(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】複数の標的核酸の非対称増幅方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20241203BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241203BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
G01N33/50 P
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2022538893
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 CN2020103412
(87)【国際公開番号】W WO2021128823
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】201911367142.0
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519326323
【氏名又は名称】シァメン・ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】フアン、チウイン
(72)【発明者】
【氏名】リ、チンゲ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-510471(JP,A)
【文献】Liu YG. et al.,Biotechniques,2007年,Vol. 43,pp. 649-656
【文献】Liu F. et al.,Biosens Bioelectron,2015年,Vol. 74,pp. 778-785
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1つ以上の標的核酸を含む試料を提供し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを提供するとともに、増幅される各標的核酸についての標的特異的プライマー対を提供する工程であって、
前記第1のユニバーサルプライマーが第1のユニバーサル配列を含み、
前記第1のユニバーサル配列が、前記第1のユニバーサルプライマーの3’部分に位置するか、又は前記第1のユニバーサルプライマーの3’部分を構成し、
前記第2のユニバーサルプライマーが第2のユニバーサル配列を含み、前記第2のユニバーサル配列が第1のユニバーサル配列を含み、かつ前記第1のユニバーサル配列の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチドを更に含み、
前記第2のユニバーサル配列が、前記第2のユニバーサルプライマーの3’部分に位置するか、又は前記第2のユニバーサルプライマーの3’部分を構成し、
前記標的特異的プライマー対が、前記標的核酸を増幅することができ、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み、前記フォワードプライマーが、前記第1のユニバーサル配列と、前記標的核酸に特異的なフォワードヌクレオチド配列とを含み、前記フォワードヌクレオチド配列は、前記第1のユニバーサル配列の3’末端に位置し、前記リバースプライマーが、前記第2のユニバーサル配列と、前記標的核酸に特異的なリバースヌクレオチド配列とを含み、前記リバースヌクレオチド配列は、前記第2のユニバーサル配列の3’末端に位置し、前記第2のユニバーサル配列が、前記フォワードプライマーの相補配列と完全に相補的ではない、工程と、
(2)核酸増幅が可能な条件下で、前記第1のユニバーサルプライマー、前記第2のユニバーサルプライマー、及び前記標的特異的プライマー対を使用して、PCR反応を介して前記試料中の前記標的核酸を増幅する工程と、
を含む、試料中の1つ以上の標的核酸を増幅する方法。
【請求項2】
前記方法が、以下:
(1)前記方法が、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的核酸を増幅するために使用される;
(2)前記方法の工程(1)において、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的特異的プライマー対が提供される;
(3)前記方法の工程(2)において、前記第1のユニバーサルプライマー及び前記第2のユニバーサルプライマーが、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの作用濃度よりも高い作用濃度を有する;
(4)前記方法の工程(2)において、前記第1のユニバーサルプライマー及び前記第2のユニバーサルプライマーが同じ作用濃度を有するか、又は前記第1のユニバーサルプライマーが前記第2のユニバーサルプライマーの作用濃度よりも低い作動濃度を有する;
(5)前記方法の工程(2)において、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーが同じ又は異なる作用濃度を有する;
(6)前記試料又は標的核酸がmRNAを含み、前記方法の工程(2)を実施する前に、前記試料に対して逆転写反応が実施される;並びに、
(7)前記方法の工程(2)において、核酸ポリメラーゼを用いてPCR反応を行う、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、以下:
(1)前記第1のユニバーサルプライマー及び前記第2のユニバーサルプライマーが、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの作用濃度よりも1倍~5倍、5倍~10倍、10倍~15倍、15倍~20倍、20倍~50倍又はそれ以上高い作用濃度を有する;
(2)前記核酸ポリメラーゼが、テンプレート依存性核酸ポリメラーゼである;
(3)前記核酸ポリメラーゼが、DNAポリメラーゼである;
(4)前記核酸ポリメラーゼが、耐熱性DNAポリメラーゼである;
(5)前記核酸ポリメラーゼが、サーマス・アクアティカス(Taq)、サーマス・サーモフィレス(Tth)、サーマス・フィリフォルミス、サーミス・フラバス、サーモコッカス・リテラリス、サーマス・アントラニルダンニイ、サーマス・カルドフルス、サーマス・クリアロフィラス、サーマス・フラバス、サーマス・イグニテラエ、サーマス・ラクテウス、サーマス・オシマイ、サーマス・ルバー、サーマス・ルベンス、サーマス・スコトドクタス、サーマス・シルバヌス、サーマス・サーモフルス、サーモトガ・マリティマ、サーモトガ・ネアポリタナ、サーモシフォ・アフリカヌス、サーモコッカス・リトラリス、サーモコッカス・バロッシ、サーモコッカス・ゴルゴナリウス、サーモトガ・マリティマ、サーモトガ・ネアポリタナ、サーモシフォ・アフリカヌス、パイロコッカス・ウォセイ、パイロコッカス・ホリコシイ、パイロコッカス・アビシ、パイロディクティウム・オカルタム、アクイフェックス・パイロフィルス及びアクイフェックス・エオリエウスから得られる;並びに、
(6)前記核酸ポリメラーゼが、Taqポリメラーゼである、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、以下:
(1)前記第1のユニバーサルプライマーが前記第1のユニバーサル配列からなるか、又は前記第1のユニバーサル配列と追加配列とを含み、前記追加配列が前記第1のユニバーサル配列の5’末端に位置する
;
(2)前記第1のユニバーサルプライマーが5nt~15nt、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、又は40nt~50ntの長さを有する;
(
3)前記第1のユニバーサルプライマー又はその任意の成分が、天然に存在するヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれらからなる;
(
4)前記第2のユニバーサルプライマーが前記第2のユニバーサル配列からなるか、又は前記第2のユニバーサル配列と追加配列とを含み、前記追加配列が前記第2のユニバーサル配列の5’末端に位置する
;
(5)前記第2のユニバーサルプライマーが前記第1のユニバーサル配列を含み、更に、前記第1のユニバーサル配列の3’末端に1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチドを含む;
(
6)前記第2のユニバーサルプライマーが5nt~15nt、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、又は40nt~50ntの長さを有する;並びに、
(
7)前記第2のユニバーサルプライマー又はその任意の成分が、天然に存在するヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれらからなる、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、以下:
(1)前記フォワードプライマーにおいて、前記フォワードヌクレオチド配列が、前記第1のユニバーサル配列の3’末端に直接連結されているか、又はヌクレオチドリンカーを介して前記第1のユニバーサル配列の3’末端に連結される;
(2)前記フォワードプライマーが、前記第1のユニバーサル配列の5’末端に位置する追加配列を更に含む;
(3)前記フォワードプライマーが、5’から3’に、前記第1のユニバーサル配列と前記フォワードヌクレオチド配列とを含む若しくはそれらからなるか、又は5’から3’に、前記第1のユニバーサル配列と、ヌクレオチドリンカーと、前記フォワードヌクレオチド配列とを含む若しくはそれらからなるか、又は5’から3’に、追加配列と、前記第1のユニバーサル配列と、前記フォワードヌクレオチド配列とを含む若しくはそれらからなるか、又は5’から3’に、追加配列と、前記第1のユニバーサル配列と、ヌクレオチドリンカーと、前記フォワードヌクレオチド配列とを含む若しくはそれらからなる;
(4)前記フォワードヌクレオチド配列が、前記フォワードプライマーの3’部分に位置するか、又は前記フォワードプライマーの3’部分を構成する;
(5)前記フォワードヌクレオチド配列が、10nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100ntの長さを有する;
(6)前記フォワードプライマーが、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100nt、100nt~110nt、110nt~120nt、120nt~130nt、130nt~140nt、140nt~150ntの長さを有する;
(7)前記フォワードプライマー又はその任意の成分が、天然に存在するヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれらからなる;
(8)前記リバースプライマーにおいて、前記リバースヌクレオチド配列が前記第2のユニバーサル配列の3’末端に直接連結されているか、又は前記リバースヌクレオチド配列がヌクレオチドリンカーを介して前記第2のユニバーサル配列の3’末端に連結される;
(9)前記リバースプライマーが、前記第2のユニバーサル配列の5’末端に位置する追加配列を更に含む;
(10)前記リバースプライマーが、5’から3’に、前記第2のユニバーサル配列と前記リバースヌクレオチド配列とを含む若しくはそれらからなるか、又は5’から3’に、前記第2のユニバーサル配列と、ヌクレオチドリンカーと、前記リバースヌクレオチド配列とを含む若しくはそれらからなるか、又は5’から3’に追加配列と、前記第2のユニバーサル配列と、前記リバースヌクレオチド配列とを含む若しくはそれらからなるか、又は5’から3’に、追加配列と、前記第2のユニバーサル配列と、ヌクレオチドリンカーと、前記リバースヌクレオチド配列とを含む若しくはそれらからなる;
(11)前記リバースヌクレオチド配列が、前記リバースプライマーの3’部分に位置するか、又は前記リバースプライマーの3’部分を構成する;
(12)前記リバースヌクレオチド配列が、10nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100ntの長さを有する;
(13)前記リバースプライマーが、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100nt、100nt~110nt、110nt~120nt、120nt~130nt、130nt~140nt、140nt~150ntの長さを有する;
(14)前記リバースプライマー又はその任意の成分が、天然に存在するヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれらからなる;並びに、
(15)前記第2のユニバーサル配列が、前記フォワードプライマーの相補配列と完全に相補的ではない、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、以下:
(1)前記ヌクレオチドリンカーが、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチドを含む;
(2)前記追加配列が、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチドを含む;
(3)前記天然に存在するヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドである;及び、
(4)前記第2のユニバーサル配列の3’末端にある1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチドが前記フォワードプライマーの相補配列に相補的ではない、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、以下:
(1)前記試料がDNA、RNA、又はそれらの任意の組合せを含む;
(2)増幅される前記標的核酸がDNA、RNA分子、又はそれらの任意の組合せである;
(3)増幅される前記標的核酸が一本鎖又は二本鎖である;及び、
(4)前記試料又は標的核酸が、原核生物、真核生物又はウイルス又はウイロイドから得られる、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、以下:
(1)前記DNAが、ゲノムDNA又はcDNAである;
(2)前記RNAが、mRNAである;
(3)前記真核生物が、原生動物、寄生虫、真菌、酵母、植物、哺乳動物及び動物から選択される;
(4)前記真核生物が、哺乳動物である;
(5)前記真核生物が、ヒトである;並びに、
(6)前記ウイルスが、ヘルペスウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、EBウイルス、肝炎ウイルス、及びポリオウイルスから選択される、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法の工程(1)及び工程(2)が、以下の工程(a)~工程(e):
(a)1つ以上の標的核酸を含む試料を提供し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを提供するとともに、増幅される各標的核酸についての標的特異的プライマー対を提供する工程であって、
前記第1のユニバーサルプライマー、前記第2のユニバーサルプライマー、及び前記標的特異的プライマー対が、請求項1に定義される通りである、工程と、
(b)前記試料を前記第1のユニバーサルプライマー、前記第2のユニバーサルプライマー及び前記標的特異的プライマー対と、核酸ポリメラーゼと混合する工程と、
(c)核酸変性が可能な条件下で前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(d)核酸アニーリング又はハイブリダイゼーションが可能な条件下で、前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(e)核酸伸長が可能な条件下で前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
を含むプロトコルによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、以下:
(1)工程(c)において、工程(b)の生成物を80℃~105℃の温度でインキュベートし、それによって前記核酸変性を可能にする;
(2)工程(c)において、工程(b)の生成物を10秒~20秒、20秒~40秒、40秒~60秒、1分~2分、又は2分~5分間インキュベートする;
(3)工程(d)において、工程(c)の生成物を35℃~40℃、40℃~45℃、45℃~50℃、50℃~55℃、55℃~60℃、60℃~65℃、又は65℃~70℃の温度でインキュベートし、それによって前記核酸アニーリング又はハイブリダイゼーションを可能にする;
(4)工程(d)において、工程(c)の生成物を10秒~20秒、20秒~40秒、40秒~60秒、1分~2分、又は2分~5分間インキュベートする;
(5)工程(e)において、工程(d)の生成物を35℃~40℃、40℃~45℃、45℃~50℃、50℃~55℃、55℃~60℃、60℃~65℃、65℃~70℃、70℃~75℃、75℃~80℃、80℃~85℃の温度でインキュベートし、それによって前記核酸伸長を可能にする;
(6)工程(e)において、工程(d)の生成物を10秒~20秒、20秒~40秒、40秒~60秒、1分~2分、2分~5分、5分~10分、10分~20分又は20分~30分間インキュベートする;
(7)工程(d)及び工程(e)を同じ温度又は異なる温度で実施する;
(8)工程(c)~工程(e)を少なくとも1回繰り返す;並びに、
(9)工程(c)~工程(e)を1回以上繰り返し、各サイクルの工程(c)~工程(e)で使用される条件が独立して同一又は異なる、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料中の1つ以上の標的核酸を検出する方法であって、(i)請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を使用して、前記試料中の1つ以上の標的核酸を増幅する工程と、(ii)工程(i)の生成物に対して融解曲線分析を実施する工程とを含む、方法。
【請求項12】
前記方法が、
(1)1つ以上の標的核酸を含む試料を提供し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを提供するとともに、増幅される各標的核酸についての標的特異的プライマー対及び検出プローブを提供する工程であって、
前記第1のユニバーサルプライマーが第1のユニバーサル配列を含み、
前記第2のユニバーサルプライマーが第2のユニバーサル配列を含み、前記第2のユニバーサル配列が前記第1のユニバーサル配列を含み、かつ前記第1のユニバーサル配列の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチドを更に含み、
前記標的特異的プライマー対が、前記標的核酸を増幅することができ、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み、前記フォワードプライマーが、前記第1のユニバーサル配列と、前記標的核酸に特異的なフォワードヌクレオチド配列とを含み、前記フォワードヌクレオチド配列が前記第1のユニバーサル配列の3’末端に位置し、前記リバースプライマーが、前記第2のユニバーサル配列と、前記標的核酸に特異的なリバースヌクレオチド配列とを含み、前記リバースヌクレオチド配列が前記第2のユニバーサル配列の3’末端に位置し、前記第2のユニバーサル配列が、前記フォワードプライマーの相補配列と完全に相補的ではなく、
前記検出プローブが、前記標的核酸に特異的なプローブヌクレオチド配列を含み、レポーター基及びクエンチャー基で標識され、前記レポーター基がシグナルを放出することができ、前記クエンチャー基が、前記レポーター基によって放出された前記シグナルを吸収又は消光することができ、前記検出プローブがその相補配列にハイブリダイズするときに前記検出プローブによって放出されるシグナルが、その相補配列にハイブリダイズされていないときに放出されるシグナルとは異なる、工程と、
(2)核酸増幅が可能な条件下で、前記第1のユニバーサルプライマー、前記第2のユニバーサルプライマー、及び前記標的特異的プライマー対を使用することにより、PCR反応を介して前記試料中の前記標的核酸を増幅する工程と、
(3)前記検出プローブを使用して工程(2)の生成物の融解曲線分析を実施し、前記融解曲線分析の結果に従って前記標的核酸が前記試料中に存在するかどうかを判断する工程と、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、以下:
(1)前記第1のユニバーサルプライマー又は前記第2のユニバーサルプライマーが請求項4に定義される通りである;
(2)前記標的特異的プライマー対が請求項5に定義される通りである;
(3)工程(2)において、前記試料を前記第1のユニバーサルプライマー、前記第2のユニバーサルプライマー、前記標的特異的プライマー対、及び前記核酸ポリメラーゼと混合してPCR反応を実施し、次いで、前記PCR反応が完了した後、前記検出プローブを工程(2)の生成物に添加して前記融解曲線分析を実施するか、又は工程(2)において、前記試料を前記第1のユニバーサルプライマー、前記第2のユニバーサルプライマー、前記標的特異的プライマー対及び前記検出プローブと、前記核酸ポリメラーゼと混合してPCR反応を実施し、次いで、前記PCR反応が完了した後、前記融解曲線分析を実施する;
(4)前記検出プローブが、天然に存在するヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含むか、又はそれらからなる;
(5)前記検出プローブが、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100nt、100nt~200nt、200nt~300nt、300nt~400nt、400nt~500nt、500nt~600nt、600nt~700nt、700nt~800nt、800nt~900nt、900nt~1000ntの長さを有する;
(6)前記検出プローブが3’-OH末端を有するか、又は前記検出プローブの3’末端がブロックされている;
(7)前記検出プローブが自己消光プローブである;
(8)前記検出プローブの前記レポーター基が蛍光基であり、前記クエンチャー基が前記蛍光を吸収/消光することができる分子又は基である;
(9)前記検出プローブが、ヌクレアーゼ活性に対する耐性を有する;
(10)前記検出プローブが直線状であるか、ヘアピン構造を有する;
(11)前記検出プローブのそれぞれが、独立して、同一又は異なるレポーター基を有する;
(12)工程(3)において、温度の変化に応じて変動する各レポーター基のシグナル強度の曲線を得るため、工程(2)の生成物を徐々に加熱又は冷却し、各検出プローブのレポーター基によって放出されるシグナルをリアルタイムで監視し、次いで、前記曲線を微分して、工程(2)の生成物の融解曲線を取得する;並びに、
(13)前記融解曲線の融解ピーク(融点)に応じて、前記融解ピーク(融点)に対応する前記標的核酸の存在を判断する、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法の工程(1)~工程(3)が、以下の工程(a)~工程(g):
(a)1つ以上の標的核酸を含む試料を提供し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを提供するとともに、増幅される各標的核酸について、標的特異的プライマー対及び検出プローブを提供する工程であって、
前記第1のユニバーサルプライマー、前記第2のユニバーサルプライマー、前記標的特異的プライマー対及び前記検出プローブが、請求項12に定義される通りである、工程と、
(b)前記試料を前記第1のユニバーサルプライマー、前記第2のユニバーサルプライマー、前記標的特異的プライマー対及び前記検出プローブと、核酸ポリメラーゼと混合する工程と、
(c)核酸変性が可能な条件下で前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(d)核酸アニーリング又はハイブリダイゼーションが可能な条件下で、前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(e)核酸伸長が可能な条件下で前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(f)任意に、工程(c)~工程(e)を1回以上繰り返す工程と、
(g)前の工程の生成物に対して融解曲線分析を実施する工程と、
を含むプロトコルによって行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、以下:
(1)天然に存在するヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドである;
(2)非天然ヌクレオチドが、ペプチド核酸(PNA)又はロック核酸である;
(3)前記検出プローブの3’末端が、前記検出プローブの最後のヌクレオチドの3’-OHに化学部分を付加することによって、前記検出プローブの最後のヌクレオチドの3’-OHを除去することによって、又は前記最後のヌクレオチドをジデオキシヌクレオチドに置き換えることによってブロックされている;
(4)前記検出プローブの3’末端が、前記検出プローブの最後のヌクレオチドの3’-OHにビオチン又はアルキルを付加することによってブロックされている;
(5)前記レポーター基と前記クエンチャー基との距離が10nt~80nt以上離れている;
(6)前記レポーター基がALEX-350、FAM、VIC、TET、CAL Fluor(商標)Gold 540、JOE、HEX、CAL Fluor Orange 560、TAMRA、CAL Fluor Red 590、ROX、CAL Fluor Red 610、TEXAS RED、CAL Fluor Red 635、Quasar 670、CY3、CY5、CY5.5、Quasar 705から選択される;
(7)前記クエンチャー基が、DABCYL、BHQ、ECLIPSE、TAMRA、又はそれらの任意の組合せから選択される;
(8)前記検出プローブが、5’ヌクレアーゼ活性に対する耐性を有する;
(9)前記検出プローブが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性に対する耐性を有する;
(10)前記検出プローブが、ヌクレアーゼ活性に抵抗するための修飾を含む骨格を有し、前記修飾が、ホスホロチオエートエステル結合、アルキルホスホトリエステル結合、アリールホスホトリエステル結合、アルキルホスホネートエステル結合、アリールホスホネートエステル結合、水素化リン酸エステル結合、アルキルホスホルアミデートエステル結合、アリールホスホルアミデートエステル結合、2’-O-アミノプロピル修飾、2’-O-アルキル修飾、2’-O-アリル修飾、2’-O-ブチル修飾、及び1-(4’-チオ-PD-リボフラノシル)修飾から選択される;
(11)前記検出プローブが、その5’末端若しくは上流においてレポーター基で標識され、かつその3’末端若しくは下流においてクエンチャー基で標識される;並びに、
(12)前記検出プローブが同一のレポーター基を有し、工程(2)の生成物を融解曲線分析に供し、次いで、前記融解曲線の融解ピークに従って前記標的核酸の存在を判断するか、又は前記検出プローブが異なるレポーター基を有し、工程(2)の生成物を融解曲線分析に供し、次いで、前記レポーター基のシグナルタイプと前記融解曲線の融解ピークに従って、前記標的核酸の存在を判断する、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
プライマーセットであって、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーと、1つ以上の標的特異的プライマー対とを含み、
前記第1のユニバーサルプライマーが第1のユニバーサル配列を含み、
前記第1のユニバーサル配列が、前記第1のユニバーサルプライマーの3’部分に位置するか、又は前記第1のユニバーサルプライマーの3’部分を構成し、
前記第2のユニバーサルプライマーが第2のユニバーサル配列を含み、前記第2のユニバーサル配列が前記第1のユニバーサル配列を含み、かつ前記第1のユニバーサル配列の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチドを更に含み、
前記第2のユニバーサル配列が、前記第2のユニバーサルプライマーの3’部分に位置するか、又は前記第2のユニバーサルプライマーの3’部分を構成し、
各標的特異的プライマー対が標的核酸を増幅することができ、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み、前記フォワードプライマーが、前記第1のユニバーサル配列と、前記標的核酸に特異的なフォワードヌクレオチド配列とを含み、前記フォワードヌクレオチド配列が前記第1のユニバーサル配列の3’末端に位置し、前記リバースプライマーが、前記第2のユニバーサル配列と、前記標的核酸に特異的なリバースヌクレオチド配列とを含み、前記リバースヌクレオチド配列が前記第2のユニバーサル配列の3’末端に位置し、前記第2のユニバーサル配列が、前記フォワードプライマーの相補配列と完全に相補的ではない、プライマーセット。
【請求項17】
前記プライマーセットが、以下:
(1)該プライマーセットが、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的特異的プライマー対を含む;
(2)前記第1のユニバーサルプライマー又は前記第2のユニバーサルプライマーが請求項4に定義される通りである;及び、
(3)前記標的特異的プライマー対が請求項5に定義される通りである、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項16に記載のプライマーセット。
【請求項18】
請求項16に記載のプライマーセットと、核酸ポリメラーゼ、核酸増幅用試薬、シーケンシング用試薬、遺伝子チップ検出用試薬、融解曲線分析用試薬、又はこれらの任意の組合せから選択される1つ以上の構成要素とを含むキット。
【請求項19】
前記キットが、以下:
(1)前記核酸ポリメラーゼが、テンプレート依存性核酸ポリメラーゼである;
(2)前記核酸増幅用試薬が、酵素用の作用バッファー、dNTP、水、イオンを含有する溶液、一本鎖DNA結合タンパク質、又はそれらの任意の組合せを含む;
(3)前記シーケンシング用試薬が、酵素用の作用バッファー、dNTP、ddNTP、水、イオンを含有する溶液、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)、リガーゼ、核酸リンカー、及びシーケンシングプライマー、又はそれらの任意の組合せを含む;
(4)前記遺伝子チップ検出用試薬が、酵素用の作用バッファー、dNTP、水、ハイブリダイゼーションバッファー、洗浄バッファー、標識試薬、又はこれらの任意の組合せを含む;及び、
(5)前記融解曲線分析用試薬が検出プローブを含む、
から選択される1つ以上の技術的特徴を有する、請求項18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、核酸分子の多重非対称増幅に関する。特に、本出願は、試料中の1つ以上の標的核酸を同時に非対称的に増幅する方法を提供し、この方法は、試料中に存在する複数の標的核酸を同時に非対称的に増幅することができ、同時に多量の一本鎖生成物を生成することができる。
【背景技術】
【0002】
非対称PCRは、非特許文献1によって最初に記載され、等しくない量のプライマー対を使用して大量の一本鎖DNA(ssDNA)を生成する方法を指す。非対称PCRによって生成された一本鎖DNAを、シーケンシングに使用し、プローブとして、又はリアルタイムPCR、マイクロアレイ検出、及びプローブ融解曲線分析における検出シグナルを改善するために使用することができる。しかしながら、従来の非対称PCRでは、特定の一本鎖生成物の生成を最大化し、非特異的増幅を最小限に抑えるために、慎重な最適化が必要になることがよくある。複数の標的核酸配列を同時に非対称に増幅する必要がある場合、プライマー対の増加はプライマーダイマー等の非特異的増幅の増加につながり、設計及び最適化の難しさを更に高める。
【0003】
従来の非対称PCR増幅では、制限プライマー濃度の低下により、その融点はPCR反応のアニーリング温度よりも低くなり、その結果、非対称PCR増幅が非効率的になる。これに応えて、非特許文献2は、プライマーを設計する際に、実際のプライマー濃度をプライマー融点(Tm)値に影響を与える要因として使用し、また、低濃度の制限プライマーのTmが増加し、アニーリング温度よりも高くなることが予想され、これにより、非対称PCRの増幅効率が向上して大量の一本鎖生成物が生成される、LATE-PCR(指数関数後比例PCR:Linear-After-The-Exponential-PCR)を提案した。この方法は、非対称PCRの増幅効率が低いという問題を解決し、非対称PCRの最適化を容易にする。しかしながら、この方法では、プライマー対の増加によって引き起こされる非特異的増幅が増加するという問題を解決できないため、多重非対称PCR増幅を達成することは依然として困難である。
【0004】
非特許文献3はホモタグアシスト非ダイマーシステム(Homo-Tag Assisted Non-Dimer System)(HANDシステム)を記載する。このシステムでは、同じタグ配列が標的特異的な上流及び下流の両方のプライマーの5’末端に付加されてテイル化(tailed)/タグ付き標的特異的プライマーを形成する。PCR増幅では、最初のPCR増幅は、まず、より低いアニーリング温度で低濃度のテイル化/タグ付き特異的プライマーによって開始され、数サイクル後、高いアニーリング温度で、高濃度のユニバーサルプライマーを使用して、最初のPCR増幅の増幅産物の後続する増幅を行う。特異的プライマーは全て同じタグ配列を含んでいるため、最初のPCR増幅によって生成される全ての生成物(プライマーダイマーを含む)は、末端に相補的なタグ配列を持つ。局所濃度が高いため、プライマーダイマー等の小さなフラグメント生成物の一本鎖は自己アニーリングを起こしやすく、安定した「パンハンドル(pan-handle)」構造を形成し、ユニバーサルプライマーの更なるアニーリングを防ぎ、それによってプライマーダイマーの増幅を阻害する。低濃度の相同的にタグ付けされた標的特異的プライマーと高濃度のユニバーサルプライマーの使用を組み合わせることにより、HANDシステムはプライマーダイマーの増幅を効果的に抑制し、効率的な多重PCR増幅を達成し、高い増幅効率及び検出感度を維持することができる。しかしながら、HANDシステムを使用したPCR増幅は対称増幅であり、一本鎖生成物を生成できないため、遺伝子チップ及びプローブ融解曲線分析の技術分野でのHANDシステムの適用が制限される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Gyllensten et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988, 85:7652-7656)
【文献】Sanchez et al., (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2004, 101:1933-1938)
【文献】Brownie et al. (Nucleic Acids Research 1997, 26:3235-3241)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、複数の標的核酸の同時の増幅及び検出の臨床上の要件を満たすため、効率的な多重PCR増幅と非対称PCR増幅を同時に実現することができる、複数の標的核酸を同時に非対称に増幅可能な新たな方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願では、特に明記しない限り、本明細書で使用される科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用される核酸化学実験室の操作工程は全て、対応する分野で広く使用されている日常的な工程である。一方、本発明をよりよく理解するために、関連用語の定義及び説明を以下に示す。
【0008】
本明細書で使用される場合、「標的核酸配列」、「標的核酸」及び「標的配列」という用語は、検出される標的核酸又はその配列を指す。本出願では、「標的核酸配列」、「標的核酸」及び「標的配列」という用語は同じ意味を持ち、互換的に使用される。
【0009】
本明細書で使用される場合、「標的核酸特異的配列」及び「標的特異的配列」という用語は、核酸のハイブリダイゼーション、アニーリング又は増幅が可能な条件下で、標的核酸に選択的/特異的にハイブリダイズ又はアニーリングすることができる配列を指し、標的核酸配列に対する相補配列を含む。本出願では、「標的核酸特異的配列」及び「標的特異的配列」という用語は同じ意味を持ち、互換的に使用される。標的核酸特異的配列又は標的特異的配列は、標的核酸に特異的であることが容易に理解できる。言い換えれば、標的核酸特異的配列又は標的特異的配列は、核酸のハイブリダイゼーション、アニーリング、又は増幅が可能な条件下では、特定の標的核酸に対してのみハイブリダイズ又はアニーリングが可能であり、他の核酸配列にはハイブリダイズ又はアニーリングすることができない。例えば、本出願において、「標的核酸特異的フォワードヌクレオチド配列」は、核酸のハイブリダイゼーション、アニーリング又は増幅が可能な条件下で、標的核酸に選択的/特異的にハイブリダイズ又はアニーリングすることができるフォワード核酸を指し、標的核酸と相補的な配列を含む。
【0010】
本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、2つの核酸配列が塩基対合の原理(ワトソン-クリックの原理)に従って互いに水素結合を形成し、それによってデュプレックスを形成できることを意味する。本出願において、「相補的」という用語は、「実質的に相補的」及び「完全に相補的」を含む。本明細書で使用される場合、「完全に相補的」という用語は、1つの核酸配列中の全ての塩基が、ミスマッチ又はギャップを伴わずに別の核酸鎖の塩基と対になることができることを意味する。本明細書で使用される場合、「実質的に相補的」という用語は、1つの核酸配列中の塩基の大部分が別の核酸鎖の塩基と対になることができることを意味し、ミスマッチ又はギャップ(例えば、1つ以上のヌクレオチドのミスマッチ又はギャップ)の存在が許容される。典型的には、「相補的」(例えば、実質的に相補的又は完全に相補的)である2つの核酸配列は、核酸のハイブリダイゼーション、アニーリング又は増幅が可能な条件下で選択的/特異的にハイブリダイズ又はアニーリングし、デュプレックスを形成する。したがって、「非相補的」という用語は、2つの核酸配列が、核酸のハイブリダイゼーション、アニーリング、又は増幅によってデュプレックスを形成できる条件下でハイブリダイズ又はアニーリングできないことを意味する。本明細書で使用される場合、「完全に相補的ではない」という用語は、或る核酸配列の塩基が別の核酸鎖の塩基と完全に対になることができず、少なくとも1つのミスマッチ又はギャップが存在することを意味する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」及び「アニーリング」という用語は、相補的な一本鎖核酸分子が二本鎖核酸を形成するプロセスを指す。本出願では、「ハイブリダイゼーション」と「アニーリング」は同じ意味を持ち、互換的に使用される。典型的には、完全に相補的又は実質的に相補的な2つの核酸配列は、ハイブリダイズ又はアニーリングすることができる。2つの核酸配列のハイブリダイゼーション又はアニーリングに必要な相補性は、使用されるハイブリダイゼーション条件、特に温度に依存する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「核酸ハイブリダイゼーションが可能な条件」は、当業者によって一般に理解される意味を有し、従来の方法によって決定することができる。例えば、相補配列を有する2つの核酸分子は、適切なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができる。かかるハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションバッファーの温度、pH、組成、及びイオン強度等の要因を含み得、相補的である2つの核酸分子の長さ及びGC含有量に基づいて決定され得る。例えば、2つの相補的な核酸分子の長さが比較的短い場合、及び/又はGC含有量が比較的低い場合、低いストリンジェントのハイブリダイゼーション条件を使用することができる。2つの相補的な核酸分子の長さが比較的長い場合、及び/又はGC含有量が比較的高い場合、高いストリンジェントのハイブリダイゼーション条件を使用することができる。かかるハイブリダイゼーション条件は、当業者には既知であり、例えば、Joseph Sambrook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (2001)、及びMLM Anderson, Nucleic Acid Hybridization, Springer-Verlag New York Inc. NY (1999)に見られる。本出願では、「ハイブリダイゼーション」と「アニーリング」は同じ意味を持ち、互換的に使用される。したがって、「核酸ハイブリダイゼーションが可能な条件」と「核酸アニーリングが可能な条件」という表現も同じ意味を持ち、互換的に使用される。
【0013】
本明細書で使用される場合、「核酸増幅が可能な状態」という表現は、当業者によって一般に理解される意味を有し、これは、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)が、1つの核酸鎖をテンプレートとして使用して、別の核酸鎖を合成し、デュプレックスを形成することができる条件を指す。かかる条件は、当業者には既知であり、とりわけ、ハイブリダイゼーションバッファーの温度、pH、組成、濃度及びイオン強度等の要因に関連している可能性がある。適切な核酸増幅条件は、日常的な方法で決定することができる(例えば、Joseph Sambrook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)を参照されたい)。本発明の方法において、「核酸増幅が可能な条件」は、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)の作用条件であることが好ましい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「核酸ポリメラーゼが伸長反応を行うことができる条件」という表現は、当業者によって一般に理解される意味を有し、これは、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)がテンプレートとして核酸鎖を使用して、別の核酸鎖(プライマー又はプローブ等)を伸長し、デュプレックスを形成することができる条件を指す。かかる条件は、当業者には既知であり、とりわけ、ハイブリダイゼーションバッファーの温度、pH、組成、濃度、及びイオン強度等の要因に関連している可能性がある。適切な核酸増幅条件は、日常的な方法で決定することができる(例えば、Joseph Sambrook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)を参照されたい)。本発明の方法において、「核酸ポリメラーゼが伸長反応を行うことができる条件」は、核酸ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)の作用条件であることが好ましい。本出願では、「核酸ポリメラーゼが伸長反応を行うことができる条件」と「核酸伸長が可能な条件」という表現は同じ意味を持ち、互換的に用いられる。
【0015】
様々な酵素の作用条件は、当業者が日常的な方法で決定することができ、一般に、温度、緩衝液のpH、組成、濃度、イオン強度等の要因を含み得る。或いは、酵素の製造元が推奨する条件を使用することもできる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「核酸変性」という用語は、当業者によって一般に理解される意味を有し、二本鎖核酸分子が一本鎖に解離するプロセスを指す。「核酸変性が可能な条件」という表現は、二本鎖核酸分子が一本鎖に解離する条件を指す。かかる条件は、従来法によって当業者が決定することができる(例えば、Joseph Sambrook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)を参照されたい)。例えば、核酸は、加熱、アルカリ処理、尿素処理、酵素法(例えば、ヘリカーゼを使用する方法)等の従来の技術によって変性させることができる。本出願では、核酸は、好ましくは加熱下で変性される。例えば、核酸を80℃~105℃に加熱することにより変性することができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「PCR反応」という用語は、当業者によって一般的に理解される意味を持ち、核酸ポリメラーゼとプライマーを用いて標的核酸を増幅する反応(ポリメラーゼ連鎖反応)を指す。本明細書で使用される場合、「多重増幅」という用語は、同じ反応システムにおける複数の標的核酸の増幅を指す。本明細書で使用される場合、「非対称増幅」という用語は、標的核酸を増幅して得られる増幅産物において、相補的な2つの核酸鎖の量が異なり、一方の核酸鎖の量が他方の核酸鎖の量よりも多いことを指す。
【0018】
本明細書で使用され、当業者によって一般に理解されるように、「フォワード」及び「リバース」という用語は、プライマー対の2つのプライマーを記述及び区別する際に便宜上使用されるにすぎず、それらは相対的であり、特別な意味を持たない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「蛍光プローブ」という用語は、蛍光基を有し、蛍光シグナルを生成することができるオリゴヌクレオチドを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「融解曲線分析」という用語は、当業者によって一般に理解される意味を有し、二本鎖核酸分子の融解曲線を決定することによって二本鎖核酸分子の存在又は同一性を分析する方法を指し、これは、加熱中の二本鎖核酸分子の解離特性を評定するために一般的に使用される。融解曲線分析を行う方法は、当業者には既知である(例えば、The Journal of Molecular Diagnostics 2009, 11(2):93-101を参照されたい)。本出願では、「融解曲線分析」と「融解分析」という用語は同じ意味を持ち、互換的に使用される。
【0021】
本出願の或る特定の好ましい実施の形態において、融解曲線分析は、レポーター基及びクエンチャー基で標識された検出プローブを使用して実施することができる。簡潔には、周囲温度では、検出プローブは塩基対合を介してその相補配列とデュプレックスを形成することができる。この場合、検出プローブ上のレポーター基(フルオロフォア等)とクエンチャー基は互いに分離されており、クエンチャー基はレポーター基からのシグナル(例えば、蛍光シグナル)を吸収することができず、この時点で、最も強いシグナル(例えば、蛍光シグナル)が検出され得る。温度が上昇すると、デュプレックスの2つの鎖が解離し始め(すなわち、検出プローブはその相補配列から徐々に解離する)、解離した検出プローブは一本鎖のフリーコイル(free coil)状態で存在する。この場合、解離した検出プローブ上のレポーター基(例えば、フルオロフォア)とクエンチャー基は互いに近接しており、これによりレポーター基(例えば、フルオロフォア)によって放出されるシグナル(例えば、蛍光シグナル)は、クエンチャー基によって吸収される。したがって、温度が上昇するにつれて、検出されるシグナル(例えば、蛍光シグナル)は徐々に弱くなる。デュプレックスの2つの鎖が完全に解離すると、全ての検出プローブは一本鎖のフリーコイル状態になる。この場合、検出プローブ上のレポーター基(例えば、フルオロフォア)によって放出される全てのシグナル(例えば、蛍光シグナル)は、クエンチャー基によって吸収される。したがって、レポーター基(例えば、フルオロフォア)によって放出されるシグナル(例えば、蛍光シグナル)は、本質的に検出不可能である。したがって、加熱又は冷却のプロセス中に検出プローブを含有するデュプレックスによって放出されるシグナル(例えば、蛍光シグナル)を検出することにより、検出プローブとその相補配列とのハイブリダイゼーション及び解離プロセスを観察することができ、シグナル強度が温度に伴って変化する際に曲線が形成される。さらに、得られた曲線の導出分析により、シグナル強度の変化率を縦座として、温度を横座とする曲線(つまり、デュプレックスの融解曲線)を得ることができる。融解曲線のピークは融解ピークであり、対応する温度はデュプレックスの融点(Tm)である。一般に、検出プローブと相補配列との一致度が高いほど(例えば、ミスマッチの塩基が少なく、対合した塩基が多いほど)、デュプレックスのTmが高くなる。したがって、デュプレックスのTmを検出することにより、デュプレックス内の検出プローブに対する相補配列の存在と同一性を判断することができる。本明細書で使用される場合、「融解ピーク」、「融点」、及び「Tm」という用語は同じ意味を持ち、互換的に使用される。
【0022】
増幅方法
一態様において、本発明は、
(1)1つ以上の標的核酸を含む試料を提供し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを提供するとともに、増幅される各標的核酸についての標的特異的プライマー対を提供する工程であって、
第1のユニバーサルプライマーが第1のユニバーサル配列を含み、
第2のユニバーサルプライマーが第2のユニバーサル配列を含み、第2のユニバーサル配列が第1のユニバーサル配列を含み、かつ第1のユニバーサル配列の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチドを更に含み、
標的特異的プライマー対が、標的核酸を増幅することができ、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み、フォワードプライマーが、第1のユニバーサル配列と、標的核酸に特異的なフォワードヌクレオチド配列とを含み、フォワードヌクレオチド配列は、第1のユニバーサル配列の3’末端に位置し、リバースプライマーが、第2のユニバーサル配列と、標的核酸に特異的なリバースヌクレオチド配列とを含み、リバースヌクレオチド配列は、第2のユニバーサル配列の3’末端に位置し、第2のユニバーサル配列が、フォワードプライマーの相補配列と完全に相補的であってはならない、工程と、
(2)核酸増幅が可能な条件下で、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、及び標的特異的プライマー対を使用して、PCR反応を介して試料中の標的核酸を増幅する工程と、
を含む、試料中の1つ以上の標的核酸を増幅する方法を提供する。
【0023】
本発明の方法において、フォワードプライマー及びリバースプライマーは、それぞれ、標的核酸に特異的なフォワードヌクレオチド配列及びリバースヌクレオチド配列を含み、これにより、PCR反応中に、標的特異的プライマー対(フォワードプライマー及びリバースプライマー)が標的核酸にアニーリングしてPCR増幅を開始し、その結果、フォワードプライマー及びリバースプライマーにそれぞれ相補的な2つの核酸鎖(核酸鎖A及び核酸鎖B)を含む初期増幅産物が得られる。さらに、フォワードプライマーと第1のユニバーサルプライマーの両方が第1のユニバーサル配列を含むので、フォワードプライマーと相補的な核酸鎖Aも第1のユニバーサルプライマーと相補的となり得る。同様に、リバースプライマーと相補的な核酸鎖Bも、第2のユニバーサルプライマーと相補的となり得る。
【0024】
したがって、PCR反応が進行するにつれて、第1のユニバーサルプライマーと第2のユニバーサルプライマーは、それぞれ初期増幅産物の核酸鎖Aと核酸鎖Bにアニーリングし、更にPCR増幅を開始する。このプロセスにおいて、リバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーは第1のユニバーサル配列を含むことから、第1のユニバーサルプライマーは、核酸鎖A(フォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)にアニーリングしてその相補鎖を合成することができるだけでなく、核酸鎖B(リバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)にアニーリングしてその相補鎖を合成することもできる。すなわち、第1のユニバーサルプライマーは、初期増幅産物の核酸鎖A及び核酸鎖Bを同時に増幅することができる。同時に、第2のユニバーサルプライマーは、第1のユニバーサル配列の3’末端に追加のヌクレオチドを含み、したがって、第2のユニバーサルプライマーは、核酸鎖A(フォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマー(フォワードプライマーに相補的な配列を有する)に相補的な核酸鎖)にもアニールすることができるが、3’末端で核酸鎖Aと一致していない(すなわち、3’末端で完全に相補的ではない)。したがって、増幅プロセスの間、第2のユニバーサルプライマーは、核酸鎖B(リバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)に優先的にアニーリングし、その相補鎖を合成するが、核酸鎖A(第1のフォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)の相補鎖を実質的に伸長及び合成することができない。
【0025】
したがって、PCR増幅が進むにつれて、核酸鎖Aの相補鎖(核酸鎖B)の合成効率は、核酸鎖Bの相補鎖(核酸鎖A)の合成効率よりも顕著に低くなり、その結果、核酸鎖Bの相補鎖(核酸鎖A)が大量に合成されて増幅されるが、核酸鎖Aの相補鎖(核酸鎖B)の合成及び増幅が阻害され、そのため、大量の一本鎖生成物(フォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマーに相補的な配列、及びリバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーの配列を含む核酸鎖A)が生成され、これにより、標的核酸の非対称増幅を実現する。したがって、或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法は、試料中の1つ以上の標的核酸の非対称増幅を行うことができる。
【0026】
さらに、フォワードプライマーとリバースプライマーの両方が第1のユニバーサル配列を含むため、PCR反応中、フォワードプライマー及びリバースプライマーの非特異的増幅によって形成されたプライマーダイマーは、変性後、5’末端及び3’末端に互いに相補的なリバース配列を含む一本鎖核酸を生成し、一本鎖核酸はアニーリング段階で自己アニーリングしやすく、これにより、安定したパンハンドル構造を形成し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーが一本鎖核酸をアニーリング及び伸長することを防止し、それによってプライマーダイマーの更なる増幅を阻害する。したがって、本発明の方法では、プライマーダイマーの非特異的増幅を効果的に抑制することができる。したがって、本発明の方法は、多重増幅を行うのに特に適している。例えば、本発明の方法では、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーは、1つ以上の標的核酸の多重増幅を達成するため、1つ以上の標的特異的プライマー対と組み合わせて使用することができる。
【0027】
したがって、或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法は、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的核酸、例えば少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、又はそれ以上の標的核酸を同時に増幅することができる。或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法は、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的核酸を同時に非対称的に増幅することができる。かかる実施の形態において、したがって、増幅される各標的核酸について、工程(1)において1つの標的特異的プライマー対が提供される。したがって、かかる実施の形態においては、工程(1)において、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的特異的プライマー対、例えば少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、又はそれ以上の標的特異的プライマー対が提供される。
【0028】
異なる標的核酸に対して、異なるフォワードプライマーとリバースプライマーを使用できることは容易に理解できる。しかしながら、異なる標的核酸間に配列の類似性がある場合、異なる標的特異的プライマー対が同じフォワードプライマー又はリバースプライマーを有することがある。
【0029】
多重非対称増幅を容易にし、プライマーダイマーの非特異的増幅を効果的に抑制するため、幾つかの好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーの作用濃度は、フォワードプライマー及びリバースプライマーの作用濃度よりも高い。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーの作用濃度は、フォワードプライマー及びリバースプライマーの作用濃度よりも少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、少なくとも18倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30回、少なくとも40倍、少なくとも50倍又はそれ以上高い。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーの作用濃度は、フォワードプライマー及びリバースプライマーの作用濃度よりも1倍~5倍、5倍~10倍、10倍~15倍、15倍~20倍、20倍~50倍又はそれ以上高い。
【0030】
本発明の方法において、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーの作用濃度は、同一であっても異なっていてもよい。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーと第2のユニバーサルプライマーの作用濃度は同じである。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーと第2のユニバーサルプライマーの作用濃度は異なる。上で詳細に説明したように、本発明の方法において、非対称増幅は、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーに対する核酸鎖A及びBのマッチングの違いを利用することによって達成される。したがって、第2のユニバーサルプライマーに対する第1のユニバーサルプライマーの濃度は、変化し得る。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーと第2のユニバーサルプライマーの作用濃度は同じである。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーの作用濃度は、第2のユニバーサルプライマーの作用濃度よりも高い。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーの作用濃度は、第2のユニバーサルプライマーの作用濃度よりも低い。上で詳細に説明したように、本発明の方法は、標的核酸の非対称増幅を達成するために使用することができる。場合によっては、より高い増幅非対称性が有利な場合がある。したがって、幾つかの好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーと第2のユニバーサルプライマーとの比は、第1のユニバーサルプライマーの作用濃度が第2のユニバーサルプライマーの作用濃度よりも低くなるように調整することも可能であり、それによって増幅の非対称性を更に高め、一本鎖生成物により富んだものとする。
【0031】
本発明の方法において、フォワードプライマーとリバースプライマーの作用濃度は、同一であっても異なっていてもよい。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーとリバースプライマーの作用濃度は同じである。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーとリバースプライマーの作用濃度は異なる。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーの作用濃度は、リバースプライマーの作用濃度よりも低い。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーの作用濃度は、リバースプライマーの作用濃度よりも高い。
【0032】
或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーは、第1のユニバーサル配列からなる。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーは、第1のユニバーサル配列の5’末端に位置する追加配列を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態において、追加配列は、1つ以上のヌクレオチド、例えば1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、又はそれ以上のヌクレオチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドを含む。本出願では、第1のユニバーサルプライマーはPCR増幅に使用されるため、好ましくは、第1のユニバーサル配列は、第1のユニバーサルプライマーの3’部分に位置するか、又は第1のユニバーサルプライマーの3’部分を構成する。
【0033】
本出願の実施の形態において、第1のユニバーサルプライマーは、PCR反応を行うことができる限り、任意の長さであってもよい。例えば、第1のユニバーサルプライマーは、5nt~50nt、例えば、5nt~15nt、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、又は40nt~50ntの長さを有し得る。
【0034】
本出願の或る特定の実施の形態において、第1のユニバーサルプライマー(又はその任意の成分)が、天然に存在するヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含み得るか、又はそれらからなり得る。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマー(又はその任意の成分)は、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を含むか、又は天然ヌクレオチドからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマー(又はその任意の成分)は、修飾ヌクレオチド、例えば、5-メチルシトシン又は5-ヒドロキシメチルシトシン等の修飾デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含む。或る特定の好ましい実施の形態において、第1のユニバーサルプライマー(又はその任意の成分)は、デオキシヒポキサンチン、イノシン、1-(2’-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-3-ニトロピロール、5-ニトロインドール又はロック核酸(LNA)等の非天然ヌクレオチドを含む。
【0035】
或る特定の好ましい実施の形態において、第2のユニバーサルプライマーは、第2のユニバーサル配列からなる。或る特定の好ましい実施の形態において、第2のユニバーサルプライマーは、第2のユニバーサル配列の5’末端に位置する追加配列を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態において、追加配列は、1つ以上のヌクレオチド、例えば1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドを含む。本出願では、第2のユニバーサルプライマーはPCR増幅に使用されるため、好ましくは、第2のユニバーサル配列は、第2のユニバーサルプライマーの3’部分に位置するか、又は第2のユニバーサルプライマーの3’部分を構成する。
【0036】
或る特定の好ましい実施の形態において、第2のユニバーサル配列は、第1のユニバーサル配列を含み、第1のユニバーサル配列の3’末端に、少なくとも1つのヌクレオチド、例えば、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドを更に含む。
【0037】
本出願の実施の形態において、第2のユニバーサルプライマーは、PCR反応を行うことが可能であり、また上に定義される条件を満たす限り、任意の長さであってもよい。例えば、第2のユニバーサルプライマーは、8nt~15nt、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、又は40nt~50nt等の8nt~50ntの長さを有することができる。本出願の実施の形態において、第2のユニバーサル配列の長さは、第1のユニバーサル配列の長さよりも長い。
【0038】
本出願の或る特定の実施の形態において、第2のユニバーサルプライマー(又はその任意の成分)が、天然に存在するヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含み得るか、又はそれらからなり得る。或る特定の好ましい実施の形態において、第2のユニバーサルプライマー(又はその任意の成分)は、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を含むか、又は天然ヌクレオチドからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、第2のユニバーサルプライマー(又はその任意の成分)は、修飾ヌクレオチド、例えば、5-メチルシトシン又は5-ヒドロキシメチルシトシン等の修飾デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含む。或る特定の好ましい実施の形態において、第2のユニバーサルプライマー(又はその任意の成分)は、デオキシヒポキサンチン、イノシン、1-(2’-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-3-ニトロピロール、5-ニトロインドール又はロック核酸(LNA)等の非天然ヌクレオチドを含む。
【0039】
本出願の或る特定の実施の形態においては、工程(1)において、少なくとも1つの標的特異的プライマー対、例えば少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、又はそれ以上の標的特異的プライマー対が提供される。或る特定の好ましい実施の形態においては、工程(1)において、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的特異的プライマー対が提供される。或る特定の好ましい実施の形態において、上記方法は1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的核酸を同時に増幅することができる。或る特定の好ましい実施の形態において、上記方法は1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的核酸を同時に非対称に増幅することができる。
【0040】
例えば、或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法は、試料中の2つの標的核酸を増幅するために使用することができ、工程(1)において、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、第1の標的特異的プライマー対、及び第2の標的特異的プライマー対が提供され、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーは、上記で定義した通りであり、第1の標的特異的プライマー対は、第1の標的核酸を増幅することができる第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーを含み、第2の標的特異的プライマー対は、第2の標的核酸を増幅することができる第2のフォワードプライマー及び第2のリバースプライマーを含み、第1のフォワードプライマー、第1のリバースプライマー、第2のフォワードプライマー、及び第2のリバースプライマーは、上記で定義した通りである。同様に、或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法は、試料中の3つ以上の標的核酸を増幅するために使用することができ、工程(1)において、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、及び3個以上の標的核酸を増幅することができる3個以上の標的特異的プライマー対が提供される。
【0041】
或る特定の好ましい実施の形態においては、フォワードプライマーにおいて、フォワードヌクレオチド配列は、第1のユニバーサル配列の3’末端に直接連結される。或る特定の好ましい実施の形態においては、フォワードプライマーにおいて、フォワードヌクレオチド配列は、ヌクレオチドリンカーによって第1のユニバーサル配列の3’末端に連結される。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーは、5’から3’に、第1のユニバーサル配列及びフォワードヌクレオチド配列を含むか、又はそれらからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーは、5’から3’に、第1のユニバーサル配列と、ヌクレオチドリンカーと、フォワードヌクレオチド配列とを含むか、又はそれらからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、ヌクレオチドリンカーは、1つ以上のヌクレオチド、例えば1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドを含む。
【0042】
或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーは、第1のユニバーサル配列の5’末端に位置する追加配列を更に含む。したがって、或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーは、5’から3’に、追加配列と、第1のユニバーサル配列と、フォワードヌクレオチド配列とを含むか、又はそれらからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマーは、5’から3’に、追加配列と、第1のユニバーサル配列と、ヌクレオチドリンカーと、フォワードヌクレオチド配列とを含むか、又はそれらからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、追加配列は、1つ以上のヌクレオチド、例えば1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドを含む。
【0043】
本出願において、フォワードプライマーは、標的核酸のPCR増幅に使用されるため、好ましくは、フォワードヌクレオチド配列は、フォワードプライマーの3’部分に位置するか、又はフォワードプライマーの3’部分を構成する。
【0044】
本出願の実施の形態において、フォワードヌクレオチド配列は、標的核酸配列と特異的にハイブリダイズし、標的核酸を増幅することができる限り、その長さによって制限されない。例えば、フォワードヌクレオチド配列は、10nt~100nt、例えば10nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100ntの長さを有することができる。
【0045】
本出願の実施の形態において、フォワードプライマーは、上記で定義された条件を満たす限り、その長さによって制限されない。例えば、フォワードプライマーは、15nt~150nt、例えば、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100nt、100nt~110nt、110nt~120nt、120nt~130nt、130nt~140nt、140nt~150ntの長さを有することができる。
【0046】
本出願の或る特定の実施の形態において、フォワードプライマー(又はその任意の成分)が、天然に存在するヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含み得るか、又はそれらからなり得る。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマー(又はその任意の成分)は、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を含むか、又は天然ヌクレオチドからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマー(又はその任意の成分)は、修飾ヌクレオチド、例えば、5-メチルシトシン又は5-ヒドロキシメチルシトシン等の修飾デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含む。或る特定の好ましい実施の形態において、フォワードプライマー(又はその任意の成分)は、デオキシヒポキサンチン、イノシン、1-(2’-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-3-ニトロピロール、5-ニトロインドール又はロック核酸(LNA)等の非天然ヌクレオチドを含む。
【0047】
或る特定の好ましい実施の形態においては、リバースプライマーにおいて、リバースヌクレオチド配列は、第2のユニバーサル配列の3’末端に直接連結される。或る特定の好ましい実施の形態においては、リバースプライマーにおいて、リバースヌクレオチド配列は、ヌクレオチドリンカーによって第2のユニバーサル配列の3’末端に連結される。或る特定の好ましい実施の形態において、リバースプライマーは、5’から3’に、第2のユニバーサル配列及びリバースヌクレオチド配列を含むか、又はそれらからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、リバースプライマーは、5’から3’に、第2のユニバーサル配列と、ヌクレオチドリンカーと、リバースヌクレオチド配列とを含むか、又はそれらからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、ヌクレオチドリンカーは、1つ以上のヌクレオチド、例えば1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドを含む。
【0048】
或る特定の好ましい実施の形態において、リバースプライマーは、第2のユニバーサル配列の5’末端に位置する追加配列を更に含む。したがって、或る特定の好ましい実施の形態において、リバースプライマーは、5’から3’に、追加配列と、第2のユニバーサル配列と、リバースヌクレオチド配列とを含むか、又はそれらからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、リバースプライマーは、5’から3’に、追加配列と、第2のユニバーサル配列と、ヌクレオチドリンカーと、リバースヌクレオチド配列とを含むか、又はそれらからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、追加配列は、1つ以上のヌクレオチド、例えば1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドを含む。
【0049】
本出願において、リバースプライマーは、標的核酸のPCR増幅に使用されるため、好ましくは、リバースヌクレオチド配列は、リバースプライマーの3’部分に位置するか、又はリバースプライマーの3’部分を構成する。
【0050】
本出願の実施の形態において、リバースヌクレオチド配列は、標的核酸配列に特異的にハイブリダイズし、標的核酸を増幅することができる限り、その長さによって制限されない。例えば、リバースヌクレオチド配列は、10nt~100nt、例えば10nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100ntの長さを有する。
【0051】
本出願の実施の形態において、リバースプライマーは、上記で定義された条件を満たす限り、その長さによって制限されない。例えば、リバースプライマーは、15nt~150nt、例えば、15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100nt、100nt~110nt、110nt~120nt、120nt~130nt、130nt~140nt、140nt~150ntの長さを有する。
【0052】
本出願の或る特定の実施の形態において、リバースプライマー(又はその任意の成分)が、天然に存在するヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せを含み得るか、又はそれらからなり得る。或る特定の好ましい実施の形態において、リバースプライマー(又はその任意の成分)は、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を含むか、又は天然ヌクレオチドからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、リバースプライマー(又はその任意の成分)は、修飾ヌクレオチド、例えば、5-メチルシトシン又は5-ヒドロキシメチルシトシン等の修飾デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含む。或る特定の好ましい実施の形態において、リバースプライマー(又はその任意の成分)は、デオキシヒポキサンチン、イノシン、1-(2’-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-3-ニトロピロール、5-ニトロインドール又はロック核酸(LNA)等の非天然ヌクレオチドを含む。
【0053】
本出願の実施の形態において、第2のユニバーサル配列は、フォワードプライマーの相補配列と完全に相補的ではない。或る特定の好ましい実施の形態において、少なくとも1つのヌクレオチド、例えば、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のヌクレオチドは、第2のユニバーサル配列の3’末端において、フォワードプライマーの相補配列に相補的であってはならない。したがって、PCR反応中、第2のユニバーサル配列/第2のユニバーサルプライマーが、フォワードプライマーに相補的な核酸鎖(核酸鎖A)にアニーリングできたとしても、核酸鎖の相補鎖を実質的に伸長及び合成することができない。
【0054】
本発明の方法において、試料は、核酸を含む任意の試料であり得る。例えば、或る特定の好ましい実施の形態において、試料は、DNA(例えば、ゲノムDNA又はcDNA)を含むか、又はDNAである。或る特定の好ましい実施の形態において、試料はRNA(例えば、mRNA)を含むか、又はRNAである。或る特定の好ましい実施の形態において、試料は、核酸の混合物(例えば、DNAの混合物、RNAの混合物、又はDNAとRNAの混合物)を含むか、又は核酸の混合物である。
【0055】
本発明の方法において、増幅される標的核酸は、その配列の組成又は長さによって制限されない。例えば、標的核酸は、DNA(例えば、ゲノムDNA又はcDNA)又はRNA分子(例えば、mRNA)であり得る。さらに、増幅される標的核酸は、一本鎖又は二本鎖であってもよい。
【0056】
試料又は標的核酸がmRNAである場合、好ましくは、本発明の方法を実施する前に、逆転写反応を行って、mRNAに相補的なcDNAを得る。逆転写反応の詳細な説明は、例えば、Joseph Sam-brook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)に見られる。
【0057】
本発明の方法において、試料又は標的核酸は、限定されるものではないが、原核生物、真核生物(例えば、原生動物、寄生虫、真菌、酵母、植物、哺乳動物及びヒトを含む動物)、又はウイルス(例えば、ヘルペスウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、EBウイルス、肝炎ウイルス、ポリオウイルス等)、又はウイロイドを含む任意の供給源から得ることができる。試料又は標的核酸は、ゲノム核酸、人工的に単離又は断片化された核酸、合成核酸等の任意の形態の核酸でもあり得る。
【0058】
本発明の方法では、任意の核酸ポリメラーゼ、特にテンプレート依存性核酸ポリメラーゼを使用して、PCR反応を実施することができる。或る特定の好ましい実施の形態において、核酸ポリメラーゼはDNAポリメラーゼである。或る特定の好ましい実施の形態において、核酸ポリメラーゼは耐熱性DNAポリメラーゼである。耐熱性DNAポリメラーゼは、限定されるものではないが、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)、サーマス・サーモフィレス(Thermus thermophiles)(Tth)、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)、サーミス・フラバス(Thermis flavus)、サーモコッカス・リテラリス(Thermococcus literalis)、サーマス・アントラニルダンニイ(Thermus antranildanii)、サーマス・カルドフルス(Thermus caldophllus)、サーマス・クリアロフィラス(Thermus chliarophilus)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、サーマス・イグニテラエ(Thermus igniterrae)、サーマス・ラクテウス(Thermus lacteus)、サーマス・オシマイ(Thermus oshimai)、サーマス・ルバー(Thermus ruber)、サーマス・ルベンス(Thermus rubens)、サーマス・スコトドクタス(Thermus scotoductus)、サーマス・シルバヌス(Thermus silvanus)、サーマス・サーモフルス(Thermus thermophllus)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、サーモコッカス・バロッシ(Thermococcus barossi)、サーモコッカス・ゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius)、サーモアナトガ・マリティマ(Thermoanatoga maritima)、サーモコッカス・ゴルゴナリウス、サーモアナトガ・マリティマ、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosiphoafricanus)、パイロコッカス・ウォセイ(Pyrococcus woesei)、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、パイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)、パイロディクティウム・オカルタム(Pyrodictium occultum)、アクイフェックス・パイロフィルス(Aquifexpyrophilus)及びアクイフェックス・エオリエウス(Aquifex aeolieus)等の様々な細菌種から得ることができる。特に、DNAポリメラーゼはTaqポリメラーゼであることが好ましい。
【0059】
或る特定の好ましい実施の形態において、標的核酸は三段階のプロセスで増幅される。かかる実施の形態において、核酸増幅の各ラウンドは、第1の温度での核酸変性、第2の温度での核酸アニーリング、及び第3の温度での核酸伸長の3つの工程を必要とする。或る特定の好ましい実施の形態において、標的核酸は二段階のプロセスで増幅される。かかる実施の形態において、核酸増幅の各ラウンドは、第1の温度での核酸変性、並びに第2の温度での核酸のアニーリング及び伸長という2つの工程を必要とする。核酸変性、核酸アニーリング、及び核酸伸長に適した温度は、日常的な方法で当業者が容易に決定することができる(例えば、Joseph Sambrook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (2001)を参照されたい)。
【0060】
或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法の工程(1)及び工程(2)は、以下の工程(a)~工程(f):
(a)1つ以上の標的核酸を含む試料を提供し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを提供するとともに、増幅される各標的核酸についての標的特異的プライマー対を提供する工程であって、
第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、及び標的特異的プライマー対が、上に定義される通りである工程と、
(b)試料を第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー及び標的特異的プライマー対と、核酸ポリメラーゼ(例えば、テンプレート依存性核酸ポリメラーゼ;DNAポリメラーゼ等、特に耐熱性DNAポリメラーゼ)と混合する工程と、
(c)核酸変性が可能な条件下で前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(d)核酸アニーリング又はハイブリダイゼーションが可能な条件下で、前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(e)核酸伸長が可能な条件下で前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(f)任意に、工程(c)~工程(e)を1回以上繰り返す工程と、
を含むプロトコルによって行うことができる。
【0061】
かかる実施の形態においては、工程(c)において、試料中の全ての核酸分子が解離して一本鎖状態になり、次いで、工程(d)において、相補的な核酸分子(例えば、フォワードプライマーと標的核酸又はリバースプライマーの伸長生成物、リバースプライマーと標的核酸又はフォワードプライマーの伸長生成物、第1のユニバーサルプライマーと第1のユニバーサル配列の相補配列を含む増幅産物、第2のユニバーサルプライマーと第2のユニバーサル配列の相補配列を含む増幅産物)が、共にアニーリング又はハイブリダイズしてデュプレックスを形成し、次いで、工程(e)において、核酸ポリメラーゼ(特にテンプレート依存性核酸ポリメラーゼ)が、相補配列にハイブリダイズするフォワードプライマー/リバースプライマー及び第1のユニバーサルプライマー/第2のユニバーサルプライマーを伸長する。したがって、工程(c)~工程(e)のサイクルを経て、標的核酸配列の増幅(特に、上記で詳述したような非対称増幅)を達成することができ、それによって工程(1)及び工程(2)を完了することができる。
【0062】
工程(c)のインキュベーション時間及び温度は、従来法により、当業者が決定することができる。或る特定の好ましい実施の形態においては、工程(c)において、工程(b)の生成物を80℃~105℃の温度(例えば、80℃~85℃、85℃~90℃、90℃~95℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、又は105℃)でインキュベートし、それによって核酸の変性を可能にする。或る特定の好ましい実施の形態においては、工程(c)において、工程(b)の生成物を、10秒~5分、例えば、10秒~20秒、20秒~40秒、40秒~60秒、1分~2分、又は2分~5分インキュベートする。
【0063】
工程(d)のインキュベーション時間及び温度は、従来法により、当業者が決定することができる。或る特定の好ましい実施の形態においては、工程(d)において、工程(c)の生成物を35℃~70℃の温度(例えば、35℃~40℃、40℃~45℃、45℃~50℃、50℃~55℃、55℃~60℃、60℃~65℃、又は65℃~70℃)でインキュベートし、それによって核酸のアニーリング又はハイブリダイゼーションを可能にする。或る特定の好ましい実施の形態においては、工程(d)において、工程(c)の生成物を、10秒~5分、例えば、10秒~20秒、20秒~40秒、40秒~60秒、1分~2分、又は2分~5分インキュベートする。
【0064】
工程(e)のインキュベーション時間及び温度は、従来法により、当業者が決定することができる。或る特定の好ましい実施の形態においては、工程(e)において、工程(d)の生成物を35℃~85℃の温度(例えば、35℃~40℃、40℃~45℃、45℃~50℃、50℃~55℃、55℃~60℃、60℃~65℃、65℃~70℃、70℃~75℃、75℃~80℃、80℃~85℃)でインキュベートし、それによって核酸の伸長を可能にする。或る特定の好ましい実施の形態においては、工程(e)において、工程(d)の生成物を、10秒~30分、例えば、10秒~20秒、20秒~40秒、40秒~60秒、1分~2分、2分~5分、5分~10分、10分~20分、又は20分~30分インキュベートする。
【0065】
或る特定の実施の形態において、工程(d)及び工程(e)は、異なる温度で行われてもよく、すなわち、核酸のアニーリング及び伸長は異なる温度で行われる。或る特定の実施の形態において、工程(d)及び工程(e)は、同じ温度で行われてもよく、すなわち、核酸のアニーリング及び伸長は同じ温度で行われる。この場合、工程(d)と工程(e)を1つの工程として組み合わせることができる。
【0066】
本発明の方法では、工程(c)~工程(e)を、少なくとも1回、例えば、少なくとも2回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回、又は少なくとも50回繰り返してもよい。しかしながら、工程(c)~工程(e)を1回以上繰り返す場合、各サイクルの工程(c)~工程(e)で使用される条件が同じである必要はないことが容易に理解できる。例えば、或る条件を使用して、サイクルの前の部分(例えば、最初の5サイクル、最初の10サイクル、最初の20サイクル)の工程(c)~工程(e)を実施し、続いて別の条件を使用して残りのサイクルの工程(c)~工程(e)を実施することができる。
【0067】
本発明の方法は、標的核酸の多重非対称増幅を可能にして、大量の一本鎖核酸生成物を生成することを可能にする。したがって、本発明の方法は、或る特定の状況において特に有利である。例えば、本発明の方法の増幅産物は、シーケンシング、遺伝子チップ検出、又は融解曲線分析に使用することができる。したがって、幾つかの好ましい実施の形態において、本発明の方法は、(3)工程(2)の生成物をシーケンシングする工程を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法は、(3)遺伝子チップを使用して工程(2)の生成物を検出する工程を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法は、(3)工程(2)の生成物に対して融解曲線分析を行う工程を更に含む。
【0068】
検出方法
一態様において、本出願は、(i)本発明の方法を用いて試料中の1つ以上の標的核酸を増幅する工程、(ii)工程(i)の生成物に対して融解曲線分析を実施する工程を含む、試料中の1つ以上の標的核酸を検出する方法を提供する。
【0069】
或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法は、
(1)1つ以上の標的核酸を含む試料を提供し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを提供するとともに、増幅される各標的核酸についての標的特異的プライマー対及び検出プローブを提供する工程であって、
第1のユニバーサルプライマーが第1のユニバーサル配列を含み、
第2のユニバーサルプライマーが第2のユニバーサル配列を含み、第2のユニバーサル配列が第1のユニバーサル配列を含み、かつ第1のユニバーサル配列の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチドを更に含み、
標的特異的プライマー対が、標的核酸を増幅することができ、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み、フォワードプライマーが、第1のユニバーサル配列と、標的核酸に特異的なフォワードヌクレオチド配列とを含み、フォワードヌクレオチド配列が第1のユニバーサル配列の3’末端に位置し、リバースプライマーが、第2のユニバーサル配列と、標的核酸に特異的なリバースヌクレオチド配列とを含み、リバースヌクレオチド配列が第2のユニバーサル配列の3’末端に位置し、第2のユニバーサル配列が、フォワードプライマーの相補配列と完全に相補的であってはならず、
検出プローブが、標的核酸に特異的なプローブヌクレオチド配列を含み、レポーター基及びクエンチャー基で標識され、レポーター基がシグナルを放出することができ、クエンチャー基が、レポーター基によって放出されたシグナルを吸収又は消光することができ、検出プローブが、その相補配列にハイブリダイズするときに、その相補配列にハイブリダイズされていないときに放出されるシグナルとは異なるシグナルを放出する、工程と、
(2)核酸増幅が可能な条件下で、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、及び標的特異的プライマー対を使用することにより、PCR反応を介して試料中の標的核酸を増幅する工程と、
(3)検出プローブを使用して工程(2)の生成物の融解曲線分析を実施し、融解曲線分析の結果に従って標的核酸が試料中に存在するかどうかを判断する工程と、
を含む。
【0070】
本発明の或る特定の実施の形態において、試料、標的核酸、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、及び/又は標的特異的プライマー対は、上に定義する通りである。
【0071】
本発明の或る特定の実施の形態においては、工程(2)において、試料を第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー及び標的特異的プライマー対と、核酸ポリメラーゼと混合し、PCR反応に供する。次いで、PCR反応が完了した後、工程(2)の生成物に検出プローブを添加し、融解曲線分析を実施する。
【0072】
本発明の或る特定の実施の形態においては、工程(2)において、試料を第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、標的特異的プライマー対及び検出プローブと、核酸ポリメラーゼと混合し、PCR反応に供する。次いで、PCR反応が完了した後、融解曲線分析を実施する。
【0073】
本発明の或る特定の実施の形態において、検出プローブが、天然に存在するヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド(例えば、ペプチド核酸(PNA)又はロック核酸)、又はそれらの任意の組合せを含んでもよく、又はそれらからなってもよい。或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブは、天然ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を含むか、又は天然ヌクレオチドからなる。或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブは、修飾ヌクレオチド、例えば、5-メチルシトシン又は5-ヒドロキシメチルシトシン等の修飾デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドを含む。或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブは、デオキシヒポキサンチン、イノシン、1-(2’-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-3-ニトロピロール、5-ニトロインドール又はロック核酸(LNA)等の非天然ヌクレオチドを含む。
【0074】
本発明の方法では、検出プローブは、その長さによって制限されない。例えば、検出プローブは、15nt~1000nt、例えば15nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、80nt~90nt、90nt~100nt、100nt~200nt、200nt~300nt、300nt~400nt、400nt~500nt、500nt~600nt、600nt~700nt、700nt~800nt、800nt~900nt、900nt~1000ntの長さを有し得る。
【0075】
或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブは、3’-OH末端を有する。或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブの3’末端は、その伸張を阻害するためにブロックされる。核酸(検出プローブ等)の3’末端を、様々な方法でブロックすることができる。例えば、検出プローブの3’末端は、検出プローブの最後のヌクレオチドの3’-OHを修飾することによってブロックすることができる。或る特定の実施の形態において、検出プローブの最後のヌクレオチドの3’-OHに化学部分(例えば、ビオチン又はアルキル)を付加することによって、検出プローブの3’末端をブロックすることができる。或る特定の実施の形態において、検出プローブの最後のヌクレオチドの3’-OHを除去することによって、又は最後のヌクレオチドをジデオキシヌクレオチドに置き換えることによって、検出プローブの3’末端をブロックすることができる。
【0076】
上述のように、検出プローブは、レポーター基及びクエンチャー基で標識されており、レポーター基はシグナルを放出することができ、クエンチャー基は、レポーター基によって放出されたシグナルを吸収又は消光することができ、検出プローブは、その相補配列にハイブリダイズした場合にシグナルを放出することができ、該シグナルはその相補配列にハイブリダイズされていない場合に放出されるものとは異なる。
【0077】
或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブは、自己消光プローブである。かかる実施の形態において、検出プローブが他の配列にハイブリダイズされていない場合、クエンチャー基は、レポーター基のシグナルを吸収又は消光することができる位置に配置され(例えば、クエンチャー基はレポーター基に隣接して配置される)、それによりレポーター基によって放出されたシグナルを吸収又は消光する。この場合、検出プローブはシグナルを放出しない。さらに、検出プローブがその相補配列にハイブリダイズされる場合、クエンチャー基は、レポーター基のシグナルを吸収又は消光できない位置にある(例えば、クエンチャー基がレポーター基から離れた位置にある)ため、レポーター基によって放出されたシグナルを吸収又は消光することができない。この場合、検出プローブはシグナルを放出する。
【0078】
かかる自己消光検出プローブの設計は、当業者の能力の範囲内である。例えば、レポーター基は検出プローブの5’末端で標識することができ、クエンチャー基は3’末端で標識することができるか、又はレポーター基は検出プローブの3’末端で標識することができ、クエンチャー基は5’末端で標識される。したがって、検出プローブが単独で存在する場合、レポーター基とクエンチャー基は互いに接近して相互作用するため、レポーター基によって放出されたシグナルはクエンチャー基によって吸収され、検出プローブはシグナルを放出せず、また、検出プローブがその相補配列にハイブリダイズする場合、レポーター基とクエンチャー基は互いに分離されているため、レポーター基によって放出されたシグナルはクエンチャー基によって吸収できず、検出プローブがシグナルを放出する。
【0079】
しかしながら、レポーター基及びクエンチャー基は、検出プローブの両端に標識される必要はないことを理解すべきである。レポーター基及び/又はクエンチャー基はまた、検出プローブが、その相補配列にハイブリダイズされた場合に、その相補配列にハイブリダイズされていない場合に放出されるシグナルとは異なるシグナルを放出する限り、検出プローブ内で内部的に標識することができる。例えば、レポーター基は検出プローブの上流(又は下流)で標識することができ、クエンチャー基は検出プローブの下流(又は上流)で標識することができ、2つは十分な距離(例えば、10nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80nt、又はそれより長い距離)で隔てられる。したがって、検出プローブが単独で存在する場合、プローブ分子のフリーコイル形成又はプローブの二次構造(例えば、ヘアピン構造)の形成により、レポーター基とクエンチャー基は互いに接近して相互作用するため、レポーター基によって放出されるシグナルはクエンチャー基によって吸収され、その結果、検出プローブはシグナルを放出せず、検出プローブがその相補配列にハイブリダイズする場合、レポーター基とクエンチャー基は、レポーター基によって放出されたシグナルをクエンチャー基が吸収できないように十分な距離で互いに隔てられ、それにより検出プローブがシグナルを放出する。或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基及びクエンチャー基は、10nt~80nt又はそれ以上、例えば、10nt~20nt、20nt~30nt、30nt~40nt、40nt~50nt、50nt~60nt、60nt~70nt、70nt~80ntの距離で隔てられる。或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基とクエンチャー基は、80nt以下、70nt以下、60nt以下、50nt以下、40nt以下、30nt以下、又は20nt以下の距離で隔てられている。或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基とクエンチャー基は、少なくとも5nt、少なくとも10nt、少なくとも15nt又は少なくとも20ntの距離で隔てられている。
【0080】
したがって、検出プローブが、相補配列にハイブリダイズされた場合に、その相補配列にハイブリダイズされていない場合に放出されるシグナルとは異なるシグナルを放出する限り、レポーター基及びクエンチャー基は、検出プローブ上の任意の適切な位置に標識することができる。しかしながら、或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基及びクエンチャー基のうち少なくとも一方は、検出プローブの末端(例えば、5’又は3’末端)に位置する。或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基及びクエンチャー基のうち一方は、検出プローブの5’末端に又は5’末端から1nt~10ntに位置し、レポーター基及びクエンチャー基は、クエンチャー基が、検出プローブがその相補配列にハイブリダイズする前にレポーター基によって放出されたシグナルを吸収又は消光することができるように、適切な距離だけ離れている。或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基及びクエンチャー基のうち一方は、検出プローブの3’末端に又は3’末端から1nt~10ntに位置し、レポーター基及びクエンチャー基は、クエンチャー基が、検出プローブがその相補配列にハイブリダイズする前にレポーター基によって放出されたシグナルを吸収又は消光することができるように、適切な距離だけ離れている。或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基及びクエンチャー基は、上で定義した距離(例えば、10nt~80nt以上の距離)離れていてもよい。或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基及びクエンチャー基のうち一方が検出プローブの5’末端に位置し、他方が3’末端に配置される。
【0081】
本発明の方法において、レポーター基及びクエンチャー基は、当該技術分野で知られている任意の適切な基又は分子とすることができ、それらの特定の例としては、限定されるものではないが、Cy2(商標)(506)、YO-PRO(商標)-l(509)、YOYO(商標)-l(509)、カルセイン(517)、FITC(518)、FluorX(商標)(519)、Alexa(商標)(520)、ローダミン110(520)、Oregon Green(商標)500(522)、Oregon Green(商標)488(524)、RiboGreen(商標)(525)、Rhodamine Green(商標)(527)、ローダミン123(529)、Magnesium Green(商標)(531)、Calcium Green(商標)(533)、TO-PRO(商標)-l(533)、TOTOl(533)、JOE(548)、BODIPY530/550(550)、Dil(565)、BODIPY TMR(568)、BODIPY558/568(568)、BODIPY564/570(570)、Cy3(商標)(570)、Alexa(商標)546(570)、TRITC(572)、Magnesium Orange(商標)(575)、フィコエリスリンR&B(575)、ローダミンファロイジン(575)、Calcium Orange(商標)(576)、ピロニンY(580)、ローダミンB(580)、TAMRA(582)、Rhodamine Red(商標)(590)、Cy3.5(商標)(596)、ROX(608)、Calcium Crimson(商標)(615)、Alexa(商標)594(615)、テキサスレッド(615)、ナイルレッド(628)、YO-PRO(商標)-3(631)、YOYO(商標)-3(631)、R-フィコシアニン(642)、C-フィコシアニン(648)、TO-PRO(商標)-3(660)、T0T03(660)、DiD DilC(5)(665)、Cy5(商標)(670)、チアジカルボシアニン(671)、Cy5.5(694)、HEX(556)、TET(536)、バイオサーチブルー(447)、CAL Fluor Gold 540(544)、CAL Fluor Orange 560(559)、CAL Fluor Red 590(591)、CAL Fluor Red 610(610)、CAL Fluor Red 635(637)、FAM(520)、フルオレセイン(520)、フルオレセイン-C3(520)、Pulsar 650(566)、Quasar 570(667)、Quasar 670(705)、及びQuasar 705(610)が挙げられる。括弧内の数字は、単位がnmである最大発光波長を示す。
【0082】
さらに、レポーター基とクエンチャー基の様々な適切な組合せが当該技術分野で知られており、例えば、Pesce et al., editors, Fluorescence Spectroscopy (Marcel Dekker, New York, 1971);White et al., Fluorescence Analysis: A Practical Approach (Marcel Dekker, New York, 1970);Berlman, Handbook of Fluorescence Spectra of Aromatic Molecules, 2nd Edition (Academic Press, New York, 1971);Griffiths, Color AND Constitution of Oiganic Molecules (Academic Press, New York, 1976);Bishop, editor, Indicators (Peigamon Press, Oxford, 1972);Haugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (Molecular Probes, Eugene, 1992);Pringsheim, Fluorescence and Phosphorescence (Interscience Publishers, New York, 1949);Haugland, RP, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 6th Edition (Molecular Probes, Eugene, Oreg., 1996);米国特許第3,996,345号、及び米国特許第4,351,760号を参照されたい。
【0083】
或る特定の好ましい実施の形態において、レポーター基は蛍光基である。かかる実施の形態において、レポーター基によって放出されるシグナルは蛍光であり、クエンチャー基は、蛍光を吸収/消光することができる分子又は基(例えば、蛍光を吸収することができる別の蛍光分子、又は蛍光を消光することができるクエンチャー)である。或る特定の好ましい実施の形態において、フルオロフォアとしては、限定されるものではないが、ALEX-350、FAM、VIC、TET、CAL Fluor(商標)Gold 540、JOE、HEX、CAL Fluor Orange 560、TAMRA、CAL Fluor Red 590、ROX、CAL Fluor Red 610、TEXAS RED、CAL Fluor Red 635、Quasar 670、CY3、CY5、CY5.5、Quasar 705等の様々な蛍光分子が挙げられる。或る特定の好ましい実施の形態において、クエンチャー基としては、限定されるものではないが、DABCYL、BHQ(例えば、BHQ-1又はBHQ-2)、ECLIPSE、及び/又はTAMRA等の様々なクエンチャーが挙げられる。
【0084】
本発明の方法において、検出プローブはまた、例えば、ヌクレアーゼ活性(例えば、5’ヌクレアーゼ活性、例えば5’→3’エキソヌクレアーゼ活性)に対する耐性を付与するように修飾することもできる。例えば、ヌクレアーゼ活性に耐性のある修飾を検出プローブの骨格に導入することができ、その例としては、ホスホロチオエートエステル結合、アルキルホスホトリエステル結合、アリールホスホトリエステル結合、アルキルホスホネートエステル結合、アリールホスホネートエステル結合、水素化ホスフェートエステル結合、アルキルホスホルアミデートエステル結合、アリールホスホルアミデートエステル結合、2’-O-アミノプロピル修飾、2’-O-アルキル修飾、2’-O-アリル修飾、2’-O-ブチル修飾、及び1-(4’-チオ-PD-リボフラノシル)修飾が挙げられる。
【0085】
本発明の方法において、検出プローブは、直鎖状であってもよく、又はヘアピン構造を有していてもよい。或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブは直鎖状である。或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブはヘアピン構造を有する。ヘアピン構造は、天然であってもよく、又は人工的に導入することができる。さらに、ヘアピン構造を有する検出プローブは、当該技術分野の従来の方法を用いて構築することができる。例えば、検出プローブは、2つの相補的なオリゴヌクレオチド配列を検出プローブの両端(5’末端及び3’末端)に付加することによってヘアピン構造を形成することができる。かかる実施の形態において、2つの相補的なオリゴヌクレオチド配列は、ヘアピン構造のアーム(ステム)を構成する。ヘアピン構造のアームは、任意の所望の長さにすることができ、例えば、アームは、2nt~15nt、例えば3nt~7nt、4nt~9nt、5nt~10nt、6nt~12ntの長さを有し得る。
【0086】
或る特定の実施の形態において、工程(2)の生成物を徐々に加熱することができ、検出プローブ上のレポーター基によって放出されるシグナルをリアルタイムで監視することができ、これにより、温度の変化に伴って変動する工程(2)の生成物のシグナル強度の曲線を取得する。例えば、工程(2)の生成物を、45℃以下の温度(例えば、45℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下)から75℃以上の温度(例えば、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃)まで徐々に加熱することができ、検出プローブ上のレポーター基によって放出されたシグナルをリアルタイムで監視し、温度の変化に応じて変動するレポーター基のシグナル強度の曲線を取得する。加熱速度は、当業者が日常的に決定することができる。例えば、加熱速度は次の通りであり得る:工程ごとに温度を0.01℃~1℃(例えば、0.01℃~0.05℃、0.05℃~0.1℃、0.1℃~0.5℃、0.5℃~1℃、0.04℃~4℃、例えば0.01℃、0.02℃、0.03℃、0.04℃、0.05℃、0.06℃、0.07℃、0.08℃、0.09℃、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.7℃、0.8℃、0.9℃又は1.0℃)上昇させ、各工程を0.5秒~15秒(例えば、0.5秒~1秒、1秒~2秒、2秒~3秒、3秒~4秒、4秒~5秒、5秒~10秒、10秒~15秒)維持するか、又は温度を毎秒0.01℃~1℃(例えば、0.01℃~0.05℃、0.05℃~0.1℃、0.1℃~0.5℃、0.5℃~1℃、0.04℃~0.4℃、例えば0.01℃、0.02℃、0.03℃、0.04℃、0.05℃、0.06℃、0.07℃、0.08℃、0.09℃、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.7℃、0.8℃、0.9℃、又は1.0℃)上昇させる。
【0087】
或る特定の実施の形態において、工程(2)の生成物を徐々に冷却することができ、検出プローブのレポーター基によって放出されるシグナルをリアルタイムで監視することができ、これにより、温度の変化に伴って変動する工程(2)の生成物のシグナル強度の曲線を取得する。例えば、工程(2)の生成物は、75℃以上の温度(例えば、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃、少なくとも95℃)から45℃以下の温度(例えば、45℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、25℃以下)まで徐々に冷却することができ、検出プローブ上のレポーター基によって放出されたシグナルを監視し、これにより温度の変化に応じて変動するレポーター基のシグナル強度の曲線を取得する。冷却速度は、当業者が日常的に決定することができる。例えば、冷却速度は次の通りであり得る:工程ごとに温度を0.01℃~1℃(例えば、0.01℃~0.05℃、0.05℃~0.1℃、0.1℃~0.5℃、0.5℃~1℃、0.04℃~4℃、例えば0.01℃、0.02℃、0.03℃、0.04℃、0.05℃、0.06℃、0.07℃、0.08℃、0.09℃、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.7℃、0.8℃、0.9℃又は1.0℃)低下させ、各工程を0.5秒~15秒(例えば、0.5秒~1秒、1秒~2秒、2秒~3秒、3秒~4秒、4秒~5秒、5秒~10秒、10秒~15秒)維持するか、又は温度を毎秒0.01℃~1℃(例えば、0.01℃~0.05℃、0.05℃~0.1℃、0.1℃~0.5℃、0.5℃~1℃、0.04℃~0.4℃、例えば0.01℃、0.02℃、0.03℃、0.04℃、0.05℃、0.06℃、0.07℃、0.08℃、0.09℃、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、0.6℃、0.7℃、0.8℃、0.9℃、又は1.0℃)低下させる。
【0088】
続いて、得られた曲線を微分して、工程(2)の生成物の融解曲線を得ることができる。融解曲線の融解ピーク(融点)に従い、融解ピーク(融点)に対応する標的核酸の存在を判断することができる。
【0089】
本発明の方法において、使用される検出プローブは、それぞれ独立して、同一又は異なるレポーター基を使用することができる。或る特定の好ましい実施の形態において、使用される検出プローブは、同じレポーター基を有する。この場合、(2)の生成物に対して融解曲線分析を実行し、融解曲線の融解ピーク(融点)に従って或る特定の標的核酸の存在を判断することができる。或る特定の好ましい実施の形態において、使用される検出プローブは、異なるレポーター基を有する。この場合、工程(2)の生成物を融解曲線分析に供すると、各レポーター基のシグナルをリアルタイムで監視することができ、これにより、1つのレポーター基のシグナルに対応する複数の融解曲線を取得する。その後、レポーター基のシグナル種及び融解曲線の融解ピーク(融点)に応じて、或る特定の標的核酸の存在を判断することができる。したがって、本発明の方法は、1つ以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又はそれ以上)の標的核酸配列の同時検出(多重検出)を達成することができる。
【0090】
理論上の制限に縛られることなく、同じ1つのレポーター基(同じ融解曲線)について、融解曲線分析の分解能又は精度は0.5℃以上に達する可能性がある。言い換えれば、融解曲線分析では、同じ融解曲線の融点の差がわずか0.5℃以下(例えば、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃)の2つの融解ピークを区別することができる。したがって、本発明の方法の或る特定の実施の形態において、様々な標的核酸によって形成される様々なデュプレックスとそれらの検出プローブとの間の融点差は、同じレポーター基を用いて少なくとも0.5℃であり得るため、異なるデュプレックス(したがって、異なる標的核酸)を、融解曲線分析によって区別及び識別することができる。しかしながら、区別及び識別を容易にするために、幾つかの場合には、2つのデュプレックスの融点の差がより大きいことが好ましい。したがって、本発明の方法の或る特定の実施の形態において、2つのデュプレックス間の融点の差は、融点差が融解曲線分析によって区別及び識別できる限り、任意の所望の値(例えば、少なくとも0.5℃、少なくとも1℃、少なくとも2℃、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも8℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、又は少なくとも20℃)とすることができる。
【0091】
或る特定の好ましい実施の形態において、本発明の方法の工程(1)~工程(3)は、以下の工程(a)~工程(g):
(a)1つ以上の標的核酸を含む試料を提供し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを提供するとともに、増幅される各標的核酸について、標的特異的プライマー対及び検出プローブを提供する工程であって、
第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、標的特異的プライマー対及び検出プローブが、上に定義される通りである工程と、
(b)試料を第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、標的特異的プライマー対及び検出プローブと、核酸ポリメラーゼ(例えば、テンプレート依存性核酸ポリメラーゼ;例えば、DNAポリメラーゼ、特に耐熱性DNAポリメラーゼ)と混合する工程と、
(c)核酸変性が可能な条件下で前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(d)核酸アニーリング又はハイブリダイゼーションが可能な条件下で、前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(e)核酸伸長が可能な条件下で前の工程の生成物をインキュベートする工程と、
(f)任意に、工程(c)~工程(e)を1回以上繰り返す工程と、
(g)前の工程の生成物に対して融解曲線分析を実施する工程と、
を含むプロトコルによって行うことができる。
【0092】
工程(a)~工程(g)については、上記で詳しく説明した。
【0093】
プライマーセット及びキット
一態様において、本発明は、プライマーセットであって、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーと、1つ以上の標的特異的プライマー対とを含み、
第1のユニバーサルプライマーが第1のユニバーサル配列を含み、
第2のユニバーサルプライマーが第2のユニバーサル配列を含み、第2のユニバーサル配列が第1のユニバーサル配列を含み、かつ第1のユニバーサル配列の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチドを更に含み、
各標的特異的プライマー対が標的核酸を増幅することができ、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含み、フォワードプライマーが、第1のユニバーサル配列と、標的核酸に特異的なフォワードヌクレオチド配列とを含み、フォワードヌクレオチド配列が第1のユニバーサル配列の3’末端に位置し、リバースプライマーが、第2のユニバーサル配列と、標的核酸に特異的なリバースヌクレオチド配列とを含み、リバースヌクレオチド配列が第2のユニバーサル配列の3’末端に位置し、第2のユニバーサル配列が、フォワードプライマーの相補配列と完全に相補的であってはならない、プライマーセットを提供する。
【0094】
或る特定の好ましい実施の形態において、プライマーセットは、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個、20個~50個又はそれ以上の標的特異的プライマー対、例えば少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、又はそれ以上の標的特異的プライマー対を含む。
【0095】
かかるプライマーセットは、上記で詳細に説明した本発明の方法を実施するために使用できることが容易に理解されるであろう。したがって、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、標的特異的プライマー対、標的核酸、及び試料について上記で詳細に説明した様々な技術的特徴を、本出願のプライマーセットを含む技術的解決策にも適用することができる。したがって、或る特定の好ましい実施の形態において、プライマーセットは、上で定義されるように、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、及び/又は標的特異的プライマー対を含む。
【0096】
或る特定の好ましい実施の形態において、プライマーセットを使用して、試料中の1つの標的核酸を増幅することができ、このプライマーセットは、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーと、第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーを含む第1の標的特異的プライマー対とを含み、
第1のユニバーサルプライマーは第1のユニバーサル配列を含み、
第2のユニバーサルプライマーは第2のユニバーサル配列を含み、第2のユニバーサル配列は第1のユニバーサル配列を含み、第1のユニバーサル配列の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチド(例えば、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド)を更に含み、
第1のフォワードプライマーは、第1のユニバーサル配列と、第1の標的核酸に特異的な第1のフォワードヌクレオチド配列とを含み、第1のフォワードヌクレオチド配列は第1のユニバーサル配列の3’末端に位置し、
第1のリバースプライマーは、第2のユニバーサル配列と、第1の標的核酸に特異的な第1のリバースヌクレオチド配列とを含み、第1のリバースヌクレオチド配列は、第2のユニバーサル配列に対して3’に位置し、
第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーは、第1の標的核酸を特異的に増幅することができ、
第2のユニバーサル配列は、第1のフォワードプライマーの相補配列と完全に相補的であってはならない。
【0097】
或る特定の好ましい実施の形態において、上記プライマーセットを試料中の2つの標的核酸を増幅するために使用することができ、このプライマーセットは、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーと、第1の標的特異的プライマー対及び第2の標的特異的プライマー対とを含み、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーは、上記で定義した通りであり、第1の標的特異的プライマー対は、第1の標的核酸を増幅することができる第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーを含み、第2の標的特異的プライマー対は、第2の標的核酸を増幅可能な第2のフォワードプライマー及び第2のリバースプライマーを含み、第1のフォワードプライマー、第1のリバースプライマー、第2のフォワードプライマー、及び第2のリバースプライマーは、上に定義される通りである。同様に、或る特定の好ましい実施の形態において、本発明のプライマーセットは、試料中の3個以上の標的核酸を増幅するために使用することができ、このプライマーセットは、第1のユニバーサルプライマー、第2のユニバーサルプライマー、及び3個以上の標的核酸を増幅することができる、3個以上の標的特異的プライマー対を含む。
【0098】
さらに、便宜上、本発明のプライマーセットを、本発明の方法(増幅方法又は検出方法)を実施するのに必要な1つ以上の試薬と組み合わせてキットを作製することができる。かかるキットは、上記で詳細に説明した本発明の方法を実施するために使用できることが容易に理解されるであろう。したがって、様々な構成要素について上記で詳述した様々な技術的特徴は、キットの様々な構成要素に等しく適用される。さらに、かかるキットはまた、本発明の方法を実施するのに必要な他の試薬を含んでもよい。
【0099】
したがって、別の態様において、本出願は、上に記載されるプライマーセットと、核酸ポリメラーゼ、核酸増幅用試薬、シーケンシング用試薬、遺伝子チップ検出用試薬、融解曲線分析用試薬、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される1つ以上の構成要素とを含むキットを提供する。
【0100】
或る特定の好ましい実施の形態において、核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、特に耐熱性DNAポリメラーゼ等のテンプレート依存性核酸ポリメラーゼである。或る特定の好ましい実施の形態において、核酸ポリメラーゼは上に定義される通りである。
【0101】
核酸増幅用試薬は、従来法により当業者が決定することができ、限定されるものではないが、酵素(例えば、核酸ポリメラーゼ)用の作用バッファー、dNTP(標識又は非標識)、水、イオン(例えば、Mg2+)を含む溶液、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)、又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0102】
シーケンシング用試薬は、従来法により当業者が決定することができ、限定されるものではないが、酵素(例えば、核酸ポリメラーゼ)用の作用バッファー、dNTP(標識又は非標識)、ddNTP(標識又は非標識)、水、イオン(例えば、Mg2+)を含む溶液、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)、リガーゼ、核酸リンカー、シーケンシングプライマー、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0103】
遺伝子チップ検出用試薬は、従来法により当業者が決定することができ、限定されるものではないが、酵素(例えば、核酸ポリメラーゼ)用の作用バッファー、dNTP(標識又は非標識)、水、ハイブリダイゼーションバッファー、洗浄バッファー、標識試薬、又はこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0104】
融解曲線分析用試薬は、従来法により当業者が決定することができ、限定されるものではないが、検出プローブが挙げられる。或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブは、自己消光プローブ、例えば、自己消光蛍光プローブである。或る特定の好ましい実施の形態において、検出プローブは上に定義される通りである。
【0105】
本出願において詳細に記載される原理に基づいて、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の技術的解決策の様々な技術的特徴を変更、置き換え、又は組み合わせることができる。かかる技術的解決策及びその修正は全て、本出願の請求項又は均等物の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0106】
本発明の有益な効果
従来技術と比較して、本発明の技術的解決策は、以下の有益な効果を有する:
(1)従来のHANDシステム及び従来のHANDシステムを用いる増幅方法と比較して、本発明の技術的解決策は、複数の標的核酸の同時の非対称増幅(多重非対称増幅)を実現することができる。
(2)従来の多重非対称PCR増幅方法と比較して、本発明の技術的解決策は、プライマーダイマーの非特異的増幅を効果的に抑制し、増幅の特異性及び検出感度を大幅に改善することができる。
【0107】
したがって、本発明は、複数の標的核酸を同時に、非対称的に増幅することができ、効果的な多重PCR増幅と非対称PCR増幅とを同時に達成することができ、複数の標的核酸の増幅と検出を同時に実施するための臨床上の要件を満たすことができる新たな方法を開発する。
【0108】
本発明の実施形態を以下で図面及び実施例を参照して詳細に説明するが、当業者であれば、以下の図面及び実施例は、本発明の範囲を限定するのではなく、本発明を例示するためにのみ使用されることを理解するであろう。本発明の様々な対象及び有利な態様は、当業者には添付の図面及び以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【
図1】本発明の方法の基本原理を説明するため、本発明の方法の例示的な実施形態を模式的に示す図である。
図1Aは、この実施形態において使用されるプライマーセットを模式的に示し、このプライマーセットは、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーと、第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーを含む第1の標的特異的プライマー対とを含み、 第1のユニバーサルプライマーは第1のユニバーサル配列(Tag1)を含み、 第2のユニバーサルプライマーは第2のユニバーサル配列(Tag2)を含み、第2のユニバーサル配列は第1のユニバーサル配列を含み、第1のユニバーサル配列の3’末端に少なくとも1つのヌクレオチド(例えば、1個~5個、5個~10個、10個~15個、15個~20個又はそれ以上のヌクレオチド)を更に含み、 第1のフォワードプライマーは、第1のユニバーサル配列と、第1の標的核酸に特異的な第1のフォワードヌクレオチド配列とを含み、第1のフォワードヌクレオチド配列は第1のユニバーサル配列の3’末端に位置し、 第1のリバースプライマーは、第2のユニバーサル配列と、第1の標的核酸に特異的な第1のリバースヌクレオチド配列とを含み、第1のリバースヌクレオチド配列は、第2のユニバーサル配列に対して3’に位置し、 第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーは、第1の標的核酸を特異的に増幅することができ、 第2のユニバーサル配列は、第1のフォワードプライマーの相補配列と完全に相補的ではない。
図1Bは、
図1Aのプライマーセットを増幅に使用すると、プライマーダイマーの非特異的増幅が抑制される原理を模式的に示し、図中、第1のフォワードプライマー及び第1のリバースプライマーの非特異的増幅によって形成されたプライマーダイマーは、変性後に、互いに相補的なリバース配列を含む5’末端及び3’末端を有する一本鎖核酸を生成し、一本鎖核酸自体は、アニーリング段階で安定したパンハンドル構造を形成し、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーが一本鎖核酸をアニーリング及び伸長することを防ぎ、それによってプライマーダイマーの更なる増幅を阻害する。
図1Cは、
図1Aのプライマーセットを用いた多重非対称増幅の原理を模式的に示す。この実施形態において、最初に、低濃度の第1の標的特異的プライマー対を用いてPCR増幅を開始し、初期増幅産物を生成し、これは、第1のフォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマー及び第1のリバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーにそれぞれ相補的な2本の核酸鎖(核酸鎖A及び核酸鎖B)を含み、続いて、高濃度の第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーを使用して、初期増幅産物のその後のPCR増幅を行う。 第1のリバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーの両方が第1のユニバーサル配列を含むことから、第1のユニバーサルプライマーは、核酸鎖A(第1のフォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)にアニールしてその相補鎖を合成することができるだけでなく、核酸鎖B(第1のリバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)にアニールしてその相補鎖を合成することができる。すなわち、第1のユニバーサルプライマーは、核酸鎖Aと核酸鎖Bを同時に増幅することができる。 第2のユニバーサルプライマーは、第1のユニバーサル配列の3’末端に追加のヌクレオチドを含むため、3’末端で核酸鎖A(第1のフォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)と一致しない(すなわち、3’末端で完全に相補的ではない)。したがって、増幅プロセスの間、第2のユニバーサルプライマーは、核酸鎖B(第1のリバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)に優先的にアニールしてその相補鎖を合成するが、核酸鎖A(第1のフォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマーに相補的な核酸鎖)の相補鎖を実質的に伸長及び合成することができない。 したがって、PCR増幅が進むにつれて、核酸鎖Aの相補鎖(核酸鎖B)の合成効率は、核酸鎖Bの相補鎖(核酸鎖A)の合成効率よりも顕著に低くなり、その結果、核酸鎖Bの相補鎖(核酸鎖A)が大量に合成及び増幅され、一方、核酸鎖Aの相補鎖(核酸鎖B)の合成及び増幅が阻害され、その結果、標的一本鎖生成物(第1のフォワードプライマー/第1のユニバーサルプライマーに相補的な配列を含む核酸鎖Aと、第1のリバースプライマー/第2のユニバーサルプライマーの配列とを含む)を大量にもたらし、非対称増幅を達成する。さらに、増幅の非対称性を更に高めるため、第1のユニバーサルプライマーと第2のユニバーサルプライマーとの比率も調整することができ、その結果、第1のユニバーサルプライマーの濃度が第2のユニバーサルプライマーの濃度よりも低くなり、標的一本鎖生成物により富んだものになる。 さらに、上記で定義された第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーは、上記で定義された少なくとも2つ以上の標的特異的プライマー対と組み合わせて使用することもでき、各標的特異的プライマー対は、1つの標的核酸を特異的に増幅することができるフォワードプライマー及びリバースプライマーを含み、フォワードプライマーは、第1のユニバーサル配列と、標的核酸に特異的なフォワードヌクレオチド配列とを含み、リバースプライマーは、第2のユニバーサル配列と、標的核酸に特異的なリバースヌクレオチド配列とを含み、これにより、本発明の実施形態(プライマーセット)を、少なくとも2つ以上の標的核酸の多重非対称増幅を達成するために使用することができる。
図1Cに示す例示的な実施形態において、上記で定義された第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーが、2つの標的特異的プライマー対と組み合わせて使用され、第1の標的特異的プライマー対は、第1の標的核酸を特異的に増幅することができる第1のフォワードプライマーと第1のリバースプライマーとを含み、第1のフォワードプライマーは、第1のユニバーサル配列と、第1の標的核酸に特異的な第1のフォワードヌクレオチド配列とを含み、第1のリバースプライマーは、第2のユニバーサル配列と、第1の標的核酸に特異的な第1のリバースヌクレオチド配列とを含み、第2の標的特異的プライマー対は、第2の標的核酸を特異的に増幅することができる第2のフォワードプライマーと第2のリバースプライマーとを含み、第2のフォワードプライマーは、第1のユニバーサル配列と、第2の標的核酸に特異的な第2のフォワードヌクレオチド配列とを含み、第2のリバースプライマーは、第2のユニバーサル配列と、第2の標的核酸に特異的な第2のリバースヌクレオチド配列とを含む。したがって、プライマーセットを使用して、第1の標的核酸及び第2の標的核酸を同時に非対称増幅することができる。
【
図2】実施例1において、HANDシステム、従来の非対称PCRシステム、及び本発明のシステムを用いたリアルタイムPCR増幅の結果を示す図であり、図中、黒色及び灰色の破線は、HANDシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した増幅曲線をそれぞれ表し、黒色及び灰色の点線は、従来の非対称PCRシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した増幅曲線をそれぞれ表し、黒色及び灰色の実線は、本発明のシステムを用いてヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した増幅曲線をそれぞれ表す。
【
図3】実施例1において、HANDシステム、従来の非対称PCRシステム、及び本発明のシステムを用いた増幅後の融解曲線分析の結果を示す図であり、図中、黒色及び灰色の破線は、HANDシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果をそれぞれ表し、黒色及び灰色の点線は、従来の非対称PCRシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果を表し、黒色及び灰色の実線は、本発明のシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果をそれぞれ表す。
【
図4】実施例1において、HANDシステム、従来の非対称PCRシステム、及び本発明のシステムを用いて得られた増幅産物のアガロースゲル電気泳動の結果を示す図であり、図中、レーンMは分子量マーカーを表し、レーン1~レーン3はHANDシステム(レーン1)、本発明のシステム(レーン2)、及び従来の非対称PCRシステム(レーン3)をそれぞれ使用してヒトゲノムDNAを増幅した生成物を表し、レーン4~レーン6は、HANDシステム、本発明のシステム及び従来の非対称PCRシステムをそれぞれ使用して陰性対照を増幅した生成物を表す。
【
図5】実施例2において、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーの比率を変えて本発明のシステムを用いて増幅した後の融解曲線分析の結果を示す図である。
【
図6】実施例3において、本発明のシステムを用いて増幅した後の融解曲線分析の結果を示し、黒色実線は、本発明のシステムを用いて試料1を増幅した後の融解曲線分析の結果を表し、黒色破線は、本発明のシステムを用いて試料2を増幅した後の融解曲線分析の結果を表し、灰色実線は、本発明のシステムを用いて陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果を表す。
【
図7】実施例4において、本発明のシステムを用いて増幅した後の融解曲線分析の結果を示す図であり、黒色実線(試料3)、黒色破線(試料4)、黒色点線(試料5)、灰色破線(試料6)、及び灰色点線(試料7)はそれぞれ、本発明のシステムを用いて試料3~試料7を増幅した後の融解曲線分析の結果を表し、灰色実線は、本発明のシステムを使用して陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果を表す。
【
図8】実施例5において、本発明のシステムを用いた増幅後の融解曲線分析の結果を示し、図中、黒色点線、黒色破線、灰色点線、灰色破線、黒色実線、及び灰色実線は、それぞれ、ゲノムDNA濃度が10ng/μL、1ng/μL、0.1ng/μL、0.05ng/μL、0.02ng/μL、又は0.01ng/μLの試料を増幅した後の融解曲線分析の結果を表す。
【
図9】実施例5において、従来の多重非対称PCRシステムを用いた増幅後の融解曲線分析の結果を示し、図中、黒色点線、黒色破線、灰色点線、灰色破線、黒色実線、及び灰色実線は、それぞれ、ゲノムDNA濃度が10ng/μL、1ng/μL、0.1ng/μL、0.05ng/μL、0.02ng/μL、又は0.01ng/μLの試料を増幅した後の融解曲線分析の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明を実施するための特定のモデル
ここで、本発明は、以下の実施例を参照して説明され、これらの実施例は、本発明を説明することを意図しているが、これに限定するものではない。これらの実施例は、本発明の原理及び技術的効果を説明するためにのみ使用されるが、本発明の全ての可能性を表すものではないことを理解すべきである。本発明は、これらの実施例で言及される材料、反応条件、又はパラメータに限定されない。当業者は、本発明の原理に従って、他の類似の材料又は反応条件を使用して、他の技術的解決策を実施することができる。かかる技術的解決策は、本発明に記載された基本原理及び概念から逸脱せず、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0111】
実施例1
この実施例では、ヒト15番染色体上の遺伝子多型部位rs8027171を含むDNAフラグメントを増幅される標的核酸として使用することにより、HANDシステム、従来の非対称PCRシステム、及び本発明のシステム(プライマーセット)を調べて、一本鎖核酸生成物を作製した。この実施例で使用したプライマー及びプローブの配列を表1に示した。この実施例で使用した機器は、SLAN 96リアルタイム蛍光PCR機(Xiamen Zeesan Biotech Co., Ltd.、廈門)であった。
【0112】
簡単に説明すると、この実施例では、PCR増幅及び融解曲線分析に25μLのPCR反応システムを使用し、PCR反応システムは、1×Taq PCRバッファー(TaKaRa、北京)、5.0mM MgCl2、0.2mM dNTP、1U Taqポリメラーゼ(TaKaRa、北京)、0.3μM rs8027171-Pプローブ、5μLのヒトゲノムDNA(rs8027171の遺伝子型はG/Aヘテロ接合体であった)又は陰性対照(水)、及びプライマーで構成され、
(1)HANDシステムで使用されたプライマーは、0.02μM rs8027171-F、0.02μM rs8027171-R、0.66μM Tag1プライマーであり、
(2)従来の非対称PCRシステムで使用されたプライマーは、0.06μM rs8027171-F、0.6μM rs8027171-Rであり、
(3)本発明のシステムで使用されたプライマーは、0.02μM rs8027171-F、0.02μM rs8027171-R、0.06μM Tag1プライマー、及び0.6μM Tag2プライマーであった。
【0113】
PCR増幅プログラムは以下の通りであった:95℃で5分間予備変性、10サイクルの(95℃で15秒間の変性、65℃~56℃で15秒間のアニーリング(1サイクルあたり1℃低下)、76℃で20秒間の伸長)、50サイクルの(95℃で15秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、76℃で20秒間の伸長)であり、CY5チャンネルの蛍光シグナルをアニーリング段階の間に集めた。PCR増幅後、融解曲線分析を行い、そのプログラムは、以下の通りであった:95℃で1分間の変性;37℃で3分間のインキュベーション;次いで、温度を0.04℃/秒の加熱速度で40℃から85℃に上昇させ、CY5チャネルの蛍光シグナルを収集した。最後に、各PCR産物を2%アガロースゲル電気泳動によって分析した。実験結果を
図2~
図4に示した。
【0114】
【0115】
図2は、実施例1において、HANDシステム、従来の非対称PCRシステム、及び本発明のシステムを用いたリアルタイムPCR増幅の結果を示し、図中、黒色及び灰色の破線は、HANDシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した増幅曲線をそれぞれ表し、黒色及び灰色の点線は、従来の非対称PCRシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した増幅曲線をそれぞれ表し、黒色及び灰色の実線は、本発明のシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した増幅曲線をそれぞれ表した。結果は、3つのシステム全てがヒトゲノムDNAを効果的で特異的に増幅し、対応する増幅シグナルを生成でき(黒色破線、黒色点線、及び黒色実線)、各システムの陰性対照には増幅シグナルがなかった(灰色破線、灰色点線、及び灰色実線)ことを示した。さらに、従来の非対称PCRシステムの増幅曲線(黒色点線)は、高濃度の標的特異的プライマーによる標的核酸の直接増幅によって引き起こされる最小のCt値を有することが注目された。
【0116】
図3は、実施例1において、HANDシステム、従来の非対称PCRシステム、及び本発明のシステムを用いた増幅後の融解曲線分析の結果を示し、図中、黒色及び灰色の破線は、HANDシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果をそれぞれ表し、黒色及び灰色の点線は、従来の非対称PCRシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果をそれぞれ表し、黒色及び灰色の実線は、本発明のシステムを使用してヒトゲノムDNA及び陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果をそれぞれ表した。
【0117】
図4は、実施例1において、HANDシステム、従来の非対称PCRシステム、及び本発明のシステムを用いて得られた増幅産物のアガロースゲル電気泳動の結果を示し、図中、レーンMは分子量マーカーを表し、レーン1~レーン3はHANDシステム(レーン1)、本発明のシステム(レーン2)、及び従来の非対称PCRシステム(レーン3)をそれぞれ使用してヒトゲノムDNAを増幅した生成物を表し、レーン4~レーン6は、HANDシステム、本発明のシステム、及び従来の非対称PCRシステムをそれぞれ使用して陰性対照を増幅した生成物を表した。
【0118】
図3及び
図4の結果は、HANDシステムを増幅に使用した場合、増幅産物は基本的に二本鎖核酸であり、一本鎖核酸生成物を生成できず(
図4、レーン1)、したがって、融解曲線分析の過程で、プローブは増幅産物の相補鎖に効果的にハイブリダイズできず、有効な融解ピークを生成できなかった(
図3、黒色破線)ことを示した。したがって、HANDシステムを増幅に使用した場合、その後のプローブ融解曲線分析を効率的に実行することができなかった。しかしながら、本発明のシステム及び従来の非対称PCRシステムを増幅に使用すると、大量の一本鎖核酸生成物が生成され(
図4、レーン2及びレーン3)、したがって、融解曲線分析の過程で、プローブは効率的に増幅産物にハイブリダイズし、特定の融解ピークを生成することができた(
図3、黒色実線及び黒色点線)。さらに、
図3及び
図4の結果は、水をテンプレートとして使用する陰性対照システムのどれも有効な融解ピークを生成できず(
図3、灰色破線、灰色点線、及び灰色実線)、これは、PCRプロセスで所望の増幅産物が生成されなかったためである(
図4、レーン4~レーン6)ことも示している。さらに、
図3に示すように、黒色点線及び黒色実線の同じ位置に2つの融解ピークが現れた。この結果は、検出された試料(標的核酸)がヘテロ接合であり、増幅プロセス中に2つの一本鎖核酸生成物が生成されたことを示した。
【0119】
この実施例の結果は、本発明のシステムを使用して、標的核酸の非対称増幅を得ることができ、したがってプローブ融解曲線分析と組み合わせて使用できることを実証した。
【0120】
実施例2
この実施例では、ヒト15番染色体上の遺伝子多型部位rs8027171を含むDNAフラグメントを増幅される標的核酸として使用することにより、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーの比が非対称増幅に及ぼす影響を調べた。この実施例で使用したプライマー及びプローブの配列を表1に示した。この実施例で使用した機器は、SLAN 96リアルタイム蛍光PCR機であった。
【0121】
簡単に説明すると、この実施例では、PCR増幅及び融解曲線分析に25μLのPCR反応システムを使用し、PCR反応システムは、1×Taq PCRバッファー、5.0mM MgCl2、0.2mM dNTP、1U Taq DNAポリメラーゼ、5μLのヒトゲノムDNA(rs8027171の遺伝子型はG/Aヘテロ接合体であった)、0.02μM rs8027171-F、0.02μM rs8027171-R、0.3μM rs8027171-Pプローブ、0.06μM Tag1プライマー、及び以下の量:0.06μM(Tag1/Tag2=1/1)、0.24μM(Tag1/Tag2=1/4)、0.48μM(Tag1/Tag2=1/8)、0.72μM(Tag1/Tag2=1/12)、0.96μM(Tag1/Tag2=1/16)、又は1.2μM(Tag1/Tag2=1/20)のTag2プライマーを含んだ。
【0122】
PCR増幅プログラムは、95℃で5分間の予備変性、10サイクルの(95℃で15秒間の変性、65℃~56℃で15秒間のアニーリング(各サイクルで1℃低下)、76℃で20秒間の伸長)、50サイクルの(95℃で15秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、及び76℃で20秒間の伸長)であった。PCR増幅が完了した後、融解曲線分析を行い、そのプログラムは以下の通りであった:95℃で1分間の変性;37℃で3分間のインキュベーション;次いで、温度を0.04℃/秒の加熱速度によって40℃から85℃に上昇させ、CY5チャネルの蛍光シグナルを収集した。融解曲線分析の結果を
図5に示した。
【0123】
図5は、実施例2において、第1のユニバーサルプライマー及び第2のユニバーサルプライマーの比率を変えて本発明のシステムを用いて増幅した後の融解曲線分析の結果を示した。
図5の結果は、Tag1/Tag2≦1/1の様々な比率の下で、本発明のシステムを用いて標的核酸の非対称増幅を得ることができ、その結果、一本鎖核酸生成物が得られることを示し、したがって、その増幅産物は効率的な融解曲線分析に使用できることを示した。
図5の結果は、異なるTa1/Tag2比が融解ピークの高さに影響を与える可能性があることも示した。これは、異なるTag1/Tag2比がPCR反応の増幅効率に影響を与え、結果として一本鎖核酸生成物の収量が異なるためであった。本発明のシステムに適した最適なTag1/Tag2比は、実際の状況に応じた実験によって調整及び決定することができた。
【0124】
実施例3
この実施例では、遺伝子多型部位rs48189298及びrs60871880のタイピングを例にとり、本発明のシステムが単一の反応管で二重非対称増幅を実現し、プローブの融解曲線分析に使用できることを説明した。この実施例で使用したプライマー及びプローブの配列を表2に示した。この実施例で使用した機器は、SLAN 96リアルタイム蛍光PCR機であった。
【0125】
簡単に説明すると、この実施例では、PCR増幅及び融解曲線分析に25μLのPCR反応システムを使用し、PCR反応システムは、1×Taq PCRバッファー、5.0mM MgCl2、0.2mM dNTP、1U Taq DNAポリメラーゼ、0.04μM rs48189298-F、0.04μM rs48189298-R、0.4μM rs48189298-P、0.06μM rs60871880-F、0.06μM rs60871880-R、0.4μM rs60871880-P、0.2μM Tag3プライマー、1.6μM Tag2プライマー、5μLのヒトゲノムDNA、又は陰性対照(水)を含んだ。この実施例では、2つの試料(試料1及び試料2)が検出され、試料1のrs48189298部位及びrs60871880部位の遺伝子型がシーケンシングによってA/A及びG/Gであることが決定され、試料2のrs48189298部位及びrs60871880部位の遺伝子型が、シーケンシングによってA/T及びG/Aとして決定された。
【0126】
PCR増幅プログラムは以下の通りであった:95℃で5分間の予備変性、10サイクルの(95℃で15秒間の変性、65℃~56℃で15秒間のアニーリング(各サイクルで1℃低下)、76℃で20秒間の伸長)、50サイクルの(95℃で15秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、76℃で20秒間の伸長)。PCR増幅後、融解曲線分析を行い、そのプログラムは、以下の通りであった:95℃で1分間の変性;37℃で3分間のインキュベーション;次いで、温度を0.04℃/秒の加熱速度で40℃から85℃に上昇させ、ROXチャネルの蛍光シグナルを収集した。実験結果を
図6に示した。
【0127】
【0128】
図6は、実施例3において、本発明のシステムを用いた増幅後の融解曲線分析の結果を示し、図中、黒色実線は、本発明のシステムを用いて試料1を増幅した後の融解曲線分析の結果を表し、黒色破線は、本発明のシステムを用いて試料2を増幅した後の融解曲線分析の結果を表し、灰色実線は、本発明のシステムを用いて陰性対照を増幅した後の融解曲線分析の結果を表した。
【0129】
図6の結果は、試料1(黒色実線)の遺伝子多型部位rs48189298及びrs60871880の遺伝子型がそれぞれA/A及びG/Gであり、試料2(黒色破線)の遺伝子多型部位rs48189298及びrs60871880の遺伝子型がそれぞれA/T及びG/Aであり、陰性対照(灰色実線)には融解ピークはないことを示し、各試料の遺伝子型結果は、シーケンシングによって得られた結果と一致していた。これらの結果は、本発明のシステムが、単一の反応システムにおいて2つの標的核酸を同時に非対称的に増幅でき、効果的で信頼性の高い融解曲線分析に十分な一本鎖核酸生成物をそれぞれ生成することができ、これにより、2つの標的核酸の同定(例えば、2つの遺伝子多型部位のジェノタイピング)を実現することを示した。したがって、融解曲線分析技術と組み合わせることで、本発明のシステムは、2つの標的核酸の検出及び同定(例えば、ジェノタイピング)を同時に実現することができた。
【0130】
実施例4
この実施例では、13の遺伝子多型部位(すなわち、rrs4847034、rs2826949、rs8103778、rs1396009、rs1523537、rs1528460、rs7937238、rs2111980、rs7278737、rs591173、rs1358856、rs2730648、及びrs859400)を例に取り、本発明のシステムが、単一の反応管で13プレックスの非対称増幅を実現することができ、プローブの融解曲線分析に用いることができることを実証した。この実施例で使用したプライマー及びプローブの配列を表3に示した。この実施例で使用した機器は、SLAN 96リアルタイム蛍光PCR機であった。
【0131】
簡単に説明すると、この実施例では、PCR増幅及び融解曲線分析に25μLのPCR反応システムを使用し、PCR反応システムは、1×Taq PCRバッファー、5.0mM MgCl2、0.2mM dNTP、1U Taq DNAポリメラーゼ、5μLのヒトゲノムDNA又は陰性対照(水)と、プライマー及びプローブとを含んだ。使用したプライマーとプローブの濃度を表3に示した。この実施例では、合計5つの試料を検出した(試料3~試料7、各PCR反応システムを使用して1つの試料を検出した)。
【0132】
PCR増幅プログラムは以下の通りであった:95℃で5分間の予備変性、10サイクルの(95℃で15秒間の変性、65℃~56℃で15秒間のアニーリング(各サイクルで1℃低下)、76℃で20秒間の伸長)、50サイクルの(95℃で15秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、76℃で20秒間の伸長)であった。PCR増幅後、融解曲線分析を行い、そのプログラムは、以下の通りであった:95℃で1分間の変性;37℃で3分間のインキュベーション;次いで、温度を0.04℃/秒の加熱速度で40℃から85℃に上昇させ、FAM、HEX、ROX、CY5、及びQuasar 705のチャネルの蛍光シグナルを収集した。実験結果を
図7に示した。
【0133】
【0134】
図7は、実施例4において、本発明のシステムを用いた増幅後の融解曲線分析の結果を示し、図中、黒色実線(試料3)、黒色破線(試料4)、黒色点線(試料5)、灰色破線(試料6)、及び灰色点線(試料7)は、それぞれ、本発明のシステムを使用して試料3~試料7を増幅した後の融解曲線分析の結果を表した。
図7の融解曲線分析の結果を表4に更に要約した。
【0135】
【0136】
さらに、試料3~試料7の13個の遺伝子多型部位のジェノタイピング結果をシーケンシングによっても同定した。結果は、本発明のシステムによって得られた各試料のジェノタイピング結果(
図7及び表4)が、シーケンシングによって得られた結果と完全に一致することを示した。
【0137】
これらの結果は、本発明のシステムが、単一の反応システムにおいて試料中の13個の標的核酸を同時に非対称的に増幅し、有効で信頼性の高い融解曲線分析に十分な一本鎖核酸生成物をそれぞれ生成し得ることを示し、これにより、複数の標的核酸の同定(例えば、複数の遺伝子多型部位のジェノタイピング)が可能になった。したがって、融解曲線分析技術と組み合わせることで、本発明のシステムは、複数の標的核酸の検出及び同定(例えば、ジェノタイピング)を同時に実現することができた。
【0138】
実施例5
この実施例では、本発明のシステムと従来の多重非対称PCRシステムとの分析感度を比較するために、異なる濃度のヒトゲノムDNAを含む試料のジェノタイピングを例にとった。この実施例で使用されたゲノムDNAの13の遺伝子多型部位は既知の遺伝子型であり、具体的には以下の通りであった:rs4847034:A/G;rs2826949:T/T;rs8103778:C/C;rs1396009:A/G;rs1523537:T/C;rs1528460:T/T;rs7937238:T/C;rs2111980:A/G;rs7278737:T/G;rs591173:T/C;rs1358856:A/A;rs2730648:G/A;及びrs859400:G/G。この実施例で使用したプライマー及びプローブの配列を表3に示した。この実施例で使用した機器は、SLAN 96リアルタイム蛍光PCR機であった。
【0139】
簡単に説明すると、この実施例では、PCR増幅及び融解曲線分析に25μLのPCR反応システムを使用し、PCR反応システムは、1×Taq PCRバッファー、7.0mM MgCl2、0.2mM dNTP、1U Taq DNAポリメラーゼ、5μLのヒトゲノムDNA(10ng/μL、1ng/μL、0.1ng/μL、0.05ng/μL、0.02ng/μL、又は0.01ng/μLの濃度)と、プライマー及びプローブとを含んだ。使用したプライマーとプローブの濃度を表5に示した。
【0140】
PCR増幅プログラムは、95℃で5分間の予備変性、10サイクルの(95℃で15秒間の変性、65℃~56℃で15秒間のアニーリング(各サイクルで1℃低下)、76℃で20秒間の伸長)、50サイクルの(95℃で15秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、76℃で20秒間の伸長)であった。PCR増幅後、融解曲線分析を行い、そのプログラムは次の通りであった:95℃で1分間の変性;37℃で3分間のインキュベーション;次いで、温度を0.04℃/秒の加熱速度で40℃から85℃に上昇させ、FAM、HEX、ROX、CY5、及びQuasar 705のチャネルの蛍光シグナルを収集した。実験結果を
図8及び
図9に示した。
【0141】
【0142】
図8は、実施例5において、本発明のシステムを用いた増幅後の融解曲線分析の結果を示し、図中、黒色点線、黒色破線、灰色点線、灰色破線、黒色実線、及び灰色実線は、それぞれ、DNA濃度が10ng/μL、1ng/μL、0.1ng/μL、0.05ng/μL、0.01ng/μL、又は0.005ng/μLの試料を増幅した後の融解曲線分析の結果を表した。
【0143】
図9は、実施例5において、従来の多重非対称PCRシステムを用いた増幅後の融解曲線分析の結果を示し、図中、黒色点線、黒色破線、灰色点線、灰色破線、黒色実線、及び灰色実線は、それぞれ、ゲノムDNA濃度が10ng/μL、1ng/μL、0.1ng/μL、0.05ng/μL、0.01ng/μL、又は0.005ng/μLの試料を増幅した後の融解曲線分析の結果を表した。
【0144】
図8の結果は、ヒトゲノムDNAの濃度が0.05ng/μL(灰色破線)と低かったとしても、本発明のシステムは、13個の遺伝子多型部位全ての遺伝子型を安定して正確に検出できることを示した。対照的に、
図9の結果は、従来の多重非対称PCRシステムでは、ヒトゲノムDNAの濃度が10ng/μL(黒色点線)の場合にのみ13個の遺伝子多型部位全ての遺伝子型を検出でき、ヒトゲノムDNAの濃度が1ng/μL(灰色破線)のとき、幾つかの遺伝子多型部位(例えば、rs8103778部位)の遺伝子型は検出及び識別できなくなった(識別可能な融解ピークは生成されなかった)ことを示した。これは、従来の多重非対称PCR反応システムでは、高濃度の複数のプライマーとプローブとが互いに相互作用し、幾つかの遺伝子多型部位の非対称増幅を効果的に行うことができず、融解曲線分析に十分な量の一本鎖生成物を生成できなかったためと考えられる。
【0145】
上記の結果は、本発明のシステムの検出感度が、従来の多重非対称PCRシステムの検出感度よりも顕著に高いことを示した。これは主に、本発明のシステムが、増幅のために低濃度の標的特異的プライマー及び高濃度のユニバーサルプライマーを使用することから、プライマー間の干渉が効果的に低減され、ダイマーの非特異的増幅等が低減され、反応システム内の各標的核酸の増幅が平衡に達し、それによって反応システム全体の検出感度が向上するためである。
【0146】
本発明の特定の実施形態が詳細に説明されるが、当業者は、開示された全ての教示に照らして、詳細に様々な修正及び変更を加えることができること、並びにこれらの変更が全て本発明の範囲内にあることを理解する。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれに相当するものによって与えられる。
【配列表】