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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】アンテナ装置および無線装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/42 20060101AFI20241203BHJP
   H01Q 19/26 20060101ALI20241203BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01Q9/42
H01Q19/26
H01Q1/24 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023036439
(22)【出願日】2023-03-09
(65)【公開番号】P2024127338
(43)【公開日】2024-09-20
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】御倉 悠
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-052335(JP,A)
【文献】国際公開第2015/108140(WO,A1)
【文献】特開2016-100802(JP,A)
【文献】特開2021-175044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/42
H01Q 19/26
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が給電点に接続され、金属面から所定の距離を空けて、当該面に平行に配置されるアンテナ素子と、
第一素子部と、前記第一素子部に接続され、前記金属面と非平行な第二素子部と、を備える電流誘導素子と、を備え、
前記電流誘導素子は、前記第一素子部の開放端が、前記アンテナ素子の開放端に容量結合し、前記第二素子部の開放端が、前記金属面と容量結合するよう配置される、アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ装置であって、
前記第二素子部は、インダクタを備える、アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1記載のアンテナ装置であって、
前記第二素子部は、前記金属面に垂直に配置される、アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1記載のアンテナ装置であって、
前記アンテナ素子の前記開放端近傍と、前記第一素子部とは、同一平面上で、直交するよう配置される、アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1記載のアンテナ装置であって、
前記電流誘導素子は、送受信の対象波長の略半波長の長さを有する、アンテナ装置。
【請求項6】
請求項1記載のアンテナ装置であって、
前記第二素子部の開放端と前記金属面との間の距離は、送受信の対象波長の0.008倍から0.024倍である、アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1記載のアンテナ装置であって、
前記アンテナ素子は、逆L字形状を有する、アンテナ装置。
【請求項8】
基準電位を有するグランド部と、
請求項1から7いずれか1項に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置に給電する前記給電点と、を備え
前記グランド部は、前記給電点を介して前記アンテナ装置の前記アンテナ素子に接続され、当該アンテナ素子に前記基準電位を提供する無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置および無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ装置の小型化が進んでいる。例えば、大地面に垂直に配置される垂直素子部を備える無給電アンテナ素子を給電アンテナ素子の端部付近に備えることにより、垂直偏波の強度を強くするアンテナがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-175044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の分析は、本発明によって与えられたものである。
【0005】
特許文献1に開示の技術によれば、アンテナ効率を改善することができる。また、反射素子としての無給電アンテナ素子の長さを送受信の対象とする電波の波長の2分の1未満に短縮することができ、アンテナ装置の大型化を抑制することができる。さらに、給電アンテナ素子と無給電アンテナ素子とを近い位置に配置するため、追加のノイズ対策を必要としない。
【0006】
電波は、金属板に遮蔽されるため、金属板の反対側へは電波の届きが悪くなる。したがって、金属板直近にアンテナ装置を有する無線装置を設置する場合、金属板の反対側での電波強度やアンテナ装置の指向性が劣化する。本現象を回避するためには金属板と無線装置とを離したり、金属板の材質を変更したりといった対処が必要である。
【0007】
例えば、自動車に搭載される情報通信機器等の場合、アンテナ装置を有する無線装置を窓ガラスやルーフに取り付けることで車外にある基地局アンテナとの通信に必要な電波強度を確保しやすくしている。しかしながら、その分、ケーブルが長くなり、コスト増につながる。
【0008】
このような対処や変更なしで、金属板の反対側への電波強度を確保し、アンテナ装置の指向性劣化を緩和することが求められている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、コストを抑え、使用場所に制約のないアンテナ装置および無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の視点によれば、
一端が給電点に接続され、金属面から所定の距離を空けて、当該面に平行に配置されるアンテナ素子と、
第一素子部と、前記第一素子部に接続され、前記金属面と非平行な第二素子部と、を備える電流誘導素子と、を備え、
前記電流誘導素子は、前記第一素子部の開放端が、前記アンテナ素子の開放端に容量結合し、前記第二素子部の開放端が、前記金属面と容量結合するよう配置される、アンテナ装置が提供される。
【0011】
本発明の第二の視点によれば、
基準電位を有するグランド部と、
上述のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置に給電する前記給電点と、を備え
前記グランド部は、前記給電点を介して前記アンテナ装置の前記アンテナ素子に接続され、当該アンテナ素子に前記基準電位を提供する無線装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コストを抑え、使用場所に制約のないアンテナ装置および無線装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)~(c)は、第一実施形態の無線装置の構成の一例を説明するための説明図である。
図2】(a)~(c)は、比較のための無線装置の構成を説明するための説明図である。
図3】(a)は、比較のための無線装置によるシミュレーション結果を、(b)~(d)は、第一実施形態の無線装置のシミュレーション結果を、それぞれ説明するための説明図である。
図4】(a)~(c)は、第二実施形態の無線装置の構成の一例を説明するための説明図である。
図5】第二実施形態の無線装置のシミュレーション結果を説明するための説明図である。
図6】(a)~(c)は、第二実施形態の無線装置の実施例の構成および配置例を説明するための説明図である。
図7】(a)~(c)は、比較のための無線装置の構成および配置例を説明するための説明図である。
図8】(a)は、実施例における比較のための無線装置によるシミュレーション結果を、(b)は、実施例の無線装置のシミュレーション結果を、それぞれ説明するための説明図である。
図9】(a)は、第二実施形態の無線装置の他の実施例の配置例を、(b)は、比較のための無線装置の他の実施例における配置例を説明するための説明図である。
図10】(a)は、他の実施例における比較のための無線装置によるシミュレーション結果を、(b)は、他の実施例の無線装置のシミュレーション結果を、それぞれ説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と呼ぶ。)の概要について図面を参照して説明する。なお、付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以下の説明において、「Aおよび/またはB」は、AまたはB、もしくは、AおよびBという意味で用いる。
【0015】
<<第一実施形態>>
本実施形態のアンテナ装置100aを備える無線装置100の構成を説明する。なお、以下の説明では、後述するグランド部の面をXY平面とし、当該グランド部の面に垂直な方向をZ軸とする座標系を用いて説明する。X軸方向およびY軸方向は後述する。
【0016】
[無線装置の構成]
図1(a)は、本実施形態のアンテナ装置100aを備える無線装置100の模式斜視図である。図1(b)は、無線装置100の上面図であり、図1(c)は、無線装置100を、X軸の正の方向から見た図である。
【0017】
これらの図に示すように、本実施形態の無線装置100は、基板101aと、グランド部(GND部)101と、給電点102と、アンテナ装置100aと、を備える。GND部101と給電点102とアンテナ装置100aの後述するアンテナ素子103とは、基板101a上に形成される。また、本実施形態の無線装置100は、所定の面(例えば、1~10mm程度の厚さの金属板105の面;金属面)から所定の距離をあけて、当該面に平行に配置される。
【0018】
本実施形態では、GND部101は、長方形の板状の導体部材である。例えば、銅等で構成される。GND部101は、送受信回路や信号処理回路等の電気回路の搭載部のアース導体である。GND部101は、長方形の一辺に設置される給電点102を介して、アンテナ装置100aの後述するアンテナ素子103と電気的に接続され、アンテナ素子103に基準電位(接地電位)を提供する。
【0019】
なお、以下、本明細書では、図1(a)~図1(c)に示すように、GND部101の、給電点102が設けられる辺に平行な方向をX軸方向、XY平面上で、それに垂直な方向をY軸方向とする。
【0020】
給電点102は、アンテナ装置100aのアンテナ素子103への高周波電流の入力端およびアンテナ素子103からの高周波電流の出力端である。給電点102は、例えば、2端子を備え、一方の端子はアンテナ素子103に接続され、他方の端子はGND部101に接続される。
【0021】
基板101aは、樹脂等の電気絶縁材料で形成される平板上の部材である。用いられる樹脂は、例えば、ガラス布機材エポキシ樹脂等である。
【0022】
アンテナ装置100aは、アンテナ素子103と、電流誘導素子104と、を備え、対象とする電波の送受信を行う。対象とする電波としては、例えば、極超短波(UHF:Ultra High Frequency)、マイクロ波(SHF:Super High Frequency)等があげられる。極超短波の波長は、100mm~1000mm程度、マイクロ波の波長は、10mm~100mm程度である。
【0023】
アンテナ素子103は、GND部101の給電点102が配置される辺に平行な平行部103aと、平行部103aに直交する直交部103bとを備える。図1(a)~図1(c)に示すように、平行部103aは、X軸に平行に配置され、直交部103bは、Y軸に平行に配置される。直交部103bの一端は、給電点102に電気的に接続される。直交部103bの給電点102に接続していない端部は、平行部103aに接続される。このように、アンテナ素子103は、例えば、平行部103aと直交部103bとが垂直に接続された逆L字形状を有する。
【0024】
以下、アンテナ素子103の給電点102に接続される端部を給電端と呼ぶ。また、アンテナ素子103の平行部103aの、直交部103bに接続されていない端部を開放端と呼ぶ。
【0025】
アンテナ素子103は、銅、真ちゅう、アルミニウム等の線状又は細長い板状の電気伝導体(以下、単に「導体」とも称する。)で形成される。また、アンテナ素子103は、基板101aの導体パターンとして形成されてもよい。
【0026】
無線装置100は、GND部101とアンテナ素子103とによりアンテナとして機能する。このため、GND部101のY軸方向の長さにアンテナ素子103の全長を加えた長さが送受信の対象とする電波の半波長程度またはそれ以下であることが望ましい。
【0027】
電流誘導素子104は、xy平面に平行に配置される第一素子部104aと、一端が第一素子部104aに接続される第二素子部104bと、を備える。
【0028】
第一素子部104aの第二素子部104bに接続されていない端部(以下、第一素子部104aの開放端と呼ぶ。)は、アンテナ素子103の平行部103aの開放端の近傍に配置される。
【0029】
第一素子部104aの開放端と平行部103aの開放端とは、容量結合可能な距離に配置される。すなわち、第一素子部104aの開放端と平行部103aの開放端との距離d1は、アンテナ素子103に給電すると、電流誘導素子104に高周波電流が励起され得る距離である。第一素子部104aと、平行部103aとは、XY平面上で直交するよう配置されることが望ましい。
【0030】
第二素子部104bの、第一素子部104aと接続していない端部(以下、第二素子部104bの開放端と呼ぶ。)は、金属板105の近傍に配置される。第二素子部104bの開放端と金属板105との距離d2は、電流誘導素子104に高周波電流が励起されると、金属板105に高周波電流が励起し得る距離である。すなわち、第二素子部104bの開放端は、金属板105の表面と、容量結合可能な距離に配置される。距離d2は、送受信対象波長(励起される高周波)の波長の0.008倍から0.024倍が望ましい。例えば、高周波の周波数が2.4GHzの場合、1~3mm、800MHzの場合、3~9mmが望ましい。高周波の周波数が2.4GHzの場合、特に、1mmが望ましい。
【0031】
なお、第二素子部104bは、金属板105と非平行に配置される。例えば、第二素子部104bは、金属板105の板面に垂直に配置されることが望ましい。すなわち、第二素子部104bは、Z軸に平行に配置されることが望ましい。垂直に配置されることにより、電磁結合作用に関し、最大の効果が得られる。一方、電流誘導素子104の第二素子部104bと金属板105とを平行に配置すると効果が最小化する。
【0032】
電流誘導素子104の材質は、導電体であればよい。電流誘導素子104は、例えば、銅、真ちゅう、アルミニウム等の線状又は細長い板状の導体で形成される。また、電流誘導素子104は、プリント配線基板の導体パターンとして形成されてもよいし、銅テープで形成されてもよい。なお、電流誘導素子104の共振周波数は、アンテナ素子103の共振周波数と一致することが望ましい。また、電流誘導素子104は、例えば、プラスチック製の筐体の側面に貼り付けて固定される。
【0033】
電流誘導素子104の全長は、電流誘導素子104と金属板105の関係性に影響を受けるが、送受信の対象とする電波の半波長程度が望ましい。
【0034】
[無線装置の動作]
次に、本実施形態の無線装置100の動作について説明する。本実施形態では、給電点102からアンテナ素子103に高周波電流が供給され、アンテナ素子103に高周波電流が流れると、アンテナ素子103の平行部103aと電流誘導素子104の第一素子部104aとが近接しているため、電磁結合作用によって、電流誘導素子104に高周波電流が励起される。なお、電流誘導素子104に励起される高周波電流の強さは、アンテナ素子103に流れる高周波電流の強さに依存する。
【0035】
さらに、電流誘導素子104に電流が流れると、電流誘導素子104の第二素子部104bの開放端と金属板105とが近接しているため、同様に、電磁結合作用によって、金属板105に高周波電流が励起される。これにより、金属板105の、電流誘導素子104の第二素子部104bの開放端が近接する面と反対側への放射量が増加する。すなわち、反対側の電波強度が増大する。
【0036】
[シミュレーション]
次に、上記実施形態の無線装置100による金属板105の放射特性のシミュレーション結果を示す。ここでは、給電点102から周波数が2.4GHzの高周波電流を供給した場合の、金属板105の放射特性を示す。
【0037】
なお、シミュレーションで用いた無線装置100は、図1(c)に示すように、電流誘導素子104の全長(L1+L2)を、0.4波長とした。すなわち、電流誘導素子104の全長(L1+L2)を、50mm、そのうち、第一素子部104aの長さ(L1)を30mm、第二素子部104bの長さ(L2)を20mmとした。また、無線装置100と金属板105との距離(L2)を、20mmとした。アンテナ素子103の平行部103aの開放端と電流誘導素子104の第一素子部104aの開放端との間の距離d1を、1mmとした。また、第二素子部104bの開放端と金属板105の距離d2を、1mmとした。なお、金属板105のサイズ(X軸方向の長さ×Y軸方向の長さ)を、300mm×300mmとし、厚みを5mmとした。
【0038】
ここでは、比較のために、電流誘導素子104を備えないアンテナ装置200aを有する無線装置200の放射パターンも示す。用いた無線装置200は、図2(a)~図2(c)に示すように、電流誘導素子104を備えない点以外の構成は、全て無線装置100と同じとした。すなわち、この無線装置200では、アンテナ装置200aは、アンテナ素子103のみ備える。
【0039】
図3(a)は、無線装置200による、YZ平面の放射パターンである。また、図3(b)は、本実施形態の無線装置100によるYZ平面の放射パターンである。
【0040】
金属板105の、無線装置100(無線装置200)を設置した側と反対側の面からの放射は、90度から270度部分で示される。図3(a)および図3(b)の結果を比較すると、無線装置200の90度から270度区間の平均利得は-20.4dBiであるのに対し、本実施形態の無線装置100の90度から270度区間の平均利得は-12.9dBiである。電流誘導素子104を付加すると、それがない場合と比較して、金属板105の反対側の面における平均利得が、7.5dB改善することがわかる。
【0041】
なお、図3(c)および図3(d)は、第二素子部104bの開放端と金属板105の距離d2を、それぞれ、2mmおよび3mmとした場合の放射パターンを参考として示す。これらの場合も、それぞれ、3.6dB、1.7dB、改善していることがわかる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、無線装置100に内蔵されたアンテナ装置100aの先端近くに、電流誘導素子104を備える。そして、この電流誘導素子104を、電波を外側に放射したい金属板105の内側直近に設置する。これにより、本実施形態の無線装置100のアンテナ装置100aによれば、電流誘導素子104に励起された電流を金属板105の反対側の面に流すことができる。したがって、金属板105の反対側への無線装置100による電波の放射強度を確保でき、無線装置100の指向性が増強される。
【0043】
したがって、本実施形態の無線装置100によれば、金属板105による電波の遮蔽を低減することができ、金属板105の近傍に無線装置100を設置したとしても性能が確保できる。よって、アンテナ装置100aを有する無線装置100とそれを介して電波の送受信を行う機器との一体化を実現できるとともに、金属板105等の電波遮蔽度の高い部材への無線装置100の設置が可能となる。すなわち、無線装置100の設置環境の制約が低減する。
【0044】
<<第二実施形態>>
本発明の第二実施形態を説明する。本実施形態の無線装置110のアンテナ装置110aは、電流誘導素子104にインダクタ116を付加し、小型化を図る。以下、本実施形態について、第一実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0045】
図4(a)は、本実施形態のアンテナ装置110aを備える無線装置110の模式斜視図である。図4(b)は、無線装置110の上面図であり、図4(c)は、無線装置110を、X軸の正の方向から見た図である。
【0046】
これらの図に示すように、本実施形態の無線装置110は、基板101aと、グランド部(GND部)101と、給電点102と、アンテナ装置110aと、を備える。GND部101と給電点102とアンテナ装置110aの後述するアンテナ素子103とは、基板101a上に形成される。また、本実施形態の無線装置110は、金属板105から所定の距離をおいて、金属板105の板面に平行に配置される。GND部101、給電点102および基板101aの詳細は、第一実施形態と同様である。
【0047】
本実施形態のアンテナ装置110aは、アンテナ素子103と、電流誘導素子114と、を備え、対象とする電波の送受信を行う。対象とする電波は、第一実施形態と同様である。また、アンテナ素子103の構成等も第一実施形態と同様である。
【0048】
電流誘導素子114は、xy平面に平行に配置される第一素子部114aと、一端が第一素子部114aに接続される第二素子部114bと、インダクタ116と、を備える。第一素子部114aと第二素子部114bとの詳細は、第一実施形態の同名の構成と同様である。また、インダクタ116は、電流誘導素子114の、例えば、第二素子部114bに取り付けられる。
【0049】
本実施形態では、インダクタ116を、電流誘導素子114に付加することで、電流誘導素子114の実効長を長くする。それにより、電流誘導素子114の実長を短くすることができる。
【0050】
本実施形態の無線装置110の動作は、第一実施形態の無線装置100の動作と同様である。
【0051】
[シミュレーション]
本実施形態の無線装置110による金属板105の放射特性のシミュレーション結果を示す。ここでは、第一実施形態同様、給電点102から周波数が2.4GHzの高周波電流を供給した場合の、金属板105の放射特性を示す。
【0052】
なお、シミュレーションの条件は、基本的に第一の実施形態と同様である、ただし、図4(c)に示すように、電流誘導素子114の全長(L1+L2)を、30mm、そのうち、第一素子部114aの長さ(L1)を10mm、第二素子部114bの長さ(L2)を20mmとした。そして、第二素子部114bにインダクタ116を取り付けた。取り付けたインダクタ116の容量は10nHである。
【0053】
図5は、無線装置110による、YZ平面の放射パターンである。上述のように、金属板105の、アンテナ装置110aの設置側とは反対側の面からの放射は、90度から270度部分で示される。
【0054】
本図に示すように、本実施形態の無線装置110の場合、90度から270度区間の平均利得は-13.5dBiである。図3(a)に示す、電流誘導素子104がない場合の無線装置200と比較すると、6.9dB改善している。また、第一実施形態の無線装置100と比較しても、電流誘導素子114の全長を、アンテナ装置100aの電流誘導素子104の全長より20mm小型化(短く)した上で、無線装置100の結果と遜色ない結果が得られることがわかる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の無線装置110によれば、第一実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態の無線装置110によれば、電流誘導素子114に、インダクタ116を備える。これにより、電流誘導素子114の実効長が長くなるため、より短い電流誘導素子114で、第一実施形態と同様の効果が得られる。したがって、第一実施形態と同様の効果を得ながら、小型化を図ることができる。
【0056】
<実施例1>
次に、第二実施形態の無線装置110を、自動車のピラーの車内側に設置した状態を模した場合の、放射特性のシミュレーション結果を示す。設置した状態を、図6(a)~図6(c)に示す。
【0057】
ここでは、上記金属板105の替わりに、自動車ピラーに模した金属板107が用いられる。ピラーを模した金属板107のサイズ(X軸方向の長さ×Y軸方向の長さ)は、600mm×60mmとした。その他のシミュレーション条件は、上記第二実施形態と同様である。
【0058】
本実施例においても、図7(a)~図7(c)に示すように、無線装置200を同じ金属板107に取り付けた場合の放射特性を比較例として示す。金属板107のサイズ以外のシミュレーション条件は、上記第一実施形態と同様である。
【0059】
図8(a)は、無線装置200によるYZ平面の放射パターンであり、図8(b)は、第二実施形態の無線装置110によるYZ平面の放射パターンである。ここでは、上記実施形態と同様の周波数の高周波電流を給電点102から給電した場合の金属板107の放射特性を示す。
【0060】
図8(a)および図8(b)の結果を比較すると、無線装置200の90度から270度区間の平均利得は-9.9dBiであるのに対し、第二実施形態の無線装置110の90度から270度区間の平均利得は-6.7dBiである。電流誘導素子114を付加すると、それがない場合と比較して、金属板107の反対側の面における平均利得が、3.2dB改善することがわかる。
【0061】
<実施例2>
次に、第二実施形態の無線装置110を、シーリングルータの天面側に設置した状態を模した場合の、放射特性のシミュレーション結果を示す。シーリングルータは、例えば、WiFiルータ機能搭載のLEDシーリングライトである。なお、上記金属板105の替わりに、シーリングライト(シーリングルータ)の天面を模した金属板108を用いた。設置した状態を、図9(a)に示す。
【0062】
ここでは、金属板108は円形状であり、その直径を、400mmとした。
【0063】
本実施例においても、比較のため、図9(b)に示すように、無線装置200を同じ金属板108に取り付けた場合の放射特性のシミュレーション結果も示す。
【0064】
図10(a)は、無線装置200によるYZ平面の放射パターンであり、図10(b)は、第二実施形態の無線装置110によるYZ平面の放射パターンである。ここでは、上記実施形態と同様の周波数の高周波電流を給電点102から給電した場合の金属板108の放射特性を示す。
【0065】
図10(a)および図10(b)の結果を比較すると、無線装置200の90度から270度区間の平均利得は-21.5dBiであるのに対し、第二実施形態の無線装置110の90度から270度区間の平均利得は-10.6dBiである。電流誘導素子114を付加すると、それがない場合と比較して、金属板108の反対側の面における平均利得が、10.9dB改善することがわかる。
【0066】
<変形例1>
上記各実施形態では、アンテナ素子103が逆L字形状を有するものとして記載したが、これに限定されない。例えば、直線状の導体であってもよい。この場合であっても、電流誘導素子104、114は、アンテナ素子103に対し、直交配置が望ましい。
【0067】
<変形例2>
また、電流誘導素子104、114の第一素子部104a、114aは、アンテナ素子103と同一平面に配置しているが、これに限定されない。アンテナ素子103の平行部103aの開放端と、電流誘導素子104の第一素子部104aの開放端とが、容量結合可能であり、高周波電流が励起され得る距離であればよい。例えば、アンテナ素子103が配置される面と異なる面であって、アンテナ素子103が配置される面と平行な面に配置されてもよい。
【0068】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、各図面に示したネットワーク構成、各要素の構成は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0069】
上記の実施形態および変形例の一部又は全部は、以下に付記する形態のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
一端が給電点に接続され、金属面から所定の距離を空けて、当該面に平行に配置されるアンテナ素子と、
第一素子部と、前記第一素子部に接続され、前記金属面と非平行な第二素子部と、を備える電流誘導素子と、を備え、
前記電流誘導素子は、前記第一素子部の開放端が、前記アンテナ素子の開放端に容量結合し、前記第二素子部の開放端が、前記金属面と容量結合するよう配置される、アンテナ装置。
(付記2)
付記1記載のアンテナ装置において、
前記第二素子部は、インダクタを備えることが望ましい。
(付記3)
付記1または2記載のアンテナ装置において、
前記第二素子部は、前記金属面に垂直に配置されることが望ましい。
(付記4)
付記1から3のいずれかに記載のアンテナ装置において、
前記アンテナ素子の前記開放端近傍と、前記第一素子部とは、同一平面上で、直交するよう配置される、アンテナ装置。
(付記5)
付記1から4のいずれかに記載のアンテナ装置において、
前記電流誘導素子は、送受信の対象波長の略半波長の長さを有することが望ましい。
(付記6)
請求項1から5のいずれかに記載のアンテナ装置において、
前記第二素子部の開放端と前記金属面との間の距離は、送受信の対象波長の0.008倍から0.024倍であることが望ましい。
(付記7)
請求項1から6のいずれかに記載のアンテナ装置において、
前記アンテナ素子は、逆L字形状を有することが望ましい。
(付記8)
基準電位を有するグランド部と、
付記1から7のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置に給電する前記給電点と、を備える無線装置。
【0070】
なお、上記の特許文献等の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0071】
100:無線装置、100a:アンテナ装置、101:GND部、101a:基板、102:給電点、103:アンテナ素子、103a:平行部、103b:直交部、104:電流誘導素子、104a:第一素子部、104b:第二素子部、105:金属板、107:金属板、108:金属板、
110:無線装置、110a:アンテナ装置、114:電流誘導素子、114a:第一素子部、114b:第二素子部、116:インダクタ、
200:無線装置、200a:アンテナ装置
図1
図2
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図10