(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車両の安全制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/12 20120101AFI20241203BHJP
B62D 33/04 20060101ALI20241203BHJP
B60J 7/08 20060101ALI20241203BHJP
F16H 59/50 20060101ALI20241203BHJP
F16H 61/18 20060101ALI20241203BHJP
F16H 63/48 20060101ALI20241203BHJP
B60K 23/00 20060101ALI20241203BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60W50/12
B62D33/04 C
B60J7/08 P
F16H59/50
F16H61/18
F16H63/48
B60K23/00 C
B60T7/12 B
B60T7/12 A
(21)【出願番号】P 2020074286
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3070805(JP,U)
【文献】特開2007-285421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0162413(US,A1)
【文献】特開平08-218712(JP,A)
【文献】特開平11-048787(JP,A)
【文献】特開2005-176545(JP,A)
【文献】特開2015-227709(JP,A)
【文献】中国実用新案第206416852(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 ー 60/00
B62D 31/00 ー 39/00
B60J 7/00 ー 9/04
B60K 23/00 ー 23/08
B60S 3/00 ー 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開ボタンの押下によりトラックの荷室の開動作をさせ、閉ボタンの押下により前記荷室の閉動作をさせる開閉スイッチと、
前記トラックの荷室の開閉情報を取得する開閉情報取得部と、
走行動力伝達可能レンジ及び走行動力伝達不可レンジを含む前記トラックのシフトレンジを選択可能なシフト操作部と、
前記トラックの駐車状態を維持するための制動をかけるパーキングブレーキと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記トラックの車速を検知し、前記車速が所定車速以上である場合、前記シフト操作部により前記走行動力伝達可能レンジが選択されている場合、及び、前記パーキングブレーキが解除状態である場合、の少なくともいずれかの条件を満たしている場合は、前記開閉スイッチによる前記荷室の開放を禁止する開放禁止制御を行い、
前記車速が所定車速未満であり、前記シフト操作部により前記走行動力伝達不可レンジが選択されており、かつ、前記パーキングブレーキが作動状態である場合には、前記トラックの駆動源の駆動及び停止を検知し、前記駆動源が駆動している状態で、前記開閉情報取得部により前記荷室の開情報を取得した場合、前記シフト操作部によりシフトレンジを走行動力伝達可能レンジに変更すること、及び、前記パーキングブレーキによる制動を解除すること、の少なくともいずれか一方を禁止する走行禁止制御を行う
、
トラックの安全制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記シフト操作部によりシフトレンジを走行動力伝達可能レンジに変更することを禁止する走行禁止制御として、前記シフト操作部によるシフトレンジの選択操作を機械的に禁止する、
請求項1に記載のトラックの安全制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記シフト操作部によりシフトレンジを走行動力伝達可能レンジに変更することを禁止する走行禁止制御として、前記シフト操作部により選択されたシフトレンジを示す信号を無効とする、
請求項1に記載のトラックの安全制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記開放禁止制御を実行中に前記開閉情報取得部により前記荷室の開情報を取得した場合には、取得した開情報を無効とする、
請求項
1から3のいずれか一項に記載のトラックの安全制御装置。
【請求項5】
前記走行動力伝達不可レンジは、ニュートラルレンジを含む、
請求項1から
4のいずれか一項に記載のトラックの安全制御装置。
【請求項6】
前記走行動力伝達不可レンジは、パーキングレンジを含む、
請求項1から
5のいずれか一項に記載のトラックの安全制御装置。
【請求項7】
前記荷室は少なくとも側面を開閉するウィングを有する、
請求項1から
6のいずれか一項に記載のトラックの安全制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷室の開閉制御に係る車両の安全制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの車両は、車両の運転席の後部に荷物を積み込むための荷室が備えられているものがある。例えば、特許文献1には、ウィングタイプの荷室を備えた車両が開示されている。このような、ウィングタイプの荷室は、ウィングが車幅方向に開閉する。このように車幅方向に開くことで、運転者又は作業者は、車両の車幅方向から荷物の出し入れができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、荷室が完全に閉じていないにも関わらず、運転者がそれに気が付かずに、車両を走行させてしまう可能性がある。また、車両走行中に荷室の開閉スイッチが何らかの衝撃等により誤作動して、車両走行中に荷室が開いてしまう可能性もある。
【0005】
以上から、本願の解決すべき課題は、荷室が開いた状態での車両走行を防止することができる車両の安全制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
(1)本適用例に係る車両の安全制御装置は、車両の荷室の開閉情報を取得する開閉情報取得部と、走行動力伝達可能レンジ及び走行動力伝達不可レンジを含む前記車両のシフトレンジを選択可能なシフト操作部と、前記車両の駐車状態を維持するための制動をかけるパーキングブレーキと、前記開閉情報取得部により前記荷室の開情報を取得した場合、前記シフト操作部によりシフトレンジを走行動力伝達可能レンジに変更すること、及び、前記パーキングブレーキによる制動を解除すること、の少なくともいずれか一方を禁止する走行禁止制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
つまり、荷室が開いている場合は、シフト操作部または/及びパーキングブレーキをロックすることで、車両を走行可能状態にしないようにしている。これにより、荷室が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0009】
(2)上記(1)の適用例において、前記制御部は、前記車両のシフトレンジを走行動力伝達可能レンジに変更することを禁止する走行禁止制御として、前記シフト操作部によるシフトレンジの選択操作を機械的に禁止してもよい。このようにシフト操作部によるシフトレンジの選択操作を機械的に禁止することで、確実にシフトレンジの変更を防止でき、運転者に対してシフト操作が禁止されていることを容易に認識させることができる。
【0010】
(3)上記(1)の適用例において、前記制御部は、前記シフト操作部によりシフトレンジを走行動力伝達可能レンジに変更することを禁止する走行禁止制御として、前記シフト操作部により選択されたシフトレンジを示す信号を無効としてもよい。このようにシフト操作部によるシフトレンジの選択操作を電気的に禁止することで、簡易にシフトレンジの変更を防止することができる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの適用例において、さらに、前記車両の荷室の開閉指示を行う開閉スイッチを備え、前記制御部は、前記シフト操作部により前記走行動力伝達可能レンジが選択されている場合、及び、前記パーキングブレーキが解除状態である場合、の少なくともいずれかの条件を満たしている場合は、前記開閉スイッチによる前記荷室の開放を禁止する開放禁止制御を行ってよい。つまり、走行動力伝達可能レンジが選択されている場合や、パーキングブレーキが解除されている場合には、車両が走行可能状態にあることから、このような状態にあるときには荷室の開放を禁止することで、荷室が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0012】
(5)上記(4)の適用例において、さらに、前記車両の車速を検知する車速検知部を備え、前記制御部は、前記車速検知部により検知した車速が所定の車速以上である場合にも、前記開放禁止制御を行ってもよい。このように、車速からも車両の走行状態を判定することで、より正確に車両の走行を検出し、より確実に荷室が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0013】
(6)上記(4)又は(5)の適用例において、前記制御部は、前記開放禁止制御を実行中に前記開閉情報取得部により前記荷室の開情報を取得した場合には、取得した開情報を無効としてもよい。このように、荷室の開放禁止制御を実行しているにも関わらず、荷室の開情報を取得した場合には、当該開情報は誤検知と判断して無効とする。これにより誤検知による開情報に基づいた他の装置の誤動作等を防ぐことができ、より確実に荷室が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0014】
(7)上記(1)から(6)のいずれかの適用例において、前記走行動力伝達不可レンジは、ニュートラルレンジを含んでよい。これにより、走行動力伝達不可レンジにニュートラルレンジを含んだ車両において、荷室が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0015】
(8)上記(1)から(7)のいずれかの適用例において、前記走行動力伝達不可レンジは、パーキングレンジを含んでよい。これにより、走行動力伝達不可レンジにパーキングレンジを含んだ車両において、荷室が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0016】
(9)上記(1)から(8)のいずれかの適用例において、前記荷室は少なくとも側面を開閉するウィングを有してもよい。これにより、荷室を開閉するウィングを有する車両において、ウィング9が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0017】
(10)本適用例に係る車両の安全制御装置は、車両の荷室の開閉指示を行う開閉スイッチと、走行動力伝達可能レンジ及び走行動力伝達不可レンジを含む前記車両のシフトレンジを選択可能なシフト操作部と、前記車両の駐車状態を維持するためのパーキングブレーキと、前記シフト操作部により前記走行動力伝達可能レンジが選択されている場合、及び、前記パーキングブレーキが解除状態である場合、の少なくともいずれかの条件を満たしている場合は、前記開閉スイッチによる前記荷室の開放を禁止する開放禁止制御を行う制御部と、を備える。
【0018】
つまり、走行動力伝達可能レンジが選択されている場合や、パーキングブレーキが解除されている場合には、車両が走行可能状態にあることから、このような状態にあるときには荷室の開放を禁止することで、荷室が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る安全制御装置を搭載したトラックの全体斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る安全制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る安全制御装置のECUにより実行される安全制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
【0021】
図1には、本発明の一実施形態に係るトラック(以下、車両という)の全体斜視図が示されている。
【0022】
本実施形態に係る車両の安全制御装置は、開閉する荷室を搭載した車両に適用可能であるが、ここでは、ウィングボディ型のバンボディ(荷室)を有するいわゆるウィングタイプのトラックに適用した場合を説明する。
【0023】
図1に示すように、車両1は、車両本体2の車両後部にウィングボディ型の荷室3を架装した貨物用車両である。車両本体2の前部には図示しないエンジンを搭載し、その上に運転席を含むキャブ4が配置されている。
【0024】
荷室3は、車両前後方向に長い直方体形状をなしており、床面を構成する床部材5と、前面を構成する前壁6と、後面を構成する後面枠7及び当該後面枠7により形成される開口部を開閉する観音開きのリアドア8と、を有している。さらに、荷室3は、上面から側面を構成する左右一対のウィング9と、側面の下部を構成するアオリ10とを有している。
【0025】
ウィング9は、閉状態において、荷室3の上面の車両左右方向半分に相当する屋根部9aと、屋根部9aからアオリ10までの部分の側壁部9bとからなる、横断面L字状をなしている。本実施形態では、ウィング9は左右対称に設けられており、以下、左側ウィングを対象として説明する。
【0026】
ウィング9は、荷室3の上面中央にて車両前後方向に延びたセンターレール11を支点として、上下方向に回動することで、荷室3の側面から上面にかけて開閉可能である。また、アオリ10は、床部材5の側端辺を支点に上下方向に回動自在である。このウィング9が閉じ、アオリ10が車高方向上側に位置しているときに、荷室3の側面は閉じた状態となる。なお、ウィング9は車幅方向の片側のみが開閉するタイプでもよい。
【0027】
ウィング9は、屋根部9aの前部と荷室3の前壁6上部とを連結する油圧シリンダ21aと、屋根部9aの後部と荷室3の後面枠7上部とを連結する油圧シリンダ21bにより、開閉駆動される。ウィング9の開閉指示を行う開閉スイッチ22は、荷室3の後面枠7の左右両側にそれぞれ設けられている。
【0028】
このように構成された車両1には、当該荷室のウィング9の開閉に関する安全制御装置が搭載されている。
図2には、本実施形態の安全制御装置31の概略構成を示すブロック図が示されており、以下同図に基づき説明する。
【0029】
安全制御装置31は、
図2に示す破線を境界として、架装側に、開閉スイッチ22、開閉機構23、開閉制御部24、開閉センサ25(開閉検知部)を有する。また、安全制御装置31は、車両側に、ECU32(制御部)、シフト操作部33、パーキングブレーキ34、車速センサ35(車速検知部)、ウィング開閉情報取得部36、架装制御スイッチ37を、有する。
【0030】
まず、安全制御装置31の架装側の構成を説明する。
【0031】
開閉スイッチ22は、例えば押しボタンスイッチであり、「開」ボタンと「閉」ボタンの1組で、
図1で示した通り、例えば後面枠7に設置されている。開閉スイッチ22は、開閉制御部24の電気回路の一部を構成し、例えば「開」ボタンの押下を続けることにより直流電動モータが油圧ポンプを作動して油圧を発生させ、油圧シリンダ21a、21bによりウィング9の開動作を継続して行うことが可能である。また、「開」ボタンの押下を解除することによりウィング9の開動作が停止する。「閉」ボタンによる閉動作についても、「閉」ボタンの押下に応じて開閉制御部24が開閉機構23を制御することでウィング9を閉動作させる。
【0032】
開閉機構23は、上述の油圧シリンダ21a、21b、直流電動モータ、油圧ポンプ、の他、バッテリ、オイルタンク、バルブ類、これらを接続するパイプやホース類を含む。
【0033】
開閉制御部24は、リレーやスイッチ類を有する電気回路であり、開閉スイッチ22の状態に応じて直流電動モータを駆動させたり、上述した開閉機構23の油圧回路の各種装置を作動させたり、することが可能である。開閉制御部24は、後述する架装制御スイッチ37がオン状態でのみ動作する。
【0034】
開閉センサ25は、例えばリミットスイッチや近接センサであり、例えばウィング9、前壁6、後面枠7、又はセンターレール11に設置されて、ウィング9が開いた状態を検知する機能を有する。なお、閉じた状態のみ、開閉の両状態、又は開角度を検知してもよい。
【0035】
次に、安全制御装置31の車両側の構成について説明する。
【0036】
シフト操作部33は、例えばシフトレバーを有し、運転席付近に設置される。シフト操作部33は、運転者がシフトレバーの位置を変更することによりシフトレンジを選択可能である。本実施形態では、シフトレンジとして、前進駆動を行うD(ドライブ)レンジ、及び後退駆動を行うR(リバース)レンジからなる走行動力伝達可能レンジ、トランスミッションのギアをニュートラルとするN(ニュートラル)レンジからなる走行動力伝達不可レンジがある。つまり、走行動力伝達可能レンジとは、エンジンにより発生した動力が車輪に伝達し車両1を前進又は後退可能な状態となるシフトレンジであり、走行動力伝達不可レンジとは、エンジンに発生した動力が車輪にまで伝わらない状態となるシフトレンジである。そして、シフト操作部33は、ECU32と電気的に接続されており、当該ECU32に選択されているシフトレンジに関するシフト位置情報を伝達可能である。
【0037】
パーキングブレーキ34は、例えばホイールパーキングブレーキであり、車両1の駐車状態を維持する制動機能を有する。当該パーキングブレーキ34の操作部は、運転席横のサイドレバー式であったり、足で踏み込む足踏み式であったり、スイッチ式であったり、してもよい。
【0038】
車速センサ35は、車両1の車速を検知する機能を有する。
【0039】
ウィング開閉情報取得部36は、架装側の開閉センサ25からのウィング9の開閉情報を取得する機能を有する。
【0040】
架装制御スイッチ37は、架装側の開閉制御部24のオン状態とオフ状態を切り替えるためのスイッチであり、架装制御スイッチ37をオン状態にすることにより開閉制御部24の作動が可能になる。架装制御スイッチ37は、ECU32と電気的に接続されており、当該ECU32からの指示に応じてオン、オフの切り替えを実施可能である。また、架装制御スイッチ37は手動操作も可能であり、例えばキャブ4の運転席に近くに設置されたスイッチ等で操作可能である。
【0041】
ECU32は、中央処理装置(CPU)、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM、RAMなど)、入出力装置、タイマカウンタなどを備える制御ユニットである。ECU32は、車両内通信ネットワークであるCAN(Controller Area Network)を介して、車両1に搭載された各種機器や他の制御ユニットから情報を取得し、取得した情報に基づき各種装置を制御可能である。
【0042】
例えば本実施形態のECU32は、シフト操作部33からのシフト位置情報や、パーキングブレーキ34からパーキングブレーキのオン・オフ情報、車速センサ35からの車速情報、ウィング開閉情報取得部36からのウィング9の開閉情報、が入力される。一方、ECU32は、シフト操作部33に対してシフト操作を禁止するシフトロック、パーキングブレーキ34の操作を禁止するパーキングロック、架装制御スイッチのオン・オフ切替制御等が可能である。その他にも、ECU32は、図示しないエンジンの駆動及び停止の切り替えやエンジンと接続されたトランスミッションに対する変速制御等も制御可能であってもよい。
【0043】
このように本実施形態のECU32は、主に車両1の走行・停止状態、及びウィング9の開閉状態について監視を行い、また、シフト操作部33及びパーキングブレーキ34、架装制御スイッチ37を制御可能な制御ユニットである。なお、当該ECU32は本実施形態では説明の便宜上一つの制御ユニットとして説明しているが、エンジン制御を行うエンジンECUやトランスミッションの制御を行うトランスミッションECU等、複数のECUにより構成されていてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、ECU32とウィング開閉情報取得部36を別々に記載しているが、これに限らず、例えば、ECU32がウィング開閉情報取得部36の機能も兼ねるような、一体のものであっても良い。
【0045】
本実施形態の安全制御装置31のECU32は、ウィング9が開いている場合に、キーオン状態又はエンジンアイドリング状態を維持しつつ車両1を走行させない走行禁止制御を実行可能である。また、安全制御装置31は、シフト操作部33において動力伝達可能レンジが選択された状態又はパーキングブレーキ34が解除(オフ状態)されている場合、即ち車両走行が可能な状態にある場合は、荷室3が開かない開放禁止制御を実行可能である。以下、走行禁止制御及び開放禁止制御について詳しく説明する。尚、各制御は単体で実装されてもよい。
【0046】
図3には、本実施形態に係る安全制御装置31のECU32が実行するウィング9の安全制御ルーチンを示すフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って説明する。なお、ECU32は、当該安全制御ルーチンを実行中、エンジンは作動状態で維持している。
【0047】
まず、ステップS1として、ECU32は、シフト操作部33からシフト位置情報を取得し、現在選択されているシフトレンジが走行動力伝達不可レンジ(Nレンジ)であるか否かを判定する。当該判定結果が真(YES)である場合は、ステップS2に進む。
【0048】
ステップS2として、ECU32は、パーキングブレーキ34が作動状態(オン状態)であるか否かを判定する。当該判定結果が真(YES)である場合は、ステップS3に進む。
【0049】
ステップS3として、ECU32は、車速センサ35により検出された車速が所定車速未満であるか否かを判定する。当該所定車速は、車両1が停車していると判断できる車速に設定されている。当該判定結果が真(YES)である場合は、ステップS4に進む。つまり、ステップS1からS3の判定結果が全て真(Yes)である場合は、車両1が停車状態にあると判断可能である。
【0050】
ステップS4として、ECU32は、架装制御スイッチ37をオン状態とする。これにより、架装側の開閉制御部24の作動が可能となる。
【0051】
次にステップS5として、ECU32は、開閉センサ25により検知したウィング9の開閉情報についてウィング開閉情報取得部36を介して取得し、ウィング9が「開」であるか否かを判定する。当該判定結果が真(YES)である場合、即ちウィング9が開状態である場合はステップS6に進む。
【0052】
ステップS6として、ECU32は、シフト操作部33に対して走行動力伝達可能レンジ(具体的にはDレンジ、Rレンジ)に変更することを禁止するシフト変更禁止制御を行う。具体的には、ECU32は、シフト変更禁止制御としてシフト操作部33によるシフトレンジの選択操作を機械的に禁止する。例えばシフト操作部33のシフトレバーにロック機構が設けられており、当該ロック機構を作動して機械的にシフトレンジの選択操作を禁止する。または、シフト操作部33が電子制御式である場合は走行動力伝達可能レンジ(Dレンジ、Rレンジ)へ切り替える信号を無効とする、電気的なロックを行ってもよい。
【0053】
続いてステップS7として、ECU32は、パーキングブレーキ34に対して制動を解除することを禁止するパーキングブレーキ解除禁止制御を行う。具体的には、ECU32は、パーキングブレーキ解除禁止制御としてパーキングブレーキ34の制動操作を機械的に禁止する。例えばパーキングブレーキ34の操作部にロック機構が設けられており、当該ロック機構を作動して機械的にパーキングブレーキ34の操作を禁止する。または、パーキングブレーキ34が電子制御式である場合はパーキングブレーキ34の制動を解除する信号を無効とする、電気的なロックを行ってもよい。
【0054】
そして、ステップS8として、ECU32は、ウィング開閉情報取得部36によりウィング9が「閉」であるか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合、即ちウィング9が未だに開状態である場合はステップS6に戻り、上記ステップS6のシフト変更禁止制御及びステップS7のパーキングブレーキ解除禁止制御を維持する。
【0055】
一方、当該ステップS8の判定結果が真(Yes)である場合、即ちウィング9が閉状態となった場合は、ステップS9に進む。
【0056】
ステップS9として、ECU32は、上記ステップS6のシフト変更禁止制御及びステップS7のパーキングブレーキ解除禁止制御を解除し、シフト操作部33及びパーキングブレーキ34の操作を可能とし当該ルーチンをリターンする。
【0057】
以上のステップS1からS9がECU32による走行禁止制御となる。
【0058】
一方、ECU32は、上記ステップS1において、シフトレンジが走行動力伝達不可レンジではない場合、即ちシフトレンジが走行動力伝達可能レンジ(Dレンジ、Rレンジ)である場合は、ステップS10に進む。またECU32は、上記ステップS2において、パーキングブレーキ34が作動状態ではない場合、即ちパーキングブレーキ34が解除状態(オフ状態)である場合も、ステップS10に進む。さらにECU32は、上記ステップS3において、車速センサ35により検出された車速が所定車速未満でない場合、即ち車速が所定車速以上である場合も、ステップS10に進む。
【0059】
ステップS10として、ECU32は、開閉制御部24を介して開閉スイッチ22をロックする。この開閉スイッチ22のロックは、例えば開閉スイッチ22に設けられた機械的なロック機構や、開閉スイッチ22の開信号を無効とする電気的なロックを行う。
【0060】
さらに、ステップS11として、ECU32は、架装制御スイッチ37をオフ状態とする。これにより架装側の開閉制御部24の作動が不可となり、開閉機構23は動作不能となる。
【0061】
ステップS12として、ECU32は、ウィング開閉情報取得部36が架装側の開閉センサ25から、ウィング9の開情報を取得したか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合は、当該ルーチンをリターンする。一方、当該判定結果が真(Yes)である場合はステップS13に進む。
【0062】
ステップS13として、ECU32は、車両1が走行可能状態にあり、開閉スイッチ22をロックし且つ架装制御スイッチ37をオフにした状態で、架装側の開閉センサ25より開状態が検知されたことから、当該開閉センサ25は誤検知している可能性があることから、運転者に対するアラートを発して、当該ルーチンをリターンする。
【0063】
以上のステップS1からS3及びS10からS13がECU32による開放禁止制御となる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る安全制御装置31のECU32は、車両1の荷室3の開閉情報を取得するウィング開閉情報取得部36により荷室3の開情報を取得した場合は、走行禁止制御として、シフト操作部33によりシフトレンジを走行動力伝達可能レンジ(Dレンジ、Rレンジ)に変更することを禁止するシフト変更禁止制御と、パーキングブレーキ34による制動を解除することを禁止するパーキングブレーキ解除禁止制御を行っている。
【0065】
つまり、荷室3が開いている場合は、シフト操作部33及びパーキングブレーキ34をロックすることで、車両1を走行可能状態にしないようにしている。これにより、荷室3が開いた状態での車両走行を防止することができる。なお、ECU32は、シフト操作部33及びパーキングブレーキ34をロックしているが、エンジンは停止させず、車両が停止中でもアイドリング状態としている。従って、エンジンの動力を利用する空調装置等の各種補機類は作動を維持することができる。
【0066】
また、ECU32は、シフト変更禁止制御において、シフト操作部33によるシフトレンジの選択操作を機械的に禁止している。具体的には、走行動力伝達不可レンジから走行動力伝達可能レンジへの選択操作を機械的に禁止する。このようにシフト操作部33によるシフトレンジの選択操作を機械的に禁止することで、確実に走行動力伝達可能レンジへの変更を防止でき、運転者に対してシフト操作が禁止されていることを容易に認識させることができる。
【0067】
また、ECU32は、シフト変更禁止制御において、シフト操作部33によるシフトレンジの選択操作に応じたシフトレンジを示す信号を無効とすることで、電気的に禁止してもよく、これにより簡易にシフトレンジへの変更を防止することができる。
【0068】
さらに、ECU32は、シフト操作部33により走行動力伝達可能レンジ(Dレンジ、Rレンジ)が選択されている場合、及び、パーキングブレーキ34が解除状態である場合、の少なくともいずれかの条件を満たしている場合は、開閉スイッチ22による荷室3の開放を禁止する開放禁止制御を行っている。つまり、走行動力伝達可能レンジが選択されている場合や、パーキングブレーキ34が解除されている場合には、車両1が走行可能状態にあることから、このような状態にあるときには荷室3の開放を禁止することで、荷室3が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0069】
さらに、ECU32は、車速センサ35により検知した車速が所定車速以上である場合にも、開放禁止制御を行っている。このように、車速からも車両1の走行状態を判定することで、より正確に車両の走行を検出し、より確実に荷室3が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0070】
また、ECU32は、開放禁止制御を実行中にウィング開閉情報取得部36により開閉センサ25からの開情報を取得した場合には、取得した開情報を無効としている。開閉センサ25は、車両走行による振動等により誤検知する場合もある。そこで荷室3の開放禁止制御を実行しているにも関わらず、荷室3の開情報を取得した場合には当該開情報は誤検知と判断して無効とすることで、誤検知による開情報に基づいた他の装置の誤動作等を防ぐことができ、より確実に荷室3が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0071】
また、上記実施形態において、走行動力伝達不可レンジは、Nレンジを含んでいることで、Nレンジを含んだ車両において、荷室3が開いた状態での車両走行を防止することができる。また、荷室3を開閉するウィング9を有する車両1において、ウィング9が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0072】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0073】
上記実施形態では、走行動力伝達可能レンジとしてD(ドライブ)レンジ、R(リバース)レンジ、走行動力伝達不可レンジとしてN(ニュートラル)レンジを例に説明したが、走行動力伝達可能レンジ及び走行動力伝達不可レンジはこれに限られるものではない。例えば、走行動力伝達不可レンジとしてP(パーキング)レンジを含んでもよい。これにより、走行動力伝達不可レンジにPレンジを含んだ車両において、荷室3が開いた状態での車両走行を防止することができる。
【0074】
また、シフト操作部は、フロアシフト、コラムシフト、インストルメントシフト、等のシフトレバーによるものに限られず、パドルシフト、ボタン式、ダイヤル式であってもよい。
【0075】
また、上記実施形態ではウィング9の開閉機構23を、電動モータを介した油圧シリンダ21a、21bとしているが、ウィングの開閉機構はこれに限られるものではなく、全て電動のアクチュエータであったり、空気圧を用いたアクチュエータであったりしてもよい。また、ウィングを手動により開閉可能であってもよい。
【0076】
上記実施形態のECU32は、走行禁止制御として、ウィング9の開閉情報が「開」の場合に、シフト変更禁止制御とパーキングブレーキ解除禁止制御の両方を実施しているが、ウィングの開閉情報が「開」の場合にいずれか一方の制御のみを行う構成としてもよい。
【0077】
また、上記実施形態の安全制御装置31は、車両として荷室3の側方が開閉するウィングタイプのトラックに搭載した場合を例に説明したが、車両のタイプはこれに限られない。例えば、本実施形態の荷室3のリアドア8や、乗用車の荷室(トランクルーム)にも適用可能である。
【0078】
また、上記実施形態の車両はエンジン駆動の車両であるが、車両の駆動源はエンジンに限られずエンジンとモータを駆動源とするハイブリッド車両や、モータのみを駆動源とする電気自動車や燃料電池車であってもよい。また、車両の変速機は自動変速機(オートマチックトランスミッション)であってもよいし、手動変速機(マニュアルトランスミッション)、AMT(オートマチックマニュアルトランスミッション)、CVT(無段変速機)等、変速機の形式は限定されない。
【0079】
また、電気自動車や燃料電池車などの車両は、変速機を備えない場合も考えられる。この場合、シフト操作部やシフトレンジなどは、車両を前進、後進、停車維持などさせる部品に対するものであっても良い。
【0080】
また、上記実施形態では、荷室3を開閉指示する開閉スイッチ22が架装側に設けられているが、車両側に設けられていてもよい。例えば架装制御スイッチ37が荷室を開閉指示する開閉スイッチを兼ねていてもよい。
【0081】
また、ECUは、シフト操作部が走行動力伝達可能レンジにある場合、又はパーキングブレーキが解除状態(オフ状態)である場合に、荷室が開状態となったときには、シフト操作部を自動的に走行動力伝達不可レンジに切り替えた上でシフト変更禁止制御を行ったり、パーキングブレーキを自動的に制動状態(オン状態)に切り替えた上でパーキングブレーキ解除禁止制御を行ったりしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 車両
2 車両本体
3 荷室
4 キャブ
8 リアドア
9 ウィング
10 アオリ
11 センターレール
21a、21b 油圧シリンダ
22 開閉スイッチ
23 開閉機構
24 開閉制御部
25 開閉センサ
31 安全制御装置
32 ECU(制御部)
33 シフト操作部
34 パーキングブレーキ
35 車速センサ(車速検知部)
36 ウィング開閉情報取得部
37 架装制御スイッチ