(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】管内洗浄用ノズル
(51)【国際特許分類】
E03C 1/304 20060101AFI20241203BHJP
B08B 9/043 20060101ALI20241203BHJP
F28G 1/16 20060101ALI20241203BHJP
B05B 1/12 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
E03C1/304
B08B9/043 433
F28G1/16 A
B05B1/12
(21)【出願番号】P 2021121825
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】393023536
【氏名又は名称】フジクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 英
(72)【発明者】
【氏名】大津 芳永
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-163644(JP,A)
【文献】実開昭61-155474(JP,U)
【文献】特開2020-122262(JP,A)
【文献】特開2015-231605(JP,A)
【文献】特開2019-157474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/304
B08B 9/043
F28G 1/16
B05B 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送水ホースの先端部に取り付けられ、前記送水ホースを介して送られる高圧水を、ノズル本体の軸線に対して互いに噴射角度が異なる第1噴射口または第2噴射口から選択的に噴射可能にした管内洗浄用ノズルであって、
前記ノズル本体内には、前記軸線に沿う方向を長手方向とした空洞部が形成されると共に、前記空洞部内に収容されて、重力を受けて前記空洞部内を長手方向に沿って移動する封止体が備えられ、
前記空洞部の長手方向の一端部には、前記第1噴射口に連通する第1開口が形成されると共に、前記空洞部の長手方向の他端部には、前記第2噴射口に連通する第2開口が形成され、前記封止体の第1開口側への重力による移動により、前記第1開口を封止して前記第2噴射口から高圧水を噴射し、前記封止体の第2開口側への重力による移動により、前記第2開口を封止して、前記第1噴射口から高圧水を噴射することを特徴とする管内洗浄用ノズル。
【請求項2】
前記ノズル本体は、ホース接続管を介して前記送水ホースの先端部に取り付けられ、前記ホース接続管は、ノズル本体の前記軸線に対して鈍角の範囲内で曲げられて、前記送水ホースに接続されることを特徴とする請求項1に記載の管内洗浄用ノズル。
【請求項3】
前記第1噴射口が、前記送水ホース側から見た斜め後方に高圧水を噴射するように、前記ノズル本体に形成され、前記第2噴射口が、高圧水の噴射による反作用により、前記ノズル本体に対して回転駆動されるロータ上に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の管内洗浄用ノズル。
【請求項4】
前記第1噴射口と第2噴射口は、それぞれ複数の噴射口で構成され、前記第1噴射口は前記ノズル本体の周に沿って等間隔に配置され、前記第2噴射口は前記ロータ上に、ロータの周に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の管内洗浄用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、集合住宅等に敷設された排水管内に付着した食品残渣や油脂等による固形物を、高圧水の噴射により除去する管内洗浄用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
土地の有効活用の観点から、都市部やその近郊において、高層ビル形式の集合住宅が多数建設されている。このビル形式の集合住宅から排出される生活排水(汚水)は、個別の宅内に水平方向に敷設された専用排水管から、ビル内部に垂直方向に敷設された共用排水管(立管とも言う。)を介して、屋外の横引き管に排出され、これにより良好な生活環境が維持されるようになされている。
【0003】
ところで、この生活排水には多量の食品残渣や油脂等が含まれているために、この残渣や油脂等が前記した個別の専用排水管のみならず共用排水管などの管壁に固形物となって付着し、相当の期間の経過により排水管を閉塞させるという問題を招くこともある。また、管壁に付着した固形物から悪臭が放され、生活環境を悪化させることもある。
このような生活環境の悪化を防止し、良好な生活環境を維持するために、一定期間ごとに排水管の清掃が必要となる。
【0004】
前記したように排水管内に付着した固形物を洗浄して除去する一つの方法として、従来より高圧水噴射洗浄法が採用されている。この高圧水噴射洗浄法は、送水ホースの先端に取り付けられた洗浄用ノズルから、排水管内に付着した固形物に向けて高圧水を噴射し、前記固形物を除去するものである。
【0005】
前記した排水管内の洗浄に用いる高圧水の噴射ノズルについては、既に多くの提案がなされており、本出願人は特に前記した個別の専用排水管、共用排水管、及び横引き管のいずれの洗浄にも適するように、高圧水の噴射口を切り換えて利用可能な管内洗浄用ノズルと、これを用いる排水管の洗浄方法について、先に提案をしており、これは特許文献1に開示されている。
【0006】
図7及び
図8は、特許文献1に開示された管内洗浄用ノズルの例を示しており、管内洗浄用ノズルを、軸方向に切断した断面図で示している。そして、
図7はノズル本体11の先端部を下向きにした状態を、また
図8はノズル本体11の軸線13を水平方向に向けた状態で、それぞれ示している。
ノズル本体11には、その軸線13に沿ってホース接続口12より供給される高圧水の送水空間14が形成されている。そして、送水空間14の大径部内には重力を受けて移動するボール状の封止体15が収容されている。
【0007】
前記封止体15は、
図7に示すようにノズル本体11の先端部を下にした状態においては、重力にしたがってノズル本体11の前方側に移動する。また
図8に示すようにノズル本体11を水平方向に向けた場合には、封止体15は中央の軸線13から離れた位置に形成されたポケット14a内に入り込む。
【0008】
一方、前記ノズル本体11の前方側には、複数本の斜め後方への噴射口17が放射状に形成されており、またノズル本体11の後方側には、複数本の斜め前方への噴射口16が放射状に形成されている。
したがって、ホース接続口12に接続される図示せぬホース側から見たノズル本体11の前方が下向きに設定された
図7に示す状態においては、封止体15が前方に移動して円形状の開口19を閉塞するので、ノズル本体に形成された斜め後方への噴射口17に至る高圧水を封止し、斜め前方への噴射口16から高圧水が噴射する。
【0009】
また、ノズル本体11が水平方向に向くように配置された
図8に示す状態においては、封止体15は前記したポケット14a内に入り、封止体15が円形状の開口18を閉塞するので、ノズル本体11に形成された斜め前方への噴射口16に至る高圧水を封止し、斜め後方への噴射口17から高圧水が噴射する。
【0010】
したがって、前記したノズル本体11を、例えば個別の宅内に敷設された水平方向の専用排水管に挿入した場合には、斜め後方への噴射口17から高圧水が噴射するので、ノズル本体11は前方への推進力を受けて専用排水管内を立管に向かって進行する。ノズル本体11が立管の合流部まで進行した後も、高圧水の噴射を継続したまま、ホースを送り出すことで、ノズル本体11は立管内を下る方向に進行する。これにより、専用排水管内及び立管内は、ノズルからの噴射水により洗浄される。
【0011】
ノズル本体11が立管内に位置する状態で、高圧水の送水を停止させると、ノズル本体11内の封止体15は、噴射口17に連通する開口19を閉塞する。この状態で再び送水することでノズル本体11の斜め前方への噴射口16より高圧水が噴射されることになり、ノズル本体11は後退する方向への推進力を受ける。これにより、ノズル本体11の引戻しに要する作業者の負担を軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献1に開示された管内洗浄用ノズルによると、ノズル本体11を例えば個別の宅内に敷設された水平方向の専用排水管に挿入した状態においては、ノズル本体11内に備えられたボール状の封止体15は、必ずしも
図8に示すように、ポケット14a内に入るとは限らない。
すなわち、ボール状の封止体15は、前記ポケット14aが下に位置する
図8に示す状態にある時のみにおいてポケット14a内に入り、これにより、斜め後方への噴射口17から高圧水を噴射する正常の噴射動作が行なわれる。
【0014】
したがって、特許文献1に開示された管内洗浄用ノズルにおいては、作業者はホースを介してノズル本体11を適宜回しながら、ノズル本体11への送水を繰り返し、ノズル本体から正常な噴射動作が行なわれるか否かを確認するという操作を余儀なくされる場合がある。
それ故、前記した噴射方向が切替えられる管内洗浄用ノズルにおいては、噴射方向の切替動作が即座に正確になし得ることが必要であり、噴射の切替え動作の操作性及び信頼性を向上させることは、作業効率を向上させる点において重要な課題となる。
【0015】
一方、前記した共用排水管(立管)の洗浄を行なう場合においては、通常においては建物の屋上などに設置された立管の上部開口(清掃口)からノズルを挿入する操作が行なわれる。しかし昨今におけるビル形式の集合住宅においては、屋上などに立管洗浄用の開口が設置されていない場合があり、しかも立管の上部付近もしくは立管の下部付近から、立管に対して直接管内洗浄用ノズルを投入することが困難な例も存在する。
このような場合には、個別の宅内に敷設された専用排水管を介して立管内にノズルを挿入し、専用排水管及び立管内を洗浄する操作を余儀なくされる。
【0016】
この場合、比較的内径の小さな個別の専用排水管に対しては、ノズルから噴射される水圧を低く設定して、専用排水管が受ける水圧によるダメージを軽減させることが望ましく、内径が太い共用排水管に対しては、水圧を高く設定してその洗浄力を増加させことは、洗浄作業の効率を向上させる観点において望ましい。
【0017】
この発明は、前記した技術的な観点に基づいてなされたものであり、噴射方向が切替えられる管内洗浄用ノズルにおいて、その噴射方向の切替動作の信頼性を向上させようとするものである。
また、個別の専用排水管及び共用排水管の一連の洗浄操作において、管内洗浄用ノズルに与える水圧を適切に切替えることができる圧力切替バルブを提供すると共に、管内洗浄用ノズルと圧力切替バルブとの組み合わせにより、洗浄作業効率を向上させた排水管の圧力切替洗浄工法を提供することを主要な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る管内洗浄用ノズルは、送水ホースの先端部に取り付けられ、前記送水ホースを介して送られる高圧水を、ノズル本体の軸線に対して互いに噴射角度が異なる第1噴射口または第2噴射口から選択的に噴射可能にした管内洗浄用ノズルであって、前記ノズル本体内には、前記軸線に沿う方向を長手方向とした空洞部が形成されると共に、前記空洞部内に収容されて、重力を受けて前記空洞部内を長手方向に沿って移動する封止体が備えられ、前記空洞部の長手方向の一端部には、前記第1噴射口に連通する第1開口が形成されると共に、前記空洞部の長手方向の他端部には、前記第2噴射口に連通する第2開口が形成され、前記封止体の第1開口側への重力による移動により、前記第1開口を封止して前記第2噴射口から高圧水を噴射し、前記封止体の第2開口側への重力による移動により、前記第2開口を封止して、前記第1噴射口から高圧水を噴射することを特徴とする。
【0019】
この場合、前記ノズル本体は、ホース接続管を介して前記送水ホースの先端部に取り付けられ、前記ホース接続管は、ノズル本体の前記軸線に対して鈍角の範囲内で曲げられて、前記送水ホースに接続されることが望ましい。
そして、一つの好ましい形態においては、前記第1噴射口が、前記送水ホース側から見た斜め後方に高圧水を噴射するように、前記ノズル本体に形成され、前記第2噴射口が、高圧水の噴射による反作用により、前記ノズル本体に対して回転駆動されるロータ上に形成される。
【0020】
加えて、前記第1噴射口と第2噴射口は、それぞれ複数の噴射口で構成され、前記第1噴射口は前記ノズル本体の周に沿って等間隔に配置され、前記第2噴射口は前記ロータ上に、ロータの周に沿って等間隔に配置された構成が採用される。
【0021】
一方、前記した管内洗浄用ノズルには、洗浄箇所に応じてノズルからの高圧水の噴射圧力を切替える圧力切替バルブを利用することが望ましい。
この圧力切替バルブの好ましい形態においては、高圧水供給源からの高圧水を受ける受水部及び前記管内洗浄用ノズルに対して高圧水を送り出す送水部と、前記受水部と送水部との間に形成されて、前記高圧水の流路を絞るオリフィスによる減圧路及び前記受水部と送水部との間に形成されて、前記オリフィスを迂回するバイパス路と、重力を受けて一方に移動して、前記受水部からバイパス路に至る第1開口を封止することで、高圧水を前記減圧路を介して送水部に送ると共に、重力を受けて他方に移動して、前記受水部から減圧路に至る第2開口を封止することで、高圧水を前記バイパス路を介して送水部に送る封止体とが備えられ、前記封止体の重力による移動により、前記受水部から送水部に送り出される高圧水が、減圧モードと非減圧モードとに切替えられる。
【0022】
さらに前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る排水管の圧力切替洗浄工法の好ましい一つの態様によると、集合住宅における個別の宅内に水平方向に敷設された専用排水管と、各専用排水管からの排水を集めて流す垂直方向に敷設された共用排水管とを洗浄するに際して、送水ホースの先端部に取り付けられた前記管内洗浄用ノズルを前記専用排水管内に挿入して、前記圧力切替バルブを前記減圧モードとして管内洗浄用ノズルに送水することで、前記管内洗浄用ノズルに形成された第1噴射口より高圧水を噴射し、管内洗浄用ノズルを前記専用排水管内から前記共用排水管の合流部まで進行させて、噴射水により専用排水管内を洗浄する工程と、前記圧力切替バルブを前記減圧モードとしたまま、前記管内洗浄用ノズルの第1噴射口からの高圧水の噴射を継続し、少なくとも一層以上の下層の専用排水管と共用排水管の合流部まで、管内洗浄用ノズルを降下させることで、噴射水により共用排水管内を洗浄する工程と、前記圧力切替バルブへの高圧水の供給を停止して、圧力切替バルブを前記減圧モードから非減圧モードへの切替え後に、再び送水を開始させることで前記管内洗浄用ノズルの第2噴射口より高圧水を噴射させつつ、前記管内洗浄用ノズルを共用排水管内に沿って引上げることで、再び噴射水により共用排水管内を洗浄する工程とが実行される点に特徴を有する。
【0023】
また、この発明に係る排水管の圧力切替洗浄工法の他の好ましい一つの態様によると、集合住宅における個別の宅内に水平方向に敷設された専用排水管と、各専用排水管からの排水を集めて流す垂直方向に敷設された共用排水管とを洗浄するに際して、送水ホースの先端部に取り付けられた前記管内洗浄用ノズルを前記専用排水管内に挿入して、前記圧力切替バルブを前記減圧モードとして管内洗浄用ノズルに送水することで、前記管内洗浄用ノズルに形成された第1噴射口より高圧水を噴射し、管内洗浄用ノズルを前記専用排水管内から前記共用排水管の合流部まで進行させて、噴射水により専用排水管内を洗浄する工程と、前記管内洗浄用ノズルが共用排水管内に進行した状態で、前記圧力切替バルブへの高圧水の供給を停止して、圧力切替バルブを前記減圧モードから非減圧モードへの切替え後に、再び送水を開始させることで前記管内洗浄用ノズルの第2噴射口より高圧水を噴射させつつ、少なくとも一層以上の下層の専用排水管と共用排水管の合流部まで前記管内洗浄用ノズルを降下させることで、噴射水により共用排水管内を洗浄する工程とが実行される点に特徴を有する。
【0024】
さらに、この発明に係る排水管の圧力切替洗浄工法の他の好ましい一つの態様によると、集合住宅における個別の宅内に水平方向に敷設された専用排水管と、各専用排水管からの排水を集めて流す垂直方向に敷設された共用排水管とを洗浄するに際して、送水ホースの先端部に取り付けられた前記管内洗浄用ノズルを前記専用排水管内に挿入して、前記圧力切替バルブを前記減圧モードとして管内洗浄用ノズルに送水することで、前記管内洗浄用ノズルに形成された第1噴射口より高圧水を噴射し、管内洗浄用ノズルを前記専用排水管内から前記共用排水管の合流部まで進行させて、噴射水により専用排水管内を洗浄する工程と、前記管内洗浄用ノズルが共用排水管内に進行した状態で、前記圧力切替バルブへの高圧水の供給を停止して、圧力切替バルブを前記減圧モードから非減圧モードへの切替え後に、再び送水を開始させることで前記管内洗浄用ノズルの第2噴射口より高圧水を噴射させつつ、少なくとも一層以上の下層の専用排水管と共用排水管の合流部まで前記管内洗浄用ノズルを降下させることで、噴射水により共用排水管内を洗浄する工程と、前記圧力切替バルブを前記非減圧モードとしたまま、前記管内洗浄用ノズルの第2噴射口からの高圧水の噴射を継続し、前記管内洗浄用ノズルを共用排水管内に沿って引上げることで、再び噴射水により共用排水管内を洗浄する工程とが実行される点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る前記した管内洗浄用ノズルによると、ノズル本体の軸線に沿う方向を長手方向とした空洞部が形成され、この空洞部内に重力を受けて軸方向に移動する封止体が配置される。この封止体による前記空洞部の長手方向の一端部側、もしくは他端部側への移動により、各噴射口に連通する第1開口または第2開口が前記封止体により封止されて、高圧水の噴射口が択一的に切替えられるように動作する。
これにより、例えばノズル本体の前端部が僅かに上向きまたは下向きにされることで、噴射方向の切替動作を即座に正確になしえるものとなり、噴射の切替え動作の操作性及び信頼性を向上させた管内洗浄用ノズルを提供することができる。
【0026】
また、この発明に係る圧力切替バルブは、前記した管内洗浄用ノズルの上流側に配置されて、ノズルに与える高圧水の水圧を切替える機能を果たす。
この圧力切替バルブによると、高圧水の流路を絞るオリフィスによる減圧路と、前記オリフィスを迂回するバイパス路とが備えられて、重力を受けて移動する封止体が、前記バイパス路側もしくは減圧路側に至る開口を択一的に封止するように作用する。これにより、管内洗浄用ノズルに送り出す高圧水を減圧モードと非減圧モードとに切替えるように作用する。
したがって、内径の小さな個別の専用排水管に対しては、ノズルから噴射される水圧を低く設定して、専用排水管が受ける水圧によるダメージを軽減させると共に、内径が太い共用排水管に対しては、水圧を高く設定してその洗浄力を増加させることで、洗浄作業の効率を向上させることに寄与できる。
【0027】
さらに、この発明に係る排水管の圧力切替洗浄工法によると、個別の専用排水管と共用排水管とを同時に洗浄するものであり、前記した噴射方向が切替えられる管内洗浄用ノズルと、このノズルに与える高圧水の水圧が切替え可能な圧力切替バルブとが併用される。
そして、圧力切替バルブに対する高圧水の供給を一時的に停止させることで、圧力切替バルブによる水圧の切替え動作を実現させることができ、この時における管内洗浄用ノズルの排水管内に位置する姿勢に基づいて、高圧水の噴射方向の切替動作も実現できる。
前記した圧力切替バルブによる水圧の切替えと、管内洗浄用ノズルの噴射方向の切替え動作は、前記したとおり同期して行なうことができる。したがって、それぞれの排水管に対応した適切な水圧とノズルからの噴射形態の組み合わせにより、作業効率の高い排水管の洗浄工法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】この発明に係る排水管の洗浄工法を説明する模式図である。
【
図2】この発明に係る管内洗浄用ノズルの実施の形態を示した透視図である。
【
図3】
図2に示す管内洗浄用ノズルに取り付けられたロータの断面図である。
【
図4】
図2に示す管内洗浄用ノズルにホース接続管を介してホースを接続した状態の透視図である。
【
図5】この発明に係る圧力切替バルブの実施の形態を示した透視図である。
【
図6A】排水管の洗浄工法の第1の例を示した模式図である。
【
図6B】排水管の洗浄工法の第2の例を示した模式図である。
【
図6C】排水管の洗浄工法の第3の例を示した模式図である。
【
図7】従来の管内洗浄用ノズルのノズル先端を下向きにした状態の透視図である。
【
図8】同じくノズルを水平方向に向けた状態の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明に係る管内洗浄用ノズル及び圧力切替バルブ、並びに排水管の圧力切替洗浄工法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1は、ビル形式による集合住宅における排水管の敷設状況の例、並びに排水管の圧力切替洗浄工法を実現する例について模式的に示している。
図1に示すA…Cは、集合住宅の各階における個別の宅内を示しており、各宅内A…Cの各台所、洗面所、洗濯パン、浴室などからの生活排水は、それぞれ各宅内A…Cの床下部分に水平方向に敷設された専用排水管1a…1cに排出される。これらの生活排水は、集合住宅に垂直方向に敷設された共用排水管(立管)2に集合され、屋外の横引き管3を経由して、図示せぬ公共の下水管等に向けて流される。
なお、屋外(地上)における横引き管3の適宜の位置には、一般に横引き管の掃除口4が敷設されている。
【0030】
図1に示す例は、既に説明したとおり、共用排水管(立管)の洗浄を行なうに際して、建物の屋上などに設置された立管の上部開口(清掃口)から、管内洗浄用ノズルを挿入することが困難な場合などにおいて、例えば、符号Aで示す宅内の専用排水管1aを利用して、共用排水管2内に管内洗浄用ノズル5を投入する例を示している。
なお、前記ノズル5は送水ホース6の先端部に取り付けられており、宅内Aに位置する洗浄作業員Pの手元には、ノズル5に与える高圧水の水圧を切替えることができる圧力切替バルブ7と、この圧力切替バルブ7及びノズル5に対して、高圧水供給源からの高圧水の送水又は停止操作をすることができる送水栓8が配置されている。
【0031】
図2は、この発明において好適に利用し得る管内洗浄用ノズルの一例を透視図で示している。この管内洗浄用ノズル5は、ノズル本体5Aと、ロータ5Bとにより構成され、これらノズル本体5Aとロータ5Bは、それぞれ金属素材により形成されている。
ノズル本体5Aには、その前端部側の半球状の頭部5aと、後端部側のホース接続口5bとの間に、両者を連結する円柱状の中央軸5cが形成されており、この中央軸5cに、円環状に形成された前記ロータ5Bが軸回転が可能に取り付けられている。
そして、ホース接続口5bには、後で説明するホース接続管9が取り付けられ、管内洗浄用ノズル5は、このホース接続管9を介して、送水ホース6の先端部に接続される。
【0032】
前記ノズル本体5Aにおける前記した中央軸5c内には、前端部側の頭部5aの中央と、ホース接続口5bの中央を結ぶノズル本体の軸線Ax1に平行して、高圧水の送水空間5dが形成されている。そして、この送水空間5dは、ボール状の封止体5eが収容された空洞部5fの長手方向の中央部に連通している。
封止体5eが収容された前記空洞部5fは、ノズル本体5Aの前記軸線Ax1に沿う方向を長手方向とした円筒内面を形成しており、前記封止体5eは重力を受けて前記空洞部5f内を長手方向に沿って、すなわち前記軸線Ax1方向に沿って移動する。
したがって、ノズル本体5Aの先端側を僅かに下向きに設定した場合には、ボール状の封止体5eは、重力にしたがって前記空洞部5f内を前方に移動する。またノズル本体5Aの後端側を僅かに下向きに設定した場合には、ボール状の封止体5eは、重力にしたがって前記空洞部5f内を後方に移動する。
【0033】
一方、前記封止体5eが収容された前記空洞部5fにおける長手方向の一端部、すなわちノズル本体5Aの前端部側には、第1開口5gが形成されており、また前記空洞部5fにおける長手方向の他端部、すなわちノズル本体5Aの後端部側には、第2開口5hが形成されている。
そして、ノズル本体5Aの頭部5a内には、前記第1開口5gに連通して、前記ホース6を介して送られる高圧水を、噴射する第1噴射口5iが形成されている。
この第1噴射口5iは、前記ノズル本体5Aの周方向において、ほぼ等間隔をもって放射状に形成されており、この第1噴射口5iは前記送水ホース6側から見た斜め後方に高圧水を噴射するように作用する。その噴射角度は、この実施の形態においてはノズル本体5Aの前記した軸線Ax1に対して、45度程度に設定されている。
なお、前記した第1噴射口5iは、ノズル本体5Aの頭部5aの周方向に沿って、例えば2~6個程度設けられる。
【0034】
また、前記空洞部5fに施された第2開口5hは、前記ロータ5Bの内周面に沿って形成された環状の給水路5jに連通しており、この環状の給水路5jに沿ったロータ5Bの外周面には、周方向においてほぼ等間隔をもって、複数個の第2噴射口5kが形成されている。
この第2噴射口5kは、
図3に示すようにロータ5Bの180度対向した位置に、前記軸線Ax1に対してそれぞれ直交する方向に形成されているが、この第2噴射口5kは必要に応じて3個以上設けられることもある。
【0035】
なお、180度対向する2つの第2噴射口5kは、
図3に示されているように、ロータ5Bの回転軸心を対称として、それぞれ同方向に若干のオフセットが施された状態で形成されている。したがって、第2噴射口5kより吐出される高圧水の噴射の反作用により、前記ロータ5Bは、
図3に矢印Rで示した方向に回転駆動を受ける。
これにより、第2噴射口5kが施された前記ロータ5Bは、送水ホース6を介して送られる高圧水を、ノズル本体5Aの周方向に回転させつつ噴射させる回転ノズルを構成している。
【0036】
したがって、前記した管内洗浄用ノズル5によると、前記したボール状の封止体5eの第1開口5g側への重力による移動により、前記第1開口5gを封止して前記第2噴射口5kから高圧水を噴射する。また、前記封止体5eの第2開口5h側への重力による移動により、前記第2開口5hを封止して、前記第1噴射口5iから高圧水を噴射することになる。
【0037】
したがって、前記した管内洗浄用ノズル5に高圧水が継続して送られる状態においては、たとえノズル5の姿勢が変わっても、同じ噴射口からの高圧水の噴射を継続し、ノズル5に対する高圧水の供給を一時的に停止して、再び送水を開始するときには、高圧水の供給が停止されたときのノズル5の姿勢に応じて、対応する噴射口からの高圧水の噴射がなされるものとなる。
【0038】
図4は、前記した管内洗浄用ノズル5に、ホース接続管9を介して、送水ホース6を接続した状態を透視図で示している。なお、
図4に示す管内洗浄用ノズル5においては、
図2に示した管内洗浄用ノズル5の各部に相当する代表的な部分を同一符号で示している。したがって、その詳細な説明は省略する。
なお、このホース接続管9は、一方がノズル本体側への装着部9aを構成し、他方が円筒状のホース接続部9bを構成している。
【0039】
そして、ノズル本体側への装着部9aを、管内洗浄用ノズル5の前記したホース接続口5bに嵌合させて取り付けた状態においては、円筒状のホース接続部9bの軸線Ax2は、ノズル本体5Aの前記軸線Ax1に対して、鈍角の範囲で曲げられた状態になされていることが望ましい。
図4に示す例においては、ホース接続部9bには、ノズル本体5Aの前記軸線Ax1に対して、約150度曲げられた状態で、前記送水ホース6が接続されているが、これは実用上において150度~170度の範囲とすることが、より望ましい。
【0040】
したがって、
図4に示すホース接続管9を用いた管内洗浄用ノズル5を、水平方向に敷設された例えば専用排水管1a内に配置した場合には、送水ホース6は専用排水管1aの内底部に沿う状態になることから、確実に管内洗浄用ノズル5の頭部5aは、上向きの姿勢で管内に位置することになる。
この状態で、送水ホース6を介して高圧水を供給すると、ノズル本体5Aの頭部5a側に形成された第1噴射口5iから、斜め後方に向かって高圧水が噴射するので、管内洗浄用ノズル5は前方への推進力を受けて専用排水管1a内から、共用排水管(立管)2に向かって前進することができる。
【0041】
図4に示したホース接続管9を採用することで、噴射方向が切替え可能なこの種の管内洗浄用ノズル5の噴射方向の選択動作についての信頼性を向上させることができるが、ノズル本体5Aの前記軸線Ax1とホース接続部9bの軸線Ax2とが同一直線上にある従来のホース接続管を利用した場合であっても、その選択動作の信頼性は確保することができる。
すなわち、専用排水管1a内に管内洗浄用ノズル5を挿入する場合において、送水ホース6に対して、専用排水管1aの内底部側に向かって意識的に押し付けるような力を加えることで、ノズル5の頭部5a側を僅かに上向きにすることができる。この状態で高圧水を供給することで、前記した第1噴射口5iから、確実に斜め後方に向かって高圧水を噴射させることが可能となる。
【0042】
図5は圧力切替バルブ7の実施の形態を透視図で示しており、この圧力切替バルブ7は、前記した管内洗浄用ノズル5に与える高圧水の噴射圧力を切替える機能を果たす。
この圧力切替バルブ7には、高圧水供給源からの高圧水を受ける受水部7aと、管内洗浄用ノズル5に対して高圧水を送り出す送水部7bとが、対向する左右方向の端部にそれぞれ形成されている。
なお、前記受水部7aと送水部7bには、前記した管内洗浄用ノズル5に設けられたホース接続口5bと同様に、図示せぬホース接続管がそれぞれ嵌合されて取り付けられる。
そして、前後のホースを介して、左右に矢印で示したように受水部7aから送水部7bに向かって高圧水が流される。
【0043】
この圧力切替バルブ7には、前記した左右方向に直交する方向に移動可能となるように、ボール状の封止体7cを収容した封止体収容空間7dが形成されており、前記受水部7aが、封止体収容空間7dの長手方向のほぼ中央部に連通している。
そして、封止体収容空間7dの長手方向の一端部には、高圧水の流路を絞るオリフィスによる減圧路7eが形成されて、前記送水部7bに連通している。また、封止体収容空間7dの長手方向の他端部には、前記オリフィスを迂回するバイパス路7fが形成されて、前記送水部7bに連通している。
【0044】
したがって、圧力切替バルブ7の姿勢が
図5に示す状態で高圧水を受けた場合には、ボール状の封止体7cは、バイパス路7fに至る第1開口7gを封止するので、高圧水は前記減圧路7eを介して送水部7bに送られる。
また圧力切替バルブ7の姿勢が
図5に示す状態に対して、上下が反転した状態で高圧水を受けた場合には、ボール状の封止体7cは、減圧路7eに至る第2開口7hを封止するので、高圧水は前記バイパス路7fを介して送水部7bに送られる。
これにより、圧力切替バルブ7は、前記したボール状の封止体7cの重力による移動により、前記受水部7aから送水部7bに送り出される高圧水を、減圧モードと非減圧モードとに切替えることができる。
【0045】
なお、前記した圧力切替バルブ7は、高圧水をバイパス路7fを介して送る非減圧モードを選択した場合には、好ましい一例として、受水部7aで受ける25MPaの高圧水をそのまま送水部7bに送り出すように作用し、高圧水をオリフィスによる減圧路7eを介して送る減圧モードを選択した場合には、受水部7aで受ける25MPaの高圧水を20MPaに減圧して、送水部7bに送り出すように作用する。
そして、前記した減圧モードと非減圧モードとの切替えは、圧力切替バルブ7に対する高圧水の供給が停止されたときの圧力切替バルブ7の姿勢に応じて、選択されるものとなる。
【0046】
図6A~
図6Cは、前記した管内洗浄用ノズル5と圧力切替バルブ7、さらに
図1に示した高圧水の送水又は停止操作ができる送水栓8を用いて、排水管内を洗浄するこの発明に係る排水管の圧力切替洗浄工法の代表的な例を説明するものである。
これら
図6A~
図6Cは、
図1に示す宅内Aの専用排水管1aから共用排水管(立管)2内を移動する管内洗浄用ノズル5の移動軌跡を示しており、実線は圧力切替バルブ7が減圧モードであること、また破線は圧力切替バルブ7が非減圧モードであることを示している
。
【0047】
図6Aは、排水管の圧力切替洗浄工法の第1の例を示しており、この例においては、送水ホース6の先端部に取り付けられた管内洗浄用ノズル5は、専用排水管1aの“START”で示された位置に投入される。
この時、圧力切替バルブ7は前記した「減圧モード」に設定される。すなわち、圧力切替バルブ7は、内部の封止体7cが重力により第1開口7gを封止する
図5に示す姿勢に設定される。
【0048】
なお、前記した管内洗浄用ノズル5の軸線Ax1が、
図4に示したホース接続管9によって、鈍角に曲げられて送水ホース6に取り付けられている場合には、格別な配慮を要することなく、送水栓8を開けて送水を開始することで、ノズル5の第1噴射口5iより斜め後方に向かう減圧された高圧水を噴射させることができる。
【0049】
一方、管内洗浄用ノズル5の軸線Ax1が、送水ホース6の長手方向に対して直線状に取り付けられている場合においては、先に説明したとおり、管内洗浄用ノズル5を専用排水管1a内に挿入した状態で、送水ホース6に対して、専用排水管1aの内底部側に向かって意識的に押し付けるような力を加えることで、ノズル5の頭部5a側を僅かに上向きにすることができる。この状態で送水栓8を開けて送水を開始することで、ノズル5の第1噴射口5iより斜め後方に向かう減圧された高圧水を噴射させることができる。
【0050】
前記第1噴射口5iからの斜め後方に向かう高圧水の噴射の反作用により、前記管内洗浄用ノズル5には前進作用が与えられる。したがって、洗浄作業員Pは専用排水管1a内に向かって送水ホース6を繰り出すことによって、ノズル5は共用排水管2に向かって前進し、ノズル5を共用排水管2の合流部まで進行させることができる。
これにより、専用排水管1a内はノズル5からの減圧された噴射水によって、洗浄作用を受ける。
【0051】
管内洗浄用ノズル5が共用排水管2に到達すると、ノズル5は共用排水管2内を下に向かって進行する。したがって、そのまま送水ホース6を繰り出すことで、圧力切替バルブ7は減圧モードのまま、ノズル5は引き続いて噴射口5iから高圧水を噴射した状態で、共用排水管2内を降下する。これにより、共用排水管2内はノズル5からの減圧された噴射水によって、洗浄作用を受ける。
【0052】
この場合、管内洗浄用ノズル5は少なくとも一層以上の下層の専用排水管と共用排水管2の合流部まで、ノズル5を降下させることが必要である。
この時のノズル5の共用排水管2内の降下量は、専用排水管1aより下層における専用排水管へのノズル5の投入の容易性や、作業箇所の状況などの実情を考慮して決められ、例えば3層分もしくは最下層の横引き管3との接続部までノズル5を降下させる場合もある。
前記した実情に応じて定められた位置までノズル5を降下させた状態で、前記した送水栓8は閉じられ、ノズル5への送水は停止する。この時の共用排水管2内のノズル5の位置を“STOP”で示している。
【0053】
前記送水栓8が閉じられると、共用排水管2内の管内洗浄用ノズル5は、その頭部5aが下向きであり、したがってノズル5内の封止体5eは第1開口5gを封止する。これにより、管内洗浄用ノズル5は、ロータ5Bに配置された第2噴射口5kから、高圧水が噴射されるように噴射方向が切替えられる。
一方、圧力切替バルブ7を、
図5に示す状態から上下を反転させると、圧力切替バルブ7は前記した「非減圧モード」に設定される。
そして、前記した送水栓8を開いて再び送水を開始することで、管内洗浄用ノズル5からは非減圧モードの高圧水を、ロータ5Bが回転を伴う状態で周方向に噴射する。
【0054】
この状態で、送水ホースを引き戻して、ノズル5を定速度で引上げることで、共用排水管2は、再び回転ノズルによる洗浄作用を受けることになる。この時の洗浄作用は水圧が高く設定されてその洗浄力が増加しており、また回転ノズルによる洗浄効果も伴って、共用排水管2の洗浄作業の効率を向上させることができる。
そして、管内洗浄用ノズル5が専用排水管1aの位置まで引上げられた“END”で示す位置において送水栓8は閉じられ、この圧力切替洗浄工法は終了する。
【0055】
洗浄工法の終了後に、送水ホース6をさらに引き戻して、管内洗浄用ノズル5を専用排水管1aから引き出すことで、洗浄作業は終了する。
なお、前記した洗浄工法は、さらに下層の異なる宅内の専用排水管を利用して、管内洗浄用ノズル5を投入し、この宅内の専用排水管から下に向けて共用排水管2を洗浄することで、共用排水管2を階層単位に分けて洗浄することができる。
【0056】
図6Bは、排水管の圧力切替洗浄工法の第2の例を示している。
この第2の例においては、管内洗浄用ノズル5を専用排水管1aに投入して、ノズル5を共用排水管2の合流部まで進行させる点については、
図6Aに基づいて説明した第1の例と同様である。
この第2の例においては、ノズル5が共用排水管2内を下に向かって進行し始めた状態において、前記した送水栓8は閉じられ、ノズル5への送水は停止する。この時の共用排水管2内のノズル5の位置を“STOP”で示している。
【0057】
この時の共用排水管2内の管内洗浄用ノズル5は、その頭部5aが下向きであり、したがってノズル5内の封止体5eは、第1開口5gを封止する。これにより、管内洗浄用ノズル5は、ロータ5Bに配置された第2噴射口5kから、高圧水が噴射されるように噴射方向が切替えられる。
一方、圧力切替バルブ7の姿勢を、
図5に示す状態から上下を反転させることで、圧力切替バルブ7は前記した「非減圧モード」に設定される。
そして、前記した送水栓8を開いて再び送水を開始することで、管内洗浄用ノズル5からは非減圧モードの高圧水を、ロータ5Bの回転を伴う状態で周方向に噴射させることができる。
【0058】
この状態で、送水ホース6を繰り出すことで、ノズル5は共用排水管2内を降下する。この時の洗浄作用は水圧が高く設定されてその洗浄力が増加しており、また回転ノズルによる洗浄効果も伴って、共用排水管2内の洗浄作業の効率を向上させることができる。
そして、管内洗浄用ノズル5を少なくとも一層以上の下層の専用排水管と共用排水管2の合流部までノズル5を降下させて、“END”で示すノズル位置において送水栓8は閉じられ、この圧力切替洗浄工法は終了する。
【0059】
図6Bに示す圧力切替洗浄工法の第2の例においても、共用排水管2内における管内洗浄用ノズル5の降下量は、下層の専用排水管へのノズル5の投入の容易性や、作業箇所の状況などの実情を考慮して決められることになる。
そして、送水ホース6を引き戻すことで、管内洗浄用ノズル5を共用排水管2から専用排水管1aに戻して引き出すことで、洗浄作業は終了する。
この圧力切替洗浄工法の第2の例においても、さらに下層の異なる宅内の専用排水管を利用して、管内洗浄用ノズル5を投入し、この宅内の専用排水管から下に向けて共用排水管2を洗浄することで、共用排水管2を階層単位に分けて洗浄することができる。
【0060】
図6Cは、排水管の圧力切替洗浄工法の第3の例を示している。
この第3の例においては、
図6Bに示した第2の例におけるノズル5の位置が“END”で示す位置に達した場合において、送水栓8を閉じることなく送水は継続される。
そして、送水ホース6を引き戻して、ノズル5を定速度で引上げることで、共用排水管2は、再び回転ノズルによる洗浄作用を受けることになる。
【0061】
そして、管内洗浄用ノズル5が専用排水管1aの位置まで引上げられた“END”の位置において送水栓8は閉じられ、この圧力切替洗浄工法は終了する。
続いて、送水ホース6をさらに引き戻して、管内洗浄用ノズル5を専用排水管1aから引き出すことで、洗浄作業は終了する。
【0062】
なお、
図6Cに示す第3の例においては、
図6Bに示す第2の例に対して、圧力切替バルブ7を非減圧モードとしたまま、管内洗浄用ノズル5からの高圧水の噴射を継続し、ノズル5を共用排水管内に沿って引上げることで、再び回転ノズルによる噴射水により、共用排水管2内を洗浄する工程が追加されたものとなる。
【0063】
以上説明した実施の形態における管内洗浄用ノズル5は、ノズル本体5Aにロータ5Bを備え、ノズル本体5A側に第1噴射口5iを、ロータ5Bに第2噴射口5kが形成しているが、これはロータ5Bを用いずに固定の第2噴射口を備えたノズル5を利用することができる。
また、実施の形態においては、噴射方向が切替え可能なノズル5を送水ホース6に対して鈍角の範囲内で曲げて取り付けることで、水平方向の管内における噴射方向の選択動作の信頼性を向上させる例を示している。
しかし、この構成はこの発明の実施において、必ずしも必要ではなく、ノズル本体5Aの軸線と送水ホース6とが、たとえ同一直線上に接続される場合であっても、噴射方向の選択動作の信頼性を十分に確保できる管内洗浄用ノズルを提供することができる。
【符号の説明】
【0064】
1a…1c 専用排水管
2 共用排水管(立管)
3 横引き管
4 掃除口
5 管内洗浄用ノズル
5A ノズル本体
5B ロータ
5a 頭部
5b ホース接続口
5c 中央軸
5d 送水空間
5e 封止体
5f 空洞部
5g 第1開口
5h 第2開口
5i 第1噴射口
5j 給水路
5k 第2噴射口
6 送水ホース
7 圧力切替バルブ
7a 受水部
7b 送水部
7c 封止体
7d 封止体収容空間
7e 減圧路(オリフィス)
7f バイパス路
7g 第1開口
7h 第2開口
8 送水栓
9 ホース接続管
9a ノズル本体側への装着部
9b ホース接続部
A…C 個別の宅内
Ax1 ノズル本体の軸線
Ax2 ホース接続部の軸線
P 洗浄作業員