(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】指示値読取装置及び指示値読取方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/22 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
G01N31/22 121N
(21)【出願番号】P 2021084002
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2024-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390010364
【氏名又は名称】光明理化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 登
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-062026(JP,A)
【文献】特開2013-252161(JP,A)
【文献】特開2007-218878(JP,A)
【文献】特表2018-512579(JP,A)
【文献】特開2014-092487(JP,A)
【文献】特開2010-230454(JP,A)
【文献】特開2019-158748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0258874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物質と反応して変色する検知剤と、前記検知剤が封入され、前記検知対象物質が通過するガラス管と、を有する検知管の
指示値読取装置であって、
前記検知管の画像から、前記ガラス管に付され
たメモリを検出するメモリ検出手段と、
前記検知剤のうち、前記検知対象物質と反応した前記検知剤と、それ以外の前記検知剤との境界線を、前記検知剤の変色の程度に基づいて検出する境界検出手段と、
前記メモリ検出手段に検出された前記メモリと、前記境界検出手段に検出された前記境界線との位置関係から、前記検知管の指示値を読み取る読取手段と、
を備え
、
前記境界検出手段は、
前記画像から前記メモリによって規定される領域を特定して抽出し、特定された領域を示す抽出画像に基づいて、前記境界線を検出する指示値読取装置。
【請求項2】
前記境界検出手段は、
前記抽出画像に含まれる前記メモリの配列方向に直交する方向に、前記抽出画像を構成する画素の特徴量を積算することにより求められる特性曲線に基づいて、前記境界線を検出する請求項
1に記載の指示値読取装置。
【請求項3】
前記特徴量は、画素の輝度である請求項
2に記載の指示値読取装置。
【請求項4】
前記境界検出手段は、
前記抽出画像を二値化して得られる二値画像に基づいて、前記特性曲線を求める請求項
3に記載の指示値読取装置。
【請求項5】
前記メモリは、前記検知対象物質の濃度が0であることを示す0線を含み、
前記境界検出手段は、
前記抽出画像の前記0線から最も離れた領域から、検知対処物と反応していない未反応の前記検知剤の色を取得し、
未反応の前記検知剤の色と同色の領域が除外された前記抽出画像から、前記境界線を検出する請求項
1乃至
4のいずれか一項に記載の指示値読取装置。
【請求項6】
検知対象物質と反応して変色する検知剤と、前記検知剤が封入され、前記検知対象物質が通過するガラス管と、を有する検知管の
指示値読取方法であって、
前記指示値読取方法は、
前記検知管の画像を取得する工程と、
前記検知管の前記画像から、前記ガラス管に付され
たメモリを検出する工程と、
前記検知剤のうち、前記検知対象物
質と反応した前記検知剤と、それ以外の前記検知剤との境界線を、前記検知剤の変色の程度に基づいて検出する工程と、
検出された前記メモリ及び前記境界線との位置関係から、前記検知管の指示値を読み取る工程と、
を含み、
前記境界線を検出する工程は、前記画像から前記メモリによって規定される領域を特定して抽出し、特定された領域を示す抽出画像に基づいて、前記境界線を検出することを含む指示値読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、指示値読取装置及び指示値読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有害物質を取り扱う工場や実験施設では、労働安全衛生法などの法律に基づいて、定期的に作業環境の測定を行うことが義務付けられている。作業環境に含まれる有害物質としては、例えば鉛や水銀、ホルムアルデヒドなどの物質があげられる。この種の有害物質の検出には、例えば、検知管が用いられる。検知管は、検知対象物質と反応する検知剤と、当該検知剤が封入されたガラス管から主として構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
検知管を用いた測定では、ガラス管に封入された検知剤の変色の程度に応じて、作業環境に含まれる有害物質の濃度が検出される。検知管のユーザは、検知剤が変色した部分とそれ以外の部分の境界線と、ガラス管に付されたメモリと、の位置関係に応じて、有害物質の濃度を読み取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検知管を用いることで、検知管のユーザは、作業環境に含まれる有害物質の濃度を測定することができる。しかしながら、検知剤が変色した部分とそれ以外の部分の境界線は、必ずしも直線になるとは限らない。また、検知剤の色が徐々に変色する場合には、境界線の認定が困難になる場合がある。したがって、検知管による測定結果は、ユーザの感性や技能に起因してばらつきがでることがある。
【0006】
本発明は上述の事情によりなされたもので、検知管の指示値を、ばらつきなく一義的に読み取ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の発明に係る指示値読取装置は、検知対象物質と反応して変色する検知剤と、検知剤が封入され、検知対象物質が通過するガラス管と、を有する検知管のメモリの読み取り装置であり、メモリ検出手段と、境界検出手段と、読取手段と、を備える。
メモリ検出手段は、検知管の画像から、ガラス管に付されたメモリを検出する。境界検出手段は、検知剤のうち、検知対象物質と反応した検知剤と、それ以外の検知剤との境界線を、検知剤の変色の程度に基づいて検出する。読取手段は、メモリ検出手段に検出されたメモリと、境界検出手段に検出された境界線との位置関係から、検知管の指示値を読み取る。
【0008】
第2の発明に係る指示値読取方法は、検知対象物質と反応して変色する検知剤と、検知剤が封入され、検知対象物質が通過するガラス管と、を有する検知管の指示値読取方法である。
指示値読取方法は、検知管の画像を取得する工程と、検知管の画像から、ガラス管に付されたメモリを検出する工程と、検知剤のうち、検知対象物と反応した検知剤と、それ以外の検知剤との境界線を、検知剤の変色の程度に基づいて検出する工程と、検出されたメモリ及び境界線との位置関係から、検知管の指示値を読み取る工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る指示値読取装置のブロック図である。
【
図5】指示値読取装置によって実行される処理を示すフローチャートである。
【
図6】指示値読取装置によって実行される処理を示すフローチャートである。
【
図9】検知管の画像に規定されるフレームを示す図である。
【
図11】フィルタリングを説明するための図である。
【
図13】指示値の算出結果を一例として表示する画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明にあたっては、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなる座標系を適宜用いる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る指示値読取装置10のブロック図である。指示値読取装置10は、検知管のメモリに示される指示値を読み取る装置である。検知管は、例えば、ホルムアルデヒドなど、環境に含まれる有害物質の濃度を検出するために用いられる。
【0012】
図2は、指示値読取装置10の読み取り対象となる検知管100の平面図の一例である。検知管100は、例えば空気中の有害物質を検知するための検知管である。
【0013】
図2に示されるように、検知管100は、長手方向をX軸方向とする部材であり、ガラス管110と、ガラス管110の内部に充填される検知剤130とを備えている。
【0014】
ガラス管110は、例えば石英ガラスからなり、長手方向をX軸方向とする円筒状の部材である。ガラス管110の長さ(X軸方向の寸法)は、10cm程度であり、内径は2~3mm程度である。ガラス管110の2つの端部110a,110bは封止され、ガラス管110の内部空間と外部空間とが遮断されている。
【0015】
ガラス管110の端部110bから20mm程度離れたところには、内径及び外径が小さくなるように整形された小径部110cが形成されている。また、ガラス管110の表面には、メモリMと、端部110bから端部110aに向かう方向の矢印A1とが印刷されている。メモリMには、検知対象物の濃度が0であることを示す0線L1が含まれる。
【0016】
図3は、検知管100のXZ断面を示す断面図である。
図3に示されるように、ガラス管110の内部には、テフロン(登録商標)を素材とする栓120、検知剤130、モレキュラーシーブ140、コットン栓150が配置されている。
【0017】
栓120は、耐薬品性に優れたフッ素樹脂からなる。栓120は、素材となるフッ素樹脂が多孔質化されることにより通気性を有している。この栓120は、ガラス管110の内径よりやや小さい半径の球形に整形され、小径部110cの内壁面に当接することによってX軸方向の位置が規定されている。
【0018】
検知剤130は、検知対象物質と化学反応することにより変色する反応剤と、この反応剤を担持する担持体からなる。担持体としては、化学的に安定で大きさや形状が揃った粒状体が用いられる。担持体としては、例えば、平均粒径が100~180μmの珪砂が用いられる。このため、検知剤130の画像は、色が均一ではないモザイク模様のように視認される。
【0019】
モレキュラーシーブ140は、結晶性ゼオライトであり、乾燥剤として機能する。また、コットン栓150は、綿からなる部材である。
【0020】
上述した栓120、検知剤130、モレキュラーシーブ140、コットン栓150は、
図2に示されるように、ガラス管110の端部110aから、栓120、検知剤130、モレキュラーシーブ140、コットン栓150の順に充填される。検知剤130は、栓120とモレキュラーシーブ140の間に充填され、X軸方向の長さは70mm程度である。
【0021】
上述した検知管100を使用するときには、
図2に示される破線に示される位置で、ガラス管110の両端部110a,110bを切断する。これにより、
図4に示されるように、ガラス管110の両端に開口部100a,100bが形成され、これらの開口部100a,100bを介して、ガラス管110の内部を、検知対象物質を含む空気などの気体(検知対象ガス)が、通過することが可能になる。
【0022】
検知管100では、検知対象ガスが、ガラス管110の内部を矢印A1に示される方向へ通過すると、検知対象ガスに含まれる検知対象物質の濃度に応じて検知剤130が変色する。
【0023】
図4に示されるように、検知剤130の変色は、ガラス管110の上流側から下流側に向かって生じる。そのため、検知剤130が変色した変色領域130aの長さは、検知対象ガスに含まれる検知対象物質の濃度に応じた長さとなる。
【0024】
図1に戻り、指示値読取装置10は、例えば、タブレットやスマートフォンなどの端末に、ソフトウエアをインストールすることにより実現される。指示値読取装置10は、CPU(Central Processing Unit)51、主記憶装置52、補助記憶装置53、操作装置54、表示装置55、カメラ56、インタフェース57、及び上記各部を接続するバス58を備えている。
【0025】
CPU51は、補助記憶装置53に記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。
【0026】
主記憶装置52は、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶装置52は、CPU51の作業領域として用いられる。
【0027】
補助記憶装置53は、ROM(Read Only Memory)、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶装置53は、CPU51が実行するアプリケーションや、各種パラメータなどを記憶している。
【0028】
操作装置54は、例えば、タッチパネル或いはマウスなどのポインティングデバイスから構成される。
【0029】
表示装置55は、液晶ディスプレイであり。例えば操作装置54を構成するタッチパネルと協働して、GUI(Graphical User Interface)を構成する。指示値読取装置10のユーザは、表示装置55を見ながら、操作装置54を操作することで、CPU51に所望の指示をすることができる。
【0030】
カメラ56は、CCD(Charge Coupled Device)センサなどの撮像素子を備えるカメラである。
【0031】
インタフェース57は、無線LANインタフェースなどを有している。指示値読取装置10は、インタフェース57を介して、インターネットなどのネットワーク60に接続することが可能である。
【0032】
次に、上述のように構成される指示値読取装置10の動作について説明する。
図5及び
図6は、指示値読取装置10によって実行される一連の処理を示すフローチャートである。CPU51は、操作装置54を介して、指示値読取装置10を構成するアプリケーションの起動が指示されると、当該アプリケーションを起動し、所定のプログラムを実行する。
【0033】
まず、CPU51は、ユーザから検知管100の品種の入力を待ち受ける(ステップS101)。検知管100の品種は、例えば、検知管100の仕様が紐づけられた検知管の型番などで示される。CPU51は、品種の入力があった場合には(ステップS101:Yea)、温度の入力を受け付ける(ステップS102)。ここで、温度は検知管100によって作業環境の測定が行われたときの作業環境における温度である。
【0034】
CPU51は、温度の入力があった場合には(ステップS102:Yes)、入力された温度が、予め設定された温度範囲にあるか否かを判断する(ステップS103)。温度範囲は、検知管100の品種に応じて定められ、検知管100の使用が可能な温度範囲を意味する。
【0035】
CPU51は、入力された温度が予め設定された温度範囲にない場合には(ステップS103:No)、入力された温度をリセットして、再度温度の入力を待ち受ける(ステップS102)。一方、入力された温度が予め設定された温度範囲にある場合には(ステップS103:Yes)、検知管100の画像情報の入力を待ち受ける(ステップS104)。
【0036】
ここで、指示値読取装置10のユーザによって、カメラ56による検知管100の画像が撮影されると、CPU51は、その画像を示す画像情報を取得する(ステップS104:Yes)。
【0037】
検知管100の撮影では、メモリMがカメラ56の視野中央に位置し、
図2に示される検知管100のメモリ全体が視野に収まるように、検知管100を撮影することが望ましい。また、検知管100を撮影するときには、メモリMに付された数字を除いたラインのみがカメラ56の視野に入るように、検知管100を撮影することが望ましい。
【0038】
CPU51は、画像情報を取得すると、当該画像情報に示される画像から、指示値の読み取りに使用する画像を切り出す(ステップS105)。
図7には、切り出された画像P1が示されている。画像P1では、メモリMが中心に位置している。また、0線L1から画像P1の外縁までの間にマージンα1が確保されている。
【0039】
次に、CPU51は、画像P1から、メモリMをオブジェクトとして検出する(ステップS106)。
図8は、検出されたメモリMを模式的に示す図である。メモリMは、ラインM0~M7として、CPU51に認識される。CPU51は、検知管100の品種に紐づいた仕様に規定されるメモリ線の数と、検出したラインM0~M7の数が一致するか否か確認する(ステップS107)。
【0040】
CPU51は、メモリ線の数とラインM0~M7の数が一致しない場合は、全メモリ線を検出することができないと判断する(ステップS107:No)。そして、エラーメッセージを出力して処理を終了する。一方、CPU51は、メモリ線の数とラインM0~M7の数が一致する場合は、全メモリ線を検出することができたと判断し(ステップS107:Yes)、画像の回転角の調整を行う(ステップS108)。
【0041】
画像の回転角の調整は、
図8を参照するとわかるように、画像P1の上下方向を示すY軸と、画像P1から検出したラインM0~M7との角度θを検出し、この角度θの大きさが閾値以下となるように、画像P1を回転させる。
【0042】
次に、CPU51は、画像P1に含まれる検知剤130の画像から、変色した検知剤130と変色してない検知剤130の境界線を検出して、検知管100の指示値を算出する(ステップS109)。ステップS109では、CPU51は、
図6のフローチャートに示される一連の処理を実行する。
【0043】
まず、CPU51は、画像P1から指示値の検出を行うための検出領域を設定する(ステップS201)。CPU51は、一例として
図9に示されるように、0線L1以外のメモリMのメモリ線をすべて含むフレームF1を規定する。フレームF1は、Y軸方向の位置がメモリMのメモリ線の上端及び下端によって規定されている。また、X軸方向の位置は、0線L1を含み、0線L1から最も離れたメモリ線から例えば1.5メモリ分離れた領域を含むように規定される。フレームF1に囲まれる領域が、検出領域となる。
【0044】
次に、CPU51は、サンプル領域を設定する(ステップS202)。画像P1の検知剤130が写る領域のうち変色が生じていないか、或いは、変色が極力少ない部分をサンプル領域として設定する。サンプル領域は、フレームF1によって規定される検出領域のうち、0線L1から最も離れたところに設定するのが望ましい。また、サンプル領域は、面積が大きいほど好ましい。しかしながら、サンプル領域の面積が大きいと、サンプル領域が検知管100の表面の印刷物に重なったり、撮影の際に円筒状のガラス管110の外縁の歪の影響を受ける。そのため、フレームF1のY軸方向の長さの60%の長さの辺を持つ正方形のフレームF2を規定し、フレームF2によって規定される領域をサンプル領域とする。CPU51は、フレームF1に囲まれる検出領域の+X側端で、かつ、中心がフレームF1のY軸方向中央に位置するように、フレームF2を設定する。
【0045】
次に、CPU51は、フィルタを作成する(ステップS203)。
図10は、フィルタFL1の一例を示す図である。フィルタFL1は、フレームF1に囲まれる検出領域から、変色が生じていない検知剤130の画像を除去して、指示値の読み取り処理におけるデータ量を削減するためのものである。
【0046】
図8等に示されるように、検知剤130は、変色が生じている領域(変色領域)と、変色が生じていない領域(原色領域)とが、境界線で明確に分離して隣接しているわけではない。例えば、
図9に模式的に示されるように、検知剤130は、0線L1から+X方向に向かってグラデーション的に変色する。そのため、検知剤130の画像には、完全に変色した検知剤130からなる領域R1と、変色の進行度合いが異なる検知剤130が混合した領域R2と、変色がほぼ生じていない検知剤130からなる領域R3と、が存在する。そこで、CPU51は、変色の程度が少ない部分を除外するために、フィルタFL1を作成する。
【0047】
具体的には、CPU51は、フレームF1に囲まれる検出領域から、フレームF2に囲まれるサンプル領域と同等の色調の領域を抽出して、
図10に示されるフィルタFL1を作成する。フィルタFL1では、図中で黒く示される領域が、変色が生じた変色領域を示し、それ以外の領域が、変色が生じなかった原色領域を示す。
【0048】
次に、CPU51は、フィルタFL1を用いて、検出領域のフィルタリングを行う(ステップS204)。
図11は、フィルタリングを模式的に示す図である。
図11に示されるように、フィルタリングを行うことで、フレームF1に囲まれる検出領域から、原色領域を除外して得られる領域Q1を抽出する。
【0049】
次に、CPU51は、領域Q1に対して画像処理を行う(ステップS205)。具体的には、CPU51は、閾値処理を行い、例えば変色領域が白で原色領域が黒で示される二値画像P2を生成する。なお、フィルタFL1によって除外された領域は、原色領域であるものとして処理する。
【0050】
図12は、二値画像P2と特性曲線とを示す図である。CPU51は、
図12を参照するとわかるように、二値画像P2のY軸方向に配列される画素の輝度を、一列ずつ積算し、得られた列ごとの積算値と、各列のX軸方向の位置との関係を示す特性曲線を算出する(ステップS206)。特性曲線は、検知剤130に現れる境界線の前後で値が急峻に変化する。
【0051】
次に、CPU51は、特性曲線に示される値が、+X方向に向かって閾値以上変化した地点を検知剤130に現れた境界線の位置と特定する(ステップS207)。
図12では、境界線の位置が直線LS1で示されている。上記閾値は、特性曲線と境界線との位置とを学習させた結果に基づいて決定することができる。
【0052】
次に、CPU51は、画像P1における直線LS1に示される境界線のX座標と、メモリMを構成するメモリ線それぞれのX座標との位置関係から、メモリMと境界線とによって示される指示値を算出する(ステップS208)。CPU51は、指示値を求めたら、
図5に示される指示値の算出処理(ステップS109)を終了し、指示値の算出結果を、表示装置55へ表示する(ステップS110)。
【0053】
図13は、指示値の算出結果を一例として表示する画面55aを示す図である。
図13に示されるように、CPU51は、指示値を読取値として表示する(ステップS110)。また、CPU51は、画像P1と、当該画像P1に紐づいた撮影日を測定日として表示するとともに、撮影場所も併せて表示する。更に、測定環境の温度に基づいて、読取値の補正値も併せて表示する。補正値は、例えば、検知管100を使用した作業環境の温度と、基準温度との差分に基づいて算出される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る指示値読取装置10では、検知管100を撮影することで、検知管100の指示値を得ることができる。したがって、検知管100の指示値を目視により読み取る場合に比較して、ユーザの感覚や技能の影響を受けることなく、読み取ることが可能となる。したがって、検知管100の読み取り値をばらつきなく一義的に読み取ることができる。
【0055】
本実施形態では、フィルタFL1を用いて、検出領域のフィルタリングが行われることで(ステップS204)、画像処理に利用されるデータ量を少なくすることができる。したがって、スマートフォンなどの端末がスペックが低い場合であって、ストレスなく指示値を読み取ることが可能となる。
【0056】
また、本実形態では、画像P1の検知剤130が写る領域のうち変色が生じていないか、或いは、変色が極力少ない部分がサンプル領域として設定され、サンプル領域の画像を用いてフィルタFL1が作成される。したがって、フィルタFL1を用いて、変色が生じていない検知剤130の画像を効果的に除去することができる。
【0057】
例えば、フィルタFL1を予め準備しておくことも可能であるが、検知管100の検知剤130の色は、同一の品種であってもロットごとにばらつきがある。本実施形態では、指示値の読み取りごとに、サンプル領域が設定されフィルタFL1が生成される。したがって、検知管100を構成する検知剤130の色のばらつきにかかわらず、精度よくデータ量を削減することができる。
【0058】
本実施形態では、
図13に示されるように、撮影された画像P1などとともに、読取値が示される。したがって、指示値読取装置10のユーザは、画像P1と読取値とを比較することができる。これにより、読取値のおおよその信頼性を確認することが可能となる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、一例として
図9に示されるように、メモリMを構成するメモリ線によって上下方向(Y軸方向)の大きさが規定されるフレームF1を定義することとした。これに限らず、メモリ線がY軸方向に長いような場合には、フレームF1のY軸方向の大きさは、検知管100のY軸方向の大きさの60%程度にすることとしてもよい。
【0060】
また、フレームF1のX軸方向の大きさは、0線L1を含み、0線L1から最も離れたメモリ線から1.5メモリ分離れた領域を含むように規定されることとした。これは一例であり、フレームF1は、0線L1から最も離れたメモリ線から1.5メモリ分離れた領域を含むように必ずしも規定する必要はない。例えば、フレームF1は、使用する検知管100の種類や検知剤の種類に応じて、適宜その大きさを決定することができる。フレームF1が大きくなると、演算領域が大きくなるため、メモリMのフルスケールまで検知剤が変色しても、変色しなし原色の検知剤が写る画像が必要なだけ含まれるように、フレームFを規定することが好ましい。
【0061】
上記実施形態に示される検知管100は、一例である。指示値読取装置10の読み取り対象となる検知管は、変色した検知剤と変色していない検知剤の境界線で指示値が示されるものであれば、種類や検知対象物を問わない。また、メモリMのメモリ線の数も、検知対象に応じて例えば8つ以上設けられていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、カメラ50によって得られた赤緑青の画素からなるRGB画像を画像P1として用いることとした。これに限らず、画像P1をHSV変換した後に、特性曲線を算出することとしてもよい。
【0063】
本実施形態に係る指示値読取装置10では、例えば、
図13に示されるように、画面55aのメモ欄には、ユーザのコメントを記入することもできる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10 指示値読取装置
50 カメラ
51 CPU
52 主記憶装置
53 補助記憶装置
54 操作装置
55 表示装置
55a 画面
56 カメラ
57 インタフェース
58 バス
60 ネットワーク
100 検知管
100a,100b 開口部
110 ガラス管
110a,110b 端部
110c 小径部
120 栓
130 検知剤
130a 変色領域
140 モレキュラーシーブ
150 コットン栓
M メモリ
α1,α2 マージン
F1,F2 フレーム
FL1 フィルタ
L1 0線
L2 限界線
P1 画像
P2 二値画像
Q1 領域
R1~R3 領域