(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】液体中の混合物を分離する装置と方法
(51)【国際特許分類】
B01D 3/00 20060101AFI20241203BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B01D3/00 Z
B01D5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021120732
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517271935
【氏名又は名称】前田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 和幸
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-190202(JP,A)
【文献】国際公開第2013/068934(WO,A1)
【文献】特開平08-089703(JP,A)
【文献】特開平02-218402(JP,A)
【文献】実開平01-163401(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0132550(US,A1)
【文献】特開2020-054959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00 - 5/00
C07B 63/00
C02F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱することにより、特定の沸点範囲にある成分を沸点の違いにより分離するという機能を有する、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)において、凝縮装置(2)
が蒸発装置(1)を構成する容器の内部に設置
されている構造とすることにより、蒸発装置と凝縮装置を連結する配管と凝縮装置を構成する容器を必要としなくなるとともに、
蒸留装置(3)に真空ポンプ(7)
を接続することにより、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)内の圧力を大気圧以下にして沸点の違いにより分離しようとする成分の沸点を低下させることを特徴とする、液体中の混合物を分離する装置。
【請求項2】
沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱することにより、特定の沸点範囲にある成分を沸点の違いにより分離するという機能を有する、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)において、凝縮装置(2)を、蒸発装置(1)を構成する容器の内部に設置するという方法を用いることにより、蒸発装置と凝縮装置を連結する配管と凝縮装置を構成する容器を必要としなくなるとともに、
蒸留装置(3)に接続された真空ポンプ(7)を用いて、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)内の圧力を大気圧以下にして、沸点の違いにより分離しようとする成分の沸点を低下させるという方法を用いることを特徴とする、液体中の混合物を分離する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留により、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置に係わり、蒸発装置(1)と凝縮装置及び熱交換器(6)から構成される蒸留装置において、蒸発装置の上部に凝縮装置と熱交換器(6)を配置することにより、蒸発装置において気化された成分を効果的に凝縮させることができるとともに、蒸発装置において気化された成分が保有する熱量及びその一部が凝縮する際の凝縮熱によって蒸発装置に流入する混合物を含む液体を加熱することにより、蒸発装置に設置された加熱装置が混合物を含む液体に供給する熱量を低減できる(省エネルギー効果)という構造と機能を有し、蒸発装置に設置されたレベルセンサーと混合物を含む液体が蒸発装置に流入する配管の途中に設置された制御弁とを連動させることにより、蒸発装置内に留まる液体の量を制御できるとともに、混合物を含む液体を蒸発装置内に流入させる際に動力を必要としない構造と機能をも有する、構造が簡単で保守・整備が容易という特性を有する装置の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上においては液体中に様々な混合物が混在している状態が多く存在する。しかし、科学技術分野においては、汚泥中の水分除去、油分に含まれる水分の除去など、源流体に含まれる混合物を除去して、出来るだけ原流体の純度を高める技術が求められている。そこで、近年では、遠心力を利用した遠心分離機による分離方法、慣性力を利用した分離方法、沈殿作用を利用した分離方法及びこれらの組み合わせによる方法や、さらに純度を高めるために液体を加熱することにより気化させてこれを凝縮させるという、液体中に含まれる混合物の沸点の違いにより分離する方法が用いられている。
【0003】
これらの方法のうち、例えば、特許文献1、2に記載されているように、遠心力、慣性力、重力、圧力差などの物理的手法のみを用いて混合物を分離・除去できるとの報告もあるが、源流体中に含まれる混合物を効果的に分離・除去する装置を実用化するためには、構造が簡単(加工が容易でかつ耐久性に優れている)で、保守・整備が容易(メインテナンスフリーに近い)という特性を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-248404
【文献】特開2017-205713
【0005】
これに対し、例えば特許文献3、4に記載されているように、液体を減圧された容器内に入れこれを加熱して気化・凝縮して液体中の混合物から分離する方法がある。
【0006】
【文献】特開2008-237943
【文献】特開2009-028726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に、遠心力、慣性力、重力、圧力差などの物理的手法のみを用いて源流体中に含まれる混合物を分離・除去できる装置に、構造が簡単で保守・整備が容易という特性をもたせると、分離能力が低下するとともに、装置が大型化する可能性がある。
また、液体を減圧された容器内に入れこれを加熱して気化・凝縮して液体中の混合物から分離する方法を用いる場合、一般に、液体を蒸発装置内に移送する際のポンプと蒸発装置内を減圧するための真空ポンプを必要とするとともに、蒸発装置内の液体をその沸点まで加熱するために供給する熱量と、蒸発装置において気化された成分の温度を凝縮装置内において凝固点まで下げるために熱量を放出させる装置を必要とする。また、蒸発装置内に流入する液体の量を制御する装置を必要とする。
【0008】
そこで本発明は、蒸発装置と凝縮装置及び熱交換器から構成される蒸留装置において、蒸発装置の上部に凝縮装置と熱交換器を配置することにより、蒸発装置において気化された成分を効果的に凝縮させることができるとともに、蒸発装置において気化された成分が保有する熱量及びその一部が凝縮する際の凝縮熱によって蒸発装置に流入する混合物を含む液体を加熱することにより、蒸発装置に設置された加熱装置が混合物を含む液体に供給する熱量を低減できる(省エネルギー効果)という構造と機能を有することを特徴とする装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱することにより、特定の沸点範囲にある成分を沸点の違いにより分離するという機能を有する、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)において、沸点の違いにより気化した成分を効果的に凝縮させるために、凝縮装置(2)が蒸発装置(1)の内部に設置されていることを特徴とする。
【0010】
沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱することにより、特定の沸点範囲にある成分を沸点の違いにより分離するという機能を有する蒸留装置は、蒸発装置において混合物を分離しようとする成分の沸点以上に加熱してこれを気化させ、凝縮装置において気化した成分を沸点以下まで冷却することによりこれを凝縮させるという装置と方法が用いられている。
【0011】
一般に、蒸発装置と凝縮装置は独立した装置として製作され、これを管で連結した構造となっている。このような構造を有する、蒸発装置と凝縮装置から構成される蒸留装置を用いて、例えば汚泥中の水分除去、油分に含まれる水分の除去などを行う場合、混合物を含む液体を常圧下における水の沸点である100℃まで加熱する必要がある。また、植物油(食用油)の精製過程などにおいて生成される、混合物(油分を含むスラッジ性物質)から油分を抽出する場合、混合物の温度を常圧下における植物油の沸点である350~400℃まで加熱する必要がある。蒸発装置は、通常、混合物を蒸発容器内の設定された液面位置まで張り込み、これを加熱して気化させる際に、液面付近の混合物が蒸発装置と凝縮装置を連結する配管(連結管)に達して気化した成分に混入(ボイラにおけるプライミング現象)しないように、容器内の上部に空間を設けている。この空間が適切に断熱されていない場合、液面において気化した成分は空間を形成する容器の壁面で冷却されて凝縮するため、蒸発装置と凝縮装置を連結する配管(連結管)まで達しない可能性がある。また、蒸発装置内において気化した100℃以上の流体を蒸発装置と凝縮装置を連結する配管(連結管)により凝縮装置に導く必要があるが、気化した成分(流体)の温度が沸点以下になると凝縮してしまうため、特に高温流体の場合、連結管を断熱するとともに、管内での凝縮を防止するような構造とする必要がある。
【0012】
この現象を外部から確認することは困難であるため、蒸発装置上部の容器壁面の断熱が不十分な場合、蒸発装置において加熱された混合物が気化熱を吸収して気体となった流体が、蒸発装置上部の容器壁面において冷却されることにより凝縮熱を放出して液化するという現象を繰り返すことにより、気化した流体が蒸発装置と凝縮装置を連結する配管(連結管)に達しなくなる。
本発明においては、凝縮装置を蒸発装置上部の空間に設置することにより、
(1)蒸発装置と凝縮装置を連結する配管(連結管)を必要としなくなる。
(2)凝縮装置を構成する容器を必要としなくなる。
(3)蒸発装置の上部からの放熱損失を低減できる。
という効果があり、設置容積、設置費用、熱損失を低減できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱することにより、特定の沸点範囲にある成分を沸点の違いにより分離するという機能を有する、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)において、沸点の違いにより気化した成分を効果的に凝縮させるために、凝縮装置(2)を蒸発装置(1)の内部に設置するという方法を用いることを特徴とする。
【0014】
本発明に記載された方法を用いることにより、構造物、設置容積、設置費用、装置無いにおける熱損失を大幅に低減可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、真空ポンプ(7)を用いて、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)内の圧力を大気圧以下にして、沸点の違いにより分離しようとする成分の沸点を下げる(低下させる)ことにより、沸点の違いにより分離しようとする成分の温度上昇に伴う変質及び、又は劣化を防止できるとともに、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離するために必要な熱量を低減できる(省エネルギー効果)ことを特徴とする。
【0016】
沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱することにより、特定の沸点範囲にある成分を沸点の違いにより分離する場合、混合物を目的とする成分の沸点以上に加熱する必要があるため、沸点の違いにより分離しようとする成分が温度上昇により変質及び、又は劣化する可能性がある。例えば食品などに含まれる水分の除去を行う場合、水分を含む食品を100℃まで加熱すると、食品の水分以外の成分が変質する可能性がある。また、植物油(食用油)の精製過程などにおいて生成される、混合物(油分を含むスラッジ性物質)から油分を抽出する場合、混合物の温度を常圧下における植物油の沸点である350~400℃まで加熱すると、植物油の成分が変質する可能性がある。
【0017】
本発明においては、蒸留装置に真空ポンプを接続して蒸発装置と凝縮装置から構成される凝縮装置内部の圧力を大気圧以下にすることにより、目的とする成分の沸点を低下させて、他の成分が変質しないような温度で気化できるようにしている。
【0018】
請求項4に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、真空ポンプ(7)を用いて、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)内の圧力を大気圧以下するという方法を用いて、沸点の違いにより分離しようとする成分の沸点を下げる(低下させる)ことにより、沸点の違いにより分離しようとする成分の温度上昇に伴う変質及び、又は劣化を防止できるとともに、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離するために必要な熱量を低減できる(省エネルギー効果)ことを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体が、蒸発装置(1)内に流入する途中に熱交換器(6)を設置することにより、蒸発装置(1)において加熱・気化された成分が保有する熱量(熱交換器(6)において気化された成分が相変化する際の潜熱と温度変化に伴う顕熱)によって沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱して、蒸発装置(1)に設置された加熱装置(13)が混合物を含む液体に供給する熱量を低減できる(省エネルギー効果)ことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体が、蒸発装置(1)内に流入する途中に熱交換器(6)を設置するという方法を用いることにより、気化された成分が保有する熱量(熱交換器(6)において気化された成分が相変化する際の潜熱と温度変化に伴う顕熱)によって沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱して、蒸発装置(1)に設置された加熱装置(13)が混合物を含む液体に供給する熱量を低減できる(省エネルギー効果)ことを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、凝縮装置(2)において凝縮した液体を蒸留装置(3)の外で回収(ある目的のもとに取り集めること)するために、凝縮装置(2)の下部に設置された凝縮液溜まり(11)、この凝縮液溜り(11)の底部から下方に傾斜を持ち蒸留装置(3)を貫通して蒸留装置(3)の外に設置された容器(8)に連結される管(10a)、蒸留装置(3)の外に設置された容器(8)と蒸留装置(3)とを連結する管(10b)を有することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、凝縮装置(2)において凝縮した液体を蒸留装置(3)の外で回収(ある目的のもとに取り集めること)するために、凝縮装置(2)の下部に設置された凝縮液溜まり(7)、この凝縮液溜り(7)の底部から下方に傾斜を持ち蒸留装置(3)を貫通して蒸留装置(3)の外に設置された容器(8)に連結される管(10a)、蒸留装置(3)の外に設置された容器(8)と蒸留装置(3)とを連結する管(10b)を用いることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸留装置の外に設置された複数の容器(8)を有するとともに、凝縮液溜り(11)の底部から下方に傾斜を持ち蒸留装置(3)を貫通して蒸留装置(3)の外に設置された複数の容器(8)に連結される管と、蒸留装置(3)の外に設置された容器(8)と蒸留装置(3)とを連結する管の、それぞれの管の途中に逆流防止機能付流路切替え弁(10a)、(10b)を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸留装置の外に設置された複数の容器(8)、凝縮液溜り(7)の底部から下方に傾斜を持ち蒸留装置(3)を貫通して蒸留装置(3)の外に設置された複数の容器(8)に連結される管と、蒸留装置(3)の外に設置された容器(8)と蒸留装置(3)とを連結する管の、それぞれの管の途中に逆流防止機能付流路切替え弁(10a)、(10b)を設置するという方法を用いることを特徴とする。
【0025】
請求項11に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸留装置の外に設置された複数の容器(8)のそれぞれにレベルセンサーを備えるとともに、それぞれの容器の上部と下部に大気に通じる開閉弁(11a)、(11b)を有し、それぞれの容器の液面が設定された位置まで上昇した場合に、複数の蒸留装置の外に設置された容器(8)、凝縮液溜り(7)の底部から下方に傾斜を持ち、蒸留装置(3)を貫通して蒸留装置(3)の外に設置された複数の容器(8)に連結される管と、蒸留装置(3)の外に設置された容器(8)の内部と蒸留装置(3)の内部を連結する管の途中に逆流防止機能付流路切替え弁(10a)、(10b)及びそれぞれの容器に設置された大気に通じる開閉弁(11a)、(11b)を作動させるという機能を備えることを特徴とする。
【0026】
請求項12に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸留装置の外に設置された複数の容器(8)のそれぞれにレベルセンサーを備えるとともに、それぞれの容器の上部と下部に大気に通じる開閉弁(11a)、(11b)を有し、それぞれの容器の液面が設定された位置まで上昇したら、複数の蒸留装置の外に設置された容器(8)、凝縮液溜り(11)の底部から下方に傾斜を持ち蒸留装置(3)を貫通して蒸留装置(3)の外に設置された複数の容器(8)に連結される管と、蒸留装置(3)の外に設置された容器(8)の内部と蒸留装置(3)の内部を連結する管の途中に逆流防止機能付流路切替え弁(10a)、(10b)及びそれぞれの容器に設置された大気に通じる開閉弁(11a)、(11b)を作動させるという方法を用いることを特徴とする。
【0027】
請求項13に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)内の上部に、中空円管状の物質を、蒸発装置(1)の外周部から中心部付近まで、中心部付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状に設置し、その内部に、蒸発装置(1)内に流入する沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を流動させた後に蒸発装置(1)内に流入させることにより、蒸発装置(1)の内部に設置した、中空円管状の物質を蒸発装置(1)の外周部から中心部付近まで、中心部付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状の構造物に、熱交換器(6)と凝縮装置(2)という2つの役割を持たせることを特徴とする。
【0028】
請求項14に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)内の上部に、中空円管状の物質を、蒸発装置(1)の外周から中心付近まで、中心付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状に設置し、その内部に、蒸発装置(1)内に流入する沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を流動させた後に蒸発装置(1)内に流入させるという方法を用いることにより、蒸発装置(1)の内部に設置した、中空円管状の物質を蒸発装置(1)の外周部から中心部付近まで、中心部付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状の構造物に、熱交換器(6)と凝縮装置(2)という2つの役割を持たせることができることを特徴とする。
【0029】
請求項15に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸発装置(1)の内部に中空円管状の物質を、蒸発装置(1)の外周から中心付近まで、中心付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状に設置し、その内部に、蒸発装置(1)内において気化した成分を冷却して凝縮させるための流体を流動させることにより、蒸発装置(1)の内部に設置した、中空円管状の物質を蒸発装置(1)の外周部から中心部付近まで、中心部付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状の構造物に、凝縮装置(2)の役割を持たせることを特徴とする。
【0030】
請求項16に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸発装置(1)の内部に中空円管状の物質を、蒸発装置(1)の外周から中心付近まで、中心付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状に設置し、その内部に、蒸発装置(1)内において気化した成分を冷却して凝縮させるための流体を流動させるという方法を用いることにより、蒸発装置(1)の内部に設置した、中空円管状の物質を蒸発装置(1)の外周部から中心部付近まで、中心部付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状の構造物に、凝縮装置(2)の役割を持たせることができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明を用いることにより、蒸発装置において気化された成分を効果的に凝縮させることができるとともに、蒸発装置において気化された成分が保有する熱量及びその一部が凝縮する際の凝縮熱によって蒸発装置に流入する混合物を含む液体を加熱することにより、蒸発装置に設置された加熱装置が混合物を含む液体に供給する熱量を低減できる(省エネルギー効果)という機能を有する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図における、作動状態の一例を示したものである。
【
図3】本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図における、作動状態の一例を示したものである。
【
図4】本発明における、蒸発装置の内部に設置された熱交換器の形状の一例を示したものである。
【
図5】本発明における、蒸発装置の内部に設置された凝縮装置と凝縮装置において液化した流体を集めて、蒸留装置の外部に導く装置の形状の一例を示したものである。
【
図6】本発明における、加熱送致を備える蒸発装置と凝縮装置から構成される蒸留装置、凝縮装置の形状及び凝縮装置で液化した流体を蒸留装置の外に移動させる凝縮液溜まり及び管、凝縮装置における気化した物質が相変化するモデル図の一例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図である。
図に示すように、本装置の主要部分は、蒸発装置(1)、凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)である。蒸発装置(1)にはレベルセンサー(4)が設置されており、蒸発装置(1)内の流体の量(液面)を一定に保つために流量調整弁(5)が設置されている。蒸留装置(3)が作動している状態においては、蒸発装置(1)内の流体は常に加熱・蒸発している状態であるため、放置すると液面は下降する。これを防止するために、蒸発装置(1)内に設置されたレベルセンサー(4)で液面の状態を検知して、液面が常に一定になるように流量調整弁(5)の開度を調節するための制御装置を有している。
蒸発装置(1)の上部には熱交換器(6)が設置されており、流量調整弁(5)を経て蒸留装置(3)内に流入した流体は、熱交換器(6)において加熱される。
分離の対象とする流体の沸点を低下させて、沸点に至るまでの加熱に要する熱量を低減するために真空ポンプ(7)が設置されている。
凝縮装置(2)及び熱交換器(6)において凝縮した流体は、蒸留装置(3)の外部に設置された、凝縮した流体を一時的に貯蔵する容器(8)に貯蔵される。この容器(8)にはレベルセンサー(9)が設置されており、各容器の液面が設定された位置に達した場合、蒸留装置(3)の内部と容器を連結する管、及び蒸留装置(3)の内部と蒸留装置(3)から真空ポンプ(7)に至るラインと容器を連結する管の途中に設置された逆流防止機能付切り替弁(10)及び(11)を切換えるための制御装置を有している。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図における、作動状態の一例を示したものである。
図1の説明において記載したように、凝縮装置(2)及び熱交換器(6)において凝縮した流体は、蒸留装置(3)の外部に設置された、凝縮した流体を一時的に貯蔵する容器(8)に貯蔵される。この容器(8)にはレベルセンサー(9)が設置されており、各容器の液面が設定された位置に達した場合、蒸留装置(3)の内部と容器を連結する管、及び蒸留装置(3)の内部と蒸留装置(3)から真空ポンプ(7)に至るラインと容器を連結する管の途中に設置された逆流防止機能付切り替弁(10)及び(11)を切換えるための制御装置を有している。
図2は、容器(8a)が蒸留装置(3)の内部及び、蒸留装置(3)の内部と蒸留装置(3)から真空ポンプ(7)に至るラインと連結された状態となっており、容器(8b)は大気に開放された状態になっている。このような状態において、凝縮装置(2)及び熱交換器(6)を内蔵する蒸留装置(3)内の圧力と容器(8a)内部の圧力は、蒸留装置(3)内を真空にしても等しくなるため、凝縮装置(2)及び熱交換器(6)において液化した流体は容器(8a)内に一時貯蔵される。また、容器(8b)は大気開放となっているため、容器内に一時貯蔵されている流体は容器の外に排出できる状態となる。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図における、作動状態の一例を示したものである。
図1の説明において記載したように、凝縮装置(2)及び熱交換器(6)において凝縮した流体は、蒸留装置(3)の外部に設置された、凝縮した流体を一時的に貯蔵する容器(8)に貯蔵される。この容器(8)にはレベルセンサー(9)が設置されており、各容器の液面が設定された位置に達した場合、蒸留装置(3)の内部と容器を連結する管、及び蒸留装置(3)の内部と蒸留装置(3)から真空ポンプ(7)に至るラインと容器を連結する管の途中に設置された逆流防止機能付切り替弁(10)及び(11)を切換えるための制御装置を有している。
図3は、容器(8b)が蒸留装置(3)の内部及び、蒸留装置(3)の内部と蒸留装置(3)から真空ポンプ(7)に至るラインと連結された状態となっており、容器(8a)は大気に開放された状態になっている。このような状態において、凝縮装置(2)及び熱交換器(6)を内蔵する蒸留装置(3)内の圧力と容器(8b)内部の圧力は、蒸留装置(3)内を真空にしても等しくなるため、凝縮装置(2)及び熱交換器(6)において液化した流体は容器(8b)内に一時貯蔵される。また、容器(8a)は大気開放となっているため、容器内に一時貯蔵されている流体は容器の外に排出できる状態となる。
【0036】
このように、それぞれの容器(8)に設置されたレベルセンサーと逆流防止機能付切り替弁(10)及び(11)を連動させることにより、それぞれの容器(8)の液面が設定された位置に達すると、逆流防止機能付切り替弁(10)及び(11)を切換えて、凝縮液を一時貯蔵する状態にある容器と、一時貯蔵された凝縮液を外部に移送可能な状態にある容器とに使い分けて、凝縮装置(2)と熱交換器(6)において凝縮した流体を連続的に外部に移送することが可能となる。
【0037】
図4は、本発明における、蒸発装置の内部に設置された熱交換器の形状の一例を示したものである。
蒸留装置(3)内に流入する、沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体から構成される流体は、熱交換器(6)の上部から流入し、蒸発器(1)において加熱されて気化した流体によって加熱される。
図5は、熱交換器の主要部の構造例を示したものである。
図に示すように、蒸発装置(1)と凝縮装置(2)から構成される蒸留装置(3)内の上部に、中空円管状の物質を、蒸発装置(1)の外周部から中心部付近まで、中心部付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状に設置し、その内部に、蒸発装置(1)内に流入する沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を流動させた後に蒸発装置(1)内に流入させることにより、蒸発装置(1)の内部に設置した、中空円管状の物質を蒸発装置(1)の外周部から中心部付近まで、中心部付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状の構造物に、熱交換器(6)と凝縮装置(2)という2つの役割を持たせることができる。
【0038】
図5は、本発明における、蒸発装置の内部に設置された凝縮装置と凝縮装置において液化した流体を集めて、蒸留装置の外部に導く装置の形状の一例を示したものである。
蒸留装置(1)において気化した流体を冷却することにより液化させるために、凝縮器(2)が設置されている。凝縮した流体は凝縮器(2)内の伝熱面に付着し、重力により下方(地球の中心方向)に移動する。この特性を活用して、凝縮器において凝縮した流体を集めることが可能となる。
図5は、その一例を示したものである。
蒸発装置(1)の内部に中空円管状の物質を、蒸発装置(1)の外周から中心付近まで、中心付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状に設置し、その内部に、蒸発装置(1)内において気化した成分を冷却して凝縮させるための流体を流動させることにより、蒸発装置(1)の内部に設置した、中空円管状の物質を蒸発装置(1)の外周部から中心部付近まで、中心部付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状の構造物に、凝縮装置(2)の役割を持たせるとこができる。
蒸発装置(1)の内部に設置された中空円管状の物質の表面において液化した流体は、傾斜がある中空円管状の物質の表面を下方に移動し、凝縮液溜まり(12)に集められる。凝縮液溜まり(12)の下部には、凝縮した流体を一時的に貯蔵する容器(8)と連結される凝縮液の移送管(13)が設置されており、凝縮器(2)において凝縮した流体は、凝縮液の移送管(13)を経て、凝縮した流体を一時的に貯蔵する容器(8)に至る。
なお、蒸発装置(1)の内部に蒸発装置(1)の外周から中心付近まで、中心付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状に設置した構造物を複数設置することにより、凝縮器の伝熱面積が増加するため、凝縮装置としての能力が増大する。
また、図中に破線で示すように、溝状の形状を有する物質で半径方向に、蒸発装置(1)の内部に蒸発装置(1)の外周から中心付近まで、中心付近が最下部となるように段差を付けて渦巻き状に設置した構造物を連結することにより、渦巻き状に設置した構造物の強度の増加、伝熱面積の増加、凝縮した流体を効率よく下方(中心方向)に移動するための案内などの機能を持たせることができる。
【0039】
図6は、本発明における、加熱送致を備える蒸発装置と凝縮装置から構成される蒸留装置、凝縮装置の形状及び凝縮装置で液化した流体を蒸留装置の外に移動させる凝縮液溜まり及び管、凝縮装置における気化した物質が相変化するモデル図の一例を示したものである。蒸留装置の下部は蒸発装置の役割を持ち、沸点の異なる複数の成分から構成される液体、又は沸点の異なる複数の成分から構成される液体とこの液体中に含まれる固体を加熱するための加熱装置が設置されている。また、蒸留装置の上部は凝縮装置の役割を持ち、気化した流体が容器外部への放熱により冷却されて凝縮し、重力により下降して再び蒸発装置に戻るという現象を防止するために、断熱構造となっている。
蒸発装置(1)において気化した流体は凝縮装置(2)において冷却されて液化する。この際、凝縮装置に設置された中空円管状の物質の表面において液化した流体は、傾斜がある中空円管状の物質の表面を下方に移動するが、凝縮(液化)する流体の単位時間あたりの凝縮量は、中空円管状の物質の表面に接する気化した流体と、中空円管状の物質の内面を流動する気化した物質を冷却するための流体の温度差、中空円管状の物質の熱伝導率・形状(中空円管状の物質の直径、肉厚など)・配置(中空円管状の物質相互間の距離など)に比例するため、これを考慮した設計を行う必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、液体中に含まれる混合物を効果的に分離する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
(1)蒸発装置
(2)凝縮装置
(3)蒸留装置
(4)レベルセンサー
(5)流量調整弁
(6)熱交換器
(7)真空ポンプ
(8)凝縮した流体を一時的に貯蔵する容器
(9)レベルセンサー
(10)逆流防止機能付切り替弁
(11)逆流防止機能付切り替弁
(12)凝縮液溜まり
(13)凝縮液の移送管
(14)加熱装置
(15)断熱装置