IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

特許7597437ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法
<>
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図1
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図2
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図3
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図4
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図5
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図6
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図7
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図8
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図9
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図10
  • 特許-ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/04 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
F04B43/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020218020
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102938
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】良井 優太
(72)【発明者】
【氏名】関口 力
(72)【発明者】
【氏名】稲本 繁典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】児玉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】栗田 大輔
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0208258(US,A1)
【文献】特開2020-139426(JP,A)
【文献】特開平09-324750(JP,A)
【文献】特開平09-291889(JP,A)
【文献】特公昭41-017264(JP,B1)
【文献】特開2013-090825(JP,A)
【文献】特開2016-061169(JP,A)
【文献】特開2008-240663(JP,A)
【文献】特開2005-133704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/04
F04B 43/02
F04B 45/04
F04B 45/047
F04B 17/04
F04B 35/04
A61B 5/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁駆動する振動アクチュエータと、
吸入口および吐出口に接続されている一対の密閉室と、
前記一対の密閉室の容積をそれぞれ変化させる複数の可動壁と、
前記振動アクチュエータ、前記一対の密閉室、および前記複数の可動壁を内部に収納する筐体と、を備え、
前記振動アクチュエータの駆動により前記複数の可動壁が変位して前記一対の密閉室内の流体が対象物に供給され、
前記振動アクチュエータの消費電流に基づいて前記対象物内の圧力を検出し、
前記振動アクチュエータは、前記筐体内に設けられた軸部と、前記筐体に対して往復回転可能に、前記軸部によって支持されている可動体と、前記筐体および前記可動体の一方に固定された一対のコイルコア部と、前記筐体および前記可動体の他方に、前記一対のコイルコア部とそれぞれ対向するように設けられた一対のマグネットと、を含み、
前記一対のコイルコア部と前記一対のマグネットとの間に作用する磁力によって形成された磁気ばねと、前記一対の密閉室内の圧縮された流体の弾力によって形成された流体ばねと、によって前記可動体を支持するためのバネマス系構造が構成されており、
前記振動アクチュエータの駆動周波数は、前記対象物内の前記圧力が上昇するに連れて前記消費電流が一方的に変化する範囲内に設定されていることを特徴とするポンプシステム。
【請求項2】
前記振動アクチュエータは、前記対象物内の圧力によって共振周波数が変化する請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記消費電流は、線形的に変化する請求項に記載のポンプシステム。
【請求項4】
前記可動体は、長尺形状を有し、
前記一対のマグネットは、それぞれ、前記可動体の長尺方向の両端部に設けられている請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項5】
前記一対のコイルコア部は、それぞれ、前記可動体の前記長尺方向の両側に、前記軸部を介して、互いに対称となるよう設けられている請求項4に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記一対のマグネットのそれぞれは、円弧状の磁極面を有し、
前記一対のコイルコア部のそれぞれは、前記マグネットの前記円弧状の磁極面と対向する円弧状の磁極面を有し、
前記一対のコイルコア部の前記円弧状の磁極面は、それぞれ、前記一対のマグネットの前記円弧状の磁極面と対向している請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のポンプシステムを備えることを特徴とする流体供給装置。
【請求項8】
電磁駆動する振動アクチュエータと、
吸入口および吐出口に接続されている一対の密閉室と、
前記一対の密閉室の容積をそれぞれ変化させる複数の可動壁と、
前記振動アクチュエータ、前記一対の密閉室、および前記複数の可動壁を内部に収納する筐体と、を備え、
前記振動アクチュエータの駆動により前記複数の可動壁が変位して前記一対の密閉室内の流体が対象物に供給されるポンプシステムにおいて、
前記振動アクチュエータの消費電流を検出し、
前記振動アクチュエータの前記消費電流と前記対象物内の圧力との間の事前に保存されている関係に基づいて、前記検出された振動アクチュエータの前記消費電流から前記対象物内の前記圧力を検出し、
前記振動アクチュエータは、前記筐体内に設けられた軸部と、前記筐体に対して往復回転可能に、前記軸部によって支持されている可動体と、前記筐体および前記可動体の一方に固定された一対のコイルコア部と、前記筐体および前記可動体の他方に、前記一対のコイルコア部とそれぞれ対向するように設けられた一対のマグネットと、を含み、
前記一対のコイルコア部と前記一対のマグネットとの間に作用する磁力によって形成された磁気ばねと、前記一対の密閉室内の圧縮された流体の弾力によって形成された流体ばねと、によって前記可動体を支持するためのバネマス系構造が構成されており、
前記振動アクチュエータの駆動周波数は、前記対象物内の前記圧力が上昇するに連れて前記消費電流が一方的に変化する範囲内に設定されていることを特徴とする圧力検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2および特許文献3には、それぞれ、被験者の血圧値を計測する電子血圧計として、被験者の腕に装着されるカフと、カフ内に空気を送り込むことによりカフ内の圧力を上昇させるポンプと、カフ内の圧力を検出する圧力センサーと、を有する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-146894号公報
【文献】特開2014-184071号公報
【文献】特開2017-209433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1、特許文献2および特許文献3では、いずれも、ポンプとは別に圧力センサーを備える構成となっているため、部品点数が多く装置が大型化するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、圧力センサーを省略してポンプを用いてカフ内の圧力を検出する構成とすることにより小型化を図ることのできるポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の(1)~()の本発明により達成される。
【0007】
(1) 電磁駆動する振動アクチュエータと、
吸入口および吐出口に接続されている一対の密閉室と、
前記一対の密閉室の容積をそれぞれ変化させる複数の可動壁と、
前記振動アクチュエータ、前記一対の密閉室、および前記複数の可動壁を内部に収納する筐体と、を備え、
前記振動アクチュエータの駆動により前記複数の可動壁が変位して前記一対の密閉室内の流体が対象物に供給され、
前記振動アクチュエータの消費電流に基づいて前記対象物内の圧力を検出し、
前記振動アクチュエータは、前記筐体内に設けられた軸部と、前記筐体に対して往復回転可能に、前記軸部によって支持されている可動体と、前記筐体および前記可動体の一方に固定された一対のコイルコア部と、前記筐体および前記可動体の他方に、前記一対のコイルコア部とそれぞれ対向するように設けられた一対のマグネットと、を含み、
前記一対のコイルコア部と前記一対のマグネットとの間に作用する磁力によって形成された磁気ばねと、前記一対の密閉室内の圧縮された流体の弾力によって形成された流体ばねと、によって前記可動体を支持するためのバネマス系構造が構成されており、
前記振動アクチュエータの駆動周波数は、前記対象物内の前記圧力が上昇するに連れて前記消費電流が一方的に変化する範囲内に設定されていることを特徴とするポンプシステム。
【0008】
(2) 前記振動アクチュエータは、前記対象物内の圧力によって共振周波数が変化する上記(1)に記載のポンプシステム。
【0011】
) 前記消費電流は、線形的に変化する上記()に記載のポンプシステム。
(4) 前記可動体は、長尺形状を有し、
前記一対のマグネットは、それぞれ、前記可動体の長尺方向の両端部に設けられている上記(1)に記載のポンプシステム。
(5) 前記一対のコイルコア部は、それぞれ、前記可動体の前記長尺方向の両側に、前記軸部を介して、互いに対称となるよう設けられている上記(4)に記載のポンプシステム。
(6) 前記一対のマグネットのそれぞれは、円弧状の磁極面を有し、
前記一対のコイルコア部のそれぞれは、前記マグネットの前記円弧状の磁極面と対向する円弧状の磁極面を有し、
前記一対のコイルコア部の前記円弧状の磁極面は、それぞれ、前記一対のマグネットの前記円弧状の磁極面と対向している上記(1)に記載のポンプシステム。
【0012】
) 上記(1)ないし()のいずれかに記載のポンプシステムを備えることを特徴とする流体供給装置。
【0013】
) 電磁駆動する振動アクチュエータと、
吸入口および吐出口に接続されている一対の密閉室と、
前記一対の密閉室の容積をそれぞれ変化させる複数の可動壁と、
前記振動アクチュエータ、前記一対の密閉室、および前記複数の可動壁を内部に収納する筐体と、を備え、
前記振動アクチュエータの駆動により前記複数の可動壁が変位して前記一対の密閉室内の流体が対象物に供給されるポンプシステムにおいて、
前記振動アクチュエータの消費電流を検出し、
前記振動アクチュエータの前記消費電流と前記対象物内の圧力との間の事前に保存されている関係に基づいて、前記検出された振動アクチュエータの前記消費電流から前記対象物内の前記圧力を検出し、
前記振動アクチュエータは、前記筐体内に設けられた軸部と、前記筐体に対して往復回転可能に、前記軸部によって支持されている可動体と、前記筐体および前記可動体の一方に固定された一対のコイルコア部と、前記筐体および前記可動体の他方に、前記一対のコイルコア部とそれぞれ対向するように設けられた一対のマグネットと、を含み、
前記一対のコイルコア部と前記一対のマグネットとの間に作用する磁力によって形成された磁気ばねと、前記一対の密閉室内の圧縮された流体の弾力によって形成された流体ばねと、によって前記可動体を支持するためのバネマス系構造が構成されており、
前記振動アクチュエータの駆動周波数は、前記対象物内の前記圧力が上昇するに連れて前記消費電流が一方的に変化する範囲内に設定されていることを特徴とする圧力検出方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポンプシステムでは、電磁駆動する振動アクチュエータの消費電流に基づいて対象物内の圧力を検出する。そのため、圧力センサーを用いることなく対象物内の圧力を検出することができる。したがって、部品点数の削減を図ることができ、ポンプシステムの小型化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の流体供給装置は、上述のポンプシステムを備える。そのため、ポンプシステムの効果を享受することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0016】
また、本発明の圧力検出方法では、電磁駆動する振動アクチュエータの消費電流に基づいて対象物内の圧力を検出する。そのため、圧力センサーを用いることなく対象物内の圧力を検出することができる。したがって、ポンプシステムの部品点数を削減することができ、ポンプシステムの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】好適な実施形態に係る電子血圧計の全体構成を示す斜視図である。
図2】ポンプの断面図である。
図3図2に示すポンプの駆動原理を示す断面図である。
図4図2に示すポンプの駆動原理を示す断面図である。
図5】振動アクチュエータが有するばね系を示す模式図である。
図6】振動アクチュエータの駆動周波数と消費電流との関係を示すグラフである。
図7】密閉室内の圧力と消費電流との関係を示すグラフである。
図8】密閉室内の圧力と消費電流との関係を示すグラフである。
図9】密閉室内の圧力と消費電流との関係を示すグラフである。
図10】密閉室内の圧力と消費電流との関係を示すグラフである。
図11】密閉室内の圧力と消費電流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、好適な実施形態に係る電子血圧計の全体構成を示す斜視図である。図2は、ポンプの断面図である。図3および図4は、それぞれ、図2に示すポンプの駆動原理を示す断面図である。図5は、振動アクチュエータが有するばね系を示す模式図である。図6は、振動アクチュエータの駆動周波数と消費電流との関係を示すグラフである。図7ないし図11は、それぞれ、密閉室内の圧力と消費電流との関係を示すグラフである。なお、以下では、説明の便宜上、図2ないし図4中の紙面上側を「上」とも言い、下側を「下」と言う。
【0020】
図1に、流体供給装置としての電子血圧計1を示す。電子血圧計1は、カフ2と、本体3と、カフ2と本体3とを接続する給排気用のチューブ4とを有する。カフ2は、被験者の被測定部位、例えば腕に装着され、本体3からの流体供給により内部にある袋体が膨らんで被測定部位を圧迫する。本体3は、カフ(対象物)2内の圧力を測定し、その測定結果に基づいて被験者の血圧を算出する。前記流体としては、特に限定されず、液体であっても気体であってもよいが、気体であることが好ましい。以下では、説明の便宜上、前記流体を空気として説明する。
【0021】
一般的なオシロメトリック法に従って血圧を測定する場合、次のようにする。まず、被験者の被測定部位にカフ2を巻き付ける。そして、血圧測定時には、本体3からカフ2内に空気を供給してカフ2内の圧力(カフ圧)を最高血圧より高くする。その後徐々に減圧し、この過程においてカフ2内の圧力を本体3で検出し、被測定部位の動脈で発生する動脈容積の変動を脈波信号として取り出す。その時のカフ圧の変化に伴う脈波信号の振幅の変化、主に立ち上がりと立ち下がりに基づいて最高血圧(収縮期血圧)および最低血圧(拡張期血圧)を算出する。ただし、血圧測定方法としては特に限定されない。例えば、オシロメトリック法と共に一般的に使用されているリバロッチ・コロトコフ法を用いてもよい。
【0022】
図1に示すように、本体3には、カフ2内に空気を供給するポンプ5と、ポンプ5の駆動を制御すると共にカフ2内の圧力を検出する制御装置6とを備えたポンプシステム10が内蔵されている。また、図2に示すように、ポンプ5は、筐体7と、振動アクチュエータ8と、ポンプ部9とを有する。
【0023】
振動アクチュエータ8は、軸部81と、軸部81を介して筐体7に対して可動自在に支持された可動体82と、筐体7に固定された一対のコイルコア部85、86とを有する。
【0024】
可動体82は、長尺であり、その中央部において軸部81を介して筐体7に接続されている。そのため、可動体82は、筐体7に対して軸部81を中心としてシーソーのように往復回転する。
【0025】
可動体82の両端部にはマグネット83、84が設けられている。これらマグネット83、84は、軸部81に対して対称的に配置されている。また、マグネット83、84は、コイルコア部85、86と対向する円弧状の磁極面831、841を有する。磁極面831、841にはS極とN極とが円弧方向に沿って交互に配置されている。これらマグネット83、84は、永久磁石であり、例えば、Nd焼結マグネット等により構成されている。
【0026】
可動体82には可動体82が往復回転した際にポンプ部9を押圧する押圧子87、88が設けられている。これら押圧子87、88は、軸部81に対して対称的に配置されている。押圧子87は、軸部81とマグネット83との間に配置され、可動体82の幅方向両側(図2中上下方向両側)に突出している。また、押圧子88は、軸部81とマグネット84との間に配置され、可動体82の幅方向両側(図2中上下方向両側)に突出している。
【0027】
コイルコア部85、86は、可動体82の両側に配置され、コイルコア部85がマグネット83の磁極面831と対向し、コイルコア部86がマグネット84の磁極面841と対向している。これらコイルコア部85、86は、軸部81に対して対称的に配置されている。
【0028】
コイルコア部85は、コア部851と、コア部851に巻回されたコイル859とを有する。また、コア部851は、コイル859が巻回された芯部852と、芯部852の両端から延出した一対のコア磁極853、854とを有する。また、コア磁極853、854は、マグネット83の磁極面831と対向する磁極面853a、854aを有する。また、磁極面853a、854aは、それぞれ、マグネット83の磁極面831に倣って円弧状に湾曲している。コイル859は、制御装置6に接続されており、制御装置6から給電されることによりコア磁極853、854を異なる極性で励磁する。
【0029】
コイルコア部86は、コア部861と、コア部861に巻回されたコイル869とを有する。また、コア部861は、コイル869が巻回された芯部862と、芯部862の両端から延出する一対のコア磁極863、864とを有する。また、コア磁極863、864は、マグネット84の磁極面841と対向する磁極面863a、864aを有する。また、磁極面863a、864aは、それぞれ、マグネット84の磁極面841に倣って円弧状に湾曲している。コイル869は、制御装置6に接続されており、制御装置6から給電されることによりコア磁極863、864を異なる極性で励磁する。
【0030】
コア部851、861は、それぞれ、コイル859、869への通電により磁化する磁性体であり、例えば、電磁ステンレス、焼結材、MIM(メタルインジェクションモールド)材、積層鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)等により構成されている。
【0031】
ポンプ部9は、軸部81に対して上下左右に分かれて4つ配置されている。具体的には、2つのポンプ部9が一方の押圧子87を介して上下に対向配置され、残りの2つのポンプ部9が他方の押圧子88を介して上下に対向配置されている。これら4つのポンプ部9は、互いに同様の構成であり、それぞれ、密閉室91と、可動壁92とを有する。
【0032】
密閉室91は、外部から空気を吸入する吸入口98と、密閉室91内の空気を吐出する吐出口99とに接続されている。なお、本実施形態では、可動体82に対して上側に位置する2つの密閉室91が1つの吐出口99を共有し、可動体82に対して下側に位置する2つの密閉室91が1つの吐出口99を共有している。
【0033】
可動壁92は、密閉室91の一部を構成している。可動壁92は、押圧子87、88で押圧されることにより変位し、密閉室91内の容積を変化させる。可動壁92の変位により密閉室91内の容積が減少すると、密閉室91内の空気が吐出口99から吐出され、反対に、密閉室91内の容積が増加すると、吸入口98から密閉室91内に空気が流入する。このような密閉室91内の容積の減少と増加とが繰り返されることにより吐出口99から連続的に空気が吐出される。可動壁92は、例えば、ダイヤフラムであり、弾性変形可能な材料により形成されている。また、可動壁92は、押圧子87、88が挿入される挿入部921を有し、挿入部921を介して押圧子87、88と接続されている。
【0034】
また、密閉室91と吸入口98との間にはバルブ93が設けられている。バルブ93は、吸入口98から密閉室91への空気の吸入を許容し、密閉室91から吸入口98への空気の吐出を規制する。また、密閉室91と吐出口99との間にはバルブ94が設けられている。バルブ94は、密閉室91から吐出口99の空気の吐出を許容し、吐出口99から密閉室91への空気の吸入を規制する。これにより、空気の吸引と吐出とをより確実にかつより効率的に行うことができる。
【0035】
図1に示すように、制御装置6は、振動アクチュエータ8の駆動を制御する駆動制御部61と、カフ2内の圧力を検出する圧力検出部62と、を有する。制御装置6は、例えば、コンピューターで構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行する。
【0036】
以上、電子血圧計1の構成について説明した。次に、ポンプ5の駆動について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、4つのポンプ部9を「ポンプ部9A」、「ポンプ部9B」、「ポンプ部9C」および「ポンプ部9D」として区別する。
【0037】
駆動制御部61からコイル859、869に交流電圧を印加すると、ポンプ5は、図3に示すように可動体82が一方側に回転する第1状態と、図4に示すように可動体82が他方側に回転する第2状態とを繰り返して駆動する。図3に示す第1状態では、コア磁極853、864がそれぞれN極に励磁し、コア磁極854、863がそれぞれS極に励磁している。反対に、図4に示す第2状態では、コア磁極853、864がそれぞれS極に励磁し、コア磁極854、863がそれぞれN極に励磁している。
【0038】
第1状態では、マグネット83、84とコイルコア部85、86との間に作用する磁力(吸引力・反発力)により矢印方向のトルクF1が発生し、トルクF1の方向に可動体82が回転する。これにより、ポンプ部9A、9Dでは押圧子87、88によって可動壁92が押圧され、密閉室91内の容積が減少し、密閉室91内の空気が吐出口99から吐出される。そして、吐出された空気がチューブ4を介してカフ2内に供給され、カフ2内の圧力が上昇する。反対に、ポンプ部9B、9Cでは密閉室91内の容積が増加し、吸入口98から密閉室91内に空気が流入する。
【0039】
第2状態では、マグネット83、84とコイルコア部85、86との間に作用する磁力(吸引力・反発力)によりトルクF1とは反対方向のトルクF2が発生し、トルクF2の方向に可動体82が回転する。これにより、ポンプ部9B、9Cでは押圧子87、88によって可動壁92が押圧され、密閉室91内の容積が減少し、密閉室91内の空気が吐出口99から吐出される。そして、吐出された空気がチューブ4を介してカフ2内に供給され、カフ2内の圧力が上昇する。反対に、ポンプ部9A、9Dでは密閉室91内の容積が増加し、吸入口98から密閉室91内に空気が流入する。
【0040】
このように、第1状態と第2状態とを交互に繰り返すと、ポンプ部9A、9Dから空気が吐出される状態と、ポンプ部9B、9Cから空気が吐出される状態とが交互に繰り返され、ポンプ5から空気が連続的に吐出される。そのため、カフ2に対して効率よく空気を供給することができ、カフ2内の圧力をスムーズに上昇させることができる。
【0041】
以上、ポンプ5の駆動について説明した。次に、ポンプ5の駆動原理について説明する。振動アクチュエータ8は、下記式(1)に示す運動方程式および下記式(2)に示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0042】
【数1】
【0043】
【数2】
【0044】
このように、可動体82の慣性モーメントJ[Kg*m]、変位角(回転角度)θ(t)[rad]、トルク定数Kt[Nm/A]、電流i(t)[A]、ばね定数Ksp[N/m]、減衰係数D[Nm/(rad/s)]等は、それぞれ、式(1)を満たす範囲内において適宜設定することができる。同様に、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(m/s)]は、それぞれ、式(2)を満たす範囲内において適宜設定することができる。
【0045】
また、ポンプ5では、下記式(3)により流量が設定され、下記式(4)により圧力が設定される。
【0046】
【数3】
【0047】
【数4】
【0048】
このように、ポンプ5における流量Q[L/min]、ピストン面積A[m]、ピストン変位x[m]、駆動周波数f[Hz]等は、それぞれ、式(3)を満たす範囲内において適宜設定することができる。同様に、増加圧力P[kPa]、大気圧P0[kPa]、密閉室体積V[m]、変動体積ΔV[m]等は、それぞれ、式(4)を満たす範囲内において適宜設定することができる。
【0049】
次に、振動アクチュエータ8の共振周波数について説明する。図5に示すように、振動アクチュエータ8は、コイルコア部85、86およびマグネット83、84の間に作用する磁力により形成される磁気ばねB1と、密閉室91内の圧縮空気の弾力により形成される空気ばね(流体ばね)B2とにより可動体82を支持するバネマス系構造を有する。したがって、可動体82は、下記式(5)に示す共振周波数frを有する。
【0050】
【数5】
【0051】
さらに、ばね定数Kspは、下記式(6)に示すように、磁気ばねB1や可動壁92の弾性B3を含む振動アクチュエータ8自体のばね定数KACTと、空気ばねB2のばね定数KAirとの和で表される。
【0052】
【数6】
【0053】
上記式(5)および式(6)から分かるように、振動アクチュエータ8では、密閉室91内の圧力(カフ2内の圧力)によって空気ばねB2のばね定数KAirが変化し、それに伴って可動体82の共振周波数frが変化する。そこで、ポンプシステム10では、この共振周波数frの変化に伴って生じる振動アクチュエータ8の消費電力の変化に着目し、この消費電流の変化に基づいて密閉室91内の圧力を検出する。
【0054】
次に、振動アクチュエータ8の消費電力に基づく圧力検出方法について、具体的に説明する。なお、以下では説明の便宜上、カフ2内の圧力を最大で50kPaまで高めることができるポンプ5について代表して説明する。ただし、圧力の最大値としては、特に限定されず、求められる条件に適合するように適宜設定することができる。また、前述したように、カフ2と密閉室91とはチューブ4を介して接続されているため、これらが同じ圧力となる。そのため、「密閉室91内の圧力」と「カフ2内の圧力」とは、同義である。
【0055】
図6に、カフ2内の圧力が0kPa~50kPaのときの駆動周波数fと振動アクチュエータ8の消費電流との関係を示す。振動アクチュエータ8の消費電流とは、振動アクチュエータ8の主回路内部に流れる電流のことであり、主にコイル859、869に電流を供給するための回路に流れる電流を意味する。また、コイル859、869に印加される交番電圧は、一定である。なお、図6に示す関係は一例であり、本発明がこの関係に限定されることはない。
【0056】
図6では、各圧力において消費電流が最も小さくなる駆動周波数fが共振周波数frとほぼ一致している。そのため、図6から、カフ2内の圧力が上昇するに連れて、空気ばねB2のばね定数KAirが増加し、共振周波数frが高くなることが分かる。
【0057】
ここで、図6では、駆動周波数fがfmin~fmaxの領域においてカフ2内の圧力が上昇するに連れて振動アクチュエータ8の消費電流が減少している。すなわち、カフ2内の圧力が上昇するに連れて消費電流が一方的(減少および増加の一方)に変化している。ポンプ5では、fmin~fmaxの範囲内のように、カフ2内の圧力が上昇するに連れて消費電流が一方的に変化する領域内で駆動周波数fが設定される。なお、駆動周波数fは、初期値で固定され、変更することができなくてもよいし、ユーザーがfmin~fmaxの範囲内で適宜設定することができてもよい。以下では、説明の便宜上、駆動周波数fがfnで固定されている場合について代表して説明する。
【0058】
図7に、駆動周波数f=fnでの密閉室91内の圧力と振動アクチュエータ8の消費電流との関係を示す。同図に示すように、駆動周波数f=fnでは、カフ2内の圧力が上昇するに連れて振動アクチュエータ8の消費電流が線形的に減少している。
【0059】
制御装置6の圧力検出部62には、予め、駆動周波数f=fnでのカフ2内の圧力と振動アクチュエータ8の消費電流との関係がテーブルや計算式として記憶されている。そして、圧力検出部62は、振動アクチュエータ8の消費電流を検出し、検出した消費電流をテーブルや関数に当てはめることによりカフ2内の圧力を求める。特に、本実施形態では、振動アクチュエータ8の消費電流が線形的に減少するため、0kPa~50kPaの全圧力領域においてカフ2内の圧力に対する消費電流の変化の度合いがほぼ均一かつ十分に大きくなる。そのため、全圧力領域においてカフ2内の圧力を精度よく検出することができる。
【0060】
このように、ポンプシステム10によれば、圧力センサーを用いることなく、ポンプ5自身の特性を生かしてカフ2内の圧力を検出することができる。そのため、従来のように、ポンプ5とは別にカフ2内の圧力を検出するための圧力センサー等の別部材を設ける必要がない。したがって、ポンプシステム10の部品点数が減り、ポンプシステム10の小型化を図ることができる。特に、振動アクチュエータ8が、カフ2内の圧力によって共振周波数frが変化する特性を有することにより、振動アクチュエータ8に、カフ2内の圧力の変化に伴って消費電流が変化する特性を簡単に付与することができる。また、振動アクチュエータ8が空気ばねB2を有することにより、簡単な構成で、振動アクチュエータ8に、カフ2内の圧力によって共振周波数frが変化する特性を付与することができる。
【0061】
なお、駆動周波数fの設定方法としては、特に限定されないが、例えば、次のように設定することができる。駆動周波数fが共振周波数frに近い程、振動アクチュエータ8の振幅が大きくなり、ポンプ5から吐出される空気の流量Qを高めることができる。さらには、駆動周波数fが共振周波数frに近い程、振動アクチュエータ8の省電力駆動が可能となる。一方で、0kPaでの振動アクチュエータ8の消費電流と50kPaでの振動アクチュエータ8の消費電流との差が大きい程、カフ2内の圧力に対する消費電流の変化の度合いが大きくなり、カフ2内の圧力をより精度よく検出することができる。
【0062】
そのため、0kPaでの共振周波数frと50kPaでの共振周波数frとの間であって、0kPaでの消費電流と50kPaでの消費電流との差が最大またはその付近(例えば、最大値から90%以内の範囲)に位置する周波数を駆動周波数fに設定することが好ましい。このような駆動周波数fによれば、ポンプ5を効率的に駆動させつつ、カフ2内の圧力をより精度よく検出することができる。このような理由から、本実施形態では、0kPaでの共振周波数frと50kPaでの共振周波数frとの間であって、0kPaでの消費電流と50kPaでの消費電流との差が最大となる周波数fnを駆動周波数fとしている。
【0063】
なお、図7では、カフ2内の圧力が上昇するに連れて振動アクチュエータ8の消費電流が線形的に減少しているが、これに限定されず、例えば、図8に示すように非線形的に減少してもよい。この場合、カフ2内の圧力が低い領域においては、圧力に対する消費電流の変化の度合いが大きいため、カフ2内の圧力をより精度よく検出することができる。一方で、カフ2内の圧力が高い領域においては、圧力に対する消費電流の変化の度合いが小さくなり易く、カフ2内の圧力を十分な精度で検出することができない可能性がある。この点で、図7に示す線形の方が優れている。
【0064】
また、図7では、カフ2内の圧力が上昇するに連れて振動アクチュエータ8の消費電流が減少方向に一方的に変化しているが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、カフ2内の圧力が上昇するに連れて振動アクチュエータ8の消費電流が増加方向に一方的に変化してもよい。このような場合も、図7と同様に、全圧力領域においてカフ2内の圧力に対する消費電流の変化の度合いが十分に大きくなる。そのため、全圧力領域においてカフ2内の圧力を精度よく検出することができる。
【0065】
また、図7では、カフ2内の圧力が上昇するに連れて振動アクチュエータ8の消費電流が減少方向に一方的に変化しているが、これに限定されず、例えば、図10に示すように、減少の後に増加に転じてもよいし、図11に示すように、増加の後に減少に転じてもよい。ただし、この場合は、極値を挟んで異なる圧力で同じ消費電流を示す場合があるため、これらを区別する工夫が必要である。例えば、圧力が十分に低い状態から消費電流を連続的に検出し、極値(図10においては極小値、図11においては極大値)を超えたか否かを判断することにより、極値より低い側の圧力なのか、極値より高い側の圧力なのかを判断することができる。
【0066】
また、前述の説明では、駆動周波数fがfnで固定されている場合について説明したが、例えば、ユーザーが駆動周波数fを複数の値から適宜選択可能な場合には、圧力検出部62に、選択可能な駆動周波数f毎に、カフ2内の圧力と消費電流との関係をそれぞれテーブルや関数として記憶しておき、選択された駆動周波数fに対応するテーブルや関数を用いてカフ2内の圧力を求めればよい。
【0067】
以上、本発明のポンプシステム、流体供給装置および圧力検出方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0068】
また、例えば、前述した実施形態では、ポンプシステムおよび流体供給装置を電子血圧計1に適用しているが、これに限定されず、流体の供給が必要な如何なる器具への適用が可能である。また、例えば、前述した実施形態では、ポンプ5が4つのポンプ部9を有しているが、これに限定されず、少なくとも1つのポンプ部9を有していればよい。
【0069】
また、振動アクチュエータ8の構成としては、密閉室91内の圧力に応じて消費電流が変化する構成であれば、特に限定されない。例えば、前述した実施形態では、可動体82にマグネット83、84が設けられ、筐体7にコイルコア部85、86が設けられているが、これに限定されず、この逆であってもよい。つまり、可動体82にコイルコア部85、86が設けられ、筐体7にマグネット83、84が設けられていてもよい。また、マグネット83、84を電磁石に置換してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…電子血圧計 2…カフ(対象物) 3…本体 4…チューブ 5…ポンプ 6…制御装置 7…筐体 8…振動アクチュエータ 9、9A、9B、9C、9D…ポンプ部 10…ポンプシステム 61…駆動制御部 62…圧力検出部 81…軸部 82…可動体 83、84…マグネット 85、86…コイルコア部 87、88…押圧子 91…密閉室 92…可動壁 93、94…バルブ 98…吸入口 99…吐出口 831、841…磁極面 851、861…コア部 852、862…芯部 853、854、863、864…コア磁極 853a、854a、863a、864a…磁極面 859、869…コイル 921…挿入部 B1…磁気ばね B2…空気ばね(流体ばね) B3…弾性 F1、F2…トルク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11