(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】太陽熱を用いた発電システム
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20241203BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20241203BHJP
F03G 6/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H10N10/13
F03G6/00 521
(21)【出願番号】P 2024101163
(22)【出願日】2024-06-24
【審査請求日】2024-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207872
【氏名又は名称】大末建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】324003174
【氏名又は名称】株式会社GCEインスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 浩則
(72)【発明者】
【氏名】安田 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博史
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-058118(JP,A)
【文献】国際公開第2023/038103(WO,A1)
【文献】特開2018-189289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H10N 10/13
F03G 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集熱管を備える発電システムであって、
前記集熱管は熱電変換素子を含み、前記熱電変換素子は平板状をしており、前記熱電変換素子が前記集熱管内部に収納されていることを備え
、
絶縁機能を持つ第1基板を有する熱電変換素子上にスペーサを配置した補助シートが前記集熱管内部に収納されることを特徴とする、発電システム。
【請求項2】
前記熱電変換素子は、温度差不要の熱電変換素子であることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記集熱管内に蓄熱性の高い材料を用い、日中太陽光により発生した熱を前記集熱管内に溜めることにより夜間にも発電できることを特徴とする請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
集熱器を更に備え、太陽光を反射して前記集熱管に入射されるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の発電システム。
【請求項5】
前記熱電変換素子は、第1電極、第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間の中間部とを備え、前記第1電極の任意の点から、一方の導線を引き出し、前記第2電極の任意の点から、他方の導線を引きだすように構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の発電システム。
【請求項6】
前記集熱管内の蓄熱性の高い材料は、溶液であることを特徴とする請求項3に記載の発電システム。
【請求項7】
前記集熱管の一部に栓を設け、当該栓に貫通孔を設けるか当該栓を取り外すことによって、前記溶液が気化して前記貫通孔を通して外部に蒸発可能な構成であることを特徴とする、請求項6に記載の発電システム。
【請求項8】
集熱管を備える発電システムであって、
前記集熱管は熱電変換素子を含み、前記熱電変換素子は平板状をしており、前記熱電変換素子が前記集熱管内部に収納されていることを備え、
前記集熱管内に蓄熱性の高い材料を用い、日中太陽光により発生した熱を前記集熱管内に溜めることにより夜間にも発電でき、
前記集熱管内の蓄熱性の高い材料は、溶液であり、
前記集熱管の一部に栓を設け、当該栓に貫通孔を設けるか当該栓を取り外すことによって、前記溶液が気化して前記貫通孔を通して外部に蒸発可能な構成であることを特徴とする、発電システム。
【請求項9】
集熱管を備える発電システムであって、
前記集熱管は熱電変換素子を含み、前記熱電変換素子は平板状をしており、前記熱電変換素子が前記集熱管内部に収納されていることを備え、
前記集熱管の一部に栓を設け、当該栓に貫通孔を設けるか当該栓を取り外すことによって、前記集熱管内の溶液が気化して前記貫通孔を通して外部に蒸発可能な構成であることを特徴とする、発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を用いた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱を用いたエネルギー利用は太陽熱で水を加熱して得る温水の利用、または太陽熱で水を加熱して発生させる蒸気でタービンを回して発電していた。例えば、特許文献1を参照されたい。
【0003】
また、太陽光を用いた発電は太陽光パネル発電が主流である。太陽熱を用いて発電する場合は太陽熱を用いて水を沸騰させてタービンを回すボイラー方式や熱電変換素子(ペルチェ素子)を使って直接電気に変える方法が普及している。例えば、特許文献3を参照されたい。
【0004】
一方で、特許文献2や特許文献4で示すような温度差不要の熱電変換素子が発明されており、様々な発電用途に適用できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2012/042639号公報
【文献】特許7011361号公報
【文献】特開2007-166721号公報
【文献】国際公開2023/038103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様によれば、太陽などからの熱を利用し温度差が不要の熱電変換素子を用いて太陽熱発電システムを構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、集熱管を備える発電システムであって、前記集熱管は、温度差不要の熱電変換素子を含み、前記熱電変換素子は屈曲可能な平板状をしており、前記熱電変換素子は巻いたり、折りたたんだりすることにより前記集熱管内部に収納されていることを特徴とする発電システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、太陽熱が届きにくい曇天や太陽熱が届かない夜間でも集熱管内部に蓄熱した昼間の予熱を用いて発電を継続することができる。
【0009】
本発明の他の目的、特徴および利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例による熱発電システムの一例を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例による熱発電システムで使用する集熱管の一例を示し、(a)集熱菅の断面図と、(b)導線が接続された熱電変換素子を示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例による熱発電システムで使用する集熱管の別の一例を示し、(a)集熱菅の断面図と、(b)導線が接続された熱電変換素子を示す。
【
図4】
図4は、複数の熱発電システムを配置し、これらを直列(a)または並列(b)に接続した構成の一例を示す。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例で使用する熱電変換素子の一例を示す。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例で使用する熱電変換素子の補助シートの一例を示し、(a)補助シートを広げた図、(b)補助シートを使用した図の一例を示す。
【0011】
図1は、本発明の一実施例による熱発電システムの一例を示す。本実施例では、太陽熱に基づいて発電をするシステムについて説明する。
【0012】
本実施例の熱発電システム1000は、集熱管100を備える。本実施例の熱発電システム1000は、付加的に、集熱器200を備えてもよい。
【0013】
集熱管100は、太陽熱を集熱管100の内部に集めて蓄える機能を有する。
【0014】
集熱器200は、例えば、反射板であり、上面板210、下面板220、側面板230から構成される。少なくとも側面板230が、熱発電システム1000内に設置された集熱管100に太陽熱を集熱することが可能な形状に構成されている。具体的には、側面板230には、鏡や金属板などの太陽熱を反射する材料で構成され、太陽熱を反射して集熱管100に入射されるような方向に配置されている。なお、本実施例の側面板230は、複数の平面板から構成されているが、1枚の曲面の板から構成されてもよい。
【0015】
本実施例の熱発電システム1000は、更に、蓋310と、太陽熱を効率よく受ける位置に集熱管100を配置するため上部固定具330と下部固定具320を備えてもよい。蓋310は、集熱管100の上部開口部分の栓として機能する。上部固定具330は、上面板210の一部に取り付けられ且つ下部固定具320は、下面板220の一部に取り付けられ、集熱管100を固定している。また、集熱管100の蓋310に貫通孔を設けて、または、単に蓋310を取り外して、熱発電システム1000の内部の溶液140が気化して外部に蒸発できるように構成されてもよい。
【0016】
なお、本実施例の熱発電システム1000において、
図4(a)に示すように、複数の熱発電システム1000を配置し、これらを直列に接続することにより、所望の高電圧を得るように構成されてもよい。また、
図4(b)に示すように、複数の熱発電システム1000を並列に接続することにより、所望の高電流を得るように構成されてもよい。
【0017】
図2は、本発明の一実施例による熱発電システムで使用する集熱管の一例を示す。
【0018】
図2(a)に示すように、本実施例の集熱管100は、外管111と、内管112と、熱電変換素子120と、溶液140とを備える。
【0019】
外管111は、ガラスなどで構成され、太陽熱を内管112へ透過する構造を有している。
内管112は、ガラスなどで構成され、銀メッキ加工処理などが施されており、内管112内部からの熱放射を反射させ熱を内部に保つ構造を有している。
外管111と内管112とを組み合わせることにより、太陽熱を集熱管100の内部に蓄熱できる構造をなしている。具体的には、円筒形の外管111と内管112を有する二重管構造を構成とし、外管111と内管112との間を真空とする構成にする。真空断熱効果により集熱管100の内部に取り込まれた太陽熱を外部に逃がしにくい構造となっている。
【0020】
熱電変換素子120は、例えば、温度差不要の熱電変換素子である。温度差不要の熱電変換素子を用いることで太陽熱から直接電気を回収することができる。熱電変換素子120は、屈曲可能な平板の形状を有しており、巻いたり、折りたたんだりすることにより集熱管100内に収納される。
【0021】
溶液140は、オプションの構成であるが、集熱管100の内管112に充填される。溶液140を充填することにより、空気など気体が充填されている状態と比較し、蓄熱効果を一層高め且つ溶液の持つ沸点により集熱管100内部の意図しない温度上昇を抑えることで、熱電変換素子の破壊を避けることができる。更に、集熱管100内に、日中に得た太陽熱を溜めることができるようになるので、集熱管100が受ける太陽熱の量が減少しても内管112内は高温を維持することができる。例えば、夕方から夜間にかけて太陽熱が減少しても、内管112内部に溶液140を充填することで、内管112内部の温度は緩やかに低下し日照時間を超えた長時間にわたり発電を続けることができる。なお、溶液140は、揮発しにくく蓄熱効果が大きく且つ反応性や生物および環境有害性が低いものであり、その溶液の一例は、(水、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、アルコール系溶剤であるエタノール、メタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、イソプロピルアルコール、脂肪族炭化水素であるパラフィン、オレフィン、ナフテン、滑油、食用油、グリセリン、シリコンオイルなど)である。また、対生物および環境安全性が保証できるものであればフッ素系溶液等であってもよい。
【0022】
本実施例の集熱管100内には、平板状の熱電変換素子120が収納されている。太陽光パネルのように光を受ける面積が出力を支配するシステムとは異なり、熱電変換素子120を巻いたり、折りたたんだりして集熱管100内に収納することができるので、単位面積当たりの発電量を大きくしたり、発電システムをコンパクトにしたりすることができる。
【0023】
図2の(b)は、導線121、122が接続された熱電変換素子120を示す。熱電変換素子120の電極11の任意の場所および電極12の任意の場所に、それぞれ導線122および導線121が取り付けられている。また、蓋310には、貫通孔を設けておき、当該貫通孔などを通して導線121、122を外部に引き出すことにより、発電された電気を取り出すことができる。
【0024】
図3は、本発明の一実施例による熱発電システムで使用する集熱管の別の一例を示す。ここでは、
図2の集熱管との違いについて説明する。
図3の(a)集熱菅の断面図においては、導線121、122が、熱電変換素子120の中心部から引き出されている。このとき、
図3(b)には導線が接続された熱電変換素子の形状を示しており、電極12のサイズ(面積)が電極11のサイズよりも若干大きくなるように構成されている。このように、電極11の形状を電極12の形状と異なるように構成することで、1つの面から、導線121、122を引き出すことができるようになる。
【0025】
図5は、本発明の一実施例で使用する温度差不要の熱電変換素子120の一例を示す。
【0026】
熱電変換素子120は、第1電極11と、第2電極12と、中間部14とを備える。熱電変換素子120は、例えば、第1基板15を備えてもよい。第1基板15は、屈曲性があり且つ絶縁性を持つ材料で構成される。第1電極11および第2電極12は、互いに対向して設けられる。第1電極11および第2電極12は、それぞれ異なる仕事関数を有する。各電極11、12の材料として、例えば、白金、金、パラジウム、銅、鉄、クロム、コバルト、チタン、ニッケル、アルミニウム、ジルコニウム、タングステン、カーボン等の単一元素からなる材料が用いられる他、例えば、2種類以上の元素からなる合金、そしてその酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物などの材料が用いられてもよい。なお、本発明の一実施例で使用する熱電変換素子120の詳細については、特許文献2(特許7011361号公報)を参照されたい。
【0027】
また、本実施例の発電システムは、特許文献2(特許7011361号公報)および特許文献4(国際公開2023/038103号公報)に示される温度差不要の熱電変換素子120のみならずそれ以外の温度差不要熱電変換素子も適用可能である。
【0028】
図6は、本発明の一実施例で使用する熱電変換素子120の補助シート600の一例を示す。
本実施例の補助シート600は、熱電変換素子610(
図5の熱電変換素子120を参照。熱電変換素子610は
図5の熱電変換素子120に相当する絶縁機能を持つ第1基板を有する)と、スペーサ640と、一対の電極650と、管660とから構成される。
スペーサ640は、熱電変換素子610の幅方向(
図6(a)においては横方向)に沿って且つ熱電変換素子610の(
図6(a)において)上端側および下端側の両側に配置されている。スペーサ640同士の間隔は任意の長さでよく、スペーサ640の数や形状も任意でよいが、後述するような
図6(b)において巻かれた筒状を維持でき、巻いた状態で内側にくる熱電変換素子610の外側と外側にくる熱電変換素子610の内側が接触しない程度に構成されていればよい。更に、スペーサ640は、耐熱性および防水性の性能を有してもよい。
なお、本実施例のスペーサ640は、当該スペーサ640の内部に貫通孔を有する構成であるが、別の実施例として貫通孔を有していない構成でもよい。
一対の電極650は、熱電変換素子610の導線121、122(
図2、
図3参照。熱電変換素子610は
図2、
図3の熱電変換素子120に相当)と接続される。
管660は、貫通孔を有しており、当該貫通孔内部を導線121、122および一対の電極650を通すように構成されている。管660は、補助シート600を巻く際の芯(中心)となるように構成されてもよい。
【0029】
図6(b)に示すように、本実施例の補助シート600は、熱電変換素子610を、通水性を確保し熱電変換素子同士の接触を防止しながら巻回して、集熱管に収納することができる。
【0030】
本実施例の補助シート600を使用することにより、例えば、熱電変換素子610同士の接触を防ぐとともに、熱電変換素子610の両面に溶液を接触させることで意図しない温度上昇を抑え熱電変換素子610の破壊を避けることができる。
【要約】
【課題】温度差不要の熱電変換素子を用いて太陽熱発電システムを構築する。
【解決手段】集熱管を備える発電システムであって、前記集熱管は熱電変換素子を含み、前記熱電変換素子は平板状をしており、前記熱電変換素子は前記集熱管内部に収納されている発電システムを提供する。
【選択図】
図1