(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】支持層到達判定方法および判定支援システム
(51)【国際特許分類】
E02D 7/20 20060101AFI20241203BHJP
E02D 13/06 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
E02D7/20
E02D13/06
(21)【出願番号】P 2021057115
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】591147557
【氏名又は名称】日本ベース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】稲積 一訓
(72)【発明者】
【氏名】駒澤 辰弥
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-002524(JP,B1)
【文献】特開2019-078012(JP,A)
【文献】特開2019-031839(JP,A)
【文献】特開2008-274723(JP,A)
【文献】特開平05-287721(JP,A)
【文献】米国特許第04494613(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00 - 7/30
E02D 13/06
E02D 1/00
E21B 6/00 - 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状杭の中空部に挿入された掘削ロッドを有するアースオーガを用いて地盤を掘削しながら、前記管状杭に対して振動機を介して押込み力を付加することにより、前記管状杭を前記地盤に打設する中掘り杭工法において、前記管状杭が支持層に到達したことを判定する支持層到達判定方法であって、
前記アースオーガを駆動するオーガ駆動源の積分電流値である第1指標
に基づいて、前記管状杭が前記支持層に近い深度に到達したことを確認した後、
前記振動機を駆動する振動駆動源の積分出力値に基づく指
標に基づいて、前記管状杭が前記支持層に到達したことを判定する
支持層到達判定方法。
【請求項2】
前記積分出力値を第2指標として、前記管状杭が前記支持層に到達したことを判定する
請求項1に記載の支持層到達判定方法。
【請求項3】
前記積分出力値に基づいて算出される前記管状杭の支持力を第3指標として、前記管状杭が前記支持層に到達したことを判定する
請求項1または2に記載の支持層到達判定方法。
【請求項4】
管状杭の中空部に挿入された掘削ロッドを有するアースオーガを用いて地盤を掘削しながら、前記管状杭に対して振動機を介して押込み力を付加することにより、前記管状杭を前記地盤に打設する中掘り杭工法において、支持層への前記管状杭の到達を判定する判定者を支援する判定支援システムであって、
前記管状杭の先端部の深度、前記アースオーガを駆動するオーガ駆動源の積分電流値、および、前記振動機を駆動する振動駆動源の積分出力値を取得し、前記深度ごとの前記積分電流値である第1指標と前記深度ごとの前記積分出力値に基づく指標とを表示装置に表示する
判定支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中掘り杭工法において、鋼管杭などの管状杭が支持層に到達したことを判定する支持層到達判定方法、および、支持層への管状杭の到達を判定する判定者を支援する判定支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を建設する際には、地盤に打設された複数の鋼管杭(管状杭)を介して構造物の荷重を支持層に支持させる場合がある。こうした鋼管杭の打設工法として、中掘り抗工法が知られている。中掘り抗工法においては、例えば、鋼管杭の中空部に挿入された掘削ロッドを有するアースオーガを用いて地盤を掘削しながら、その鋼管杭に対して振動機を介して押込み力を付加することにより、鋼管杭を地盤に打設する。
【0003】
上述した鋼管杭は、支持層に到達している必要がある。これに関連して、例えば特許文献1には、アースオーガを駆動するオーガ駆動源の単位時間における積分電流値を指標として、支持層への鋼管杭の到達を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した積分電流値は、支持層に到達したとしてもその変化が明確に表れないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する支持層到達判定方法は、管状杭の中空部に挿入された掘削ロッドを有するアースオーガを用いて地盤を掘削しながら、前記管状杭に対して振動機を介して押込み力を付加することにより、前記管状杭を前記地盤に打設する中掘り杭工法において、前記管状杭が支持層に到達したことを判定する支持層到達判定方法であって、前記アースオーガを駆動するオーガ駆動源の積分電流値と、前記振動機を駆動する振動駆動源の積分出力値とに基づいて、前記管状杭が前記支持層に到達したことを判定する。
【0007】
上記課題を解決する判定支援システムは、管状杭の中空部に挿入された掘削ロッドを有するアースオーガを用いて地盤を掘削しながら、前記管状杭に対して振動機を介して押込み力を付加することにより、前記管状杭を前記地盤に打設する中掘り杭工法において、支持層への前記管状杭の到達を判定する判定者を支援する判定支援システムであって、
前記管状杭の先端部の深度、前記アースオーガを駆動するオーガ駆動源の積分電流値、および、前記振動機を駆動する振動駆動源の積分出力値を取得し、前記深度ごとの前記積分電流値と前記深度ごとの前記積分出力値とを表示装置に表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、振動機による押込み力を加味することで、アースオーガの掘削抵抗だけでなく、管状杭の貫入抵抗も支持層到達確認の指標にできる。これにより、土質柱状図と対比できる指標が増えることにより支持層到達確認の精度を向上させることができる。したがって、本発明によれば、支持層への管状杭の到達をより的確に判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】支持層到達判定方法および判定支援システムの一実施形態の説明に用いる杭打機の概略構成を示す図。
【
図2】判定支援システムの概略構成を示すブロック図。
【
図3】表示装置に表示される地盤情報グラフの一例を示す図。
【
図4】表示装置に表示される第1指標グラフの一例を示す図。
【
図5】表示装置に表示される第2指標グラフの一例を示す図。
【
図6】表示装置に表示される第3指標グラフの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1~
図6を参照して、支持層到達判定方法および判定支援システムの一実施形態について説明する。また、本実施形態では、本発明に係る「管状杭」が「鋼管杭12」であるものとして説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態においては、杭打機20を用いた中掘り抗工法により地盤11に中空状の鋼管杭12を打設する。鋼管杭12は、構造物の建設地内に複数打設され、構造物の荷重を支持層に支持させる。
【0012】
杭打機20は、ベースマシン21、マスト22、アースオーガ23、および、振動機24を備えている。
ベースマシン21は、クローラ25を含む下部走行体と操作室26を含む上部旋回体とを備えている。
【0013】
マスト22は、ベースマシン21に立設されている。マスト22内には、深度・速度計測用のワイヤが設けられている。マスト22には、昇降可能にアースオーガ23と振動機24とが取り付けられている。
【0014】
アースオーガ23は、鋼管杭12が打設される杭孔Hを掘削する。アースオーガ23は、ボックス31、オーガ駆動源32、および、掘削ロッド33を有している。
ボックス31は、マスト22に昇降可能に支持されている。ボックス31の昇降は、操作室26の操作者により制御される。オーガ駆動源32は、ボックス31内に収容されたモーターである。オーガ駆動源32は、掘削ロッド33を回転可能に支持している。掘削ロッド33は、上下方向に延びている。掘削ロッド33は、オーガ駆動源32で回転駆動されることにより、上下方向を回転中心として回転する。掘削ロッド33の先端(下端)には、掘削ヘッド34が取り付けられている。掘削ヘッド34は、揺動する一対(2つ)の掘削腕の先端に掘削刃が形成されている。掘削ロッド33は、地盤11へと打設される鋼管杭12の中空部に挿入されている。アースオーガ23は、掘削ロッド33を回転させながらボックス31を下降させることにより杭孔Hを掘削する。
【0015】
振動機24は、アースオーガ23のボックス31の下方に設けられている。振動機24は、鋼管杭12に対して押込み力を付加する。振動機24は、ボックス35、把持部36、および、振動駆動源37を有している。
【0016】
ボックス35は、マスト22に昇降可能に支持されている。ボックス35は、アースオーガ23のボックス31と同期して昇降する。把持部36は、ボックス35の下端部に支持されている。把持部36は、図示されない把持駆動源から駆動力が付与されることにより鋼管杭12を把持する。振動駆動源37は、ボックス35内に収容されている。振動駆動源37は、駆動により把持部36を上下方向に振動させる。振動駆動源37は、電動式や油圧式である。振動機24は、ボックス35の下降や把持部36の振動により鋼管杭12に対して押込み力を付加する。
【0017】
図2に示すように、杭打機20は、判定支援システム40を備える。判定支援システム40は、支持層への鋼管杭12の到達を判定する判定者を支援するシステムである。
判定支援システム40は、情報処理装置41を中心に構成されている。情報処理装置41は、各種情報を取得し、その取得した各種の情報、および、メモリーに記憶したプログラムや各種のデータに基づいて各種の処理を実行する。情報処理装置41は、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、或いは、それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスして利用可能なあらゆる媒体を含む。
【0018】
情報処理装置41には、例えば、深度計測器42、電流計測器43、出力計測器44、入力装置45、および、表示装置46などが電気的に接続されている。情報処理装置41、入力装置45、および、表示装置46は、操作室26に設置されていてもよいし、杭打機20から離れた場所に設置されてもよい。また、各種計測器42,43,44と情報処理装置41とが無線通信により接続されていてもよい。
【0019】
深度計測器42は、マスト22内のワイヤの繰り出し量を計測し、掘削ヘッド34の位置に応じた杭孔Hの深度(深さ)を計測する。
電流計測器43は、オーガ駆動源32を駆動するオーガ駆動電流値を計測する。
【0020】
出力計測器44は、振動駆動源37の出力値を計測する。出力値は、振動駆動源37が電動式である場合には駆動電流値であり、振動駆動源37が油圧式である場合には駆動油圧値である。この出力値は、鋼管杭12に対して振動機24が振動を与えたときに、鋼管杭12の先端部が接触している層が固いほど大きくなる。
【0021】
入力装置45は、操作室26内に配置されるキーボードやポインティングデバイス等を備える。入力装置45は、各種情報や各種処理の実行指示等を情報処理装置41に入力する。入力装置45と通じて入力される各種情報の一例は、複数の鋼管杭12を識別する識別情報などである。
【0022】
表示装置46は、各種計測器42,43,44の計測値や情報処理装置41が実行した各種処理の結果などを表示する。
情報処理装置41は、各種処理を実行する処理部50、地盤情報記憶部51、および、計測情報記憶部52を有する。情報処理装置41には、アースオーガ23の駆動操作および停止操作、振動機24の駆動操作および停止操作を示す信号が入力される。
【0023】
地盤情報は、構造物の建設地内における試験位置に対して事前に行った地盤調査の結果を示す情報である。地盤情報には、試験位置における深度ごとにN値(地盤の固さを示す指標)が規定されている。計測情報は、各種計測器42,43,44から入力された計測値を示す情報である。
【0024】
処理部50は、計測情報取得処理を実行する。計測情報取得処理において、処理部50は、各種計測器42,43,44から入力された計測値を取得し、その取得した計測値に基づく情報を計測情報として計測情報記憶部52の所定領域に格納する。
【0025】
処理部50は、所定の情報を表示装置46に出力して表示装置46の所定領域に表示させる各種出力処理を実行する。
各種出力処理として、処理部50は、計測値出力処理、地盤情報出力処理、第1指標出力処理、第2指標出力処理、および、第3指標出力処理を実行する。
【0026】
計測値出力処理において、処理部50は、各種計測器42,43,44から入力された計測値を表示装置46に出力する。
処理部50は、例えば、入力装置45を通じて指示されることにより地盤情報出力処理を実行する。地盤情報出力処理において、処理部50は、地盤情報記憶部51に記憶した地盤情報に基づいて生成した深度ごとのN値を示す地盤情報グラフ(土質柱状図など)を表示装置46に出力する。
図3に示すように、本実施形態の地盤情報グラフにおいては、深度40mの手前において支持層に到達している。
【0027】
処理部50は、例えば、アースオーガ23の駆動操作と同時期に第1指標出力処理を開始し、アースオーガ23の停止操作により第1指標出力処理を終了する。第1指標出力処理において、処理部50は、計測情報記憶部52に記憶した計測値情報に基づいて、各深度におけるオーガ駆動電流値を単位時間ごとに積分した積分電流値を第1指標として算出し、その算出した積分電流値を深度ごとに示す第1指標グラフを生成して表示装置46に出力する。この第1指標は、掘削ロッド33に対する掘削抵抗を示すものである。第1指標グラフは、上記地盤情報グラフに対応している。
図4に示すように、本実施形態の第1指標グラフにおいては、支持層付近における数値の変化が小さいことがみてとれる。
【0028】
処理部50は、鋼管杭12の先端部が支持層に近づいた時に入力装置45を通じて指示されることにより第2指標出力処理を開始する。例えば、処理部50は、振動機24の駆動操作と同時期に第2指標出力処理を開始する。処理部50は、処理の開始時を基準深度として、その基準深度から所定深度(例えば5~10m)だけ鋼管杭12が打設される期間、第2指標出力処理を実行する。第2指標出力処理において、処理部50は、計測情報記憶部52に記憶した計測値情報に基づいて、各深度における出力値を単位時間ごとに積分した積分出力値を第2指標として算出し、その算出した積分出力値を深度ごとに示す第2指標グラフを生成して表示装置46に出力する。第2指標グラフは、上記地盤情報グラフに対応している。
図5に示すように、本実施形態の第2指標グラフにおいては、支持層付近で数値が大きく上昇していることがみてとれる。
【0029】
処理部50は、第2指標出力処理と同時期に第3指標出力処理を実行する。第3指標出力処理において、処理部50は、計測情報記憶部52に記憶した計測値情報に基づいて、鋼管杭12の先端部における層の支持力を第3指標として算出し、その算出した支持力を深度ごとに示す第3指標グラフを生成して表示装置46に表示する。第3指標グラフは、上記地盤情報グラフに対応している。
図6に示すように、本実施形態の第3指標グラフにおいては、支持層付近で数値が大きく上昇していることがみてとれる。
【0030】
第1~第3指標出力処理において、処理部50は、その処理結果を示す指標情報を、鋼管杭12の識別情報と関連付けて、計測情報記憶部52の所定領域に格納する。処理部50は、入力装置45を通じて特定の鋼管杭12についての指標情報の表示が指示されると、その指標情報を表示装置46に表示する。
【0031】
(支持層到達判定方法の手順)
上述した判定支援システム40を用いた支持層到達判定方法の具体的な手順について説明する。構造物の建設地内においては、打設位置が標準貫入試験の試験位置に近い鋼管杭12から地盤11に打設される。情報処理装置41には、建設地における地盤情報が地盤情報記憶部51に予め記憶されている。
【0032】
まず、情報処理装置41に対して、入力装置45を通じて、打設対象となる鋼管杭12の識別情報を入力する。次に、アースオーガ23を駆動して杭孔Hを掘削しながらアースオーガ23および振動機24を下降させて鋼管杭12を打設する。このとき、情報処理装置41の処理部50は、地盤情報出力処理、計測値出力処理、および、第1指標出力処理を実行する。
【0033】
表示装置46に表示される地盤情報グラフと第1指標グラフとに基づき、支持層に近い深度まで鋼管杭12が打設されたことを判定者が確認すると、振動機24を駆動する。このとき、処理部50は、第2指標出力処理と第3指標出力処理とを開始する。
【0034】
その後、基準深度から所定深度まで鋼管杭12が打設されると、判定者は、表示装置46に表示される地盤情報グラフと3つの指標グラフとを対比して、鋼管杭12が支持層に到達したことを確認する。
【0035】
以後、こうした工程を打設位置が試験位置から近い鋼管杭12から繰り返し行うことで各所に鋼管杭12が打設される。判定者は、地盤情報グラフに替えて、直前に打設した鋼管杭12の指標グラフを用いた対比により、鋼管杭12が支持層に到達したことを確認してもよい。
【0036】
(作用)
上述した支持層到達判定方法においては、オーガ駆動電流値の積分電流値(第1指標)、振動機24の積分出力値(第2指標)、鋼管杭12の先端部における支持力(第3指標)を取得する。すなわち、掘削ロッド33に対する掘削抵抗だけではなく、振動機24への負荷や鋼管杭12の支持力など、支持層への鋼管杭12の到達を判断するための総合的な情報が取得される。
【0037】
本実施形態の効果について説明する。
(1)上述した支持層到達判定方法では、鋼管杭12の中空部に挿入された掘削ロッド33を有するアースオーガ23を用いて地盤11を掘削しながら、鋼管杭12に対して振動機24を介して押込み力を付加する。そして、鋼管杭12を地盤11に打設する中掘り杭工法において、アースオーガ23を駆動するオーガ駆動源32の積分電流値である第1指標と振動機24を駆動する振動駆動源37の積分出力値に基づく指標とに基づいて、鋼管杭12が支持層に到達したことを判定している。これにより、複数の指標に基づいて、支持層への鋼管杭12の到達を判定することができる。その結果、支持層への鋼管杭12の到達を高い確度で判定することができる。
【0038】
(2)上述した支持層到達判定方法では、振動駆動源37の積分出力値を第2指標として、鋼管杭12が支持層に到達したことを判定している。このように積分出力値そのものを判定に用いることができる。
【0039】
(3)上述した支持層到達判定方法では、振動駆動源37の積分出力値に基づいて算出される鋼管杭12の支持力を第3指標として、鋼管杭12が支持層に到達したことを判定している。これにより、直接的に算出された鋼管杭12の支持力に基づいて、支持層への鋼管杭12の到達を判定することができる。
【0040】
(4)上述した支持層到達判定方法では、鋼管杭12が支持層に近い深度に到達したときに振動機24を用いた判定を行っている。これにより、振動機24の駆動にともなうエネルギー消費量を抑えつつ、支持層への鋼管杭12の到達を高い確度で判定することができる。
【0041】
(5)上述した判定支援システム40は、鋼管杭12の中空部に挿入された掘削ロッド33を有するアースオーガ23を用いて地盤を掘削しながら、鋼管杭12に対して振動機24による振動で押込み力を付加する。そして、鋼管杭12を地中に打設する中掘り杭工法において、鋼管杭12の先端部の深度、アースオーガ23を駆動するオーガ駆動源32の積分電流値、および、振動機24を駆動する振動駆動源37の積分出力値を取得し、深度ごとの積分電流値である第1指標と深度ごとの積分出力値に基づく指標(第2指標、第3指標)とを表示装置46に表示している。これにより、判定者は、複数の指標に基づいて、支持層への鋼管杭12の到達を判定することができる。
【0042】
(6)上述した判定支援システム40は、打設が完了した鋼管杭12について、各種指標情報を鋼管杭12の識別情報に関連付けて記憶している。これにより、これから打設する鋼管杭12の支持層への到達を、例えば、当該鋼管杭12に隣接する鋼管杭12の指標情報を参照して判定することもできる。
【0043】
以上、本発明に係る支持層到達判定方法および判定支援システムの一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・本実施形態では、本発明に係る「管状杭」が「鋼管杭12」であるものとして説明を行ったが、本発明に係る「管状杭」は必ずしも「鋼管杭12」でなくてもよく、例えば、「管状で中空部を備えたコンクリート杭」であってもよい。この場合においても、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
・振動機24は、鋼管杭12が支持層に近い深度に到達する前から駆動されていてもよい。
・第1指標に加えて、第2指標および第3指標の少なくとも一方を用いて、支持層への鋼管杭12の到達を判定してもよい。
【0046】
・積分出力値に基づく指標は、上述した第2指標や第3指標に限らず、例えば、深度ごとの積分出力値の変化値を指標としてもよい。この指標においては、例えば、その変化値が閾値以上である状態が所定期間連続することを条件に、鋼管杭12の支持層への到達を判定することが可能である。
【0047】
・判定支援システム40は、各種グラフを表示装置46に表示する態様に限らず、例えば、入力装置45を通じて指標ごとに閾値を入力し、各指標がその閾値を超えたときに判定者に通知する構成であってもよい。判定者への通知は、表示装置46で行ってもよいし、例えばスピーカーなどの通知装置で行ってもよい。
【符号の説明】
【0048】
H…杭孔、11…地盤、12…鋼管杭(管状杭)、20…杭打機、21…ベースマシン、22…マスト、23…アースオーガ、24…振動機、25…クローラ、26…操作室、31…ボックス、32…オーガ駆動源、33…掘削ロッド、34…掘削ヘッド、35…ボックス、36…把持部、37…振動駆動源、40…判定支援システム、41…情報処理装置、42…深度計測器、43…電流計測器、44…出力計測器、45…入力装置、46…表示装置、50…処理部、51…地盤情報記憶部、52…計測情報記憶部