膜の内側から原水を供給し、外側から透過水を得る内圧式であっても差し支えないが、前処理の簡便さの観点から外圧式である方が好ましい。
【0018】
図1では限外ろ過膜の加圧型について図示したが、浸漬型分離膜の場合は、図示はしないが、被処理液を浸漬型分離膜でろ過するために、浸漬型膜分離の二次側にポンプ等を設けて吸引してもかまわないし、水頭圧力差を駆動力としてろ過をするため、ろ過水槽の液面が、被処理液槽の液面よりも低くなるようにしてもよい。
【0019】
浸漬型膜分離の場合は、連続的または間欠的にエアブロワーから供給される空気によって空気洗浄を行う。エアブロワーから浸漬型分離膜下部に設置される散気管を通して浸漬膜に空気を供給する。これらによって生じる液体または気液混相の膜面に平行な流れが、膜面に付着した懸濁物を膜面から剥離する。また通常運転シーケンスは、ろ過工程と停止工程からなり、両工程中もエアーブロアによる空洗は維持したまま、ろ過工程で蓄積した懸濁物を停止工程で膜面から剥離しながら運転するのが一般的である。
【0020】
ここで、浸漬型分離膜を構成する膜エレメントに用いられる膜は、特に限定されるものではなく、平膜、中空糸膜のいずれでもよい。膜の構造は、特に限定されるものではなく、例えば、平膜エレメント構造や、平膜がスパイラル状に巻かれた平膜エレメント構造、透過側の面が互いに対向するように配置された2枚の平膜と、平膜間に設けられた集水流路とを有する平膜対、および前記平膜の周縁部において平膜間を封止する封止部を含み、可とう性を有する平膜エレメント構造、さらには中空糸膜を複数本束ねた中空糸膜エレメント構造、のいずれを用いてもよい。
【0021】
逆浸透膜は、逆浸透膜エレメントとして加工され装置に設置され、平膜状の膜を集水管の周囲に巻囲したスパイラル型エレメントや、プレート型支持板の両面に平膜を貼ったものをスペーサーを介して一定の間隔で積層してモジュール化したプレート・アンド・フレーム型エレメント、さらには、管状膜を用いたチューブラー型エレメント、中空糸膜を束ねてケースに収納した中空糸膜エレメントがある。エレメントの形態としては、いずれの形態であってもよいが、操作性や互換性の観点からはスパイラル型エレメントを使用するのが好ましい。なお、エレメント本数は、膜性能に応じて任意に設定することができる。素材としては例えば、ポリアミド系、ポリピペラジンアミド系、ポリエステルアミド系、あるいは水溶性のビニルポリマーを架橋したものなどを使用することができ、その膜構造としては、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片面の膜に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有するもの(非対称膜)や、このような非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有するもの(複合膜)などを使用することができる。しかしながら、高造水量のためには複合膜であることが好ましく、中でも、透過水量、耐薬品性等の点からポリアミド系複合膜が、さらにはピペラジンポリアミド系複合膜が好ましい。
【0022】
限外ろ過膜2は、ろ過工程を規定時間経過したら定期的に物理洗浄工程(逆流洗浄、空気洗浄、排水、給水)を実施して、限界ろ過膜に補足された懸濁物質(ファウリング)が除去しながら運転される。逆洗洗浄には、限外ろ過膜2のろ過水を使用するのが一般的であり、ろ過水配線の分岐6から分岐して、ろ過水で逆洗するか、図示はしないが、ろ過水を一旦貯留するろ過水タンクから逆洗ポンプで限外ろ過膜に送液する。また、空気洗浄のために空洗ブロア7が設置される。図示では空洗ブロアとしているが、空気発生源は、コンプレッサーであっても構わないが、コンプレッサーの場合は、空気中の油分が分離膜に供給されないようオイルフリータイプであることが好ましい。
【0023】
また、ろ過と物理洗浄を複数回繰り返した後、薬液強化逆洗(CEB)を行うことが好ましい。CEBは、逆洗時に図示はしないが逆洗水薬液注入ポンプを用いて、逆洗水に薬液を供給することによって行われる。
【0024】
薬液としては、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等の薬剤を含有する水溶液が使用できる。とりわけ、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤は、海水、河川水、下廃水処理水などの有機物を含んだ汚染物質を除去するのに効果的であり有効である。次亜塩素酸ナトリウムの濃度は10mg/Lから10000mg/Lであることが好ましい。10mg/Lより薄くなると洗浄効果が十分で無く、10000mg/Lより濃くなると薬剤のコストが高くなり不経済となるからである。このような点から、100mg/Lから5000mg/Lであることがより好ましい。
【0025】
薬液を添加した後は、一定時間の接触時間を設けたほうが、洗浄効果は高くなる。膜と薬液を接触させる時間は5分~3時間程度が好ましい。あまり接触時間が短いと洗浄力が弱く、長すぎると装置を止めている時間が長くなり、装置の運転効率が落ちるため経済的に不利となるためである。
【0026】
次に、限外ろ過膜2のろ過水は、供給ポンプ8で送液され、高圧ポンプ9で昇圧されてから逆浸透膜3に供給される。供給ポンプ8と高圧ポンプ9の間には、逆浸透膜3のファウリングやスケールを抑制するため、薬品注入装置10で殺菌剤やスケール防止剤などの薬品が注入される。
【0027】
また、逆浸透膜3では、海水淡水化など原水の塩濃度が高い場合、有効な浸透圧を得るため高圧ポンプ9で供給圧を8MPa程度まで昇圧することがある。そこで、そのエネルギーを有効に活用するため、エネルギー回収装置11が設置される場合がある。図示したエネルギー回収装置は、圧力交換式であり、エネルギー回収装置本体と昇圧ポンプで構成されている。このエネルギー回収装置は、逆浸透膜3から排出される濃縮水の圧力を、供給ポンプ8と高圧ポンプ9の中間から分岐12で分岐した逆浸透膜の供給水に圧力を付加するものである。逆浸透膜3の濃縮水は、逆浸透膜3の原水側流路で圧力が損失されてから濃縮水として排出され、かつ、濃縮水配線の配管圧損やエネルギー回収装置の圧損などで逆浸透膜3の供給圧よりも低く、これを供給ポンプ8と高圧ポンプ9の中間から分岐した逆浸透膜の供給水に圧力を付加しても、高圧ポンプ9の吐出圧よりも低圧となるため、昇圧ポンプが設置され昇圧できるようになっている。そして、昇圧された供給水は、高圧ポンプ9と逆浸透膜3の中間で混合13にて合流される。図示では、圧力交換式を示したが、逆転ポンプ式、水車式およびターボチャージャーであっても構わない。
【0028】
このように、水処理プロセスのフローは、水流(原水、生産水、排水)、水処理装置(限外ろ過膜、逆浸透膜(図示はしないが、沈降分離、浮上分離、遠心分離、凝集処理、撹拌処理、好気処理、嫌気処理、ろ過、圧搾、ろ布、ナノ濾過膜、促進酸化、イオン交換、吸着、吸収、脱気、晶析、蒸留、熱交換、ミネラル添加を使用しても良い))、エネルギー回収装置(逆転ポンプ式、水車式、圧力交換式、ターボチャージャー)、薬液注入装置、機器(ポンプ、ブロア、コンプレッサー、タンク)、配管接続(混合、分岐)の組み合わせで構成されており、これらを個別にかつ連携しながら、水処理プロセス計算が実行される。
【0029】
よって、これらの要素を用いて処理フローを変更しながら要求される仕様を検討する必要があり、ユニットアイコンを配置及びユニットアイコン間に水処理プロセスの流れに沿った向きを有する配線を接続することで水処理プロセスフローを作成、変更することができる。
【0030】
ここで、ユニットアイコンは、水処理単位プロセスを意味しており、下記の少なくともいずれかであることを特徴としている。
A.水流(原水、生産水、排水)
B.水処理装置(沈降分離、浮上分離、遠心分離、凝集処理、撹拌処理、好気処理、嫌気処理、砂ろ過、圧搾、ろ布、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、促進酸化、イオン交換、吸着、吸収、脱気、晶析、蒸留、熱交換、ミネラル添加)
C.エネルギー回収装置(逆転ポンプ式、水車式、圧力交換式、ターボチャージャー)
D.薬液注入装置
E.機器(ポンプ、ブロア、コンプレッサー、タンク)
F.配管接続(混合、分岐)
【0031】
図2は、ユニットアイコンおよびユニットアイコン間の配線によって作成された水処理プロセスフローのプロセス計算方法の一例を示すフロー図であり、A.予め定められたルールに基づいてユニットアイコンの計算順を決定する工程と、B.A工程の後、計算順に沿ってユニットアイコン毎に処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算する工程と、C.B工程の後、水処理プロセスフローについて物質収支またはエネルギー収支に矛盾が生じないよう処理水の流量・水質・温度・水圧のうちB工程にて推算された少なくとも一つの項目を調整する工程と、D.C工程の後、B工程及びC工程の繰り返し実行の要否を判定する工程と、を備えるものである。
【0032】
また、実際の水処理プロセス設計では要求仕様として流量が予め定まっている場合があり、
図3に示すように、A工程の前または後に流量収支に矛盾が生じないように各配線の流量を決定してもよい。
【0033】
同様に、要求仕様として塩などの水質が予め定まっている場合があり、A工程の前または後に水質収支に矛盾が生じないように各配線の水質を決定してもよい。
【0034】
A工程の計算順を決定するルールは、特に限定されるものではなく、例えば、ユニットアイコンを画面に配置した順に計算順を決定するルール、ユーザーが配線を接続した順に計算順を決定するルール、画面の最も左上に設置されたユニットアイコンから右下に向かって計算順を決定するルール、などを用いることができる。A工程の計算順を決定するルールの一例については後述する。
【0035】
B工程は、ユニットアイコン毎に予め定められた、処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算する工程であり、必要に応じて水処理プロセス計算の開始前に所定の計算条件や初期値をユーザー入力などによって決定する工程を備えていてもよい。ここで、所定の計算条件や初期値とは、例えば逆浸透膜ユニットアイコンにおいては逆浸透膜エレメントの種類や本数などを指す。
【0036】
ここで、混合などの流入配線が少なくとも2つ以上存在するユニットアイコンについて、当該ユニットアイコンの1回目のプロセス計算においては、流入配線のうち少なくとも1つの流入配線の流量・水質・温度・水圧が入力または計算によって決定しており、少なくとも1つの別の流入配線の流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない場合がある。このとき、流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない流入配線を無視するか、何らかの仮の値を入力することで当該ユニットアイコンの水処理プロセス計算をすることが可能であるが、このときの計算結果と、繰り返し計算によって得られる最終的な計算結果との乖離があまりに大きいと、水処理プロセス計算が収束しなくなる可能性や、収束までに多大な時間を要する可能性があるため、最終的な計算結果により近い流量・水質・温度・水圧を設定することが好ましく、例えば流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない流入配線に流量・水質・温度・水圧が決定しているもう一方の流入配線の流量・水質・温度・水圧のいずれか1つ以上を入力することができる。
【0037】
さらに上述のとおりB工程の前に各配線の流量が決定している場合には、少なくとも1つの流入配線の水質・温度・水圧が入力または計算によって決定しており、少なくとも1つの別の流入配線の水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない場合があり、このときは水質・温度・水圧のいずれか1つ以上が決定していない流入配線に水質・温度・水圧が決定しているもう一方の流入配線の水質・温度・水圧のいずれか1つ以上を入力することができる。
【0038】
C工程は、いずれかのユニットアイコンに接続される配線の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目に変化があり、当該配線の他方に接続されたユニットアイコンにおいて流量・水質・温度・水圧の収支が合わなくなった場合に、物質収支またはエネルギー収支を調整すればよい。
【0039】
ここで、ユニットアイコンに接続される配線の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目に変化があるケースとは、B工程、またはC工程自身であり、配置・接続された全てのユニットアイコンについて流量・水質・温度・水圧の収支が合うようになるまで連続的に物質収支またはエネルギー収支を調整することで、水処理プロセスフロー全体の物質収支またはエネルギー収支も矛盾ないようにすることができる。
【0040】
ここで、水処理プロセスフローまたはユニットアイコンの物質収支またはエネルギー収支の矛盾とは、系全体または各アイコンに供給される流量、または塩類などの物質、またはエネルギーと、系全体または各アイコンから排出される流量、または塩類などの物質、またはエネルギーとの誤差が予め定められた規定値を上回る状態を指し、予め定められた規定値を下回るときに矛盾ないものと判断することができる。
【0041】
また、上述のとおり実際の水処理プロセス設計では要求仕様として流量が予め定まっている場合があるため、特にB工程において処理水の流量が変化した場合には、C工程においてユニットアイコン毎の物質収支に矛盾が生じないように原水または処理水または原水と処理水両方の流量を調整することが好ましい。
【0042】
ここで、仮に水処理プロセスフローまたはユニットアイコンの物質収支またはエネルギー収支の矛盾を解消しないまま次の工程に進むと、各ユニットアイコンにおいて不適切な初期値が設定され、不適切な解を得ることとなったり、適切な解を得るまでの計算回数が増大したり、解が得られず計算が停止してしまったりする場合がある。従って、C工程は計算精度や計算速度の向上に資することができる。
【0043】
D工程は、水処理プロセス計算が定常状態に達していれば水処理プロセス計算を終了し、定常状態に達していなければ再度B工程およびC工程を実施すると判定できればよいが、あらゆる水処理プロセスに汎用的に適用可能であるため、水処理プロセスフローの物質収支の誤差が予め定められた規定値以下である場合、生産水ユニットアイコンおよび排水ユニットアイコンの少なくともいずれか1つにおけるB工程の推算結果と前回推算結果との差異が予め定められた規定値以下である場合、の少なくともいずれか、または両方を満たすまで、繰り返し実行を要すると判定することが好ましい。
【0044】
以下、A工程の計算順を決定するルールの一例について説明する。
【0045】
上述のとおり、A工程の計算順を決定するルールは特に限定されるものではないが、原水を除く各ユニットアイコンに供給される水の情報は、当該ユニットアイコンの上流側に位置するユニットアイコンから受け取る必要があるため、B工程において不適切な初期値が設定され、不適切な解を得ることとなったり、適切な解を得るまでの計算回数が増大したり、解が得られず計算が停止してしまったりすることを防ぐために、配線の向きに沿って計算順を定めるルールを備えることが好ましい。
【0046】
また、B工程において計算されないユニットアイコンが存在すると、いずれかのユニットアイコンまたは水処理プロセスフロー全体において流量・水質・温度・水圧のいずれかの収支が合わなくなる可能性や、ユーザーが必要とする解を得られなくなる可能性があるため、水処理プロセスフローを形成する全てのユニットアイコンに漏れなく計算順を決定するルールを備えることが好ましい。
【0047】
ここで、ユニットアイコンの種類やその定義方法によっては、B工程において流量・水質・温度・水圧のいずれも推算する必要のないユニットアイコンが存在しうる。例えば生産水ユニットアイコンが当該生産水ユニットアイコンの上流に位置するユニットアイコンにおいて推算された流量・水質・温度・水圧を受け取るのみである場合、当該生産水ユニットアイコンは、B工程において流量・水質・温度・水圧のいずれも推算する必要がない。このとき、生産水ユニットに計算順を設定せずとも水処理プロセス計算には何ら支障ないが、これは生産水ユニットアイコンに計算順を設定しつつ、B工程における生産水ユニットアイコンの処理を流量・水質・温度・水圧のいずれも変化しないものとした場合と同義であり、本実施形態においてはこれらを区別しないものとする。
【0048】
また、上述の説明に反して配線の向きに反する計算順となってしまったり、B工程において、あるユニットアイコンの次に計算すべきユニットアイコンが1つに定まらず計算が進まなくなってしまったりする恐れがあるため、ある1つのユニットアイコンの計算順が、別の1つのユニットアイコンの計算順と重複することを回避するルールを備えることが好ましい。計算順の重複を回避するルールには、例えば、重複が発生しないように1から順番に計算順を設定するルール、計算順の重複が発生したユニットアイコンの1つに、別の1つのユニットアイコンに設定された計算順と重複しない計算順を設定するルール、などを用いることができる。
【0049】
さらに、計算順の重複を回避するルールと同様の理由で、計算順が重複したときに重複を回避する場合を除いて、ある1つのユニットアイコンに計算順を設定したとき、その計算順の上書きを回避するルールを備えることが好ましい。計算順の上書きを回避するルールには、例えば、一度いずれかのユニットアイコンに設定された計算順の変更を禁止するルール、計算順が上書きされた場合に元の計算順に戻すルール、などを用いることができる。
【0050】
図4は、配線の向きに沿って計算順を定めるルール、水処理プロセスフローを形成する全てのユニットアイコンに漏れなく計算順を決定するルール、ある1つのユニットアイコンの計算順が、別の1つのユニットアイコンの計算順と重複することを回避するルール、ある1つのユニットアイコンに計算順を設定したとき、その計算順の上書きを回避するルール、とを備えた、A工程のユニットアイコンの計算順の決定方法の一例を示すフロー図であり、A工程は下記A1からA5の各工程からなる。
【0051】
各工程は、A1.原水ユニットアイコンの1つを選択し、選択されている原水ユニットアイコンの計算順に「1」を設定した後に、原水ユニットアイコンの選択を解除し、原水ユニットアイコンから出る流出配線を通過して1つ下流のユニットアイコンを選択し、下記A2工程に移行する工程、A2.A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの計算順に、水処理プロセスフローを形成する全てのユニットアイコンに設定済みの計算順の最大値に1を加えた値を設定し、下記A3工程に移行する工程、A3.A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンが生産水ユニットアイコンまたは排水ユニットアイコンではない場合に下記A4工程に移行し、A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンが生産水ユニットアイコンまたは排水ユニットアイコンである場合に当該ユニットアイコンの選択を解除し下記A5工程に移行する工程、A4.A1および本A4およびA5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの選択を解除し、当該ユニットアイコンから出る流出配線の1つを通過して、1つ下流のユニットアイコンを選択し、下記A2工程に移行する工程、A5.水処理プロセスフローに、計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合に、当該流出配線が流入するユニットアイコンを選択してA2工程に移行し、計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がない場合に、A工程を終了する工程、である。
【0052】
ここでA3工程は、A4工程が実施不可能とならないように、A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの下流に配線が存在しない場合にA4工程をスキップするものであり、下流に配線が存在しないユニットアイコンとしては、例えば生産水ユニットアイコンや排水ユニットアイコンが該当する。
【0053】
また、A4工程において、逆浸透膜ユニットアイコン、分岐ユニットアイコンなど、ユニットアイコンから下流に2本以上の流出配線が存在する場合については、どの流出配線から選択するか、予め所定のルール、例えば逆浸透膜ユニットアイコンであれば透過水を優先的に選択する、といったルールを定めておくと、水処理プロセスフローを構成する全てのユニットアイコンに効率的かつ漏れなく計算順を決定することができ、好ましい。
【0054】
また、A5工程において、計算順が決定済みのユニットアイコンから流出する未通過の流出配線が複数存在する場合は、該当する流出配線が流入配線として接続されているユニットアイコンの中から任意の1つを選択すればよいが、予め所定のルール、例えばより上流側に設置されたユニットアイコンから流出する配線が流入するユニットアイコンを優先的に選択する、といったルールを定めておくと、速やかに次工程に移行することができるため、より好ましい。
【0055】
図7は本実施形態の水処理プロセスの一例を示すフロー図であり、
図7を用いてA1からA5工程によるユニットアイコン計算順の決定方法の一例を説明する。ここでA4工程において逆浸透膜ユニットアイコンの透過水および濃縮水は透過水を優先的に選択するルールとする。
【0056】
このとき、まずA1工程:『A1.原水ユニットアイコンの1つを選択し、選択されている原水ユニットアイコンの計算順に「1」を設定した後に、原水ユニットアイコンの選択を解除し、原水ユニットアイコンから出る流出配線を通過して1つ下流のユニットアイコンを選択し、下記A2工程に移行する工程』、によって原水ユニットアイコン1が選択されるとともに、計算順が「1」と定まり、原水ユニットアイコン1から高圧ポンプユニットアイコン9に選択が移動し、A2工程に移行する。
【0057】
次いでA2工程:『A2.A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの計算順に、水処理プロセスフローを形成する全てのユニットアイコンに設定済みの計算順の最大値に1を加えた値を設定し、下記A3工程に移行する工程』、によって、高圧ポンプユニットアイコン9の計算順は、ここまでで最大の計算順に1を加算した「2」と定まり、A3工程に移行する。
【0058】
次いでA3工程:『A3.A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンが生産水ユニットアイコンまたは排水ユニットアイコンではない場合に下記A4工程に移行し、A1および後述のA4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンが生産水ユニットアイコンまたは排水ユニットアイコンである場合に当該ユニットアイコンの選択を解除し下記A5工程に移行する工程』では高圧ポンプユニットアイコン9は生産水でも排水でもないためA4工程に移行する。
【0059】
次いでA4工程:『A4.A1および本A4およびA5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの選択を解除し、当該ユニットアイコンから出る流出配線の1つを通過して、1つ下流のユニットアイコンを選択し、下記A2工程に移行する工程』、によって高圧ポンプユニットアイコン9から逆浸透膜ユニットアイコン3に選択が移動し、A2工程に戻る。
【0060】
同様にA2,A3,A4工程の繰り返しによって、逆浸透膜ユニットアイコン3の計算順が「3」、生産水ユニットアイコン4の計算順が「4」と連続的に定まる。
【0061】
生産水ユニットアイコン4の計算順が定まった直後のA3工程において、選択中のユニットアイコンは生産水であるため、生産水ユニットアイコン4の選択が解除された後、A5工程に移行する。
【0062】
次いでA5工程:『A5.水処理プロセスフローに、計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合に、当該流出配線が流入するユニットアイコンを選択してA2工程に移行し、計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がない場合に、A工程を終了する工程』において、逆浸透膜ユニットアイコン3がA5工程中の『計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合』に該当するため、未通過の流出配線が流入するユニットアイコン、すなわち排水ユニットアイコン14が選択され、A2工程に戻る。
【0063】
A2工程によって排水ユニットアイコン14の計算順が「5」と定まった後、生産水ユニットアイコン4が選択されていた場合と同様にA3工程を経てA5工程に至る。
【0064】
この時点でA5工程中の『計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がない場合』に該当するため、ここでA工程が終了し、
図7を構成するユニットアイコンのユニットアイコン計算順は、原水ユニットアイコン1:「1」、高圧ポンプユニットアイコン9:「2」、逆浸透膜ユニットアイコン3:「3」、生産水ユニットアイコン4:「4」、排水ユニットアイコン14:「5」となる。
【0065】
図5は、
図4と同様、配線の向きに沿って計算順を定めるルール、水処理プロセスフローを形成する全てのユニットアイコンに漏れなく計算順を決定するルール、ある1つのユニットアイコンの計算順が、別の1つのユニットアイコンの計算順と重複することを回避するルール、ある1つのユニットアイコンに計算順を設定したとき、その計算順の上書きを回避するルール、とを備えた、A工程のユニットアイコンの計算順の決定方法の別の一例を示すフロー図である。この決定方法は、より複雑な循環の配線を含む水処理プロセスフローにおいても、上述のルールに反することのないよう、
図4のA4工程とA2工程の間に、A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの計算順が決定している場合にA5工程に移行し、A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの計算順が決定していない場合にA2工程に移行する、A6工程を備えるとともに、A5において、計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合に、当該流出配線が流入するユニットアイコンを選択してA6工程に移行するものである。
【0066】
図8は本実施形態の水処理プロセスの別の一例を示すフロー図であり、
図8を用いてA1からA6工程によるユニットアイコン計算順の決定方法の一例を説明する。
【0067】
図7のケースと同様にA4工程において逆浸透膜ユニットアイコンの透過水および濃縮水は透過水を優先的に選択するルールとし、さらにA4工程において分岐ユニットアイコン12の右側流出配線と左側流出配線は右側流出配線を優先的に選択するルールとし、さらにA5工程においてより上流側に設置されたユニットアイコンから流出する配線が流入するユニットアイコンを優先的に選択するルールとする。
【0068】
このとき、
図7のケースと同様に、A1工程およびA2によって、まず原水ユニットアイコン1と、それに続く混合ユニットアイコン13の計算順がそれぞれ「1」および「2」と定まる。
【0069】
さらにA3工程、A4工程を経て第一高圧ポンプユニットアイコン15が選択された状態で、A6工程『A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの計算順が決定している場合にA5工程に移行し、A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの計算順が決定していない場合にA2工程に移行する工程』に至る。このとき第一高圧ポンプユニットアイコン15はA6工程中の『A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの計算順が決定していない場合』に該当するため、A2工程に移行する。
【0070】
同様にA2,A3,A4,A6工程の繰り返しによって、第一高圧ポンプユニットアイコン15、第一逆浸透膜ユニットアイコン17、第二高圧ポンプユニットアイコン16、第二逆浸透膜ユニットアイコン18、第一生産水ユニットアイコン19の計算順がそれぞれ「3」「4」「5」「6」「7」と順次定まる。
【0071】
第一生産水ユニットアイコン19の計算順が定まった直後のA3工程において、第一生産水ユニットアイコン19は生産水ユニットアイコンであるため、第一生産水ユニットアイコン19の選択が解除され、A5工程に移行する。
【0072】
ここでA5工程中の『計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合』には第一逆浸透膜ユニットアイコン17と第二逆浸透膜ユニットアイコン18の2つが該当する。上述のとおり、より上流側に設置されたユニットアイコンから流出する配線が流入するユニットアイコンを優先的に選択するルールとしているため、この時点では第一逆浸透膜ユニットアイコン17の濃縮水が流入する排水ユニットアイコン14が選択され、A6工程に移行する。
【0073】
このとき排水ユニットアイコン14の計算順は決定していないため、A2工程に移行し、さらにA2工程では排水ユニットアイコン14の計算順が「8」と定まり、続くA3工程によって排水ユニットアイコン14の選択が解除され、A5工程に移行する。
【0074】
この時点でA5工程中の『計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合』に該当するユニットアイコンは第二逆浸透膜ユニットアイコン18のみであるため、第二逆浸透膜ユニットアイコン18の濃縮水が流入する分岐ユニットアイコン12が選択され、A6工程に移行する。
【0075】
ここで予め『分岐ユニットアイコン12の右側流出配線と左側流出配線は右側流出配線を優先的に選択するルール』としているため、A6,A2,A3,A4,A6,A2工程を順に経て分岐ユニットアイコン12および第二生産水ユニットアイコン20の計算順がそれぞれ「9」および「10」と定まる。
【0076】
次いでA3工程において、第二生産水ユニットアイコン20が生産水であるため第二生産水ユニットアイコン20の選択が解除されA5工程に移行する。このとき分岐ユニットアイコンがA5工程中の『計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がある場合』に該当するため、分岐ユニットアイコンの左側流出配線が流入する混合ユニットアイコン13が選択され、A6工程に移行する。
【0077】
ここで混合ユニットアイコン13の計算順は既に「2」と決定しており、A6工程中の『A1,A4,A5のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンの計算順が決定している場合』に該当するため、A5工程に移行する。
【0078】
この時点でA5工程中の『計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がない場合』に該当するため、ここでA工程が終了し、
図8を構成するユニットアイコンのユニットアイコン計算順の一例は、原水ユニットアイコン1:「1」、混合ユニットアイコン13:「2」、第一高圧ポンプユニットアイコン15:「3」、第一逆浸透膜ユニットアイコン17:「4」、第二高圧ポンプユニットアイコン16:「5」、第二逆浸透膜ユニットアイコン18:「6」、第一生産水ユニットアイコン19:「7」、排水ユニットアイコン14:「8」、分岐ユニットアイコン12:「9」、第二生産水ユニットアイコン20:「10」となる。
【0079】
図6は、
図4および
図5と同様、配線の向きに沿って計算順を定めるルール、水処理プロセスフローを形成する全てのユニットアイコンに漏れなく計算順を決定するルール、ある1つのユニットアイコンの計算順が、別の1つのユニットアイコンの計算順と重複することを回避するルール、ある1つのユニットアイコンに計算順を設定したとき、その計算順の上書きを回避するルール、とを備えた、A工程のユニットアイコンの計算順の決定方法の別の一例を示すフロー図である。この計算方法は、水処理プロセスフローに原水ユニットアイコンを2つ以上含む場合においても、上述のルールに反することのないよう、
図5のA5工程からA工程を終了する工程への移行の間に、計算順が決定していない原水ユニットアイコンが存在する場合に当該原水ユニットアイコンを選択してA2工程に移行し、計算順が決定していない原水ユニットアイコンが存在しない場合にA工程を終了する、A7工程を備えるとともに、A2,A3,A4,A6の各工程が、A1,A4,A5,A7のいずれかの工程において選択されたユニットアイコンを対象とするものである。
【0080】
図9は本実施形態の水処理プロセスの別の一例を示すフロー図であり、
図9を用いてA1からA7工程によるユニットアイコン計算順の決定方法の一例を説明する。
【0081】
図8のケースと同様にA4工程において逆浸透膜ユニットアイコンの透過水および濃縮水は透過水を優先的に選択するルールとし、A4工程において分岐ユニットアイコン12の右側流出配線と左側流出配線は右側流出配線を優先的に選択するルールとし、A5工程においてより上流側に設置されたユニットアイコンから流出する配線が流入するユニットアイコンを優先的に選択するルールとする。
【0082】
このとき、
図8のケースと同様にA1,A2,A3,A4,A5,A6の各工程によって、第一原水ユニットアイコン21:「1」、第一混合ユニットアイコン23:「2」、第二混合ユニットアイコン24:「3」、第一高圧ポンプユニットアイコン15:「4」、第一逆浸透膜ユニットアイコン17:「5」、第二高圧ポンプユニットアイコン16:「6」、第二逆浸透膜ユニットアイコン18:「7」、第一生産水ユニットアイコン19:「8」、排水ユニットアイコン14:「9」、分岐ユニットアイコン12:「10」、第二生産水ユニットアイコン20:「11」と計算順が定まる。
【0083】
第二生産水ユニットアイコン20の計算順が定まった後のA5工程において、A5工程中の『計算順が決定したユニットアイコンから流出する未通過の流出配線がない場合』に該当するため、A7工程『計算順が決定していない原水ユニットアイコンが存在する場合に当該原水ユニットアイコンを選択してA2工程に移行し、計算順が決定していない原水ユニットアイコンが存在しない場合にA工程を終了する工程』に移行し、第二原水ユニットアイコン22がA7工程中の『計算順が決定していない原水ユニットアイコンが存在する場合』に該当するため、第二原水ユニットアイコン22が選択されA2工程に移行する。
【0084】
A2工程において第二原水ユニットアイコン22の計算順が「12」と定まった後、A3,A5,A7工程と順に移行し、このときA7工程中の『計算順が決定していない原水ユニットアイコンが存在しない場合』に該当するため、A工程が終了し、
図9を構成するユニットアイコンのユニットアイコン計算順の一例は、第一原水ユニットアイコン:「1」、第一混合ユニットアイコン:「2」、第二混合ユニットアイコン:「3」、第一高圧ポンプユニットアイコン:「4」、第一逆浸透膜ユニットアイコン:「5」、第二高圧ポンプユニットアイコン:「6」、第二逆浸透膜ユニットアイコン:「7」、第一生産水ユニットアイコン:「8」、排水ユニットアイコン:「9」、分岐ユニットアイコン:「10」、第二生産水ユニットアイコン:「11」、第二原水ユニットアイコン:「12」となる。
【0085】
このように、A1工程からA7工程のいずれか1つ以上によって構成されたA工程は、迅速に、かつ水処理プロセスフローを形成する全てのユニットアイコンを漏れなく、原水から下流側に向かって計算順を定めることができ、ひいては水処理プロセス計算全体の計算精度や計算速度の向上に資することができる。
【0086】
本発明の形態は、
図10の本発明の実施形態の一例であるシステム構成の概略図に示すように、水処理プロセス計算方法を、コンピュータ30で読み取れるプログラムとして、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存しても良い。その場合水処理プロセス計算プログラムは、コンピュータのハードディスクなどの記録媒体に保存される。
【0087】
一例として、コンピュータ30は、水処理プロセス計算プログラム31、水処理プロセス入力手段32、水処理プロセス記憶手段33、水処理プロセス計算結果記憶手段41、及び水処理プロセス計算結果出力手段42を備えている。また、水処理プロセス計算プログラム31は、水処理プロセス読み込み手段34、ユニットアイコン計算順決定手段35、ユニットアイコン計算順決定ルール記憶手段36、ユニットアイコン計算手段37、物質またはエネルギー収支計算手段38、収束判定手段39、水処理プロセス計算結果保存手段40により構成されている。
【0088】
また、
図11の本発明の実施形態の別の一例であるシステム構成の概略図に示すように、記録媒体を保存するシステムは、オンプレミスサーバーやクラウドサーバーなどのサーバー44でも差し支えない。
【0089】
図11の例では、システム全体は、コンピュータ30及びサーバー44により構成されている。コンピュータ30は、水処理プロセス入力手段32及び水処理プロセス計算結果出力手段42と、これらにアクセス可能とするブラウザ43と、を備えている。サーバー44は、水処理プロセス計算プログラム31と、水処理プロセス記憶手段33と、水処理プロセス計算結果記憶手段41とを備えている。水処理プロセス計算プログラム31の構成は、
図10と同様である。
【0090】
このように、サーバー44に水処理プロセス計算プログラムを保存した場合、そのプログラムにコンピュータ30上のブラウザ43を介してアクセスし、水処理プロセス計算プログラムを実行して計算するシステムにするとなお好適である。
【0091】
なお、本出願は、2023年1月30日出願の日本特許出願(特願2023-11786)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0092】
1:原水
2:限外ろ過膜
3:逆浸透膜
4:生産水
5:原水ポンプ
6:ろ過水分岐
7:空洗ブロア
8:供給ポンプ
9:高圧ポンプ
10:薬品注入装置
11:エネルギー回収装置
12:分岐
13:混合
14:排水
15:第一高圧ポンプ
16:第二高圧ポンプ
17:第一逆浸透膜
18:第二逆浸透膜
19:第一生産水
20:第二生産水
21:第一原水
22:第二原水
23:第一混合
24:第二混合
30:コンピュータ
31:水処理プロセス計算プログラム
32:水処理プロセス入力手段
33:水処理プロセス記憶手段
34:水処理プロセス読み込み手段
35:ユニットアイコン計算順決定手段
36:ユニットアイコン計算順決定ルール記憶手段
37:ユニットアイコン計算手段
38:物質またはエネルギー収支計算手段
39:収束判定手段
40:水処理プロセス計算結果保存手段
41:水処理プロセス計算結果記憶手段
42:水処理プロセス計算結果出力手段
43:ブラウザ
44:サーバー
【要約】
複数の水処理単位プロセスを有する水処理プロセスのプロセス計算方法であって、水処理単位プロセスのユニットアイコンを配置及びユニットアイコン間を配線する工程によって形成された水処理プロセスフローについて、A.予め定められたルールに基づいて前記ユニットアイコンの計算順を決定する工程と、B.前記A工程の後、前記計算順に沿って前記ユニットアイコン毎に処理水の流量・水質・温度・水圧のうち少なくとも一つの項目を推算する工程と、C.前記B工程の後、前記水処理プロセスフローについて物質収支またはエネルギー収支に矛盾が生じないよう処理水の流量・水質・温度・水圧のうち前記B工程にて推算された少なくとも一つの項目を調整する工程と、D.前記C工程の後、前記B工程及び前記C工程の繰り返し実行の要否を判定する工程と、を備える。