(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】刈払機及び刈払機に用いられるコードリールカセット
(51)【国際特許分類】
A01D 34/416 20060101AFI20241203BHJP
A01D 34/90 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A01D34/416 100
A01D34/90 A
(21)【出願番号】P 2024517592
(86)(22)【出願日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2024010629
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399019559
【氏名又は名称】有限会社とまと不動産
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】樽見 正志
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-078868(JP,A)
【文献】特許第7282425(JP,B1)
【文献】特表2000-506003(JP,A)
【文献】特開2015-181475(JP,A)
【文献】特開2010-200629(JP,A)
【文献】国際公開第2022/054749(WO,A1)
【文献】特許第7217485(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0026846(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00-34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ別のコードが巻き付けられた2つの
独立したコードリールカセットが取り付けられるように構成された刈払機であって、
ハンドルが設けられたロッドと、
前記ロッドの一端に配置された回転シャフトと、
前記回転シャフトに駆動力を与えて回転させる駆動部と、
前記回転シャフトに固定されて、前記回転シャフトの回転に伴って回転するように構成され、且つ、内部に前記2つのコードリールカセットを収容するための中空の収容室が設けられたカバー部材と、
板状の本体部、及び、前記板状の本体部に設けられた係合部であって、
前記2つのコードリールカセットが前記本体部に対して回転しないように前記2つのコードリールカセットに設けられた係合受け部に係合
する係合部を有する固定部材と、
前記カバー部材及び前記固定部材に設けられたロック機構であって、前記固定部材を、前記固定部材が前記カバー部材と独立に回転する第1位置と、前記固定部材が前記カバー部材と一体となって回転する第2位置とに移動するように構成されたロック機構とを備え、
前記刈払機の運転時において、前記固定部材が第2位置に位置するときには、前記2つのコードリールカセットは、前記カバー部材の前記収容室において前記固定部材に
対して回転しない状態で、前記固定部材及び前記カバー部材と一体となって回転し、
前記固定部材が第1位置にあるときには、前記2つのコードリールカセット及び前記固定部材が前記カバー部材に対して回転することにより、前記2つのコードリールカセットに巻かれた前記コードの長さが調整可能であることを特徴とする刈払機。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記固定部材に設けられた凸部及び前記カバー部材に設けられた凹部の対、又は、前記固定部材に設けられた凹部及び前記カバー部材に設けられた凸部の対と、
前記固定部材を前記カバー部材に向かって付勢する付勢部材と、を備える、請求項1に記載の刈払機。
【請求項3】
前記ロック機構の前記付勢部材は、前記固定部材を前記カバー部材に向かって付勢するように構成されている請求項2に記載の刈払機。
【請求項4】
請求項1に記載の前記刈払機の、前記カバー部材の前記収容室に、取り外し可能に収容されるコードリールカセットであって、
上下方向に対向する上壁及び下壁と、前記上壁の中央部と前記下壁の中央部とを上下方向に連結する軸部とを有し、
前記軸部または前記下壁には、前記固定部材の前記係合部に係合するように構成された係合受け部を備えることを特徴とするコードリールカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機に取り付け可能なコードリールカセット及び刈払機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原動機、シャフト、回転鋸を有し、ユーザーがシャフトに固定されたハンドルを操作して草や小径木を刈払うための刈払機(草刈機ともいう)が知られている。刈払機の回転鋸が取り付けられているロータ部分に、回転鋸に代えて太めのナイロンコードのような樹脂製のコードを取り付けて、キワ草刈り用のコードカッターとして用いることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が発明した特許文献1に記載の刈払機は、2つのコードカッターを回転させて草刈りを行うように構成されている。これら2つのコードカッターは、それぞれ別のコードリールカセットに巻かれている。特許文献1に記載の刈払機は、2つのコードリールカセットから引き出される2つのコードカッターの長さを独立に調整するための2つのコード調整機構を備えている。
【0005】
特許文献1に記載の刈払機では、刈払機の運転時において、2つのコードリールカセットはカバー部材の収容室の内部において、自由に回転することができるように構成されている。2つのコードリールカセットから引き出された2本のコードカッターの長さは、2つのコード調整機構によって調整される。刈払機の運転時には、コードカッターに遠心力が働く。しかしながら、遠心力によってコードカッターが外側に引っ張られて、意図しない長さまで引き出されてしまうことは、コード調整機構によって抑えられている。そのため通常の使用においては、2本のコードカッターが遠心力によって意図しない長さまで引き出されてしまうことはない。
【0006】
しかしながら、本発明者らは、コード調整機構に不具合が生じて、コード調整機構がコードカッターを固定する力が弱まった場合には、コードカッターにかかる遠心力に抗してコードカッターを固定することができなくなり、2本のコードカッターが遠心力によって意図しない長さまで引き出されてしまうという課題を見いだした。
【0007】
本発明は、本発明者が見いだした上記の課題を解決するためのものであり、本発明の目的は、2本のコードカッターを用いる刈払機において、刈払機の運転中にコードカッターにかかる遠心力によって、コードカッターが外側に引っ張られて、意図しない長さまで引き出されてしまうこと抑制するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に従えば、それぞれ別のコードが巻き付けられた2つの独立
したコードリールカセットが取り付けられるように構成された刈払機であっ
て、
ハンドルが設けられたロッドと、
前記ロッドの一端に配置された回転シャフトと、
前記回転シャフトに駆動力を与えて回転させる駆動源と、
前記回転シャフトに固定されて、前記回転シャフトの回転に伴って回転するように構成され、且つ、内部に前記2つのコードリールカセットを収容するための中空の収容室が設けられたカバー部材と、
板状の本体部、及び、前記板状の本体部に設けられた係合部であって、前記2つのコードリールカセットが前記本体部に対して回転しないように前記2つのコードリールカセットに設けられた係合受け部に係合する係合部を有する固定部材と、
前記カバー部材及び前記固定部材に設けられたロック機構であって、前記固定部材を、前記固定部材が前記カバー部材と独立に回転する第1位置と、前記固定部材が前記カバー部材と一体となって回転する第2位置とに移動するように構成されたロック機構とを備え、
前記刈払機の運転時において、前記固定部材が第2位置に位置するときには、前記2つのコードリールカセットは、前記カバー部材の前記収容室において前記固定部材に対して回転しない状態で、前記固定部材及び前記カバー部材と一体となって回転し、
前記固定部材が第1位置にあるときには、前記2つのコードリールカセット及び前記固定部材が前記カバー部材に対して回転することにより、前記2つのコードリールカセットに巻かれた前記コードの長さが調整可能であることを特徴とする刈払機が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の刈払機においては、刈払機の運転時において、固定部材が第2位置に位置するときには、2つのコードリールカセットは、カバー部材と一体になって回転する。しかしながら、2つのコードリールカセットは固定部材に固定されているため、カバー部材の内部の収容室においてコードリールカセットが自由に回転することが抑制される。そのため、コードリールカセットの回転に伴って、コードに遠心力が働いた場合であっても、コードリールカセットは自由に回転できないので、遠心力によってコードが意図しない長さまで引き出されるおそれはない。さらに、固定部材が第1位置に位置するときには、2つのコードリールカセット及び固定部材が、カバー部材に対して回転可能になるため、2つのコードリールカセットから容易にコードを引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は上カバー72、下カバー73、コードリールカセット100の概略説明図である。なお、
図2においては、図面を見やすくするために、コードリールカセット100の断面に斜線を入れていない。
【
図3】
図3はコードリールカセット100の概略説明図である。
【
図5】
図5は、下カバー73に設けられた凹部731を説明するための概略説明図である。
【
図6】
図6は、係合受け部の一例としての凹部102aと、係合部の一例としての凸部80Pとを説明するための概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る刈払機10について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、
図1に示されるように、上側、下側、左側、右側をそれぞれ定義することとする。
【0012】
図1に示されるように、刈払機10は、円柱状のロッド20と、ロッド20の一端(下端)に設けられた回転シャフト30(
図2参照)と、ロッド20の、回転シャフト30と反対側の端部(上端)に設けられた駆動部40と、ロッド20の駆動部20に近い側に設けられたハンドル50と、ロッド20の回転シャフト30に近い側に設けられたガード60と、コードリールカセット100(
図2参照)を収容するカバー部材70と、コードリールカセット100をカバー部材70に固定する固定部材80(
図2参照)とを主に備える。
【0013】
円柱状のロッド20は、長さ約1500mm~1700mm程度の中空の金属製パイプであり、その上端に駆動部40が取り付けられている。駆動部40は、モータ41と、モータ41に電力を供給するためのバッテリ42とを備えている。ロッド20の下端には、回転シャフト30(
図2参照)が設けられており、回転シャフト30は、不図示の伝達機構を通じてモータ41の回転軸43から伝達された回転駆動力によって回転するように構成されている。
【0014】
ハンドル50(
図1参照)は、ユーザーが刈払機10を把持するための取手であり、略U字形状を有する。ハンドル50の一端には、モータ41に連動するスイッチ51が取り付けられており、ユーザーがスイッチ51をオンにしている間、モータ41が駆動して回転軸43及び回転シャフト30が回転する。
【0015】
図2に示されるように、カバー部材70は上カバー72及び下カバー73を備える。本実施形態において、カバー部材70の上カバー72及び下カバー73は金属製のカバー部材である。上カバー72は、略円筒型の形状の側壁721と、側壁721の上方を覆う円形の上壁722とを備える。上カバー72の側壁721には、コードリールカセット100のナイロンコード200を取り出すための2つのガイド孔723が形成されている。上壁722の中央部分には、回転シャフト30が挿通するための貫通孔722hが形成されている。回転シャフト30は上カバー72の貫通孔722hに挿通されており、上カバー72はナット等の締結部材71によって回転シャフト30に固定される。
【0016】
下カバー73も上カバー72と同じく金属製のカバー部材であり、中央に開口73hが設けられている。また、
図5に示されるように、開口73hの周囲を取り囲むように、複数の凹部731が設けられている。後述のように、複数の凹部731は、固定部材80の本体部810(
図4参照)に設けられた複数の凸部840(
図4参照)に嵌合する。
図2に示されるように、下カバー73は上カバー72を下方から覆うように、上カバー72の下方に、ネジ止めなどにより固定される。上カバー72に下カバー73を取付けた状態において、上カバー72と下カバー73の内側には、2つのコードリールカセット100を入れるための円柱状の空間が形成される。
【0017】
なお、上述のように、上カバー72は、締結部材71によって回転シャフト30に固定することができる。さらに、上カバー72と下カバー73とがネジ等で固定されている。そのため、回転シャフト30の回転に伴って上カバー72だけでなく下カバー73も回転する。
【0018】
次に、上カバー72及び下カバー73により形成される空間の内部に配置される2つのコードリールカセット100について、図面を参照しつつ説明する。
図2に示されるように、2つのコードリールカセット100は上下方向に重ねて配置される。なお、2つのコードリールカセット100は同様の構成を有している。
図2に示すように、コードリールカセット100は、上壁101と、下壁102と、上壁101及び下壁102を上下方向に連結する軸部103とを有している。2つのコードリールカセット100の軸部103には、それぞれ一本ずつナイロンコード200が巻き付けられている。なお、図示はされていないが、ナイロンコード200の一端は、コードリールカセット100の軸部103に固定されている。そのため、ナイロンコード200がコードリールカセット100から全て外れてしまうことはない。また、
図3に示されるように、コードリールカセット100の軸部103には、後述の固定部材80の4つの固定軸820(
図2参照)に嵌合する4つの嵌合溝104が設けられている。4つの嵌合溝104は、本発明の係合受け部の一例であり、4つの固定軸820は、本発明の係合部の一例である。
【0019】
図4に示されるように、固定部材80は、略円板上の本体部810と、本体部810の略中央に設けられた円形の溝811と、溝811の周りに配置された4つの固定軸820と、本体部810の略中央において、下側に向かって突出する押圧部830と、押圧部830の周りを取り囲む複数の凸部840と、バネ850(
図2参照)とを備える。なお、
図2に示されるように、バネ850の下端は固定部材80の溝811に挿入されている。
【0020】
図2に示されるように、2つのコードリールカセット100上下方向に重ねて配置される場合において、上のコードリールカセット100の下壁102と下のコードリールカセット100の上壁101とが互いに当接していてもよく、所定の間隙を介して離れて向かい合うように配置されていてもよい。
【0021】
図2に示されるように、コードリールカセット100から引き出された2本のナイロンコード200は、上カバー72の側壁721に設けられた2つの本体ガイド孔723から引き出される。
【0022】
次に、本発明に係る刈払機10におけるコードリールカセット100の交換方法について説明する。刈払機10を使用してキワ草刈りを行うと徐々にナイロンコード200の先端が摩耗する。ユーザーはナイロンコード200が巻き付けられたコードリールカセット100を購入して、交換することができる。なお、2つのコードリールカセット100を同時に交換することもできる。また、2つのコードリールカセット100のいずれか一方のみを交換することもできる。以下の説明では、2つのコードリールカセット100を同時に交換する場合を例に挙げて説明する。
【0023】
交換の際には、まず、上カバー72と下カバー73との間のネジを外して、下カバー73を上カバー72から取り外す。このとき、下カバー73とともに、固定部材80及び2つのコードリール100も取り出される。次に、交換対象となる2つコードリールカセット100を上に持ち上げるようにして、固定部材80の固定軸820から取り外す。なお、固定部材80を下カバー73から取り外すこともできる。
【0024】
次に、新しいコードリールカセット100を用意して、固定部材80に取り付ける。このとき、コードリールカセット100の軸部103の4つの嵌合溝104(
図3参照)を、固定部材80の4本の固定軸820に嵌合させる。これにより、コードリールカセット100が固定部材80に対して自由に回転することが抑制される。つまり、コードリールカセット100と固定部材80とが一体に回転する。次に、固定軸820にコードリールカセット100の嵌合溝104を嵌合させた状態で、固定部材80を下カバー73に取り付ける。このとき、固定部材80の押圧部830が下カバー73の開口73hから下側に突出するように、押圧部830を開口73hに挿入する。同時に、固定部材80の凸部840を下カバー73の凹部731に嵌合させる。このように固定部材80を下カバー73に取り付けた状態で、下カバー73を上カバー72にネジなどで固定する。このとき、固定部材80のバネ850が自然長よりも縮んだ状態で、バネ850の上端が上カバー72の上壁722に当接する。固定部材80のバネ850が自然長よりも縮んだ状態でバネ850の上端が上カバー72の上壁722に当接しているので、固定部材80はバネ850により下側に向かって、つまり、下カバー73に向かって付勢される。上述のように、固定部材80の凸部840が下カバー73の凹部731に嵌合しているので、固定部材80が下カバー73に向かって付勢される。これにより、固定部材80が下カバー73に対して独立に回転することが抑制されて、固定部材80と下カバー73とが一体に回転する。このように、固定部材80の凸部840が下カバー73の凹部731に嵌合した位置が、固定部材80の第2位置に対応する。なお、固定部材80に設けられた凸部840と下カバー73に設けられた凹部731と、バネ850との組み合わせが、本発明のロック機構の一例である。
【0025】
上述のように、回転シャフト30には、ナット等の締結部材71によって上カバー72が固定されている。上カバー72には、ネジなどによって下カバー73が固定されている。下カバー73には、固定部材80が固定されており、下カバー73と固定部材80とは、一体となって回転する。さらに、固定部材80には2つのコードリールカセット100が固定されており、固定部材80と2つのコードリールカセット100とが一体となって回転する。これにより、回転シャフト30の回転に伴って、上カバー72と、下カバー73と、固定部材80と、2つのコードリールカセット100とが一体となって回転する。
【0026】
次に、コードリールカセット100のナイロンコード200の長さを調整する方法について説明する。モータ41を駆動して、回転シャフト30を回転させているときは、上述のように2つのコードリールカセット100もカバー部材70(上カバー72及び下カバー73)と一体になって回転しており、カバー部材70の内部でコードリールカセット100が自由に回転することができない。コードリールカセット100の回転に伴って、ナイロンコード200に遠心力が働くが、コードリールカセット100は自由に回転できないので、遠心力によってナイロンコード200が引き出されるおそれはない。これに対して、モータ41の駆動により回転シャフト30が回転しているときに、固定部材80の押圧部830を地面などに軽くぶつけるように押し当てることによって、押圧部830を上側に向かって瞬間的に押圧する。このときの上向きの押圧力が、バネ850による下向きの付勢力よりも大きい場合には、バネ850による下向きの付勢力に抗して固定部材80が上向きに移動する。このとき、固定部材80の凸部840が下カバー73の凹部731から離れて、固定部材80が下カバー73に対して自由に回転できるようになる。このように、固定部材80の凸部840が下カバー73の凹部731から離れた位置が、固定部材80の第1位置に対応する。固定部材80が第1位置にあるとき、慣性によって固定部材80が回転するとともに、遠心力によってナイロンコード200が引き出される。なお、固定部材80は、押圧部830が地面に押し当てられることによって瞬間的に上に移動して、下カバー73に対して回転する。しかしながら、その直後に、バネ850による付勢力により下向きに移動して、固定部材80の凸部840が下カバー73の凹部731に嵌合する。これにより、再び、固定部材80が下カバー73に対して独立に回転することが抑制されて、固定部材80と下カバー73とが一体に回転するようになる。このように、ナイロンコード200が引き出されるのは、押圧部830が地面に押し当てられることによって瞬間的に上に移動している間に限られるため、ナイロンコード200が余分に引き出されることはなく、押圧部830を地面に押し当てる回数によって、ナイロンコード200の引き出し量を調整することができる。
【0027】
以上説明したように、本発明に係る刈払機10においては、回転シャフト30の回転に伴って、上カバー72と、下カバー73と、固定部材80と、2つのコードリールカセット100とが一体となって回転する。詳細には、固定部材80の凸部840が下カバー73の凹部731に嵌合しており、且つ、固定部材80が下カバー73に向かって付勢されている。これにより、固定部材80が下カバー73に対して独立に回転することが抑制されて、固定部材80と下カバー73とが一体に回転する。さらに、2つのコードリールカセット100が固定部材80に固定されている。これにより、2つのコードリールカセット100は、カバー部材70(上カバー72及び下カバー73)と一体になって回転するが、固定部材80に固定されているため、カバー部材70の内部でコードリールカセット100が自由に回転することができない。コードリールカセット100の回転に伴って、ナイロンコード200に遠心力が働くが、コードリールカセット100は自由に回転できないので、遠心力によってナイロンコード200が引き出されるおそれはない。
【0028】
本発明に係る刈払機10においては、ナイロンコード200の先端が摩耗した場合には、上述のように、モータ41の駆動により回転シャフト30が回転しているときに、固定部材80の押圧部830を地面などに軽くぶつけるように押し当てることによって、押圧部830を上側に向かって瞬間的に押圧する。このような簡単な操作により、容易にナイロンコード200を引き出すことができる。また、固定部材80はバネ850により、常時下カバー73に向かって付勢されているので、押圧部830が地面に押し当てられることによって固定部材80が瞬間的に上に移動して、下カバー73に対して回転した後、すぐにバネ850による付勢力により下向きに移動して、固定部材80の凸部840が下カバー73の凹部731に嵌合する。これにより、再び、固定部材80が下カバー73に対して独立に回転することが抑制されるので、ナイロンコード200が余分に引き出されることがない。
【0029】
本発明に係る刈払機10においては、ナイロンコード200がコードリールカセット100に巻き付けられているので、ユーザーはコードリールカセット100ごと容易にナイロンコード200を交換できる。その際、従来の刈払機のように、長いナイロンコードを刈払機のロータ部分に巻き付けたりする必要が無いため、ユーザーの手間が省けるとともに、機械の操作に不慣れなユーザーであっても、容易にナイロンコードの交換を行うことができる。また、ユーザーは、太さの異なるナイロンコードを使用したいときにも、コードリールカセット100ごと交換すればよいので、従来の刈払機と比べて大幅に交換の手間が省ける。また、2つのコードリールカセット100は、互いに連結するように一体化されたものでなく、個別に取り外して交換することができる。そのため、2つのコードリールカセット100は必ずしも同時に交換する必要はなく、いずれか一方のみを交換することができるので無駄なくコードを使用することができる。
【0030】
本発明に係る刈払機10においては、交換式のコードリールカセット100は金属製の上カバー72及び下カバー73により覆われているので、キワ草刈りの作業中に小石等が飛んできたとしてもコードリールカセット100に直接当たる恐れがない。そのため、コードリールカセット100を金属製の素材などで形成する必要が無く、例えばプラスチックや樹脂などの軽量な素材で形成することができ、軽量化を図るとともに安価に形成することができる。
【0031】
本発明に係る刈払機10においては、上カバー72及び下カバー73によって形成された収容室に、2つのコードリールカセット100が個別に取り外し可能に配置されている。そのため、ユーザーはコードリールカセット100を個別に交換することができる。また、コードリールカセット100が、上下方向に対向する上壁101と下壁102とを備えている。そのため、2つのコードリールカセット100を重ねて配置したときにも、一方のコードリールカセット100の下壁102と他方のコードリールカセット100の上壁101とがバリアとなり、2つのナイロンコード200が絡まるおそれがない。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、コードリールカセット100にはナイロンコード200が巻かれていたが、必ずしもナイロン製のコードでなくてもよく、他の樹脂などによって形成されたコードでもよい。また、カバー部材70は必ずしも金属製のカバーでなくてもよく、樹脂などの適宜の材料で形成することができる。また、上記の実施形態においては、コードリールカセット100は、上壁101、下壁102、軸部103からなるスプール(巻き枠)にナイロンコード200が巻き付けられたものであった。しかしながら、本発明はそのような態様には限られない。コードリールカセット100が上壁と下壁と軸部とに対応する部分を有している限りにおいて、コードリールカセット100の外形は、適宜の形状にしうる。
【0033】
上記実施形態においては、モータ41の駆動により回転シャフト30が回転しているときに、固定部材80の押圧部830を地面などに軽くぶつけるように押し当てることによって、押圧部830を上側に向かって瞬間的に押圧するという操作を行うことによって、ナイロンコード200を引き出していた。しかしながら本発明はそのような態様には限られない。例えば、モータ41を駆動しない状態、すなわち、回転シャフト30が回転していないときに、固定部材80の凸部840が下カバー73の凹部731から離れるように、ユーザーが押圧部830を押圧し、固定部材80を回転させてナイロンコード200を引き出してもよい。この場合には、ユーザーが固定部材80の回転量を調整することにより、ナイロンコード200の引き出し量を容易に調整することができる。また、ユーザーが固定部材80を容易に回転できるように、固定部材80の押圧部830にユーザーが把持するための突起やくぼみを設けてもよい。
【0034】
また、本発明の刈払機10は、回転シャフト30が回転していないときにユーザーが固定部材80の押圧部830を押したときだけ、ナイロンコード200が引き出されるように構成されていてもよい。例えば、押圧部830が下カバー73から下側に突出しないように、押圧部830の高さが調整されていてもよく、下カバー73の下面に、押圧部830よりも下側に突出して、地面が直接押圧部830に当たらないようにするためのバリアが設けられていてもよい。このようにすることにより、刈払機10を駆動しているときに、意図せず押圧部830が押圧されてナイロンコード200が引き出されてしまうことを抑制することができる。
【0035】
上記実施形態において、固定部材80は係合部の一例としての固定軸820を備え、コードリールカセット100の軸部103は係合受け部の一例としての嵌合溝104を備えていた。本発明の係合部及び係合受け部の態様はこのような態様には限られない。例えば、
図6に示されるように、コードリールカセット100の下壁102に、係合受け部の一例としての凹部102aが設けられ、固定部材80に、係合部の一例としての、コードリールカセット100の凹部102aに嵌合する凸部80Pが設けられていてもよい。このような場合においても、コードリールカセット100を固定部材80に固定することができる。なお、コードリールカセット100の下壁102に、係合受け部の一例としての凹部102aが設けられている場合には、コードリールカセット100の上壁101に、凹部102aと嵌合する凸部101aを設けることができる。これにより、2つのコードリールカセット100を上下に重ねたときに、凹部102aと凸部101aが嵌合して、2つのコードリールカセット100が互いに自由に回転することを抑制することができる。
【0036】
上記実施形態において、刈払機10はバッテリ42を備えており、電力で駆動されていたが、本発明はそのような態様には限られず、例えばエンジンにより駆動されてもよい。
【要約】
刈払機の運転中にコードカッターにかかる遠心力によって、コードカッターが外側に引っ張られて、意図しない長さまで引き出されてしまうこと抑制するための技術を提供する。刈払機10においては、2つのコードリールカセット100は、カバー部材70(上カバー72及び下カバー73)と一体になって回転する。しかしながら、2つのコードリールカセット100は固定部材80に固定されているため、カバー部材70の内部でコードリールカセット100が自由に回転することができない。コードリールカセット100の回転に伴って、ナイロンコード200に遠心力が働くが、コードリールカセット100は自由に回転できないので、遠心力によってナイロンコード200が引き出されるおそれはない。