(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロック及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20241203BHJP
A61C 5/70 20170101ALI20241203BHJP
A61K 6/887 20200101ALI20241203BHJP
A61K 6/893 20200101ALI20241203BHJP
A61K 6/853 20200101ALI20241203BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C5/70
A61K6/887
A61K6/893
A61K6/853
(21)【出願番号】P 2022560995
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2021002178
(87)【国際公開番号】W WO2021206288
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0043757
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516371391
【氏名又は名称】ハス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HASS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】77-14,Gwahakdanji-ro Gangneung-si Gangwon-do 25452,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョン ボン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、シ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、イェ ナ
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0251979(US,A1)
【文献】国際公開第2018/074600(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0072704(KR,A)
【文献】特開昭59-140276(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070544(WO,A1)
【文献】米国特許第04525493(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0262240(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
A61C 13/00
A61C 13/083
A61C 5/70
A61K 6/887
A61K 6/893
A61K 6/853
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウンブロックを準備する段階(S1);
アバットメントを準備する段階(S2);
クラウンブロックを所定のアバットメントの形状に沿って穴あけ加工する段階(S3);
アバットメントに重合性有機化合物を含む接着性組成物を塗布する段階(S4);
接着性組成物が塗布されたアバットメントを穴あけ加工されたクラウンブロックに締結する段階(S5);及び、
アバットメントが締結されたクラウンブロックを硬化させて、アバットメントとクラウンブロックとを一体化する段階(S6)を含み、
クラウンブロック
の素材は、ポリメチルメタクリレート系高分子(PMMA)、セラミックスとレジンとの複合体、ジルコニア、及び結晶化ガラスの中から選ばれた少なくとも1種の素材を含むものであり、
クラウンブロックは、切削加工後に熱処理を行うことはなく、
アバットメントは、チタン又はこれらの合金、及びジルコニアの中から選ばれた少なくとも1種以上の素材を含み、
重合性有機化合物を含む接着性組成物としては、(a)bis-GMA(2,2-bi s[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane)、トリエチレングリコールジメタクリレート(tri ethylene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、及びジウレタンジメタクリレート(diurethane dimethacrylate、UDMA)の中から選ばれた2以上の化合物、(b)HEMA(2-hydroxy ethyl methacrylate)、PMDM(bis[2-[(2-methy l-1-oxoallyl)oxy]ethyl]dihydrogen benzen e-1,2,4,5-tetracarboxylate)、及び10-MDP(10- methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphat e)の中から選ばれた2以上の化合物、(c)ケイ酸バリウム(BaO3Si)及び二酸化ケイ素(SiO2)の中から選ばれた少なくとも1種の無機フィラー、及び(d)光開始剤又は熱開始剤を含むものを使用する
ことを特徴とする切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックの作製方法。
【請求項2】
段階S3で穴あけ加工されたクラウンブロックの表面に対して酸エッチング又はサンドブラストを用いた表面処理をさらに行う
請求項1に記載の切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックの作製方法。
【請求項3】
段階S4は、アバットメントの表面を酸エッチング又はサンドブラストを用いて表面処理し、これに重合性有機化合物を含む接着性組成物を塗布する方法で行われる
請求項1に記載の切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックの作製方法。
【請求項4】
段階S6は、350nm~450nm波長で光硬化する方法で行われる
請求項1に記載の切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックの作製方法。
【請求項5】
段階S6は、80~150℃で熱硬化する方法で行われる
請求項1に記載の切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックに関し、切削加工後に熱処理を要しない素材のクラウンブロックとアバットメントとが一体化され、一体化された状態でCAD/CAM加工のような切削加工に適用し得る歯科用補綴ブロックを提供する。
【背景技術】
【0002】
今のところ、歯科におけるイシュー的な部分は、患者の審美的向上及びワンデー治療による時間短縮などが挙げられる。このために、歯科では関連素材及び装備などの開発を主導的に行ってきており、素材部分では、ジルコニア、結晶化ガラス、および複合体などの素材が、また、装備部分では、CAD(Computer Aided Design)/CAM(Computer Aided Manufacturing)などの装備が多く用いられている。かかる変化によって、歯科では患者が要求する審美的な部分での向上及びワンデー補綴による歯科治療における時間短縮などの改善を行って来ている。しかし、患者からの持続的な要求と歯科医からの必要性に応じて、現在使われているものに加えて、更なる方法が続いて求められている実情である。
【0003】
一般に、補綴物は、その素材が適用される部位によって、インレー、アンレー、ベニア、クラウンなどに分けられ、使用用途によって、仮歯と永久歯とに分けられることができる。各部位及び使用用途によって必要な物性が異なり、物性に応じて素材の選択が可能となる。例えば、複合体(composite)及びポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate、PMMA)は、加工性及び審美性に優れており、加工後の更なる熱処理なく直ちに口腔内に植立することができるという長所を有しているが、他の素材に比べて、低い物性を持っているため主にインレーやアンレーに主に用いられており、これは仮歯としての役割を果たしている。複合体の場合は、現在高い物性を持つ複合体の研究及び開発が持続的に進められており、これによって、小臼歯のクラウンの永久歯までにも適用が可能になっている。ジルコニアの場合は、金属を除く歯科補綴素材の中で最も高い物性を持っている素材と知られているが、低い審美性及び加工後の更なる熱処理が必要であるという問題点を示し、主に臼歯部のクラウンの永久歯に適用している。しかしながら、これらの問題点を解決するために、Y2O3(イットリア)の含量変化を与えるなどの方法で、既存のジルコニア素材に比べて低い物性を示すものの審美的な部分を向上させたジルコニア素材について開発が進行中であり、製品化が行われている。現在、ジルコニア及び結晶化ガラス素材における同一な問題点のうちの一つである加工後の更なる熱処理による治療時間の延長に関する問題点を解決することが、もう一つのイシューになりつつあり、先進的な企業でこれを解決した製品が一つずつ発売しはじめている。
【0004】
歯科用インプラントは、金属を歯ぐきの骨に固定し、歯ぐきの上に上がったパーツを歯科用補綴素材で作製されたクラウンで修復する方式であって、歯科治療において持続的にその使用が増えている仕方である。インプラントは、大きく、クラウン、アバットメント、及び固定体の3つのパーツからなり、それぞれの部位は、セメンテーション並びに固定型ねじなどによって連結されている。インプラントにて用いられるクラウンは、仮歯と、永久歯としてインプラント植立後に最終的に作製された永久歯とを連結するに先立って、機能的かつ審美的な部分での問題点を事前に防止するために適用される。このようなインプラントを利用した修復での問題点のうちの一つが、治療時間が長いということである。
【0005】
なお、本出願人は、上部構造物が連結された結晶化ガラスブロックを作製するために鋭意努力したところがあり、これについて既に出願して登録を受けたことがある(韓国登録特許10-1796196号)。ここでは、人工歯の素材である結晶化ガラスブロックを用いてCAD/CAM加工方法で人工歯を作製するにあたって、結晶化ガラスブロックの内部に、コアの役割をすることができる高強度のジルコニア柱(post)を結合させる方法、インプラント固定体(fixture)と締結される金属リンクをジルコニア柱に結合させる方法などを開示した。具体的に、ここではジルコニア柱(post)に無機接合剤を利用して700℃~900℃に1~2時間の間熱処理して接着する段階を必要とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1796196号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、クラウンとアバットメントとが一体化された状態でCAD/CAM加工のような切削加工が可能であり、ブロック状態で切削加工によって仮歯や永久歯のような人工歯を作製することができると共に、切削加工後の更なる熱処理を要することなく、インプラント修復での治療時間を短縮させてワンデー補綴施術を可能にすることができる、切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一具現例は、切削加工後の熱処理を要しない素材のクラウンブロックとアバットメントとが一体化された切削加工用の歯科用補綴ブロックであって、一体化は、重合性有機化合物の硬化物を含む接着層によって行われたものであり、硬化物は、(a)bis-GMA(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、及びジウレタンジメタクリレート(diurethane dimethacrylate、UDMA)の中から選択された2以上の化合物及び(b)HEMA(2-hydroxy ethyl methacrylate)、PMDM(bis[2-[(2-methyl-1-oxoallyl)oxy]ethyl]dihydrogen benzene-1,2,4,5-tetracarboxylate)、及び10-MDP(10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)の中から選ばれた2以上の化合物との硬化物からなる有機マトリックス内に分散した、ケイ酸バリウム(BaO3Si)及び二酸化ケイ素(SiO2)の中から選ばれた少なくとも1種の無機フィラーを含む、切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックを提供する。
【0009】
好ましい一具現例において、(a)化合物は、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycoldimethacrylate、TEGDMA)と、bis-GMA(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane)及びウレタンジメタクリレート(urethanedimethacrylate、UDMA)の中から選ばれた少なくとも1種との混合物であることができる。
【0010】
好ましい一具現例において、切削加工後の熱処理を要しない素材のクラウンブロックは、ポリメチルメタクリレート系高分子(PMMA)、セラミックスとレジンとの複合体、ジルコニア、及び結晶化ガラスの中から選ばれた少なくとも1種の素材を含むことであることができる。
【0011】
好ましい一具現例において、セラミックスとレジンとの複合体は、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxy ethyl methacrylate、HEMA)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane、bis-GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycoldimethacrylate、TEGDMA)、ジウレタンジメタクリレート(diurethanedimethacrylate、UDMA)、ウレタンジメタクリレート(urethane dimethacrylate、UDM)、ビフェニルジメタクリレート(biphenyldimethacrylate、BPDM)、n-トリルグリシン-グリジシルメタクリレート(n-tolylglycine-glycidylmethacrylate、NTGE)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate、PEG-DMA)、及びオリゴカーボネートジメタクリル酸エステル(oligocarbonate dimethacrylic ester)の中から選ばれた少なくとも2以上の重合性有機化合物と;ケイ酸バリウム系結晶化ガラス、リューサイト系結晶化ガラス、アルミナ、ジルコニア、及びガラス質の中から選ばれた少なくとも1以上の無機物との硬化物であることができる。
【0012】
本発明の一具現例において、アバットメントは、チタン又はこれらの合金、及びジルコニアの中から選ばれた少なくとも1種以上の素材を含むものであることができる。
【0013】
本発明の好ましい一具現例において、硬化物は、光硬化又は熱硬化による硬化物であることができる。
【0014】
本発明の好ましい一具現例において、接着層と隣接するクラウンの表面又はアバットメントの表面は、酸エッチング又はサンドブラストを用いて表面処理されたものであることができる。
【0015】
さらに、本発明は、切削加工後の熱処理を要しない素材のクラウンブロックを準備する段階(S1);アバットメントを準備する段階(S2);クラウンブロックを所定のアバットメントの形状に沿って穴あけ加工する段階(S3);アバットメントに重合性有機化合物を含む接着性組成物を塗布する段階(S4);接着性組成物が塗布されたアバットメントを穴あけ加工されたクラウンブロックに締結する段階(S5);及びアバットメントが締結されたクラウンブロックを硬化させて、アバットメントとクラウンブロックとを一体化する段階(S6)を含み、重合性有機化合物を含む接着性組成物としては、(a)bis-GMA(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、及びジウレタンジメタクリレート(diurethane dimethacrylate、UDMA)の中から選ばれた2以上の化合物、(b)HEMA(2-hydroxy ethyl methacrylate)、PMDM(bis[2-[(2-methyl-1-oxoallyl)oxy]ethyl]dihydrogen benzene-1,2,4,5-tetracarboxylate)、及び10-MDP(10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)の中から選ばれた2以上の化合物、(c)ケイ酸バリウム(BaO3Si)及び二酸化ケイ素(SiO2)の中から選ばれた少なくとも1種の無機フィラー、及び(d)光開始剤又は熱開始剤を含むものを使用する、切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックの作製方法を提供する。
【0016】
好ましい一具現例による補綴ブロックの作製方法において、段階S3で穴あけ加工されたクラウンブロックの表面を酸エッチング又はサンドブラストを用いた表面処理をさらに行うことができる。
【0017】
好ましい一具現例による補綴ブロックの作製方法において、段階S4は、アバットメントの表面を酸エッチング又はサンドブラストを用いて表面処理し、これに重合性有機化合物を含む接着性組成物を塗布する方法で行われることができる。
【0018】
本発明の一具現例において、段階S6は、350nm~450nm波長で光硬化する方法で行われてもよく、80~150℃で熱硬化する方法で行われてもよい。
【0019】
また、本発明は、これらの前記一具現例による切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックをCAD/CAM加工又はレーザーミーリングして得られた、アバットメント一体型人工歯を提供する。
【0020】
ここで、人工歯は仮歯又は永久歯であることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックは、アバットメントとクラウンが一体化されたブロック状態で、CAD/CAMなどの切削加工のような苛酷な機械加工を行うことが可能であり、これによって、個々の患者に適合する仮歯や永久歯のような人工歯を作製することができるとともに、切削加工後の更なる熱処理を要することがなく、切削加工後にアバットメントが一体化されたクラウンを植立することで、インプラント施術を完了することができるので、インプラント修復での治療時間を短縮させて、ワンデー補綴施術を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0024】
前述したような、そして更なる本発明の態様は、添付された図面を参照して説明される好ましい実施形態によってさらに明白になろう。以下では、本発明のこのような実施形態によって当業者が容易に理解して再現できるように詳しく説明する。
【0025】
通常、施術されたインプラントの構造は、固定体(fixture)、アバットメント(abutment)、及びクラウン(Crown)に分けられる。固定体は、歯槽骨に埋め込まれ、時間が経過するにつれて骨性癒着が起こって支台の役割をする。アバットメントは、固定体上に繋がれる部位であって、固定体と歯牙の役割を担うクラウンとの連結の役割をし、通常セメンテーション方法でクラウンと連結する。このような施術は、段階的に長期間にかけて行われるのが普通である。
【0026】
図1は、本発明による切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックの模式図であって、これは切削加工後の熱処理を要しない素材のクラウンブロック1とアバットメント2とが一体化された切削加工用の歯科用補綴ブロックであり、一体化は、重合性有機化合物の硬化物を含む接着層4によって行われたものである。
【0027】
このような補綴ブロックは、最終的に固定体(fixture)との連結を考慮して、スクリューアクセスホール3を含み、切削加工を考慮して、マンドレル(mandrel)5を具備することは勿論である。
【0028】
多様な素材のアバットメント2と切削加工後の熱処理を要しない素材のクラウンブロック1とを一体化させ、このような状態で、CAD/CAM加工やレーザーミーリングなどのような切削加工を行うためには、一体化の方法及び素材が重要な役割がすることができる。
【0029】
このような観点から、接着層は、重合性有機化合物の硬化物を含むものが好ましい。すなわち、重合性有機化合物の硬化反応を用いてアバットメント2とクラウンブロック1とを一体化させることが好ましい。特に、この時、硬化物組成に応じて、アバットメント2とクラウンブロック1との素材的差異を克服した接着が可能になることができ、具体的に、硬化物は、(a)bis-GMA(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、及びジウレタンジメタクリレート(diurethane dimethacrylate、UDMA)の中から選ばれた2以上の化合物及び(b)HEMA(2-hydroxy ethyl methacrylate)、PMDM(bis[2-[(2-methyl-1-oxoallyl)oxy]ethyl]dihydrogen benzene-1,2,4,5-tetracarboxylate)、及び10-MDP(10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)の中から選ばれた2以上の化合物との硬化物からなる有機マトリックス内に分散した、ケイ酸バリウム(BaO3Si)及び二酸化ケイ素(SiO2)の中から選ばれた少なくとも1種の無機フィラーを含むことが好ましい。
【0030】
ここで、(a)化合物は、各素材に塗布可能な粘性を示すことができるようにする有機化合物であって、好ましくは、低粘度と高粘度の化合物を混用したもの、具体的には、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycoldimethacrylate、TEGDMA)と、bis-GMA(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane)及びウレタンジメタクリレート(urethanedimethacrylate、UDMA)の中から選ばれた少なくとも1種との混合物であることが好ましいことができる。
【0031】
前記(b)化合物は、各素材に接着力を向上させる接着性化合物として作用することができる。
【0032】
そして、接着層の物性を向上させるために、無機フィラーとして、ケイ酸バリウム(BaO3Si)及び二酸化ケイ素(SiO2)の中から少なくとも1種のものを含むことが、有・無機間接着力を向上させることができるという点から好ましい。
【0033】
この時、接着層4において、有機マットリックス及び無機フィラーの含量、有機マトリックスを構成する(a)化合物と(b)化合物との間の混合比などは、クラウンブロックの素材とアバットメントの素材に鑑み、適宜調節されることができることは勿論である。
【0034】
このような接着層において、硬化物は、光硬化又は熱硬化による硬化物であることができる。
【0035】
本発明の切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックにおいて、クラウンブロック1は、切削加工後の熱処理を要しない素材からなることが好ましいが、これは、ブロック状態で切削加工によって所定の形状が完結した状態で更なる熱処理を経てからこそ求められる物性が発現される素材である場合、更なる熱処理工程を経たら、場合によって、その大きさが変わるという問題を伴うことができるからである。このような側面から、本発明の補綴ブロックにおいて、クラウンブロックは、ポリメチルメタクリレート系高分子(PMMA)、セラミックスとレジンとの複合体、ジルコニア、及び結晶化ガラスの中から選ばれた少なくとも1種の素材を含むことが好ましく、特に、結晶化ガラスの場合、二ケイ酸リチウム結晶を主結晶として含みながら切削加工が可能な結晶化ガラスであることが好ましい。
【0036】
ここで、PMMA高分子は、物性が他の素材に比べて低く、一般に仮歯用ブロックに適用可能であるが、仮歯は、永久歯補綴物を使う前にインプラント後に口腔内に植立するものであって、インプラント後に固定体と歯周部分の固定がよく行われたかどうか、咀嚼過程で患者に痛症がないのかなどを調べるために用いたり、もしくは永久歯補綴物の作製前に審美的機能のために用いたりする。セラミックスとレジンとの複合体、ジルコニア又は結晶化ガラスの場合などは、PMMA高分子に比べて高い物性を示す素材であって、永久歯補綴物に適用が可能なクラウンブロック1を構成することができる。
【0037】
より具体的に、セラミックスとレジンとの複合体は、ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxy ethyl methacrylate、HEMA)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ]プロパン(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane、bis-GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycoldimethacrylate、TEGDMA)、ジウレタンジメタクリレート(diurethanedimethacrylate、UDMA)、ウレタンジメタクリレート(urethane dimethacrylate、UDM)、ビフェニルジメタクリレート(biphenyldimethacrylate、BPDM)、n-トリルグリシン-グリジシルメタクリレート(n-tolylglycine-glycidylmethacrylate、NTGE)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(polyethylene glycol dimethacrylate、PEG-DMA)、及びオリゴカーボネートジメタクリル酸エステル(oligocarbonate dimethacrylic esters)の中から選ばれた少なくとも2以上の重合性有機化合物と;ケイ酸バリウム系結晶化ガラス、リューサイト系結晶化ガラス、アルミナ、ジルコニア、及びガラス質の中から選ばれた少なくとも1以上の無機物との硬化物であることができ、このようなセラミックスとレジンとの複合体は、前歯及び小臼歯まで適用可能な素材である。これは、本出願人による韓国特許公開10-2017-0173152号に記載された内容を詳しく参照することができることは勿論である。
【0038】
クラウンブロック1の素材においてジルコニアの場合は、イットリアが2~10モル%含むことが好ましいことがあるが、これは、更なる熱処理なしに切削加工後に直ちに適用が可能なので、一般的に高い物性が求められる臼歯部に適用し得る。
【0039】
一方、本発明の切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックにおいて、アバットメント2はその素材に限定があるものではなく、例えば、チタン又はこれらの合金、及びジルコニアの中から選ばれた少なくとも1種以上の素材を含むことができる。
【0040】
このような素材のアバットメント2とクラウンブロック1とを、重合性有機化合物の硬化物を含む接着層4によって一体化させるに際して、その層間接着力を向上させるための目的で、接着層4と隣接するクラウンの表面又はアバットメントの表面は、酸エッチング(etching)又はサンドブラスト(sand blasting)を用いて表面処理されたものが好ましい。
【0041】
このような切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックを作製する方法は、切削加工後の熱処理を要しない素材のクラウンブロックを準備する段階(S1);アバットメントを準備する段階(S2);クラウンブロックを所定のアバットメントの形状に沿って穴あけ加工する段階(S3);アバットメントに重合性有機化合物を含む接着性組成物を塗布する段階(S4);接着性組成物が塗布されたアバットメントを穴あけ加工されたクラウンブロックに締結する段階(S5);および、アバットメントが締結されたクラウンブロックを硬化させて、アバットメントとクラウンブロックとを一体化する段階(S6)を含む。
【0042】
この時、重合性有機化合物を含む接着性組成物としては、(a)bis-GMA(2,2-bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxy propoxy)phenyl]propane)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol dimethacrylate、TEGDMA)、及びジウレタンジメタクリレート(diurethane dimethacrylate、UDMA)の中から選ばれた2以上の化合物、(b)HEMA(2-hydroxy ethyl methacrylate)、PMDM(bis[2-[(2-methyl-1-oxoallyl)oxy]ethyl]dihydrogen benzene-1,2,4,5-tetracarboxylate)、及び10-MDP(10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)の中から選ばれた2以上の化合物、(c)ケイ酸バリウム(BaO3Si)及び二酸化ケイ素(SiO2)の中から選ばれた少なくとも1種の無機フィラー、及び(d)光開始剤又は熱開始剤を含むことを使用することが好ましい。
【0043】
ここで、化合物(a)、(b)及び(c)は、前述したものと同様である。
【0044】
(d)光開始剤の場合は、350~450nm波長で硬化が開始される化合物又は重合開示系であることが好ましく、例えば、カンファーキノン(camphorquinone、CQ)のような光開始剤が挙げられ、1-フェニル-1,2-プロパンジオン(1-phenyl-1,2-propanedione、PPD)、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(diphenyliodonium hexafluorophosphate、DPIHP)、及びp-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート(p-octyloxy-phenyl-phenyl iodonium hexafluoroantimonate、OPPI)の中の少なくとも1種以上の光増減剤を含むことができ、触媒剤として、相対的に疎水性を帯びる芳香族の4-ジメチルアミノ安息香酸エチル(ethyl-4-dimethylaminobenzoate、EDMAB)又は親水性脂肪族の2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(2-(dimethylamino)ethyl methacrylate、DMAEMA)のような第三級アミンを含む光重合開始系であってもよい。
【0045】
一方、熱開始剤としては、80~150℃で熱硬化が行われるようにすることができるものが好ましく、例えば、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide、BPO)のような過酸化系開始剤を含むことができる。
【0046】
切削加工後の熱処理を要しない素材のクラウンブロックを準備する段階(S1)において、クラウンブロック1に関連する素材などは、前述したものと同様である。この時、クラウンブロックは、マンドレル5が取り付けられたものであってもよいことは言うまでもない。
【0047】
また、アバットメントを準備する段階(S2)におけるアバットメント2に関連する素材などは、前述したものと同様である。
【0048】
用意したクラウンブロックを所定のアバットメントの形状に沿って穴あけ加工する段階(S3)は、通常のマンドレル5を含んで作製されたクラウンブロック1にアバットメントが決着されるように、構造によって穴あけ加工を行う。ここで、「所定のアバットメントの形状に沿って」という表現は、補綴物の最終的な植立を考慮して、固定体(fixture)に繋がれるためのスクリューアクセスホール3までを含む構造と理解されることができることは勿論である。
【0049】
前述のように接着層4と隣接するクラウンブロックの表面やアバットメントの表面は、表面処理層であることが好ましいが、このような側面から、段階S3で穴あけ加工されたクラウンブロックの表面を酸エッチング又はサンドブストを用いた表面処理を行い、これを接着性組成物が塗布されたアバットメント2と締結することが好ましい。
【0050】
一方、アバットメントに重合性有機化合物を含む接着性組成物を塗布する段階(S4)においても、同じ脈絡でアバットメントの表面を酸エッチング又はサンドブラストを用いて表面処理し、これに重合性有機化合物を含む接着性組成物を塗布することが好ましいことができる。
【0051】
このとき、表面処理は、好ましくは、段階S3及び段階S4の両方ともで行われてもよく、これらの中でいずれか一つの段階でのみ行われてもよい。
【0052】
このように接着性組成物が塗布されたアバットメントを穴あけ加工されたクラウンブロックに締結する段階(S5)を経て、その以後にアバットメントが締結されたクラウンブロックを硬化させて、アバットメントとクラウンブロックとを一体化する段階(S6)を行う。
【0053】
このようにアバットメントとクラウンブロックとの間が同時的な硬化反応によって一体化されることによって層間結合力が効率よく向上することができる。
【0054】
この時、段階S6は、350nm~450nm波長で光硬化する方法で行われるか、80~150℃で熱硬化する方法で行われることが好ましい。
【0055】
前記のような作製方法によれば、多様な素材のクラウンブロック1と多様な素材のアバットメント2とを、特定の重合性有機化合物の硬化反応によって一体化させることで、苛酷な熱処理なしに比較的穏やかな工程を通じて一体化が可能であることから、クラウンブロック素材の物性変化などの恐れを払拭させることができるという長所がある。
【0056】
また、前記のような方法によって得られた切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックは、患者のニーズに合わせて直接にCAD/CAM加工又はレーザーミーリングしてアバットメント一体型人工歯を作製することができ、そのまま固定体(fixture)と連結すればインプラント修復での治療時間を短縮させてワンデーインプラント施術が可能にすることができる。
【0057】
特に、アバットメントが一体化されたままの補綴ブロック状態で、CAD/CAM加工又はレーザーミーリングのような切削加工を伴うとしても、優れた接着強度及び剪断結合強度を有することにより、機械的安定性を担保することができ、アバットメントとクラウンとが一体化されたものであるので、個別施術に応じた細菌浸透による2次感染の可能性を減らすことができる。
【0058】
このように、アバットメント一体型の補綴ブロックの切削加工によって得られた人工歯は、クラウンブロックの素材によって、仮歯でも永久歯でもよいことは勿論である。
【0059】
以上、本発明を図面に示された一実施形態を参照して説明したが、これは例示的なものに過ぎず、本技術分野における通常の知識を持つ者であればこれから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解することができるはずである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックに関し、切削加工後の熱処理を要しない素材のクラウンブロックとアバットメントとが一体化され、一体化された状態でCAD/CAM加工のような切削加工に適用し得る歯科用補綴ブロックを提供する。
【0061】
本発明の切削加工用のアバットメント一体型補綴ブロックは、アバットメントとクラウンが一体化されたブロック状態で、CAD/CAMなどの切削加工のような苛酷な機械加工を行うことが可能であり、これによって、個々の患者に適合する仮歯や永久歯のような人工歯を作製することができるとともに、切削加工後の更なる熱処理を要することなく、切削加工後にアバットメントが一体化されたクラウンを植立することでインプラント施術を完了することができるので、インプラント修復での治療時間を短縮させてワンデー補綴施術を可能にすることができる。