(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20241203BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241203BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241203BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 B
H01M4/48
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2023516622
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2022110770
(87)【国際公開番号】W WO2023029889
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】202111032387.5
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(73)【特許権者】
【識別番号】521520935
【氏名又は名称】惠州市鼎元新能源科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】何 鵬
(72)【発明者】
【氏名】肖 称茂
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】賀 雪琴
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/145108(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0037681(US,A1)
【文献】特開2017-168376(JP,A)
【文献】特開2014-187007(JP,A)
【文献】特表2020-510962(JP,A)
【文献】特開2018-181710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0106124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質と炭素材料とを含む凝集体を有する負極材料であって、
空孔率が10%以下であり、下記の測定方法で得られた目標領域割合Cが15%以上であることを特徴とする負極材料。
<目標領域割合Cの測定方法>
前記負極材料の粒子のSEM断面をA×B(A及びBがいずれも1μm以下である)四方の領域に分割し、単一の前記負極材料の粒子の各前記領域における前記活物質の分布状況を統計する場合、前記活物質同士の距離が10nm~300nmの領域の数をN1とし、前記活物質同士の距離が10nm未満の領域及び300nmより大きい領域の合計数をN2とし、単一の前記負極材料の粒子の目標領域割合XをX=N1/N2と定義し、Cを任意の5つの前記負極材料の粒子のX値の算術平均値とする。
【請求項2】
前記凝集体は、金属酸化物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記凝集体は、導電性向上剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
以下の(1)~(6)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項2に記載の負極材料。
(1)前記金属酸化物が前記活物質の間に分布し、前記活物質と前記金属酸化物との間に前記炭素材料が充填されている;
(2)前記活物質と前記金属酸化物との間に、空孔を有し、前記空孔中に前記炭素材料が充填されている;
(3)前記金属酸化物は、一般式:M
xO
y(式中、0.2≦y/x≦3;Mは、Sn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。)で示される;
(4)前記金属酸化物は、フレーク状及び/又は短冊状である;
(5)前記金属酸化物は、アスペクト比が2よりも大きい;
(6)前記金属酸化物と前記活物質との質量比は、(1~20):100である。
【請求項5】
以下の(1)~(6)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項3に記載の負極材料。
(1)前記導電性向上剤は、合金材料及び導電性カーボンからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む;
(2)前記導電性カーボンは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、黒鉛繊維からなる群より選択される少なくとも1つを含む;
(3)前記導電性向上剤は、導電率が10
2S/m以上である;
(4)前記導電性向上剤は、フレーク状及び/又は短冊状であり、アスペクト比が2~3000である;
(5)前記導電性向上剤と前記活物質との質量比は、(0.1~10):100である;
(6)前記導電性向上剤は、引張強度が500MPa以上である。
【請求項6】
以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiO
x(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuからなる群より選択される少なくとも1つを含む;
(2)前記活物質は、メジアン径が1nm~500nmである;
(3)前記炭素材料は、アモルファスカーボン、結晶性炭素、及びメソカーボンマイクロビーズからなる群より選択される少なくとも1つを含む;
(4)前記活物質と前記炭素材料との質量比は、(20~70):(10~80)である。
【請求項7】
以下の(1)~(8)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は、前記凝集体の表面の少なくとも一部を被覆する炭素層をさらに含む;
(2)前記炭素層の材料は、アモルファスカーボンを含む;
(3)前記炭素層は、厚さが10nm~1500nmである;
(4)前記負極材料は、メジアン径が0.5μm~30μmである;
(5)前記負極材料は、比表面積が10m
2/g以下である;
(6)前記負極材料は、押込み硬さが50Mpa以上である;
(7)前記負極材料は、空孔率が10%以下である;
(8)前記凝集体は、理論密度と測定密度との差が5%以下であるという密度関係を満たす。
【請求項8】
活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、
超音波分散及び研磨分散させた後に、前記溶媒を除去して第1の前駆体を製造する工程と、
前記第1の前駆体を600℃~1200℃で一次熱処理して、第2の前駆体を製造する工程と、
前記
第2の前駆体を緻密化処理して凝集体を得る工程と、を含むことを特徴とする負極材料の製造方法。
【請求項9】
以下の(1)~(22)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
(1)前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuからなる群より選択される少なくとも1つを含む;
(2)前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む;
(3)前記第1の炭素源と前記活物質との質量比は、(5~40):100である;
(4)前記溶媒は、有機溶媒を含む;
(5)前記有機溶媒はメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む;
(6)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、添加剤をさらに添加する;
(7)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、界面活性剤とカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1つを含む添加剤をさらに添加する;
(8)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、パルミチン酸、テトラデカン酸、ウンデシル酸、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1つを含む界面活性剤を含む添加剤をさらに添加する;
(9)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むシランカップリング剤を含むカップリング剤を含む添加剤をさらに添加する;
(10)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、さらに、添加剤を、前記活物質と前記添加剤との質量比を(15~120):(1~10)にするように添加する;
(11)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、金属酸化物をさらに添加する;
(12)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、一般式:M
xO
y(式中、0.2≦y/x≦3;Mは、Sn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。)で示される金属酸化物をさらに添加する;
(13)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、フレーク状及び/又は短冊状である金属酸化物をさらに添加する;
(14)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、アスペクト比が2よりも大きい金属酸化物をさらに添加する;
(15)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、さらに金属酸化物を、前記金属酸化物と前記活物質との質量比を(1~20):100にするように添加する;
(16)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、導電性向上剤をさらに添加する;
(17)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、さらに導電性向上剤を、前記導電性向上剤と前記活物質との質量比を(0.1~10):100にするように添加する;
(18)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、合金材料及び導電性カーボンからなる群より選択される少なくとも1つを含む導電性向上剤をさらに添加する;
(19)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、導電性向上剤をさらに添加し、前記導電性カーボンは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、黒鉛繊維からなる群より選択される少なくとも1つを含む;
(20)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、導電率が10
2S/m以上である導電性向上剤をさらに添加する;
(21)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、フレーク状及び/又は短冊状である導電性向上剤をさらに添加する;
(22)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させる際に、アスペクト比が2~3000である導電性向上剤をさらに添加する。
【請求項10】
以下の(1)~(5)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
(1)前記分散の処理方式は、機械攪拌、超音波分散及び研磨分散からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む;
(2)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合する際には、分級混合の方式を採用する;
(3)活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合する際には、前記活物質と前記溶媒を混合して第1の予備混合物を形成し、前記第1の炭素源と前記溶媒を混合して第2の予備混合物を形成し、そして前記第1の予備混合物と前記第2の予備混合物を混合する;
(4)前記の第1の前駆体を製造する工程においては、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、分散させた後、乾燥処理して前記第1の前駆体を得ることを含む; (5)前記の第1の前駆体を製造する工程は、活物質、第1の炭素源及び溶媒を混合し、分散させた後、40℃~600℃で1h~15h乾燥処理して前記第1の前駆体を得ることを含む。
【請求項11】
以下の(1)~(8)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
(1)前記緻密化処理は、融合処理、混練押出処理、圧縮成形処理、静水圧プレス処理及び浸漬処理からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む;
(2)前記緻密化処理は、メカノフュージョンである融合処理を含む;
(3)前記緻密化処理は、メカノフュージョンである融合処理を含み、前記メカノフュージョンに使用する融合機は回転数が300r/min~3000r/minである;
(4)前記緻密化処理は、メカノフュージョンである融合処理を含み、前記メカノフュージョンに使用する融合機はブレードギャップ幅が0.01cm~0.9cmである;
(5)前記緻密化処理は、メカノフュージョンである融合処理を含み、前記メカノフュージョンは時間が少なくとも0.5hである;
(6)前記一次熱処理は、時間が1h~10hである;
(7)前記一次熱処理中に保護ガスを通気している;
(8)前記一次熱処理中に、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む保護ガスを通気している。
【請求項12】
以下の(1)~(3)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
(1)前記製造方法は、前記凝集体を炭素被覆処理することをさらに含む;
(2)前記製造方法は、前記凝集体を炭素被覆処理することをさらに含み、前記炭素被覆処理は、第2の前駆体と第2の炭素源を混合して二次熱処理する工程を含む;
(3)前記製造方法は、前記凝集体を炭素被覆処理することをさらに含み、前記炭素被覆処理は、前記凝集体と第2の炭素源を混合して二次熱処理する工程を含む。
【請求項13】
以下の(1)~(6)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
(1)前記第2の前駆体と前記第2の炭素源との質量比は、(30~100):(10~70)である;
(2)前記第2の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトから選ばれる少なくとも1つを含むこと;
(3)前記凝集体と前記第2の炭素源との質量比は、(20~100):(10~120)である;
(4)前記二次熱処理は、温度が600℃~1200℃、時間が1h~10hである; (5)前記二次熱処理中に保護ガスを通気している;
(6)前記二次熱処理中に、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む保護ガスを通気している。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の負極材
料を含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年9月3日付で中国専利局に提出した、出願番号が2021110323875、発明の名称が「負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本明細書に援用する。
本発明は、負極材料の技術分野に関し、具体的には、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、出力が高く、サイクル寿命が長く、環境汚染が少ない等の利点を持つため、電気自動車及びコンシューマエレクトロニクスに幅広く適用されている。電池のエネルギー密度を高くするために、シリコン系負極材料の研究及び開発が成熟しつつある。しかし、負極材料は、リチウムを放出・吸蔵する際の体積膨張が大きく、特に、シリコン系負極材料はリチウムを放出・吸蔵する際の体積膨張が300%以上に達することができ、充放電中に粉化し、集電体から脱落してしまい、結果、負極活物質と集電体との間に電気的接触が失われ、それにより電気化学特性が悪くなり、容量が減衰し、サイクル安定性が低下し、商品化されにくい。
【0003】
したがって、負極材料の体積膨張を抑制し、材料のサイクル安定性を向上することは、至急に解決する課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題点に鑑み、本発明は、負極材料の体積膨張を効果的に抑制し、電池サイクル特性を向上させることができる負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供し、当該製造方法で製造コストを低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の局面において、活物質と炭素材料とを含む凝集体を有する負極材料であって、
空孔率が10%以下であり、下記の測定方法で得られた目標領域割合Cが15%以上である負極材料。
<目標領域割合Cの測定方法>
前記負極材料の粒子のSEM断面をA×B(A及びBがいずれも1μm以下である)四方の領域に分割し、単一の前記負極材料の粒子の各前記領域における前記活物質の分布状況を統計する場合、前記活物質同士の距離が10nm~300nmの領域の数をN1とし、前記活物質同士の距離が10nm未満の領域及び300nmより大きい領域の合計数をN2とし、単一の前記負極材料の粒子の目標領域割合XをX=N1/N2と定義し、Cを任意の5つの前記負極材料の粒子のX値の算術平均値とする。
【0006】
本実施形態の負極材料は、活物質及び炭素材料を含む凝集体を有する。負極材料は、目標領域割合Cが15%以上である。目標領域割合Cをこの範囲内に制御することにより、活物質同士の間隔を適切に保ち、活物質の自己凝集を効果的に回避し、リチウムを放出・吸蔵する過程で電気的接触を失うことを回避できるとともに、後続の炭素材料の浸透に寄与し、活物質と炭素材料との結合を強化し、さらに材料の電気化学特性を向上させ、凝集体の空孔率が低く、電解液も凝集体の内部に浸透しにくく、当該凝集体構造が内部の活物質粒子を保護することに寄与し、負極材料の体積膨張を効果的に抑制し、膨張率を低下させ、電池のサイクル特性を向上できる。
【0007】
一実施形態において、前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
一実施形態において、前記活物質は、メジアン径が1nm~500nmである。
一実施形態において、前記炭素材料は、アモルファスカーボン、結晶性炭素、及びメソカーボンマイクロビーズからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
一実施形態では、前記活物質と前記炭素材料との質量比は、(20~70):(10~80)である。
一実施形態において、前記凝集体は、金属酸化物をさらに含む。
一実施形態において、前記金属酸化物が前記活物質の間に分布し、前記活物質と前記金属酸化物との間に前記炭素材料が充填されている。
一実施形態において、前記活物質と前記金属酸化物との間に、空孔を有し、前記空孔中に前記炭素材料が充填されている。
【0008】
一実施形態において、前記金属酸化物は、一般式:MxOy(式中、0.2≦y/x≦3;Mは、Sn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。)で示される。
一実施形態において、前記金属酸化物は、フレーク状及び/又は短冊状である。
一実施形態において、前記金属酸化物は、アスペクト比が2よりも大きい。
一実施形態では、前記金属酸化物と前記活物質との質量比は、(1~20):100である。
一実施形態において、前記凝集体は、導電性向上剤をさらに含む。
一実施形態において、前記導電性向上剤は、合金材料及び導電性カーボンからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
一実施形態では、前記導電性カーボンは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、黒鉛繊維からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0009】
一実施形態において、前記導電性向上剤は、導電率が102S/m以上である。
一実施形態において、前記導電性向上剤は、フレーク状及び/又は短冊状であり、アスペクト比が2~3000である。
一実施形態では、前記導電性向上剤と前記活物質との質量比は、(0.1~10):100である。
一実施形態において、前記導電性向上剤は、引張強度が500MPa以上である。
一実施形態において、前記負極材料は、前記凝集体の表面の少なくとも一部を被覆する炭素層をさらに含む。
一実施形態において、前記炭素層の材料は、アモルファスカーボンを含む。
一実施形態において、前記炭素層は、厚さが10nm~1500nmである。
一実施形態において、前記負極材料は、メジアン径が0.5μm~30μmである。
【0010】
一実施形態において、前記負極材料は、比表面積が10m2/g以下である。
一実施形態において、前記負極材料は、押込み硬さが50Mpa以上である。
一実施形態において、前記負極材料は、空孔率が10%以下である。
一実施形態において、前記凝集体は、密度が下記の関係を満たす。
前記凝集体の理論密度と前記凝集体の測定密度との差が5%以下である。
【0011】
第2の局面において、
活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させた後に、前記溶媒を除去して第1の前駆体を製造する工程と、
前記第1の前駆体を600℃~1200℃で一次熱処理して、第2の前駆体を製造する工程と、
前記2の前駆体を緻密化処理して凝集体を得る工程と、を含む負極材料の製造方法を提供する。
【0012】
上記の技術案において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させることにより、第1の前駆体における活物質の分散度を上げることができ、そして得られた第1の前駆体を600℃~1200℃で一次熱処理して第2の前駆体を得、さらに第2の前駆体を緻密化処理し、このような緻密化処理の過程において、上記した物質が凝集して凝集体を形成し、それによって凝集体における活物質の分散度を上げ、凝集体の空孔率を低下させることができる。製造過程全体が簡単であり、製造された負極材料は、体積膨張を効果的に抑制し、膨張率を低下させ、電池サイクル特性を向上させることができる。
【0013】
一実施形態において、前記活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
一実施形態において、前記第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
一実施形態では、前記第1の炭素源と前記活物質との質量比は、(5~40):100である。
一実施形態において、前記溶媒は、有機溶媒を含む。
一実施形態において、前記有機溶媒はメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0014】
一実施形態において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させる際に、添加剤をさらに添加する。
一実施形態において、前記添加剤は、界面活性剤とカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1つを含む
一実施形態において、前記界面活性剤は、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、パルミチン酸、テトラデカン酸、ウンデシル酸、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
一実施形態において、前記カップリング剤は、シランカップリング剤が挙げられ、前記シランカップリング剤は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0015】
一実施形態において、前記活物質と前記添加剤との質量比は、(15~120):(1~10)である。
一実施形態において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させる際に、金属酸化物をさらに添加する。
一実施形態において、前記金属酸化物は、一般式:MxOy(式中、0.2≦y/x≦3;Mは、Sn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。)で示される。
一実施形態において、前記金属酸化物は、フレーク状及び/又は短冊状である。
一実施形態において、前記金属酸化物は、アスペクト比が2よりも大きい。
【0016】
一実施形態では、前記金属酸化物と前記活物質との質量比は、(1~20):100である。
一実施形態において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させる際に、導電性向上剤をさらに添加する。
一実施形態では、前記導電性向上剤と前記活物質との質量比は、(0.1~10):100である。
一実施形態において、前記導電性向上剤は、合金材料及び導電性カーボンからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
一実施形態では、前記導電性カーボンは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、黒鉛繊維からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
一実施形態において、前記導電性向上剤は、導電率が102S/m以上である。
一実施形態において、前記導電性向上剤は、フレーク状及び/又は短冊状である。
【0017】
一実施形態において、前記導電性向上剤は、アスペクト比が2~3000である。
一実施形態において、前記十分分散の処理方式は、機械攪拌、超音波分散及び研磨分散からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
一実施形態において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合することは、分級混合の方式を採用する。
一実施形態において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合することは、具体的に、前記活物質と前記溶媒を混合して第1の予備混合物を形成し、前記第1の炭素源と前記溶媒を混合して第2の予備混合物を形成し、そして前記第1の予備混合物と前記第2の予備混合物を混合する。
一実施形態において、前記の第1の前駆体を製造する工程は、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させた後、乾燥処理して前記第1の前駆体を得ることを含む。
一実施形態において、前記乾燥処理は、温度が40℃~600℃、時間が1h~15hである。
【0018】
一実施形態において、緻密化処理は、融合処理、混練押出処理、圧縮成形処理、静水圧プレス処理及び浸漬処理からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
一実施形態において、前記融合処理は、メカノフュージョンである。
一実施形態において、前記メカノフュージョンに使用する融合機は、回転数が300r/min~3000r/minである。
一実施形態において、前記メカノフュージョンに使用する融合機は、ブレードギャップ幅が0.01cm~0.9cmである。
一実施形態において、前記メカノフュージョンは、時間が少なくとも0.5hである。
【0019】
一実施形態において、前記一次熱処理は、時間が1h~10hである。
一実施形態において、前記一次熱処理中に保護ガスを通気している。
一実施形態において、前記保護ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
一実施形態において、前記製造方法は、前記凝集体を炭素被覆処理することをさらに含む。
一実施形態において、前記炭素被覆処理は、第2の前駆体と第2の炭素源を混合し、二次熱処理する工程を含む。
一実施形態において、前記第2の前駆体と前記第2の炭素源との質量比は、(30~100):(10~70)である。
一実施形態において、前記炭素被覆処理は、前記凝集体と第2の炭素源を混合し、二次熱処理する工程を含む。
【0020】
一実施形態において、前記第2の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
一実施形態において、前記凝集体と前記第2の炭素源との質量比は、(15~100):(10~70)である。
一実施形態において、前記二次熱処理は、温度が600℃~1200℃、時間が1h~10hである。
一実施形態において、前記二次熱処理中に保護ガスを通気している。
一実施形態において、前記保護ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0021】
第3の局面において、第1の局面に記載の負極材料、又は第2の局面に記載の製造方法で製造される負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の技術案は、少なくとも以下の有益な効果を奏しうる。
本実施形態の負極材料は、活物質と炭素材料とを含む凝集体を有する。負極材料は、目標領域割合Cが15%以上であり、この範囲内であることにより、活物質同士の間隔を適切に保ち、活物質の自己凝集を効果的に回避し、リチウムを放出・吸蔵する過程で電気的接触を失うことを回避できるとともに、後続の炭素材料の浸透に寄与し、活物質と炭素材料との結合を強化し、さらに材料の電気化学特性を向上させ、凝集体の空孔率が低く、電解液も凝集体の内部に浸透しにくく、当該凝集体構造が内部の活物質粒子を保護することに寄与し、負極材料の体積膨張を効果的に抑制し、膨張率を低下させ、電池のサイクル特性を向上できる。
【0023】
次に、本発明に係る負極材料の製造方法では、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させることにより、第1の前駆体における活物質の分散度を上げることができ、そして得られた第1の前駆体を一次熱処理して第2の前駆体を得、さらに第2の前駆体を緻密化処理し、このような緻密化処理の過程において、上記した物質が凝集して凝集体を形成し、それによって凝集体における活物質の分散度を上げ、凝集体の空孔率を低下させることができ、製造過程全体が簡単であり、製造された負極材料は、体積膨張を効果的に抑制し、膨張率を低下させ、電池サイクル特性を向上させることができる。
【0024】
本発明に係る製造方法は、大規模な生産に適用することが可能であり、製造された負極材料は、リチウム電池の充放電サイクルの安定性を効果的に向上させ、負極材料の膨張率を効果的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明実施例に係る負極材料の製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明実施例1で製造された負極材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図3】本発明実施例1で製造された負極材料のXRDチャートである。
【
図4】本発明実施例1で製造された負極材料の初回充放電曲線図である。
【
図5】本発明実施例1で製造された負極材料のサイクル特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に述べられるのは、本発明実施例の好ましい実施形態である。なお、当業者にとって、本発明実施例の原理から逸脱せず、いくつかの改良及び変更を実行することができ、これらの改良及び変更も本発明実施例の保護範囲内にあると認識される。
【0027】
一実施形態では、負極材料は、活物質と炭素材料とを含む凝集体を有し、空孔率が10%以下であり、下記の測定方法で得られた目標領域割合Cが15%以上である。
<目標領域割合Cの測定方法>
負極材料の粒子のSEM断面をA×B(A及びBがいずれも1μm以下である)四方の領域に分割し、単一の負極材料の粒子の各領域における活物質の分布状況を統計する場合、活物質同士の距離が10nm~300nmの領域の数をN1とし、活物質同士の距離が10nm未満の領域及び300nmより大きい領域の合計数をN2とし、単一の負極材料の粒子の目標領域割合XをX=N1/N2と定義し、Cを任意の5つの負極材料の粒子のX値の算術平均値とする。
【0028】
なお、距離が10nm~300nmの活物質同士も、10nm未満または300nmを超える活物質同士も存在する領域の数が、N1に合算される。
【0029】
本実施形態の負極材料は、活物質と炭素材料を含む凝集体を有する。負極材料は、目標領域割合Cが15%以上である。この範囲内であることにより、活物質同士の間隔を適切に保ち、活物質の自己凝集を効果的に回避し、リチウムを放出・吸蔵する過程で電気的接触を失うことを回避できるとともに、後続の炭素材料の浸透に寄与し、活物質と炭素材料との結合を強化し、さらに材料の電気化学特性を向上させ、凝集体の空孔率が低く、電解液も凝集体の内部に浸透しにくく、当該凝集体構造が内部の活物質粒子を保護することに寄与し、負極材料の体積膨張を効果的に抑制し、膨張率を低下させ、電池のサイクル特性を向上できる。
【0030】
負極材料は、空孔率が10%以下であり、この場合、負極材料の空孔率が低く、即ち負極材料の緻密度が高く、複合材料のエネルギー密度の向上に寄与する一方で、高緻密度の材料の表層が破壊されても、電解液が凝集体の内部に浸透しにくく、内部の活物質粒子の保護に寄与し、電解液が活物質と接触する確率を減少させ、これにより安定した固体電解質膜の形成に寄与し、さらに高緻密化の凝集体は高い押込み硬さを有し、膨張による応力効果を解消し、負極材料の構造安定性を向上させることができ、負極材料の体積膨張を効果的に抑制し、その膨張率を低下させ、電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、負極材料の空孔率は、具体的に、10%、9%、9.5%、8%、8.5%、7.5%、7%、6.5%、6%又は5%等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。負極材料は、空孔率が低く、即ち緻密度が高いと、安定した固体電解質膜を形成し、電解液と活物質との接触を減少させることに寄与することが理解される。好ましくは、負極材料の空孔率は、3%以下である。
【0032】
いくつかの実施形態において、負極材料の押込み硬さは、50Mpa以上である。具体的には、負極材料の押込み硬さは、具体的に、50MPa、250MPa、300MPa、450MPa、500MPa、750MPa、900MPa、1150MPa、1200MPa又は1250MPa等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。負極材料は、強い剛性を有するから、粒子構造の安定性が高く、一定の体積膨張応力に抵抗することができ、これにより膨張を低減し、電池のサイクル安定性を向上させる。好ましくは、負極材料の押込み硬さは100Mpa以上であり、より好ましくは、200Mpa以上である。
【0033】
いくつかの実施形態において、凝集体は、密度が下記の関係を満たす。凝集体の理論密度と凝集体の測定密度との差が5%以下である。凝集体粒子の密度と理論密度とが近く、差が小さければ小さいほど、粒子内部の孔隙が少なく、緻密になり、それにより、安定した固体電解質膜を形成し、電解液と活物質との接触を減少させることに寄与する。
【0034】
具体的に、凝集体の密度は、以下の式を満足している。
(ρ2-ρ1)/ρ2≦5%
(ここで、ρ1は凝集体の測定密度であり、ρ2は凝集体の理論密度であり、前記ρ2は各成分の凝集体における含有量(質量%)に各成分の理論密度を乗算した値の和である。)
【0035】
具体例において、凝集体が活物質、導電性向上剤及び炭素材料を含む場合、ρ2を以下の式で求める。
ρ2=活物質の凝集体における含有量(質量%)×活性物質の理論密度+導電性向上剤の凝集体における含有量(質量%)×導電性向上剤の理論密度+炭素材料の凝集体における含有量(質量%)×炭素材料の理論密度
【0036】
凝集体が活物質、金属酸化物、導電性向上剤及び炭素材料を含む場合、ρ2を以下の式で求める。
ρ2=活物質の凝集体における含有量(質量%)×活性物質の理論密度+金属酸化物の凝集体における含有量(質量%)×金属酸化物の理論密度+導電性向上剤の凝集体における含有量(質量%)×導電性向上剤の理論密度+炭素材料の凝集体における含有量(質量%)×炭素材料の理論密度
【0037】
いくつかの実施形態では、活物質とは、リチウムと反応し、リチウムを放出・吸蔵可能な物質である。
【0038】
活物質は、金属単体、金属酸化物及び金属合金からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む。さらに、金属は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む。金属単体は、上記した金属の単体、金属酸化物は、上記した金属の酸化物、金属合金は、上記した金属のうち少なくとも1つを含む合金、例えば、ケイ素リチウム合金、ケイ素マグネシウム合金を意味する。
【0039】
いくつかの実施形態において、活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、活物質は、粒子であり、メジアン径が1nm~500nmである。具体的に、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm又は500nm等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。試験を重ねた結果、ナノオーダーの活物質は、表面エネルギーが高く、充放電中に凝集しやすく、粒子の構造強度が高く、シリコンの体積膨張を抑制することができることが分かった。しかし、ナノオーダーのケイ素系活物質粒子は、表面エネルギーが大きいことから、充放電中に凝集しやすい。活物質は、粒子径が小さすぎ、製造コストが高い。好ましくは、活物質は、メジアン径が1nm~200nmであり、より好ましくは1nm~100nmである。
【0041】
いくつかの実施形態において、炭素材料は、アモルファスカーボン、結晶性炭素、及びメソカーボンマイクロビーズからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態において、活物質と炭素材料との質量比は、(20~70):(10~80)である。具体的に、20:10、20:20、20:30、20:50、20:60、20:80、40:10、40:50、40:80、50:70、50:80等であってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、凝集体は、金属酸化物をさらに含み、金属酸化物と活物質を複合させることにより、活物質の膨張を低減し、長期間サイクル性能を向上させることができ、かつ凝集体の押込み硬さが高くなる。
【0042】
いくつかの実施形態において、凝集体では、金属酸化物が活物質の間に分布し、活物質と金属酸化物との間に炭素材料が充填されている。
具体的に、活物質と金属酸化物との間に、空孔を有し、空孔中に炭素材料が充填されている。活物質と金属酸化物が重なり、凝集することで形成される空孔構造により、炭素材料が空孔内に充填され、凝集体の構造安定性を向上させ、一定の体積膨張応力を抵抗し、膨張を低減することができることが理解される。
【0043】
いくつかの実施形態において、金属酸化物は、一般式:MxOy(式中、0.2≦y/x≦3;Mは、Sn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca又はZnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。)で示される。具体的に、金属酸化物は、SiO、GeO2、SnO2、ZnO、TiO2、Fe3O4、MgO、SiO2、又はCuO等であってもよい。選択される金属酸化物は、リチウムを吸蔵中に体積膨張変化率が活物質の方よりも低く、そのため、金属酸化物と活物質を複合させることにより、活物質の膨張を低減し、長期間サイクル性能を向上させることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、金属酸化物は、フレーク状及び/又は短冊状である。
【0045】
いくつかの実施形態において、金属酸化物はアスペクト比が2よりも大きい。なお、金属酸化物が短冊状である場合、アスペクト比とは、具体的に、粒子の長さと粒子径の比であり、金属酸化物がフレーク状である場合、アスペクト比とは、具体的に、フレーク状の金属酸化物の長さと幅の比である。具体的に、金属酸化物のアスペクト比は、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、12、15、17、18、または22等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。試験を重ねた結果、金属酸化物のアスペクト比が2よりも大きいと、金属酸化物と活物質との物理的結合力が向上することにより、活物質の体積膨張変化をより緩和し、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0046】
いくつかの実施形態において、金属酸化物と活物質との質量比は、(1~20):100である。具体的に、金属酸化物と活物質との質量比は、1:100、1.5:100、2:100、3:100、4.5:100、5:100、6:100、7:100、8:100、9:100等であってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。金属酸化物の含有量が高すぎると、材料の初回効率が低下し、金属酸化物の含有量が低すぎると、凝集体構造の剛性が低下し、粒子のサイクル安定性が低下する。
【0047】
いくつかの実施形態において、凝集体は、導電性向上剤をさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤の引張強度が500MPa以上であり、負極材料における導電性向上剤の分散度Nが1以上であり、前記分散度Nの測定方法として、負極材料の粒子のSEM断面をA×B(A及びBがいずれも1μm以下である)四方の領域に分割し、単一の負極材料の粒子の各領域における導電性向上剤の分布状況を統計し、導電性向上剤同士の距離が10nm未満の領域の数をNaとし、導電性向上剤同士の距離が10nm以上の領域の数をNbとし、単一の負極材料の粒子の導電性向上剤の分散度CをC=Nb/Naと定義し、Nを任意の5つの負極材料の粒子のC値の算術平均値とする。導電性向上剤が均一に分散することにより、キャリアの凝集体内部での輸送を効果的に改善し、凝集体の導電性を高めることができ、導電性向上剤は、凝集体の構造安定性を効果的に向上し、凝集体の構造強度を強化し、活物質の膨張による応力変化を回避し、凝集体の構造安定性を維持することができ、それによって材料のサイクル安定性が向上し、膨張率が低下する。導電性向上剤の引張強度を500MPa以上の範囲内に制御することにより、導電性向上剤は、優れた機械的特性を有し、構造の支持体として材料の安定性を補強することができ、導電性向上剤同士の最小距離を制御することにより、導電性向上剤間に活物質を充填することができ、導電性向上剤を構造の支持体として材料の安定性を補強することができ、それによって活物質の体積膨張変化が緩衝され、サイクル特性を向上させることができる。
【0049】
前記導電性向上剤は、引張強度が500MPa、800MPa、1Gpa、5Gpa、10Gpa、25Gpa、30Gpa、45Gpa又は50Gpaなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0050】
前記導電性向上剤は、凝集体の内部及び/又は表面に分布する。
【0051】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤は、活物質の間に分布し、活物質と導電性向上剤との間に炭素材料が充填されている。導電性向上剤を活物質の間に分布させることにより、活物質の導電性を高め、キャリアの活物質内での輸送を改善できることが理解される。
【0052】
いくつかの実施形態において、炭素材料と導電性向上剤との間に、重なり、凝集することにより、空孔が形成され、空孔中に活物質が充填されている。炭素材料と導電性向上剤が空孔構造を形成することにより、活物質を空孔に充填させ、凝集体の構造強度を高めることができ、このような空孔構造により活物質の膨張による応力変化に抵抗し、凝集体の構造安定性を維持することができることが理解される。
【0053】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤は、合金材料及び導電性カーボンからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む。もちろん、引張強度が500MPa以上の導電性材料であれば、いずれも導電性向上剤として使用できることが理解される。
【0054】
いくつかの実施形態において、導電性カーボンは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、黒鉛繊維からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態において、合金材料は、導電率が102S/m以上であり、引張強度が500MPa以上の合金である。
【0055】
いくつかの実施形態において、合金材料は、ケイ素合金、アルミニウム合金、銅合金、アルミニウム合金及びリチウム合金からなる群より選択される少なくとも1つを含む。さらに、ケイ素合金は、ニッケルケイ素合金、鉄ケイ素合金、銅ケイ素合金、ケイ素マンガン合金及びアルミニウムケイ素合金からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤は、導電率が102S/m以上である。具体的に、導電性向上剤は、導電率が100S/m、103S/m、104S/m、105S/m、108S/m等であってもよい。この範囲内の導電性向上剤は、キャリアの凝集体内部での輸送を効果的に改善し、凝集体の導電性を向上させることができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤は、フレーク状及び/又は短冊状である。
【0058】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤はアスペクト比が2~3000である。なお、導電性向上剤が短冊状である場合、アスペクト比とは、具体的に、粒子の長さと粒子径の比であり、ここで、粒子径は短冊状の導電性向上剤の長さ方向に正交する断面周縁上の両点の間の最大直線距離を指し、導電性向上剤がフレーク状である場合、アスペクト比とは、具体的に、フレーク状の導電性向上剤の長さと幅の比である。具体的に、導電性向上剤のアスペクト比は、2、30、46、150、360、670、800、900、1500、2000又は3000等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。試験を重ねた結果、アスペクト比がこの範囲内である導電性向上剤は、優れた機械的特性を有し、構造の支持体として材料の安定性を補強することができ、それによって活物質の体積膨張変化が緩衝され、サイクル特性が向上することがわかった。
【0059】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤は、引張強度が500MPa以上である。なお、導電性向上剤は、引張強度が低すぎると、活物質膨張による応力変化に抵抗しにくく、凝集体の構造安定性を維持しにくく、材料のサイクル特性の向上に不利となる。具体的に、導電性向上剤は、引張強度が500Mpa、520Mpa、550Mpa、580Mpa、600Mpa、650Mpa、700Mpa、750Mpa又は800Mpaなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。試験を重ねた結果、導電性向上剤は、引張強度を上記範囲内に制御することにより、優れた機械的特性を有し、構造の支持体として材料の安定性を補強することができ、それによって活物質の体積膨張変化が緩衝され、サイクル特性が向上することがわかった。
【0060】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤と活物質との質量比は、(0.1~10):100である。具体的に、0.1:100、0.5:100、0.8:100、1:100、2:100、3:100、5:100、6:100、7:100、8:100、10:100等であってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0061】
さらに、負極材料は、凝集体の表面の少なくとも一部に被覆される炭素層をさらに有する。好ましくは、炭素層は凝集体の表面に分布する。
いくつかの実施形態において、炭素層はアモルファスカーボンを含む。
いくつかの実施形態において、炭素層は、厚さが10nm~1500nmである。凝集体の表面を被覆する炭素層は、活物質と電解液との接触を低減し、パッシベーション膜の生成を低減し、電池の可逆容量を向上させることができることが理解される。
【0062】
具体的に、炭素層の厚さは、10nm、50nm、180nm、200nm、350nm、400nm、550nm、700nm、850nm、900nm、1050nm、1200nm又は1500nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。炭素層が厚すぎると、炭素の割合が高すぎ、高比容量の複合材料の取得に不利であり、炭素層が薄すぎると、負極材料の導電性の増加に不利であり、かつ材料の体積膨張への抑制性能が弱く、これにより長期間サイクル性能が悪化する。好ましくは、炭素層の厚さは50nm~800nmであり、より好ましくは、100nm~500nmである。
【0063】
なお、いくつかの実施例において、凝集体の表面に炭素層が被覆された負極材料は、空孔率が10%以下、押込み硬さが50MPa以上である。負極材料全体の空孔率と押込み硬さを上記範囲に保持させることにより、負極材料の性能をより向上させることができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、負極材料のメジアン径は、0.5μm~30μmである。具体的に、0.5μm、1μm、5μm、8μm、10μm、13μm、15μm、18μm、20μm、25μm又は30μmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。負極材料のメジアン径が上記範囲内に制御されることにより、負極材料のサイクル特性の向上に寄与することが理解される。
【0065】
いくつかの実施形態において、負極材料の比表面積は、10m2/g以下である。具体的に、10m2/g、8m2/g、7m2/g、5m2/g、3m2/g、2m2/g、1m2/g又は0.5m2/gなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。負極材料の比表面積を上記範囲内に制御することにより、体積膨張の抑制に寄与し、負極材料のサイクル特性の向上に寄与することが理解される。
【0066】
なお、上記各実施形態の負極材料の特徴は、互いに矛盾しない限り、任意に組み合わせることが可能であり、例えば、凝集体の押込み硬さ、空孔率と密度を組み合わせて限定する。
【0067】
別の局面において、
図1に示すように、
活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させた後に、溶媒を除去して第1の前駆体を製造する工程S10と、
第1の前駆体を600℃~1200℃で一次熱処理して、第2の前駆体を製造する工程S20と、
前記第2の前駆体を緻密化処理し、凝集体を得る工程S30と、を含む負極材料の製造方法を提供する。
【0068】
当該実施形態の製造方法では、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させることにより、第1の前駆体における活物質の分散度を上げることができ、そして第1の前駆体を600℃~1200℃で一次熱処理して第2の前駆体を得、さらに第2の前駆体を緻密化処理し、このような緻密化処理の過程において、上記した物質が凝集して凝集体を形成し、それによって凝集体における活物質の分散度を上げ、凝集体の空孔率を低下させることができ、製造過程全体が簡単であり、製造された負極材料は、体積膨張を効果的に抑制し、膨張率を低下させ、電池サイクル特性を向上させることができる。
【0069】
以下、実施例を参照して本発明の製造方法を具体的に説明する。
工程S10において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させた後に、溶媒を除去して第1の前駆体を製造する。
【0070】
いくつかの実施形態において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合する工程には、分級混合の方式を採用する。具体的に、活物質と溶媒を混合して第1の予備混合物を形成し、第1の炭素源と溶媒を混合して第2の予備混合物を形成し、そして第1の予備混合物と第2の予備混合物を混合することにより、分級混合を実現してもよく。活物質、第1の炭素源及び溶媒の具体的な成分に応じて、分級混合の原則に従い、活性材料を十分分散させるように適切な分級混合作業を選択することで、最終的に負極材料における目標領域割合Cが15%以上となる。
【0071】
いくかの実施形態において、十分分散の処理方式は、機械攪拌、超音波分散及び研磨分散からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。もちろん、十分分散は、上記方式に限定されず、最終的に負極材料における目標領域割合Cが15%以上となるように、活物質を十分分散させる方式であればよいことが理解される。
【0072】
いくつかの実施形態では、活物質とは、リチウムと反応し、リチウムを放出・吸蔵可能な物質である。
【0073】
活物質は、金属単体、金属酸化物及び金属合金からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む。さらに、金属は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、活物質は、Li、Na、K、Sn、Ge、Si、SiOx(0<x<2)、Fe、Mg、Ti、Zn、Al、P及びCuからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、活物質は、上記の金属単体であってもよく、さらに、具体的に、Si、Sn、Ge、Alであってもよい。また、いくつかの実施形態において、活物質は、上記の金属のうち少なくとも2つからなる合金、例えばケイ素リチウム合金、ケイ素マグネシウム合金等であってもよい。また、いくつかの実施形態において、活物質は、上記の金属の酸化物、例えば、一酸化ケイ素であってもよい。なお、活物質は、金属単体、金属合金及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも2つを含む場合がある。
【0076】
いくつかの実施形態において、活物質は、粒子であり、メジアン径が1nm~500nmである。具体的に、1nm、5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm又は500nm等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。試験を重ねた結果、ナノオーダーの活物質は、粒子の構造強度が高く、活物質粒子体積の膨張を抑制することができることが分かった。しかし、ナノオーダーの活物質粒子は、表面エネルギーが大きいことから、充放電中に凝集しやすく、かつ、活物質は、粒子径が小さすぎ、製造コストが高い。好ましくは、活物質は、メジアン径が1nm~200nmであり、より好ましくは1nm~100nmである。
【0077】
いくつかの実施形態において、第1の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、溶媒は有機溶媒を含み、有機溶媒はメタノール、エタノール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、グリセリン、n-ブタノール、イソブタノール及びペンタノールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させる工程において、添加剤をさらに添加する。前記添加剤は、活物質と第1の炭素源との接続安定性を効果的に強化することができ、それにより強固な系を形成し、極片の膨張率を低下させる。
【0080】
いくつかの実施形態において、第1の炭素源と活物質の質量比は、(5~40):100であり、具体的に、5:100、10:100、15:100、20:100、25:100、30:100、35:100、38:100又は40:100等であってもよい。第1の炭素源と活物質の質量比は高すぎるのが良くなく、すなわち第1の炭素源の含有量は高すぎることは、良くなく、高空孔率の前駆体の形成に不利であり、後続処理に影響する。
【0081】
いくつかの実施形態において、添加剤は、界面活性剤とカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0082】
界面活性剤は、n-オクタデカン酸、ラウリン酸、ポリアクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、n-エイコサン酸、パルミチン酸、テトラデカン酸、ウンデシル酸、セチルトリメチルアンモニウムブロミド及びポリビニルピロリドンからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0083】
カップリング剤は、シランカップリング剤が挙げられ、シランカップリング剤は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、活物質、添加剤、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させる際に、導電性向上剤をさらに添加する。
いくつかの実施形態において、導電性向上剤は、合金材料及び導電性カーボンからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む。
いくつかの実施形態において、導電性カーボンは、カーボンナノチューブ、炭素繊維、黒鉛繊維からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態において、導電性向上剤は、導電率が102S/m以上であり、具体的に、100S/m、103S/m、104S/m、105S/m、又は108S/m等であってもよい。
いくつかの実施形態において、導電性向上剤は、フレーク状及び/又は短冊状である。
【0085】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤はアスペクト比が2~3000である。なお、導電性向上剤が短冊状である場合、アスペクト比とは、具体的に、粒子の長さと粒子径の比であり、ここで、粒子径は短冊状の導電性向上剤の長さ方向に正交する断面周縁上の両点の間の最大直線距離を指し、導電性向上剤がフレーク状である場合、アスペクト比とは、具体的に、フレーク状の導電性向上剤の長さと幅の比である。具体的に、導電性向上剤のアスペクト比は、2、30、46、150、360、670、800、900、1500、2000又は3000等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。試験を重ねた結果、アスペクト比がこの範囲内である導電性向上剤は、優れた機械的特性を有し、構造の支持体として材料の安定性を補強することができ、それによって活物質の体積膨張変化が緩衝され、サイクル特性が向上することがわかった。
【0086】
いくつかの実施形態において、導電性向上剤と活物質との質量比は、(0.1~10):100である。具体的に、導電性向上剤と活物質との質量比は、0.1:100、0.5:100、1:100、2:100、2.6:100、3:100、3.5:100、4:100、4.8:100、6:100、7:100、8.5:100又は10:100等であってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施形態において、活物質、添加剤、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させる際に、金属酸化物をさらに添加する。
いくつかの実施形態において、金属酸化物は、一般式:MxOy(式中、0.2≦y/x≦3;Mは、Sn、Ge、Si、Fe、Cu、Ti、Na、Mg、Al、Ca及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。)で示される。
いくつかの実施形態において、金属酸化物は、フレーク状及び/又は短冊状である。
いくつかの実施形態において、金属酸化物のアスペクト比は、2より大きい。
【0088】
いくつかの実施形態において、金属酸化物と活物質との質量比は、(1~20):100である。具体的に、金属酸化物と活物質との質量比は、1:100、1.5:100、2:100、3:100、4.5:100、5:100、6:100、7:100、8:100、10:100、15:100、20:100等であってもよい。もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。金属酸化物の含有量が高すぎると、材料の初回効率が低下し、金属酸化物の含有量が低すぎると、凝集体構造の剛性が低下し、負極材料のサイクル安定性が低下する。
【0089】
いくつかの実施形態において、十分分散処理は、機械的攪拌、超音波分散及び研磨分散からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。好ましくは、活物質を分散させ、活物質が凝集することを回避することができ、かつ活物質を比較的な小さなナノ粒子に分散させることができるように、研磨分散を採用する。好ましくは、湿式ボールミルを採用し、湿式ボールミルでの分散時間を0.5h~10hとすることができ、十分に研磨することで、成分をより均一に混合し、活物質粒子の粒子径を1nm~500nmとすることができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、活物質、第1の炭素源及び溶媒を含む原料を混合し、十分分散させた後に、溶媒を除去して第1の前駆体を得る。溶媒を除去する方式は、乾燥処理を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、乾燥処理の温度は40℃~600℃であり、具体的に、40℃、50℃、80℃、100℃、120℃、250℃、380℃、400℃、500℃、580℃又は600℃等であってもよく、乾燥処理の時間は1h~15hであり、具体的に、1h、3h、5h、7h、9h、10h、12h又は15h等であってもよく、乾燥処理方式は、例えば、炉内乾燥、凍結乾燥、撹拌蒸発乾固、噴霧乾燥等であってもよく、本実施例において、乾燥処理により、できる限り前駆体溶液中の溶媒を除去することができる。
【0092】
乾燥後の第1の前駆体を分散してもよく、分散は研磨分散であってもよく、分散時間は0.5h~9hであり、具体的に、0.5h、1.5h、2.5h、3.5h、4.5h、5.5h、7.5h又は9h等であってもよく、本実施例において、研磨分散により、分散後の粒度の大きさを制御する。
【0093】
いくつかの実施形態において、乾燥後の第1の前駆体を分散させる工程には第2の炭素源を添加してもよく、第1の前駆体と第2の炭素源との質量比が(10~80):10である。分散後、二次乾燥を行い、炭素被覆した第1の前駆体を得る。
工程S20において、第1の前駆体を一次熱処理して、第2の前駆体を製造する。
【0094】
いくつかの実施形態において、一次熱処理方式は、例えば、真空焼結、ホットプレス焼結又は常圧焼結であってもよい。
いくつかの実施形態において、一次熱処理の温度は、600℃~1200℃であり、例えば600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃等であってもよい。好ましくは、一次熱処理の温度は600℃~1000℃である。
いくつかの実施形態において、一次熱処理の時間は、1h~10hであり、例えば1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h又は10h等であってもよい。
【0095】
熱処理時の昇温速度は、1℃/min~30℃/minであり、具体的に、1℃/min、5℃/min、10℃/min、15℃/min、20℃/min、25℃/min又は30℃/min等であってもよい。例えば、好ましくは、熱処理時の昇温速度は1℃/min~15℃/minである。
熱処理中に保護ガスが通気され、保護ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0096】
工程S30において、前記第2の前駆体を緻密化処理し、凝集体を得る。緻密化処理により、得られる凝集体の空孔率が10%以下である。
いくつかの実施形態において、緻密化処理は、融合処理、混練押出処理、圧縮成形処理、静水圧プレス処理及び浸漬処理からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、融合処理は、メカノフュージョンである。前駆体を融合処理することにより、負極材料の押込み硬さを向上させ、そして熱処理を一回することにより、粒子構造の安定性を強化すると共に、活物質と第1の炭素源との間の接続安定性を向上させ、空孔率を低下させることができる。もちろん、他の実施形態において、凝集体の空孔率を10%以下とすることができれば、上記以外の方法、例えば、圧縮成形、静水圧プレス、浸漬等の方法で緻密化処理してもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、凝集体の押込み硬さは、50MPa以上であり、具体的に、50MPa、250MPa、300MPa、450MPa、500MPa、750MPa、900MPa、1150MPa、1200MPa又は1250MPa等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。凝集体は、強い剛性を有するから、粒子構造の安定性が高く、一定の体積膨張応力に抵抗することができ、これにより膨張を低減し、電池のサイクル安定性を向上させる。好ましくは、凝集体の押込み硬さは100Mpa以上であり、より好ましくは、200Mpa以上である。
【0099】
いくつかの実施形態において、最終的な負極材料の空孔率が10%以下であり、負極材料の押込み硬さが50MPa以上であり、この場合、最終的な炭素被覆層の状況に応じて凝集体の空孔率と押込み硬さを制御することにより、最終的に負極材料の空孔率と押込み硬さが目標値に達することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、融合時、融合機は、回転数が300r/min~3000r/minであり、具体的に、300r/min、1000r/min、1500r/min、2000r/min、2500r/min又は3000r/min等であってもよく、ブレードギャップ幅が0.01cm~0.9cmであり、具体的に、0.01cm、0.05cm、0.1cm、0.15cm、0.2cm、0.25cm、0.3cm、0.5cm、0.9cm等であってもよく、融合時間が少なくとも0.5hであり、具体的に、0.5h、0.8h、0.9h、1.0h、1.5h又は2h等であってもよく、これらに限定しない。
【0101】
工程S40において、凝集体を炭素被覆処理し、負極材料を得る。
【0102】
なお、本実施形態の負極材料は、炭素被覆を行わなくてもよく、この場合、工程S40は省略されてもよい。いくつかの実施形態において、炭素被覆処理は、凝集体と第2の炭素源を混合し、二次熱処理して、凝集体の表面に炭素層を形成する工程を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、第2の炭素源は、スクロース、グルコース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアニリン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル及びアスファルトからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、凝集体と第2の炭素源との質量比は、(20~100):(10~120)であり、具体的に、100:25、100:35、100:45、100:55、100:65等であり、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0105】
また、いくつかの実施形態において、他の形態で凝集体を炭素被覆してもよく、具体的に、炭素被覆処理は、第2の前駆体と第2の炭素源を混合し、二次熱処理して、第2の前駆体の表面に炭素層を形成する工程を含む。
いくつかの実施形態において、第2の前駆体と第2の炭素源との質量比は、(30~100):(10~70)である。第2の前駆体と第2の炭素源との質量比は、50:25、100:20、100:35、100:45、100:55、100:65等であってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、これらに限定されない。
【0106】
いくつかの実施形態において、二次熱処理の温度は、600℃~1200℃であり、例えば600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃等であってもよい。好ましくは、二次熱処理の温度は600℃~1000℃である。
いくつかの実施形態において、二次熱処理の時間は、1h~10hであり、例えば1h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、9h又は10h等であってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、二次熱処理時の昇温速度は、1℃/min~30℃/minであり、具体的に、1℃/min、5℃/min、10℃/min、15℃/min、20℃/min、25℃/min又は30℃/min等であってもよい。例えば、好ましくは、二次熱処理時の昇温速度は1℃/min~15℃/minである。
いくつかの実施形態において、二次熱処理中に保護ガスが通気され、保護ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス及びクリプトンガスからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、混合方式は、磁気撹拌、機械的攪拌、超音波分散、及び/又は研磨分散などを含んでもよい。
なお、本実施形態の負極材料は、炭素被覆を行わなくてもよく、上記2種類の炭素被覆方法にも限定されない。
いくつかの実施形態において、二次熱処理後、さらに粉砕、篩分け及び脱磁からなる群から選ばれる少なくとも1つを行い、好ましくは、二次熱処理後、さらに粉砕、篩分け及び脱磁を順に行う。
いくつかの実施形態において、機械式粉砕機、気流式粉砕機、低温粉砕機から選択されるいずれか1つで粉砕を行う。
【0109】
いくつかの実施形態において、固定篩、ドラムスクリーン、共振篩、ローラーふるい、振動篩、チェーンふるい(chain grizzly)から選択されるいずれか1つで篩分けを行い、篩分けのメッシュ数は500メッシュ以上であり、具体的に、篩分けのメッシュ数は500メッシュ、600メッシュ、700メッシュ、800メッシュ等であってもよく、負極材料の粒子径を上記範囲内に制御することにより、負極材料のサイクル特性の向上に寄与する。
【0110】
いくつかの実施形態において、脱磁装置は、永久磁石式ドラム型磁選機、電磁分離機、脈動高勾配磁気分離機から選択されるいずれか1つであり、脱磁することは、磁性物質のリチウムイオン電池の放電効果と使用中における電池の安全性への影響を回避するように、最終的に負極材料の磁性物質含有量を制御するためである。
【0111】
本発明は、上記負極材料を有するリチウムイオン電池をさらに提供する。
【実施例】
【0112】
以下、複数の実施例により本発明をさらに説明する。ただし、本発明は、以下の具体的な実施例に限定されない。本発明の主旨を変えない範囲内で、適宜に変更を行って実施することも可能である。
目標領域割合Cの測定方法は、下記のとおりである。
負極材料の粒子のSEM断面をA×B(A及びBがいずれも1μm以下である)四方の領域に分割し、単一の負極材料の粒子の各領域における活物質の分布状況を統計する場合、活物質同士の距離が10nm~300nmの領域の数をN1とし、活物質同士の距離が10nm未満の領域及び300nmより大きい領域の合計数をN2とし、単一の負極材料の粒子の目標領域割合XをX=N1/N2と定義し、Cを任意の5つの負極材料の粒子のX値の算術平均値とする。
【0113】
実施例1
本実施例の負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)メジアン径が100nmのシリコン粉、アルキルフェノールエトキシレート(APEO)とフェノール樹脂を質量比50:3.6:16.4でエチレングリコール溶液に添加し、60min超音波分散して分散溶液を得、そして分散溶液をボールミルに入れて6h研磨分散し、第1の前駆体溶液を得、その後凍結乾燥処理し、第1の前駆体を製造する。
(2)第1の前駆体を熱処理炉に入れ、窒素ガスを導入し、890℃まで昇温して一次熱処理を行い、4h保温し、第2の前駆体を製造する。
(3)回転数を400r/minとし、ブレードギャップ幅を0.8cmとする融合機に第2の前駆体を入れ、2hメカノフュージョンし、凝集体を得る。
(4)凝集体とスクロースを質量比80:89で混合し、その後に混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、850℃の条件で二次熱処理し、4h保温した後、粉砕し、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得る。
【0114】
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比64.6:35.4でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が13.2μm、比表面積が3.5m
2/gであり、炭素層の平均厚さが350nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、15%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、2.0%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で155MPaである。
図2は、本発明実施例1で製造された負極材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、
図3は、本発明実施例1で製造された負極材料のXRDチャートである。
図3に示すように、負極材料にはケイ素のピーク位置が存在する。
【0115】
実施例2
本実施例の負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)メジアン径が40nmのシリコン粉、γ-アミノプロピルトリエトキシシランとフェノール樹脂を質量比60:2.6:17.4でエチレングリコール溶液に添加し、60min超音波分散して分散溶液を得、そして分散溶液をボールミルに入れて6h研磨分散し、第1の前駆体溶液を得、その後凍結乾燥処理し、第1の前駆体を製造する。
(2)第1の前駆体を熱処理炉に入れ、窒素ガスを導入し、850℃まで昇温して一次熱処理を行い、4h保温し、第2の前駆体を製造する。
(3)回転数を600r/minとし、ブレードギャップ幅を0.7cmとする融合機に第2の前駆体を入れ、1.5h融合し、凝集体を得る。
(4)凝集体とアスファルトを質量比70:64で混合し、その後に混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、850℃の条件で二次熱処理し、4h保温した後、粉砕し、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得る。
【0116】
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比61.6:38.4でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が12.2μm、比表面積が3.1m2/gであり、炭素層の平均厚さが380nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、35%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、1.6%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で231MPaである。
【0117】
実施例3
本実施例の負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)メジアン径が30nmのシリコン粉、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとクエン酸を質量比45:4.6:14.4でエチレングリコール溶液に添加し、40min超音波分散して分散溶液を得、そして分散溶液をボールミルに入れて6h研磨分散し、第1の前駆体溶液を得、その後凍結乾燥処理し、第1の前駆体を製造する。
(2)第1の前駆体を熱処理炉に入れ、窒素ガスを導入し、800℃まで昇温して一次熱処理を行い、4h保温し、第2の前駆体を製造する。
(3)回転数を400r/minとし、ブレードギャップ幅を0.6cmとする融合機に第2の前駆体を入れ、2.5h融合し、凝集体を得る。
(4)凝集体とアスファルトを質量比40:54で混合し、その後に混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、850℃の条件で二次熱処理し、2h保温した後、粉砕し、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得る。
【0118】
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比57.1:42.9でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が10.2μm、比表面積が2.1m2/gであり、炭素層の平均厚さが580nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、45%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、2.3%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で123MPaである。
【0119】
実施例4
本実施例の負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)メジアン径が80nmのシリコン粉、ウンデシル酸とフルクトースを質量比40:2.6:7.4でブタノール溶液に添加し、60min超音波分散して分散溶液を得、そして分散溶液をボールミルに入れて8h研磨分散し、第1の前駆体溶液を得、その後噴霧乾燥処理し、第1の前駆体を製造する。
(2)第1の前駆体を熱処理炉に入れ、窒素ガスを導入し、820℃まで昇温して一次熱処理を行い、4h保温し、第2の前駆体を製造する。
(3)回転数を480r/minとし、ブレードギャップ幅を0.6cmとする融合機に第2の前駆体を入れ、3h融合し、凝集体を得る。
(4)凝集体とフェノール樹脂を質量比38:63で混合し、その後に混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、880℃の条件で二次熱処理し、2h保温した後、粉砕し、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得る。
【0120】
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比49.4:50.6でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が10.5μm、比表面積が2.0m2/gであり、炭素層の平均厚さが680nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、52%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、3.1%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で301MPaである。
【0121】
実施例5
本実施例の負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)メジアン径が40nmのシリコン粉、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとアスファルトを質量比46:4.5:13.5でブタノール溶液に添加し、60min超音波分散して分散溶液を得、そして分散溶液をボールミルに入れて4h研磨分散し、第1の前駆体溶液を得、その後噴霧乾燥処理し、第1の前駆体を製造する。
(2)第1の前駆体を熱処理炉に入れ、窒素ガスを導入し、720℃まで昇温して一次熱処理を行い、3h保温し、第2の前駆体を製造する。
(3)回転数を580r/minとし、ブレードギャップ幅を0.5cmとする融合機に第2の前駆体を入れ、2h融合し、凝集体を得る。
(4)凝集体とフェノール樹脂を質量比58:63で混合し、その後に混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、880℃の条件で二次熱処理し、2h保温した後、粉砕し、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得る。
【0122】
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比47.2:52.8でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が13.5μm、比表面積が1.9m2/gであり、炭素層の平均厚さが850nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、38%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、2.4%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で266MPaである。
【0123】
実施例6
本実施例の負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)メジアン径が40nmのGe粉、n-オクタデカン酸とグルコースを質量比46:4.5:9.5でプロパノール溶液に添加し、80min超音波分散して分散溶液を得、そして分散溶液をボールミルに入れて4h研磨分散し、第1の前駆体溶液を得、その後噴霧乾燥処理し、第1の前駆体を製造する。
(2)第1の前駆体を熱処理炉に入れ、窒素ガスを導入し、790℃まで昇温して一次熱処理を行い、3h保温し、第2の前駆体を製造する。
(3)回転数を540r/minとし、ブレードギャップ幅を0.8cmとする融合機に第2の前駆体を入れ、2h融合し、凝集体を得る。
(4)凝集体とフェノール樹脂を質量比88:70で混合し、その後に混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、980℃の条件で二次熱処理し、2h保温した後、粉砕し、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得る。
【0124】
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比70.8:29.2でナノGe粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が14.5μm、比表面積が4.9m2/gであり、炭素層の平均厚さが310nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、65%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、2.8%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で89MPaである。
【0125】
実施例7
本実施例の負極材料の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)メジアン径が80nmのSn粉、セチルトリメチルアンモニウムブロミドとフェノール樹脂を質量比66:4.5:15.5でエタノール溶液に添加し、90min超音波分散して分散溶液を得、そして分散溶液をボールミルに入れて5h研磨分散し、第1の前駆体溶液を得、その後噴霧乾燥処理し、第1の前駆体を製造する。
(2)第1の前駆体を熱処理炉に入れ、窒素ガスを導入し、890℃まで昇温して一次熱処理を行い、2h保温し、第2の前駆体を製造する。
(3)回転数を640r/minとし、ブレードギャップ幅を0.8cmとする融合機に第2の前駆体を入れ、4h融合し、凝集体を得る。
(4)凝集体とアスファルトを質量比100:75で混合し、その後に混合した材料を高温箱型炉に入れ、窒素ガスを導入し、920℃の条件で二次熱処理し、2h保温した後、粉砕し、500メッシュの篩にかけ、負極材料を得る。
【0126】
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比63.5:36.5でナノSn粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が11.5μm、比表面積が3.1m2/gであり、炭素層の平均厚さが350nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、75%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、1.4%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で117MPaである。
【0127】
実施例8
実施例8において、以下の2点以外、実施例1と同様にする。
工程(1)において、メジアン径が100nmのシリコン粉をエチレングリコール溶液に分散させた液体と、アルキルフェノールエトキシレート及びフェノール樹脂をエチレングリコール溶液に分散させた液体とを、攪拌状態で混合し、10min超音波分散して分散溶液を得、そして分散溶液をボールミルに入れて6h研磨分散し、第1の前駆体溶液を得、その後凍結乾燥処理し、第1の前駆体を製造する点;
工程(2)において、一次熱処理の温度は1200℃である点。
【0128】
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比64.6:35.4でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が14.8μm、比表面積が3.7m2/gであり、炭素層の平均厚さが400nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、78%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、2.6%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で167MPaである。
【0129】
実施例9
実施例9において、工程(4)で二次熱処理の温度が600℃である点という以外、実施例1と同様にする。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比64.6:35.8でシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が13.8μm、比表面積が3.1m2/gであり、炭素層の平均厚さが420nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、40%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、3.5%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で133MPaである。
【0130】
実施例10
実施例10において、工程(4)をしない点という以外、実施例1と同様にする。
本実施例で製造された負極材料は、互いの質量比64.1:32.8でシリコン粉及び炭素材料を含む凝集体を有する。
負極材料のメジアン径が14.5μm、比表面積が3.8m2/gであり、炭素層の平均厚さが380nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、26%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、6.7%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で59MPaである。
【0131】
実施例11
実施例11は、工程(1)において添加剤であるアルキルフェノールエトキシレートを添加しない点以外、実施例1と同様の方法で負極材料を製造する。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比64.8:35.2でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が13.8μm、比表面積が3.9m2/gであり、炭素層の平均厚さが360nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、16%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、9.6%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で95MPaである。
【0132】
実施例12
実施例12は、工程(1)において、さらに、金属酸化物(SiO)を、SiOとシリコン粉の質量比を5:100にするように添加する点以外、実施例1と同様の方法で負極材料を製造する。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、ナノシリコン粉、SiO及び炭素材料を含み、シリコン粉、SiO及び炭素材料の質量比は、63.8:4.5:31.7である。
負極材料のメジアン径が11.8μm、比表面積が3.5m2/gであり、炭素層の平均厚さが320nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、18%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、2.5%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で195MPaである。
【0133】
実施例13
実施例13は、工程(1)において、さらに、引張強度が59Gpaの導電性向上剤(単層カーボンナノチューブ)を、単層カーボンナノチューブとシリコン粉の質量比を1.5:100にするように添加する点以外、実施例1と同様の方法で負極材料を製造する。
本実施例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、ナノシリコン粉、単層カーボンナノチューブ及び炭素材料を含み、シリコン粉、単層カーボンナノチューブ及び炭素材料の質量比は64.8:1.1:34.1である。
負極材料のメジアン径が10.4μm、比表面積が2.1m2/gであり、炭素層の平均厚さが360nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、18.8%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、2.9%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で175MPaである。
【0134】
比較例1
比較例1は、工程(1)において、研磨分散処理しない点以外、実施例1と同様の方法で負極材料を製造する。
本比較例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比60.8:38.2でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が10.4μm、比表面積が4.6m2/gであり、炭素層の平均厚さが320nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、2%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、6.8%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で48MPaである。
【0135】
比較例2
比較例2は、工程(3)において、融合処理しない点以外、実施例1と同様の方法で負極材料を製造する。
本比較例で製造された負極材料は、凝集体と、凝集体の表面を被覆する炭素層を有し、凝集体は、互いの質量比76.2:35.2でナノシリコン粉及び炭素材料を含む。
負極材料のメジアン径が21.6μm、比表面積が6.9m2/gであり、炭素層の平均厚さが680nmである。
上記した目標領域割合Cの測定方法で測定される負極材料における目標領域割合Cが、6%である。
水銀圧入法で負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の空孔率が、13.9%である。
ナノインデンターで負極材料の粒子を試験して測定される負極材料の押込み硬さが、平均で44MPaである。
【0136】
測定方法
(1)ボタン型電池試験
以下の方法で電気化学的サイクル性能を測定する。固形分が50%となるように、製造された負極材料、導電剤及び接着剤を質量比94:1:5で溶媒に溶解して混合し、銅箔集電体に塗布し、真空乾燥させ、負極シートを製造する。そして、従来の成熟した技術で製造された三元正極シート、1mol/LのLiPF6/エチレンカーボネート+ジメチルカーボネート+メチルエチルカーボネート(v/v/v=1:1:1)電解液、Celgard2400セパレータ、及びケースを、従来の製造技術でボタン型リチウムイオン電池に組み立てる。マイクロメーターでリチウムイオン電池の極片の初期厚さH0を測定する。リチウムイオン電池の充放電試験は、WuhanLANDelectronics社(中国語原文:武漢金諾電子有限公司)のLAND電池用測定システムで、常温条件で、0.2Cで定電流充放電し、充放電電圧を2.75~4.2Vとし、初回可逆容量、1サイクル目の充電容量及び1サイクル目の放電容量を得る。初回クーロン効率=1サイクル目の放電容量/1サイクル目の充電容量
50サイクル繰り返したとき、マイクロメーターでリチウムイオン電池の極片の厚さH1を測定し、(H1-H0)/H0×100%で50サイクル繰り返した後の膨張率を求めた。
100サイクル繰り返し、放電容量をリチウムイオン電池の残容量として記録し、容量維持率=残容量/初回可逆容量×100%である。
【0137】
(2)凝集体の空孔率の測定
空孔率を水銀圧入法で測定する。少なくとも3回測定される空孔率の算術平均値を測定結果として採用する。
【0138】
(3)メジアン径の測定
本発明において、メジアン径の物理的意味は、粒子の体積基準の累積粒度分布パーセントが50%に達する時に対応する粒径であり、マルバーン粒度計により測定される。マルバーン粒度計は、粒子による光の散乱現象を利用し、散乱光エネルギーの分布に基づいて被測定粒子の粒径分布を総合的に換算される。
【0139】
(4)押込み硬さの測定
ナノインデンターにより荷重0.6N、押し込み深さ0.5μmで押し込み硬さ試験を行って、押込み硬さを測定する。
【0140】
(5)負極材料の測定密度
空瓶を質量m秤取し、蒸留水を満たし、この時の瓶を質量m1秤取し、そして瓶を洗浄し、乾燥し、一定量の負極材料を比重瓶に添加し、この時の全体質量をm2と記録し、そして蒸留水を添加し、比重瓶を満たし、質量m3秤取し、比重瓶の体積V1をV1=(m1-m)/ρ
水
(ρ
水
は蒸留水の密度である。)で求め、負極材料の体積V2をV2=V1-(m3-m2)/ρ
水
で求め、負極材料の測定密度ρ2をρ2=(m2-m)/V2で求める。
【0141】
(6)比表面積の測定
負極材料の比表面積をMicromeritics社製の比表面積測定装置で測定する。
【0142】
(7)引張強度の測定
導電性向上剤の引張強度を引張り試験機で測定する。
上記性能測定結果は、下表で示される。
【0143】
【0144】
図4は、本発明実施例1で製造した負極材料の初回充放電曲線図である。
図4に示されるように、実施例1で製造された負極材料は初回充放電容量が高く、初回効率も高く、これは、負極材料は、活物質同士の間隔を適切に保ち、活物質の自己凝集を効果的に回避し、リチウムを放出・吸蔵する過程で電気的接触を失うことを回避し、活物質と炭素材料との結合を強化し、さらに負極材料の電気化学特性を向上させることができる。
【0145】
図5は、本発明実施例1で製造された負極材料のサイクル特性曲線図である。
図5に示されるように、当該負極材料は優れたサイクル特性を有し、100サイクル容量維持率が93.1%である。これは、凝集体は、空孔率が低く、電解液も凝集体の内部に浸透しにくく、当該凝集体構造は内部の活物質粒子を保護することに寄与し、負極材料の体積膨張を効果的に抑制し、膨張率を低下させ、電池のサイクル特性を向上することができるからである。
【0146】
表1に示されるように、実施例1~10で製造された負極材料は、活物質と炭素材料を含む凝集体を有し、凝集体における活物質の間隔を制御して、活物質の分散度を確保することにより、活物質が凝集する傾向を回避し、凝集体内部のキャリアの輸送経路がスムーズであることを確保できる。粒子の軟凝集を回避でき、活物質同士の間隔を適切に保つことができ、後続の炭素材料の浸透にも寄与し、活物質と炭素材料との結合力を高め、さらに材料の電気化学特性を向上させ、凝集体の空孔率が低く、電解液も凝集体の内部に浸透しにくく、当該凝集体構造が内部の活物質粒子を保護することに寄与し、負極材料の体積膨張を効果的に抑制し、膨張率を低下させ、電池のサイクル特性を向上することができる。
【0147】
ここで、実施例8の負極材料は、製造において、一次熱処理温度が高すぎるため、活性を有しないSiC材料が少量生成し、負極材料の可逆容量と初回クーロン効率が低下する。
【0148】
実施例9の負極材料は、製造において、二次熱処理温度が低すぎるため、凝集体の表面に被覆された炭素源の炭化が不完全であり、負極材料の導電性が低下し、負極材料の初回クーロン効率が低下する。
【0149】
実施例10の負極材料は、製造中に、凝集体の表面に炭素被覆をせず、炭素層を形成していないので、負極材料の導電性が低下し、初回クーロン効率が低下する。
【0150】
実施例11の負極材料は、製造中に、添加剤を添加していないので、活物質粒子と炭素材料が密に接続せず、得られた凝集体の構造安定性が低下し、膨張に対する緩衝・抑制作用が弱くなる。
【0151】
実施例12の負極材料は、製造中に、活物質、添加剤、第1の炭素源及び溶媒を分級混合する際に金属酸化物をさらに添加することにより、凝集体構造の剛性が向上し、粒子のサイクル安定性が向上し、サイクル後に極片の膨張率が低下する。
【0152】
実施例13の負極材料は、製造中に、活物質、添加剤、第1の炭素源及び溶媒を分級混合する工程において導電性向上剤をさらに添加することにより、キャリアの凝集体内部での輸送を効果的に改善し、凝集体の導電性を高め、負極材料の初回クーロン効率を向上させることができる。また、導電性向上剤は、凝集体の構造安定性を効果的に向上させ、粒子のサイクル安定性を向上させ、サイクル後に極片の膨張率を低下させることができる。
【0153】
比較例1の負極材料は、製造中に、工程(1)において原材料を研磨分散せず、活物質と炭素材料の混合均一度が低下し、活物質が原材料において十分分散していないので、負極材料の凝集体において、活物質同士の距離が明らかに小さくなり、活物質の分散度が低下し、活物質が凝集する傾向があり、凝集体内部のキャリアの輸送経路が詰まりやすく、材料の電気化学特性が低下する。
【0154】
比較例2の負極材料は、製造において、工程(2)では前駆体を融合処理しないので、全体構造が緩くなる傾向があり、活物質と炭素材料との接続安定性が低く、活物質と炭素材料との間の空孔が増大し、これにより凝集体の構造強度が低下し、押込み硬さが大幅に低下し、活物質膨張による応力変化に耐えにくく、膨張率が向上する。
【0155】
以上より、好適な実施例を参照しながら本発明を開示したが、これらの内容は、特許請求の範囲を限定するものではない。当業者が本発明の主旨を逸脱せず、種々の可能な変更や変形を行うことができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に限定される範囲に準じるべきである。