(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】膀胱癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/761 20150101AFI20241203BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20241203BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241203BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K35/761
A61P35/00
A61P13/10
A61K45/00
A61K35/768
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136745
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2019553212の分割
【原出願日】2018-04-13
【審査請求日】2022-08-30
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518134389
【氏名又は名称】シージー オンコロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アーサー クアン
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】Cancer Sci.,2016年,107, [10],p.1373-1379
【文献】J. Urol.,2016年,195, [4S],p.e142(MP13-19)
【文献】History of Change for Study:NCT01438112, [online], 2016-Jul-27, ClinicalTrials.gov archive, NCT ID:NCT01438112 [Retrieved on 2022-MAY-17],Retrieved from the internet:<https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT014 38112?V_17=View#StudyPageTop>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱癌を有する個体内の膀胱癌を治療するまたは膀胱を保存する方法において使用するための、腫瘍溶解性ウイルスを含む組成物であって、前記方法は、導入期および維持期の間に、前記個体に前記組成物を膀胱内投与することを含み、
前記導入期は、週1回6週間にわたり、約1×10
12
個のウイルス粒子~約2×10
13
個のウイルス粒子の腫瘍溶解性ウイルスの用量で前記組成物を投与することを含み、前記維持期は、週1回3週間にわたり前記
組成物を投与することを含み、前記腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス血清型5であり、天然アデノウイルスの内因性E1aプロモーターがヒトE2F-1プロモーターに置換され、前記天然アデノウイルスの内因性E3 19kDコード領域が、ヒトGM-CSFをコードしている核酸に置換されていることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記
組成物は前記維持期中3ヶ月または6ヶ月毎に週1回3週間にわたり投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記導入期が、週1回6週間にわたり、
約1×10
12
個のウイルス粒子の用量で前記組成物を前記個体に投与することを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記導入期の開始と前記維持期の開始が約3ヶ月離れている、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記導入期の開始と前記維持期の開始が約6ヶ月離れている、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記導入期が、治療レジメンの0及び3ヶ月目に週1回6週間にわたり、
約1×10
12
個のウイルス粒子~約2×10
13
個のウイルス粒子の腫瘍溶解性ウイルスの用量で前記組成物を前記個体に投与することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記個体が筋層非浸潤性膀胱癌を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記個体が上皮内癌を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記個体が病期Ta又はT1の乳頭癌を併発していない、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記個体が病期Ta又はT1の膀胱癌を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記個体が上皮内癌を有さない、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記個体がBCG治療に非反応性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記個体がBCG治療後の疾患再発を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記個体が約6ヶ月以内にBCG治療に失敗している、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記個体が膀胱切除術を受けていない、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記個体が膀胱切除術を拒否したか、又はこれに適していない、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記腫瘍溶解性ウイルスがCG0070である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記
維持期が、
週1回3週間にわたり、約1×10
12
個のウイルス粒子~約
2×10
13
個のウイルス粒子
の腫瘍溶解性ウイルスの用量で
前記組成物を投与
することを含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記方法が、前記
組成物の投与に先立って形質導入増強剤を前記個体に膀胱内投与することをさらに含むことを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記
組成物が単一の治療薬として投与されることを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月14日出願の米国特許仮出願第62/485,805号及び2017年5月3日出願の米国特許仮出願第62/500,729号に対する優先権を主張するものであり、それらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、CG0070などの腫瘍溶解性ウイルスを使用して、膀胱上皮内癌治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2016年には、約77,000例の新たな膀胱癌症例が診断された。筋層非浸潤性膀胱癌(病期Ta、T1、又は上皮内癌)は、これらの症例の70~80%を占め、一方、筋層浸潤性疾患(病期T2以上)及び転移性疾患は残りの20~30%を構成する。膀胱癌は、はっきりと異なる細胞増殖パターンに基づいて、乳頭状腫瘍及び扁平状腫瘍の2つのサブタイプに分類される。上皮内癌は、膀胱の表面層に限られる扁平状腫瘍である。病期Ta及びT1の乳頭状腫瘍と比較して、膀胱CISは診断がより困難であり、筋層浸潤性膀胱癌に進行するリスクが高い。
【0004】
膀胱内カルメット・ゲラン桿菌(BCG)は、膀胱CISの標準治療である。患者は、典型的には、週1回のBCG膀胱内注入6週間からなる初期治療と、その後6~12ヶ月間の毎月の維持治療を受ける。しかしながら、患者の約30~40%は、1回のBCG治療に反応しない。1つの研究では、中央値2.5年の経過観察を伴うBCG治療を受けたCIS患者における、全体的な進行リスクは約14%であった。Witjes,J.A.European urology 45.2(2004):142-146参照。BCGに失敗したCIS患者における進行の可能性は有意であるため、部分的及び根治的膀胱切除術を含む膀胱切除術は、治療選択肢として残される。しかしながら、膀胱切除術は、重篤な副作用と関連し、患者の生活の質に悪影響を及ぼす。更に、臨床的に限局した膀胱癌の根治的膀胱切除術後の再発のリスクは高く、病期依存性である。例えば、Bassi P et al.J.Urol.1999;161:1494-7参照。高齢者及び腎不全の患者は、手術や化学療法への忍容性が低く、膀胱CISの治療のための更なる臨床的課題を提起する。
本明細書で参照した全ての出版物、特許、特許出願、及び特許出願公開の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Witjes,J.A.European urology 45.2(2004):142-146
【文献】Bassi P et al.J.Urol.1999;161:1494-7
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、腫瘍溶解性ウイルス、例えば、CG0070の膀胱内投与を含む、個体における膀胱癌を治療するための方法、組成物(医薬組成物を含む)、及びキットを提供する。
【0007】
一態様では、本明細書では、個体内の膀胱癌を治療する方法が提供され、この方法は、維持期中週1回3週間にわたり、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。
【0008】
別の態様では、本明細書では、個体内の膀胱を保存する方法が提供され、この方法は、維持期中週1回3週間にわたり、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記の方法のいずれかにより、腫瘍溶解性ウイルスは、維持期中6ヶ月毎に週1回3週間にわたり投与される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、維持期の前に導入期を更に含み、導入期は、週1回6週間にわたり、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、導入期の開始と維持期の開始が、約3ヶ月離れている。いくつかの実施形態では、導入期の開始と維持期の開始が、約6ヶ月離れている。いくつかの実施形態では、導入期は、治療レジメンの0及び3ヶ月目に週1回6週間にわたり、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に投与することを含む。
【0010】
また、本明細書では、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない個体におけるTa又はT1膀胱癌の治療方法も提供され、この方法は、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。
【0011】
本出願の一態様では、個体(例えばヒト)内の膀胱癌を治療する方法が提供され、この方法は、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱上皮内癌のみを有している。いくつかの実施形態では、個体は、病期Ta又はT1の乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱上皮内癌とTa又は病期Taの癌を有する(CIS+Ta又はCIS+T1)。いくつかの実施形態では、個体は、Ta又はT1膀胱癌を有するが、上皮内癌ではない。いくつかの実施形態では、個体は、Ta又はT1膀胱癌を有し、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない。いくつかの実施形態では、個体は、切除不可能な病期Ta又はT1の膀胱癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しない。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、約6ヶ月以内にBCG治療に失敗している。いくつかの実施形態では、個体は、BCGが無効である。
【0012】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術を受けていない。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、膀胱切除術は、根治的膀胱切除術である。
【0013】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞内で優先的に複製する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、Rb経路に欠失がある。いくつかの実施形態では、腫瘍特異性プロモーターは、E2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、E2F-1プロモーターは、配列番号1に示すヌクレオチド配列を含む。
【0014】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、免疫関連分子は、GM-CSF、IL-2、IL-12、インターフェロン、CCL4、CCL19、CCL21、CXCL13、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、RIG-I、MDA5、LGP2、及びLTαβからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫関連分子はGM-CSFである。いくつかの実施形態では、異種遺伝子は、ウイルスプロモーターに操作可能に連結されている。
【0015】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、セネカバレーウイルス、コクサッキーウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス、マラバ及びラブドウイルス、並びにパルボウイルスからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍溶解性アデノウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須なウイルス遺伝子は、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、異種遺伝子は、E1プロモーター又はE3プロモーターに操作可能に連結されている。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはアデノウイルス血清型5であり、天然アデノウイルスの内因性E1aプロモーターはヒトE2F-1プロモーターに置換され、天然アデノウイルスの内因性E3 19kDコード領域は、ヒトGM-CSFをコードしている核酸に置換されている。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはCG0070である。
【0016】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014ウイルス粒子の用量で投与される。
【0017】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、毎週投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間にわたって投与される。
【0018】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、方法は、個体に、腫瘍溶解性ウイルスの投与に先立って形質導入増強剤を膀胱内投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、形質導入増強剤はN-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)である。
【0019】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1回繰り返される。
【0020】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。
【0021】
上記の方法のうちのいずれかによるいくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。
【0022】
また、一態様では、個体(例えばヒト)内の膀胱癌を治療するための医薬組成物が提供され、医薬組成物は個体に膀胱内投与され、医薬組成物は腫瘍溶解性ウイルスを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。
【0023】
更に一態様では、個体(例えばヒト)内の膀胱癌を治療するための薬剤の調製における腫瘍溶解性ウイルスの使用が提供され、薬剤は個体に膀胱内投与され、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。
【0024】
本発明のこれらの及び他の態様及び利点は、後に続く詳細な説明及び添付の「特許請求の範囲」から明白となるであろう。本明細書に記載の様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、又は全ては、本発明の他の実施形態を形成するように組み合わされてもよいことを理解されたい。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
個体内の膀胱上皮内癌を治療する方法であって、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを前記個体に膀胱内投与することを含み、前記腫瘍溶解性ウイルスは、前記腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む、方法。(項目2)
前記個体が膀胱上皮内癌のみを有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記個体が病期Ta又はT1の乳頭癌を併発していない、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記腫瘍溶解性ウイルスが週1回投与される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記腫瘍溶解性ウイルスが約1週間~約6週間にわたって投与される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記方法が少なくとも1回繰り返される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
個体内の膀胱癌を治療する方法であって、維持期中週1回3週間にわたり、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを前記個体に膀胱内投与することを含み、前記腫瘍溶解性ウイルスは、前記腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む、方法。
(項目8)
個体内の膀胱を保存する方法であって、維持期中週1回3週間にわたり、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを前記個体に膀胱内投与することを含み、前記腫瘍溶解性ウイルスは、前記腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む、方法。
(項目9)
前記腫瘍溶解性ウイルスが、維持期中6ヶ月毎に週1回3週間にわたり投与される、項目7又は8に記載の方法。
(項目10)
前記維持期の前に導入期を更に含み、前記導入期は、週1回6週間にわたり、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを前記個体に投与することを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記導入期の開始と前記維持期の開始が約3ヶ月離れている、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記導入期の開始と前記維持期の開始が約6ヶ月離れている、項目10に記載の方法。
(項目13)
前記導入期が、治療レジメンの0及び3ヶ月目に週1回6週間にわたり、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを前記個体に投与することを含む、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記個体が上皮内癌を有する、項目7~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記個体が病期Ta又はT1の乳頭癌を併発していない、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記個体が病期Ta又はT1の膀胱癌を有する、項目7~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない個体内のTa又はT1膀胱癌を治療する方法であって、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを前記個体に膀胱内投与することを含み、前記腫瘍溶解性ウイルスは、前記腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む、方法。
(項目18)
前記個体がBCG治療に非反応性である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記個体がBCG治療後の疾患再発を有する、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記個体が約6ヶ月以内にBCG治療に失敗している、項目18又は19に記載の方法。
(項目21)
前記個体が膀胱切除術を受けていない、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記個体が膀胱切除術を拒否したか、又はこれに適していない、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記腫瘍溶解性ウイルスが癌細胞内で優先的に複製する、項目1~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記癌細胞はRb経路に欠失がある、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記腫瘍特異的プロモーターがE2F-1プロモーターである、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記E2F-1プロモーターが配列番号1に記載されるヌクレオチド配列を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記免疫関連分子が、GM-CSF、IL-2、IL-12、インターフェロン、CCL4、CCL19、CCL21、CXCL13、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、RIG-I、MDA5、LGP2、及びLTαβからなる群から選択される、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記免疫関連分子がGM-CSFである、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記異種遺伝子がウイルスプロモーターに操作可能に連結されている、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記腫瘍溶解性ウイルスが、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、セネカバレーウイルス、コクサッキーウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス、マラバ及びラブドウイルス、並びにパルボウイルスからなる群から選択される、項目1~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍溶解性アデノウイルスである、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須の前記ウイルス遺伝子が、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記異種遺伝子が、E1プロモーター又はE3プロモーターに操作可能に連結されている、項目29又は項目30に記載の方法。
(項目34)
前記腫瘍溶解性ウイルスがアデノウイルス血清型5であり、天然アデノウイルスの内因性E1aプロモーターがヒトE2F-1プロモーターに置換され、前記天然アデノウイルスの内因性E3 19kDコード領域が、ヒトGM-CSFをコードしている核酸に置換されている、項目1~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記腫瘍溶解性ウイルスがCG0070である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記腫瘍溶解性ウイルスが、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子の用量で投与される、項目1~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記腫瘍溶解性ウイルスが50mLの量で投与される、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記腫瘍溶解性ウイルスの投与に先立って、形質導入増強剤を個体に膀胱内投与することを更に含む、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記形質導入増強剤がN-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記腫瘍溶解性ウイルスが免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない、項目1~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記腫瘍溶解性ウイルスが単一の治療薬として投与される、項目1~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記個体がヒトである、項目1~41のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】CG0070及び野生型(wt)アデノウイルス5型の模式図である。CG0070は、アデノウイルス血清型5に基づいているが、内因性E1aプロモーター及びE3 19kDコード領域は、ヒトE2F-1プロモーター、及びヒトGM-CSFのcDNAコード領域にそれぞれ置換されている。
【0026】
【
図2】膀胱内CG0070治療を受けた6ヶ月後の、様々な病期の高悪性度の筋層非浸潤性膀胱癌を有する患者における完全奏功(CR)率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、CG0070などの有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に膀胱内投与することによって、個体内の膀胱癌を治療するための方法及び組成物を提供する。in vitro研究では、CG0070などの条件付きで複製する腫瘍溶解性ウイルスの使用は、膀胱癌の治療の有効な戦略であり得ることを示唆している。Ramesh N,Ge Y,Ennist DL,Zhu M,Mina M,Ganesh S,Reddy PS,Yu DC.CG0070,a conditionally replicating granulocyte macrophage colony-stimulating factor-armed oncolytic adenovirus for the treatment of bladder cancer.Clin Cancer Res.2006;12:305-13。しかしながら、特定の患者集団でのCG0070の予想外の有効性、及び本明細書に記載される特定の投与レジメンの効果は、これまで未知であった。この方法は、以前に標準治療法に失敗したものを含む膀胱癌において、膀胱を保存し、有効性が高く、かつ良好な忍容性がある。第II相臨床試験において、発明者らは、驚くべきことに、以前BCG療法に失敗した純粋CISを有する患者の72.2%が、6ヶ月間の膀胱内CG0070治療後に完全奏功(CR)したことを見出した。腫瘍溶解性ウイルスの治療効果は、腫瘍溶解性ウイルスを単剤療法薬として、つまり免疫チェックポイント調節剤と組み合わせずに使用して達成することができる。本明細書に記載される方法及び組成物は、高リスク膀胱CISを有するが、膀胱切除術を拒否している、又は膀胱切除術に適していない患者にとって特に有用である。
【0028】
したがって、本出願の一態様は、個体内の膀胱癌を治療する方法が提供し、この方法は、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に膀胱内投与することを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはCG0070である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、又はBCG治療後に疾患再発を有している。
【0029】
また、本明細書に記載の方法に有用である組成物(医薬組成物など)、薬、キット、及び単位用量も提供される。
【0030】
I.定義
用語は、以下のように別途定義されない限り、当該技術分野において一般的に使用されるように本明細書において用いられる。
【0031】
本明細書で使用するとき、「膀胱上皮内癌」、「膀胱CIS」、及び「膀胱の上皮内癌」は互換的に使用され、尿路上皮の完全又は部分的な厚さのいずれかに関し得る細胞学的悪性細胞で構成される、扁平(すなわち、非乳頭状)病変を特徴とする膀胱癌の臨床病期を指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、「治療」又は「治療する」は、臨床結果を含めて有益な又は所望の結果を得るための方法である。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果には、以下のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない:膀胱癌がもたらす1つ以上の症状を軽減すること、膀胱癌の範囲を縮小させること、膀胱癌を安定させること(例えば、膀胱癌の悪化を防止する若しくは遅らせること)、膀胱癌の拡散(例えば、転移)を防止する若しくは遅らせること、膀胱癌の再発を防止する若しくは遅らせること、膀胱癌の再発率を減少させること、膀胱癌の進行を遅らせる若しくは減速させること、膀胱癌状態を寛解させること、膀胱癌の寛解(部分又は完全)をもたらすこと、膀胱癌を治療するために必要な1つ以上の他の投薬の用量を減らすこと、膀胱癌の進行を遅らせること、生活の質を向上させること、及び/又は生存期間を延ばすこと。また「治療」には膀胱癌の病理学的帰結の縮小も包含される。本発明の方法は、治療のこれらの態様のうちのいずれか1つ以上を企図する。
【0033】
本明細書で使用される「前治療」は、腫瘍溶解性ウイルスの膀胱内投与を含む、本明細書に記載される方法とは異なり、かつ、本明細書に記載される方法に先立って開始された治療レジメンを指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、「リスクのある」個体は、膀胱CISに罹患するリスクがあるヒト個体である。「リスクのある」ヒト個体は、検出可能な疾患を有しても有していなくてもよく、又は、本明細書に記載の治療方法に先立って検出可能な疾患を呈していても呈していなくてもよい。「リスクのある」は、ヒト個体が、本明細書に記載される筋層浸潤性膀胱癌の発症と相関する測定可能なパラメーターである、1つ又は2つ以上のいわゆるリスク因子を有することを示す。これらのリスク因子のうちの1つ又は2つ以上を有するヒト個体は、これらのリスク因子を有していないヒト個体よりも膀胱CISを発症する確率が高い。
【0035】
「アジュバント設定」は、個体が膀胱癌の既往歴を有し、かつ同個体に通常は(必ずしもそうなったとは限らないが)治療の効果があった臨床設定を指し、これには、外科治療(例えば、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)、部分的膀胱切除術、根治的膀胱切除術)、放射線療法、及び化学療法などが挙げられるが、これらに限定されない。「アジュバント設定」としての治療及び投与は、後に続く治療の機序を指す。
【0036】
「ネオアジュバント設定」は、方法が一次/根治治療の前に行われる臨床設定を指す。
【0037】
用語「個体」、「被験者」、及び「患者」は、ヒトを含む哺乳類を表すために本明細書において互換的に使用される。個体として、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ科動物、イヌ科動物、げっ歯類、又は霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱CISを患っている。いくつかの実施形態では、個体は治療を必要としている。
【0038】
本明細書で使用されるとき、膀胱癌の発症を「遅延させる」とは、その膀胱癌の発症を遅らせる、妨げる、遅くする、抑制する、安定化する、及び/又は先送りにすることを意味する。この遅延は、病歴及び/又は治療されている個体により、様々な期間であり得る。当業者には明らかであるように、十分な、つまり有意な遅延は、実際には、個体がその疾患を発症しないという点で、予防を包含する場合がある。膀胱癌の発症を「遅延」させる方法は、その方法を使用しないときと比較して、疾患が発症する確率を一定期間低下させる、及び/又は、膀胱癌の程度を一定期間低下させる方法である。このような比較は、典型的には、統計学的に有意な被験者数を用いる臨床試験に基づいている。膀胱癌の発症は、尿細胞診、尿道膀胱鏡検査(UCS)、コンピュータ断層撮影(CTスキャン、例えば螺旋CTスキャン)、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、腹腔鏡検査、又は生検(例えば、経皮針生検又は細針吸引)が挙げられるがこれらに限定されない、標準的な方法を使用して検出可能である。発症はまた、初期には検出できない膀胱癌の進行も指す場合があり、再発を含む。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「併用療法」は、第1の剤が別の剤と併用して投与されることを意味する。「併用」とは、別の治療様式に加えて、1つの治療様式を投与することを指す。すなわち、「併用」は、個体に別の治療法を送達する前、送達中、又は送達後に、ある治療法を投与することを指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、「単剤療法」は、腫瘍溶解性ウイルスなどの単一の治療薬の投与を指し、免疫チェックポイント調節剤などの別の治療様式と併用しない。癌溶解ウイルスによる単剤療法は、本発明の目的において異なる治療様式と見なされない形質導入増強剤(例えば、DDM)などの前処理薬と共に投与することができる。
【0041】
本明細書で使用する用語「有効量」は、症状のうちの1つ以上を寛解させる、和らげる、軽減する、及び/又は遅らせるなど、指定された障害、容態又は疾患を治療するのに十分な化合物(例えば、本明細書に記載される腫瘍溶解性ウイルス)又は組成物の量を指す。癌に関連しては、有効量は、腫瘍を縮小させる及び/若しくは腫瘍の増殖速度を減少させる(腫瘍増殖を抑制するなど)又は癌における他の望まれない細胞増殖を防止若しくは遅らせるのに十分な量を含む。いくつかの実施形態では、有効量は、膀胱癌の進行を遅らせるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、再発を防止する又は遅らせるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、個体内での再発率を減少させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、個体において腫瘍転移を阻害するのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。有効量の薬剤又は組成物は、(i)癌細胞の数を減らし、(ii)腫瘍サイズを縮小し、(iii)末梢器官への癌細胞浸潤をある程度阻害し、遅らせ、減速させ、及び好ましくは止め、(iv)腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせる、及び好ましくは止める)、(v)腫瘍増殖を阻害し、(vi)腫瘍の発生及び/若しくは再発を防止し、(vii)腫瘍の発生及び/若しくは再発を遅らせ、(viii)腫瘍の再発率を減少させ、並びに/又は(ix)癌に関連した症状のうちの1つ以上をある程度軽減してよい。当該技術分野において理解されるように、「有効量」は、1回以上の投与におけるものであってよく、すなわち、所望の治療エンドポイントを達成するために、単回投与又は複数回投与が必要とされてよい。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「同時投与」は、併用療法としての第1の治療及び第2の治療が同時に投与されることを意味する。第1及び第2の治療が同時に投与されるとき、第1及び第2の治療は、同一組成物(例えば、第1及び第2の治療の両方を含む組成物)に含有されてよく、又は別個の組成物に含有されてもよい(例えば、第1の治療が1つの組成物に含有され、第2の治療は別の組成物に含有される)。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「連続投与」又は「順に」は、併用療法としての第1の治療及び第2の治療が、例えば、約5、10、15、20、30、40、50、60分、又はそれ以上のうちのいずれかを超えるなど、約1分を超える時間差で投与されることを意味する。いくつかの事例では、用語「連続投与」は、併用療法としての第1の治療及び第2の治療が、約1日~1週間、2週間、3週間、4週間、8週間、12週間、又はそれ以上の週のうちのいずれかを超えるなど、約1日を超える時間差で投与されることを意味する。第1の治療又は第2の治療のいずれかが最初に投与されてよい。第1及び第2の治療は、同一又は別のパッケージ又はキットに含まれてよい、別個の組成物に含有される。
【0044】
用語「~の直前に投与される」は、第1の治療が、第2の治療の投与前の、約10、5、又は1分のうちのいずれか以内など、約15分以内に投与されることを意味する。用語「~の直後に投与される」は、第1の治療が、第2の治療の投与後の、約15、10、又は1分のうちのいずれか以内など、約15分以内に投与されることを意味する。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「医薬的に許容される」又は「薬理的に適合される」は、生物学的又は非生物学的に望ましくないものではない物質を意味し、例えば、その物質を、望まれない生物学的影響をほとんど起こさずに、又は、それが含有される組成物の別の任意の構成成分と悪い相互作用をせずに、患者に投与される医薬組成物中に組み込むことができる。医薬的に許容される担体又は賦形剤は、好ましくは、必要な毒性学的及び製造的検査基準を満たしており、並びに/又は、U.S.Food and Drug administrationが作成したInactive Ingredient Guideに含まれている。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「有害事象」又は「AE」は、市販の医薬品が投与されている個体、又は、臨床試験に参加し、治験薬若しくは非治験薬が投与されている個体における、あらゆる好ましくない医療上の出来事を指す。AEは、必ずしも個体の治療との因果関係を持たない。したがって、AEは、医薬品の使用と時間的に関連のある、あらゆる好ましくない、意図しない徴候、症状又は疾患のことであり得、この医薬品との因果関係の有無は問わない。AEとして、既存疾病の増悪、既存の突発性事象又は状態の頻度又は強度の増加、治験薬投与後に検出又は診断された状態(試験開始前に呈していた場合でも)、及び、開始時に存在しており、試験開始後に悪化した継続的に持続する疾患又は症状が挙げられるが、これらに限定されない。通常は、AEとしては、医学的又は外科的処置(例えば、手術、内視鏡検査、抜歯、又は輸血)(ただし、その処置に至る状態は有害事象である);既存疾患、状態、又は、試験開始時に存在又は検出され、悪化していない検査所見の異常;好ましくない医療上の出来事と関係がない選択的目的でなされる入院又は処置(例えば、美容整形若しくは待機手術のための入院、又は、社会的/コンビニエンス入院);個体の状態が予想以上に重篤でない限り、試験されている疾患、又は、その疾患に関連する徴候/症状;及び、いかなる臨床的徴候又は症状を伴わない治験薬の過量投与、を含まない。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「重篤な有害事象」、つまり(SAE)は、任意の用量における全ての好ましくない医療上の出来事を指し、a)死に至るもの;b)生命を脅かすもの(発生した事象による差し迫った死の危険と定義される);c)長期的又は重大な障害若しくは無能力に至るもの;d)入院若しくは入院期間の延長が必要になるもの(例外:試験中に悪化しなかった既存症状の選択的治療のための入院は、有害事象とは見なさない。入院中に発生する合併症はAEであり、合併症が入院期間を延長させる場合、その事象は重篤である);e)薬物を投与された個体の子孫における先天奇形/先天異常;又は、f)明らかに個体の原疾患に関連する場合を除いて、個体を危険にさらし得る、若しくは、上記転帰のうちの1つを予防するための介入を要し得る、上記定義に含まれない症状が挙げられるが、これらに限定されない。「有効性の欠如」(進行)は、AE又はSAEと見なされない。有効性の欠如が原因となる徴候と症状、又は臨床的続発症は、AE又はSAEの定義を満たす場合は報告しなくてはならない。
【0048】
以下の定義を使用して、標的病変に基づく応答を評価することができる:「完全奏功」又は「CR」は、全ての標的病変の消失を指し、「部分奏功」又は「PR」は、標的病変の最長径(SLD)の和が、ベースラインSLDと比較して少なくとも30%減少していることを指し、「安定」又は「SD」は、治療開始以降の最小SLDと比較して、PRとするには標的病変の縮小が不十分で、かつ、PDとするには増大が不十分であることを指し、「進行」又は「PD」は、治療開始以降に記録された最小SLDと比較して、標的病変のSLDが少なくとも20%増加していること、又は、1つ若しくは2つ以上の新たな病変部が存在していることを指す。
【0049】
以下の応答を判断する定義を用いて、非標的病変を評価することができる:「完全奏功」又は「CR」は、全ての非標的病変の消失を指し、「安定」又は「SD」は、CR又はPDではない1つ又は2つ以上の非標的病変の残存を指し、「進行」又は「PD」は、既存の非標的病変の「明らかな増悪」を指し、ありは、1つ又は2つ以上の新たな病変部が存在していると、進行と見なされる(個体におけるPDが、非標的病変の進行だけを基準に、ある時点について評価される場合、評価の実施には追加基準が必要である)。
【0050】
「無増悪生存期間」(PFS)は、治療中及び治療後、癌が成長しない期間を指す。無増悪生存期間は、個体が完全奏功又は部分奏功である期間、並びに、個体が安定である期間を含む。
【0051】
「無膀胱切除生存期間」(CFS)は、医師によって決定される、患者が膀胱切除術を必要としない治療中及び治療後の期間を示す。
【0052】
本明細書では、「予測する」又は「予測」を、治療レジメンに対し、良好又は不良のいずれかで応答する可能性を指すために用いる。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「治療開始時点」又は「ベースライン」は、治療に初めて曝露されたとき、又はその前の期間を指す。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「サンプル」は、例えば、物理的、生化学的、化学的、生理学的、及び/又は遺伝子学的特徴に基づいて、特徴付けられる、及び/又は識別される、分子を含有する組成物を指す。
【0055】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、実施形態「からなる」及び/又は「から本質的になる」を含むことを理解されたい。
【0056】
本明細書に記載の「約」のついた値又はパラメーターへの言及は、値又はパラメーター自体を対象とする変形を含む(及び記載する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を含む。
【0057】
本明細書で使用するとき、「~されない」などの否定(not)を伴うある値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター「以外」が肯定されることを一般に意味し、記載する。例えば、「方法は、タイプXの癌を治療するのに使用されない」は、「方法は、X以外のタイプの癌を治療するのに使用される」を意味する。
【0058】
本明細書で使用する用語「約X~Y」は、「約X~約Y」と同一の意味を有する。
【0059】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用するとき、単数形の「a」、「or」、及び「the」は、文脈から単数であることが明確に読み取れる場合を除き、対象の複数形も含まれるものとする。
【0060】
II.膀胱癌の治療方法
本出願の一態様は、腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルスの局所投与による個体(例えばヒト個体)における膀胱癌の治療に関する。これに関連して、腫瘍溶解性ウイルスの局所投与は、腫瘍溶解性ウイルスの膀胱内投与を包含する。本明細書に記載される方法のうち任意のものは、膀胱腫瘍の増殖阻害、膀胱腫瘍の転移阻害、膀胱癌を有する個体の生存期間(例えば、無病生存期間、無増悪生存期間、又は無膀胱切除生存期間)の延長、膀胱癌を有する個体における疾病の寛解の誘発、膀胱癌を有する個体における疾患増悪の予防、及び/又は、膀胱癌を有する個体の生活の質の改善に有用であり得る。いくつかの実施形態では、方法は、膀胱保存又は膀胱温存である。いくつかの実施形態では、膀胱保存法又は膀胱温存法は、個体の生活の質を改善するために有用である。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書では、膀胱癌を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含み、腫瘍溶解性ウイルスは、週1回3週間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、0ヶ月目に週1回6週間にわたって、及び、6ヶ月目に週1回3週間にわたって送達される。
【0062】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、導入期及び維持期の間に投与される。いくつかの実施形態では、導入期間は、週1回6週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。いくつかの実施形態では、導入期間は、0及び3ヶ月目に週1回6週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、維持期は、導入期に続いて、週1回3週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、6ヶ月毎に週1回3週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを送達することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、6ヶ月毎に週1回3週間にわたり、2、3、4、5、6回、又は必要に応じて腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、6、12、及び18ヶ月目に週1回3週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、3、6、12、及び18ヶ月目に週1回3週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、投与スケジュールは、腫瘍溶解性ウイルスに対する個体の反応に基づいて調節され得る。例えば、いくつかの実施形態では、個体に、0ヶ月目に週1回6週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与し、3ヶ月目に再評価する。いくつかの実施形態では、3ヶ月目に完全奏功した個体は、6ヶ月毎に週1回6週間にわたる腫瘍溶解性ウイルスの投与を含む、維持期を開始する。いくつかの実施形態では、3ヶ月目に完全奏功していない個体は、週1回6週間にわたる腫瘍溶解性ウイルスの2回目の導入投与を受ける。
【0065】
したがって、本明細書では、個体内の膀胱癌を治療する方法が提供され、この方法は、6ヶ月毎に週1回3週間にわたり腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含み、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)は膀胱内に投与され、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1を伴わないCIS、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。いくつかの実施形態では、個体は、Ta又はT1膀胱癌を有し、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、Ta又はT1の切除不可能な膀胱癌である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、治療レジメンの6、12、及び18ヶ月目に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、治療レジメンの3、6、12、及び18ヶ月目に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、必要に応じて、6ヶ月毎に週1回3週間にわたって投与される。
【0066】
したがって、本明細書では、膀胱癌を治療する方法が提供され、この方法は、導入期中に週1回6週間にわたり、及び維持期中に週1回3週間にわたり腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含み、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)は膀胱内に投与され、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1を伴わないCIS、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、Ta又はT1の切除不可能な(non-respectable)膀胱癌である。いくつかの実施形態では、導入期は、0及び3ヶ月目に週1回6週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、6、12、及び18ヶ月目に週1回3週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、3、6、12、及び18ヶ月目に週1回3週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。いくつかの実施形態では、維持期は、必要に応じて、6ヶ月毎に週1回3週間にわたって腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含む。
【0067】
方法は、患者において膀胱切除術の必要性を低減する利点を有し、したがって膀胱温存法において、膀胱切除術に適していない患者の治療に使用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書では、個体における膀胱温存法が提供され、この方法は、6ヶ月毎に週1回3週間にわたり腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含み、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)は膀胱内に投与され、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1を伴わないCIS、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。いくつかの実施形態では、個体は、Ta又はT1膀胱癌を有し、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、Ta又はT1の切除不可能な膀胱癌である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、治療レジメンの6、12、及び18ヶ月目に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、治療レジメンの3、6、12、及び18ヶ月目に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、必要に応じて、6ヶ月毎に週1回3週間にわたって投与される。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書では、維持療法の方法が提供され、この方法は、6ヶ月毎に週1回3週間にわたり腫瘍溶解性ウイルスを投与することを含み、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)は膀胱内に投与され、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1を伴わないCIS、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。いくつかの実施形態では、個体は、Ta又はT1膀胱癌を有し、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、Ta又はT1の切除不可能な膀胱癌である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、治療レジメンの6、12、及び18ヶ月目に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、治療レジメンの3、6、12、及び18ヶ月目に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、必要に応じて、6ヶ月毎に週1回3週間にわたって投与される。
【0069】
いくつかの実施形態では、個体は、腫瘍溶解性ウイルスを21回以下投与される。いくつかの実施形態では、個体は、腫瘍溶解性ウイルスを、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、又は6回以下投与される。
【0070】
いくつかの実施形態では、個体内の膀胱癌(例えば、TURBTを行わないCIS膀胱癌又はTa若しくはT1グレードの膀胱癌)を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターを含むウイルスベクターを含む、有効量の腫瘍溶解性ウイルス(例えば腫瘍分解アデノウイルス)を個体に膀胱内投与することを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的プロモーターは、腫瘍細胞中での腫瘍溶解性ウイルスの優先的複製を可能にする。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、Rb経路に欠失のある癌細胞などの癌細胞内で優先的に複製する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、セネカバレーウイルス、コクサッキーウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス、マラバ及びラブドウイルス、並びにパルボウイルスからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍特異的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターなど、E2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須なウイルス遺伝子は、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫関連分子(サイトカイン、ケモカイン、又はPRRago(すなわち、病原体認識受容体アゴニスト)など)を更に含む。いくつかの実施形態では、免疫関連分子は、免疫チェックポイント調節剤ではない。いくつかの実施形態では、免疫関連分子は、GM-CSF、IL-2、IL-12、インターフェロン(1型、2型又は3型インターフェロンなど、例えば、インターフェロンγγ)、CCL4、CCL19、CCL21、CXCL13、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、RIG-I、MDA5、LGP2、及びLTααββからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫関連分子は、STING(すなわち、インターフェロン遺伝子の刺激物質)賦活物質(CDN、すなわち、環状ジヌクレオチドなど)、PRRago(CpG、イミキモド、又はポリI:Cなど)、TLR刺激物質(GS-9620、AED-1419、CYT-003-QbG10、AVE-0675、又はPF-7909など)、及びRLR刺激物質(RIG-I、Mda5、又はLGP2刺激物質など)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫関連分子は、樹状細胞、T細胞、B細胞、及び/又は濾胞性ヘルパーT細胞を誘引する。
【0072】
いくつかの実施形態では、免疫関連分子は、腫瘍溶解性ウイルスによって発現させられる。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫関連分子をコードしている核酸を含んでよく、核酸は、ウイルスベクター内に存在することも、別個のベクター上に存在することもできる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、ウイルスベクターを含むウイルスであり、このときウイルスベクターは、免疫関連分子をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫関連分子をコードしている核酸は、E1プロモーター又はE3プロモーターなど、ウイルスプロモーターに操作可能に連結されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、免疫関連分子は、個体内の免疫応答を強化する。免疫関連分子には、サイトカイン、ケモカイン、幹細胞成長因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエチン、トロンボポエチン、腫瘍壊死因子α(TNF)、TNF-β、果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンλ、「S1因子」と呼ばれる幹細胞成長因子、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、リラキシン、プロリラキシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、肝成長因子、プロスタグランジン、線維芽細胞成長因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質、ミュラー管抑制因子、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、インテグリン、NGF-β、血小板成長因子、TGF-α、TGF-β、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子II、マクロファージ-CSF(M-CSF)、IL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-25、LIF、FLT-3、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、リンホトキシン、タリドミド、レナリドミド、又はポマリドミドが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態では、個体内の膀胱癌(例えば、TURBTを行わないCIS膀胱癌又はTa若しくはT1グレードの膀胱癌)を治療する方法が提供され、この方法は、有効量の腫瘍溶解性ウイルスを個体に膀胱内投与することを含み、このとき、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、ウイルスプロモーターに操作可能に連結されている免疫関連分子(例えばサイトカイン又はケモカイン)をコードする核酸と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍特異的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターなど、E2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須なウイルス遺伝子は、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫関連分子をコードする核酸に操作可能に連結されたウイルスプロモーターは、E3プロモーターである。いくつかの実施形態では、免疫関連分子はGM-CSFである。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約6週間、又は3週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0075】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはアデノウイルス血清型5である。いくつかの実施形態では、天然アデノウイルスの内因性E1aプロモーター及びE3の19kDのコード領域が、ヒトE2F-1プロモーター及びヒトGM-CSFをコードする核酸に置き換わっている。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化シグナル(PA)が、E2F-1プロモーターの5’に挿入される。いくつかの実施形態では、ヒトGM-CSFをコードしている核酸は、E3プロモーターに操作可能に連結されている。いくつかの実施形態では、アデノウイルス血清型5のベクターバックボーンは、野生型アデノウイルス血清型5ゲノムと同一のE2、E4、後期タンパク質領域又は逆位末端配列(ITR)を更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、
図1に示すようなゲノム構造を有する。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは条件付き複製である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞内で優先的に増殖する。いくつかの実施形態では、癌細胞はRb経路欠失癌細胞である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはCG0070である。
【0076】
したがって、いくつかの実施形態では、個体内の膀胱癌(例えば、TURBTを行わないCIS膀胱癌又はTa若しくはT1グレードの膀胱癌)を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のアデノウイルス血清型5を個体に膀胱内投与することを含み、このとき、天然アデノウイルスの内因性E1aプロモーター及びE3 19kDコード領域は、ヒトE2F-1プロモーター、及び免疫関連分子(サイトカイン又はケモカインなど、例えば、GM-CSF)をコードしている核酸に置換されている。いくつかの実施形態では、腫瘍特異的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、方法は、アデノウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、アデノウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、アデノウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、アデノウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約6週間、又は3週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0077】
いくつかの実施形態では、膀胱癌(例えば、TURBTを行わないCIS膀胱癌又はTa若しくはT1グレードの膀胱癌)を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のCG0070を個体に膀胱内投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、CG0070の投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、CG0070は、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、CG0070は1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、CG0070は、約1週間~約6週間(例えば約6週間、又は3週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0078】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して個体に投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として個体に投与される。本明細書で使用されるとき、「免疫チェックポイント調整薬」は、免疫細胞(例えばT細胞)又は腫瘍細胞において、抑制性免疫チェックポイント分子を阻害する分子若しくは薬剤(例えば抗体)、又は、免疫刺激分子を活性化する免疫刺激剤を指す。「免疫チェックポイント分子」として、腫瘍細胞に対する、免疫シグナルを増加させる分子(すなわち、「免疫刺激分子」)、又は、免疫シグナルを減少させる分子(すなわち、「抑制性免疫チェックポイント分子」)が挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫刺激剤と併用して個体に投与されない。免疫刺激剤は、OX40のリガンド(例えば、OX40L)、CD-28のリガンド(例えば、CD80、CD86)、ICOSのリガンド(例えば、B7RP1)、4-1BBのリガンド(例えば、4-1BBL、Ultra4-1BBL)、CD27のリガンド(例えば、CD70)、CD40のリガンド(例えば、CD40L)、及びTCRのリガンド(例えば、MHCクラスI又はクラスII分子、IMCgp100)からなる群から選択される、免疫刺激分子の天然又は人工リガンドであってよい。免疫刺激剤は、抗CD28(例えば、TGN-1412)、抗OX40(例えば、MEDI6469、MEDI-0562)、抗ICOS(例えば、MEDI-570)、抗GITR(例えば、TRX518、INBRX-110、NOV-120301)、抗41-BB(例えば、BMS-663513、PF-05082566)、抗CD27(例えば、BION-1402、バルリルマブ及びhCD27.15)、抗CD40(例えば、CP870、893、BI-655064、BMS-986090、APX005、APX005M)、抗CD3(例えば、ブリナツモマブ、ムロモナブ)、及び抗HVEMからなる群から選択される抗体であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント阻害剤と併用して個体に投与されない。免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4のリガンド(例えば、B7.1、B7.2)、TIM3のリガンド(例えば、Galectin-9)、A2a受容体のリガンド(例えば、アデノシン、レガデノソン)、LAG3のリガンド(例えば、MHCクラスI又はMHCクラスII分子)、BTLAのリガンド(例えば、HVEM、B7-H4)、KIRのリガンド(例えば、MHCクラスI又はMHCクラスII分子)、PD-1のリガンド(例えば、PD-L1、PD-L2)、IDOのリガンド(例えば、NKTR-218、Indoximod、NLG919)、及びCD47のリガンド(例えば、SIRP-α受容体)からなる群から選択される、抑制性免疫チェックポイント分子の天然又は人工リガンドであってよい。免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4(例えば、イピリムマブ、Tremelimumab、KAHR-102)、抗TIM3(例えば、F38-2E2、ENUM005)、抗LAG3(例えば、BMS-986016、IMP701、IMP321、C9B7W)、抗KIR(例えば、Lirilumab及びIPH2101)、抗PD-1(例えば、ニボルマブ、Pidilizumab、ペムブロリズマブ、BMS-936559、atezolizumab、ランブロリズマブ、MK-3475、AMP-224、AMP-514、STI-A1110、TSR-042)、抗PD-L1(例えば、KY-1003(EP20120194977)、MCLA-145、RG7446、BMS-936559、MEDI-4736、MSB0010718C、AUR-012、STI-A1010、PCT/US2001/020964、MPDL3280A、AMP-224、Dapirolizumab pegol(CDP-7657)、MEDI-4920)、抗CD73(例えば、AR-42(OSU-HDAC42、HDAC-42、AR 42、AR42、OSU-HDAC 42、OSU-HDAC-42、NSC D736012、HDAC-42、HDAC 42、HDAC42、NSCD736012、NSC-D736012)、MEDI-9447)、抗B7-H3(例えば、MGA271、DS-5573a、8H9)、抗CD47(例えば、CC-90002、TTI-621、VLST-007)、抗BTLA、抗VISTA、抗A2aR、抗B7-1、抗B7-H4、抗CD52(例えばアレムツズムブ)、抗IL-10、抗IL-35、及び抗TGF-β(例えばFresolumimab)からなる群から選択される、抑制性免疫チェックポイントタンパク質を標的とする抗体であってもよい。
【0081】
したがって、いくつかの実施形態では、個体内の膀胱癌(例えば、TURBTを行わないCIS膀胱癌又はTa若しくはT1グレードの膀胱癌)を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、ウイルスプロモーターに操作可能に連結されている免疫関連分子(例えばサイトカイン又はケモカイン)をコードする核酸と、を含むウイルスベクターを含む、有効量の腫瘍溶解性ウイルス(例えば腫瘍溶解性アデノウイルス)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、個体内の膀胱癌を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、ウイルスプロモーターに操作可能に連結されている免疫関連分子(例えばサイトカイン又はケモカイン)をコードする核酸と、を含むウイルスベクターを含む、有効量の腫瘍溶解性ウイルス(例えば腫瘍溶解性アデノウイルス)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍特異的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターなど、E2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須なウイルス遺伝子は、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫関連分子をコードする核酸に操作可能に連結されたウイルスプロモーターは、E3プロモーターである。いくつかの実施形態では、免疫関連分子はGM-CSFである。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約6週間、又は3週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0082】
いくつかの実施形態では、個体内の膀胱癌(例えば、TURBTを行わないCIS膀胱癌又はTa若しくはT1グレードの膀胱癌)を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のアデノウイルス血清型5を個体に膀胱内投与することを含み、このとき、天然アデノウイルスの内因性E1aプロモーター及びE3 19kDコード領域は、ヒトE2F-1プロモーター、及び免疫関連分子(サイトカイン又はケモカインなど、例えば、GM-CSF)をコードしている核酸に置換されており、アデノウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体内の膀胱上皮内癌を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のアデノウイルス血清型5を個体に膀胱内投与することを含み、このとき、天然アデノウイルスの内因性E1aプロモーター及びE3 19kDコード領域は、ヒトE2F-1プロモーター、及び免疫関連分子(サイトカイン又はケモカインなど、例えば、GM-CSF)をコードしている核酸に置換されており、アデノウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍特異的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、方法は、アデノウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、アデノウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、アデノウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、アデノウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0083】
いくつかの実施形態では、個体内の膀胱癌(例えば、TURBTを行わないCIS膀胱癌又はTa若しくはT1グレードの膀胱癌)を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のCG0070を個体に膀胱内投与することを含み、このときCG0070は、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体内の膀胱上皮内癌を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のCG0070を個体に膀胱内投与することを含み、このときCG0070は、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、方法は、CG0070の投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、CG0070は、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、CG0070は1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、CG0070は、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0084】
患者集団
本明細書に記載の方法は、様々な膀胱癌を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、個体は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)のガイドラインによるTNM病期分類システムによって判定されるとき、病期Ta、T1、又はCIS(TIS)の膀胱癌を有している。
【0085】
いくつかの実施形態では、膀胱癌はCISである。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、移行上皮癌又は尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、転移性尿路上皮癌である。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、膀胱の尿路上皮に位置する。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、上部尿路内に位置する。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、尿管内にある。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、尿道内にある。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、腎盂内にある。
【0086】
「膀胱上皮内癌」は、病期0is、Tis、扁平、又は膀胱CISとしても知られる、悪性度の高い膀胱癌である。膀胱CISは、膀胱の内壁のみに見られ、膀胱の中空部に向かって成長しておらず、膀胱の厚い筋層又は膀胱の結合組織には広がっていない。膀胱CISは、侵攻性疾患と見なされ、浸潤性膀胱癌の前駆体であると考えられる。膀胱癌についてのNCCNガイドラインによれば、膀胱CISに対する現在の標準的治療は切除術であり、その後にBCGによる膀胱内治療が行われる。BCGは、一般に、週1回6週間にわたって投与され、その後4~6週間の休薬期間があり、完全に再評価されるのは治療開始後12週目である。患者がBCGに耐えられない場合、膀胱内にマイトマイシンCを投与する場合がある。
【0087】
いくつかの実施形態では、個体は、「純粋CIS」又は「CIS」の病理学的病期を有し、このとき個体は、膀胱上皮内癌を1ヶ所以上有している。いくつかの実施形態では、個体は、Tis、N0、M0の病理学的病期を有している。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、原発腫瘍である。いくつかの実施形態では、膀胱CISは、再発腫瘍である。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱上皮内癌を少なくとも約1、2、3、4、5、10ヶ所、又はそれ以上のうちのいずれかの個数を有している。
【0088】
いくつかの実施形態では、個体は、同時に、1ヶ所以上の膀胱上皮内癌、及び1ヶ所以上の病期Ta又はT1の乳頭癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、「CIS+Ta」の病理学的病期を有しており、このとき個体は、同時に、1ヶ所以上の膀胱上皮内癌、及び1ヶ所以上の病期Taの乳頭癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、「CIS+T1」の病理学的病期を有しており、このとき個体は、同時に、1ヶ所以上の膀胱上皮内癌、及び1ヶ所以上の病期T1の乳頭癌を有している。
【0089】
「乳頭癌」とは、膀胱の内側表面から中空の中心部に向かって、細長い指状の突起部を成長させる膀胱腫瘍を指す。乳頭状腫瘍は、多くの場合、膀胱のより深い層内に成長するのではなく、膀胱の中心部に向かって成長する。これらの腫瘍は、非浸潤性乳頭癌と呼ばれる。非常に低いグレード(成長が遅い)の非浸潤性乳頭癌は、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP)と呼ばれる場合がある。
【0090】
病期「Ta」の乳頭癌は、膀胱内壁の表面上に見られる乳頭癌を指す。癌細胞は共に集団化しており、多くの場合、容易に除去され得る。癌は、膀胱壁の筋肉又は結合組織に浸潤していない。Ta乳頭癌はまた、非浸潤性乳頭尿路上皮癌、又は病期0a膀胱癌とも呼ばれる。
【0091】
病期「T1」の乳頭癌は、膀胱内壁を通って固有層内に成長した乳頭癌を指す。膀胱壁の厚い筋層、又はリンパ節若しくは他の臓器には広がっていない。いくつかの実施形態では、癌は、上皮下結合組織に浸潤している。
【0092】
いくつかの実施形態では、個体は、CISに伴い乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、低悪性度又は高悪性度の乳頭癌を有していない。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の乳頭癌を有していない。いくつかの実施形態では、個体は、低悪性度の病期Taの乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の病期Taの乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、低悪性度の病期T1の乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の病期T1の乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、病期Ta又はT1の乳頭癌を併発していない。
【0093】
いくつかの実施形態では、個体は、乳頭癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、CISと併発した低悪性度又は高悪性度の乳頭癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の乳頭癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、低悪性度の病期Taの乳頭癌を併発している。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の病期Taの乳頭癌を併発している。いくつかの実施形態では、個体は、低悪性度の病期T1の乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の病期T1の乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、病期Ta又はT1の乳頭癌を併発していない。
【0094】
いくつかの実施形態では、個体は、CISを伴わずに乳頭癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、低悪性度又は高悪性度の乳頭癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の乳頭癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、低悪性度の病期Taの乳頭癌を併発している。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の病期Taの乳頭癌を併発している。いくつかの実施形態では、個体は、低悪性度の病期T1の乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、高悪性度の病期T1の乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、個体は、CISを伴わずに病期Ta又はT1の膀胱癌を有している。
【0095】
膀胱癌は、尿細胞診、尿道膀胱鏡検査(UCS)、生検(例えば経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT))生検(膀胱腫瘍の経鼻切除、又は「TURBT」など)、コンピュータ断層撮影(CT又はCAT)(例えば、CT尿路造影)、磁気共鳴画像法(MRI、すなわち、MR尿路造影)、ポジトロンCT(PET又はPET-CT)、超音波検査(例えば、腎臓超音波検査)、尿管鏡検査、及びX線撮影(例えば、胸部撮影)が挙げられるが、これらに限定されない、当該技術分野において既知である任意の方法を用いて、検出し、病期分類することができる。膀胱CISの明確な特徴として、CIS細胞の一貫性及び付着性が低下するという事実がある。結果として、尿中により多くの細胞が存在し、それを尿細胞診によって検出することができる。加えて、膀胱CISは、生検時に剥離した上皮の可能性増加と関連している。尿サンプル又は生検サンプル由来の腫瘍細胞は、免疫組織化学法、ELISA、RT-PCR、又は、膀胱CIS又は乳頭状腫瘍に対する尿中マーカーの検出に好適な他の方法を用いて検査できる。蛍光膀胱鏡検査法、例えば、ポルフィリン系光増感剤を用いるものは、CIS病変の検出に特に好適であり得る。
【0096】
したがって、いくつかの実施形態では、膀胱上皮内癌のみを有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。
【0097】
いくつかの実施形態では、膀胱CISを有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含み、個体は、病期Ta又はT1の乳頭癌を併発していない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。
【0098】
いくつかの実施形態では、膀胱CIS(例えば純粋CIS)を有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、CG0070を個体に膀胱内投与することを含み、このときCG0070は、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で、週1回約3週間又は約6週間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、方法は、CG0070の投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、CG0070は、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、CG0070は、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。
【0099】
いくつかの実施形態では、CISを伴う病期T1の膀胱癌を有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、CG0070を個体に膀胱内投与することを含み、このときCG0070は、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で、週1回約3週間又は約6週間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、方法は、CG0070の投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、CG0070は、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、CG0070は、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。
【0100】
いくつかの実施形態では、CISを伴う病期Taの膀胱癌を有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、CG0070を個体に膀胱内投与することを含み、このときCG0070は、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で、週1回約6週間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、方法は、CG0070の投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、CG0070は、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、CG0070は、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。
【0101】
いくつかの実施形態では、CISを伴わない病期T1の膀胱癌を有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、CG0070を個体に膀胱内投与することを含み、このときCG0070は、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で、週1回約6週間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、方法は、CG0070の投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、CG0070は、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、CG0070は、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。
【0102】
いくつかの実施形態では、CISを伴わない病期Taの膀胱癌を有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、CG0070を個体に膀胱内投与することを含み、このときCG0070は、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で、週1回約6週間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、方法は、CG0070の投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、CG0070は、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、CG0070は、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。
【0103】
いくつかの実施形態では、個体は、初期膀胱癌、非転移性膀胱癌、非浸潤性膀胱癌、筋層非浸潤性膀胱癌、原発性膀胱癌、局所進行膀胱癌(例えば局所的に切除不能な進行膀胱癌)、転移性膀胱癌、又は寛解期の膀胱癌を有している。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、切除可能に局在、切除不能に局在、又は切除不能である。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、標準的な膀胱内注入(膀胱内)治療に対して抵抗性があった、高悪性度の筋層非浸潤性癌である。いくつかの実施形態では、個体は、標準的な膀胱内注入(膀胱内)治療に対して抵抗性があった、高悪性度の筋層非浸潤性CISを有している。いくつかの実施形態では、個体は、尿路上皮(すなわち、移行細胞)癌を有している。
【0104】
本明細書で提供される方法は、膀胱癌と診断された又は膀胱癌を有する疑いのある個体(例えば、ヒト)を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、個体は、TURBT又は部分的膀胱切除術などの腫瘍切除を受けている。いくつかの実施形態では、個体は、以前にTURBTのみを受けている。いくつかの実施形態では、個体は、以前に放射線化学療法と同時にTURBTを受けている。いくつかの実施形態では、個体は、以前にTURBTを繰り返し受けている。いくつかの実施形態では、個体は、以前にTURBTを、少なくとも約1、2、3、4回又はそれ以上のうちいずれかの回数受けている。いくつかの実施形態では、個体は、以前にmaximal TURBTを受けている。いくつかの実施形態では、個体は、腫瘍切除を受けていない。膀胱癌についてのNCCNガイドラインによれば、maximal TURBTと同時に放射線化学療法を行うことによる膀胱の保存は、一般に、孤立性腫瘍が小さく、リンパ節転移陰性、上皮内癌がなく、腫瘍に関連した水腎症がなく、かつ、治療前に良好な膀胱機能を有する患者に予定される。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、CG0070による治療の前に、TURBT又は部分的膀胱切除術を受けていない膀胱癌を有する個体の治療に使用することができる。いくつかの実施形態では、個体は、病期Ta又はT1の癌を有している。いくつかの実施形態では、個体は、切除不能か、又は残留疾患があると見なされる。いくつかの実施形態では、個体は、切除に適し得ない基礎的医学症状を有している。
【0106】
したがって、いくつかの実施形態では、切除されていないか、又は切除不可能であると見なされる、病期T1又はTaの膀胱癌を有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、CG0070を個体に膀胱内投与することを含み、このときCG0070は、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で、週1回約6週間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、方法は、CG0070の投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、CG0070は、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、CG0070は、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。
【0107】
いくつかの実施形態では、個体は、部分的膀胱切除術又は根治的膀胱切除術などの膀胱切除術を拒否している。いくつかの実施形態では、個体は、部分的膀胱切除術又は根治的膀胱切除術などの膀胱切除術に適していない。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術への忍容性が低い。いくつかの実施形態では、個体は医学的に手術不能である。いくつかの実施形態では、個体は、以前に放射線外照射療法の過程を終了しており、大きく残った疾患を有している。いくつかの実施形態では、個体は、以前に膀胱保存療法を受けている。いくつかの実施形態では、個体は、高齢患者である。いくつかの実施形態では、個体は、年齢のため膀胱切除術に耐えることができない。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約60、65、70、75、80、85、90、95歳、又はそれ以上のうちのいずれかの年齢である。いくつかの実施形態では、個体は、腎欠損又は腎不全を有している。膀胱癌についてのNCCNガイドラインによれば、部分的膀胱切除術は、十分なマージンを取った部分切除に適した位置の孤立性病変を有するT2筋層浸潤性疾患に対して適応され、上皮内癌がないことをランダム生検によって判定する。根治的膀胱切除術又は膀胱前立腺切除術は、残った高悪性度のT1、及び筋層浸潤性疾患に対して適応される。膀胱摘出術は、患者が治療を受けていない場合、通常は診断の3ヶ月以内に実施される。更に、膀胱切除術は、TURBT又はBCG治療後の、病期Ta、T1又はCISの再発性又は持続性膀胱癌に対して適応される。
【0108】
いくつかの実施形態では、個体は、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインにおいて根治的膀胱切除術に適していない。例えば、個体は、フレイルによって治癒的療法にそぐわない可能性がある。本発明の方法の前に、かかる個体は、典型的には、化学療法を行わずに緩和的放射線療法を受けた(3.5Gy/フラクションで10回、又は7Gy/フラクションで7回、TURBT、又は治療なし)。
【0109】
いくつかの実施形態では、個体は、American Society of Anesthesiology(ASA)ガイドラインに基づき、根治的膀胱切除術に耐えられない。例えば、根治的膀胱切除術に耐えられない個体は、全身麻酔又は硬膜外麻酔を必要とする手術には、医学的に不適合であると考えられ得る。
【0110】
他の実施形態では、個体は、American Society of Anesthesiologistsが提供するComprehensive Geriatric Assessmentによって判定される、術後ケアの体制や介護者がいない場合がある。これらのガイドラインでは、正常で独立した毎日の生活活動ができず、重度の栄養異常、認知障害、又は、高齢者に対するcumulative illness rating scale(CISR-G)グレード3~4の合併症を示している場合、個体はフレイルであると見なされる。
【0111】
したがって、いくつかの実施形態では、膀胱癌を有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含み、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。
【0112】
本発明の方法はまた、膀胱の除去を求める標準的な治療レジメンと比較して、重要かつ有意な治療効果も提供する。本発明はまた、膀胱切除術に適しているが、膀胱切除術を選択しなかった個体に対する、膀胱温存プロトコールとして有用であるという利点も有する。本発明の方法は、現在利用可能な治療と比較して、膀胱癌の発症後に膀胱を保持でき、個体の生活の質を大幅に向上させる結果となる。
【0113】
したがって、いくつかの実施形態では、膀胱を温存する方法が本明細書に提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含み、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。
【0114】
いくつかの実施形態では、個体は、以前に膀胱癌に関して治療されている(「前治療」とも称する)。いくつかの実施形態では、前治療は、手術(例えば経尿道的膀胱腫瘍切除術、又は部分的膀胱切除)、膀胱内治療(例えばBCG又は膀胱内化学療法)、放射線療法、化学療法、免疫療法、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、1種以上(1、2、3、4、5種又はそれ以上)の治療モダリティを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、BCG療法後、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12ヶ月後に再発した個体に特に適している。いくつかの実施形態では、この方法は、BCG療法を受けた少なくとも9ヶ月後に再発した個体に特に好適である。いくつかの実施形態では、個体は、CISを有している。
【0116】
いくつかの実施形態では、個体は、以前に膀胱癌に関して標準的治療で治療されている。いくつかの実施形態では、個体は、以前に非浸潤性乳頭癌に関して標準的治療で治療されている。いくつかの実施形態では、個体は、以前に膀胱CISに関して標準的治療で治療されている。いくつかの実施形態では、従来の標準的治療は、膀胱内化学療法又は膀胱内免疫療法などの膀胱内療法である。いくつかの実施形態では、前標準的治療はマイトマイシンCによる治療である。いくつかの実施形態では、前標準的治療はインターフェロン(インターフェロンαなど)による治療である。いくつかの実施形態では、前標準的治療は、白金系薬剤による治療である。いくつかの実施形態では、前標準的治療は、マイトマイシン及びチオテパによる治療である。いくつかの実施形態では、前標準的治療は、シスプラチン、ドキソルビシン、ゲムシタビン、及びバルルビシンによる治療である。いくつかの実施形態では、前標準的治療は、BCG治療である。
【0117】
いくつかの実施形態では、個体は、寛解期の膀胱CIS、進行性膀胱CIS、持続性膀胱CIS、又は再発性膀胱CISを有している。いくつかの実施形態では、個体は、他の薬剤(例えばBCG又は化学療法剤)による膀胱CISの治療に抵抗性がある。いくつかの実施形態では、個体は、初期に他の薬剤(例えばBCG又は化学療法剤)による膀胱CISの治療に応答しているが、治療後に進行している。いくつかの実施形態では、個体は、TURBTを受けた後に持続性又は再発性膀胱CISを有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱内BCG又は膀胱内化学療法(例えば、マイトマイシンC)などの膀胱内治療を受けた後に、持続性又は再発性膀胱CISを有している。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも2回の連続サイクルの膀胱内治療、及び/又は、少なくとも2回の膀胱内薬剤(例えば、膀胱内BCGとその後の膀胱内マイトマイシンC)を受けた後に、持続性又は再発性膀胱CISを有している。いくつかの実施形態では、個体は、TURBTと1種以上の膀胱内療法との組み合わせを受けた後に、持続性又は再発性膀胱CISを有している。
【0118】
いくつかの実施形態では、個体は、前治療(前標準的治療、例えば、膀胱内BCGなど)後に、再発性膀胱CIS(例えば純粋CIS)を有している。例えば、個体は、初期に前治療に対して応答性であり得るが、前治療を中止すると、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、又は60ヶ月のいずれか後に膀胱CISを発症する。
【0119】
いくつかの実施形態では、個体は、以前にBCG治療を受けている。いくつかの実施形態では、個体は、以前に、少なくとも1回(例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6回、又はそれ以上のうちのいずれか)の膀胱内BCG治療を受けている。いくつかの実施形態では、膀胱内BCG治療は、少なくとも約4週間、例えば、少なくとも約5、6、7、8、9週間、又はそれ以上のいずれかの間、週1回膀胱内にBCG注入を行うことを含む。いくつかの実施形態では、個体は、以前に、導入コースの膀胱内BCG治療(例えば、約4~約9、例えば、約6週間のBCG投与)を受けている。いくつかの実施形態では、個体は、以前に、導入コースと、少なくとも1回の維持コースの膀胱内BCG治療受けている。いくつかの実施形態では、個体は、以前に、6~233kの導入コースのBCGと、その後の約3、6、12、18、24、30、及び36ヶ月のうちのいずれかにおける3週間の注入による維持を受けている。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約3ヶ月間、例えば少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36ヶ月間以上のうちのいずれかにわたる、維持膀胱内BCG治療中である。いくつかの実施形態では、個体は、本出願のウイルス治療を受ける前に、約12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ヶ月のうちのいずれか以内にBCG治療を受けている。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱内BCG治療後に重篤な有害作用を有している。いくつかの実施形態では、個体は、細菌尿症、持続性肉眼的血尿、持続性の重篤な局所症状、又は全身症状を有している。いくつかの実施形態では、個体は、投与量を下げた後でも膀胱内BCG治療に耐えることができない。
【0120】
いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に失敗している。いくつかの実施形態では、個体は、BCGの最終投与後、約24、22、20、18、16、14、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ヶ月のうちいずれか以内にBCG治療に失敗している。いくつかの実施形態では、個体は、導入コースの膀胱内BCG治療に失敗している。いくつかの実施形態では、個体は、維持コース中又は維持コース後にBCG治療に失敗している。
【0121】
いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しない。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に対した部分奏功を有した。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療の有害作用に耐えることができなかった。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、BCGの最終投与後(例えばBCG導入又はBCG維持)、約24、22、20、18、16、14、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ヶ月のうちいずれか以下の後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療の維持コースを受けたにもかかわらず、疾患進行を有している。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療前に膀胱CISを有していた。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療前に膀胱CISを有していなかった。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療前に乳頭状腫瘍(例えば病期Ta又はT1)を有していた。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療前に膀胱CISと乳頭状腫瘍(例えば病期Ta又はT1)の両方を有していた。
【0122】
したがって、いくつかの実施形態では、個体内のBCG非反応性筋層非浸潤性膀胱癌(例えばBCG非反応性膀胱CIS)を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱CISのみを有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば6週間)にわたって投与される。
【0123】
いくつかの実施形態では、膀胱CISを有する個体を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含み、個体は、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱CISのみを有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。
【0124】
エンドポイント
いくつかの実施形態では、この方法は、個体内の膀胱癌の進行を予防する。いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも約3、6、9、12、18、24、30、36、42、48、54、60ヶ月、又はそれ以上のうちのいずれかまで、筋層非浸潤性膀胱癌の筋層浸潤性膀胱癌への進行を予防する。
【0125】
いくつかの実施形態では、膀胱癌を有する個体における疾患進行を予防する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0126】
いくつかの実施形態では、この方法は、膀胱癌の成長を阻止し、又は膀胱癌のサイズを縮小する。いくつかの実施形態では、膀胱癌のサイズは、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、又は100%のうち、任意のものを含む)縮小する。
【0127】
いくつかの実施形態では、膀胱癌を有する個体における腫瘍増殖を阻止する、又は腫瘍サイズを縮小する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0128】
いくつかの実施形態では、この方法は、個体における疾患寛解(部分又は完全)をもたらす。いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約2、3、4、5、6、12、24ヶ月、又はそれ以上のうちのいずれかにわたって疾患寛解している。
【0129】
いくつかの実施形態では、膀胱CIS(例えば純粋CIS)を有する個体において疾患寛解(例えば部分又は完全寛解)をもたらす方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。
【0130】
いくつかの実施形態では、この方法は、個体における腫瘍転移を阻害する。いくつかの実施形態では、少なくとも約10%(例えば少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、又は100%のうち、任意の割合を含む)の転移が阻害される。いくつかの実施形態では、リンパ節への転移を阻害する方法が提供される。いくつかの実施形態では、肺への転移を阻害する方法が提供される。転移は、血液検査、骨スキャン、x線検査、CT検査、PET検査、及び生検などの、当該技術分野において任意の既知の方法によって評価できる。
【0131】
いくつかの実施形態では、膀胱癌を有する個体における腫瘍転位を阻害する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0132】
いくつかの実施形態では、この方法は、個体の生存期間(例えば、無病生存期間、無増悪生存期間、又は無膀胱切除生存期間)を延長する。いくつかの実施形態では、生存期間は、少なくとも約2、3、4、5、6、12、24ヶ月、又はそれ以上延長される。
【0133】
いくつかの実施形態では、膀胱癌を有する個体の生存期間(例えば、無病生存期間、無増悪生存期間、又は無膀胱切除生存期間)を延長する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0134】
いくつかの実施形態では、この方法は、個体の生活の質を改善する。いくつかの実施形態では、個体は、本出願のウイルス療法を受けた後、少なくとも約3、6、9、12、18、24、30、36、42、48、54、60ヶ月、又はそれ以上のうちのいずれかにわたり、膀胱切除術(例えば、部分的膀胱切除術又は根本膀胱切除術)を必要としない。いくつかの実施形態では、本出願の方法は、個体における根治的膀胱切除術の必要性を遅延する、又はなくすため、個体は、根治的膀胱切除術後の再建手術による望まれない副作用に悩まされず、他の膀胱CIS患者と比較して改善された生活の質を享受する。
【0135】
いくつかの実施形態では、膀胱CIS(例えば純粋CIS)を有する個体の生活の質を改善する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0136】
いくつかの実施形態では、個体に膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を受けさせることなく、個体内の膀胱癌を治療する方法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0137】
いくつかの実施形態では、個体内の膀胱CIS(例えば純粋CIS)を治療する膀胱保存法が提供され、この方法は、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することを含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に、形質導入増強剤(DDMなど)を個体に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3週間、又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。
【0138】
治療レジメン
腫瘍溶解性ウイルスの膀胱内投与は、比較的簡便でしかも効果的に膀胱内腫瘍を腫瘍溶解性ウイルスに暴露させるまたとない機会を提供すると同時に、他の組織への毒性を潜在的に減少させる。腫瘍溶解性ウイルスの好適な用量は、腫瘍溶解性ウイルスの性質、治療される膀胱上皮内癌、及び投与経路などの要因によって左右される。本明細書で使用するとき、腫瘍溶解性ウイルスに関連するものとしての「粒子」は、腫瘍溶解性ウイルスの物理的な単数単位の集合的な数を意味する。この数は、当該技術分野において周知のとおり、感染力価単位を意味する別の数、例えば、プラーク形成単位(pfu)又は国際単位へ、感染性アッセイによって換算することができ、又はこうした別の数と同等である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×105粒子、1×106粒子、1×107粒子、1×108粒子、1×109粒子、1×1010粒子、2×1010粒子、5×1010粒子、1×1011粒子、2×1011粒子、5×1011粒子、1×1012粒子、2×1012粒子、5×1012粒子、1×1013粒子、2×1013粒子、5×1013粒子、1×1014粒子、又は1×1015粒子のうちのいずれか1つの用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×105粒子~約1×106粒子、約1×106粒子~約1×107粒子、約1×107粒子~約1×108粒子、約1×108粒子~約1×109粒子、約1×109粒子~約1×1010粒子、約1×1010粒子~約1×1011粒子、約1×1011粒子~約5×1011粒子、約5×1011粒子~約1×1012粒子、約1×1012粒子~約2×1012粒子、約2×1012粒子~約5×1012粒子、約5×1012粒子~約1×1013粒子、約1×1013粒子~約1×1014粒子、又は約1×1014粒子~約1×1015粒子のうちのいずれか1つの用量で投与される。
【0139】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1日に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、1週間に少なくとも約1回、2回、3回、4回、5回、6回、又は7回(すなわち、毎日)のうちのいずれか1つで投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、途切れることなく1週間に1回、3週間のうちの2週間について1週間に1回、4週間のうちの3週間について1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回で、4週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、1ヶ月に1回、又は2~12ヶ月毎に投与される。いくつかの実施形態では、それぞれの投与の間の間隔は、約6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、20日、15日、12日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、又は1日のうちのいずれか1つより短い。いくつかの実施形態では、それぞれの投与の間の間隔は、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、又は12ヶ月のうちのいずれか1つよりも長い。いくつかの実施形態では、投薬スケジュールに途切れは存在しない。いくつかの実施形態では、それぞれの投与の間の間隔は、約1週間以下である。
【0140】
腫瘍溶解性ウイルスの投与は、約1ヶ月~約7年など、長期間にわたることができる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、48、60、72、又は84ヶ月のうちのいずれか1つの期間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、少なくとも4週間又は6週間の期間にわたって投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、3ヶ月ごとに4週間にわたって1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、3ヶ月ごとに6週間にわたって1週間に1回投与される。
【0141】
いくつかの実施形態では、各治療コースは、約3週間又は約6週間にわたる腫瘍溶解性ウイルスの毎週投与を含む。いくつかの実施形態では、各治療コース間の間隔は、少なくとも約1、2、3、4、5、6ヶ月、又はそれ以上のうちいずれかである。いくつかの実施形態では、各治療コース間の間隔は、約6、5、4、3、2、1ヶ月、又はそれ以下のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、治療コースは、少なくとも1回、例えば少なくとも約1、2、3、4、5、6回又はそれ以上のうちいずれかの回数繰り返される。いくつかの実施形態では、個体は、腫瘍溶解性ウイルスの初期コースと、後続の維持コースで治療される。いくつかの実施形態では、初期コース及び維持コースは、同じ用量及びスケジュールを有する。いくつかの実施形態では、初期コース及び維持コースは、異なる用量及び/又はスケジュールを有する。
【0142】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、カテーテルを介して溶液として注入することによって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱内注入(intravesical installation)に使用される溶液の総体積は、約1mL、10mL、50mL、75mL、100mL、125mL、150mL、200mL、250mL、300mL、400mL又は500mLのうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、膀胱内注入に使用される溶液の総体積は、約1mL~約10mL、約10mL~約50mL、約50mL~約75mL、約75mL~約100mL、約100mL~約125mL、約75mL~約125mL、約100mL~約150mL、約150mL~約200mL、約200mL~約300mL、約300mL~約400mL、約400mL~約500mL、約50mL~約500mL、約50mL~約250mL、又は約100mL~約250mLのうちのいずれかである。
【0143】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1015粒子(約1×1011~約1×1014粒子など、例えば約1×1012粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、点滴注入によって約50~約500mL(約100mLなど)の量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約50mL中約1×1012個の用量で投与される。
【0144】
腫瘍溶解性ウイルスの溶液は、膀胱腫瘍細胞の間で腫瘍溶解性ウイルスの均一分布又は十分な暴露を達成するために、排尿前に一定時間膀胱内に保持されてよい。いくつかの実施形態では、溶液は、少なくとも約5分、10分、15分、20分、30分、45分、1時間、2時間、又はそれ以上のうちのいずれかにわたって個体の膀胱内に保持される。いくつかの実施形態では、溶液は、約5分~約10分、約10分~約15分、約10分~約20分、約20分~約30分、約30分~約45分、約45分~約50分、約50分~約1時間、約5分~約15分、約10分~約30分、約30分~約1時間、又は約1時間~約2時間のうちのいずれかにわたって個体の膀胱内に保持される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)は、約45分~約50分にわたって個体の膀胱内に保持される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの膀胱内投与の効率は、有効量の形質導入増強剤(DDMなど)の膀胱内投与を含む前処置によって更に高まる。
【0145】
本明細書に記載の方法は、腫瘍溶解性ウイルスの投与に先立って前処置組成物を個体に膀胱内投与する工程を更に含んでよい。いくつかの実施形態では、前処置組成物は、N-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)などの形質導入増強剤を含む。DDMは、1本の12炭素鎖で誘導体化されたマルトースからなる非イオン界面活性剤であり、中性洗剤及び可溶化剤として作用する。これは、食品添加物として使用されてきたものであり、おそらく膜結合性GAG及び密着結合に対するその作用により、げっ歯類において粘膜面浸透を増強することで知られている。
【0146】
いくつかの実施形態では、個体内の膀胱癌を治療する方法が提供され、この方法は、(1)形質導入増強剤(例えばDDM)を個体に膀胱内投与することと、続いて、(2)腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することと、を含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。いくつかの実施形態では、個体は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に切除を受けない。いくつかの実施形態では、個体は、Ta又はT1膀胱癌を有し、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、Ta又はT1の切除不可能な膀胱癌である。いくつかの実施形態では、形質導入増強剤を個体に膀胱内投与する前に、生理食塩水洗浄が実施される。
【0147】
いくつかの実施形態では、膀胱癌(例えば、TURBTを行わないCIS膀胱癌又はTa若しくはT1グレードの膀胱癌)を治療する方法が提供され、この方法は、(1)膀胱内生理食塩水洗浄液を投与することと、(2)形質導入増強剤(例えばDDM)を膀胱内洗浄投与することと、(3)形質導入増強剤(例えばDDM)を個体に膀胱内注入により投与することと、続いて、(4)腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を個体に膀胱内投与することと、を含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍選択的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫チェックポイント調節剤と併用して投与されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、単一の治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、個体は、BCG治療に反応しないか、BCG治療後の疾患再発を有している。いくつかの実施形態では、個体は、膀胱切除術(例えば根治的膀胱切除術)を拒否したか、適していない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1×108~約1×1014個のウイルス粒子(例えば約1×1012個のウイルス粒子)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは1週間に1回投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、約1週間~約6週間(例えば約3又は6週間)にわたって投与される。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta又はT1グレードの膀胱癌である。いくつかの実施形態では、個体は、Ta又はT1膀胱癌を有し、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていない。いくつかの実施形態では、膀胱癌は、Ta又はT1の切除不可能な膀胱癌である。いくつかの実施形態では、個体は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前に切除を受けない。いくつかの実施形態では、形質導入増強剤は、膀胱内注入中に12~15分間膀胱内に保持される。いくつかの実施形態では、生理食塩水によるリンスは、形質導入増強剤の膀胱内注入と、瘍溶解性ウイルスの投与後に投与される。
【0148】
前処置組成物は、膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、前処置組成物は、形質導入増強剤(DDMなど)の溶液を含む。前処置組成物(DDM溶液など)の好適な濃度には、約0.01%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1%、2%、3%、4%、又は5%のうちのいずれか1つの形質導入増強剤(DDMなど)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、前処置組成物は、約0.01%~約0.05%、約0.05%~約0.1%、約0.1%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約2%、約2%~約3%、約3%~約4%、約4%~約5%、約0.01%~約1%、約0.05%~約2%、約1%~約5%、又は約0.1%~約5%のうちのいずれかの形質導入増強剤(DDMなど)を含む。
【0149】
前処置組成物(DDMなど)の好適な用量には、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、150mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、500mg/kg、0.1mg/kg~0.5mg/kg、0.5mg/kg~1mg/kg、1mg/kg~2mg/kg、2mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~25mg/kg、25mg/kg~50mg/kg、50mg/kg~100mg/kg、100mg/kg~150mg/kg、150mg/kg~200mg/kg、200mg/kg~250mg/kg、250mg/kg~500mg/kg、又は0.5mg/kg~約5mg/kgのうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、前処置組成物の好適な用量は、約0.1g、0.2g、0.5g、0.75g、1g、1.5g、2g、2.5g、5g、又は10gのうちのいずれか1つの形質導入増強剤(DDMなど)である。
【0150】
いくつかの実施形態では、前処置工程は、腫瘍溶解性ウイルスの投与に先立って個体内の膀胱の管腔側を前処置組成物と接触させることによって行われる。例えば、前処置組成物は、約0.01%~約0.5%(0.05~約0.2%など、例えば約0.1%)の形質導入増強剤(DDMなど)を含んでよい。いくつかの実施形態では、前処置組成物(DDMなど)の総体積は、約10mL~約1000mL(約10mL~約100mL、約100mL~約500mL、又は約500mL~約1000mLなど)である。いくつかの実施形態では、前処置組成物は、約0.1%のDDMを含む。いくつかの実施形態では、前処置組成物の好適な用量は、約0.1g、0.2g、0.5g、0.75g、1g、1.5g、2g、2.5g、5g、又は10gのうちのいずれか1つの形質導入増強剤(DDMなど)である。いくつかの実施形態では、有効量の前処置組成物は、約1gのDDM(例えば、100mLの0.1%DDM溶液)である。
【0151】
いくつかの実施形態では、前処置組成物(DDMなど)は、腫瘍溶解性ウイルスの投与直前(投与前の5分以内など)に投与される。いくつかの実施形態では、前処置組成物(DDMなど)は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前の約5分、10分、15分、20分、30分、45分、1時間、90分、2時間、3時間又は4時間のうちのいずれか以内に投与される。いくつかの実施形態では、前処置組成物(DDMなど)は、腫瘍溶解性ウイルスの投与前の約2時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、前処置組成物(DDM溶液など)は、少なくとも約5分、10分、15分、又は20分のうちのいずれか1つにわたって膀胱内に保持される。いくつかの実施形態では、前処置組成物(DDM溶液など)は、約5分~約10分、約10分~約15分、約12分~約15分、約15分~約20分、又は約10分~約20分のいずれかにわたって膀胱内に保持される。いくつかの実施形態では、前処置組成物(DDM溶液など)は、約12分~約15分にわたって膀胱内に保持される。
【0152】
いくつかの実施形態では、前処置工程は、腫瘍溶解性ウイルスの投与に先立って個体内の膀胱の管腔側を前処置組成物と接触させることによって行われる。いくつかの実施形態では、方法は、前処置組成物と接触する膀胱の管腔側を洗浄することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、膀胱を前処置組成物と接触させた後に腫瘍溶解性ウイルスの投与に先立って膀胱の管腔側を洗浄することを更に含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、前処置工程は、75mL又は100mLの前処置組成物(例えばDDM溶液)を、膀胱内注入することを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、個体はヒト個体である。いくつかの実施形態では、膀胱上皮内癌を治療されている個体は、本明細書に記載の状態のうちの1つ以上を有するものとして特定されている。熟練した医師による本明細書に記載される状態の特定は、当該技術分野において日常的な作業であり(例えば、血液検査、X線、超音波、CTスキャン、PETスキャン、PET/CTスキャン、MRIスキャン、PET/MRIスキャン、核医学ラジオアイソトープスキャン、内視鏡検査、生検、血管造影検査、CT血管造影検査などによる)、また個体又は他者によって、例えば、腫瘍増殖、出血、潰瘍形成、痛み、増大したリンパ節、咳、黄疸、腫大、体重減少、悪液質、発汗、貧血症、腫瘍随伴症の事象、血栓症などにより、これらの容態であると推測されてもよい。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記載の治療方法のうちのいずれか1つのために、遺伝子プロファイリング、家族歴、病歴(例えば、関連する容態の発現及びウイルス感染歴)、生活様式又は習慣を含むがこれらに限定されない、当業者によって理解される複数の危険因子及び/又は診断手法のうちのいずれか1つ以上に基づいて選択される。
【0155】
腫瘍溶解性ウイルス
本明細書に記載の方法及び組成物は、腫瘍溶解性ウイルス、例えば、腫瘍溶解性アデノウイルスに関する。腫瘍溶解性ウイルスは、天然に存在するウイルス、又は遺伝子操作されたウイルス、例えば弱毒化ウイルス、及び/若しくは、追加的な好ましい特徴を有するウイルス(例えば、癌細胞中での優先的複製、若しくは免疫関連分子のコード)であってよい。
【0156】
本発明で使用するのに適している例示的なウイルスには、アデノウイルス、例えば、H101(ONCOCRINE(登録商標))、CG-TG-102(Ad5/3-D24-GM-CSF)、及びCG0070;単純ヘルペスウイルス、例えば、Talimogene laherparapvec(T-VEC)及びHSV-1716(SEPREHVIR(登録商標));レオウイルス、例えば、REOLYSIN(登録商標);ワクシニアウイルス、例えば、JX-594;セネカバレーウイルス、例えば、NTX-010及びSVV-001;ニューカッスル病ウイルス、例えば、NDV-NS1及びGL-ONC1;ポリオウイルス、例えば、PVS-RIPO;麻疹ウイルス、例えば、MV-NIS;コクサッキーウイルス、例えば、CAVATAK(商標);水疱性口内炎ウイルス;マラバ及びラブドウイルス;パルボウイルス並びに流行性耳下腺炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、野生型腫瘍溶解性ウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは遺伝改変される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、(例えば、複数回の継代、不活性化又は遺伝子改変によって)弱毒化される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは増殖性である。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、Rb経路に欠失のある癌細胞などの癌細胞内で優先的に複製する。
【0158】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス(例えば腫瘍溶解性アデノウイルス)は、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターを含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍特異的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は以下に示す配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターなど、E2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須なウイルス遺伝子は、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される。
【0159】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス(例えば腫瘍溶解性アデノウイルス)は、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍選択的プロモーターを含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は以下に示す配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターなど、E2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須なウイルス遺伝子は、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される。
【0160】
配列番号1(E2F-1プロモーター)
gggcccaaaattagcaagtgaccacgtggttctgaagccagtggcctaaggaccacccttgcagaaccgtggtctccttgtcacagtctaggcagcctctggcttagcctctgtttctttcataacctttctcagcgcctgctctgggccagaccagtgttgggaggagtcgctactgagctcctagattggcaggggaggcagatggagaaaaggagtgtgtgtggtcagcattggagcagaggcagcagtgggcaatagaggaagtgagtaaatccttgggagggctccctagaagtgatgtgttttctttttttgttttagagacaggatctcgctctgtcgcccaggctggtgtgcagtggcatgatcatagctcactgcagcctcgacttctcgggctcaagcaatcctcccacctcagcctcccaagtagctgggactacgggcacacgccaccatgcctggctaatttttgtattttttgtagagatgggtcttcaccatgttgatcaggctggtctcgaactcctgggctcatgcgatccaccccgccagctgattacagggattccggtggtgagccaccgcgcccagacgccacttcatcgtattgtaaacgtctgttacctttctgttcccctgtctactggactgtgagctccttagggccacgaattgaggatggggcacagagcaagctctccaaacgtttgttgaatgagtgagggaatgaatgagttcaagcagatgctatacgttggctgttggagattttggctaaaatgggacttgcaggaaagcccgacgtccccctcgccatttccaggcaccgctcttcagcttgggctctgggtgagcgggatagggctgggtgcaggattaggataatgtcatgggtgaggcaagttgaggatggaagaggtggctgatggctgggctgtggaactgatgatcctgaaaagaagaggggacagtctctggaaatctaagctgaggctgttgggggctacaggttgagggtcacgtgcagaagagaggctctgttctgaacctgcactatagaaaggtcagtgggatgcgggagcgtcggggcggggcggggcctatgttcccgtgtccccacgcctccagcaggggacgcccgggctgggggcggggagtcagaccgcgcctggtaccatccggacaaagcctgcgcgcgccccgccccgccattggccgtaccgccccgcgccgccgccccatcccgcccctcgccgccgggtccggcgcgttaaagccaataggaaccgccgccgttgttcccgtcacggacggggcagccaattgtggcggcgctcggcggctcgtggctctttcgcggcaaaaaggatttggcgcgtaaaagtggccgggactttgcaggcagcggcggccgggggcggagcgggatcgagccctcgccgaggcctgccgccatgggcccgcgccgccgccgccgcctgtcacccgggccgcgcgggccgtgagcgtcatg
【0161】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス(例えば腫瘍溶解性アデノウイルス)は、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結された腫瘍細胞特異性プロモーターと、ウイルスプロモーターに操作可能に連結された免疫関連分子(例えば、サイトカイン又はケモカイン)をコードする核酸と、を含む、ウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍特異的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターなど、E2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須なウイルス遺伝子は、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫関連分子をコードする核酸に操作可能に連結されたウイルスプロモーターは、E3プロモーターである。いくつかの実施形態では、免疫関連分子はGM-CSFである。
【0162】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス(例えば腫瘍溶解性アデノウイルス)は、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結された腫瘍細胞選択的プロモーターと、ウイルスプロモーターに操作可能に連結された免疫関連分子(例えば、サイトカイン又はケモカイン)をコードする核酸と、を含む、ウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍選択的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターなど、E2F-1プロモーターである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須なウイルス遺伝子は、E1A、E1B、及びE4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、免疫関連分子をコードする核酸に操作可能に連結されたウイルスプロモーターは、E3プロモーターである。いくつかの実施形態では、免疫関連分子はGM-CSFである。
【0163】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはアデノウイルス5血清型であり、天然アデノウイルスの内因性E1aプロモーター及びE3の19kDのコード領域が、ヒトE2F-1プロモーター及び免疫関連分子(例えば、サイトカイン又はケモカイン、例えば、GM-CSF)をコードする核酸に置き換わっている。いくつかの実施形態では、腫瘍特異的プロモーターは、ヒトE2F-1プロモーター又は配列番号1に記載されたヌクレオチド配列を含むE2F-1プロモーターである。
【0164】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはCG0070、すなわち、E1a遺伝子におけるE2Fプロモーター及びE3遺伝子におけるGM-CSF発現を有するアデノウイルス血清型5である。
【0165】
CG0070は、Rb経路欠失癌細胞内で優先的に増殖し、同癌細胞を殺傷するように設計された、条件付き複製の腫瘍溶解性アデノウイルス(血清型5)である。このベクターは、Rb経路欠失腫瘍細胞内でアップレギュレートされるプロモーター(例えば、E2F-1プロモーター)によって転写調節される。全ての癌のおよそ85%では、腫瘍サプレッサRb遺伝子など、Rb経路の1つ以上の遺伝子は、変異している。その制限された増殖に加えて、CG0070は、感染した腫瘍細胞中で選択的に発現し、未感染の遠位部(例えば、転移)及び局所腫瘍病巣に対する免疫応答刺激する、ヒトサイトカインGM-CSFもコードする。
【0166】
腫瘍溶解性アデノウイルスベクターCG0070のゲノム構造遺伝子構造は、
図1に模式的に示されている。アデノウイルスの初期E1A遺伝子の生産物は、アデノウイルスのゲノムの他の領域の効率的な発現のために必須である。CG0070は、ヒトE2F-lプロモーターの制御下でE1A遺伝子を発現するように操作されており、ヒトE2F-lプロモーターは、E1A遺伝子生産物に腫瘍特異性を与える。E1A発現を活性化する転写リードスルーから保護するために、ポリアデニル化シグナル(PA)がE2F-1プロモーターの5’に挿入された。CG0070は、19kDコード領域を除いた野生型E3領域全体を含む。E3含有とE3削除の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの直接比較により、腫瘍拡散及び効果においてE3含有ベクターの優位性が示された。19kD遺伝子の代わりに、CG0070は、内因性E3プロモーター(E3P)の制御下でヒトGM-CSFのcDNAを保持する。同様にE3プロモーターはE1Aによって活性化されるので、最終的に、ウイルス複製及びGM-CSF発現の両方がE2F-lプロモーターの制御下にある。E2、E4、後期タンパク質領域及び逆位末端配列(ITR)を含む、ウイルスベクターバックボーンの残りの部分は、野生型Ad5ゲノムと全く同じである。
【0167】
CG0070は、HeLa-S3細胞内で製造され、感染したHeLa-S3細胞から洗浄性細胞溶解によって放出される。CG0070は、クロマトグラフィーによって可溶化液から精製され、次いで、5%スクロース、10mMトリス、0.05%ポリソルベート-80、1%グリシン、1mM塩化マグネシウム、pH7.8で配合される。
【0168】
CG0070は、ストッパー付きガラスバイアル中の無菌で少し乳白色の凍結した液体として供給される。1mL当たりの粒子濃度(vp/mL)は、CG0070のそれぞれのロットの分析証明書に記載される。
【0169】
CG0070は、持続性の抗腫瘍免疫を生成するための鍵となるサイトカインである、ヒトGM-CSFのcDNAを保持することから、追加の潜在的な抗腫瘍活性を有する。したがって、CG0070は、2つの機序、すなわち、増殖するベクターとしての直接の細胞毒性及び宿主免疫応答の誘導によって、腫瘍を攻撃するための潜在能力を有する、優先的に増殖する腫瘍溶解性ベクターである。CG0070の腫瘍選択性及び抗腫瘍活性及び安全性を明らかにするために、in vitro及びin vivo試験が行われている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20150190505号を参照されたい。
III.医薬組成物、キット、及び製造物品
【0170】
別の態様では、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つに有用である、キット、単位用量、及び製品が提供される。
【0171】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)と、医薬的に許容される担体と、を含む医薬組成物が提供され、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。医薬組成物は、本明細書に記載の方法のいずれか1つによる膀胱CIS(例えば純粋CIS)の治療に使用することができる。
【0172】
好適な医薬的担体として、滅菌水;生理食塩水、ブドウ糖;ブドウ糖の水又は生理食塩水溶液;ヒマシ油1モル当たり約30~約35モルのエチレンオキシドを含む、ヒマシ油及びエチレンオキシドの縮合物;液体酸;低級アルカノール;トウモロコシ油などの油;ピーナツ油、ゴマ油などと、脂肪酸のモノ-又はジ-グリセリド、又はホスファチド、例えば、レシチンなどといった乳化剤;グリコール;ポリアルキレングリコール;懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム存在下の水性溶媒;アルギン酸ナトリウム;ポリ(ビニルピロリドン);その他同種のモノを単独で、又はレシチンなどの好適な分散剤と共に;ポリオキシエチレンステアレート;その他同種のものが挙げられる。担体は、浸透増強剤と共に使用する保存安定剤、湿潤剤、乳化剤などといった、補助剤を含んでもよい。最終形態は滅菌でき、また、中空針などの注射器具を容易に通過することもできる。溶媒又は賦形剤を適切に選択することによって、適切な粘度が得られ、維持できる。医薬的担体は、ポリマー系及び非ポリマー系など、薬物送達用の活性又は不活性の賦形剤を含んでよい。他の医薬的に許容される担体及びそれらの処方は、標準処方の論説、例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0173】
本明細書に記載される医薬組成物は、組成物の特性を向上するため、その他の剤、賦形剤、又は安定剤を含んでよい。好適な賦形剤及び希釈剤の例として、ラクトース、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水溶液、シロップ、メチルセルロース、メチル-及びプロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約4.5~約9.0のpH範囲、例えば約5.0~約8.0、約6.5~約7.5、又は約6.5~約7.0のうち任意のpH範囲を有するように配合される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、グリセロールなどの好適な浸透圧調整剤を添加することによって、血液と等張にすることもできる。
【0174】
いくつかの実施形態では、個体内の膀胱上皮内癌(例えば純粋CIS)を治療するためのキットが提供され、このキットは、腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)を含み、このとき腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスの複製に必須のウイルス遺伝子に操作可能に連結されている腫瘍細胞特異的プロモーターと、免疫関連分子をコードしている異種遺伝子と、を含むウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、キットは、N-ドデシル-β-D-マルトシド(DDM)などの形質導入増強剤を含む前処置組成物を更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、上記の方法のうちのいずれか1つを行うためのデバイス、材料、及び/又は説明書を更に含む。膀胱内送達用の医療用デバイスとして、カテーテル、例えば、Rusch 173430 Foley Catheter&BARD LUBRI-SIL Foley Catheter #70516SIを含んでよい。
【0175】
腫瘍溶解性ウイルス(例えばCG0070)の使用に関する説明書は、意図する治療向けの用量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を概ね含む。容器は、単位用量、大量容器(例えば、多用量パッケージ)又は亜単位用量であってよい。例えば、本明細書に開示される十分な用量の腫瘍溶解性ウイルスを含むキットが提供され、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、又はそれ以上のうちのいずれかなど長期間にわたって個体の有効な治療を提供できる。キットはまた、腫瘍溶解性ウイルスの複数回の単位用量と、使用説明書と、を含んでよく、例えば、院内薬局及び調剤薬局など薬局での保管及び使用に十分な量でパッケージ化される。
【0176】
本発明のキットは、好適なパッケージに入っている。好適なパッケージには、バイアル、ボトル、ジャー、可撓性パッケージ(例えば、密閉マイラー又はプラスチック袋)などが挙げられるが、これらに限定されない。キットは、任意追加的に、緩衝材及び解釈的情報など追加構成要素を提供してよい。したがって、本願はまた、バイアル(密閉バイアルなど)、ボトル、ジャー、可撓性パッケージなどを含む製品を提供する。
【0177】
製品は、容器と、この容器上にある又はこの容器に付随したラベル又は添付文書と、を含むことができる。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器などが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されてよい。一般に、容器は、本明細書に記載される膀胱CISの治療に有効な組成物を保持し、無菌アクセスポートを有してもよい。ラベル又は添付文書は、組成物が、個体内の特定の状態を治療するために使用されることを表示する。ラベル又は添付文書は、組成物を個体に投与するための説明書を更に含むことになる。本明細書に記載の併用療法を含む製品及びキットもまた企図される。
【0178】
添付文書は、治療用製品の商品パッケージに習慣的に含まれている、このような治療用製品の使用に関しての指示、使用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を記載している説明書を参照する。いくつかの実施形態では、添付文書は、組成物が膀胱上皮内癌(例えば純粋CIS)の治療に使用されることを示す。
【0179】
加えて、製品は、静菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液及びブドウ糖液など、医薬上許容される緩衝液を含む第2の容器を更に含んでよい。これは、他の緩衝液、希釈液、濾過器、針、及び注射器を含めて、商業上及び利用者の立場からの他の好ましい材料を更に含んでよい。
【実施例】
【0180】
実施例
以下の実施例は、本発明の純粋な例示であると意図されるものであり、したがって、本発明をいかなる方法でも制限しないと見なすべきである。以下の実施例及び詳細な説明は例証のために提供され、それらには限定されない。
【0181】
実施例1:BCG非反応性筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)治療に対するCG0070の第II相臨床実験
この実施例は、BG治療に失敗し、かつ膀胱切除術を拒否した筋層非浸潤性膀胱癌患者における、膀胱内CG0070単剤療法の安全性及び有効性のための、非盲検単一群第II相多施設共同試験について記載する。BCG膀胱内治療(標準治療)に失敗したほとんどのNMIBC(Cis、Ta及び/又はT1を伴うCis、頻繁又は無制御の再発を伴う高悪性度のTa又はT1)患者は、通常は膀胱切除術以外の選択肢がない。膀胱切除術は、主に罹患率、死亡率、及び生活の質問題に関連する手術である。罹患率及び長期にわたる単調な医学的ケアは、膀胱摘出術後の患者の残りの人生に関係する。NMIBC病期のほとんどの患者は、筋肉層への疾患進行や転移の徴候を示しておらず、手術は非常に難しい決断である。この患者集団において、治療選択肢における満たされないニーズが存在する。
【0182】
CG0070は、その欠失した網膜芽腫(Rb)経路を通して膀胱腫瘍細胞を破壊する、複製選択的腫瘍分解性アデノウイルスである。膀胱内CG0070のこれまでの報告では、以前BCGに反応しなかった高悪性度のNMIBC患者において期待できる活性が示されている。しかしながら、症例数が限られているため、特に病理的サブセットについての有効性の分析が妨げられている。CG0070の初回膀胱内投与から6ヶ月の時点で中間解析を行い、病期Ta又はT1の併発乳頭癌を伴う、又は伴わない膀胱上皮内癌(CIS)を有する患者における、CG0070単剤療法の有効性を検討した。
【0183】
試験デザイン
本試験では、各患者に、膀胱内CG0070を、1×1012個のウイルス粒子の用量で週1回6週間にわたって投与した。初回膀胱内介入6ヶ月後において部分奏功又は完全奏功を達成した患者を、週1回6週間の同じ治療コースのCG0070の膀胱内注入で維持した。患者を、3ヶ月毎に24ヶ月間フォローアップした。6ヶ月のフォーアップ時に、患者に膀胱鏡検査、尿細胞診、及び生検を行った。疑わしい病変が見られなかった場合、患者から膀胱のランダム生検を入手した。生検サンプルを各施設及び中央の病理専門医によって評価し、両方の生検結果を用いて治療応答を決定した。
【0184】
試験の主要転帰は、CG0070の初回膀胱内投与の日から18ヶ月の時点で、持続性完全奏功率(DCR)の尺度である。DCRは、少なくとも6ヶ月以上(最初の中間解析)、初回完全奏功確認日から少なくとも12ヶ月以上、及び、初回膀胱内介入日から少なくとも18ヶ月以上持続している、持続性完全奏功の患者の割合として定義される。副次的転帰尺度として、初回膀胱内治療後18ヶ月における無膀胱切除生存期間、初回膀胱内治療後18ヶ月における完全奏功生存期間、初回膀胱内治療後18ヶ月における無増悪期間、初回膀胱内治療後18ヶ月における筋層浸潤性疾患に進行するまでの時間、初回膀胱内治療後18ヶ月及び24ヶ月における全生存期間、24ヶ月までの膀胱切除術又は生検のいずれかの時点での介入前後のPD-L1状態の変化、IHCによる腫瘍部位における癌細胞及び免疫細胞のPD-L1状態、膀胱切除術時点での臓器限局性疾患割合、膀胱切除術時点での所属リンパ節中に癌細胞がない患者割合、初回膀胱内治療後24ヶ月における完全奏功率、少なくとも12ヶ月持続する完全奏功患者の割合、初回膀胱内治療後24ヶ月における疾患退行割合、並びに、12ヶ月未満持続する部分奏功及び/又は完全奏功患者の割合が挙げられる。
【0185】
患者は、研究に適格であるために、以下の条件の全てに適合しなければならない:
1.18歳以上、成人及び高齢者を含む、
2.2004年のWHO分類システムによって定義されるとき、患者は、病態学的に確認された筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の高悪性度疾患(HG)を有していなければならない、
3.患者は、筋層浸潤性疾患を示す徴候を有していてはならない、
4.患者は、病理組織学的に確認された移行上皮(尿路上皮)癌について、十分な生検サンプルを中央病理専門医に提供できなければならない。混合組織構造を有する(ただし50%未満の変異体を有する)尿路上皮腫瘍が適格である、
5.患者は、推奨されるスケジュールによって、少なくとも2回以上の膀胱内前治療を受けていなければならない。BCGは、投与される前治療のうちの1種でなければならない、
6.患者は、6ヶ月以内のBCG導入療法に失敗しているか、又は、BCG治療が成功したものの、後に再発が見られているかのいずれかであってよい。初回の標準的膀胱内BCG療法は、少なくとも6週間の毎週治療を含まなくてはならない(コース当たりの許容可能な注入範囲は4~9である)。2回目のBCG療法は、少なくとも2週間の治療を含まなくてはならない、
7.患者は、登録時又は以前に、Cis又はTa及び/若しくはT1疾患を伴うCisのいずれかを有している。登録時にTa又はT1疾患のみを有する患者、及びCisの病歴がない患者については、直近のいかなる種類の膀胱内治療の12ヶ月以内に発症しなくてはならない疾患再発、又は、BCG維持の18ヶ月以内の疾患再発、又は、BCG導入の24ヶ月以内の疾患再発のいずれかを有していなければならない、
8.T1患者は、直近の生検に含まれた筋肉に徴候を有する必要があり、有さない場合は、登録前に再TURBTを行わなければならない、
9.膀胱切除術が遅れることにより疾患の進行の危険性が増加する場合があり、その結果重篤かつ致命的結果に至る可能性があることについて、治験医師から被験者に明確に説明されており、インフォームドコンセント中の署名された特別な項目において、患者は根治的膀胱切除術を拒否している、
10.患者は、直近の診断手順から10週間以内に試験に参加できなければならず、診断手順は通常、診断的生検、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)、又は積極的な尿細胞診である、
11.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータスが<2、
12.妊娠中又は授乳中でない、
13.妊娠可能性がある患者は、適切な避妊法の利用に同意しなければならない、
14.試験特異的なインフォームドコンセント及び個体健康情報の公表に関するHIPAA委任に同意する、
15.適正なベースラインCBC、腎及び肝機能。パラメーターは、WBC>3000/mm3、ANC>1,000/mm3、ヘモグロビン>9.5g/dL、及び血小板数>100,000/mm3と記載される、適正な腎機能:血清クレアチニン<2.5mg/dL、ビリルビン、AST及びALT、2×正常上限値以下、PT/INR、PTT、及びフィブリノーゲン、施設での許容限界範囲、CG0070の初回投与前の絶対リンパ球数、≧800/μL。
【0186】
以下の除外基準のいずれかに適合する患者は、研究から除外される:
1.膀胱癌に対する以前に全身化学療法又は放射線療法。注:表在性疾患に対する以前の免疫療法又は膀胱内(膀胱内に投与される)化学療法は許容される、
2.ヒト化若しくはヒト治療用モノクローナル抗体への暴露に続いてのアナフィラキシー反応、GM-CSF又は酵母由来製品に対する過敏性、臨床的に意味があるアレルギー反応又は研究薬物中の配合賦形剤のいずれかに対する任意の周知の過敏性若しくは前の反応の病歴、
3.HIV、HBV又はHCVの既知の感染、
4.研究の間に研究実験計画書に明記されていない化学療法又は放射線療法の予期される使用、
5.治験医師の所見において、試験用ベクターの投与が患者を害することになり、有害事象の解釈をあいまいにする、又は適切な外科的切除をできなくする可能性がある、任意の基礎的な病状、
6.登録前28日以内での任意の試験中の臨床試験における全身療法、
7.任意の全身性ステロイド剤(例外:吸入するステロイド又は局所的に適用するステロイド、並びに急性及び慢性の標準用量NSAID、は可)を含む、免疫抑制剤又は免疫調節剤との併用療法。CTスキャンに使用される静脈造影剤に対する反応を防止するために、短期(すなわち、≦1日)のグルココルチコイドの使用は許容される、
8.研究参加の3ヶ月以内のシクロスポリン、抗胸腺細胞グロブリン、又はタクロリムスを含めて、免疫抑制療法、
9.昨年中に、試験用癌ワクチン治療(例えば、樹状細胞療法、熱ショックワクチン)を事前に受けたことがある、
10.尿路上皮癌を除く、病期III以上の癌の病歴。基底細胞皮膚癌又は扁平上皮皮膚癌は十分に治療されていなければならず、また被験者は登録時に無病でなければならない。病期I又はIIの癌の病歴を有する被験者は、十分に治療されていて、かつ、登録時に2年以上無病状態になっていなければならない、
11.進行性又は持続性のウイルス又は細菌感染、
12.全ての感染が解決される必要があり、また患者は試験に組み入れられる前に抗生物質なしの無熱状態を7日間維持しなければならない、
13.特に膀胱感染を含む尿路感染症は、試験に組み入れられる前に解決されなければならない、
14.プロトコール遵守の意思がない若しくはできない、又は治験医師及び施設担当者と全面的に協力する意思がない若しくはできない。
【0187】
中間解析結果
中間解析1
2016年10月の締め切り日での中間解析では、残存する高悪性度のTa、T1、又は上皮内癌(CIS)+/-Ta/T1の36例の患者が、この第II相単一群多施設共同試験(NCT02365818)において6ヶ月のフォローアップを終了していた。組み入れ基準の指示は、以前に、少なくとも2回のCISに対する膀胱内治療を受けており、うち1回がBCG治療であることであった。患者は、6ヶ月以内にBCG導入治療に失敗したか、又はBCGの治療が成功し、後に再発したかのいずれかであった。6ヶ月目の完全奏功(CR)は、細胞診、膀胱鏡検査、及びランダム生検において疾患が見られないこととして定義された。
【0188】
以下の
図2及び表1に示されるように、この中間解析の36例の患者のうち、18例がCIS、4例がCIS+Ta、3例がCIS+T1、8例がTa、及び3例がT1であった。6ヶ月の総CRは44%であった。注目すべきは、6ヶ月のCRは、純粋CIS患者で72.2%、CIS+/-Ta/T1で52%、CIS+Ta/T1で0%、純度Ta/T1で27%であった。CISの非反応者では、6ヶ月時点で持続的CISを有する患者が4例(22%)、CIS+T1に進行したのが1例(5.6%)であった。純粋T1、又はCIS+Ta/T1の患者では、6ヶ月のCRは見られなかった。CIS+Ta/T1の両方の患者(n=7)では、5例が持続的なTa/T1+/-CISを有し、一方、2例は6ヶ月時点の生検においてCISを有していた。
【表1】
【0189】
6ヶ月時点での全ての治療関連有害事象(AE)は、グレード1~3の最も一般的な泌尿器関連事象である、排尿障害(47%)、膀胱痙攣(44%)、血尿(36%)、及び尿意切迫感(33%)であった。免疫学的治療に関連するAEは、倦怠感(11%)及び悪寒(5.6%)を含んでいた。等級3の処理関連AEには、染色剤(5.6%)及び斜辺(2.7%)が含まれた。グレード4/5の治療関連AEは見られなかった。
【0190】
中間解析2
2017年4月14日の締め切り日の中間解析における6ヶ月の臨床反応の結果を表2~5に要約する。
【0191】
病理学的検査若しくは尿細胞診検査、又は直近の病理学的検査のいずれかによって、悪性の徴候を示さない患者は、試験に不適格とした。各患者のベースラインの病期を判定するために、患者サンプルを施設病理専門医及び中央病理専門医によって評価した。施設病理専門医及び中央病理専門医が合意しなかったものの、両者とも悪性であると見なした場合、施設及び中央病理専門医の両方が判定した病期を組み合わせた。施設病理専門医及び中央病理専門医が合意せず、一方のみが悪性であると見なした場合、悪性であると見なした病理専門医が判定した病期を用いて、患者は悪性であるとした。患者サンプルが、施設病理専門医又は中央病理専門医のいずれかによってのみ評価された場合、単一の利用可能な結果を使用した。いずれの病理専門医も悪性と見なさなかったものの、尿細胞診が陽性であった場合、患者の病期を「不明」として注釈を付けた。いずれの病理専門医も悪性と見なさなかったものの、尿細胞診の結果がないか陰性であった場合、患者の病期を「陰性」として注釈を付けた。「乳頭」がある病理報告は、Ta+T1として入力した。「高悪性度UCC」がある病理報告は、固有層(T1)又は筋板(T2)への浸潤が特定されない限り、「Ta」と解釈した。尿細胞診が唯一の評価方法であり、結果が異型又は疑いあり、かつ病理学的報告がなかった場合、病期を「陰性」として注釈を付けた。尿細胞診が唯一の評価方法であり、2回目の尿細胞診結果が陰性であった場合、その時点は陰性であると見なした。
【0192】
患者の臨床反応は、上記ベースラインの病期評価と同じ病期分類の規則を使用して判定した。完全奏功(CR)患者は、CG0070治療後6ヶ月において「陰性」と評価された患者を含む。進行性疾患(PD)患者は、前の時点の評価が「陰性」であり、現時点の評価が「陰性」でなかった患者、及び、T2以上の病期に進行していた患者を含む。
【表2】
*67例のうち22例の患者は、6ヶ月時点で評価不可能(NE)と見なされ、CRではないと仮定した。
【表3】
【表4】
【表5】
【0193】
この第II相試験は、高リスクのBCG非反応性NMIBC患者において、膀胱内CG0070が許容可能なレベルの毒性で6ヶ月時点での46.7%の全完全奏功率をもたらしたことを示す。純粋CIS患者では、特に高い反応と、進行の制限が見られる。この試験の進行中のフォローアップは、BCG非反応性NMIBC集団において貴重なものとなろう。
【0194】
最終結果
CIS、CIS+Ta、CIS+T1、Ta、又はT1の病期の膀胱癌を有する合計67例の患者を、膀胱内CG0070によって治療した。上記のように、6ヶ月及び12ヶ月の時点で、完全奏功について患者を評価した。表7は、BCG非反応性、BCG耐性、及びBCG後再発膀胱癌患者におけるCG0070に対する奏功率を示す。BCG非反応性患者は、6ヶ月で49%の完全奏功率、12ヶ月で30%の完全奏功率を示す。BCG耐性患者は、6ヶ月で56%の完全奏功率、12ヶ月で44%の完全奏功率を示す。最後に、BCG後再発患者は、6ヶ月で35%の完全奏功率、12ヶ月で18%の完全奏功率を示す。これは、CG0070が、BCG非反応性、BCG後再発、及びBCG耐性患者の治療に有効であることを示す。
【表6】
【表7】
【0195】
表8に要約されるように、BCG非反応性膀胱癌患者の反応性を、癌のサブタイプによっても分析した。表8に示されるように、乳頭癌を有する患者は、CIS含有癌患者よりも若干高い完全奏功率を示した(6ヶ月で62%対46%CR、12ヶ月で55%対26%CR)。
【表8】
【0196】
再発までの期間とCG0700療法への反応性との関連性も評価した。CRを達成した後に再発した14例の被験者のうち、64%(9/14)が、3ヶ月でCRを達成した後6ヶ月で再発した。この時点後に再発が生じない場合、CRは、9ヶ月目に開始し持続可能である。CRを達成した後、Ta/T1患者は再発しなかった。
【0197】
まとめると、このCG0700の第II相試験は、CIS含有及び乳頭状膀胱癌の両方の治療に対する有効性を示した。非反応性、BCG耐性、及びBCG後再発膀胱癌の患者は全て、CG0700に対する高い奏功率を示し、これら十分に治療されていなかった患者群に対する有効性を示している。CG0700療法の高い有効性は、根治的膀胱切除術に対する実行可能な代替治療法であり、筋層非浸潤性膀胱癌患者の膀胱の保存を可能にし、これらの患者の生活の質を向上できることを示唆している。
【0198】
実施例2:膀胱癌患者の治療におけるCG0070の第III相臨床試験
この試験は、導入期及び維持期を含むCG0070による治療レジメンの効果を示す。膀胱癌患者に、導入期の0ヶ月目に、週1回6週間にわたりCG0700を投与する。3ヶ月目に、患者を再評価する。持続性疾患を有する患者には導入療法を継続し、3ヶ月目に週1回6週間にわたりCG0070が投与される。完全奏功を示す患者には維持期を開始し、3ヶ月目に週1回3週間にわたりCG0070が投与される。6ヶ月目、維持期において、全患者に週1回3週間にわたりCG0070を投与する。12ヶ月及び18ヶ月目、維持期において、患者に週1回3週間にわたりCG0070を投与する。患者は、最大で21回のCG0700を投与される。完全奏功率を評価する。
【0199】
実施例3:TURBTを受けていないTa又はT1筋層非浸潤性膀胱癌患者の治療
この試験は、例えばネオアジュバント設定中の、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けていないTa又はT1筋層非浸潤性膀胱癌患者の治療効果を示す。TURBTを受けていない患者に、CG0070を投与する。患者には、TURBTに適していない患者、及び切除不可能な病期Ta又はT1膀胱癌を有すると考えられる患者が含まれる。完全奏功率を評価する。