(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
B66B 23/02 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B66B23/02 C
(21)【出願番号】P 2024034417
(22)【出願日】2024-03-06
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】502250178
【氏名又は名称】ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】伊東 永頼
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-069902(JP,A)
【文献】実開昭48-040712(JP,U)
【文献】実開昭54-050108(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第111969777(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアが備えるモーターの回転速度を減じる減速機であって、
潤滑油を収容する筐体と、
前記筐体とは別体で設けられた足板と、
前記筐体または前記足板に設けられて当該足板または当該筐体に対して突出する突出部と、前記足板または前記筐体に設けられて当該突出部と嵌合可能な凹部または貫通孔と、によって構成された嵌合機構と、
前記筐体本体と前記足板とを連結する連結機構と、
前記足板の側面から前記凹部または前記貫通孔の内壁面に貫通する調整用貫通孔と、
前記調整用貫通孔に螺合される調整ネジと、
を備え、
前記足板は、前記減速機の設置対象とする構造躯体に応じた位置に当該減速機の固定に供されるボルトが貫通可能な取付孔を備えたことを特徴とする減速機。
【請求項2】
乗客コンベアが備えるモーターの回転速度を減じる減速機であって、
潤滑油を収容する筐体と、
前記筐体とは別体で設けられた足板と、
前記筐体または前記足板に設けられて当該足板または当該筐体に対して突出する突出部と、前記足板または前記筐体に設けられて当該突出部と嵌合可能な凹部または貫通孔と、によって構成された嵌合機構と、
前記筐体本体と前記足板とを連結する連結機構と、
前記筐体の側面から前記凹部または前記貫通孔の内壁面に貫通する調整用貫通孔と、
前記調整用貫通孔に螺合される調整ネジと、
を備え、
前記足板は、前記減速機の設置対象とする構造躯体に応じた位置に当該減速機の固定に供されるボルトが貫通可能な取付孔を備えたことを特徴とする減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力された動力の回転速度を減速して出力する減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターは、階段状のステップを、モーターの駆動力を用いて循環移動させることにより、当該ステップを昇降させる。エスカレーターは、モーターの回転速度を減じることによって、出力トルクを高めてからステップに伝達するエスカレーター減速機(ギアボックス)を備えている。
【0003】
エスカレーター減速機は、モーターに連結されてモーターの回転を受ける回転軸と、ステップチェーンを介してステップに連結される出力軸と、を備えている。エスカレーター減速機は、回転軸において受けたモーターの回転を、ギア列を介して出力軸に伝達するようにしている。
【0004】
関連する技術として、従来、具体的には、たとえば、出力軸の軸方向がエスカレーターのステップの長手方向と平行となるようにモーターを配置し、減速機の減速機構を平行軸歯車機構によって構成するとともに、当該減速機の出力軸をモーターのモーター軸と平行に配置し、一対の出力軸軸受によって減速機の歯車箱に支持される減速機の出力軸の両端を歯車箱外にそれぞれ突出・延在させ、延在させた出力軸にエスカレーターのステップを駆動するための一対のスプロケットを直接的に組込むことにより、低騒音化および低コスト化と、エスカレーター減速機の設置スペースの低減とを図るようにしたエスカレーター減速機に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来のエスカレーター減速機においては、エスカレーター減速機の機種が同一であれば、一般的に鋳造によって形成される筐体における取付孔の位置が一様となるため、設置できるエスカレーターが限定され、エスカレーター減速機のリニューアルにおいて汎用性に劣るという問題があった。
【0007】
近年、リニューアルにかかる時間や費用を抑えるため、エスカレーターの構成部品の一部のみを交換することが広くおこなわれている。また、リニューアルの対象となるエスカレーターは、設計・製造会社の違いや設計年代の違いなどにより、エスカレーター減速機の設置環境のバリエーションが非常に多岐にわたる。
【0008】
一方で、上述したように従来のエスカレーター減速機は汎用性に劣るため、エスカレーター減速機のみをリニューアルする場合、当該エスカレーター減速機が設置されているエスカレーターの構造躯体に応じて筐体の鋳型を作成する費用が大きく嵩むか、筐体の鋳型を作成するか、構造躯体を改造しなければならず、エスカレーター減速機の設置作業にかかる作業者の労力・作業時間・工費などのコストがかかるという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、鋳造改造にかかる費用を抑えることができる減速機を提供することを目的とする。
【0010】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、設置作業にかかる作業者の労力・作業時間などのコストを抑え、汎用性の高い減速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる減速機は、乗客コンベアが備えるモーターの回転速度を減じる減速機であって、潤滑油を収容する筐体と、前記筐体とは別体で設けられた足板と、前記筐体または前記足板に設けられて当該足板または当該筐体に対して突出する突出部と、前記足板または前記筐体に設けられて当該突出部と嵌合可能な凹部または貫通孔と、によって構成された嵌合機構と、前記筐体本体と前記足板とを連結する連結機構と、を備え、前記足板が、前記減速機の設置対象とする構造躯体に応じた位置に当該減速機の固定に供されるボルトが貫通可能な取付孔を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる減速機は、上記の発明において、前記足板の側面から前記凹部または前記貫通孔の内壁面に貫通する調整用貫通孔と、前記調整用貫通孔に螺合される調整ネジと、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる減速機は、上記の発明において、前記筐体の側面から前記凹部または前記貫通孔の内壁面に貫通する調整用貫通孔と、前記調整用貫通孔に螺合される調整ネジと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明にかかる減速機によれば、減速機の鋳造改造費用を抑えることができるという効果を奏する。
【0015】
また、この発明にかかる減速機によれば、減速機の設置作業にかかる作業者の労力・作業時間などのコストを抑え、汎用性の高い減速機を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明にかかる実施の形態の減速機を実現するエスカレーター減速機を備えた、エスカレーターの一例を示す説明図である。
【
図2】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の構造の一例を示す説明図(その1)である。
【
図3】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の構造の一例を示す説明図(その2)である。
【
図4】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の構造の一例を示す説明図(その3)である。
【
図5】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の構造の一例を示す説明図(その4)である。
【
図6】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の構造の一例を示す説明図(その5)である。
【
図7】筐体と足板とを分離した状態のエスカレーター減速機を示す説明図(その1)である。
【
図8】筐体と足板とを分離した状態のエスカレーター減速機を示す説明図(その2)である。
【
図9】筐体と足板とを分離した状態のエスカレーター減速機を示す説明図(その3)である。
【
図10】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の設置手順を示す説明図(その1)である。
【
図11】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の設置手順を示す説明図(その2)である。
【
図12】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の設置手順を示す説明図(その3)である。
【
図13】この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機の設置手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる減速機の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
なお、この発明にかかる乗客コンベアは、動力を用いて人や物品を運搬する装置によって実現される。具体的に、この発明にかかる乗客コンベアは、たとえば、ステップ(踏み板)がモーターの動力により循環移動して昇降する装置によって実現することができる。ステップは、複数のステップによって構成されるものであってもよく、また、複数のステップによって構成されるものに限らず、無端帯のように一連のベルト状部材によって構成されるものであってもよい。
【0019】
より具体的に、この発明にかかる乗客コンベアは、たとえば、「エスカレーター」などと称され、階段状をなす複数のステップ(踏み板)をモーターにより循環移動させて昇降させる装置によって実現することができる。また、具体的に、この発明にかかる乗客コンベアは、たとえば、「動く歩道」や「水平型エスカレーター」などと称され、階段状ではなく水平に配置されたステップ(ベルト状部材)をモーターにより循環移動させる装置によって実現することができる。また、具体的に、この発明にかかる乗客コンベアは、たとえば、「オートスロープ」などと称され、水平方向に対して傾斜した斜面をなした状態で配置されたステップ(ベルト状部材)をモーターにより循環移動させる装置によって実現することができる。
【0020】
以下、この実施の形態においては、この発明にかかる減速機が適用される乗客コンベアとして、複数のステップ(踏み板)をモーターの動力を用いて循環移動して昇降させる、いわゆる「エスカレーター」へ適用した例について説明する。
【0021】
(エスカレーターの一例)
まず、この発明にかかる実施の形態の減速機を実現するエスカレーター減速機を備えた、エスカレーターの一例について説明する。
図1は、この発明にかかる実施の形態の減速機を実現するエスカレーター減速機を備えた、エスカレーターの一例を示す説明図である。
【0022】
図1に示すように、エスカレーター100は、図示を省略する躯体(構造躯体)に設置された枠体101を備えている。枠体101は、鉄骨などを用いて構成される。たとえば、
図1に示すような、高さの異なる階床間に設置されるエスカレーター100の場合、枠体101は、上側の階床102と下側の階床103との2つの階床(各階床102、103の床の梁)に架け渡される。
【0023】
枠体101は、上側の階床102の床下に設けられる上側部101aと、下側の階床103の床下に設けられる下側部101bと、上側部101aと下側部101bとの間に設けられる中間部101cと、からなる。中間部101cは、上側部101aと下側部101bとの間で所定の角度で傾斜した状態で設けられている。この実施の形態においては、枠体における中間部101cの傾斜に沿った方向(上側部101aと中間部101cと下側部101bとの配置方向)を「長さ方向」とし、当該長さ方向に直交する方向を「幅方向」として説明する。
【0024】
枠体101において、上側部101a、下側部101bは、それぞれ機械室とされている。上側部101aの機械室には、たとえば、エスカレーター100が備える各部を駆動制御する制御盤や、当該制御盤によって駆動制御されるモーター104やモーター104の動力が伝達される駆動スプロケット105を含む駆動機構などが配置される。下側部101bの機械室には、従動スプロケット106や、当該従動スプロケット106を支持する機構など、エスカレーター100の動作にかかる構造物が配置される。
【0025】
上側部101aの上端面すなわち上側の階床102の床面と同一面には、上側乗降板107が設けられている。上側乗降板107は、上側部101a(上側の階床102の床面下に位置する機械室)を開放可能に閉塞する。下側部101bの上端面すなわち下側の階床103の床面と同一面には、下側乗降板108が設けられている。下側乗降板108は、下側部101b(下側の階床103の床面下に位置する機械室)を開放可能に閉塞する。
【0026】
上側乗降板107および下側乗降板108は、エスカレーター100のメンテナンスに際して、取り外され、各機械室を開放する。また、上側乗降板107および下側乗降板108は、エスカレーター100の稼働時において、エスカレーター100の利用者の通路として利用される。
【0027】
枠体101の上側には、欄干109が設けられている。欄干109は、たとえば、強化ガラスやステンレスなどを用いて形成することができる。欄干109には、無端(ループ)形状のハンドレール(手すりベルト)110が設けられている。ハンドレール110は、欄干109の端面に沿った状態で、エスカレーター100の長さ方向に沿ってスライド移動可能に設けられている。
【0028】
エスカレーター100は、複数のステップ111を備えている。複数のステップ111は、それぞれ、踏板111aとライザ111bとを備えている。踏板111aは平板形状をなし、ライザ111bは緩やかに湾曲した板形状をなす。幅方向における踏板111aおよびライザ111bの寸法は等しい。踏板111aの幅方向に直交する方向の寸法(踏板111aの踏面寸法)と、ライザ111bの幅方向に直交する方向の寸法(ライザ111bの高さ寸法)とは、同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。踏板111aとライザ111bとは、互いに一辺において、寸法を等しくする幅方向に沿って連結されている。
【0029】
また、複数のステップ111は、それぞれ、駆動ローラ112と従動ローラ113とを備えている。駆動ローラ112および従動ローラ113は、踏板111aとライザ111bとに架け渡されたブラケット111cに対して、回転可能に取り付けられている。ブラケット111cは、踏板111aとライザ111bとを連結し、ステップ111の強度を確保する。これにより、エスカレーター100の利用者によってかかる荷重を支え、利用者の安全性を確保することができる。
【0030】
駆動ローラ112および従動ローラ113は、ステップ111の幅方向における両端位置に設けられている。このうち、駆動ローラ112は、踏板の幅方向に直交する方向における、踏板111aとライザ111bとの連結位置とは反対側の端部に近い位置に設けられている。また、従動ローラ113は、ライザ111bの高さ方向における、踏板111aとライザ111bとの連結位置とは反対側の端部に近い位置に設けられている。
【0031】
複数のステップ111の幅方向における両側方には、それぞれ、無端形状をなす駆動ローラ用ガイドレール114が設けられている。駆動ローラ112は、それぞれ、外周面が駆動ローラ用ガイドレール114に当接するように設けられている。また、複数のステップ111の幅方向における両側方には、それぞれ、無端形状をなす従動ローラ用ガイドレール115が設けられている。従動ローラ113は、それぞれ、外周面が従動ローラ用ガイドレール115に当接するように設けられている。
【0032】
駆動ローラ用ガイドレール114および従動ローラ用ガイドレール115は、それぞれ異なる軌道を描くように配設されている。また、駆動ローラ用ガイドレール114および従動ローラ用ガイドレール115は、それぞれの軌道が交差しない状態で配設されている。
【0033】
複数のステップ111がそれぞれ備える駆動ローラ112は、それぞれ、無端形状をなすステップチェーン116に連結されている。ステップチェーン116は、駆動スプロケット105および従動スプロケット106に架け渡されている。駆動スプロケット105および従動スプロケット106は、位置が固定されており、定位置において回転する。
【0034】
駆動スプロケット105は、エスカレーター減速機117の出力軸(
図2~
図4を参照)に連結されている。駆動スプロケット105は、モーター104からエスカレーター減速機117を介して伝達される駆動トルクを受けて回転する。ステップチェーン116は、駆動スプロケット105の回転にともなって、従動スプロケット106をともに回転させながら、駆動スプロケット105と従動スプロケット106との間に架け渡された状態で回転する。
【0035】
ステップチェーン116の回転にともなって、駆動ローラ112および従動ローラ113は、それぞれ、駆動ローラ用ガイドレール114および従動ローラ用ガイドレール115に当接した状態で回転しながら、各ガイドレール114、115に沿って転動する。これにより、複数のステップ111が、ステップチェーン116の回動にともなって、鉛直方向斜め上方向あるいは鉛直方向斜め下方向に移動する。
【0036】
ステップ111の移動に際して、駆動ローラ114および従動ローラ115が、それぞれ、駆動ローラ用ガイドレール114および従動ローラ用ガイドレール115に当接した状態で転動することにより、ステップ111どうしが段差をなしたり、ステップ111(踏板111a)どうしを平らにしたり、各ステップ111の天地方向をひっくり返した状態で移動させたりすることができる。
【0037】
上述したハンドレール110は、ハンドレール駆動装置118によって、複数のステップ111の移動方向と同一方向(長さ方向)に、当該複数のステップ111の移動に同期して循環移動する。ハンドレール駆動装置118は、図示を省略するハンドレール用チェーンやギアなどの伝達機構を介して、駆動スプロケット105に連結されている。これにより、ハンドレール110は、駆動スプロケット105の回転にともない、複数のステップ111の移動に同期して循環移動する。
【0038】
ハンドレール110がステップ111の移動に同期して循環移動することにより、エスカレーター100の利用者は、ハンドレール110を把持し、ステップ111の上に立った状態で、移動することができる。エスカレーター100は、ハンドレール110を把持させた状態で利用者を移動させることができるので、当該利用者の安全性を確保することができる。
【0039】
(エスカレーター減速機117の構造)
つぎに、エスカレーター減速機117の構造について説明する。
図2~
図6は、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117の構造の一例を示す説明図である。
【0040】
図2においては、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117を側方から見た状態を示している。
図3においては、
図2におけるA矢視図を示している。
図4においては、
図2におけるB矢視図を示している。
図5においては、
図2におけるC矢視図を示している。
図6においては、
図5におけるD矢視図を示している。
【0041】
図2~
図6に示すように、エスカレーター減速機117は、筐体201を備えている。筐体201は、内側が空洞であって、当該空洞部分に潤滑油を収容する。筐体201の側面201aには、出力軸用貫通孔および入力軸用貫通孔が設けられている。筐体の側面201bには、ブレーキ軸用貫通孔が設けられている。出力軸用貫通孔、入力軸用貫通孔、および、ブレーキ軸用貫通孔は、それぞれ、筐体201の側面201aまたは側面201bを貫通している。
【0042】
エスカレーター減速機117は、出力軸202、入力軸203、ブレーキ軸301を備えている。出力軸202、入力軸203およびブレーキ軸301は、いずれも棒(シャフト)形状をなす。出力軸202は、軸心方向における一端側が筐体201の外側に、他端側が筐体201の内側に位置するように、出力軸用貫通孔を貫通した状態で設けられている。筐体において、出力軸用貫通孔の部分には、図示を省略するオイルシールが設けられている。これにより、筐体201内の潤滑油が、出力軸202と出力軸用貫通孔との隙間から筐体201の外へ漏れ出ることを防止している。
【0043】
出力軸202における筐体201の外側に位置する部分には、図示を省略する動力出力用スプロケットが設けられる。動力出力用スプロケットは、出力軸202の軸心を中心として当該出力軸202と連動して回転する。動力出力用スプロケットには、上述したステップチェーン116が架け渡される。これにより、出力軸202の回転にともなって、ステップチェーン116を回転させることができる。
【0044】
この実施の形態において、入力軸203およびブレーキ軸301は一体とされている。この実施の形態における入力軸203およびブレーキ軸301は、一体をなすシャフトの両端部によって実現される。一体をなすシャフトは、両端部が、筐体201の両側面201a、201bに設けられた入力軸用貫通孔およびブレーキ軸用貫通孔をそれぞれ貫通するように配置されている。これにより、入力軸203およびブレーキ軸301は、それぞれ、軸心方向における一端側が筐体201の外側に位置するように設けられている。
【0045】
筐体201において、入力軸用貫通孔の部分には、図示を省略するオイルシールが設けられている。これにより、筐体201内の潤滑油が、入力軸203と入力軸用貫通孔との隙間から筐体201の外へ漏れ出ることを防止している。入力軸203は、筐体201の外側に位置する部分に、入力軸203の軸心を中心として当該入力軸203と連動して回転する、図示を省略するプーリーを備えている。プーリーには、上述したモーター104の出力軸に巻回された無端ベルト(エンドレスベルト)が架け渡される。これにより、入力軸203は、モーター104(モーター104の出力軸)の回転にともなって回転する。
【0046】
出力軸202は、筐体201内に設けられた図示を省略するギア列を介して、筐体201内において入力軸203(一体をなすシャフト)と連結されている。これにより、入力軸203の回転は出力軸202に伝達され、出力軸202は入力軸203の回転にともなって回転する。入力軸203の回転は、ギア列を介して回転数(回転速度)を減じトルクを高めた状態で、出力軸202に伝達される。これにより、モーター104の駆動力を用いてステップ111を循環移動させることができる。
【0047】
筐体201において、ブレーキ軸用貫通孔の部分には、図示を省略するオイルシールが設けられている。これにより、筐体201内の潤滑油が、ブレーキ軸301とブレーキ軸用貫通孔との隙間から筐体201の外へ漏れ出ることを防止している。
【0048】
ブレーキ軸301は、筐体201の外側において、図示を省略するブレーキに連結される。ブレーキは、たとえば、電磁ブレーキを用いることができる。電磁ブレーキは、コイルに通電することにより発生する電磁力を用いて、ブレーキ軸301(一体をなすシャフト)の回転を制御する。電磁ブレーキは、たとえば、通電されている状態において作動する励磁作動方式の電磁ブレーキであってもよく、通電されていない状態において作動する無励磁作動方式の電磁ブレーキであってもよい。
【0049】
エスカレーター減速機117は、足板204を備えている。足板204は、たとえば、鋼板を用いて形成したり、鋳造によって成型したりすることができる。足板204には、足板204を板厚方向に貫通するトラス取付孔302が設けられている。トラス取付孔302は、足板204に複数設けられている。鋼板を用いて足板204を実現する場合、トラス取付孔302は、たとえば、足板204に対する切削加工(穴(孔)開け加工を含む)や抜き加工などによって設けることができる。
【0050】
トラス取付孔302は、構造躯体へのエスカレーター減速機117の固定に供される。トラス取付孔302は、エスカレーター減速機117の固定対象となる構造躯体に応じた位置に設けられている。具体的に、トラス取付孔302は、構造躯体に設けられた、図示を省略するボルト穴(孔)に応じた位置に設けられている。また、具体的に、トラス取付孔302は、構造躯体に設けられたボルト穴の個数に応じた個数が設けられている。この実施の形態においては、トラス取付孔302によって、この発明にかかる「エスカレーター減速機の固定に供されるボルトが貫通可能な取付孔」を実現することができる。
【0051】
この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117において、足板204は、筐体201と分離可能に連結されている。筐体201と足板204とは、たとえば、六角穴付きボルト401などのボルトやネジを用いて、互いに分離可能に連結される(
図7~
図9を参照)。
【0052】
足板204は、足板204を板厚方向に沿って貫通する、減速機嵌め込み用貫通孔402を備えている。減速機嵌め込み用貫通孔402は、略矩形状をなす。減速機嵌め込み用貫通孔402は、足板204の略中央部分に設けられている。鋼板を用いて足板204を実現する場合、減速機嵌め込み用貫通孔402は、たとえば、足板204に対する切削加工や抜き加工などによって設けることができる。この実施の形態においては、減速機嵌め込み用貫通孔402によって、この発明にかかる「突出部と嵌合可能な凹部または貫通孔」を実現することができる。
【0053】
また、足板204は、足板204を板厚方向に沿って貫通する、六角穴付きボルト用貫通孔403を備えている。六角穴付きボルト用貫通孔403は、減速機嵌め込み用貫通孔402の周縁部に複数設けられている。鋼板を用いて足板204を実現する場合、六角穴付きボルト用貫通孔403は、たとえば、足板204に対する切削加工(穴(孔)開け加工を含む)や抜き加工などによって設けることができる。
【0054】
足板204の側面には、足板204に対する筐体201の位置の調整に用いる調整用止めネジ205が螺合される、止めネジ用貫通孔206が設けられている。この実施の形態においては、調整用止めネジ205によって、この発明にかかる調整ネジを実現し、止めネジ用貫通孔206によって、この発明にかかる調整用貫通孔を実現することができる。
【0055】
止めネジ用貫通孔206は、足板204の外側の側面(以下、適宜「側端面」という。)に対して直交する方向に沿って貫通している。また、足板204は、エスカレーター100を設置した状態において、側端面が鉛直方向に平行になるように形成されている。これにより、調整用止めネジ205の回転軸心は、それぞれ、側端面の面方向に対して直交している。
【0056】
止めネジ用貫通孔206は、足板204における、出力軸202、入力軸203およびブレーキ軸301の軸心方向に沿って対向する2面にそれぞれ設けられている。この実施の形態のエスカレーター減速機117において、止めネジ用貫通孔206は、対向する2面にそれぞれ2つずつ設けられている。
【0057】
(筐体201および足板204の構成)
つぎに、筐体201および足板204の構成について説明する。
図7~
図9は、筐体201と足板204とを分離した状態のエスカレーター減速機117を示す説明図である。
【0058】
図7においては、筐体201と足板204とを分離した状態のエスカレーター減速機117を側方から見た状態を示している。
図8においては、
図7におけるC矢視図を示している。
図9においては、
図8におけるD矢視図を示している。
図7~
図9においては、エスカレーター減速機117の外観上視認できない部分を点線で示している。
【0059】
図7~
図9に示すように、筐体201と足板204とは、別体であり、互いに分離することができる。筐体201は、筐体本体701と突出部702とによって構成されている。筐体本体701および突出部702は、鋳造によって一体に成型されている。
【0060】
筐体本体701は、内側に空洞を備えた略長方体形状をなし、空洞部分に出力軸202、入力軸203、ブレーキ軸301、ギア列および潤滑油などを収容する。突出部702は、筐体本体701の底面701aから、当該底面701aから離反する方向に突出している。筐体本体701の底面701aからの突出部702の突出量(筐体本体701の底面から突出部702の先端702aまでの高さ寸法)は、足板204の板厚寸法よりも小さい。
【0061】
突出部702の外径寸法は、減速機嵌め込み用貫通孔402の内径寸法よりも小さい。これにより、突出部702を減速機嵌め込み用貫通孔402に嵌め込むことができる。突出部702の形状は、減速機嵌め込み用貫通孔402の形状と同様に略矩形状であることが好ましい。
【0062】
また、突出部702の外径寸法は、減速機嵌め込み用貫通孔402の内径寸法よりも若干小さいことが好ましい。これにより、突出部702を減速機嵌め込み用貫通孔402に嵌め込んだ状態において、筐体201と足板204とのがたつきを効果的に抑えることができる。
【0063】
筐体本体701の底面701aであって、突出部702を減速機嵌め込み用貫通孔402に嵌め込んだ状態において六角穴付きボルト用貫通孔403に対向する各位置には、複数の六角穴付きボルト用ネジ穴703が設けられている。六角穴付きボルト用ネジ穴703の内周面には、雌ネジが設けられている。六角穴付きボルト用ネジ穴703は、六角穴付きボルト用ネジ穴703の深さ寸法と、六角穴付きボルト用貫通孔403の軸心方向の長さ寸法(足板204の板厚寸法)とを加算した寸法が、六角穴付きボルト401の軸心方向の寸法より長くなるように設けられている。
【0064】
六角穴付きボルト用貫通孔403の内径は、少なくとも足板204の下面側から六角穴付きボルト401の頭部の厚みと同等以上の深さにおいて、六角穴付きボルト401の頭部の外径よりも大きい。これにより、六角穴付きボルト401の先端を六角穴付きボルト固定用穴に螺合させた状態において、六角穴付きボルト401の頭部が足板204の下面よりも下側に突出することがない。
【0065】
止めネジ用貫通孔206は、足板204の側面から減速機嵌め込み用貫通孔402の周縁まで貫通している。止めネジ用貫通孔206の内周面には、雌ネジが設けられている。止めネジ用貫通孔206の内周面の雌ネジは、少なくとも、止めネジ用貫通孔206における減速機嵌め込み用貫通孔402の周縁側の所定範囲に設けられている。これにより、調整用止めネジ205の先端を確実に突出部702に当接させることができる。調整用止めネジ205は、たとえば、六角穴付き止めネジなどのように、頭部のないイモネジを用いることができる。
【0066】
(エスカレーター減速機117の設置手順)
つぎに、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117の設置手順について説明する。
図10~
図12は、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117の設置手順を示す説明図である。
図13は、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117の設置手順を示すフローチャートである。
【0067】
図10~
図12および
図13に示すように、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117の設置作業に際しては、まず、減速機嵌め込み用貫通孔402に突出部702を嵌め込む(ステップS1301)。つぎに、足板204に対する筐体201のスイベル調整をおこなう(ステップS1302)。
【0068】
ステップS1302においては、減速機嵌め込み用貫通孔402に突出部702を嵌め込んだ状態で、足板204の側面から、調整用止めネジ205を止めネジ用貫通孔206に螺合させる。そして、足板204の側端面に対し、駆動スプロケット105の軸心方向と、出力軸202、入力軸203およびブレーキ軸301の軸心方向とが直角になる(直交する)ように、それぞれの調整用止めネジ205を適宜締め込むあるいは緩める。これによって、足板204に対する筐体201のスイベル調整をおこなうことができる。
【0069】
つぎに、筐体201と足板204とを連結する(ステップS1303)。ステップS1303においては、スイベル調整後の筐体201と足板204との位置関係を維持した状態で、六角穴付きボルト用貫通孔403を貫通するように六角穴付きボルト401を挿入し、挿入した六角穴付きボルト401を六角穴付きボルト用ネジ穴703に螺合させる。この作業を、六角穴付きボルト用ネジ穴703のそれぞれについておこなう。
【0070】
これにより、足板204に対する筐体201の位置を固定することができる。この実施の形態においては、六角穴付きボルト401、六角穴付きボルト用ネジ穴703および六角穴付きボルト用貫通孔403によって、この発明にかかる連結機構を実現することができる。
【0071】
つぎに、エスカレーター減速機117に、モーター104およびブレーキを組み付ける(ステップS1304)。ステップS1304においては、たとえば、モーター104の出力軸が、エスカレーター減速機117の出力軸202、入力軸203およびブレーキ軸301の軸心方向と平行になるように、エスカレーター減速機117にモーター104を組み付ける。
【0072】
そして、組み付けたモーター104の出力軸と、入力軸203に設けられたプーリーに無端ベルト(エンドレスベルト)を架け渡す。無端ベルトは、たとえば、断面の外周側が広く内周側が狭い形状をなすVベルトやVリブドベルトなどを用いることができる。無端ベルトとしてVベルトやVリブドベルトを用いることにより、無端ベルトとプーリーとの接地面積を広く取ることができるので、無端ベルトとプーリーとの間に大きな摩擦力を確保し、無端ベルトとプーリーとの滑りを生じさせることなく、モーター104の動力をプーリー(入力軸203)に確実に伝達することができる。
【0073】
一般的に、現場では、エスカレーター減速機117の周囲に十分な空間がないことが多い。このため、ステップS1301~ステップS1304の処理(作業)は、たとえば、エスカレーター減速機117の製造・組立場所など、エスカレーター減速機117(エスカレーター100)を設置する場所(現場)とは異なる場所でおこなうことが好ましい。
【0074】
このように、現場での処理(作業)に先立って筐体201のスイベル調整をおこなうことにより、現場以外の作業がしやすく安定した場所において足板204に対する筐体201のスイベル調整をおこなうことができ、スイベル調整の高い調整精度を確保することができる。
【0075】
また、現場での処理(作業)に先立って、現場以外の作業がしやすく安定した場所において、組み付けたモーター104の出力軸と、入力軸203に設けられたプーリーに無端ベルトを架け渡す作業をおこなうことにより、ベルトのテンション調整を精度よくおこなうことができる。
【0076】
つぎに、モーター104およびブレーキの組み付けをおこなったエスカレーター減速機117(以下、適宜「組立機構」と称する)を、現場に運搬し、構造躯体の所定の位置に足板204をもって載置する(ステップS1305)。具体的に、トラス取付孔302のそれぞれが、構造躯体に設けられたボルト穴のそれぞれに対向する位置に、筐体201が連結された足板204を載置する。
【0077】
現場での処理(作業)に先立って足板204に対する筐体201のスイベル調整をおこなっているため、ステップS1305における現場での処理(作業)にかかる時間の短縮を図ることができる。そして、これにより、エスカレーター100を使用することができない時間を短縮して、エスカレーター100の利用者やエスカレーター100の管理者の負担軽減を図ることができる。
【0078】
つぎに、トラス取付孔302を貫通するように図示を省略する固定用ボルトを挿入し、挿入した固定用ボルトを構造躯体に設けられたボルト穴に螺合させる。この作業を、ボルト穴のそれぞれについておこなう。これにより、組立機構を構造躯体に固定することができる。なお、組立機構は、出力軸202に取り付けた図示を省略するスプロケットを含む。
【0079】
つぎに、出力軸202に取り付けた図示を省略するスプロケットとエスカレーター100が備える駆動スプロケット105等の駆動機構と組立機構とを連結する(ステップS1306)。モーター104やブレーキなどの制御盤によって駆動制御される各部、および、図示を省略する各種センサなど制御盤に対する信号を出力する各部と、制御盤とは、適宜接続する。
【0080】
その後、エスカレーター100の動作確認をおこなって(ステップS1307)、異常がないか否かを判断する(ステップS1308)。ステップS1307における動作確認の結果、異常がある場合(ステップS1308:No)、ステップS1305へ移行して、構造躯体の所定の位置に足板204をもって載置する。ステップS1308における動作確認の結果、異常がない場合(ステップS1308:Yes)、一連の処理を終了する。
【0081】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117は、エスカレーター100が備えるモーター104の回転速度を減じるエスカレーター減速機117であって、底面701aから突出する突出部702を備えた筐体201と、筐体本体701とは別体であって、突出部702と嵌合可能な減速機嵌め込み用貫通孔402を備えたことを特徴としている。
【0082】
また、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117は、筐体201と分離可能に連結される足板204と、筐体201と足板204とを連結する連結機構と、を備え、足板204が、エスカレーター減速機117の設置対象とする構造躯体に応じた位置に当該エスカレーター減速機117の固定に供される固定用ボルトが貫通可能なトラス取付孔302を備えたことを特徴としている。この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機においては、筐体201(筐体本体701)に設けられた突出部702と、足板204に設けられた減速機嵌め込み用貫通孔402と、によってこの発明にかかる嵌合機構が実現される。
【0083】
この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117によれば、筐体201と足板204とが別体であるため、エスカレーター減速機117の設置対象とする構造躯体に応じた位置にトラス取付孔302を設けた足板204を用いることにより、構造躯体に対応させて筐体201(筐体本体701)の鋳型を変更したり構造躯体を加工したりすることなく、足板204の設計対応のみでエスカレーター減速機117を多様なエスカレーター100に設置することができる。
【0084】
これにより、エスカレーター減速機117の鋳造改造費用を抑えることができる。また、エスカレーター減速機117の設置作業にかかる作業者の労力・作業時間などのコストを抑え、汎用性の高いエスカレーター減速機117を提供することができる。また、エスカレーター減速機117のリニューアルにかかる期間の短縮を図ることにより、エスカレーター100の利用者やエスカレーター100の管理者の負担軽減を図ることができる。
【0085】
また、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117は、足板204の側面から減速機嵌め込み用貫通孔402の内壁面に貫通する止めネジ用貫通孔206と、止めネジ用貫通孔206に螺合される調整用止めネジ205と、を備えたことを特徴としている。
【0086】
この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117によれば、筐体201における突出部702を足板204における減速機嵌め込み用貫通孔402に嵌合させた状態で、止めネジ用貫通孔206に螺号させた調整用止めネジ205の位置を調整することにより、筐体201と足板204とのスイベル調整をおこなうことができる。
【0087】
これにより、筐体201と足板204とを別体とし、かつ、筐体201や足板204を鋳造によって形成する場合の公差を見込んで減速機嵌め込み用貫通孔402を尤度のある大きさとした場合にも、エスカレーター減速機117の設置精度を確保することができる。
【0088】
また、この発明にかかる実施の形態のエスカレーター減速機117によれば、止めネジ用貫通孔206に螺号させた調整用止めネジ205の位置を調整するだけで、筐体201と足板204とのスイベル調整をおこなうことができるので、エスカレーター減速機117の設置精度を容易に確保することができる。
【0089】
これにより、筐体201と足板204とを別体とした場合にも、エスカレーター減速機117の設置精度の調整にかかる作業者の作業負担の軽減や作業時間の短縮を図ることができる。そして、これによって、エスカレーター減速機117の鋳造改造費用を抑え、かつ、エスカレーター減速機117の設置作業にかかる作業者の労力・作業時間などのコストを抑え、汎用性の高いエスカレーター減速機117を提供することができる。
【0090】
この実施の形態のエスカレーター減速機117においては、足板204に、足板204を板厚方向に貫通する減速機嵌め込み用貫通孔402を備えた構成について説明したが、これに限るものではない。この発明にかかる減速機(エスカレーター減速機)においては、減速機嵌め込み用貫通孔402に代えて、突出部702の突出量と同等以上の深さの凹部を足場204に設けた構成としてもよい。
【0091】
また、この実施の形態のエスカレーター減速機117においては、筐体204に設けられた突出部702を、足板204に設けられた減速機嵌め込み用貫通孔402に嵌め込む構成について説明したが、これに限るものではない。この発明にかかるエスカレーター減速機117においては、足板204に突出部を設け、この足板204に設けられた突出部を嵌め込むことができる凹部を筐体201に設けた構成であってもよい。このような構成のエスカレーター減速機においては、足板204に設けられた突出部と、筐体201に設けられた凹部と、によってこの発明にかかる嵌合機構を実現することができる。
【0092】
また、足板204に設けられた突出部と、筐体201に設けられた凹部と、によってこの発明にかかる嵌合機構を実現する減速機(エスカレーター減速機)においては、足板204に設けた突出部の突出量と同等以上の深さの凹部を筐体201に設け、筐体201の側面から当該凹部の内壁面に貫通する調整用貫通孔(止めネジ用貫通孔206)を設け、当該調整用貫通孔に螺合される調整ネジ(調整用止めネジ205)によって筐体201と足板204とのスイベル調整をおこなうようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、この発明にかかる減速機は、エスカレーターに用いる減速機に有用であり、特に、エスカレーターのリニューアルに用いる減速機に適している。
【符号の説明】
【0094】
100 エスカレーター
117 エスカレーター減速機
201 筐体
204 足板
205 調整用止めネジ
206 止めネジ用貫通孔
301 ブレーキ軸
302 トラス取付孔
401 六角穴付きボルト
402 減速機嵌め込み用貫通孔
403 六角穴付きボルト用貫通孔
701 筐体本体
701a 底面
702 突出部
703 六角穴付きボルト用ネジ穴
【要約】
【課題】減速機の鋳造改造費用を抑え、減速機の設置作業にかかる作業者の労力・作業時間などのコストを抑え、汎用性の高い減速機を提供すること。
【解決手段】底面701aから突出する突出部702を備えた筐体201と、筐体201とは別体であって、突出部702と嵌合可能な減速機嵌め込み用貫通孔402を備え、筐体201と分離可能に連結される足板204と、筐体201と足板204とを連結する連結機構と、を備え、足板204に、設置対象とする構造躯体に応じた位置への固定に供される固定用ボルトが貫通可能なトラス取付孔を備えたエスカレーター減速機117を構成した。
【選択図】
図7