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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】鋳型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/02 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B22C9/02 101Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024541278
(86)(22)【出願日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2023029771
(87)【国際公開番号】W WO2024075408
(87)【国際公開日】2024-04-11
【審査請求日】2024-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2022160764
(32)【優先日】2022-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155366
【氏名又は名称】株式会社木村鋳造所
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】吉村 一利
(72)【発明者】
【氏名】西脇 匠
(72)【発明者】
【氏名】小原 結也
(72)【発明者】
【氏名】角田 誉幸
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-295713(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111590030(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101279357(CN,A)
【文献】特開平07-232239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 5/00 - 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物砂とバインダーとを混錬して型枠に充填・加圧し型枠内硬化させ、前記型枠から取り外して砂ブロックを作製し、切削工程及び型合工程により砂型を製造する鋳型の製造方法において、
ロボットにより操作され砂ブロックを切削加工し上下型を切削加工する加工ヘッドと、
ロボットにより操作され上型を把持し上下型におけるキャビティの形成される型合面同士を合せる把持アームと、
この把持アームに把持された少なくとも上型を検知片に接触させて座標を検知する座標計測センサと、を備え、
前記砂型の側面は型合面に近接するにしたがって互いに対向面に近づく勾配を有し、
前記把持アームの把持面も前記砂型の前記側面と同様の勾配を有し、
Z座標を規定するZ軸は上下方向に配向され、
前記加工ヘッドは前記切削工程において上下型それぞれに型合面を切削形成すると共に、上下型それぞれに同型合面を基準に前記キャビティを切削形成し、
前記型合工程において載置面に載置されている下型の型合面で同一直線上に位置しない少なくとも3点を測定して各点のZ座標を認識させると共に、前記把持アームの前記把持面を前記側面に接当させて把持した前記上型における型合面同一直線上に位置しない少なくとも3点を測定して各点のZ座標を認識させた後に、上下型の型合面を平行に保った姿勢で前記把持アームによる型合せを行う鋳型の製造方法。
【請求項8】
前記把持アームには前記検知片に接触させることで座標を計測する座標計測センサを設けてあり、前記下型の載置される載置面に下型を載置した後、前記座標計測センサを利用して前記載置面に載置された前記下型の前記各座標を認識させ、前記下型の載置される載置面につながる部位に他の座標計測センサを設け、前記把持アームで把持した上型にこの他の座標計測センサを利用して上型の把持状態における上型の前記各座標を認識させる請求項1~7のいずれかに記載の鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型の製造方法に関する。さらに詳しくは、鋳物砂とバインダーとを混錬して型枠に充填・加圧し型枠内硬化させ、前記型枠から取り外して砂ブロックを作製し、切削工程及び型合工程により砂型を製造する鋳型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の鋳型の製造方法に関し、切削工程については特許文献1が、型合工程については特許文献2が知られている。前者にあっては、砂ブロックの成型型と切削とを組み合せて、切削工程の短縮を図っている。また、後者にあっては、基準パターンブロック24~27を成型型に用いて、砂型に基準パターン28~31を形成し、基準パターンを基準に砂型の型合せを行っている。
【0003】
しかし、鋳造品の多品種小ロット製造のニーズに対応するには、いずれの先行技術をもっても不十分であった。前者にあっては、砂ブロックの成型型は多品種に対応できず、後者にあっては、砂ブロックの成型の仕上がり寸法調整を前提としており、小ロットでは硬化条件に伴う寸法誤差が基準パターンの精度を保証することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-131901号公報
【文献】特表2019-536636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
係る従来の実情に鑑みて、本発明は、多品種小ロットに対応しうる鋳型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋳型の製造方法の特徴構成は、鋳物砂とバインダーとを混錬して型枠に充填・加圧し型枠内硬化させ、前記型枠から取り外して砂ブロックを作製し、切削工程及び型合工程により砂型を製造する方法において、ロボットにより操作され砂ブロックを切削加工し上下型を切削加工する加工ヘッドと、ロボットにより操作され上型を把持し上下型におけるキャビティの形成される型合面同士を合せる把持アームと、この把持アームに把持された少なくとも上型を検知片に接触させて座標を検知する座標計測センサと、を備え、前記砂型の側面は型合面に近接するにしたがって互いに対向面に近づく勾配を有し、前記把持アームの把持面も前記砂型の前記側面と同様の勾配を有し、Z座標を規定するZ軸は上下方向に配向され、前記加工ヘッドは前記切削工程において上下型それぞれに型合面を切削形成すると共に、上下型それぞれに同型合面を基準に前記キャビティを切削形成し、前記型合工程において載置面に載置されている下型の型合面で同一直線上に位置しない少なくとも3点を測定して各点のZ座標を認識させると共に、前記把持アームの前記把持面を前記側面に接当させて把持した前記上型における型合面同一直線上に位置しない少なくとも3点を測定して各点のZ座標を認識させた後に、上下型の型合面を平行に保った姿勢で前記把持アームによる型合せを行うことにある。
【0007】
同構成によれば、加工ヘッドは前記切削工程において上下型それぞれに型合面を切削形成すると共に、上下型それぞれに同型合面を基準に前記キャビティを切削形成するため、砂ブロックの硬化後の仕上がり寸法が異なっても、キャビティは正確に形成される。また、型合工程において載置面に載置されている下型の型合面で同一直線上に位置しない少なくとも3点を測定して各点のZ座標を認識させると共に、前記把持アームの前記把持面を前記側面に接当させて把持した前記上型における型合面同一直線上に位置しない少なくとも3点を測定して各点のZ座標を認識させた後に、上下型の型合面を平行に保った姿勢で前記把持アームによる型合せを行うので、下型の姿勢に拘わらず、上下型を正確に型合せさせることができる。砂ブロックの成型型は異なる鋳型で共通に用いることができ、切削のみで異なる砂型を製造できるため、多品種小ロットに対応が可能である。
【0008】
上記特徴において、前記Z軸に直交するXY軸で横方向を規定するXY座標を有し、前記加工ヘッドは前記切削工程において前記上下型の前記型合面近傍に互いに前記XY軸の交差角で配向された少なくとも2つの横方向位置合面をそれぞれ切削形成し、前記型合工程において上下型それぞれにおける前記各横方向位置合面のXY座標を認識させると共に、上下型の横方向位置を符合させて前記把持アームによる型合せを行うとよい。同特徴によれば、横方向位置合面を切削し他の横方向面は切削する必要がなく、砂の切削量を最小限に留めながら横方向位置合せを正確に行うことができる。
【0009】
この少なくとも2つの横方向位置合面のうちの少なくとも一方は2か所以上隔たった位置に設ける(一方の横位置合面を2箇所以上切削し、横位置合面が隔たるようにする)とよい。横方向位置合面のうちの少なくとも一方が2か所以上隔たった位置に設けられることにより、横方向位置合面側の辺の傾きを検知することができ、横方向の型合せがより正確となる。
【0010】
前記上下型を構成する砂ブロックは、それぞれ平面視で凸多角形を呈し、前記横方向位置合面は凸多角形の角部に形成するとよい。
【0011】
前記凸多角形は矩形を呈し、前記横方向位置合面は前記矩形の隣接する角部及び対面する角部において切削長さを異ならせてあり、上下型においてそれぞれ同じ切削長さに形成するとよい。同構成によれば、型合せを行ったときに、上下型が異なる回転位置となった場合に直ちに目視、画像認識等で発見が可能であり、特に砂型の角部全てに横方向位置合面を形成した場合に発見が容易となる。
【0012】
前記2つの横方向位置合面の他に、前記上下型の前記型合面近傍には前記ロボットで加工され全てが互いに平行とならない少なくとも2つの他の横方向位置合面をそれぞれ有し、上下型それぞれにおける前記他の横方向位置合面上の2点のXY座標を認識させることで、前記型合せの確認を行うとよい。これにより、型合せの正確さ及び切削誤差等の確認が可能となる。
【0013】
前記ロボットによる切削加工時において、前記砂ブロックの上側が前記キャビティの構成面であり、前記砂ブロックの下面近傍の側面には垂直壁部を有し、この垂直壁部に位置合片を接当させて、前記ロボットの切削加工の水平座標の基準とするとよい。同構成によれば、砂ブロックをより正確に傾きを低減させ座標に符合させ、切削量の削減を図ることが可能となる。すなわち、砂ブロックが座標に対し傾くケースを想定すると、精度を保証するために切削量を多くする必要があるが、本発明ではその必要性が低減される。
【0014】
前記把持アームには前記検知片に接触させることで座標を計測する座標計測センサを設けてあり、前記下型の載置される載置面に下型を載置した後、前記座標計測センサを利用して前記載置面に載置された前記下型の前記各座標を認識させ、前記下型の載置される載置面につながる部位に他の座標計測センサを設け、前記把持アームで把持した上型にこの他の座標計測センサを利用して上型の把持状態における上型の前記各座標を認識させるとよい。同構成によれば、下型は載置面に載置された状態で上記各座標が測定され、上型は把持アームで把持された状態で上記各座標が測定され、両者の位置関係が把握された状態で変動要因を最小限に留めながら型合せができるため、型合せを正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明に係る鋳型の製造方法の特徴構成によれば、合理的な切削と型合せにより多品種小ロットに対応しうる鋳型の製造方法を提供し得るに至った。また、本発明の他の特徴構成によれば、砂型の切削量を最小限に留め、加工の合理化により、さらに多品種小ロット対応を推進することが可能となった。
【0016】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】全工程の概要を示す説明図である。
図2】成型工程を示す図であって、(a)は成型型を分離させた縦断面図、(b)は成型中の縦断面図、(c)は成型型を外した状態の平面図である。
図3】切削工程を行う切削設備を示し、(a)は側面図、(b)は台座の平面図である。
図4】型合工程を行う型合設備を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図5図4の把持アーム近傍を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図6】砂型の斜視図である。
図7】砂型の正面図である。
図8】砂型のY軸を対称軸とした展開平面図である。
図9】上型及び下型の座標の符合手順を示す図であって、(a)は座標符合前、(b)は座標符合後の状態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る砂型の製造方法(全製造工程ST001)は、図1に示すように、鋳物砂とバインダーとを混錬して型枠に充填・加圧し型枠内硬化させて砂ブロックを作製する成型工程ST100、同砂ブロックから砂型を切削形成する切削工程ST200、及び、切削した上下型を型合する型合工程ST300を有している。加工設備100としては、図2に示す成型設備110、図3に示す切削設備120、図4,5に示す型合設備130を用いている。設備100のロボット101は、切削設備120では切削ロボット121、型合設備130では型合ロボット131をそれぞれ用いているが、共通のロボットを利用して、加工ヘッドや把持アームのみアタッチメントとして取り替えるようにしてもよい。
【0019】
下型成型工程ST110、下型切削工程ST210及び下型清掃工程ST310は順次連続して行われる。同様に、上型成型工程ST130、上型切削工程ST230、上型清掃工程ST330が順次行われた後、上下型型合工程ST350が行われる。図6~9は砂型であり、まずこの切削形成され型合せされる砂型について説明し、順次、製造工程について説明する。なお、バッチ処理の場合は、上下型を大量に成型、切削して一次場所に保管し、随時必要に応じて上下砂型の清掃、型合工程を行っても良い。
【0020】
図6~9に示す砂型Mは、上型MU及び下型MLを備えている。上下型が合せられる型合面Smは、上下型でそれぞれ上型型合面SmU、下型型合面SmLとなっている。同図では、互いに90度で交差するXYZ軸とその原点Oを表示しているが、軸の方向は図2~5では基本的に同一である。Z軸は上下方向を示し基本的に鉛直方向であるがこれに限られない。また、XY軸は横方向を示し基本的に水平であるがこれに限られない。上下型にはキャビティCが形成されており、上キャビティC1と下キャビティC2とが合わさってキャビティCとなる。上型には湯口W1及び湯道(落とし)W3が形成されて、湯道W2に続き、さらに先のキャビティCに溶湯が供給される。
【0021】
各砂型は、底面Sbから垂直壁部Svが立ち上がり、型合面Smに向かって緩やかな傾斜の側面Ssが連続する。垂直壁部Svは後述の切削時の横方向位置合せに用いられる。緩やかな傾斜の斜面Ssは、砂型を成型型から取り出しやすくするための抜き勾配の付与と共に、後述する把持アームでの把持のため、及び、横方向位置合面が側方に突出して損傷しないように付与されている。これらの基本構成は、砂ブロックでも同様である。
【0022】
型合面は、上型型合面SmUと下型型合面SmLとがそれぞれ上下型に設けられている。この上型型合面SmU、下型型合面SmLを利用して、同一直線上に位置しない少なくとも3点PU1~3,PL1~3でのZ軸位置を把握することで、これら上型型合面SmU、下型型合面SmLを互いに平行に保ち型合せを行うことができる。これら3点PU1~3及びPL1~3はそれぞれを上型、下型の角部近くに設けることで、キャビティCとの干渉が防がれ、且つ、各点同士の距離が離れることで、上型型合面SmU及び下型型合面SmLそれぞれの傾きをより正確に求めることができる。
【0023】
型合せにおける上下型の横方向の姿勢と位置は、横方向位置合面で把握、修正される。X軸方向の変位を把握するためのX軸横方向位置合面SUWX1,SLNX2は、Y軸に沿った面である。同様に、X軸方向の変位を把握するためのY軸横方向位置合面SUWY1,SLNY2はX軸に沿った面である。また、図6~9における紙面向かって左側の各横方向位置合面は、同右側の横方向位置合面よりも幅広となっている。一例を挙げると、左側は55ミリ、右側は35ミリであるがこれに限られない。したがって、前者を幅広横方向位置合面SUW,SLWと3文字目をWで表記し、後者を幅狭横方向位置合面SUN,SLNと3文字目をNで表記する。
【0024】
横方向位置合面の幅広、幅狭は、上下型の向きを間違えないように上下型で符合するように形成されている。図8では、左側は幅広位置合面、右側は幅狭位置合面となっており、また、いずれも対角では、幅広と幅狭とが向かい合う配置となっている。この配置により、上下型の重ね合せ方向が間違うと、直ちに位置合面で誤りが判明する構成となっている。判定は目視により、または、画像認識による自動識別で行うことが可能である。
【0025】
上記の表記に従えば、X軸横方向位置合面SUWX1,SLNX2、Y軸横方向位置合面SUWY1,SLNY2となる。また、例示すると、上幅広第一X軸横方向位置合面SUWX1、下幅狭第二Y軸横方向位置合面SLNY2のような表記となる。
【0026】
次に、各工程の内容と、それに用いる製造設備とについて順次説明する。
まず、成型工程ST100において用いられる成型設備110は、図2に示すように、成型型111、圧縮板112、下板113と図示しない鋳物砂の注入装置及び振動の可能な圧縮装置を備えている。成型型111は、上ブロックBU及び下ブロックBLで用いられるが、下板113は位置合ピン113bのみ共通で設けられ、湯口型113aは上ブロックBU用のもののみ設けられる。可能な限り型を上ブロックBU及び下ブロックBLで共有することで、成型誤差の低減を図っている。また、湯口型113aを設けることで、砂型の切削量が減り、裏側から湯口を切削するための反転切削を実施しなくてよいため砂型製造の工数が削減される。
【0027】
切削工程ST200において用いられる切削設備120は、図3に示すように、切削ロボット121、基礎床124、載置面125、位置合片126を備えている。切削ロボット121は、先の基礎床124、載置面125につながる基礎台121aの上に多関節のアーム121bを有し、切削バイトのような工具123を回転させる加工ヘッド122をXYZ方向に自由に移動させることができる。
【0028】
載置面125の位置合片126に合せて、座標軸の原点Oを設定している。図では、理解の容易のために、Y軸に沿いX軸方向の位置合せを行うX軸位置合片126Xの延長上と、X軸に沿いY軸方向の位置合せを行うY軸位置合片126Yの延長上との交点で、載置面125上に原点Oを定めている。各砂型は、底面Sbから垂直壁部Svが立ち上がり、位置合片126及び押圧片127の双方を接当することで、原点Oに対して砂ブロックの横方向位置を合せ、切削量を最小限に留めている。具体的には、垂直壁部Svに対し1つのX軸位置合片126Xと2つのY軸位置合片126Yの双方で固定し支持し、それぞれの対辺側の垂直壁部Svに対しX軸押圧片127X及びY軸押圧片127Yを近接、接当させてXY方向に対する傾きを規制する。
【0029】
切削加工の順としては、下型MLを先に切削した後、上型MUを切削すると、後の型合工程で上型MUの清掃の後直接型合せに入れるため、工程省略上で有利であるが、切削順はこれに限られない。各部位の切削については、各砂ブロックBU,BLに対し、型合面SmU,SmLをまず切削した後、横方向位置合面SU,SL、キャビティC及び湯道W2等を切削することが望ましい。型合面SmU,SmLを基準に切削することで、キャビティC湯道W2,W3等の全体が正確に形成され、また、横方向の位置合せが確実となるからである。
【0030】
下型清掃工程ST310、上型清掃工程ST330及び上下型型合工程ST350に用いられる型合設備130は、図4,5に示すように、型合ロボット131、空気清掃ブース133、基礎床134、載置面135、第一座標計測センサ136、第二座標計測センサ137を備えている。
【0031】
型合ロボット131は、基礎台131aの上に先端を3次元方向に自在に動かせるアーム131bの先端に把持アーム132を設けている。把持アーム132は一対の把持片を近接離隔させることで、対向する一対の把持面132a間で砂型Mを把持することができる。砂型Mの側面Ssは垂直壁部Svとは異なり型合面Smに近接するにしたがって互いに対向面に近づくテーパーを有している。把持面132aも同様のテーパーを有し、特に上型MUの型合面Smを下方に向けた状態で把持面132aを図5の如く側面Ssに接当させることで、上型MUの下方に対する位置ずれを防止することができる。
【0032】
空気清掃ブース133は、砂型Mに付着した砂粒等の切削くずを清掃するもので、空気清掃室133aの下方に設けた多数の空気孔を有する空気ノズル133bからの気流により、上記切削くずを吹き飛ばして清掃する。
【0033】
基礎床134上に型合ロボット131及び載置面135は設けられており、さらに、把持アーム132に第一座標計測センサ136が設けられ、基礎床134上に第二座標計測センサ(他の座標計測センサ)137が設けられている。第一、第二座標計測センサ136,137は、それぞれ検知片136a,137aにより接触した対象物の空間座標をXYZ座標軸で把握する。載置面135上の砂型Mは把持アーム132の第一座標計測センサ136により、把持アーム132で把持された砂型Mは基礎床134上の第二座標計測センサ137により、それぞれ各面Sm,SU,SLの座標位置が把握される。
【0034】
同設備では、下型清掃工程ST310、上型清掃工程ST330の後、これら各工程で上述の座標把握が行われ、その結果に基づいて上下型型合工程ST350が遂行される。上型清掃工程ST330は下型清掃工程ST310と同様であるが、以下、異なる部分のみを記載する。
【0035】
下型清掃工程ST310では、まず、切削工程が終わった下型MLが型合面Smを上にして載置面135のうち第一~第三載置面135a~cのいずれかに載置される。そして、第一座標計測センサ136の検知片136aで複数の横方向位置合面SLの位置を計測して把持アーム132で下型MLを把持し、X軸に平行な反転軸周りで反転回転させて、空気清掃ブース133の空気清掃室133a内に進入させ、空気ノズル133bで下側からキャビティC側に空気流を当て、清掃を行う。
【0036】
その後、再び反転軸周りで型合面Smを上にして載置面135のうち第一~第三載置面135a~cのいずれかに載置する。そして、把持アーム132の第一座標計測センサ136の検知片136aで型合面Sm及び横方向位置合面SLの位置を後述の如く計測して型合せに臨む。
【0037】
上型清掃工程ST330では、清掃までは同様であるが、次の点が異なる。型合面Smは下方に向けたままで、把持アーム132で把持した上型MUを基礎床134上の第二座標計測センサ137の検知片137aに近接させ、型合面Sm及び横方向位置合面SLの位置を後述の如く計測して型合せに臨む。
【0038】
型合面Smについては、図7,8に示すように、上型合面SmUでは、同一直線上に位置しない少なくとも3点PU1~3のZ座標が認識される。同様に、下型合面SmLでは、同一直線上に位置しない少なくとも3点PL1~3のZ座標が認識される。異なる横方向位置を選択しても、結果的に、下型合面SmLの傾斜と、上型合面SmUの傾斜とが平行になるように例えば後述の図9の如く上側MUの姿勢を型合ロボット131で姿勢調整し、両型合面SmU,SmLを近接・接合させる。
【0039】
横方向位置合面SU,SLについては、図7,8に示すように、上下型MU,MLそれぞれにおいて、2か所のY軸横方向位置合面SUWY1,SUWY2,SLWY1,SLWY2と、1か所のX軸横方向位置合面SUNX1,SLNX1とが計測される。そして、各位置合面の位置が、下型MLに対し上型MUが一致するように上型MUの姿勢を型合ロボット131で姿勢調整し、両型合面SmU,SmLを近接・接合させる。
【0040】
横方向位置を合せるのみであれば、上下型MU,MLそれぞれにおいて、X,Y軸横方向位置合面はそれぞれ1か所ずつでよい。しかし、2か所のY軸横方向位置合面SUWY1,SUWY2,SLWY1,SLWY2を、それぞれが隔たった位置で計測することにより、Z軸に平行な軸周りでの傾きを補正することができる。
【0041】
型合せの座標の符合については、図7,8の下型MLの横方向位置合面SLWX1,SLWY1,SLWY2及び下型合面SmL上の3点PL1~3の測定により、型合設備130の有する一点鎖線で示すXYZ座標軸に対し、図9(a)で示す下型MLの側面及び型合面SmLにより規定されるXl,Yl,Zl座標軸の位置及び姿勢が測定される。同様に、一点鎖線で示すXYZ座標軸に対し、図9(a)で示す上型MUの側面及び型合面SmUにより規定されるXu,Yu,Zu座標軸の位置及び姿勢が測定される(-ZはZのマイナス方向、-ZlはZlのマイナス方向をそれぞれ示すベクトルで実質同一である。)。
【0042】
その後、型合ロボット131の把持アーム132の位置・姿勢調整を行って、Xl,Yl,Zl座標軸とXu,Yu,Zu座標軸とが一致するように姿勢調整、近接させることで、座標の符合がなされ、正確な型合せを行うことができる。
【0043】
また、横方向座標チェックとして、型合せ後に、図7,8に示すように、上下型MU,MLそれぞれにおいて、1か所のY軸横方向位置合面SUNY2,SLNY2と、1か所のX軸横方向位置合面SUNX2,SLNX2とが計測される。これらの座標が上下で一致することで、型合せの精度チェックが可能となる。
【0044】
上記型合せ工程の後、鋳型Mは周知の注湯工程に送られる。湯口W1側から注湯され、鋳物が完成することとなる。
【0045】
最後に本発明の別実施形態について言及する。本発明は、上記及び以下の実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない限り改変が可能である。なお、以下の記載において、上記実施形態と同様の部材については同一の符合を附することとする。
【0046】
XYZ軸は必ずしも相互に90度交差で配置されなくてもよいが、90度交差配置であれば座標把握が便宜である。横方向位置合面の交差角とXY軸の交差角とが同じであれば、XまたはY軸の単軸方向のみの座標把握で位置合せが可能となる。
【0047】
XYZ座標軸は、周知の方法により適宜座標変換して位置把握すれば、型合せの制御が便宜である。例えば、型合工程ST300において、下型型合面SmLがXY平面と平行でない場合は、原点Oよりこの下型型合面SmLを基準面としてXY平面を座標変換し、これに上下方向軸を直交させて把握することで、上記3点の上下方向の計測により上型型合面SmUを下型型合面SmLに平行に保つことができる。同様に、下幅広第一、第二Y軸横方向位置合面SLNY1,Y2で規定される面がXZ平面と平行でない場合は、原点Oより下幅広第一、第二Y軸横方向位置合面SLNY1,Y2で規定される面を基準面としてX軸及びY軸座標変換し、各横方向位置合面を把握するとよい。
【0048】
上記横方向型合面の選択は一例であり、いずれの角部の横方向型合面を選んでも良い。
【0049】
上記実施形態は平面視で略方形の砂ブロックを用いたが、長方形、三角形以上の多角形等、砂ブロックの形状は適宜変更が可能である。
【0050】
型合面は上下型でそれぞれ1面に連続する1カ所ずつであったが、2か所以上に分かれていてもよい。後者の場合、複数の型合面のうち1カ所にまとめて上下それぞれ3点ずつ計測してもよいが、3点を分かれた型合面にそれぞれ分けて計測してもよい。符合する型合面の部位が上下型でそれぞれ平行であればよい。上記図9の符合方法によれば、同一直線上に位置しない少なくとも3点PU1~3,PL1~3のZ座標は、上下において各砂型における横方向位置が同座標の部位を必ずしも選択する必要はない。しかし、上下において各砂型における横方向位置が同座標の部位を選択することで、各部位におけるZ座標上の測定点間の比率が判明すれば、型合面SmU,SmLの傾きの導出は容易となり、型合せの際の制御パラメーターも簡素化される。
【0051】
同一直線上に位置しない少なくとも3点PU1~3、PL1~3は、それぞれ4点以上計測してもよい。各々4点以上計測して面を推定し、誤差の疑いのある点を除外する等、数学的・幾何学的方法で上下型合面を推定、平行を保った状態で近接させればよく、図9の座標の符合方法に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、鋳型の製造方法として利用することができる。特に多品種小ロット生産に適し、しかも、寸法誤差の小さな鋳型を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
100:加工設備、101:ロボット、110:成型設備、111:成型型、112:圧縮板、113:下板、113a:湯口型、113b:位置合ピン、120:切削設備、121:切削ロボット、121a:基礎台、121b:アーム、122:加工ヘッド、123:工具、124:基礎床、125:載置面、126:位置合片、126X:X軸位置合片、126Y:Y軸位置合片、127:押圧片、127X:X軸押圧片、127Y:Y軸押圧片、130:型合設備、131:型合ロボット、131a:基礎台、131b:アーム、132:把持アーム、132a:把持面、133:空気清掃ブース、133a:空気清掃室、133b:空気ノズル、134:基礎床、135:載置面、135a~c:第一~第三載置面、136:第一座標計測センサ、136a:検知片、137:第二座標計測センサ(他の座標計測センサ)、137a:検知片
B:砂ブロック、BU:上ブロック、BL:下ブロック、M:砂型、MU:上型、ML:下型、SmU:上型型合面、SmL:下型型合面、O:XYZ原点(空間座標の基準)、Z軸(上下方向軸)、Z軸に直交するXY軸(横方向軸)、C:キャビティ、C1:上キャビティ、C2:下キャビティ、W1:湯口、W2:湯道、W3:湯道(落とし)、SU,SL:横方向位置合面、SU:上横方向位置合面、SL:下横方向位置合面、Ss:側面、Sv:垂直壁部、Sb:底面、
SUW,SLW:幅広横方向位置合面、SUN,SLN:幅狭横方向位置合面、SUWX1,SLNX2:X軸横方向位置合面、SUWY1,SLNY2:Y軸横方向位置合面、SUWX1:(例)上幅広第一X軸横方向位置合面、SLNY2:(例)下幅狭第二Y軸横方向位置合面、
PU1~3,PL1~3:同一直線上に位置しない少なくとも3点、
ST001:全製造工程、ST100:成型工程、ST110:下型成型工程、ST130:上型成型工程、ST200:切削工程、ST210:下型切削工程、ST230:上型切削工程、ST300:型合工程、ST310:下型清掃工程、ST330:上型清掃工程、ST350:上下型型合工程
図1
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図9