(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】廃プラスチックの選別装置、及び廃プラスチックの選別方法
(51)【国際特許分類】
B07C 5/342 20060101AFI20241203BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20241203BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B07C5/342
G01N21/3563 ZAB
B29B17/00
(21)【出願番号】P 2021121388
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 昇治
(72)【発明者】
【氏名】河野 海士
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特許第5367145(JP,B1)
【文献】特開2001-334572(JP,A)
【文献】特開2018-100903(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0336264(US,A1)
【文献】特開2011-002304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 5/342
G01N 21/31
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックの選別装置であって、
黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片の表面を処理する表面処理部と、
前記表面処理された廃プラスチック片に光を照射する照射部と、
前記照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出部と、
前記検出された前記反射光のスペクトルを、
前記照射部からの光が照射される校正板を設置して計測して得られた第1の補正用スペクトル
及び第2の補正用スペクトル
を用いて補正する前処理部
であって、前記第1の補正用スペクトルは、前記校正板に照射された光の反射光を明条件で計測して得られ、前記第2の補正用スペクトルは、前記明条件よりも暗い暗条件で計測して得られる、前処理部と、
前記補正された前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定部と、
前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別部とを備える、廃プラスチックの選別装置。
【請求項2】
廃プラスチックの選別装置であって、
黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片の表面を処理する表面処理部と、
前記表面処理された廃プラスチック片に光を照射する照射部と、
前記照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出部と、
前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定部と、
前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別部とを備え
、
前記表面処理部において、前記廃プラスチック片の表面が、
(a)JIS Z 8741に準拠して測定された入射角60°の鏡面光沢度が10%以下、
(b)JIS Z 8741に準拠して測定された入射角75°の鏡面光沢度が25%以下、並びに
(c)表面粗さの平均偏差(SMD)が1μm以上
の条件のうち1以上を満たすよう処理される、廃プラスチックの選別装置。
【請求項3】
前記照射する光が、波長3μm超の中赤外線を含む、請求項1又は2に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項4】
前記廃プラスチック片は搬送路上で搬送され、
前記判定部は、
前記反射光のスペクトルが、前記廃プラスチック片のスペクトルであるか又は前記搬送路のスペクトルであるかを判定する第1判定部と、
前記廃プラスチック片のスペクトルであると判定されたスペクトルから特徴量を抽出する第2判定部と、
前記特徴量に基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する第3判定部と、
前記第3判定部で得られた結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別部とを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項5】
前記前処理部は、前記補正されたスペクトルから所定の周波数の範囲を切り出す加工を行い、
前記第1判定部は、前記切り出されたスペクトルを用いて前記廃プラスチック片の材質の判定を行う、
請求項1を引用する請求項4に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項6】
前記廃プラスチック片は搬送路上で搬送され、
前記搬送路は、当該搬送路の幅方向において第1の系統と第2の系統との二系統に区分される、請求項1から5のいずれか一項に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項7】
前記第1の系統と前記第2の系統で、同一の材質の廃プラスチック片を収集する、請求項6に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項8】
前記第1の系統では、第1の材質の廃プラスチック片を収集すると共に、残りの廃プラスチック片を前記第2の系統へ供給し、
前記第2の系統では、前記残りの廃プラスチック片の中から第2の材質の廃プラスチック片を収集する、請求項6に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項9】
前記第1の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を収集すると共に、前記収集した廃プラスチック片を前記第2の系統へ供給し、
前記第2の系統では、前記第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片との中から第1の材質の廃プラスチック片を収集する、請求項6に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項10】
前記第1の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を除外すると共に、前記除外した残りの廃プラスチック片を前記第2の系統へ供給し、
前記第2の系統では、前記残りの廃プラスチック片の中からさらに前記第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を除外して、前記第1の材質を含まない廃プラスチック片を収集する、請求項6に記載の廃プラスチックの選別装置。
【請求項11】
廃プラスチックの選別方法であって、
黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片の表面を処理する表面処理ステップと、
前記表面処理された廃プラスチック片に
、照射部から光を照射する照射ステップと、
前記照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出ステップと、
前記検出された前記反射光のスペクトルを、
前記照射部からの光が照射される校正板を設置して計測して得られた第1の補正用スペクトル
及び第2の補正用スペクトル
を用いて補正する前処理ステップ
であって、前記第1の補正用スペクトルは、前記校正板に照射された光の反射光を明条件で計測して得られ、前記第2の補正用スペクトルは、前記明条件よりも暗い暗条件で計測して得られる、前処理ステップと、
前記補正された前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定ステップと、
前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別ステップとを含む、廃プラスチックの選別方法。
【請求項12】
廃プラスチックの選別装置であって、
表面処理された、黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片に光を照射する照射部と、
前記照射部により照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出部と、
前記検出された前記反射光のスペクトルを、
前記照射部からの光が照射される校正板を設置して計測して得られた第1の補正用スペクトル
及び第2の補正用スペクトル
を用いて補正する前処理部
であって、前記第1の補正用スペクトルは、前記校正板に照射された光の反射光を明条件で計測して得られ、前記第2の補正用スペクトルは、前記明条件よりも暗い暗条件で計測して得られる、前処理部と、
前記補正された前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定部と、
前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別部とを備える、廃プラスチックの選別装置。
【請求項13】
廃プラスチックの選別装置であって、
表面処理された、黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片に光を照射する照射部と、
前記照射部により照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出部と、
前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定部と、
前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別部とを備え
、
前記廃プラスチック片の表面が、
(a)JIS Z 8741に準拠して測定された入射角60°の鏡面光沢度が10%以下、
(b)JIS Z 8741に準拠して測定された入射角75°の鏡面光沢度が25%以下、並びに
(c)表面粗さの平均偏差(SMD)が1μm以上
の条件のうち1以上を満たすよう処理されている、廃プラスチックの選別装置。
【請求項14】
廃プラスチックの選別方法であって、
表面処理された、黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片に
、照射部から光を照射する照射ステップと、
前記照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出ステップと、
前記検出された前記反射光のスペクトルを、
前記照射部からの光が照射される校正板を設置して計測して得られた第1の補正用スペクトル
及び第2の補正用スペクトル
を用いて補正する前処理ステップ
であって、前記第1の補正用スペクトルは、前記校正板に照射された光の反射光を明条件で計測して得られ、前記第2の補正用スペクトルは、前記明条件よりも暗い暗条件で計測して得られる、前処理ステップと、
前記補正された前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定ステップと、
前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別ステップとを含む、廃プラスチックの選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチックの選別装置、及び廃プラスチックの選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃家電製品、廃棄自動車等に由来する廃プラスチックを再利用するための主たる方法として、廃プラスチックを用いて新しい材料や製品を製造するマテリアルリサイクルが知られている。回収される廃プラスチックは通常、様々な種類(材質)のプラスチックを含むため、マテリアルリサイクルにおいては、製造される再生品に応じて、廃プラスチックを材質により選別する必要がある。
【0003】
廃プラスチックの選別の手段としては、例えば、廃プラスチック片に赤外光等の光を照射し、その照射により得られる反射光のスペクトルを利用して、プラスチックの材質を判定することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マテリアルリサイクルにおいて高品質の製品を製造するためには、廃プラスチックの選別が高精度に行われる必要がある。しかしながら、従来の赤外線等の光の反射を利用した廃プラスチックの選別において、照射する光の強さ、照射距離等によってはハレーション等が発生してしまい、材質の判定のために有効である反射スペクトルを生成できる反射光を十分に得られない場合があった。よって、光の反射を利用した廃プラスチックの選別装置又は選別方法において、選別精度の向上が求められている。
【0006】
よって、本発明による一態様は、廃プラスチックを、高精度で材質により選別する選別装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による廃プラスチックの選別装置は、黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片の表面を処理する表面処理部と、前記表面処理された廃プラスチック片に光を照射する照射部と、前記照射部により照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出部と、前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定部と、前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、廃プラスチックを、高精度で材質により選別できる選別装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る廃プラスチックの選別装置の概略構成を示す斜視図
【
図2】
図1に示す廃プラスチックの選別装置の側面図
【
図3】
図1に示す廃プラスチックの選別装置の平面図
【
図6】実施形態に係る廃ブラスチックの材質判別処理のフローチャート
【
図8】反射波スペクトルから特徴のある波長領域を切り出す処理の一例を示す図
【
図11】本実施形態の選別装置による第1の材質選別手法を示す平面図
【
図12】本実施形態の選別装置による第2の材質選別手法を示す平面図
【
図13】本実施形態の選別装置による第3の材質選別手法を示す平面図
【
図14】本実施形態の選別装置による第4の材質選別手法を示す平面図
【
図15】本実施形態の選別装置による第5の材質選別手法を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向はコンベア2の搬送路3の搬送方向である。y方向は、コンベア2の搬送路3の幅方向である。以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側と表現する場合がある。また、x負方向側を上流、x正方向側を下流と表現する場合がある。
【0012】
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る廃プラスチックの選別装置1の概略構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る廃プラスチックの選別装置1の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す廃プラスチックの選別装置1の側面図である。
図3は、
図1に示す廃プラスチックの選別装置1の平面図である。
図1~
図3に示すように、廃プラスチックの選別装置1は、当該装置の上流に表面処理部20を備えている。
【0013】
本実施形態による選別装置1にて選別される廃プラスチックは、廃家電製品、廃棄自動車等から得られた、粉砕により形成された廃プラスチック片の集合体(廃プラスチック片群)である。1つの廃プラスチック片は、板状若しくは層状の形状を有していてよく、また平均最大長さ5~50mm、平面視での平均面積20~2500mm2のサイズを有していてよい。本実施形態では、黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片の集合体(廃プラスチック片群)から、好ましくは黒色廃プラスチック片の集合体(黒色廃プラスチック片群)から、所定の材質の廃プラスチック片を選別するものである。また、本実施形態により選別される廃プラスチック片には、黒色廃プラスチック片に加え、別の色の、例えば青色、赤色等の着色廃プラスチック片が混在していてもよい。
【0014】
なお、本明細書において、黒色とは、JIS8721に準じてマンセル記号で表した明度が6以下の色を指す。また、黒色廃プラスチック片の黒色は通常、当該黒色廃プラスチック片に含まれるカーボンブラック(炭素充填材)に由来するものである。
【0015】
図1~
図3では、例として、1種の材質からなる廃プラスチック片S1と、当該廃プラスチック片とは異なる種の材質からなる廃プラスチック片S2とが混合した廃プラスチック片群から、一方の材質の廃プラスチック片を判定して選別する装置を示す。以下においては、廃プラスチック片S1、S2をまとめて符号Sで表す場合がある。なお、廃プラスチック片群から選別される廃プラスチック片の材質(種類)の数は特に限定されず、2~10種であってよい。プラスチックの材質の具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(PCABS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン(PPEPS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。
【0016】
本実施形態による廃プラスチックの選別装置1では、赤外線等の光を照射して得られる反射光から検出された反射スペクトルに基づき、廃プラスチックの材質の判定を行い、材料を判別する(判別については後に詳述)。ここで、従来の構成では、光を当てた際、照射する光の強さ、照射距離等によっては正反射(鏡面反射)が強く起こってしまい、材質の判定のために有効である反射光(拡散反射光)が十分に得られない場合があった。これに対し、本実施形態による選別装置1は表面処理部20を有しており、この表面処理部20によって、廃プラスチック片の表面が処理され、適切な反射光を得ることができるようになる。
【0017】
特に、黒色プラスチックは、他色のプラスチックに比べて材質固有の吸収領域のレベル(強度)が弱いため、表面の状態の影響をより大きく受ける。特に、プラスチック表面の光沢度が比較的高い場合には、プラスチック表面での赤外線の反射の影響、特に正反射(鏡面反射)の影響が大きくなるため、吸収レベルが見えなくなり、材質の判別が困難となる。そこで、表面処理を施して所定の粗面状態に粗面化することで、赤外線のプラスチック表面での正反射の影響を抑えて、反射光スペクトルにおけるスペクトル強度を高めることができ、材質による反射スペクトル強度の相違を適切に観察することができる。この結果、黒色プラスチック片の選別精度を向上させることができる。
【0018】
表面処理部20による表面処理は、光を照射した場合に、材質の判別に有効な反射スペクトルを取得することができる程度の表面状態となる処理であってよい。例えば、本実施形態による表面処理は、廃プラスチック片の表面が、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角60°の光沢度(鏡面光沢度)(Gs60(%))が10以下となるように表面状態を変更する処理であってよい。入射角60°の光沢度は、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは1.5以下であってよい。また、当該入射角60°の光沢度は、0.1以上であってよい。さらに、本実施形態による表面処理は、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角75°の光沢度(鏡面光沢度)(Gs75(%))が25以下となるように表面状態を変更する処理であってよい。入射角75°の光沢度は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下であってよい。また、当該入射角75°の光沢度は、0.1以上であってよい。そして、本実施形態における表面処理は、上記範囲の入射角60°の光沢度を有し、且つ上記範囲の入射角75°の光沢度を有するように行うことが好ましい。上記の光沢度、特に入射角60°光沢度及び/又は入射角75°光沢度を有することで、プラスチックの表面に適切な粗面状態を付与でき、これにより、廃プラスチック片が黒色プラスチック片である場合でも、選別精度を高めることができる。
【0019】
また、本実施形態による表面処理は、廃プラスチック片の表面が、表面粗さの平均偏差(SMD)が1μm以上となるように表面状態を変更する処理であってもよい。表面粗さの平均偏差は、好ましくは1.1μm以上、より好ましくは1.2μm以上であってよい。また、表面粗さの平均偏差は、好ましくは6m以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2.5μm以下とすることができる。上記範囲の表面粗さの平均偏差(SMD)を有するように表面処理を行うことで、プラスチックの表面に適切な粗面状態を付与できる。そのため、廃プラスチック片が黒色プラスチック片である場合でも、反射スペクトルを適切に得ることができ、選別精度を高めることができる。
【0020】
また、廃プラスチック片の全表面積の50%以上、好ましくは80%以上が、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角60°の光沢度(鏡面光沢度(%))が10以下、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角75°の光沢度(鏡面光沢度(%))が25以下、及び表面粗さの平均偏差(SMD)が1μm以上との条件のうち1以上を満たすような状態にすることで、赤外線を用いた廃プラスチック片の選別精度を向上させることができる。
【0021】
本実施形態における表面処理は、元の廃プラスチック片の表面状態に応じて、粗面化処理としてもよいし、滑面化処理としてもよい。また、表面処理は、液体を利用した湿式処理であってもよいし、液体を利用しない乾式処理であってもよい。表面処理の具体例としては、ワイヤブラシ、サンドペーパー等の研磨具及び/又は研磨剤を用いた研磨(若しくは研削)、薬品を用いた表面処理等が挙げられる。このうち、処理により生じ得る廃棄物等が比較的少なく、その廃棄処理も容易であることから研磨処理が好ましい。
【0022】
図4は、表面処理部20の一例の概略図である。
図4に示す表面処理部20は、粗面を有する複数のローラを備えている。そして、複数のローラ間に、表面処理前の廃プラスチック片S'を通すことによって、廃プラスチック片S'の表面が削られ、微細な凹凸が形成されるか、且つ/又は過度に大きな凹凸が解消されることによって、適切な大きさの凹凸が形成された廃プラスチック片Sが得られる。適切な大きさの凹凸が形成された廃プラスチック片の表面は上述の所定の光沢度を有しており、選別装置1での光照射を利用したプラスチック種の判定を、より高い精度で行うことができる。
【0023】
図4に示す表面処理部20では、廃プラスチック片の搬送方向に回転する大ローラ21と、当該大ローラ21と対向し、且つ大ローラ21と反対方向に回転する小径の粗面ローラ23、23、23とが配置されている。粗面ローラ23、23、23には、ブラシ又はサンドペーパーが表面に取り付けられている。そして、供給部28から供給された表面処理前の廃プラスチック片S'が、大ローラ21と、粗面ローラ23、23、23との間に供給され、搬送方向に搬送されると共に、粗面ローラ23、23、23に対向する側の表面が荒らされる。表面処理部20では、大ローラ21及び粗面ローラ23、23、23の下流にさらに、廃プラスチック片の搬送方向に回転する別の大ローラ22と、当該大ローラ22と対向し、且つ大ローラ22と反対方向に高速回転する小径の粗面ローラ25、25、25とが配置されている。粗面ローラ25、25、25には、粗面ローラ23、23、23と同様にブラシ又はサンドペーパーが取り付けられている。大ローラ22及び粗面ローラ25、25、25は、廃プラスチック片S'の、粗面ローラ23、23、23によって荒らされた表面と反対側の表面が荒らされるように、配置されている。このような構成によって、廃プラスチック片S'の両面が、選別装置1における材質の判定により適切な表面状態となり、高い精度で材質による選別を行うことができる。粗面ローラ23、23、23、及び粗面ローラ25、25、25の回転数は、廃プラスチック片の所望の表面状態に応じて設定することができる。なお、適切な表面状態は、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角60°の光沢度(鏡面光沢度(%))が10以下、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角75°の光沢度(鏡面光沢度(%))が25以下、及び表面粗さの平均偏差(SMD)が1μm以上の条件のうち1以上を満たす状態とすることができる。黒色プラスチック片を含む又は黒色プラスチック片からなる廃プラスチック片の場合、上記の表面状態とすることで選別精度を上げることができる。
【0024】
なお、廃プラスチック片は、廃家電製品、廃棄自動車等からプラスチック部分を取り出した後、再利用しやすくするために破砕によりサイズダウンされたものである。本形態における表面処理は、上記破砕工程に組み込まれていてもよい。
【0025】
図1~
図3を再び参照して、選別装置1における、表面処理後の廃プラスチック片Sの処理について説明する。表面処理部20から取得された表面処理後の廃プラスチック片S1、S2を順次供給する供給部の一例としての振動フィーダ8と、振動フィーダ8により供給された廃プラスチック片S1、S2を搬送する搬送部の一例としてのコンベア2とを主要部として備えている。振動フィーダ8には、例えば投入用ホッパ等を介して、破砕(表面処理)された廃プラスチック片S1、S2が供給される。振動フィーダ8は、廃プラスチック片S1、S2が載置される載置面が振動することによって、廃プラスチック片S1、S2同士の重畳を防止しながらコンベア2に供給する。コンベア2は、その上面に搬送路3を有し、振動フィーダ8から遠ざかる向きに搬送路3上の廃プラスチック片S1、S2を搬送する。
【0026】
また、選別装置1は、廃プラスチック片S1、S2に赤外線を照射する照射部の一例としての照明10と、廃プラスチック片S1、S2からの反射スペクトルを検出する反射スペクトル検出部の一例としての中赤外線カメラ4と、中赤外線カメラ4で検出した反射スペクトルに基づき廃プラスチック片S1、S2の材質を判定若しくは同定して判別する判別装置5とを備えている。
【0027】
照明10は、例えばハロゲンタングステンランプ等の赤外線光源であるランプ10A(
図7参照)を有し、ランプ10Aから廃プラスチック片S1、S2に向かって赤外線を照射(出射)する。また、照明10は、中赤外線カメラ4に廃プラスチック片S1、S2からの反射光が入光するように設置され、中赤外線カメラ4に対してコンベア2の流れ方向の上部両側(又は上部片側)に設置されている。
【0028】
廃プラスチック片に照射される照射光は、2~8μmの赤外線、好ましくは3μm超の中赤外線、より具体的には3μm超8μm以下の赤外線を含んでいてよい。上記波長領域の中赤外線では、黒色プラスチックの光吸収率が比較的低い領域を含むので、黒色の廃プラスチックであっても、プラスチックの材質の判定のために有効な反射光スペクトル(材質により顕著な相違が観察され得る反射光スペクトル)を取得できる。
【0029】
中赤外線カメラ4は、例えば
図1に示すように1台でコンベア2の幅方向(y方向)の全域にわたって計測可能であり、幅方向に沿って複数個(例えば318個)の領域に区分して黒色廃プラスチック片S1、S2からの近赤外線の反射光を受光し、領域ごとに反射光のスペクトルを計測できる。中赤外線カメラ4は、例えば、赤外線の波長領域3μm以上若しくは3μm超の分光器付カメラで構成されていてよい。中赤外線カメラ4は、例えば230Hzのスキャン周波数で計測を行い、1回のスキャンごとに318個のスペクトルデータを判別装置5に送信する。判別装置5は、中赤外線カメラ4から受信した318個のスペクトルデータに基づき、318個の各領域の材質判定の結果を後述の噴射制御部6に出力する。
【0030】
中赤外線カメラ4によって受光される反射光は、好ましくは3μm超の波長領域、より好ましくは3μm超8μm以下、さらに好ましくは3μm超5μm以下の波長領域の赤外線を含んでいてよい。上記波長領域の反射光を受光することで、黒色の廃プラスチックの材質判定のために有効なデータを取得ことができる。すなわち、上記波長領域内の反射光のスペクトル強度において、材質による顕著な相違が観察され得る。
【0031】
さらに、選別装置1は、コンベア2の搬送方向(x方向)の下流側にて、搬送方向と交差する方向に横又は斜めからエアを噴射する噴射ノズル列7を備えている。噴射ノズル列7は、コンベア2の幅方向(y方向)に複数個(例えば318個)の噴射ノズルが並設されてなり、噴射制御部6によって個々の噴射ノズルの動作が制御される。噴射制御部6は、判別装置5から受信した材質判定結果に応じて、噴射ノズル列7の噴射ノズルからエアを噴射させる、又は噴射させないようにすることができる。すなわち、ターゲットとする廃プラスチック片を選択してエアを吹き付けること(選択吹付け)ができる。そして、例えば仕切り板9(
図2)により区分される複数の領域(例えば回収用ホッパ若しくは容器)に黒色廃プラスチック片S1、S2を仕分けて落下させ、所望の材質の廃プラスチックを分別して収集する。つまり、本実施形態では、噴射制御部6と、噴射ノズル列7とが、判別装置5による材質判定結果に基づき、コンベア2の搬送路3を流れる廃プラスチック片から所望の材質のものを収集する選別部12として機能する。
【0032】
図1~
図3に示す例では、選別部12では、エア若しくは所定の気体の噴射を利用して、コンベア2上の廃プラスチック片Sを吹き飛ばす又は吹き飛ばさないとする選択吹付けによって仕分けているが、選別の形態は図示のものに限られない。例えば、判別装置5による材料判定結果の情報をロボットアームに送信し、ロボットアームによって廃プラスチック片の材質による仕分けを行い、廃プラスチック片を分別してもよい。
【0033】
選別装置1の動作、すなわち表面処理部20から供給された廃プラスチック片の処理について説明する。例えば投入用ホッパなどを介して、破砕された廃プラスチック片S1、S2が振動フィーダ8に供給されると、振動フィーダ8は、供給された廃プラスチック片S1、S2に振動を与えながら重ならないようにして下流に搬送して、コンベア2に供給する。
【0034】
コンベア2の上面の搬送路3に供給された廃プラスチック片S1、S2は、x正方向側の搬送方向に搬送されながら、中赤外線カメラ4の撮像可能な位置にて、照明10から赤外光が照射される。中赤外線カメラ4は、照明10から発せられた赤外線の廃プラスチック片S1、S2による反射光を受光し、受光結果(受光スペクトルのデータ)を判別装置5に出力する。
【0035】
判別装置5は、中赤外線カメラ4から入力された受光結果に基づき、廃プラスチック片S1、S2の材質を同定する。なお、判別装置5による材質判定手法の詳細は
図5~
図10を参照して後述する。判別装置5は、材質同定結果を噴射制御部6に出力する。
【0036】
噴射制御部6は、噴射ノズル列7に含まれる複数配置されている噴射ノズルのうち、材質に応じた噴射ノズルを選択して、タイミングを計って制御信号を送信する。制御信号を受信した噴射ノズル列7の各噴射ノズルは、ノズル口を開口して、エアを噴射する。判別装置5の判別結果により適切なタイミングで噴射ノズルからエアを噴射することにより、選別対象の材質とそうでないものとを分離して回収することができる。
【0037】
図1~
図3に示す例では、コンベア2上の廃プラスチック片S1は、制御信号を受信したエア噴射ノズルからエアを受けて、吹き飛ばされ落下し、収集容器等の中に回収される。また、コンベア2上の黒色廃プラスチック片S2は、噴射ノズルからエアを受けないので、黒色廃プラスチック片S1とは異なる収集容器等に回収される。このように噴射ノズル列7に含まれる複数の噴射ノズルの個々の噴射及び停止によって、複数の材質の廃プラスチック片群から、所定の材質の廃プラスチック片を仕分けて回収することができる。
【0038】
なお、本実施形態によれば、選別に供される廃プラスチック片が表面処理されていて、所定の表面粗さを有するため、好ましくは両面に有するため、コンベア2に対して適度な摩擦係数を有することができる。そのため、選別部12において、ターゲットとされた廃プラスチック片が確実に吹き飛ばされ、且つターゲットとされていない廃プラスチック片が確実に飛ばされず、このことも、選別精度の向上に寄与する。
【0039】
次に、
図5~
図10を参照して、判別装置5による廃プラスチックの材質判定及び判別について説明する。
図5は、判別装置5の機能ブロック図である。
【0040】
図5に示すように、判別装置5は、前処理部51を有し、さらに第1判定部52、第2判定部53、及び第3判定部54(合わせて判定部ともいう)を有する。
【0041】
前処理部51は、中赤外線カメラ4により検出された黒色廃プラスチック片S1、S2の反射スペクトルの補正や加工などの前処理を行う。前処理部51は、例えば、反射光が明るい条件で計測したスペクトルと、暗い条件で計測したスペクトルとを用いて、検出された反射スペクトルを補正する。「暗い条件(暗条件)」とは、上記の「明るい条件(明条件)」よりも相対的に暗い条件を意味する。また、前処理部51は、補正された反射スペクトルから所定の周波数の範囲を切り出す加工を行う。
【0042】
第1判定部52は、中赤外線カメラ4により検出されたスペクトルが廃プラスチック片S1、S2及びコンベア2の搬送路3のどちらのものかを判定する。第1判定部52は、学習済みのOne Class SVM(Support Vector Machine)を用いて判定を行う。
【0043】
One Class SVMは、機械学習の分類アルゴリズムの一種であるSVMの一種である。SVMでは、各クラスのサポートベクター(学習データの中で最も他のクラスと近い位置にある)を基準として、それらのユークリッド距離が最大になるように識別境界を設定する。また、特徴が非線形の場合には、カーネルを用いてデータを特徴空間に写像する。カーネルを適切に選択することで、複雑なデータ配置でも識別境界を引くことが可能となる。
【0044】
One Class SVMでは、1種類の学習データに対してカーネルトリックと呼ばれる手法を用いて、高次元空間の特徴空間へデータを写像する。このとき、学習データは原点から遠くに配置されるように写像されるため、元の学習データと類似していないデータは原点の近くに集まる。この性質を用いて正常データ(コンベア2)と異常データ(物体(廃プラスチック片S1、S2))の区別を行う。
【0045】
第1判定部52にパターン識別能力に優れるOne Class SVMを用いることにより、反射スペクトルが廃プラスチック片S1、S2で反射されたものか、コンベア2の搬送路3で反射されたものかを高精度に識別できる。なお、第1判定部52には、One Class SVM以外の機械学習の教師有り学習の分類手法を適用してもよい。
【0046】
第2判定部53は、第1判定部52により廃プラスチック片と判定されたスペクトルから特徴データScore1、Score2(特徴量)を抽出する。特徴量は、例えば所定の波長領域におけるスペクトル強度の最大値、平均値、積分値等であってよいが、学習済みのPLS(Partial Least Squares:部分的最小二乗法)を用いて抽出するのが望ましい。
【0047】
PLSは、機械学習の教師あり学習の回帰アルゴリズムの一種であり、説明変数から計算された主成分のうち、少数の主成分のみと目的変数との間で回帰分析を行う。PLSでは、主成分は目的変数との共分散が大きくなるように計算される。本実施形態では、廃プラスチック片S1、S2で反射されたと判定された反射スペクトルの説明変数に基づき、PLSを用いて二種類の特徴データScore1、Score2を算出する。
【0048】
第2判定部53に、PLSを用いることにより、反射スペクトルの多次元の説明変数から、少数の特徴量に縮約することができるので、より区別しやすい適切な特徴データScore1、Score2を抽出できる。なお、第2判定部53には、PLS以外の機械学習の多変量解析手法を適用してもよい。
【0049】
第3判定部54は、第2判定部53により抽出された反射スペクトルの2つの特徴量Score1、Score2に基づき、このスペクトルに対応する廃プラスチック片S1、S2の材質を判別する。第3判定部54は、学習済みの決定木を用いて判定を行う。決定木は、教師あり学習の分類アルゴリズムの一種である。決定木は、目的変数を分類するルールを木構造で表したものであり、分類問題で頻繁に利用される。
【0050】
第3判定部54に、決定木を用いることにより、反射スペクトルの2つの特徴量Score1、Score2から、廃プラスチック片S1、S2の材質を精度良く判別できる。なお、第3判定部54には、決定木以外の機械学習の教師有り学習の分類手法を適用してもよい。
【0051】
判別装置5は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)、通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
図5に示した判別装置5の各機能は、CPUやRAMなどに所定のコンピュータソフトウエア(材質判定プログラム)を読み込ませることにより、CPUの制御のもとで各種ハードウエアを動作させると共に、RAMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態に係る材質判定プログラムをコンピュータ上で実行させることで、判別装置5は、
図5の前処理部51、第1判定部52、第2判定部53、及び第3判定部54として機能する。
【0052】
本実施形態の材質判別プログラムは、例えばコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、材質判別プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、材質判別プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリなどの持ち運び可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
【0053】
判別装置5は、アナログ回路、デジタル回路又はアナログ・デジタル混合回路で構成された回路であってもよい。また、判別装置5の各機能の制御を行う制御回路を備えていてもよい。各回路の実装は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によるものであってもよい。
【0054】
同様に、噴射制御部6も、物理的には、CPU、RAMおよびROM、通信モジュール、補助記憶装置、などを含むコンピュータシステムとして構成することができ、CPUやRAMなどに所定のコンピュータソフトウエアを読み込ませることによりその機能が実現される。
【0055】
図6は、実施形態に係る廃ブラスチックの材質判別処理のフローチャートである。
図6に示すフローチャートの各処理は判別装置5により実行される。
【0056】
ステップS01では、前処理部51により、中赤外線カメラ4によるスペクトルSorg(n,w)が取得される。ここで、nはセンサ数(中赤外線カメラ4によりコンベア2の幅方向で区分されるスペクトル検出領域の数)であり、センサ数が318個の場合には各検出領域に対応する0~317の整数が用いられる。wはスペクトルの波長であり、本実施形態では、2700(nm)~5300(nm)の間で20(nm)刻みで合計131個の波長が設定され、各波長に対応する0~130の整数が用いられる。つまり、Sorg(n,w)は、コンベア2の幅方向に沿ったn番目のスペクトル検出領域における、波長wのスペクトルの強度の数値を表す。
【0057】
ステップS02では、前処理部51により、ステップS01で取得されたスペクトルSorg(n,w)が補正されて、補正済みのスペクトルScor(n,w)が算出される。この補正により、測定空間の水蒸気及び二酸化炭素の濃度変化、計測対象の黒色廃プラスチック片S1、S2の温度、照明10および中赤外線カメラ4の経年劣化、コンベア2上の位置、などの影響によるスペクトル強度の特性の差異を吸収できる。補正済みのスペクトルScor(n,w)は、例えば下記の(1)式により算出できる。
【0058】
【数1】
上式中、W
ref(n,w)は、反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルである。D
ref(n,w)は、反射光が上記の明るい条件よりも暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルである。これらの補正用スペクトルW
ref(n,w)、D
ref(n,w)は、例えば、材質判別処理を実行する前に中赤外線カメラ4の校正を行うときに抽出できる。
【0059】
図7は、補正用のスペクトルW
ref(n,w)、D
ref(n,w)の抽出手法を示す図である。
図7に示すように、コンベア2の搬送路3上の、中赤外線カメラ4の撮像領域に、補正用スペクトルを取得するための校正板11を設置して、中赤外線カメラ4による反射光のスペクトルの検出を行うことで、補正用のスペクトルW
ref(n,w)、D
ref(n,w)を取得できる。
【0060】
反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルWref(n,w)の場合、中赤外線領域の波長をすべて反射する校正板11(アルミ、ステンレス等)を置き、照明10を点灯した状態で、すべてのセンサ(n=0、1、2、・・・、317)について、全波長(w=0(2700)、2(2720)、・・・、130(5300))のデータを取得する。
【0061】
反射光が暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルDref(n,w)の場合、中赤外線領域の波長をすべて反射する校正板11(アルミ、ステンレス等)を置き、照明10を消灯した状態(もしくはカメラのシャッターを閉じた状態)で、すべてのセンサ(n=0、1、2、・・・、317)について、全波長(w=0(2700)、2(2720)、・・・、130(5300))のデータを取得する。
【0062】
校正板11は、例えば
図7に点線の矢印で示すように、補正用のスペクトルW
ref(n,w)、D
ref(n,w)を取得する際に配置される、コンベア2の搬送路3上の、中赤外線カメラ4の撮像領域の位置と、中赤外線カメラ4の撮像領域や照明10の照射範囲から外れる待機位置との間で移動可能に設置されるのが好ましい。言い換えると、校正板11は、中赤外線カメラ4の視野内の所定位置と、視野外の所定位置とに固定可能であり、両方の所定位置の間を移動可能であるのが好ましい。校正板11は、照明10からの光を受ける主面の表面粗さが大きくざらざらした面となるように加工するのが好ましい。これにより、校正板11における反射光のハレーションの発生を抑制できる。
【0063】
また、補正用スペクトルの取得時には、コンベア2は停止していてもよい。この場合、校正板11の動作の何らかの不具合により、校正板11が中赤外線カメラ4の撮像領域の位置に正しく配置されないと、照明10の赤外線によりコンベア2の搬送路3上の赤外線が照射される部分の温度が上昇し、焼損や発火の虞がある。このため、校正板11が中赤外線カメラ4の視野内に固定されていない場合には、照明10から赤外線を照射しないようにインターロックを設けるのが好ましい。
【0064】
なお、
図7に示すように、照明10は、赤外線の光源であるランプ10A(シースヒーター、カーボンランプ、カンタルランプなど)と、ランプ10Aの熱を集める反射板10Bとを有する。ランプ10Aは、コンベア2の幅方向(y方向)に沿って延在するよう形成され、y軸に沿った軸心まわりの全方向に赤外線を放射するよう配置される。反射板10Bは、ランプ10Aを基準としてコンベア2の搬送路3とは反対側に配置され、ランプ10Aの軸心まわりの周方向に沿って湾曲して形成され、これによりランプ10Aからコンベア2とは反対側に放射された赤外線を集めてコンベア2側に反射して送ることができる。反射板10Bは、例えば、アルミニウム、ステンレス、またはアルミニウムメッキなどされた部材からなる。
【0065】
図6に戻り、ステップS03では、前処理部51により、補正済みのスペクトルS
cor(n,w)の中から、特徴のある波長領域が切り出される。
図8は、黒色廃プラスチック片に赤外線を照射した場合に得られた、反射波スペクトルから特徴のある波長領域を切り出す処理の一例を示す図である。
図8の横軸はスペクトルの波長(nm)を示し、縦軸は各波長におけるスペクトルの強度を示す。
図8には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)の各材質のスペクトルの一例が示されている。そして、
図8の例では、3250~3750(nm)及び4400~4600(nm)の波長領域のスペクトルが切り出されている。よって、黒色プラスチックを材質により選別する場合には、上記範囲の少なくとも一方の波長領域のスペクトルを利用することができる。
【0066】
図6に戻り、ステップS04では、第1判定部52により、ステップS02にて補正され、かつ、ステップS03にて特徴のある波長領域が切り出されたスペクトルを用いて、各スペクトルがコンベア2のベルト(搬送路3)か、搬送路3上の物体(廃プラスチック)かが判定される。第1判定部52は、本実施形態では学習済みのOne Class SVMを利用して判定を行う。
【0067】
ステップS05では、第2判定部53により、ステップS04にて物体(廃プラスチック)と判定されたスペクトルから、学習済みのPLSを使用して2種類の特徴データScore1、Score2が抽出される。
図9は、特徴データの抽出例を示す図である。
図9の横軸は第1の特徴データ(Score1)を示し、縦軸は第2の特徴データ(Score2)を示す。
図9には、
図8に例示したABS、HIPS、PP、PEの4種類の材質の抽出例が示されている。
図9に示すように、2つの特徴データScore1、Score2による二次元空間上では、各材質ごとにプロットされる領域が区分可能であることがわかる。なお、特徴データの数は、2種類以外でもよい。
【0068】
図6に戻り、ステップS06では、第3判定部54により、ステップS5にて抽出された2種類の特徴データScore1、Score2に基づき、学習済みの決定木を使用して材質の判別が行われる。
図10は、決定木を用いた材質判別の例を示す図である。本実施形態では、最終的に4種類の材質(PE、PP、ABS、HIPS)を識別するため、
図10に示すように決定木は2階層の条件分岐を有する。第1階層では、条件分岐の関数f1(Score1、Score2)を用いて、特徴データScore1、Score2の組が2つのグループG1、G2に分けられる。一方のグループG1は、第2階層では、条件分岐の関数f2(Score1、Score2)を用いて、さらに2つのグループG11、G12に分けられる。他方のグループG2は、第2階層では、条件分岐の関数f3(Score1、Score2)を用いて、さらに2つのグループG21、G22に分けられる。この結果、特徴データScore1、Score2の組は、4つのグループG11、G12、G21、G22に分類され、各グループの材質がそれぞれPE、PP、ABS、HIPSと判定される。
【0069】
このように、本実施形態に係る廃プラスチックの材質判定・選別装置1の判別装置5は、中赤外線カメラ4により検出された、照明10によりコンベア2の搬送路3に照射された光の反射光のスペクトルが、廃プラスチック片S及び搬送路3のどちらかのものかを判定する第1判定部52と、第1判定部52により廃プラスチック片Sと判定されたスペクトルから2種類の特徴データScore1、Score2を抽出する第2判定部53と、第2判定部53により抽出された特徴データScore1、Score2に基づき廃プラスチック片Sの材質S1、S2を判別する第3判定部54と、を備える。
【0070】
この構成により、反射スペクトルの入力情報から、第1判定部52の物体判別による黒色廃プラスチック片Sのスペクトルへの絞り込みと、第2判定部53の特徴量抽出によるスペクトル情報から特徴データへの次元圧縮と、第3判定部54の分類処理との三段階の判定処理とデータの絞り込みを経て、廃プラスチックの材質の出力情報を得ることができる。このため、本実施形態の廃プラスチックの選別装置1は、廃プラスチックの材質の判定を多種の条件を考慮して行うことができ、かつ、多段階に亘ってきめ細かく行うことが可能となり、廃プラスチックの材質の判定精度を向上できる。
【0071】
また、本実施形態に係る廃プラスチックの選別装置1の判別装置5は、中赤外線カメラ4により検出された反射スペクトルSorg(n,w)を、反射光が明るい条件で計測した第1の補正用スペクトルWref(n,w)と、この明るい条件よりも相対的に暗い条件で計測した第2の補正用スペクトルDref(n,w)とを用いて補正する前処理部51を備える。
【0072】
このように反射スペクトルSorg(n,w)を、例えば(1)式を用いて、補正用のスペクトルWref(n,w)、Dref(n,w)を用いて補正することにより、計測対象の黒色廃プラスチック片S1、S2の温度、中赤外線カメラ4の経年劣化、コンベア2上の位置、などの影響によるスペクトル強度の特性の差異を抑制できる。このため、補正済みのスペクトルScor(n,w)を用いて、第1判定部52、第2判定部53、第3判定部54の学習と判定とを行うことによって、廃プラスチックの材質の判定精度をさらに向上できる。
【0073】
また、前処理部51は、さらに、補正されたスペクトルScor(n,w)から所定の周波数の範囲を切り出す加工を行い、加工後のスペクトルを第1判定部52に出力する。
【0074】
この構成により、スペクトルから廃プラスチックの材質と関連が強い部分を抽出して第1判定部52、第2判定部53、第3判定部54の学習と判定とに利用することができるので、学習や判定を阻害するノイズの混入を低減でき、廃プラスチックの材質の判定精度をさらに向上できる。
【0075】
なお、本実施形態では、前処理部51は、反射スペクトルSorg(n,w)の補正処理と、所定の周波数の範囲を切り出す処理の2つの処理を行うが、2つの処理の一方のみを行う構成でもよい。
【0076】
さらに、
図11~
図15を参照して、本実施形態の選別装置1による所望の材質の廃プラスチックの選別手法について説明する。
図11は、本実施形態の選別装置1による第1の材質選別手法を示す平面図である。
図11には、
図3に示した選別装置1の平面図に対応し、簡略化した図が示されている。
図11以降では、選別手法の一例として、5種類の材質(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の廃プラスチック片が混合されたプラスチックミックスを選別対象とする例を説明する。
【0077】
図11の例では、コンベア2や選別部12がコンベア2の幅方向(y方向)に区分されない一系統の搬送路が形成される構成を例示する。選別部12では、噴射ノズル列7の各噴射ノズルの噴射と停止によって、廃プラスチックを
図2等に示した仕切り板9を境界として分別するため、選別対象を大きく2種類に選別する。このため、選別対象の5種類の材質が混在するプラスチックミックスを単一材質ごとにそれぞれ選別するためには、選別部12のうち一方の選別部12-1(例えば、噴射ノズル7からエアを噴射された廃プラスチックが回収される装置)に一種類ずつ分別する処理を繰り返す必要がある。つまり、
図11に示すように、まずプラスチックミックスから材質(1)の廃プラスチック片のみを選別して、選別部12-1で回収する。このとき、他方の選別部12-2に収集されている残りのプラスチックミックスでは、他の4種類の材質(2)~(5)が混在している。次に、4種類が混在する残りのプラスチックミックスを再度、選別装置1に投入し、材質(2)~(5)のいずれか1つを選別する。この手順を4回繰り返すことで、5種類の材質(1)~(5)の廃プラスチック片を、材質ごとに分別することができる。
【0078】
図12は、本実施形態の選別装置1Aによる第2の材質選別手法を示す平面図である。
図12以降では、コンベア2の搬送路3は、幅方向において第1の系統と第2の系統の二系統に区分される。より詳細には、投入口(振動フィーダ8)、コンベア2、選別部12のそれぞれが幅方向で2分される。なお、投入口8とコンベア2は、構成要素を2つにするのではなく、単一の要素に仕切り等をつけて系統間で混在しないようにする。例えば、コンベア2の搬送路3は、幅方向のほぼ中央の位置に搬送方向に沿って仕切り壁を設けることで2系統に区分できる。
【0079】
以下の説明では、第1の系統を添え字Aで表し、第2の系統を添え字Bで表す。また、
図11の選別部12-1に相当する要素を「選別部A1」及び「選別部B1」と表記し、
図11の選別部12-2に相当する要素を「選別部A2」及び「選別部B2」と表記する。
【0080】
図12の例では、第1の系統と第2の系統で、同一の材質の廃プラスチック片が収集される。例えば
図12に示すように、第1、第2の系統のそれぞれの投入口A、Bに5種類の材質(1)~(5)の廃プラスチック片が混在するプラスチックミックスが供給され、各系統で材質判定が行われて、選別部A1及び選別部B1において同一の材質(1)の廃プラスチック片が収集される。また、選別部A2及び選別部B2では、材質(1)以外の残りの材質(2)~(5)が混在する廃プラスチック片が収集される。
【0081】
図13は、本実施形態の選別装置1Bによる第3の材質選別手法を示す平面図である。
図13の例では、第1の系統では、第1の材質の廃プラスチック片を収集すると共に、残りの廃プラスチック片を第2の系統へ供給し、第2の系統では、残りの廃プラスチック片の中から第2の材質の廃プラスチック片を収集する。
図13の例では、複数種の混合素材を、第1の材質と、第2の材質と、その他の材質の3種類に分別できる。
【0082】
図13の例では、第1の系統の投入口Aに、5種類の材質(1)~(5)の廃プラスチック片が混在するプラスチックミックスが供給され、第1の系統のコンベアAで材質判定が行われて、選別部A1で材質(1)の廃プラスチック片が収集される。また、選別部A2では、残りの材質(2)~(5)が混在する廃プラスチック片が収集される。
【0083】
次に、選別部A2で収集された残りの材質(2)~(5)が混在する廃プラスチックは、搬送装置13により第2の系統の投入口Bまで搬送されて、投入口Bに供給される。第2の系統のコンベアBで材質判定が行われて、選別部B1で材質(2)の廃プラスチック片が収集される。選別部B2では、残りの材質(3)~(5)が混在する廃プラスチック片が収集される。
【0084】
図14は、本実施形態の選別装置1Cによる第4の材質選別手法を示す平面図である。
図14の例では、第1の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を収集すると共に、収集した廃プラスチック片を第2の系統へ供給し、第2の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片の中から第1の材質の廃プラスチック片を収集する。
図14の例では、所定の一種の材質のプラスチック片を高純度に選別できる。
【0085】
図14の例では、第1の系統の投入口Aに、5種類の材質(1)~(5)が混在するプラスチックミックスが供給され、第1の系統のコンベアAで材質判定が行われて、選別部A1で材質(1)の廃プラスチック片と、微量の材質(2)~(5)の廃プラスチック片とが収集される。また、選別部A2では、残りの材質(2)~(5)と微量の材質(1)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0086】
次に、選別部A1で収集された材質(1)と微量の(2)~(5)とが混在する廃プラスチックは、搬送装置13により第2の系統の投入口Bまで搬送されて、投入口Bに供給される。第2の系統のコンベアBで材質判定が行われて、選別部B1で再度材質(1)が選別されて材質(1)の廃プラスチック片が収集される。この選別部B1で収集された材質(1)は、選別部A1で収集された素材より材質(1)の純度が高くなっている。選別部B2では、残りの材質(1)~(5)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0087】
図15は、本実施形態の選別装置1Dによる第5の材質選別手法を示す平面図である。
図15の例では、第1の系統では、第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を除外すると共に、除外した残りの廃プラスチック片を第2の系統へ供給し、第2の系統では、他の廃プラスチック片の中からさらに第1の材質と微量の他の材質の廃プラスチック片を除外して、第1の材質を含まない廃プラスチック片を収集する。
図15の例では、所定の一種の材質のプラスチック片を混在素材の中からより確実に選別できる。
【0088】
図15の例では、第1の系統の投入口Aに、5種類の材質(1)~(5)が混在するプラスチックミックスが供給され、第1の系統のコンベアAで材質判定が行われて、選別部A1で材質(1)と微量の材質(2)~(5)の廃プラスチック片が収集される。また、選別部A2では、残りの材質(2)~(5)と少量の(1)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0089】
次に、選別部A2で収集された材質(2)~(5)と少量の(1)が混在する廃プラスチックは、搬送装置13により第2の系統の投入口Bまで搬送されて、投入口Bに供給される。第2の系統のコンベアBで材質判定が行われて、選別部B1で再度材質(1)が選別されて材質(1)と微量の材質(2)~(5)が混在する廃プラスチック片が収集される。選別部B2では、残りの材質(2)~(5)と微量の(1)が混在する廃プラスチックが収集される。
【0090】
図16は、選別装置1の操作画面の一例を示す図である。
図16に示す操作画面は、例えば材選別装置1に設置される表示装置に表示される。
図16に示すように、操作画面には、選別するプラスチックの材質名が列挙され、上記の第1の系統(
図16では「1次」と、第2の系統(
図15では「2次」)ごとに噴射して選別する材質を個別に選択可能となっている。操作画面が表示される表示装置は例えばタッチパネルであり、「噴射選択」欄の「OFF」表示を押下するなどの操作によって「ON」表示に切り替えることによって、当該材質(
図16ではABS)の場合に噴射ノズル列7の噴射ノズルがエアを噴射して選別部で分別するように設定できる。また、操作画面では、「投入原料面積比」欄を設け、材料判定処理の判定結果に応じて、素材に混合される各材質の割合を表示することもできる。
【0091】
以上においては、廃プラスチックの選別装置について、廃プラスチック片の表面を処理する表面処理部20を含む構成を主として説明したが、選別装置は、表面処理部20を含まない形態とすることもできる。すなわち、本発明の別の実施形態は、廃プラスチックの選別装置であって、表面処理された、黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片に光を照射する照射部と、前記照射部により照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出する反射スペクトル検出部と、前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定部と、前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別部とを備える選別装置であってよい。すなわち、選別装置は、既に表面処理された廃プラスチック片を投入することができる形態であってよい。この場合、表面処理された廃プラスチック片は、その表面が、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角60°の光沢度(鏡面光沢度(%))が10以下、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角75°の光沢度(鏡面光沢度(%))が25以下、及び表面粗さの平均偏差(SMD)が1μm以上の条件のうち1以上を満たすように処理されたものであってよい。
【0092】
また、本発明の別の実施形態は、廃プラスチックの選別方法であって、表面処理された、黒色廃プラスチック片を含む廃プラスチック片に光を照射する照射ステップと、前記照射部により照射された光の反射光を受光して前記反射光のスペクトルを検出し、前記反射光のスペクトルに基づき、前記廃プラスチック片の材質を判定する判定ステップと、前記判定の結果に基づき、少なくとも黒色廃プラスチック片を材質により選別する選別ステップとを含む、選別方法であってよい。
【実施例】
【0093】
(例1)
本実施例では、選別の対象として、黒色廃プラスチック片群(プラスチックミックス)を用いた。各プラスチック片のサイズは、平面視で平均径約5~30mmであった。また、用いた黒色廃プラスチック片群は、少なくとも、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(PCABS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン(PPEPS)、及びポリアミド(PA)の7種のプラスチック片が混在するプラスチック片群であったが、上記7種のプラスチック以外のプラスチックも含まれていた。このような黒色廃プラスチック片群を、
図1~
図3に示す選別装置1と同様の選別装置を用いて、材質による選別を行った。一試行で用いた黒色廃プラスチック片群の重量は2.35kgであった。また、選別装置のコンベア速度は120~150m/分であった。
【0094】
選別装置においては、3~5μmの赤外線を照射し、反射光のスペクトルを検出した。そして、得られた反射光スペクトルから、3250~3750nm及び4400~4600nmの波長領域のスペクトルをそれぞれ切り出し、特徴量を求め、その特徴量に基づき、プラスチックの材質を判定した。
【0095】
本実施例で用いた選別装置においては、318個の噴射ノズルが搬送方向と直交する方向に並んだ噴射ノズル列が設けられていた。選別装置内の判別装置には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(PCABS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン(PPEPS)、及びポリアミド(PA)の7種のプラスチックを登録可能であった。そして、1つの試行ごとに、噴射ノズルからエアを噴射させて吹き付けて吹き飛ばす(選択吹付けされる)1種以上のプラスチックを選択できるものであった。
【0096】
以下に示す試行1-A及び1-1~1-7による選択吹付けにより、廃プラスチックの選別を行った。
【0097】
試行1-A:全7種のプラスチックを選択吹付け
試行1-1:PEのみを選択吹付け
試行1-2:PPのみを選択吹付け
試行1-3:PCABSのみを選択吹付け
試行1-4:ABSのみを選択吹付け
試行1-5:PSのみを選択吹付け
試行1-6:PPEPSのみを選択吹付け
試行1-7:PAのみを選択吹付け
【0098】
<測定・評価>
選別精度の評価のために、試行1-Aで得られた回収物中の全7種のプラスチックの回収率RA(%)、試行1-1~1-7で得られた回収物における各種のプラスチックの回収率RPE、RPP、…(%)、また、試行1-1~1-7で得られた回収物中の各種のプラスチックの純度RPE、RPP、…(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0099】
(回収率RAの算出)
試行1-Aによる全7種のプラスチックの回収率RA(%)は、以下のようにして求めた。
【0100】
RA(%)=WA/WL×100
・WL(kg):廃プラスチック片群(プラスチックミックス)の投入量
・WA(kg):全7種の廃プラスチック片の回収量(選択吹付けにより飛ばされたプラスチック片の回収量)
【0101】
(回収率RPE、RPP、…の算出)
試行1-1~1-7による各種プラスチックの回収率RPE、RPP、…(%)は、以下のようにして求めた。まず、表2に示す各材質の含有比率及び含有量の廃プラスチック片群を用意して各試行を行い、実際に得られた回収量に基づき、プラスチック種ごとの回収率を求めた。
【0102】
例えば、試行1-1におけるRPEは、以下の式より求めた:
RPE(%)=W1PE/sWAPE×100
・W1PE(kg):試行1-1によるPEの実際の回収量
・sWAPE(kg):PEの含有量(表2)
試行1-2~1-7の他のプラスチックについても同様に、回収率を求めた。
【0103】
(純度RPE、RPP、…)
試行1-1~1-7による回収物の純度PPE、PPP、…(%)は、各試行により回収された各回収物中の各種プラスチックの含有比率である。これらの純度は、選別装置の各試行による回収後のプラスチック片群を、再度選別装置に投入し、この選別装置のプラスチック比率判定機能を利用して得た。例えば、試行1-1における純度PPEは、上記プラスチック比率判定機能により測定されたPEの含有比率とした。試行1-2~1-7の他のプラスチックについても同様であった。
【0104】
(表面特性の測定)
表面処理後のプラスチック片の表面特性として、JIS Z 8741に準拠した光沢度(鏡面光沢度(%))を測定した。測定には、日本電色工業株式会社製の光沢度計「VG 7000」を使用し、入射角60°及び入射角75°の光沢度(鏡面光沢度(%))をそれぞれ測定した。さらに、表面処理後のプラスチック片の表面粗さの平均偏差(SMD)を、カトーテック株式会社製の自動化表面試験機「KES-FB4-A」を用いて測定した。代表例としてPCABS、及びPSの表面特性の測定結果を、表3に示す。
【0105】
(例2)
表面処理は行わなかったこと以外は例1と同様にしてプラスチック片の材質による選別を行った。例1と同様に、以下に示す試行2-A及び2-1~2-7による選択吹付けを行った。
【0106】
試行2-A:全7種のプラスチックを選択吹付け
試行2-1:PEのみを選択吹付け
試行2-2:PPのみを選択吹付け
試行2-3:PCABSのみを選択吹付け
試行2-4:ABSのみを選択吹付け
試行2-5:PSのみを選択吹付け
試行2-6:PPEPSのみを選択吹付け
試行2-7:PAのみを選択吹付け
【0107】
例1と同様にして、含有比率、含有量、回収率、及び純度を求めた。結果を表1、2に示す。また、選別前のプラスチック片の表面特性も、例1と同様にして求めた。結果を表3に示す。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
表1には、全7種のプラスチックの選択吹付けの試行(例1の試行1-A及び例2の試行2-A)、並びに代表的な各種プラスチックの選択吹付けの試行(例1の試行1-3~1-6、並びに例2の試行2-3~2-6)の結果を、例1(表面処理あり)と例2(表面処理なし)とで比較して示す。この結果より、廃プラスチック片を選別する前に、表面処理することによって、プラスチック片の回収率、純度が向上することが分かった。特に、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角60°の光沢度(鏡面光沢度(%))が10以下、JIS Z 8741に準拠して測定された入射角75°の光沢度(鏡面光沢度(%))が25以下、又は表面粗さの平均偏差(SMD)が1μm以上になるように表面処理を行うことによって、プラスチック片の回収率、及び純度が向上することが分かった。
【0112】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0113】
1、1A、1B、1C、1D 廃プラスチックの選別装置
2 コンベア
3 搬送路
4 中赤外線カメラ(反射スペクトル検出部)
5 判別装置
6 噴射制御部
7 噴射ノズル列
8 振動フィーダ
12、12-1、12-2、A1、A2、B1、B2 選別部
20 表面処理部
21、22 大ローラ
23、25 粗面ローラ
28 供給部
51 前処理部
52 第1判定部
53 第2判定部
54 第3判定部
S、S1、S2 廃プラスチック片(黒色廃プラスチック片)
S' 表面処理前の廃プラスチック片