(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】光発電装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 39/10 20230101AFI20241203BHJP
H01L 31/042 20140101ALI20241203BHJP
H10K 30/88 20230101ALI20241203BHJP
【FI】
H10K39/10
H01L31/04 500
H10K30/88
(21)【出願番号】P 2024063842
(22)【出願日】2024-04-11
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592070948
【氏名又は名称】今泉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086335
【氏名又は名称】田村 榮一
(72)【発明者】
【氏名】今泉 英夫
(72)【発明者】
【氏名】霜村 珠三
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-232320(JP,A)
【文献】特開2009-173023(JP,A)
【文献】特開2013-219079(JP,A)
【文献】中国実用新案第209880661(CN,U)
【文献】特開2015-065473(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150759(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/160117(WO,A1)
【文献】特開2004-148800(JP,A)
【文献】特開2016-215435(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第117293221(CN,A)
【文献】特開2012-084658(JP,A)
【文献】特開2014-123514(JP,A)
【文献】特開2022-153869(JP,A)
【文献】特開2021-057588(JP,A)
【文献】特開平10-93127(JP,A)
【文献】特開2021-170599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と前記光電変換素子から導出された電力引き出し導体とを備える光電変換モジュールと、
前記光電変換素子から導出された前記電力引き出し導体を外方に引き出した状態で前記光電変換モジュールを封入してなる封入パネルと備え、
前記封入パネルは、
前記光電変換素子から導出された前記電力引き出し導体を当該封入パネルの外方に引き出した状態で前記光電変換素子を収納して重ね合わせ結合され一体化される合成樹脂製の一対のパネルカバーと、
前記一対のパネルカバーの互いに重ね合わせ結合される結合面間に介在されてなる、黒色染料又は黒色顔料により着色され800nm以上1500nm以下のレーザー光の透過率が30%以下とされ、
前記レーザー光の照射により加熱され溶融する合成樹脂製のフィルムシートを基材と
し、前記基材の片面又は両面に粘着層が設けられている中間部材とを有し、
前記一対のパネルカバーは、
前記収納される前記光電変換素子の発電用の光が入射する入射面側に対向して配置される少なくとも一方が
300~1200nmの波長の光を少なくとも30%以上透過する光透過性を有する合成樹脂材料により形成
されてなるとともに、前記一方のパネルカバーの外周縁側に導体引き出し用凹部が形成され、
前記互いに重ね合わせ結合される結合面が前記中間部材に
溶着されて一体化され
てなり、
前記一対のパネルカバー間に収納された前記光電変換素子から導出された前記電力引き出し導体が、
前記導体引き出し用凹部内に延在されて前記一対のパネルカバーの前記結合面間から
前記一対のパネルカバーの外方に引き出され
るとともに、前記電力引き出し導体の前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面と対向する面に被着された前記中間部材と前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面が溶着されている
ことを特徴とする光発電装置。
【請求項2】
前記一方のパネルカバーには、前記光電変換モジュールの前記光電変換素子が収納される素子収納部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の光発電装置。
【請求項3】
前記電力引き出し導体は、
合成樹脂接合用の金属接着剤を介して前記中間部材に接合されていることを特徴とする請求項1記載の光発電装置。
【請求項4】
前記封入パネルの内部には、不活性ガス、脱酸素剤及び/又は脱水蒸気剤のいずれか一以上が配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光発電装置。
【請求項5】
前記封入パネルには、前記光電変換素子の相対向する両面、又は一方の面に透光面が設けられた光電変換モジュールが封入され、
前記封入パネルを構成する前記一対のパネルカバーの双方が、300~1200nmの波長の光を少なくとも30%以上透過する光透過性を有する合成樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光発電装置。
【請求項6】
光電変換素子と前記光電変換素子から導出された電力引き出し導体とを備える光電変換モジュールを備え、前記電力引き出し導体を外方に引き出した状態で前記光電変換モジュールを封入パネルに封入した光発電装置の製造方法であって、
前記封入パネルは、
前記光電変換素子から導出された前記電力引き出し導体を当該封入パネルの外方に引き出した状態で前記光電変換素子を収納して重ね合わせ結合され一体化される合成樹脂製の一対のパネルカバーと、
前記一対のパネルカバーの互いに重ね合わせ結合される結合面間に介在されてなる、黒色染料又は黒色顔料により着色され800nm以上1500nm以下のレーザー光の透過率が30%以下とされ
、前記レーザー光の照射により加熱され溶融する合成樹脂製のフィルムシートを基材と
し、前記基材の片面又は両面に粘着層が設けられている中間部材とを有し、
前記一対のパネルカバーは、前記収納される前記光電変換素子の発電用の光が
入射する入射面側に対向して配置される少なくとも一方
のパネルカバーが300~1200nmの波長の光を少なくとも30%以上を透過する光透過性を有する合成樹脂材料により形成されて
なるとともに、前記一方のパネルカバー外周縁側に導体引き出し用凹部が形成されてなり、
前記一対のパネルカバーを結合するに当たり、
互いに重ね合わせ結合される前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面間に前記中間部材を介在するとともに、
前記電力引き出し導体の前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面と対向する面に前記中間部材を被着し、
前記一対のパネルカバーのうちの他方のパネルカバー上に、
前記中間部材が被着された前記電力引き出し導体を前記他方のパネルカバーの外方に引き出した状態で前記光電変換モジュールを設置し、
次いで、前記他方のパネルカバー上に設置された前記光電変換モジュールの少なくとも前記光電変換素子を
覆うとともに前記電力引き出し導体を前記導体引き出し用凹部内に延在させて、前記一方のパネルカバーを前記他方のパネルカバー上に重ね合わせ
るとともに、前記一対のパネルカバーを、前記中間部材に設けた前記粘着層に仮止めして互いの結合位置を位置決めし、
その後、前記一方のパネルカバー側から、前記中間部材が介在されて重ね合わされた前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面に、波長を800nm以上1500nm以下とするレーザー光を照射
して前記中間部材を加熱し、前記中間部材の加熱領域と接触する前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面を
溶融して前記中間部材に溶着し、前記光電変換素子から導出された前記電力引き出し導体を前記導体引き出し用凹部内に延在させて前記一対のパネルカバーの前記結合面間から外方に引き出した状態で、前記の一対のパネルカバーを前記中間部材とともに一体に結合し、
前記光電変換モジュールを封入してなる封入パネルを作製した
ことを特徴とする光発電装置の製造方法。
【請求項7】
前記電力引き出し導体の前記中間部材との接合面には、
合成樹脂接合用の金属接着剤が被着され、
前記電力引き出し導体は、前記金属接着剤を介して前記中間部材に接合されること特徴とする請求項6記載の光発電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子を封入パネルに封入した光発電装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電効果を利用して光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する光電変換素子を用いた各種の光発電装置が提案され実用化されている。
【0003】
この種の光発電装置として、シリコン系の発電素子や、ガリウムヒ素を用いた光電変換素子を用いたものが実用化されている。さらに、近年、前記発電素子に比し、光電変換効率の向上を図ったペロブスカイトの結晶構造を備えた光電変換素子を用いたペロブスカイト型の光発電装置が提案されている。
【0004】
太陽光を利用して発電を行う光発電装置を構成する各種の光電変換素子、特にペロブスカイト型の光電変換素子は、空気中に存在する水分や酸素などの影響を受け、短期間で発電効率を劣化させてしまう。
【0005】
そこで、光発電装置の耐久性を向上し、長寿命を図るため、光電変換素子を外部環境から保護する技術が提案されている。
【0006】
光電変換素子を外部環境から保護するための技術として、光電変換素子を収納した素子収納部を封止層で封止することにより密閉したものが提案されている。(特許文献1)
【0007】
さらに、ペロブスカイト型の光電変換素子を用いた光発電装置において、支持体上に設置した光電変換素子を、接着剤層により覆い、さらに、接着剤層を封止剤層により覆うようにしたものが提案されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2022-073832号公報
【文献】特開2023-067523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術課題は、光電変換素子を外部環境から一層確実に遮断して、空気中に存在する水分や酸素などの影響を受け、短期間で発電効率が劣化することを抑制した光発電装置及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の技術課題は、光電変換素子を封入パネルに封入する手段による影響を抑え、光電変換素子の発電効率の劣化を抑制し、一層の長寿命化を実現した光発電装置及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の技術課題は、光電変換素子から導出される電力引き出し導体の劣化を防止して、光電変換素子を封入パネルに封入し、一層の長寿命化を実現した光発電装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述したような技術課題を解決するために提案される手段は、光電変換素子と前記光電変換素子から導出された電力引き出し導体とを備える光電変換モジュールと、前記光電変換素子から導出された前記電力引き出し導体を外方に引き出した状態で前記光電変換モジュールを封入してなる封入パネルと備える。前記封入パネルは、前記光電変換素子から導出された前記電力引き出し導体を当該封入パネルの外方に引き出した状態で前記光電変換素子を収納して重ね合わせ結合され一体化される合成樹脂製の一対のパネルカバーと、前記一対のパネルカバーの互いに重ね合わせ結合される結合面間に介在されてなる、黒色染料又は黒色顔料により着色され800nm以上1500nm以下のレーザー光の透過率が30%以下とされた合成樹脂製のフィルムシートを基材とする中間部材とを備える。
【0013】
前記一対のパネルカバーは、前記収納される前記光電変換素子の発電用の光が入射する入射面側に対向して配置される少なくとも一方が光透過性を有する合成樹脂材料により形成されてなり、前記互いに重ね合わせ結合される結合面が前記中間部材に接合されて一体化されるとともに、前記電力引き出し導体が、前記一対のパネルカバーの前記結合面間から前記封入パネルの外方に引き出されていることを特徴とする。
【0014】
前記光発電装置において、一方のパネルカバーには、前記光電変換モジュールの光電変換素子が収納される素子収納部が設けられている。
【0015】
また、前記電力引き出し導体の前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面と対向する面にレーザー光接合用中間部材を被着しておくことが望ましい。
【0016】
また、前記電力引き出し導体は、金属接着剤を介して前記レーザー光接合用中間部材に接合するようにしてもよい。
【0017】
さらに、前記レーザー光接合用中間部材は、基材の片面又は両面に粘着層を設けたものを用いるようにしてもよい。
【0018】
さらにまた、前記封入パネルの内部に、不活性ガス、脱酸素及び脱水蒸気剤のいずれか一以上が配設されていることが望ましい。
【0019】
また、前記封入パネルには、前記光電変換素子の相対向する両面、又は片方に透光面が設けられた光電変換モジュールが封入され、前記封入パネルを構成する前記一対のパネルカバーの一方又は双方が光透過性を有する合成樹脂材料により形成することができる。
【0020】
さらにまた、ここに提案する技術は、光電変換素子と前記光電変換素子から導出された電力引き出し導体とを備える光電変換モジュールを備え、前記電力引き出し導体を外方に引き出した状態で前記光電変換モジュールを封入パネルに封入した光発電装置の製造方法であって、前記封入パネルは、前記光電変換素子から導出された前記電力引き出し導体を当該封入パネルの外方に引き出した状態で前記光電変換素子を収納して重ね合わせ結合され一体化される合成樹脂製の一対のパネルカバーと、前記一対のパネルカバーの互いに重ね合わせ結合される結合面間に介在されなる、黒色染料又は黒色顔料により着色され800nm以上1500nm以下のレーザー光の透過率を30%以下とした合成樹脂製のフィルムシートを基材とする中間部材とを有し、前記一対のパネルカバーは、前記収納される前記光電変換素子の発電用の光の入射面側に対向して配置される少なくとも一方が光透過性を有する合成樹脂材料により形成されてなり、互いに重ね合わせ結合される前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面間に前記中間部材を介在するとともに、前記一対のパネルカバーのうちの他方のパネルカバー上に、前記電力引き出し導体を前記他方のパネルカバーの外方に引き出した状態で前記光電変換モジュールを設置し、次いで、前記他方のパネルカバー上に設置された前記光電変換モジュールの少なくとも前記光電変換素子を覆って、前記一対のパネルカバーのうちの前記一方のパネルカバーを前記他方のパネルカバー上に重ね合わせ、その後、前記光透過性を有する前記一方のパネルカバー側から、前記中間部材が介在されて重ね合わされた前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面に、波長を800nm以上1500nm以下とするレーザー光を照射し、前記中間部材を加熱し、前記レーザー光接合用中間部材の加熱領域と接触する前記一対のパネルカバーの重ね合わせ結合面を溶融し、前記中間部材に接合し、前記の一対のパネルカバーを前記中間部材とともに一体化して前記光電変換モジュールを封入した封入パネルを作製したことを特徴とする。
【0021】
また、前記電力引き出し導体の前記レーザー光接合用中間部材との接合面に、金属接着剤を被着しておき、前記電力引き出し導体を、前記金属接着剤を介して前記レーザー光接合用中間部材に接合するようにしてもよい。
【0022】
さらに、前記電力引き出し導体の両面に金属接着剤を被着しておく。そして、電力引き出し導体の両面に、前記電力引き出し導体の幅と等しい幅を有し、前記レーザー光接合用中間部材の幅に等しい長さを有するレーザー光接合用中間部材と同種の材料により形成したレーザー光接合用中間部材の補助片を、前記金属接着剤を介して接合させて置く。そして、この補助片の加熱によりパネルカバーの一部を溶融し、パネルカバーと電力引き出し導体との間を接合するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、光電変換モジュールを外部環境から保護し、短期間で発電効率が劣化することを防止し、装置の長寿命化を実現する。
【0024】
また、本発明は、光電変換モジュールを封入するための手段により光電変換素子が劣化されることを防止し、光電変換素子の保護を図り、光発電装置の長寿命化を実現する。
【0025】
さらに、本発明は、設置場所の制約を少なくして光発電を行うことを可能とする。
【0026】
その他、本発明により得られる利点は、以下に説明される実施の形態より一層明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施の形態に係る光発電装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る光発電装置の分解斜視図である。
【
図3】本実施の形態の光発電装置に用いられる光電変換モジュールを構成する光電変換素子の断面図である。
【
図5】封入パネルを構成する他方のパネルカバーを、光電変換モジュールを覆う内面側を示す斜視図である。
【
図6】一方のパネルカバー上に光電変換モジュールを設置した状態を示す斜視図である。
【
図7】一対のパネルカバーを重ね合わせた状態を示す斜視図である。
【
図8】電力引き出し導体のレーザー光接合用中間部材及び補助片が接合する領域に金属接着剤を被着した電力引き出し導体の断面図である。
【
図9】互いに重ね合わせられた一対のパネルカバーにレーザー光を照射して溶融結合する状態を側面図である。
【
図10】一対の電力引き出し導体と一対のパネルカバーとの間の結合状態を示す封入パネルの断面図である。
【
図11】レーザー光接合用中間部材の他の例を示す断面図である。
【
図12】金属接着剤を介してレーザー光接合用中間部材の補助片が被着された電力引き出し導体の平面図である。
【
図13】金属接着剤を介してレーザー光接合用中間部材の補助片が被着された電力引き出し導体の断面図である。
【
図14】レーザー光接合用中間部材の他の例を示す斜視図である。
【
図15】
図14に示す分離されたレーザー光接合用中間部材が配置された他方のパネルカバー上に光電変換モジュールを配置した状態を示す斜視図である。
【
図16】封入パネルの内部に、不活性ガス、脱酸素及び/又は脱水蒸気剤を配置した例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
本実施の形態に係る光発電装置1は、
図1に示すように、光電効果によって光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換モジュール2と、この光電変換モジュール2を封入する封入パネル3を備える。
【0030】
本実施の形態に用いられる光電変換モジュール2は、
図2に示すように、光電変換素子4と、この光電変換素子4から導出された一対の電力引き出し導体5、6を備える。光電変換モジュール2を構成する光電変換素子4は、
図3に示すように、発電層7を挟んで透光性導電層8と電極9を積層して構成されている。光電変換素子4は、透光性導電層8側を支持面として支持基板10に支持されている。
【0031】
本実施の形態の光電変換素子4を構成する発電層7は、光の照射によって光電変換を生じさせる層であり、光を吸収することで 生成された励起子から、電子と正孔とを生じさせる。発電層7は、
図4に示すように、正孔輸送層11と光電変換層12と電子輸送層13とを備える。これら正孔輸送層11と光電変換層12と電子輸送層13は、透光性導電層8から電極9に向かう方向に沿って順に積層されている。
【0032】
発電層7を構成する正孔輸送層11は、光電変換層12で発生した正孔を、透光性導電層8へ抽出するとともに光電変換層12で発生した電子が透光性導電層8へ移動することを妨げる。正孔輸送層11は、金属酸化物により形成されている。ここで、金属酸化物として、例えば、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化セシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0033】
光電変換層12は、吸収した光を光電変換する層であり、本実施の形態では、ペロブスカイト化合物が用いられている。ペロブスカイト化合物を含む光電変換層12は、入射光の角度に対する発電効率の依存性が比較的低い利点がある。これにより、本実施形態では、より高い発電効率を得ることができる。ここで、ペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト結晶構造体及びこれに類似する結晶を有する構造体を含む。
【0034】
そして、電子輸送層13は、光電変換層12で発生した電子を電極9へ抽出し、光電変換層12で発生した正孔が電極9に移動することを妨げる。電子輸送層13としては、例えば、ハロゲン化合物又は金属酸化物のいずれかを含むことが好ましい。
電極9は導電性を有し、アノードとして機能する。この電極9は、光電変換層12によって生じた光電変換に応じて、光電変換層12から電子を取り出す。ここで、電極9は、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、又はこれらを含む合金等により形成される。
【0035】
本実施の形態に用いられる光電変換素子4は、光が照射されると、発電層7の光電変換層12が光を吸収して光電変換を行うことで、光電変換層12で電子と正孔とが生じる。当該電子が電子輸送層13を介してアノードとして機能する電極9へ抽出され、正孔が正孔輸送層11を介して、カソードとして機能する透光性導電層8へ抽出される。
【0036】
そして、本実施の形態において、電極9及び透光性導電層8にそれぞれ接続された電力引き出し導体5、6から電流が取り出される。すなわち、発電が行われる。
【0037】
なお、本実施例に用いられる光電変換モジュール2は、光電変換素子4の一方の面から入射される光により発電が行われる片面型として構成されている。
【0038】
上述したような構成を備えた光電変換モジュール2は、
図1に示すように、封入パネル3に封入される。
【0039】
封入パネル3は、
図2に示すように、重ね合わせ結合されて一体化される一方及び他方の一対のパネルカバー21、22を備える。これら一対のパネルカバー21、22は、外周形状を一致させた同一の大きさで形成されている。そして、一方のパネルカバー21は、載置された光電変換モジュール2を覆って他方のパネルカバー22上に重ね合わせられる。互いに重ね合わせられた一対のパネルカバー21、22は、互いの重ね合わせ結合面が熱溶着されて一体に結合される。
【0040】
本実施の形態において、一方のパネルカバー21が重ね合わせられる
図2中下方側に位置する他方のパネルカバー22は、平板な板状に形成されている
【0041】
そして、他方のパネルカバー22上に重ね合わせられる一方のパネルカバー21は、
図2、
図5に示すように、中央部に、光電変換モジュール2の光電変換素子4が収納されるように設置される光電変換素子収納凹部23が形成されている。さらに、一方のパネルカバー22には、
図2、
図5に示すように、光電変換素子収納凹部23に連続して、電力引き出し導体5、6が延在される導体引き出し用凹部24、25が形成されている。これら導体引き出し凹部24、25は、光電変換素子収納部23から一方のパネルカバー21の長手方向一辺の外周縁に亘って形成されている。
【0042】
一対のパネルカバー21、22を重ね合わせ結合して構成された封入パネル3に封入された光電変換モジュール2は、
図6に示すように、他方のパネルカバー22上に載置され、光電変換素子4を、一方のパネルカバー21に形成した光電変換素子収納凹部23内に位置させ、電力引き出し導体5、6を、一方のパネルカバー21に形成した導体引き出し凹部24、25内に延在させて配置される。このとき、一対の電力引き出し導体5、6は、互いに重ね合わせ一対のパネルカバー21、22間から外方に突出している。
【0043】
そして、本実施の形態において、少なくとも封入パネル3に封入される光電変換モジュール2の発電用の光が入射される面側に配設される一方のパネルカバー21は、ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子4が発電を行うに足る波長の太陽光を含む少なくとも300~1200nmの波長の光を少なくとも30%以上を透過し、さらに、一対のパネルカバー21、22間を熱溶着するために用いる800nm以上1500nm以下のレーザー光を30%以上透過する光透過性を可能とする合成樹脂材料により形成される。
【0044】
この種の合成樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレイト(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、共重合ポリエステル(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、環状オレフィンポリマー(COC、COP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、アイノオマー樹脂(IO)、透明ポリプロピレン(PP)、フッ化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、スチレン-メタクリル酸メチル(SMMA)、スチレン-アクリルニトリル樹脂(SAN)、一般用ポリスチレン(GPPS)、透明ABS(MABS)、ポリメチルペンテン(PMP)のいずれかを用いることができる。
【0045】
本実施の形態では、一方のパネルカバー21は、可視光領域を含む300~1500nmの波長領域の光を70~90%の透過するその厚さを0.5mmとするポリカーボネート樹脂製の板状部材を用いて形成した。なお、一方のパネルカバー21は、300~1500nmの波長領域の光を70~90%の透過するものであれば、機械的な強度を維持する観点から、その厚さは適宜選択される。
【0046】
また、他方のパネルカバー22は、一方のパネルカバー21との接合適合性が良好な合成樹脂材料により形成される。
【0047】
本実施の形態では、他方のパネルカバー22も、一方のパネルカバー21と同種の光透過性を有するポリカーボネート樹脂により形成した。
【0048】
なお、他方のパネルカバー22は、ポリカーボネート樹脂により形成された一方のパネルカバー21との接合適合性が良好な同種のポリカーボネート樹脂の他、ABS、アクリル樹脂、PVCのいずれかの合成樹脂により形成したものであってもよい。
【0049】
また、他方のパネルカバー22も、一方のパネルカバー21と同様に、機械的な強度を維持するため適宜厚さの板状部材により形成することが望ましく、本実施の形態では、0.5mmの厚さを有するポリカーボネート樹脂製の板材を用いて形成した。
【0050】
そして、本実施の形態において、一方のパネルカバー21が重ね合わせ結合される他方のパネルカバー22の重ね合わせ結合面には、
図2に示すように、これら一対のパネルカバー21、22間を熱溶着するために用いられるレーザー光接合用中間部材26が配設される。レーザー光接合用中間部材26は、他方のパネルカバー22上に載置された光電変換素子4の外周側の全周を囲む領域であって、一方のパネルカバー21の重ね合わせ結合面21aと重ね合わせ結合される重ね合わせ結合面22a上に配設される。
【0051】
本実施の形態に用いられるレーザー光接合用中間部材26は、一対のパネルカバー21、22を熱溶着するために用いる800nm以上1500nm以下のレーザー光の透過率を30%以下とし、照射されるレーザー光を吸収し発熱する作用を有するフィルムシートにより形成されている。このフィルムシートは、黒色染料、又は黒色顔料により着色され、レーザー光の透過率が30%以下とされたポリカーボネート樹脂を延伸加工して形成されている。このレーザー光接合用中間部材26を構成するフィルムシートには、0.1~0.5mmの厚さのものが用いられる。本実施の形態では、レーザー光接合用中間部材26は、0.3mmの厚さのフィルムシートにより形成されている。
【0052】
なお、レーザー光接合用中間部材26は、ポリカーボネート樹脂からなる上下の一対のパネルカバー21、22との接合適合性を有するABS、アクリル、PVC等の高分子材料からフィルムシートを基材としたものを用いることができる。これらのフィルムシートを用いたレーザー光接合用中間部材26は、基材となるフィルムシートにカーボンブラック、黒鉛、ケッチンブラックなどを混合することにより800nm以上1500nm以下のレーザー光の透過率を制御し光吸収機能が付与される。
【0053】
そして、レーザー光接合用中間部材26が配設された他方のパネルカバー22上には、光電変換モジュール2が載置される。光電変換モジュール2は、
図6に示すように、レーザー光接合用中間部材26により囲まれた中央部に構成された光電変換素子設置領域27に光電変換素子4が位置するようにして設置される。このとき、光電変換モジュール2は、一対の電力引き出し導体5、6をレーザー光接合用中間部材26上に延在させて、一方のパネルカバー21の一側縁外方に突出させて設置される。
【0054】
光電変換モジュール2が載置された他方のパネルカバー22上には、
図7に示すように、光電変換モジュール2を覆うようにして一方のパネルカバー21が重ね合わせられる。このとき、一方のパネルカバー21は、中央に形成した光電変換素子収納部23に光電変換素子4を収納して他方のパネルカバー22上に重ね合わせられる。このとき、電力引き出し導体5、6は導体引き出し用凹部24、25内に位置され、
図7に示すように、互いに重ね合わせられた一対のパネルカバー21、22間から外方に突出する。
【0055】
なお、銅などの導電性金属より形成された電力引き出し導体5、6の少なくともレーザー光接合用中間部材26が接触しない一方のパネルカバー21と対向する面に、
図2、
図6に示すように、レーザー光接合用中間部材26と同種材料からなるレーザー光接合用中間部材の補助片26aを被着しておくことが望ましい。金属製の電力引き出し導体5、6は、これらレーザー光接合用中間部材26、及び補助片26aを介して合成樹脂製のパネルカバー21、22に良好に密着可能となる。電力引き出し導体5,6が密着することにより、一対のパネルカバー21、22間を密封することを可能とする。
【0056】
なお、本実施の形態において、電力引き出し導体5、6のレーザー光接合用中間部材26及び補助片26aが接合する領域に、
図8に示すように、金属接着剤28を被着するようにしてもよい。ここで用いる金属接着剤28は、銅などの金属からなる電力引き出し導体5、6と合成樹脂製のフィルムシートからなるレーザー光接合用中間部材26、及びその補助片26aと間の接着を行うものであって、例えばケムロック(商品名)などを用いることができる。
【0057】
電力引き出し導体5、6に金属接着剤28が被着されることにより、金属製の電力引き出し導体5、6と、合成樹脂製のフィルムシートを基材とするレーザー光接合用中間部材26及びその補助片26aと間を一層確実に密着させることができる。そして、レーザー光接合用中間部材26及びその補助片26aを介して接合される一対のパネルカバー21、22を一層確実に密封することを可能とする。
【0058】
上述したように、光電変換モジュール2を収納して互いに重ね合わせられた一対のパネルカバー21、22は、レーザー光接合用中間部材26及びその補助片26aが介在されて重ね合わせられた結合面21a、22aが熱溶着されることにより一体化され、光電変換モジュール2を封入した封入パネル3を構成する。この光電変換モジュール2を封入した封入パネル3は、電力引き出し導体5、6から電力を出力する光発電装置1を構成する。
【0059】
上述したように構成された本実施の形態に係る光発電装置1は、次のような工程を経て組み立てられる。
【0060】
まず、一方のパネルカバー21が重ね合わせられる他方のパネルカバー22の重ね合わせ結合面22a上に
図6に示すように、枠状をなすレーザー光接合用中間部材26を設置する。
【0061】
次いで、光電変換モジュール2を、
図6に示すように、光電変換素子設置領域27内に光電変換素子4を位置させて他方のパネルカバー22上に載置する。このとき、一対の電力引き出し導体5、6が、他方のパネルカバー22の長辺側の一辺から外方に突出するように延在される。
【0062】
次いで、他方のパネルカバー22上に載置された光電変換モジュール2を覆うように一方のパネルカバー21を重ねる。このとき、一方のパネルカバー21は、
図7に示すように、光電変換素子4を光電変換素子収納部23に収納するように他方のパネルカバー22上に重ね合わせられる。そして、一方のパネルカバー21と他方のパネルカバー22は、
図9に示すように、レーザー光接合用中間部材26を挟んで互いの重ね合わせ結合面21a、22aが重ね合わせられた状態となる。
【0063】
なお、レーザー光接合用中間部材26を挟んで重ね合わせられた一対のパネルカバー21、22は、重ね合わせ状態での位置ずれを防止するため、クランパー等の固定具を用いて一体に保持しておくことが望ましい。
【0064】
そして、光電変換モジュール2を収納し、レーザー光接合用中間部材26を介在させて重ね合わされた一対のパネルカバー21、22は、レーザー光接合用中間部材26が介在されて重ね合わされた結合面21a、22aが熱溶着されて一体化される。
【0065】
互いに重ね合わされた一対のパネルカバー21、22の熱溶着は、
図9に示すように、各パネルカバー21、22のレーザー光接合用中間部材26が介在された領域にレーザー光Lを照射して行われる。ここで、レーザー光Lは、800nm~1500nmの赤外線領域にある波長を有し、ガスレーザー、半導体レーザー、固体レーザーなどから発振されるものが用いられる。
【0066】
互いに重ね合わせ結合される一対のパネルカバー21、22のレーザー光接合用中間部材26が介在された領域にレーザー光Lが照射されると、レーザー光Lの入射側にある一方のパネルカバー21を透過してレーザー光接合用中間部材26に到達する。レーザー光接合用中間部材26のレーザー光Lが照射された領域は、照射されたレーザー光Lを吸収して発熱し、溶融又は軟化する。そして、レーザー光接合用中間部材26に密接する互いに重ね合わされた一対のパネルカバー21、22は、溶融又は軟化したレーザー光接合用中間部材26の熱により少なくとも一部が溶融される。
【0067】
そして、一対のパネルカバー21、22は、レーザー光接合用中間部材26の発熱により加熱され溶融されることにより、溶融されたレーザー光接合用中間部材26と一体に結合される。
【0068】
なお、レーザー光Lの照射による接合は、互いに重ね合わせ結合される一対のパネルカバー21、22のレーザー光接合用中間部材26が介在された領域の全周に亘って行われる。このとき、集光手段を用いてスポット状に集光されるレーザー光Lは、照射位置を順次移動しながらレーザー光接合用中間部材26が介在された領域を照射し、レーザー光接合用中間部材26を加熱し、互いに重ね合わされた一対のパネルカバー21、22間を溶融して接合する。
【0069】
なお、本実施の形態では、一対の電力引き出し導体5、6と各パネルカバー21、22との間は、
図10に示すように、レーザー光接合用中間部材26及びその補助片26aを介して結合されている。
【0070】
本実施の形態は、各パネルカバー21、22及びレーザー光接合用中間部材26及びその補助片26aは、接合適合性が良好な材料により形成しているので、互いに密接されて一体化を図ることができる。
【0071】
互いに重ね合わせられた一対のパネルカバー21、22が一体化されることにより、光電変換モジュール2を封入した封入パネル3が構成される。
【0072】
ところで、封入パネル3に封入された光電変換素子4から導出された一対の電力引き出し導体5、6も、レーザー光接合用中間部材26及びレーザー光接合用中間部材補助26aを介して溶融されたパネルカバー21、22に密着する。また、これら電力引き出し導体5、6は、金属接着剤28が被着されることにより、レーザー光接合用中間部材26及びその補助片26aに密着し、これらレーザー光接合用中間部材26及びその補助片26aを介して各パネルカバー21、22に対しても密接され、各パネルカバー21、22間の密着状態を阻害することを防止している。
【0073】
上述したように、互いに重ね合わせ結合され一体化される一対のパネルカバー21、22からなる封入パネル3に光電変換モジュール2を封入することにより本実施の形態に係る光発電装置1が構成される。
【0074】
なお、本実施の形態において、電力引き出し導体5、6の相対向する各面に、パネルカバー21、22の接合用のレーザー光接合用中間部材26及びその補助片26aを介在するようにしているが、レーザー光の照射により、レーザー光接合用中間部材26のみでパネルカバー21、22間を溶融するに足る熱容量が得られるときには、レーザー光接合用中間部材26の補助片26aを設けなくともよい。
【0075】
本実施の形態において、レーザー光接合用中間部材26は、
図11に示すように、基材となるフィルムシート30の両面に粘着層31、32を設けるようにしてもよい。粘着層31、32は、熱可塑性エラストマー、非架橋ゴムなどにより形成することができる。
【0076】
レーザー光接合用中間部材26は、両面に粘着層31、32を設けることにより、このレーザー光接合用中間部材26を介在させて重ね合わせさられる一対のパネルカバー21、22を仮止めすることができ、レーザー光による各パネルカバー21、22の溶着を容易に且つ正確に行うことができる。なお、粘着層31、32は、片面にのみ設けるようにしてもよい。
【0077】
本実施の形態において、互いに結合される一対のパネルカバー21、22間から外部に引き出される電力引き出し導体5、6とこれらパネルカバー21、22間の密着性の向上を図るため、
図12、
図13に示すように、電力引き出し導体5、6の両面に金属接着剤33、34を介して、レーザー光接合用中間部材26と同種の材料により形成したレーザー光接合用中間部材26の補助片35、36を接着しておく。これら補助片35、36は、電力引き出し導体5、6の幅と等しい幅Wを有し、レーザー光接合用中間部材26の幅に等しい長さLを有する大きさに形成されている。
【0078】
ここで、電力引き出し導体5、6に予めレーザー光接合用中間部材26の補助片35、36を接着した光電変換モジュール2を封入する場合、一対のパネルカバー21、22間に介在されるレーザー光接合用中間部材26に、
図14に示すように、電力引き出し導体5、6が延在する部分に導体引き出し用の切り欠き部37を形成する。そして、一対のパネルカバー21、22を重ね合わせ結合する際、切り欠き部37に延在される一対の電力引き出し導体5、6間に対応する部分にレーザー光接合用中間部材26のさらなる補助片38を配置する。
【0079】
このように、一対の電力引き出し導体5、6間に対応する部分にレーザー光接合用中間部材26のさらなる補助片38を配置することにより一対のパネルカバー21、22の重ね合わせ結合面21a、22aの全周に亘ってレーザー光接合用中間部材26、電力引き出し導体5、6に設けた補助片35、36、及びさらなる補助片38が延在される。そのため、一対のパネルカバー21、22は、重ね合わせ結合面21a、22aの全周に亘って接合され、その内部を一層確実に密封する。
【0080】
そして、電力引き出し導体5、6には、レーザー光接合用中間部材26の補助片35、36が接着されていることにより、レーザー光の照射により補助片35、36が加熱され溶融されて一対のパネルカバー21、22の重ね合わせ結合面21a、22aに密着し接合される。電力引き出し導体5、6が一対のパネルカバー21、22の重ね合わせ結合面21a、22aに密着接合されることにより、一対のパネルカバー21、22間を高精度に密封することができる。
【0081】
さらに、補助片35、36は、金属接着剤33、34を介して、電力引き出し導体5、6に接着されることにより、電力引き出し導体5、6と補助片35、36との間を確実に接合し、電力引き出し導体5、6とパネルカバー21、22との間が安定して接合される。
【0082】
前述した電力引き出し導体5、6にレーザー光接合用中間部材26の補助片35、36が接着された光電変換モジュール2を封入パネル3に封入するには、一方のパネルカバー21が重ね合わせられる他方のパネルカバー22の重ね合わせ結合面22a上に、
図15に示すように、レーザー光接合用中間部材26を設置する。
【0083】
次いで、光電変換モジュール2を、光電変換素子設置領域27内に光電変換素子4を位置させ、
図15に示すように、他方のパネルカバー22上に載置する。このとき、一対の電力引き出し導体5、6を、
図15に示すように、レーザー光接合用中間部材26に形成した切り欠き部37内に位置させ、他方のパネルカバー22の長辺側の一辺から外方に突出するように延在する。
【0084】
そして、切り欠き37内に位置された一対の電力引き出し導体5、6間に、
図15に示すように、レーザー光接合用中間部材26のさらなる補助片38を配置する。なお、さらなる補助片38の配置は、レーザー光接合用中間部材26ともに他方のパネルカバー22上に載置するようにしてもよい。
【0085】
特に、両面に粘着層31、32が被着されたレーザー光接合用中間部材26及びさらなる補助片38を用いることにより、分断されたレーザー光接合用中間部材26及びさらなる補助片38であっても、パネルカバー22上の所定位置に確実に配置できる。
【0086】
次いで、前述したと同様の組み立てる工程を経て封入パネル3の組み立てが行われるので、詳細な説明は省略する。
【0087】
また、本実施の形態において、光電変換モジュール2を収納した封入パネル3の内部に、
図16に示すように、アルゴン、窒素などの不活性ガスGを封入するようにしてもよい。さらに、さらに加えて脱酸素及び/又は脱水蒸気剤41を設けるようにしてもよい。脱酸素及び/又は脱水蒸気剤41は、
図16に示すように、他方のパネルカバー22に形成した光電変換素子収納部23内に設置する。
【0088】
なお、封入パネル3内には、不活性ガスGと脱酸素及び/又は脱水蒸気剤41を併用して封入、設置してもよい。
【0089】
封入パネル3内に、不活性ガスG、又はガスGと脱酸素及び/又は脱水蒸気剤31を封入、設置することにより、水分や酸素に対し脆弱な本実施の形態に用いるペロブスカイト型の光電変換素子4の保護を図ることができる。
【0090】
本実施の形態では、封入パネル3を構成する互いに重ね合わせ結合される一対のパネルカバー21、22を、少なくとも300~1200nmの波長の光を透過する光透過性を有する合成樹脂材料であるポリカーボネート樹脂により形成しているので、封入パネル3の両面を光入射面とすることができる。そこで、光電変換モジュール2として、両面から入射される光により発電が可能な両面発電型の光電変換素子4を用いることができる。
【0091】
上述したように、本実施の形態に係る光発電装置1は、溶融結合されて一体化された封入パネル3に光電変換素子4を封入しているので、外部環境との間を確実に遮断し、光電変換素子4の保護を図り光発電装置1の長寿命化を実現する。
【符号の説明】
【0092】
1 光発電装置
2 光電変換モジュール
3 封入パネル
4 光電変換素子
5、6 電力引き出し導体
21、22 パネルカバー
23 光電変換素子収納凹部
24、25 電力引き出し導体
26 レーザー光接合用中間部材
28 金属接着剤
41 脱酸素及び/又は脱水蒸気剤
【要約】
【課題】光電変換素子を外部環境から遮断して封入し、空気中に存在する水分や酸素などの影響を受け、短期間で発電効率が劣化することを防止する。
【解決手段】光電変換素子4と電力引き出し導体5、6とを備える光電変換モジュール2を、電力引き出し導体を外方に引き出した状態で封入してなる封入パネル3と備える。封入パネルは、光電変換素子を収納して重ね合わせ結合されて一体化される合成樹脂製の一対のパネルカバー21、22からなる。一対のパネルカバーは、光電変換素子の発電用の光が入射する面側に対向する少なくとも一方を、光透過性を有する合成樹脂材料により形成される。一対のパネルカバーは、互いに重ね合わせ結合される結合面にレーザー光接合用中間部材26が介在されて熱溶着され一体化されている。
【選択図】
図1