IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図1
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図2
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図3
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図4
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図5
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図6
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図7
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図8
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図9
  • 特許-切削加工システム、および転削工具 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】切削加工システム、および転削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 9/00 20060101AFI20241203BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B23C9/00 Z
B23Q17/09 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024520644
(86)(22)【出願日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2023036863
【審査請求日】2024-04-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 義三
(72)【発明者】
【氏名】栗山 浩充
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正
(72)【発明者】
【氏名】大森 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】山岸 傑
(72)【発明者】
【氏名】桑山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】高野 豊久
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-137962(JP,A)
【文献】特開2022-064117(JP,A)
【文献】特開2019-184404(JP,A)
【文献】特開平03-258422(JP,A)
【文献】特開2001-222787(JP,A)
【文献】国際公開第2021/153042(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 9/00
B23Q 17/09
H02J 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の加工空間に設けられ給電用の電波が放射される送電アンテナを有する給電装置と、
前記加工空間に配置される転削工具と、を備え、
前記転削工具は、
前記工作機械によって回転駆動される回転シャフトと、
前記回転シャフトに設けられるセンサと、
前記回転シャフトに設けられ、前記センサを収容するケースと、
前記ケースに収容され、前記給電用の電波を受信する1または複数の受電アンテナ回路と、を備え
前記ケースは、
前記回転シャフトと同心に配置され、前記回転シャフトの外周側を取り囲む円筒状の側壁部と、
前記側壁部の端部開口を塞ぐ環状の端壁部と、を有し、
前記1または複数の受電アンテナ回路は、前記端壁部の内面に設けられる
切削加工システム。
【請求項2】
前記端壁部は樹脂により形成されている
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項3】
前記複数の受電アンテナ回路は、前記回転シャフトの中心軸を中心とする周方向に沿って等間隔に設けられる
請求項1または請求項2に記載の切削加工システム。
【請求項4】
前記1の受電アンテナ回路は、ループ素子を含み、
前記回転シャフトの中心軸は、前記ループ素子の中心を通過する
請求項1または請求項2に記載の切削加工システム。
【請求項5】
前記センサが実装され、前記センサへ電力を供給するための線路を介して前記1または複数の受電アンテナ回路が接続される回路基板をさらに備える
請求項1または請求項2に記載の切削加工システム。
【請求項6】
前記回路基板に実装された1または複数の回路チップをさらに備える
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項7】
前記回路基板は、
前記センサが実装され、前記回転シャフトの外周面に巻き付けられる帯状の第1基板部と、
前記第1基板部の長辺から延びる折り曲げ可能な1または複数の帯状部と、
前記1または複数の帯状部の先端に設けられた1または複数の第2基板部と、を有し、
前記1または複数の第2基板部は、前記端壁部に対して対向配置される
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項8】
前記1または複数の回路チップは、通信アンテナ、および、前記通信アンテナによって前記センサの出力を送信する無線通信回路を含む回路チップを含む
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項9】
前記1または複数の回路チップは、前記1または複数の受電アンテナ回路が受電した電力を蓄電する蓄電部を含む回路チップを含む
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項10】
前記1または複数の回路チップは、前記複数の受電アンテナ回路が受電した電力を合成する合成回路を含む回路チップを含む
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項11】
工作機械の加工空間に配置される転削工具であって、
前記工作機械によって回転駆動される回転シャフトと、
前記回転シャフトに設けられるセンサと、
前記回転シャフトに設けられ、前記センサを収容するケースと、
前記ケースに収容され、前記加工空間に設けられる送電アンテナから放射される給電用の電波を受信する1または複数の受電アンテナ回路と、を備え
前記ケースは、
前記回転シャフトと同心に配置され、前記回転シャフトの外周側を取り囲む円筒状の側壁部と、
前記側壁部の端部開口を塞ぐ環状の端壁部と、を有し、
前記1または複数の受電アンテナ回路は、前記端壁部の内面に設けられる
転削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削加工システム、および転削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体部と、本体部に配置されたセンサ部と、センサの出力を示す情報を外部へ送信する無線通信部と、各部に電力を供給する電池と、を備えた切削工具が開示されている。電池は、本体部に設けられた空間である電池収容部に内蔵されている。
この切削工具は、加工中の切削工具の状態をセンサによってモニタし、外部へ送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2022/230149号
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態に係る切削加工システムは、工作機械の加工空間に設けられる送電アンテナを有する給電装置と、前記加工空間に配置される転削工具と、を備える。前記転削工具は、前記工作機械によって回転駆動される回転シャフトと、前記回転シャフトに設けられるセンサと、前記回転シャフトに設けられ、前記センサを収容するケースと、前記ケースに収容され、前記送電アンテナからの送電電力を受電する1または複数の受電アンテナ回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施形態に係る切削加工システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る転削工具の外観図である。
図3図3は、転削工具の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、転削工具の断面図である。
図5図5は、図4中のV-V線矢視断面図である。
図6図6は、回路モジュールを平面上に延ばしたときの図である。
図7図7は、第1実施形態の変形例に係る転削工具の径方向の断面図である。
図8図8は、第1実施形態の他の変形例に係る転削工具の軸方向の平面に沿った断面図である。
図9図9は、第2実施形態に係る転削工具が有する回路モジュールを示す図である。
図10図10は、第2実施形態に係る転削工具の径方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
上記従来の切削工具では、電池の電力が消費され枯渇すると、新たな電池に交換する必要がある。この場合、電池収容部内から古い電池を取り出し、新たな電池を装着しなければならず、加工中に電池を交換することは困難である。
このため、加工時間が長時間となることにより、加工中に電池の電力が枯渇すると、その後の切削工具の状態をモニタすることができなくなるおそれがある。
上記従来の切削工具は、旋削加工を行うための旋削工具であるが、転削加工を行うための転削工具においても同様の課題を有する。
さらに、転削工具は加工時に回転するため、充電ケーブル等を加工中の転削工具に接続することが困難である。このため、仮に、工具に内蔵される電池を2次電池とし外部から充電可能な構成にしたとしても、加工中に電池の電力が枯渇するおそれがある。
【0007】
[本開示の効果]
本開示によれば、加工中の転削工具の状態を適切にモニタすることができる。
【0008】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
(1)本開示の実施形態に係る切削加工システムは、工作機械の加工空間に設けられる送電アンテナを有する給電装置と、前記加工空間に配置される転削工具と、を備える。前記転削工具は、前記工作機械によって回転駆動される回転シャフトと、前記回転シャフトに設けられるセンサと、前記回転シャフトに設けられ、前記センサを収容するケースと、前記ケースに収容され、前記送電アンテナからの送電電力を受電する1または複数の受電アンテナ回路と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、給電装置が加工空間内に送電アンテナを有し、転削工具が1または複数の受電アンテナ回路を有するので、加工空間内で転削工具への無線給電が可能となる。よって、加工中の転削工具に対して給電が可能となり、加工時間が長時間になったとしても連続してセンサへ電力を与えることができ、センサの駆動が可能となる。この結果、加工中の転削工具の状態を適切にモニタすることができる。
【0010】
(2)上記(1)の切削加工システムにおいて、前記ケースが、前記回転シャフトと同心に配置され、前記回転シャフトの外周側を取り囲む円筒状の側壁部と、前記側壁部の端部開口を塞ぐ環状の端壁部と、を有する場合、前記1または複数の受電アンテナ回路は、前記端壁部の内面に設けられていてもよい。
この場合、回転シャフトの端部から軸方向に離れた位置に送電アンテナを配置すれば、回転シャフトが回転したときの、送電アンテナと受電アンテナ回路との距離の変化が大きくなるのを抑制でき、送電アンテナからの送電電力を安定して受電することができる。
【0011】
(3)上記(2)の切削加工システムにおいて、前記端壁部は樹脂により形成されていることがある。
この場合、端壁部によって送電電力の受信が阻害されるのを抑制することができる。
【0012】
(4)上記(2)または(3)の切削加工システムにおいて、前記複数の受電アンテナ回路は、前記回転シャフトの中心軸を中心とする周方向に沿って等間隔に設けられていてもよい。
この場合、回転シャフトが回転したときに、複数の受電アンテナ回路のそれぞれが、均等に送電アンテナからの送電電力を受信することができる。この結果、複数の受電アンテナ回路は、安定して送電電力を受信することができる。また、複数の受電アンテナ回路を周方向に沿って等間隔に設けることで、転削工具全体の質量の不釣り合いを抑制することができる。
【0013】
(5)上記(2)または(3)の切削加工システムにおいて、前記1の受電アンテナ回路が、ループ素子を含む場合、前記回転シャフトの中心軸は、前記ループ素子の中心を通過することがある。
この場合、回転シャフトが回転した場合においても、送電アンテナに対するアンテナ素子の相対的な位置の変化が抑制され、送電アンテナからの送電電力を安定して受電することができる。また、回転シャフトの中心軸が、ループ素子の中心を通過することで、転削工具全体の質量の不釣り合いを抑制することができる。
【0014】
(6)上記(2)から(5)のいずれか1つの切削加工システムにおいて、前記センサが実装され、前記センサへ電力を供給するための線路を介して前記1または複数の受電アンテナ回路が接続される回路基板をさらに備えていてもよい。
この場合、回路基板を、例えば、回転シャフトの回収面等の端壁部の内面以外の部分に設けることができ、内面における受電アンテナ回路の配置スペースを大きく確保することができる。
【0015】
(7)上記(6)の切削加工システムにおいて、前記回路基板に実装された1または複数の回路チップをさらに備えることがある。
この場合、1または複数の回路チップと、センサと、を回路基板に実装することができる。
【0016】
(8)上記(7)の切削加工システムにおいて、前記回路基板は、前記センサが実装され、前記回転シャフトの外周面に設けられる第1基板部と、前記1または複数の回路チップが実装され、前記第1基板部に対して折り曲げ可能な帯状部によって接続された1または複数の第2基板部と、を有し、前記1または複数の第2基板部は、前記端壁部に対して対向配置されてもよい。
この場合、1または複数の回路チップが実装される第2基板部の実装面が、回転シャフトの回転によって生じる遠心力の方向に沿っているので、前記遠心力が1または複数の回路チップと第2基板部とを離間する方向に作用するのを抑制することができる。
【0017】
(9)上記(8)の切削加工システムにおいて、前記1または複数の回路チップは、通信アンテナ、および、前記通信アンテナによって前記センサの出力を送信する無線通信回路を含む回路チップを含むことがある。
この場合、通信アンテナを端壁部に近接して配置することができる。よって、センサの出力を通信アンテナによって送信する際、端壁部以外の構成がセンサの出力の送信を阻害するのを防止でき、適切にセンサの出力の送信を行うことができる。
【0018】
(10)上記(7)から(9)のいずれか1つの切削加工システムにおいて、前記1または複数の回路チップは、前記1または複数の受電アンテナ回路が受電した電力を蓄電する蓄電部を含む回路チップを含むことがある。
この場合、1または複数の受電アンテナ回路が送電電力を受電しない場合においても、蓄電部に蓄電された電力をセンサへ与えることができる。
【0019】
(11)上記(7)から(10)のいずれか1つの切削加工システムにおいて、前記1または複数の回路チップは、前記複数の受電アンテナ回路が受電した電力を合成する合成回路を含む回路チップを含むことがある。
合成回路によって、複数の受電アンテナ回路から出力される電力を合成することができる。
【0020】
(12)また、他の観点からみた実施形態は、工作機械の加工空間に配置される転削工具である。この転削工具は、前記工作機械によって回転駆動される回転シャフトと、前記回転シャフトに設けられるセンサと、前記回転シャフトに設けられ、前記センサを収容するケースと、前記ケースに収容され、前記加工空間に設けられる送電アンテナによって送電される給電装置からの送電電力を受電する1または複数の受電アンテナ回路と、を備える。
【0021】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
〔全体構成について〕
図1は、実施形態に係る切削加工システムの全体構成を示す図である。図1中、切削加工システム1は、工作機械2と、転削工具4と、給電装置6と、外部装置7と、を備える。
【0022】
工作機械2は、例えば、NCフライス盤である。工作機械2は、コラム8と、主軸10と、を有する。コラム8は、主軸10をテーブル(図示省略)の上方で支持する。主軸10は、転削工具4をチャック等で把持する。主軸10は、モータによって上下方向に沿う回転軸回りに回転する。
【0023】
工作機械2は、主軸10を回転させることで、転削工具4を回転駆動する。転削工具4の下側の端部には、切削チップが固定されている。テーブルに固定されたワークは、テーブルの移動によって、加工位置に配置され、転削工具4によって切削加工される。
切削加工は、工作機械2の加工空間S内で行われる。転削工具4や、コラム8、主軸10、テーブル等は、加工空間S内に配置される。
加工空間Sは、金属や樹脂等からなるカバーによって画定される。つまり、加工空間Sは、前記カバーによって閉鎖された空間である。切削加工時には、切削油(クーラント)が供給される。この切削油の飛散を防止するため、切削加工は、閉鎖された加工空間S内で行われる。
【0024】
転削工具4は、ワークに対して切削加工を行うための工具である。より具体的に、転削工具4は、切削加工のうちの転削加工を行うための工具である。転削加工とは、固定されたワークに対して工具を回転させつつ押し当てて行われる加工である。
【0025】
本実施形態の転削工具4はセンサを有する。センサは転削工具4の状態をモニタする機能を有する。転削工具4はさらにセンサの出力を示す出力情報を外部へ送信する機能を有する。転削工具4の構成については、後に詳述する。
【0026】
給電装置6は、加工空間S内の転削工具4へ無線給電する機能を有する。給電装置6は、送電アンテナ6aと、送電部6bと、を備える。送電部6bは、電源100から供給される電力に基づいて給電用の信号を生成し、送電アンテナ6aへ与える。送電アンテナ6aは、加工空間S内における転削工具4へ無線給電可能な位置に固定されている。送電アンテナ6aは、給電用の信号を給電用の電波として転削工具4へ送信する。
給電装置6から転削工具4へ送電される電力は、転削工具4のセンサの動作電力や出力情報を送信するための電力として用いられる。
【0027】
本実施形態の給電装置6は、5.7GHzを含む周波数帯域の信号を生成し送信する。つまり、送電アンテナ6aからは、5.7GHzを含む周波数帯域の電波が放射される。
なお、給電装置6が放射する電波の周波数帯域は、特に限定されるわけではないが、規制等の観点から、2.4GHzや920MHzを含む周波数帯域であってもよい。
【0028】
外部装置7は、工作機械2(の加工空間S)の外部に配置される装置である。外部装置7は、転削工具4との間で無線通信を行う機能を有する。外部装置7は、無線通信によって、転削工具4が送信する出力情報を受信する。
外部装置7は、コンピュータ等により構成される。外部装置7は、処理部や、記憶部、入出力部等を備える。
【0029】
外部装置7は、さらに通信部を備える。通信部は、転削工具4との間で無線通信を行う機能を有する。通信部は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)によって転削工具4と無線通信を行う。よって、通信部は、2.4GHzを含む周波数帯域を用いて無線通信する。
【0030】
外部装置7は、転削工具4から送信される出力情報を通信部によって受信し、出力情報に関する処理を行う機能を有する。外部装置7は、出力情報からセンサによるモニタ結果を示す情報を取り出し、記憶部に記憶したり、入出力部を介してモニタ結果を外部へ出力したりする。
【0031】
〔第1実施形態に係る転削工具について〕
図2は、第1実施形態に係る転削工具4の外観図である。
図2に示すように、転削工具4は、回転シャフト14と、ケース16と、を備える。
回転シャフト14は、機械構造用鋼や工具項等の鋼材によって形成された部材である。
回転シャフト14は、チップ側端部14aと、主軸側端部14bと、を有する。チップ側端部14aには、切削チップが設けられる。主軸側端部14bは、工作機械2の主軸10に把持される。回転シャフト14の中心軸Cは、主軸10の回転軸と一致している。よって、回転シャフト14は、中心軸C回りに回転駆動される。
【0032】
ケース16は、環状の部材である。ケース16は、回転シャフト14の外周側の一部を覆う。ケース16の内部には、センサや、外部装置7と通信を行うための回路や、給電装置6からの送信電力を受電するためのレクテナ等が収容されている。
ケース16は、回転シャフト14に固定されている。よって、回転シャフト14が回転駆動されると、ケース16は、回転シャフト14と一体に回転する。
【0033】
回転シャフト14の上方には、主軸10およびコラム8が位置している。よって、給電装置6の送電アンテナ6aは、主軸10およびコラム8を避けつつ、図2に示すように、回転シャフト14の斜め上方に配置される。つまり、送電アンテナ6aは、回転シャフト14の主軸側端部14bから軸方向および径方向に離れた位置に配置されている。
【0034】
図3は、転削工具4の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、転削工具4は、上述の回転シャフト14およびケース16の他、複数(図例では4つ)のセンサ20と、無線通信回路22と、充電制御回路24と、蓄電部26と、合成回路28と、複数(図例では4つ)のレクテナ30と、をさらに備える。
4つのセンサ20、無線通信回路22、充電制御回路24、蓄電部26、合成回路28、および4つのレクテナ30は、ケース16の内部に収容される。
【0035】
4つのレクテナ30は、給電装置6の送電アンテナ6aからの送電電力を受電する。
4つのレクテナ30は、それぞれ、受電アンテナ30aと、整流回路30bと、を有する。受電アンテナ30aは、給電装置6からの給電用の電波を受信する。受電アンテナ30aは、受信した電波による電気信号を整流回路30bへ与える。整流回路30bは、受電アンテナ30aから与えられる電気信号を整流し直流電力に変換して出力する。
つまり、レクテナ30は、送電アンテナ6aからの送電電力を受電する受電アンテナ30aを有する受電アンテナ回路を構成する。
整流回路30bが出力する直流電力は、合成回路28へ与えられる。
合成回路28は、4つのレクテナ30が出力する直流電力を合成する。合成された直流電力は、充電制御回路24へ与えられる。
【0036】
充電制御回路24は、合成回路28(レクテナ30)から与えられる直流電力を所定電圧に変換したり、蓄電部26の充放電を制御したり、合成回路28からの直流電力および蓄電部26からの直流電力を4つのセンサ20および無線通信回路22へ与えたりする機能を有する。
また、充電制御回路24は、合成回路28から直流電力が与えられると、蓄電部26のみへ直流電力を与えることもできる。
さらに、充電制御回路24は、合成回路28から直流電力が与えられない場合、蓄電部26に蓄電された直流電力を4つのセンサ20、および無線通信回路22へ与えることができる。
【0037】
蓄電部26は、例えば、バッテリや、キャパシタを含む。蓄電部26は、充電制御回路24を介して与えられる直流電力を蓄電する。また、蓄電部26は、充電制御回路24の制御に基づいて、蓄電した電力を放電する。
【0038】
4つのセンサ20は、回転シャフト14の状態をモニタするためのセンサである。より具体的に、4つのセンサ20は、ひずみセンサや、温度センサ、加速度センサ等を含む。4つのセンサ20は、回転シャフト14の状態であるひずみや、温度、加速度(振動)をモニタする機能を有する。4つのセンサ20は、充電制御回路24から直流電力が与えられると、回転シャフト14の状態をモニタした結果を示す出力を無線通信回路22へ与える。
【0039】
無線通信回路22には、通信アンテナ23が設けられている。無線通信回路22は、通信アンテナ23によって、外部装置7との間で無線通信を行う機能を有する。
無線通信回路22は、4つのセンサ20から与えられる出力を出力情報として無線送信する。無線通信回路22は、充電制御回路24から直流電力が与えられると、外部装置7との間で通信接続を行い、出力情報の無線送信を開始する。
【0040】
上記切削加工システム1によって切削加工を行う場合、まず、システム1のオペレータは、転削工具4を主軸10に取り付ける。さらに、オペレータは、工作機械2のテーブルにワークを取り付ける。その後、オペレータは、工作機械2のカバーを閉じることで、加工空間Sを閉鎖する。
次いで、オペレータは、給電装置6による転削工具4への無線給電を開始させる。
これにより、転削工具4は、給電装置6からの送電電力を受電する。給電装置6から電力が与えられることで、転削工具4の4つのセンサ20は回転シャフト14の状態のモニタおよびモニタ結果の出力を開始する。さらに、無線通信回路22は外部装置7との間で通信接続を行い、出力情報の無線送信を開始する。
その後、オペレータは、工作機械2を動作させて、切削加工を開始させる。
【0041】
このとき、転削工具4の4つのセンサ20は、転削工具4の状態をモニタした結果を示す出力を無線通信回路22へ与える。無線通信回路22は、4つのセンサ20から与えられる出力を出力情報として無線送信する。
無線通信回路22が送信した出力情報は、外部装置7によって受信される。
出力情報を受信した外部装置7は、出力情報から回転シャフト14の状態を示す情報を取得する。外部装置7は、取得した回転シャフト14の状態を示す情報を出力する。これにより、外部装置7は、切削加工時の加工状態(転削工具4の状態)をオペレータへ出力することができる。オペレータは、外部装置7の出力によって切削加工時の加工状態をモニタすることができる。
【0042】
図3中、4つのセンサ20、無線通信回路22、充電制御回路24、蓄電部26、および、合成回路28は、回路基板36に実装されている。
回路基板36、並びに、回路基板36に実装されている4つのセンサ20および各回路22、24、26、28は、回路モジュール40を構成している。4つのレクテナ30は、回路モジュール40に接続されている。
【0043】
回路モジュール40は、さらに、4つのコネクタ38を有する。4つのコネクタ38には、4つのレクテナ30から延びる4つの線路39が接続されている。つまり、4つのレクテナ30は、4つの線路39を介して回路モジュール40(回路基板36)に接続されている。
4つのレクテナ30が出力する電力は、4つの線路39および4つのコネクタ38を介して回路モジュール40の合成回路28へ与えられる。
回路モジュール40(回路基板36)は、回転シャフト14の外周面に設けられる。
4つのレクテナ30は、ケース16の内面に設けられる。
【0044】
図4は、転削工具4の断面図である。図4では、中心軸Cを含む軸方向の平面に沿った断面を示している。図4では、ケース16およびレクテナ30については断面を示し、回転シャフト14および回路モジュール40については外観を示している。
なお、図4では、ケース16の内部を判り易く図示するため、ケース16を誇張して示している。以下の説明においても同様である。
【0045】
図4中、回転シャフト14は、大径部44と、第1小径部46aと、第2小径部46bと、を有する。小径部46a、46bは、大径部44の両端面から軸方向に沿って延びている。第1小径部46aの先端は、チップ側端部14aである。第2小径部46bの先端は、主軸側端部14bである。よって、第1小径部46aの先端には、切削チップが設けられる。また、第2小径部46bの先端は、工作機械2の主軸10に把持される。
【0046】
ケース16は、ケース本体48と、第1端壁部50と、を有する。
ケース本体48は、鋼板等を用いて形成された環状の部材である。ケース本体48は、側壁部52と、第2端壁部54と、を有する。
側壁部52は、大径部44の外周側を取り囲む円筒形状を有する。側壁部52は、回転シャフト14と同心に配置されている。つまり、側壁部52の軸方向の中心は、中心軸Cと一致する。
【0047】
第2端壁部54は、平板環状の部材である。第2端壁部54の外周端は、端部52aに繋がっている。端部52aは、側壁部52における第2小径部46b側の端部である。第2端壁部54の中心孔54aには、第2小径部46bが挿入されている。また、第2端壁部54の内面54bは、環状端面44bに当接している。環状端面44bは、大径部44における第2小径部46b側の端面であり、大径部44の外周面44aと、第2小径部46bの外周面46b1とを繋ぐ面である。ケース本体48は、第2小径部46bおよび環状端面44bによって、回転シャフト14に対して位置決めされる。
【0048】
第1端壁部50は、樹脂を用いて形成された平板環状の部材である。第1端壁部50の中心孔50aには、第1小径部46aが挿入されている。また、第1端壁部50の外周端50bは側壁部52に当接している。よって、第1端壁部50は、側壁部52の端部52bの開口52cを塞いでいる。端部52bは、側壁部52における第1小径部46a側の端部である。
つまり、第1端壁部50は、ケース本体48の開口を塞ぐ蓋である。
【0049】
また、第1端壁部50の内面50cは、環状端面44cに当接している。環状端面44cは、大径部44における第1小径部46a側の端面であり、大径部44の外周面44aと、第1小径部46aの外周面46a1とを繋ぐ面である。第1端壁部50は、第1小径部46aおよび環状端面44cによって、回転シャフト14に対して位置決めされる。
【0050】
ケース本体48は、ねじ等(図示省略)によって、回転シャフト14に一体に固定される。また、第1端壁部50は、ねじ等(図示省略)によって、回転シャフト14およびケース本体48に一体に固定される。これにより、ケース16は、回転シャフト14に一体に固定される。
【0051】
第2端壁部54の中心孔54aと、第2小径部46bと、の間は、密封されている。また、第1端壁部50の中心孔50aと、第1小径部46aと、との間は、密封されている。さらに、第1端壁部50の外周端50bと、側壁部52と、の間は、密封されている。これにより、ケース16の内部への切削油の侵入が防止される。
【0052】
回路モジュール40は、大径部44の外周面44aに設けられている。回路モジュール40に含まれる回路基板36は、矩形帯状のFPC(フレキシブル基板:Flexible printed circuits)である。よって、回路モジュール40は、変形可能である。回路モジュール40は、外周面44aに沿って変形した状態で巻き付けられている。
4つのレクテナ30は、第1端壁部50の内面50cに設けられている。
【0053】
図5は、図4中のV-V線矢視断面図である。図5は、中心軸Cに直交する平面に沿った転削工具4の径方向断面を示している。
図4および図5に示すように、4つのレクテナ30は、それぞれ、アンテナ基板58を有する。アンテナ基板58は、矩形板状である。
アンテナ基板58の第1面58aには、レクテナ30に含まれる受電アンテナ30aが実装される。アンテナ基板58の第2面58bは、内面50cに当接している。第1面58aは、アンテナ基板58における第2小径部46b側の面である。第2面58bは、アンテナ基板58における第1小径部46a側の面である。
【0054】
4つのアンテナ基板58は、内面50cに固定されている。図5に示すように、4つのアンテナ基板58は、回転シャフト14を取り囲むように周方向に等間隔(90度間隔)で配置されている。また、複数のアンテナ基板58の長手方向は、中心軸Cを通過する径方向の直線に直交する。
このように、複数のレクテナ30(複数のアンテナ基板58)は、中心軸Cを中心とする周方向に沿って等間隔に設けられる。
【0055】
図5に示すように、アンテナ基板58の第1面58aには、受電アンテナ30aの他、回路チップ60が実装されている。
受電アンテナ30aは、一対のアンテナ素子30a1と、一対の線路30a2と、を含む。一対のアンテナ素子30a1および一対の線路30a2は、第1面58a上にパターン形成された銅箔等の金属箔である。
一対のアンテナ素子30a1は、アンテナ基板58の長手方向に沿った線状を有する。一対のアンテナ素子30a1は、アンテナ基板58の長手方向に沿って一列に設けられている。一対のアンテナ素子30a1を有する受電アンテナ30aは、ダイポールアンテナを構成する。
【0056】
一対の線路30a2は、一対のアンテナ素子30a1の端部と、回路チップ60と、を接続する。
回路チップ60は、整流回路30bを含む回路チップである。また、回路チップ60には、線路39が接続される。線路39は、上述のように、回路モジュール40のコネクタ38に繋がる線路である。
【0057】
図6は、回路モジュール40を平面上に延ばしたときの図である。
回路モジュール40(回路基板36)は、矩形帯状である。回路モジュール40は、第1端部40aと、第2端部40bと、を有する。回路モジュール40の長手方向の長さは、大径部44の外周よりも僅かに短い。よって、回路モジュール40が大径部44に巻き付けられたときに、第1端部40aと、第2端部40bと、の間に僅かな隙間が設けられる(図4および図5参照)。
【0058】
上述のように、回路モジュール40の回路基板36には、4つのセンサ20と、4つのコネクタ38とが実装されている。
さらに、回路基板36には、第1回路チップ62と、第2回路チップ64と、第3回路チップ66と、が実装されている。
【0059】
4つのコネクタ38、および回路チップ62、64、66は、回路基板36の外面36aに実装されている。4つのセンサ20は、回路基板36の内面36bに実装されている。外面36aは、回路モジュール40が大径部44に巻き付けられたときに、外側に向く面である。内面36bは、外面36aの反対面であり、回路モジュール40が大径部44に巻き付けられたときに、内側に向く面である。
【0060】
4つのセンサ20は、回路モジュール40の長手方向に沿って並べて設けられている。4つのセンサ20は、回路モジュール40が大径部44に巻き付けられたときに、周方向に沿って等間隔で配置されるように設けられている。
【0061】
4つのコネクタ38は、4つのセンサ20の位置に対応して回路モジュール40の長手方向に沿って設けられている。よって、4つのコネクタ38も、回路モジュール40が大径部44に巻き付けられたときに、周方向に沿って等間隔で配置されるように設けられている。
4つのコネクタ38は、4つのセンサ20よりも第1長辺36c寄りに設けられている。第1長辺36cは、第1小径部46a側に位置する回路基板36の長辺である。
【0062】
回路チップ62、64、66は、回路モジュール40の長手方向に沿って並べて設けられている。
回路チップ62、64、66は、4つのセンサ20よりも第2長辺36d寄りに設けられている。第2長辺36dは、第2小径部46b側に位置する回路基板36の長辺である。
【0063】
第1回路チップ62は、チップ本体62aと、通信アンテナ23と、を有する。通信アンテナ23は、チップ本体62aの外面62a1に設けられている。チップ本体62aは、無線通信回路22を含む回路チップである。
回路モジュール40の長手方向における第1回路チップ62の位置は、4つのセンサ20のうちの第1端部40aに最も近いセンサ20の位置に対応している。
【0064】
第2回路チップ64は、充電制御回路24と、蓄電部26と、を含む回路チップである。
回路モジュール40の長手方向における第2回路チップ64の位置は、4つのセンサ20のうちの中央に配置された一対のセンサ20の中間位置である。
【0065】
第3回路チップ66は、合成回路28を含む回路チップである。
回路モジュール40の長手方向における第3回路チップ66の位置は、4つのセンサ20のうちの第2端部40bに最も近いセンサ20と、このセンサ20に隣り合うセンサ20と、の中間位置である。
【0066】
回路モジュール40が大径部44に巻き付けられたとき、4つのセンサ20は、大径部44の外周面44aに当接する。これにより、4つのセンサ20は、回転シャフト14の状態をモニタすることができる。
4つのセンサ20が外周面44aに接触することで、外周面44aと、回路基板36の内面36bと、の間に隙間が生じることがある。この隙間には、樹脂等が充填される。これによって、回路モジュール40は、外周面44aに密着固定される。
なお、センサ20は、リード線等によって回路基板36に接続されることで、回路基板36に実装されていてもよい。
【0067】
上記構成によれば、給電装置6が加工空間S内に送電アンテナ6aを有し、転削工具4が複数のレクテナ30(受電アンテナ回路)を有するので、加工空間S内で転削工具4への無線給電が可能となる。よって、加工中の転削工具4に対して給電が可能となり、加工時間が長時間になったとしても連続してセンサ20へ電力を与えることができ、センサ20によるモニタが可能となる。この結果、加工中の転削工具4の状態を適切にモニタすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、複数のレクテナ30がケース16の第1端壁部50の内面50cに設けられ、送電アンテナ6aが、回転シャフト14の主軸側端部14bから軸方向に離れた位置に配置されているので、回転シャフト14が回転したときの、送電アンテナ6aとレクテナ30との距離の変化が大きくなるのを抑制でき、送電アンテナ6aからの送電電力を安定して受電することができる。
【0069】
また、本実施形態では、第1端壁部50が樹脂により形成されているので、送電アンテナ6aからの送電電力が第1端壁部50を容易に透過でき、第1端壁部50によって送電電力の受信が阻害されるのを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、4つのレクテナ30が、回転シャフト14の中心軸Cを中心とする周方向に沿って等間隔に設けられているので、回転シャフト14が回転したときに、複数のレクテナ30のそれぞれが、均等に送電アンテナ6aからの送電電力を受信することができる。この結果、複数のレクテナ30は、安定して送電電力を受信することができる。
また、4つのレクテナ30を周方向に沿って等間隔に設けることで、転削工具4全体の質量の不釣り合いを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、4つのセンサ20が実装され、4つのセンサ20へ電力を供給するための4つの線路39を介して4つのレクテナ30が接続される回路基板36を備えるので、回路基板36(回路モジュール40)を、回転シャフトの外周面といった第1端壁部50の内面50c以外の部分に設けることができる。
これにより、内面50cにおけるレクテナ30を配置するためのスペースを大きく確保することができる。
【0072】
〔第1実施形態の変形例について〕
図7は、第1実施形態の変形例に係る転削工具4の径方向の断面図である。
本変形例の転削工具4は、1つのレクテナ30を有しており、このレクテナ30のアンテナ素子30a1がループ素子である点において、上記実施形態と相違する。
【0073】
本実施形態のレクテナ30のアンテナ基板58は、平板環状である。アンテナ基板58は、アンテナ基板58の中心と、中心軸Cと、が一致するように、内面50cに固定される。
アンテナ基板58の第1面58aに実装される受電アンテナ30aのアンテナ素子30a1は、C形のループ状を有する。よって、本実施形態の受電アンテナ30aは、ループアンテナを構成する。
一対の線路30a2は、アンテナ素子30a1の両端と、回路チップ60と、を接続する。回路チップ60は、線路39を介して回路モジュール40のコネクタ38に接続される。
【0074】
ループ素子であるアンテナ素子30a1は、中心軸Cがアンテナ素子30a1の中心Pを通過するように、第1面58aに設けられている。
このため、回転シャフト14が回転した場合においても、送電アンテナ6aに対するアンテナ素子30a1の相対的な位置の変化が抑制され、送電アンテナ6aからの送電電力を安定して受電することができる。
また、中心軸Cが、アンテナ素子30a1の中心Pを通過することで、転削工具4全体の質量の不釣り合いを抑制することができる。
【0075】
図8は、第1実施形態の他の変形例に係る転削工具4の軸方向の平面に沿った断面図である。
本変形例では、ケース16の第1端壁部50が主軸10側の第2小径部46bに外嵌固定されており、第1端壁部50が回路モジュール40および大径部44に対して主軸10側に設けられている点において上記実施形態と相違する。
【0076】
本変形例においても、複数のレクテナ30がケース16の端壁部の内面に設けられ、送電アンテナ6aが、回転シャフト14の主軸側端部14bから軸方向に離れた位置に配置されているので、回転シャフト14が回転したときの、送電アンテナ6aとレクテナ30との距離の変化が大きくなるのを抑制でき、送電アンテナ6aからの送電電力を安定して受電することができる。
【0077】
また、本実施形態では、第1端壁部50が回路モジュール40および大径部44に対して主軸10側に設けられており、送電アンテナ6aが、回転シャフト14の主軸側端部14bから軸方向に離れた位置に配置されているので、ケース本体48等、送電アンテナ6aと、複数のレクテナ30と、の間に配置される障害物を少なくすることができる。この結果、送電アンテナ6aからの送電電力をより安定して受電することができる。
【0078】
〔第2実施形態に係る転削工具について〕
図9は、第2実施形態に係る転削工具4が有する回路モジュール40を示す図である。
本実施形態では、回路モジュール40の回路基板36が、第1基板部70と、複数(図例では3つ)の第2基板部72と、を有している点において第1実施形態と相違する。
【0079】
第1基板部70は、矩形帯状である。第1基板部70は、回転シャフト14の大径部44の外周面44aに沿って変形した状態で巻き付けられる。第1基板部70の外面70aには、4つのコネクタ38が実装されている。第1基板部70の内面70bには、4つのセンサ20が実装されている。外面70aは、第1基板部70が大径部44に巻き付けられたときに、外側に向く面である。内面70bは、第1基板部70が大径部44に巻き付けられたときに、内側に向く面である。
4つのコネクタ38および4つのセンサ20は、第1実施形態と同様、回路モジュール40の長手方向に沿って並べて設けられている。
【0080】
図9に示すように、3つの第2基板部72は、長辺70cに接続されている。長辺70cは、第1小径部46a側に位置する第1基板部70の長辺である。
3つの第2基板部72は、それぞれ、矩形状を有する。第2基板部72は、折り曲げ可能な帯状部74を介して長辺70cに接続されている。
回路モジュール40の長手方向における3つの第2基板部72の位置は、4つのコネクタ38のうち互いに隣り合う一対のコネクタ38の中間位置である。
3つの第2基板部72のうち、第1端部40a側の第2基板部72には、第1回路チップ62が実装されている。
3つの第2基板部72のうち、第2端部40b側の第2基板部72には、第3回路チップ66が実装されている。
3つの第2基板部72のうち、中央の第2基板部72には、第2回路チップ64が実装されている。
【0081】
図10は、第2実施形態に係る転削工具4の径方向の断面図である。
図10に示すように、回路基板36の第1基板部70は、大径部44の外周面44aに巻き付けられる。第1基板部70は、第1実施形態と同様の方法で外周面44aに固定される。
【0082】
3つの第2基板部72それぞれの実装面72aは、第2小径部46b側を向く。実装面72aとは、第2基板部72において回路チップが実装されている面である。
また、実装面72aの反対面は、内面50cに当接し、内面50cに固定されている。
これにより、3つの第2基板部72は、それぞれ、第1端壁部50の内面50cに対して対向配置される。
また、3つの第2基板部72は、4つのレクテナ30と同様に、周方向に沿って等間隔に設けられている。
これにより、3つの第2基板部72が転削工具4全体の動バランスを乱すのを抑制でき、転削工具4全体の質量の不釣り合いを抑制することができる。
【0083】
この場合、実装面72aが、回転シャフト14の回転によって生じる遠心力の方向に沿っているので、前記遠心力が回路チップ62、64、66と第2基板部72とを離間する方向に作用するのを抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態では、通信アンテナ23によってセンサ20の出力を送信する無線通信回路22(チップ本体62a)を含む第1回路チップ62が第2基板部72に実装されているので、通信アンテナ23を第1端壁部50に近接して配置することができる。よって、センサ20の出力を通信アンテナ23によって送信する際、第1端壁部50以外の構成がセンサ20の出力の送信を阻害するのを防止でき、適切にセンサ20の出力の送信を行うことができる。
【0085】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
上記各実施形態では、レクテナ30を第1端壁部50の内面50cに設けた場合を例示したが、レクテナ30は、ケース16内に収容されていればよく、側壁部52の内面や、第2端壁部54の内面に設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、ケース16が円環状を有する場合を例示したが、ケース16の外形は、例えば、6角形、8角形といったように正多角形を有していてもよい。
また、上記各実施形態では、受電アンテナ30aがダイポールアンテナを構成する場合と、ループアンテナを構成する場合を例示した。しかし、受電アンテナ30aは、1または複数のパッチ素子を有するパッチアンテナを構成するものであってもよい。
【0086】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 切削加工システム
2 工作機械
4 転削工具
6 給電装置
6a 送電アンテナ
6b 送電部
7 外部装置
8 コラム
10 主軸
14 回転シャフト
14a チップ側端部
14b 主軸側端部
16 ケース
20 センサ
22 無線通信回路
23 通信アンテナ
24 充電制御回路
26 蓄電部
28 合成回路
30 レクテナ
30a 受電アンテナ
30a1 アンテナ素子
30a2 線路
30b 整流回路
36 回路基板
36a 外面
36b 内面
36c 第1長辺
36d 第2長辺
38 コネクタ
39 線路
40 回路モジュール
40a 第1端部
40b 第2端部
44 大径部
44a 外周面
44b 環状端面
44c 環状端面
46a 小径部
46a1 外周面
46b 小径部
46b1 外周面
48 ケース本体
50 第1端壁部
50a 中心孔
50b 外周端
50c 内面
52 側壁部
52a 端部
52b 端部
52c 開口
54 第2端壁部
54a 中心孔
54b 内面
58 アンテナ基板
58a 第1面
58b 第2面
60 回路チップ
62 第1回路チップ
62a チップ本体
62a1 外面
64 第2回路チップ
66 第3回路チップ
70 第1基板部
70a 外面
70b 内面
70c 長辺
72 第2基板部
72a 実装面
74 帯状部
100 電源
C 中心軸
P 中心
S 加工空間
【要約】
本開示の実施形態に係る切削加工システムは、工作機械の加工空間に設けられる送電アンテナを有する給電装置と、前記加工空間に配置される転削工具と、を備え、前記転削工具は、前記工作機械によって回転駆動される回転シャフトと、前記回転シャフトに設けられるセンサと、前記回転シャフトに設けられ、前記センサを収容するケースと、前記ケースに収容され、前記送電アンテナからの送電電力を受電する1または複数の受電アンテナ回路と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10