(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ及び制御方法
(51)【国際特許分類】
F03B 13/18 20060101AFI20241203BHJP
F15B 15/14 20060101ALI20241203BHJP
F15B 15/22 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F03B13/18
F15B15/14 350
F15B15/14 380B
F15B15/22 D
(21)【出願番号】P 2024505592
(86)(22)【出願日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 CN2023091032
(87)【国際公開番号】W WO2023193822
(87)【国際公開日】2023-10-12
【審査請求日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】202210474740.3
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517220748
【氏名又は名称】中国科学院広州能源研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】叶 寅
(72)【発明者】
【氏名】王 坤林
(72)【発明者】
【氏名】盛 松偉
(72)【発明者】
【氏名】王 振鵬
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112696306(CN,A)
【文献】特開2018-28275(JP,A)
【文献】特表2007-536469(JP,A)
【文献】特表2020-514055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/14 - 13/26
F15B 15/14
F15B 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と波吸収浮体とを含む波エネルギー発電装置に接続される、波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダであって、
両端にリアエンドキャップとフロントエンドキャップを有し、前記本体に接続されるシリンダバレルと、
前記シリンダバレル内に同軸に設置され、中空キャビティを有し、右端部がフロントエンドキャップまで延在し、右端部にセカンダリピストンが取り付けられる内蔵固定ロッドと、
前記内蔵固定ロッドに同軸に嵌設され、中空キャビティを有し、左端部にプライマリピストンが取り付けられ、右端部が前記波吸収浮体に接続され、シリンダバレル及び内蔵固定ロッドとともに多段シリンダを構成するピストンロッドとを含み、
前記内蔵固定ロッドの中空キャビティは、固定ロッドキャビティであり、前記固定ロッドキャビティの左端部は、プライマリポートに連通し、前記内蔵固定ロッドの外壁、前記ピストンロッドの内壁、前記プライマリピストン及び前記セカンダリピストンによって囲まれたキャビティは、密封キャビティであり、前記ピストンロッドの中空キャビティの前記密封キャビティ以外の部分は、ピストンロッドキャビティであり、前記シリンダバレルの内壁、前記リアエンドキャップ、前記内蔵固定ロッドの外壁及び前記プライマリピストンによって囲まれたキャビティは、メインキャビティであり、前記メインキャビティは、リアポートに連通し、前記シリンダバレルの内壁、前記フロントエンドキャップ、前記ピストンロッドの外壁及び前記プライマリピストンによって囲まれたキャビティは、メインロッドキャビティであり、前記メインロッドキャビティは、フロントポートに連通し、前記固定ロッドキャビティは、前記ピストンロッドキャビティに連通し、
前記本体及び前記波吸収浮体が波の作用で相対運動し、これにより、ピストンロッドは、シリンダバレル内で往復運動するように駆動される、ことを特徴とする波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【請求項2】
油タンク及びアキュムレータをさらに含み、前記プライマリポートは、第1の逆止弁を備えた管路を介して前記油タンクから油を吸い込み、第2の逆止弁を備えた管路を介して作動油を前記アキュムレータに圧送し、前記リアポート及び前記フロントポートは、前記油タンクに連通する、ことを特徴とする請求項1に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【請求項3】
前記フロントエンドキャップに近接する内壁にフロントバッファスプリングが取り付けられ、前記リアエンドキャップに近接する内壁にリアバッファスプリングが取り付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【請求項4】
前記ピストンロッドと前記フロントエンドキャップとの間に第1の密封リングが設置され、前記プライマリピストンと前記シリンダバレルの内壁との間に第2の密封リングが設置され、前記内蔵固定ロッドの外壁と前記プライマリピストンとの間に第3の密封リングが設置され、前記セカンダリピストンと前記ピストンロッドの内壁との間に第4の密封リングが設置される、ことを特徴とする請求項1に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【請求項5】
前記密封キャビティに、不活性ガスが充填される、ことを特徴とする請求項1に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダを使用し、
波吸収浮体が本体に対して上向きに運動するときに使用される第1の制御モードと、
波吸収浮体が本体に対して下向きに運動するときに使用される第2の制御モードと、
前記第1の制御モードの限界波状態で使用される第3の制御モードと、
前記第2の制御モードの限界波状態で使用される第4の制御モードと、を含む、ことを特徴とする多段緩衝式油圧制御方法。
【請求項7】
前記第1の制御モードは、
波の動きにより波吸収浮体が本体に対して上向きに運動すると、油圧シリンダのピストンロッドも同時に上向きに運動し、油圧シリンダのメインロッドキャビティがフロントポートを介して油タンクから油を吸い込み、油圧シリンダのメインキャビティがリアポートを介して作動油を油タンクに吐出する制御プロセスと、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティが作動油で満たされ、ピストンロッドが上向きに運動すると、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティの作動油が絞り出され、プライマリポート及び第2の逆止弁を介してアキュムレータ群に圧送され、エネルギーが蓄えられ、圧力が安定して発電する制御プロセスと、を含み、この過程において、密封キャビティのガスは膨張する、ことを特徴とする請求項6に記載の多段緩衝式油圧制御方法。
【請求項8】
前記第2の制御モードは、
波の作用で波吸収浮体が本体に対して下向きに運動すると、油圧シリンダのピストンロッドも同時に下向きに運動し、油圧シリンダのメインロッドキャビティがフロントポートを介して作動油を油タンクに吐出し、油圧シリンダのメインキャビティがリアポートを介して油タンクから油を吸い込む制御プロセスと、ピストンロッドが下向きに運動すると、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティがプライマリポート及び第1の逆止弁を介して油タンクから油を吸い込む制御プロセスと、を含み、この過程において、密封キャビティのガスは圧縮される、ことを特徴とする請求項6に記載の多段緩衝式油圧制御方法。
【請求項9】
前記第3の制御モードは、
限界波の場合、波吸収浮体が本体に対して上向きに運動すると、ピストンロッドも同時に上向きに運動し、プライマリピストンがリアエンドキャップから一定の距離まで運動したとき、プライマリピストンがリアバッファスプリングを圧縮し始め、スプリングが圧縮される過程において、波吸収浮体の機械エネルギーがスプリングの位置エネルギーに変換され、最終的に熱エネルギーが発生し、メインキャビティがリアポートを介して作動油を吸い込んで油タンクに吐出し、作動油の流れによって熱を除去する制御プロセスを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の多段緩衝式油圧制御方法。
【請求項10】
前記第4の制御モードは、
限界波の場合、波吸収浮体が本体に対して下向きに運動すると、ピストンロッドも同時に下向きに運動し、プライマリピストンがフロントエンドキャップから一定の距離まで運動したとき、プライマリピストンがフロントバッファスプリングを圧縮し始め、スプリングが圧縮される過程において、波吸収浮体の機械エネルギーがスプリングの位置エネルギーに変換され、最終的に熱エネルギーが発生し、メインロッドキャビティがフロントポートを介して作動油を吸い込んで油タンクに吐出し、作動油の流れによって熱を除去する制御プロセスを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の多段緩衝式油圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式波エネルギー発電の技術分野及び流体圧アクチュエータの技術分野に関し、詳しくは波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波エネルギーは、クリーンで無公害な海洋再生可能エネルギーであり、埋蔵量が豊富でエネルギー密度が高いなどの利点があり、世界の沿岸諸国で波エネルギー利用技術の研究開発が盛んに行われている。波は、往復、低周波及び出力が大きいなどの特性を有し、エネルギー貯蔵段階を有する油圧システムは、波のこれらの特性によって引き起こされる衝突を効果的に緩衝し、最終的なエネルギー出力を安定させ、グリッド接続の要件を満たすことができる。このため、油圧式エネルギー変換システムは、現在の波エネルギー装置におけるエネルギー変換方法の主流の選択肢となっている。
【0003】
油圧式波エネルギー変換システムにおいて、油圧シリンダは、波エネルギーを油圧エネルギーに変換する動力部品であるが、従来の油圧シリンダの用途は、その逆であり、主に機械エネルギーを油圧エネルギーに変換するアクチュエータとして使用され、波エネルギー装置の油圧シリンダは、海水(又は海の蒸気)中で長時間作動し、その作動環境が悪いため、波エネルギー発電装置において故障しやすい部品である。現在、油圧シリンダの波エネルギー装置における仕事方式は主に2種類あり、2つの浮体による点吸収式の仕事を例として、
図1に示すように、波吸収浮体は、波力を受けて本体に対して上向きに運動して仕事をするが、下向きの運動が主に波吸収浮体自体の重力によるものであり、一般的には波力のみによって仕事をし、すなわち、浮体が上向きに運動して仕事をしたエネルギーを利用する。
【0004】
1つの仕事方式としては、油圧シリンダが波吸収浮体の下方に取り付けられて海水中に設置され、油圧シリンダの一端が波吸収浮体に接続され、他端が本体の下部位置に接続され、
図1に示すように、波吸収浮体が波の作用で上向きに運動すると、油圧シリンダのロッドが波吸収浮体によって上向きに引っ張るように駆動され、油圧シリンダのロッドキャビティが高圧の作動油で満たされ、これはシリンダを引っ張ることによる仕事であり、このような仕事方式において、油圧シリンダの有効仕事面積はS
1-S
2であり、S
1はピストンの面積、S
2はピストンロッドの面積、出力はF=p×(S
1-S
2)であり、pはアキュムレータの圧力である。引っ張り仕事の利点は、油圧シリンダが長期間にわたって引っ張られた状態で仕事をし、受圧安定性の問題(油圧ロッドが圧力を受ける場合にのみ発生する)がなく、油圧シリンダのピストンロッドが機械的な損傷を受けにくい。しかし、より多くの欠点を有し、現時点では解決が困難であり、主な欠点は次のとおりである。(1)油圧シリンダは水中に取り付けられ、ピストンロッドの腐食問題が深刻である。(2)汚染問題も同様に深刻であり、ピストンロッドの表面に大量の海洋生物が付着し、ピストンロッドが頻繁に運動するため、油圧シリンダの密封リングが非常に損傷しやすい。(3)油圧シリンダは水中に取り付けられ、日常のメンテナンス及び修理が非常に不便である。(4)油圧シリンダの密封リングが破損すると、作動油がすべて海水に漏れてしまい、環境に大きな影響を与える。(5)油圧シリンダの密封リングが破損すると、海水が油圧システム全体に入り、システムに重大な損傷を与える。(6)大波の場合、ピストンロッドの運動幅が油圧シリンダのストローク限界を超えると、油圧シリンダが油圧シリンダバレルに衝突し、損傷を引き起こすというストローク限界の問題が存在する。これらの6つの欠点を有するため、現時点では、波エネルギー装置の油圧シリンダの引っ張り形式による仕事を大規模に利用することは難しい。
【0005】
もう一つの仕事方式としては、油圧シリンダは、浮体の上方に取り付けられて海面上に設置され、
図2に示すように、浮体が上向きに運動して仕事をし、一端が波吸収浮体に接続され、他端が本体の頂部に接続され、浮体が上向きに運動すると、油圧シリンダが圧力を受けて仕事をし、油圧シリンダのロッドなしのキャビティが作動油で満たされ、これはシリンダへの圧力による仕事であり、このような仕事方式において、油圧シリンダの有効仕事面積、すなわち、ピストンの断面積はS
1であり、出力はF=p×S
1であり、同じ波力とアキュムレータ圧力の場合、油圧シリンダをもっと薄くする必要があり、そうでなければ、同じ波力で油圧シリンダを運動するように駆動することができない。このような仕事方式は、引っ張りによる仕事形式の欠点(2)、(3)、(4)、及び(5)を改善するため、現在、ほとんどの油圧シリンダはこのような形式を利用している。また、圧力による仕事においても、他の問題が発生し、主に次のとおりである。(1)油圧シリンダのピストンロッドの直径の設計が比較的困難であり、ピストンロッドが薄すぎると、油圧シリンダの受圧安定性が低く(受圧安定性がピストンロッドの直径に関係する)、ロッドは曲がりやすく、故障につながり、ピストンロッドが太すぎると、仕事面積が大きく、小波では油圧シリンダが仕事をするように駆動されず、仕事効率が低い。(2)油圧シリンダが海の蒸気中に設置され、ロッド表面の腐食も激しく、腐食により密封リングは破損しやすく、油圧シリンダの圧力が低下する。(3)引っ張ることによる仕事であっても圧力による仕事であっても、ストローク限界時にどのように油圧シリンダを緩衝して、油圧シリンダの運動がストローク限界を超えることを防止するかというストローク限界に関する問題が存在する。したがって、波エネルギー装置の油圧シリンダを安定かつ確実に作動させるために、上記問題を効果的に解決できる適切な油圧シリンダの設計方法を提供することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術における欠点に対して、本発明は、波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ及び制御方法を提供し、伝動油圧シリンダの内部に中空ロッドを設置することにより、油圧シリンダの動作中の油漏れの可能性を大幅に低減し、圧力による仕事の場合の油圧シリンダの受圧安定性の問題を解決し、波エネルギー油圧シリンダの信頼性と安定性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術手段を使用する。
【0008】
本体と波吸収浮体とを含む波エネルギー発電装置に接続される波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダは、
両端にリアエンドキャップとフロントエンドキャップを有し、前記本体に接続されるシリンダバレルと、
前記シリンダバレル内に同軸に設置され、中空キャビティを有し、右端部がフロントエンドキャップまで延在し、右端部にセカンダリピストンが取り付けられる内蔵固定ロッドと、
前記内蔵固定ロッドに同軸に嵌設され、中空キャビティを有し、左端部にプライマリピストンが取り付けられ、右端部が前記波吸収浮体に接続され、シリンダバレル及び内蔵固定ロッドとともに多段シリンダを構成するピストンロッドとを含み、
前記内蔵固定ロッドの中空キャビティは、固定ロッドキャビティであり、前記固定ロッドキャビティの左端部は、プライマリポートに連通し、前記内蔵固定ロッドの外壁、前記ピストンロッドの内壁、前記プライマリピストン及び前記セカンダリピストンによって囲まれたキャビティは、密封キャビティであり、前記ピストンロッドの中空キャビティの前記密封キャビティ以外の部分は、ピストンロッドキャビティであり、前記シリンダバレルの内壁、前記リアエンドキャップ、前記内蔵固定ロッドの外壁及び前記プライマリピストンによって囲まれたキャビティは、メインキャビティであり、前記メインキャビティは、リアポートに連通し、前記シリンダバレルの内壁、前記フロントエンドキャップ、前記ピストンロッドの外壁及び前記プライマリピストンによって囲まれたキャビティは、メインロッドキャビティであり、前記メインロッドキャビティは、フロントポートに連通し、前記固定ロッドキャビティは、前記ピストンロッドキャビティに連通し、
前記本体及び前記波吸収浮体が波の作用で相対運動し、これにより、前記ピストンロッドは、前記シリンダバレル内で往復運動するように駆動される。
【0009】
上記のような波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダは、油タンク及びアキュムレータをさらに含み、前記プライマリポートは、第1の逆止弁を備えた管路を介して前記油タンクから油を吸い込み、第2の逆止弁を備えた管路を介して作動油を前記アキュムレータに圧送し、前記リアポート及び前記フロントポートは、前記油タンクに連通する。
【0010】
上記のような波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダにおいて、さらに、前記フロントエンドキャップに近接する内壁にフロントバッファスプリングが取り付けられ、前記リアエンドキャップに近接する内壁にリアバッファスプリングが取り付けられる。
【0011】
上記のような波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダにおいて、さらに、前記ピストンロッドと前記フロントエンドキャップとの間に第1の密封リングが設置され、前記プライマリピストンと前記シリンダバレルの内壁との間に第2の密封リングが設置され、前記内蔵固定ロッドの外壁と前記プライマリピストンとの間に第3の密封リングが設置され、前記セカンダリピストンと前記ピストンロッドの内壁との間に第4の密封リングが設置される。
【0012】
上記のような波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダにおいて、さらに、前記密封キャビティに、不活性ガスが充填される。
【0013】
上記のような波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダを使用する多段緩衝式油圧制御方法は、
波吸収浮体が本体に対して上向きに運動するときに使用される第1の制御モードと、
波吸収浮体が本体に対して下向きに運動するときに使用される第2の制御モードと、
前記第1の制御モードの限界波状態で使用される第3の制御モードと、
前記第2の制御モードの限界波状態で使用される第4の制御モードと、を含む。
【0014】
上記のような多段緩衝式油圧制御方法において、さらに、前記第1の制御モードは、
波の動きにより波吸収浮体が本体に対して上向きに運動すると、油圧シリンダのピストンロッドも同時に上向きに運動し、油圧シリンダのメインロッドキャビティがフロントポートを介して油タンクから油を吸い込み、油圧シリンダのメインキャビティがリアポートを介して作動油を油タンクに吐出する制御プロセスと、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティが作動油で満たされ、ピストンロッドが上向きに運動すると、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティの作動油が絞り出され、プライマリポート及び第2の逆止弁を介してアキュムレータ群に圧送され、エネルギーが蓄えられ、圧力が安定して発電する制御プロセスと、を含み、この過程において、密封キャビティのガスは膨張する。
【0015】
上記のような多段緩衝式油圧制御方法において、さらに、前記第2の制御モードは、
波の作用で波吸収浮体が本体に対して下向きに運動すると、油圧シリンダのピストンロッドも同時に下向きに運動し、油圧シリンダのメインロッドキャビティがフロントポートを介して作動油を油タンクに吐出し、油圧シリンダのメインキャビティがリアポートを介して油タンクから油を吸い込む制御プロセスと、ピストンロッドが下向きに運動すると、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティがプライマリポート及び第1の逆止弁を介して油タンクから油を吸い込む制御プロセスと、を含み、この過程において、密封キャビティのガスは圧縮される。
【0016】
上記のような多段緩衝式油圧制御方法において、さらに、前記第3の制御モードは、
限界波の場合、波吸収浮体が本体に対して上向きに運動すると、ピストンロッドも同時に上向きに運動し、プライマリピストンがリアエンドキャップから一定の距離まで運動したとき、プライマリピストンがリアバッファスプリングを圧縮し始め、スプリングが圧縮される過程において、波吸収浮体の機械エネルギーがスプリングの位置エネルギーに変換され、最終的に熱エネルギーが発生し、メインキャビティがリアポートを介して作動油を吸い込んで油タンクに吐出し、作動油の流れによって熱を除去する制御プロセスを含む。
【0017】
上記のような多段緩衝式油圧制御方法において、さらに、前記第4の制御モードは、
限界波の場合、波吸収浮体が本体に対して下向きに運動すると、ピストンロッドも同時に下向きに運動し、プライマリピストンがフロントエンドキャップから一定の距離まで運動したとき、プライマリピストンがフロントバッファスプリングを圧縮し始め、スプリングが圧縮される過程において、波吸収浮体の機械エネルギーがスプリングの位置エネルギーに変換され、最終的に熱エネルギーが発生し、メインロッドキャビティがフロントポートを介して作動油を吸い込んで油タンクに吐出し、作動油の流れによって熱を除去する制御プロセスを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、従来技術に比べて、以下の有益な効果を有する。
【0019】
1、この油圧シリンダが波エネルギー装置の動力変換部材として使用される場合、高圧部分の作動油は、主に固定ロッドキャビティとピストンロッドキャビティとを流れ、セカンダリピストンとピストンロッドとの間の第4の密封リングは、密封の役割を果たし、該密封リングは、ピストンロッドの内壁に全体的に配置され、密封キャビティを介して外部から遮断されるため、密封リングは、効果的に保護され、油圧シリンダの密封性能が向上する。
【0020】
2、この油圧シリンダは、圧力による仕事の場合、ピストンロッドの直径設計の問題を解決し、本発明の油圧シリンダの有効仕事面積は、ピストンロッドキャビティの断面積であり、ピストンロッドの断面積からピストンロッドの壁の断面積を引いて得られたものに等しいため、油圧シリンダの有効仕事面積を増加させることなく、ピストンロッドの肉厚を増加させてピストンロッドの直径を大きくさせることができる。ピストンロッドの直径を大きくさせることにより、圧力による仕事の場合、油圧シリンダのピストンロッドの受圧安定性が効果的に向上する。
【0021】
3、この油圧シリンダにおいて、フロントエンドキャップ及びリアエンドキャップにバッファスプリングが設置され、大波の場合、油圧シリンダのピストンロッドの運動を緩衝し、ピストンロッドが運動ストロークの限界を超えることを防止し、プライマリピストンがフロントエンドキャップとリアエンドキャップに衝突して油圧シリンダに損傷を与えることを効果的に回避することができ、スプリングが圧縮されることによって発生する熱エネルギーは、フロントポート及びリアポートを流れる作動油によって冷却されて流出する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の実施例における技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例に必要な図面を簡単に説明するが以下に説明される図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎないことは明らかであり、当業者であれば、創造的な労力をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0023】
【
図1】点吸収式波エネルギー装置の引っ張りによる仕事時の油圧シリンダの取り付け図である。
【
図2】点吸収式波エネルギー装置の圧力による仕事時の油圧シリンダの取り付け図である。
【
図3】波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダの概略構成図である。
【
図4】波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダのピストンロッドが上向きに運動する場合の概略図である。
【
図5】波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダのピストンロッドがバッファスプリングを上向きに圧縮する場合の概略図である。
【
図6】波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダのピストンロッドが下向きに運動する場合の概略図である。
【
図7】波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダのピストンロッドがバッファスプリングを下向きに圧縮する場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術手段を明確かつ完全に説明するが、説明される実施例は、本願の一部の実施例に過ぎないことは明らかであり、全ての実施例ではない。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的労働をすることなく得る全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に含まれる。
【0025】
(実施例)
なお、本発明の明細書、特許請求の範囲及び上記図面における「第1の」、「第2の」などの用語は、類似する対象を区別するためのものであり、必ずしも特定の順序又は前後順序を説明するために使用されるものではない。このように使用されるデータは、本明細書に記載された本発明の実施例が本明細書に図示又は説明されたもの以外の順序で実施できるように、適切な場合に交換可能であることを理解されたい。また、本発明の実施例における用語「含む」及び「有する」並びにそれらの任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図し、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は装置は、必ずしも明確に列挙されているステップ又はユニットに限定されず、明確に列挙されていないプロセス、方法、製品又は装置、或いは、これらのプロセス、方法、製品又は装置に固有のその他のステップ又はユニットを含んでもよい。
【0026】
なお、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などの用語によって示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本発明の説明を容易にし、簡略化するためのものに過ぎず、言及される装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを示したり示唆したりするものではないため、本発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0027】
本発明の説明において、別に明確かつ具体的な限定がない限り、「複数」は、少なくとも2つを意味し、例えば2つ、3つなどである。また、他の明確な規定及び限定がない限り、用語「取り付け」、「連結」、「接続」は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定的な接続であってもよく、取り外し可能な接続であってもよく、一体的な接続であってもよく、機械的な接続、又は電気的な接続であってもよく、直接的な接続であってもよく、中間媒体を介した間接的な接続であってもよく、2つの素子の内部連通であってもよい。当業者にとって、上記用語の本発明における具体的な意味を具体的な状況に基づいて理解することができる。
【0028】
本発明において、他の明確な規定及び限定がない限り、第1の特徴が第2の特徴の「上」又は「下」にあるとは、第1の特徴が第2の特徴に直接接触してもよく、第1の特徴と第2の特徴とが中間媒体を介して間接的に接触してもよい。また、第1の特徴が第2の特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあるとは、第1の特徴が第2の特徴の真上又は斜め上方にあってもよく、第1の特徴の水平高さが第2の特徴より高いことのみを示す。第1の特徴が第2の特徴の「下」、「下方」及び「下方」にあるとは、第1の特徴が第2の特徴の直下又は斜め下方にあってもよく、第1の特徴の水平高さが第2の特徴より小さいことのみを示す。
【0029】
本発明において、油圧シリンダバレルの内部に内蔵固定ロッドが設置され、ピストンロッド内に嵌め込まれ、固定ロッド及びピストンロッドキャビティを高圧作動キャビティとして使用することにより、有効仕事面積を減少させるだけでなく、ピストンロッドの直径を大きくさせることができ、油圧シリンダが小波でも起動できることを確保するとともに、圧力による仕事の条件下で、受圧安定性の要件を満たすことができる。油圧シリンダのフロントエンドキャップ及びリアエンドキャップに、限界波状態でのピストンロッドのストロークが大きすぎることによる衝突を緩衝するためのバッファスプリングが設置され、スプリングの剛性を適切に設定することにより、大波の場合に油圧シリンダを緩衝し、プライマリピストンがフロントエンドキャップ及びリアエンドキャップに衝突しないようにすることができる。また、油圧シリンダ内に4つの密封リングが設置され、高圧作動キャビティの密封リングの破損についての問題は大幅に解決される。
【0030】
図3を参照すると、
図3は、波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダの概略構成図を示し、多段緩衝式油圧シリンダは、シリンダバレル1を含み、シリンダバレルの後部にリアエンドキャップ2があり、リアエンドキャップ2とシリンダバレル1とがボルトで接続できるため、取り外し及び取り付けが容易であり、リアエンドキャップ2にプライマリポート3が設置される。プライマリポート3は、第1の逆止弁6及び第2の逆止弁7に連通し、第1の逆止弁6を介して油タンクから油を吸い込み、第2の逆止弁7を介して油圧シリンダの油をアキュムレータに圧送することができ、機械エネルギーから油圧エネルギーへの変換を実現する。油圧シリンダのシリンダバレル1にリアポート4及びフロントポート5が設置され、リアポート4及びフロントポート5は、油タンクに直接連通する。油圧シリンダのシリンダバレル1にフロントエンドキャップ8が設置され、フロントエンドキャップ8とシリンダバレル1とがボルトで接続されるため、取り外し及び取り付けが容易である。
【0031】
さらに、油圧シリンダのシリンダバレル1に中空のピストンロッド9が設置され、ピストンロッド9の左端部にプライマリピストン10が取り付けられ、プライマリピストン10とシリンダバレル1の内壁とが係合し、それらの間に第2の密封リング21が設置され、ピストンロッド9は、シリンダバレルに沿って往復運動することができる。ピストンロッド9とフロントエンドキャップ8との間に第1の密封リング20が設置され、ピストンロッド9、プライマリピストン10、シリンダバレル1の内壁及びフロントエンドキャップ8によってメインロッドキャビティ15が囲まれ、メインロッドキャビティ15内の低圧力をかけた作動油がリアポート4を介して吸い込まれ、吐出される。
【0032】
さらに、フロントエンドキャップ8の内壁に、荒波の場合にピストンロッド9を緩衝し、ピストンロッド9の運動ストロークがフロント限界位置を超えることを防止するフロントバッファスプリング13が取り付けられる。リアエンドキャップ2の内壁にも、荒波の場合にピストンロッド9を緩衝し、ピストンロッド9の運動ストロークがリア限界位置を超えることを防止するリアバッファスプリング14が取り付けられる。
【0033】
さらに、リアエンドキャップ2の内壁に内蔵固定ロッド11が設置され、内蔵固定ロッド11の外壁とプライマリピストン10とが係合し、それらの間に第3の密封リング22が設置される。内蔵固定ロッド11は、中空の円形ロッドであり、内部に固定ロッドキャビティ18が設置される。内蔵固定ロッド11の長さは、フロントエンドキャップ8の縁部まで延在し、内蔵固定ロッド11の前端部にセカンダリピストン12が取り付けられ、セカンダリピストン12とピストンロッド9の内壁面とが係合し、それらの間に第4の密封リング23が取り付けられる。セカンダリピストン12は、ピストンロッド9の中空キャビティを2つの部分、すなわち、ピストンロッドキャビティ17と密封キャビティ19に分割する。
【0034】
さらに、内蔵固定ロッド11の後端部がプライマリポート3に連通することにより、固定ロッドキャビティ18の作動油は、後端のプライマリポート3から流出及び流入することができる。内蔵固定ロッド11の固定ロッドキャビティ18がピストンロッドキャビティ17に連通し、油圧シリンダが仕事をすると、高圧部分の作動油は、主に固定ロッドキャビティ18及びピストンロッドキャビティ17を流れる。
【0035】
さらに、密封キャビティ19に、第4の密封リング23を保護するために、適切な圧力の窒素ガス又は他の不活性ガスを充填することができる。
【0036】
図4~
図7を参照すると、
図4~
図7は、異なる波の場合の多段緩衝式油圧シリンダの運動過程を示す。
【0037】
油圧シリンダのピストンロッド9は、波エネルギー発電装置の波吸収浮体に接続され、油圧シリンダのシリンダバレル1は、波エネルギー発電装置の本体に接続され、波吸収浮体と本体は、波の作用で相対運動し、ピストンロッド9をシリンダバレル1内で往復運動するように駆動する。
【0038】
通常の波の状態では、波エネルギー装置が波により駆動され、波吸収浮体が本体に対して上向きに運動すると、
図4に示すように、油圧シリンダのピストンロッド9も同時に上向きに運動する。油圧シリンダのメインロッドキャビティ15は、フロントポート5を介して油タンクから油を吸い込み、油圧シリンダのメインキャビティ16は、リアポート4を介して作動油を油タンクに吐出する。ピストンロッド9は、内部が中空の円形ロッドであり、ピストンロッドキャビティ17は、作動油で満たされる。シリンダバレル1のリアエンドキャップ2に内蔵固定ロッド11が溶接され、内蔵固定ロッド11の固定ロッドキャビティ18の前端は、ピストンロッドキャビティ17に連通し、内蔵固定ロッド11の後部キャビティは、プライマリポート3に連通し、作動時に、固定ロッドキャビティ18も作動油で満たされる。ピストンロッド9が上向きに運動すると、ピストンロッドキャビティ17及び固定ロッドキャビティ18の作動油が絞り出され、プライマリポート3及び第2の逆止弁を介してアキュムレータ群に圧送され、エネルギーが蓄えられ、圧力が安定して発電する。この過程において、密封キャビティ19のガスは膨張する。設計によれば、通常の波の状態では、ピストンロッド9が上向きに運動すると、通常、リアバッファスプリング14の位置まで運動しない。
【0039】
通常の波の状態では、波エネルギー装置が波により駆動され、波吸収浮体が本体に対して下向きに運動すると、
図6に示すように、油圧シリンダのピストンロッド9も同時に下向きに運動する。油圧シリンダのメインロッドキャビティ15は、フロントポート5を介して作動油を油タンクに吐出し、油圧シリンダのメインキャビティ16は、リアポート4を介して油タンクから油を吸い込む。ピストンロッド9が下向きに運動すると、ピストンロッドキャビティ17及び固定ロッドキャビティ18は、プライマリポート3及び第1の逆止弁を介して油タンクから油を吸い込む。この過程において、密封キャビティ19のガスは圧縮される。設計によれば、通常の波の状態では、ピストンロッド9が下向きに運動すると、通常、フロントバッファスプリング13の位置まで運動しない。
【0040】
限界波の状態では、波エネルギー装置が波により駆動され、波吸収浮体が本体に対して上向きに運動すると、
図5に示すように、ピストンロッド9も同時に上向きに運動するが、通常の波の状態とは異なり、ピストンロッド9の左端部のプライマリピストン10が限界の大波により駆動され、波吸収浮体が非常に大きな波力を受けるため、プライマリピストン10は、油圧シリンダのリアエンドキャップ2に衝突することが多く、何も対策を講じないと、衝突により油圧シリンダが破損するおそれがある。衝突による損傷を緩衝するために、リアエンドキャップ2にリアバッファスプリング14が設置され、プライマリピストン10がリアエンドキャップ2から一定の距離まで運動すると、プライマリピストン10がリアバッファスプリング14を圧縮し始め、リアバッファスプリング14の剛性は、限界波力の大きさに応じて設定され、プライマリピストン10が限界波の作用でもリアエンドキャップに衝突しないことを確保する。スプリングが圧縮される過程全体において、波吸収浮体の機械エネルギーがスプリングの位置エネルギーに変換され、最終的に熱エネルギーが発生し、緩衝過程において発生した熱を除去するために、メインキャビティ16は、リアポート4を介して作動油を吸い込んで低圧の油タンクに吐出し、作動油の流れによって熱を除去する。
【0041】
限界波の状態では、波エネルギー装置が波により駆動され、波吸収浮体が本体に対して下向きに運動すると、
図7に示すように、ピストンロッド9も同時に下向きに運動し、同様に、限界の大波により、プライマリピストン10も油圧シリンダのフロントエンドキャップ8に衝突することが多い。プライマリピストン10の下向きの運動幅を緩衝するために、油圧シリンダのフロントエンドキャップ8にもフロントバッファスプリング13が取り付けられ、プライマリピストン10がフロントエンドキャップ8から一定の距離まで運動すると、プライマリピストン10は、フロントバッファスプリング13を圧縮し始め、フロントバッファスプリング13の剛性は、限界波力の大きさに応じて設定される。スプリングの緩衝及び圧縮過程において発生した熱エネルギーを冷却するために、メインロッドキャビティ15は、フロントポート5を介して作動油を吸い込んで低圧の油タンクに吐出し、作動油の流れによって熱を除去する。
【0042】
本明細書の説明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体的な例」、又は「いくつかの例」などの用語を参照した説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特点が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の概略的な表現は、必ずしも同一の実施例又は例に対するものではない。説明された具体的な特徴、構造、材料又は特点は、任意の1つ以上の実施例又は例において適宜組み合わせることができる。また、互いに矛盾しない限り、当業者は、本明細書に説明された異なる実施例又は例及び異なる実施例又は例の特徴を組み合わせることができる。
【0043】
上記実施例は、本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものに過ぎず、当業者が本発明の内容を理解して実施できるようにすることを目的とし、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の内容の本質に基づいて行われた同等の変更又は修正は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【0044】
(付記)
(付記1)
本体と波吸収浮体とを含む波エネルギー発電装置に接続される、波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダであって、
両端にリアエンドキャップとフロントエンドキャップを有し、前記本体に接続されるシリンダバレルと、
前記シリンダバレル内に同軸に設置され、中空キャビティを有し、右端部がフロントエンドキャップまで延在し、右端部にセカンダリピストンが取り付けられる内蔵固定ロッドと、
前記内蔵固定ロッドに同軸に嵌設され、中空キャビティを有し、左端部にプライマリピストンが取り付けられ、右端部が前記波吸収浮体に接続され、シリンダバレル及び内蔵固定ロッドとともに多段シリンダを構成するピストンロッドとを含み、
前記内蔵固定ロッドの中空キャビティは、固定ロッドキャビティであり、前記固定ロッドキャビティの左端部は、プライマリポートに連通し、前記内蔵固定ロッドの外壁、前記ピストンロッドの内壁、前記プライマリピストン及び前記セカンダリピストンによって囲まれたキャビティは、密封キャビティであり、前記ピストンロッドの中空キャビティの前記密封キャビティ以外の部分は、ピストンロッドキャビティであり、前記シリンダバレルの内壁、前記リアエンドキャップ、前記内蔵固定ロッドの外壁及び前記プライマリピストンによって囲まれたキャビティは、メインキャビティであり、前記メインキャビティは、リアポートに連通し、前記シリンダバレルの内壁、前記フロントエンドキャップ、前記ピストンロッドの外壁及び前記プライマリピストンによって囲まれたキャビティは、メインロッドキャビティであり、前記メインロッドキャビティは、フロントポートに連通し、前記固定ロッドキャビティは、前記ピストンロッドキャビティに連通し、
前記本体及び前記波吸収浮体が波の作用で相対運動し、これにより、ピストンロッドは、シリンダバレル内で往復運動するように駆動される、ことを特徴とする波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【0045】
(付記2)
油タンク及びアキュムレータをさらに含み、前記プライマリポートは、第1の逆止弁を備えた管路を介して前記油タンクから油を吸い込み、第2の逆止弁を備えた管路を介して作動油を前記アキュムレータに圧送し、前記リアポート及び前記フロントポートは、前記油タンクに連通する、ことを特徴とする付記1に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【0046】
(付記3)
前記フロントエンドキャップに近接する内壁にフロントバッファスプリングが取り付けられ、前記リアエンドキャップに近接する内壁にリアバッファスプリングが取り付けられる、ことを特徴とする付記1に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【0047】
(付記4)
前記ピストンロッドと前記フロントエンドキャップとの間に第1の密封リングが設置され、前記プライマリピストンと前記シリンダバレルの内壁との間に第2の密封リングが設置され、前記内蔵固定ロッドの外壁と前記プライマリピストンとの間に第3の密封リングが設置され、前記セカンダリピストンと前記ピストンロッドの内壁との間に第4の密封リングが設置される、ことを特徴とする付記1に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【0048】
(付記5)
前記密封キャビティに、不活性ガスが充填される、ことを特徴とする付記1に記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダ。
【0049】
(付記6)
付記1~5のいずれか1つに記載の波エネルギー発電装置用の多段緩衝式油圧シリンダを使用し、
波吸収浮体が本体に対して上向きに運動するときに使用される第1の制御モードと、
波吸収浮体が本体に対して下向きに運動するときに使用される第2の制御モードと、
前記第1の制御モードの限界波状態で使用される第3の制御モードと、
前記第2の制御モードの限界波状態で使用される第4の制御モードと、を含む、ことを特徴とする多段緩衝式油圧制御方法。
【0050】
(付記7)
前記第1の制御モードは、
波の動きにより波吸収浮体が本体に対して上向きに運動すると、油圧シリンダのピストンロッドも同時に上向きに運動し、油圧シリンダのメインロッドキャビティがフロントポートを介して油タンクから油を吸い込み、油圧シリンダのメインキャビティがリアポートを介して作動油を油タンクに吐出する制御プロセスと、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティが作動油で満たされ、ピストンロッドが上向きに運動すると、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティの作動油が絞り出され、プライマリポート及び第2の逆止弁を介してアキュムレータ群に圧送され、エネルギーが蓄えられ、圧力が安定して発電する制御プロセスと、を含み、この過程において、密封キャビティのガスは膨張する、ことを特徴とする付記6に記載の多段緩衝式油圧制御方法。
【0051】
(付記8)
前記第2の制御モードは、
波の作用で波吸収浮体が本体に対して下向きに運動すると、油圧シリンダのピストンロッドも同時に下向きに運動し、油圧シリンダのメインロッドキャビティがフロントポートを介して作動油を油タンクに吐出し、油圧シリンダのメインキャビティがリアポートを介して油タンクから油を吸い込む制御プロセスと、ピストンロッドが下向きに運動すると、ピストンロッドキャビティ及び固定ロッドキャビティがプライマリポート及び第1の逆止弁を介して油タンクから油を吸い込む制御プロセスと、を含み、この過程において、密封キャビティのガスは圧縮される、ことを特徴とする付記6に記載の多段緩衝式油圧制御方法。
【0052】
(付記9)
前記第3の制御モードは、
限界波の場合、波吸収浮体が本体に対して上向きに運動すると、ピストンロッドも同時に上向きに運動し、プライマリピストンがリアエンドキャップから一定の距離まで運動したとき、プライマリピストンがリアバッファスプリングを圧縮し始め、スプリングが圧縮される過程において、波吸収浮体の機械エネルギーがスプリングの位置エネルギーに変換され、最終的に熱エネルギーが発生し、メインキャビティがリアポートを介して作動油を吸い込んで油タンクに吐出し、作動油の流れによって熱を除去する制御プロセスを含む、ことを特徴とする付記6に記載の多段緩衝式油圧制御方法。
【0053】
(付記10)
前記第4の制御モードは、
限界波の場合、波吸収浮体が本体に対して下向きに運動すると、ピストンロッドも同時に下向きに運動し、プライマリピストンがフロントエンドキャップから一定の距離まで運動したとき、プライマリピストンがフロントバッファスプリングを圧縮し始め、スプリングが圧縮される過程において、波吸収浮体の機械エネルギーがスプリングの位置エネルギーに変換され、最終的に熱エネルギーが発生し、メインロッドキャビティがフロントポートを介して作動油を吸い込んで油タンクに吐出し、作動油の流れによって熱を除去する制御プロセスを含む、ことを特徴とする付記6に記載の多段緩衝式油圧制御方法。
【符号の説明】
【0054】
1 シリンダバレル
2 リアエンドキャップ
3 プライマリポート
4 リアポート
5 フロントポート
6 第1の逆止弁
7 第2の逆止弁
8 フロントエンドキャップ
9 ピストンロッド
10 プライマリピストン
11 内蔵固定ロッド
12 セカンダリピストン
13 フロントバッファスプリング
14 リアバッファスプリング
15 メインロッドキャビティ
16 メインキャビティ
17 ピストンロッドキャビティ
18 固定ロッドキャビティ
19 密封キャビティ
20 第1の密封リング
21 第2の密封リング
22 第3の密封リング
23 第4の密封リング