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  • 特許-ソーラー深緑ガラス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ソーラー深緑ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/02 20060101AFI20241203BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20241203BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C03C4/02
C03C3/087
B60J1/00 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023551974
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2022080070
(87)【国際公開番号】W WO2022188826
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】202110260465.0
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516151818
【氏名又は名称】フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シーメン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グォシュ
(72)【発明者】
【氏名】スー,ルビン
(72)【発明者】
【氏名】グァン,ジャングァン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チンリン
(72)【発明者】
【氏名】イェ,スーチュェン
(72)【発明者】
【氏名】リィエン,ヂャオフェン
(72)【発明者】
【氏名】リン,カイフ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,シャンジー
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-528865(JP,A)
【文献】特開2013-209224(JP,A)
【文献】特開2004-123495(JP,A)
【文献】特表2005-512932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基礎成分とガラス着色成分を含むソーラー深緑ガラスであって、前記ガラス着色成分は、重量百分率で、
0.8%~2.0%の全鉄(Feで表される)、0.01%~0.6%のTiO、0.001%~2.0%のCeO、5ppm~150ppmのCr、15ppm~60ppmのZrO、2ppm~1000ppmのCuO、5ppm~50ppmのSrO、80ppm~200ppmのBaO、5ppm~120ppmのCo、を含有し、
全鉄(Feで表される)とTiOの合計含有量は1.0%~2.0%であり、TiOとCeOの合計含有量は0.2%~2.1%であり、
前記ソーラー深緑ガラスは、厚さが1.6mm~2.1mmであり、日射透過率が65%以下であり、赤外線透過率が45%以下であり、紫外線透過率が35%以下であり、
前記ガラス基礎成分は、重量百分率で、63%~73%のSiO 、10%~18%のNa O、4%~14%のCaO、2%~6%のMgO、0.1%~2%のA1 、0.01%~1%のK O、を含有する、
ことを特徴とするソーラー深緑ガラス。
【請求項2】
CuOの含有量は100ppm~800ppmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項3】
Coの含有量は8ppm~110ppmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項4】
前記ソーラー深緑ガラスの可視光線透過率は70%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項5】
前記ソーラー深緑ガラスの酸化還元比は0.1~0.5である、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項6】
TiOの含有量が0.2%以上の場合に、酸化セリウムCeOの含有量に対するTiOの含有量の比は20以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項7】
TiOの含有量が0.1%未満の場合に、TiOの含有量に対するCeOの含有量の比は5~40である、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項8】
Crの含有量に対するCuOの含有量の比は5~60である、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項9】
SrOの含有量に対するBaOの含有量の比は5~40である、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項10】
ZrOの含有量に対するBaOの含有量の比は2~8である、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項11】
前記ソーラー深緑ガラスはNiOを含有しない、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項12】
前記ソーラー深緑ガラスはフロート法というガラス板成形法により成形されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項13】
前記ソーラー深緑ガラスは、1976 CIEの標準光源D65によって計算すると、Lの範囲は87.51~92.82の間であり、aの範囲は-9.62~-3.93の間であり、bの範囲は0~3.19の間である、という色特徴を有し、L、a及びbは前記ソーラー深緑ガラスの色指数である、
ことを特徴とする請求項1に記載のソーラー深緑ガラス。
【請求項14】
車両本体及び車窓を備える車両であって、
前記車窓は、前記車両本体に設けられており、請求項1~13のいずれか一項に記載のソーラー深緑ガラスを含む、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、発明の名称を「ソーラー深緑ガラス」とする、2021年3月10日に出願した中国特許出願第202110260465.0号の優先権を主張し、そのすべての内容が引用として本出願に組み込まれる。
【0002】
本出願は、フロートガラス(float glass)の分野に関し、特に、赤外線透過率及び紫外線透過率がより低いソーラー深緑ガラス(solar dark green glass)を提供する。
【背景技術】
【0003】
ガラス製品は、建築、自動車、日用、医療、化学、インテリア、電子、計器等の業界に広く利用されている。生産技術の進歩に伴い、ガラス製品の性能や艶に対する要求が向上し且つ応えられ、異なる色のガラスが中高級の、特殊な性能を有する多くの自動車に応用されつつある。ガラスの光学的変化は、ガラスに異なる色や性能を与える。自動車ガラスの応用において、深色のガラス製品は、自動車のサイドガラス、リアガラス、パノラマサンルーフ等として用いられることができ、それにより、車内空間のプラーバシーの保護、赤外線や紫外線の入射低減等の目的を達成し、車内をより快適にする。
【0004】
従来の自動車に採用されているグリーンガラスも、赤外線及び紫外線の透過を低減する目的をある程度に実現することができるが、通常では比較的に厚く、例えば、2.1mmより厚く、自動車の軽量化ニーズにより薄くした後により低い赤外線透過率及び紫外線透過率を有する要求に応えることができない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の技術的解決策は、ガラスの厚さを薄くするとともに、ガラスの日射透過率、赤外線透過率及び紫外線透過率を低くすることができるソーラー深緑ガラスを提供することである。
【0006】
上記技術的問題を解決するために、本発明は以下の技術的解決策を採用する。
【0007】
ソーラー深緑ガラスは、ガラス基礎成分とガラス着色成分を含む。ガラス着色成分は、重量百分率で、0.8%~2.0%の全鉄(Feで表される)、0.01%~0.6%のTiO、0.001%~2.0%のCeO、5ppm(parts per million)~150ppmのCr、15ppm~60ppmのZrO、2ppm~1000ppmのCuO、5ppm~50ppmのSrO、80ppm~200ppmのBaO、5ppm~120ppmのCo、を含有する。全鉄(Feで表される)とTiOの合計含有量は1.0%~2.0%であり、TiOとCeOの合計含有量は0.2%~2.1%である。ソーラー深緑ガラスは、厚さが1.6mm~2.1mmであり、日射透過率が65%以下であり、赤外線透過率が45%以下であり、紫外線透過率が35%以下である。
【0008】
さらに、CuOの含有量は100ppm~800ppmである。
【0009】
さらに、Coの含有量は8ppm~110ppmである。
【0010】
さらに、ガラス基礎成分は、重量百分率で、63%~73%のSiO、10%~18%のNaO、4%~14%のCaO、2%~6%のMgO、0.1%~2%のA1、0.01%~1%のKO、を含有する。
【0011】
さらに、ソーラー深緑ガラスは、日射透過率が50%以下であり、赤外線透過率が30%以下である。
【0012】
さらに、ソーラー深緑ガラスの可視光線透過率は70%以上である。
【0013】
さらに、ソーラー深緑ガラスの酸化還元比は0.1~0.5である。
【0014】
さらに、TiOの含有量が0.2%以上の場合に、酸化セリウムCeOの含有量に対するTiOの含有量の比は20以上である。
【0015】
さらに、TiOの含有量が0.2%以上の場合に、酸化セリウムCeOの含有量に対するTiOの含有量の比は20~28である。
【0016】
さらに、TiOの含有量が0.1%未満の場合に、TiOの含有量に対するCeOの含有量の比は5~40である。
【0017】
さらに、Crの含有量に対するCuOの含有量の比は5~60である。
【0018】
さらに、SrOの含有量に対するBaOの含有量の比は5~40である。
【0019】
さらに、ZrOの含有量に対するBaOの含有量の比は2~8である。
【0020】
さらに、ZrOの含有量は30ppm~40ppmである。
【0021】
さらに、ソーラー深緑ガラスはNiOを含有しない。
【0022】
さらに、ソーラー深緑ガラスはフロート法というガラス板成形法により成形されている。
【0023】
本発明の有利な効果は次のようである。本発明は、ガラス着色成分の割合を厳しく制御することで、1.6mm~2.1mm厚のソーラー深緑ガラスを簡便に、経済的に取得することができ、そのソーラー深緑ガラスは、日射透過率が65%以下であり、赤外線透過率が45%以下であり、紫外線透過率が35%以下である。それにより、ガラスの厚さを薄くするとともに、ガラスの日射透過率、赤外線透過率及び紫外線透過率を低くすることができる。
【0024】
本発明は、車両をさらに提供する。車両は車両本体及び車窓を備える。車窓は、車両本体に設けられており、本発明の実施例に記載のソーラー深緑ガラスを含む。
【0025】
本発明に係る車両は、本発明に係るソーラー深緑ガラスを装着することにより、車窓ガラスを薄くし、自動車の軽量化ニーズに応えることができるとともに、車窓がより低い赤外線透過率及び紫外線透過率の要求にも応えることができる。車窓ガラスの応用の中で、本発明のソーラー深緑ガラスは、自動車のサイドガラス、リアガラス、パノラマサンルーフ等として用いられることができ、それにより、車内空間のプラーバシーの保護、赤外線や紫外線の入射低減等の目的を達成し、車内をより快適にする。本発明における車両は、乗用車、多目的車(multi-Purpose Vehicles、MPV)、スポーツ用多目的車(Sport/Suburban Utility Vehicle、SUV)、オフロード車(Off-Road Vehicle、ORV)、ピックアップトラック、ワゴン車、バス、トラック等であってもよいが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本出願の実施形態における技術的解決策をより明確に説明するために、以下、本出願の実施形態に必要な図面を簡単に紹介する。
図1図1は、本出願の実施例に係る車両を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の技術的内容、達成される目的及び効果を詳細に説明するために、以下、実施形態と併せて説明する。
【0028】
本明細書に言及される「実施例」又は「実施形態」は、実施例又は実施形態と結びついて説明される特定の特徴、構造、又は特性は本出願の少なくとも1つの実施例に含まれることができることを意味する。明細書のいかなるところに現れる当該言葉は必ずしも同じ実施例を示すとは限らず、他の実施例と相互に排他的な独立した実施例又は候補の実施例でもない。当業者は、本明細書に記載される実施例が他の実施例と組み合わせることができることを明示的に又は暗示的に理解することができる。
【0029】
本発明は、ガラス基礎成分とガラス着色成分を含むソーラー深緑ガラスを提供する。
【0030】
ガラス基礎成分は、重量百分率で、63%~73%のSiO、10%~18%のNaO、4%~14%のCaO、2%~6%のMgO、0.1%~2%のA1、0.01%~1%のKO、を含有する。
【0031】
NaOの重量百分率は、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%であってもよいが、これらに限定されない。NaOは、ガラスの中において、ガラスの高温粘度を下げることができ、着色成分の構造変化閾値を下げ、ガラスの熱膨張係数を上げることもでき、その含有量が低すぎると、ガラス原料の溶融能力を低下させ、その含有量が高すぎると、ガラスの耐候性を低下させる。
【0032】
Oの重量百分率は、0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1%であってもよいが、これらに限定されない。KOとNaOはアルカリ金属酸化物に属し、KOの役割もNaOと類似しており、NaOとKOの合計含有量が低すぎると、ガラス原料の溶融能力を低下させる可能性があり、NaOとKOの合計含有量が高すぎると、ガラスの化学的安定性を低下させ、耐候性を低下させ、生産コストを増加させる。
【0033】
CaOの重量百分率は4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%であってもよいが、これらに限定されない。CaOはガラスの安定性及び耐失透性を向上させ、ガラスの高温粘度を下げることができる。CaOの含有量が高すぎると、ガラスは失透して安定性が低下する可能性があり、CaOの含有量が低すぎると、ガラス原料の溶融能力を低下させる可能性がある。
【0034】
MgOの重量百分率は、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%であってもよいが、これらに限定されない。MgOはガラスの化学的安定性を改善し、ガラス原料の溶融能力を向上させることができる。MgOの含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性を低下させ、ガラスは失透して安定性が低下する可能性があり、MgOの含有量が低すぎると、ガラス原料の溶融能力を低下させる可能性がある。
【0035】
Alの重量百分率は、0.1%、0.3%、0.5%、0.7%、0.9%、1.1%、1.3%、1.5%、1.7%、1.9%、2%であってもよいが、これらに限定されない。Alは、ガラスの中においてガラスの化学的安定性を向上させることができる。Alの含有量が低すぎると、ガラスの耐候性を低下させ、Alの含有量が高すぎると、結果としてガラス原料が溶融し難くなる。
【0036】
SiOはガラスの主成分であり、比較的安定な化学的性質を有し、従って、ガラスは優れた耐候性を有する。本発明において、SiOの重量百分率は、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%であってもよいが、これらに限定されない。本出願におけるSiOの含有量が低すぎると、ガラスの耐候性を低下させ、結果としてガラス原料が溶融し難くなる。
【0037】
ガラス着色成分は、重量百分率で、0.8%~2.0%の全鉄(Feで表される)、0.01%~0.6%のTiO、0.001%~2.0%のCeO、5ppm~150ppmのCr、15ppm~60ppmのZrO、2ppm~1000ppmのCuO、5ppm~50ppmのSrO、80ppm~200ppmのBaO、5ppm~120ppmのCo、を含有する。
【0038】
全鉄(Feで表される)の重量百分率は、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%であってもよいが、これらに限定されない。全鉄(Feで表される)は主着色剤として、ガラスの緑色着色や透過率調整に用いられ、二価鉄(Fe2+)や三価鉄(Fe3+)等の形で存在する。二価鉄(Fe2+)は赤外線吸収成分とされることができ、三価鉄(Fe3+)は紫外線吸収成分とされることができる。全鉄(Feで表される)の含有量が低すぎると、赤外線吸収性能及び紫外線吸収性能を低下させてしまう。全鉄(Feで表される)の含有量が高すぎると、ガラスの可視光線透過率の低下を招く。本発明に係る全鉄(Feで表される)は、ガラスに存在する全ての鉄酸化物を表し、二価鉄(例えば、FeO)も、三価鉄(例えば、Fe)も含む。これは本分野の汎用的な表示方法であり、ガラス中の鉄酸化物がすべて酸化鉄(III)Feであることを意味するものではない。
【0039】
本発明において、Feで表される全鉄の重量含有量に対するFeOで表される二価鉄の重量含有量の比を酸化還元比として定義し、紫外線透過率及び赤外線透過率を調整するために用いられる。ソーラー深緑ガラスの酸化還元比は0.1~0.5であり、具体的には0.17、0.19、0.23、0.24、0.25、0.31、0.37、0.46、0.49等が挙げられる。酸化還元比が低すぎると、ガラスにおける二価鉄の含有量が少なすぎることを示し、結果としてガラスの赤外線吸収能力が弱くなる。酸化還元比が高すぎると、ガラスにおける二価鉄の含有量が多すぎることを示し、結果としてガラス原料が溶融し難くなり、ガラスが青味を帯びる。
【0040】
酸化チタンTiOの重量百分率は、0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%であってもよいが、これらに限定されない。酸化チタンTiOは、ガラスが紫外線を遮断する性能を有することを可能にし、また、黄色着色剤とされることができる。選択可能に、全鉄(Feで表される)とTiOとの合計含有量は1.0~2.0%であり、全鉄(Feで表される)とTiOとの合計含有量は1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%であってもよいが、これらに限定されない。全鉄(Feで表される)とTiOの合計含有量が低すぎると、ガラスに対する有利な効果が明らかではなくなり、全鉄(Feで表される)とTiOの合計含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性を低下させる。
【0041】
酸化セリウムCeOの重量百分率は、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%であってもよいが、これらに限定されない。酸化セリウムCeOは、ガラスが紫外線を遮断する性能を有することを可能にし、また、黄色着色剤とされることができる。CeOの含有量が低すぎると、ガラスに対する有利な効果は明らかではなくなり、CeOの含有量が高すぎると、ガラスの生産コストを大幅に向上させ、生産効率を低下させ、ガラスが黄色味を帯びるようになる。選択可能に、酸化チタンTiOと酸化セリウムCeOとの合計含有量は0.2%~2.1%である。本出願において、酸化チタンTiOと酸化セリウムCeOとの合計含有量は、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%であってもよいが、これらに限定されない。酸化チタンTiOと酸化セリウムCeOとの合計含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性を低下させ、酸化チタンTiOと酸化セリウムCeOとの合計含有量が低すぎると、ガラスに対する有利な効果が明らかではなくなる。
【0042】
選択可能に、酸化チタンTiOの含有量が0.2%以上である場合、製造の利便性及び経済性の観点から考慮すれば、酸化セリウムCeOの含有量に対する酸化チタンTiOの含有量の比が20以上であり、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40等が挙げられ、より好ましくは20~28である。酸化チタンTiOの含有量が0.2%以上であると、酸化チタンTiOの含有量は酸化セリウムCeOの含有量よりも大きく、この場合、酸化セリウムCeOの含有量に対する酸化チタンTiOの含有量の比が20未満であると、ガラスの紫外線遮断性能を低下させてしまう。
【0043】
選択可能に、酸化チタンTiOの含有量が0.1%未満である場合、製造の利便性及び経済性の観点から考慮すれば、酸化チタンTiOの含有量に対する酸化セリウムCeOの含有量の比は5~40であり、例えば5、6、7、8、10、15、20、25、30、35、40等が挙げられる。酸化チタンTiOの含有量が0.1%未満である場合、酸化チタンTiOの含有量は酸化セリウムCeOの含有量よりも小さく、この場合、酸化チタンTiOの含有量に対する酸化セリウムCeOの含有量の比が5未満であると、ガラスの紫外線遮断性能がデザインの要求に応えることができなく、酸化チタンTiOの含有量に対する酸化セリウムCeOの含有量の比が40を超えると、ガラスが失透しやすくなり、さらにセラミックス化しやすくなる。
【0044】
酸化クロムCrの重量百分率は、5ppm、10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、110ppm、120ppm、130ppm、140ppm、150ppmであってもよいが、これらに限定されない。酸化クロムCrは、ガラスが紫外線を遮断する性能を有することを可能にするとともに、黄緑色着色剤、エメラルド着色剤とされることができる。
【0045】
酸化銅CuOの重量百分率は、2ppm、10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、200ppm、300ppm、400ppm、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppmであってもよいが、これらに限定されない。酸化銅CuOは、青緑色着色剤とされることができる。選択可能に、酸化銅のCuOの含有量は、100ppm~800ppmである。製造の利便性及び経済性の観点から考慮すれば、選択可能に、酸化クロムCrの含有量に対する酸化銅のCuOの含有量の比は5~60であり、例えば5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60等が挙げられる。
【0046】
酸化コバルトCoの重量百分率は、5ppm、10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、110ppm、120ppmであってもよいが、これらに限定されない。酸化コバルトCoは、ガラスの淡青色着色剤として用いられ、ガラスの色の調整に用いられることができ、それ自体にもある程度の赤外線吸収機能がある。Coの含有量が低すぎると、ガラスに対する有利な効果は明らかではなくなり、Coの含有量が高すぎると、結果としてガラスの耐失透性が弱くなる。選択可能に、酸化コバルトCoの含有量は、8ppm~110ppmである。
【0047】
酸化ジルコニウムZrOの重量百分率は15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm、45ppm、50ppm、55ppm、60ppmであってもよいが、これらに限定されない。酸化バリウムBaOの重量百分率は80ppm、90ppm、100ppm、110ppm、120ppm、130ppm、140ppm、150ppm、160ppm、170ppm、180ppm、190ppm、200ppmであってもよいが、これらに限定されない。酸化ストロンチウムSrOの重量百分率は、5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm、45ppm、50ppmであってもよいが、これらに限定されない。適量の酸化ジルコニウムZrO、酸化バリウムBaO及び酸化ストロンチウムSrOは、ガラスにおいて、ガラスの化学的安定性を改善し、ガラスの硬度を向上させることができる。用いられた酸化ジルコニウムZrO、酸化バリウムBaO及び酸化ストロンチウムSrOの含有量が高すぎると、ガラスの着色成分を固定する能力が低減される。用いられた酸化ジルコニウムZrO、酸化バリウムBaO及び酸化ストロンチウムSrOの含有量が低すぎると、ガラスへの有利な効果が明らかではなくなる。製造の利便性及び経済性の観点から考慮すれば、選択可能に、酸化ストロンチウムSrOの含有量に対する酸化バリウムBaOの含有量の比は、5~40であることが好ましく、例えば、5.4、6、7、8、8.2、8.3、8.7、9、9.1、9.6、9.9、10、11、12、13、14.9等が挙げられる。選択可能に、酸化ジルコニウムZrOの含有量に対する酸化バリウムBaOの含有量の比は2~8であり、例えば2、2.9、3、3.4、3.5、3.8、3.9、4.0、4.2、5、6、7、8が挙げられる。選択可能に、酸化ジルコニウムZrOの含有量は30ppm~40ppmである。
【0048】
製造の利便性及び経済性の観点から考慮すれば、本発明に係るソーラー深緑ガラスは酸化ニッケルNiOを含まない。通常、酸化ニッケルNiOはガラスの可視光線透過率を低下させ、赤外線透過率及び紫外線透過率を低下させることなく、また、ガラスを褐色化しやすく、フロートバスの中で溶融錫と反応してしまい、結果として所望の色調のガラスが得られない可能性がある。
【0049】
本発明は、ガラス着色成分の割合を厳しく制御することで、1.6mm~2.1mm厚のソーラー深緑ガラスを得ることができる。ソーラー深緑ガラスの厚さは、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mmであってもよいが、これらに限定されない。ソーラー深緑ガラスは、日射透過率が65%以下であり、赤外線透過率が45%以下であり、紫外線透過率が35%以下である。いくつかの実施例において、上記のソーラー深緑ガラスは、日射透過率が50%以下であり、赤外線透過率が30%以下である。日射透過率は、41%、43%、45%、47%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%であってもよいが、これらに限定されない。赤外線透過率は、21%、23%、25%、27%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%であってもよいが、これらに限定されない。紫外線透過率は、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%であってもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、ソーラー深緑ガラスの可視光線透過率は70%以上である。可視光線透過率は、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%であってもよいが、これらに限定されない。本発明は、ガラスの厚さを薄くするとともに、ガラスの日射透過率、赤外線透過率及び紫外線透過率を低くすることができる。
【0050】
図1に示すように、本発明は、車両100をさらに提供する。車両100は車両本体110及び車窓120を備える。車窓120は、車両本体110に設けられており、本発明の実施例に記載のソーラー深緑ガラス121を含む。
【0051】
本発明に係る車両100は、本発明に係るソーラー深緑ガラス121を装着することにより、ガラスを薄くし、自動車の軽量化ニーズに応えることができるとともに、車窓120がより低い赤外線透過率及び紫外線透過率の要求にも応えることができる。車窓120のガラスの応用の中で、本発明のソーラー深緑ガラス121は、自動車のサイドガラス、リアガラス、パノラマサンルーフ等として用いられることができ、それにより、車内空間のプラーバシーの保護、赤外線や紫外線の入射低減等の目的を達成し、車内をより快適にする。本発明における車両100は、乗用車、多目的車(multi-Purpose Vehicles、MPV)、スポーツ用多目的車(Sport/Suburban Utility Vehicle、SUV)、オフロード車(Off-Road Vehicle、ORV)、ピックアップトラック、ワゴン車、バス、トラック等であってもよいが、これらに制限されない。
【0052】
本出願において、ソーラー深緑ガラスは、モノリシックガラスとして用いられてもよく、合わせガラス、中空ガラス、真空ガラスに製造されて用いられてもよい。
【実施例
【0053】
本発明において、珪砂、ソーダ、ドロマイト、石灰石等の基本成分原料と、鉄粉、酸化チタン粉末等の着色成分原料と、還元剤、清澄剤等を混合してガラス原料を調製する。ガラス原料を溶融窯内に搬送する。溶融窯を1400℃~1600℃(例えば、約1500℃)に加熱して、ガラス原料を溶融させて溶融ガラス液を取得し、フロート法等のガラス板成形法によって所定の厚さを有するガラス板に成形する。ガラス板を焼鈍冷却後に切断して実施例1~11のガラス板を得て成分分析を行う。各実施例の成分分析結果を表1及び表2に示す。
【表1】

【表2】
【0054】
実施例1~11のガラス板に対して、以下の方法でテストを行い、結果を表3に記録する。
【0055】
本発明では、国際照明委員会(CIE)のA標準照明を用い、380~780nmの範囲で10nmの間隔で可視光線透過率(Lta)を測定し、300~380nmの波長範囲で5nmの間隔で紫外線透過率(Tuv)を測定し、780~2500nmの範囲で50nmの間隔で赤外線透過率(Tnir)を測定する。総日射透過率(Te)が計算値を示す。この計算値は、300~2500nmの波長範囲で50nmの間隔で測定した光線透過率の値を基に計算されたものであり、Lta、Tuv、Tnir及びTeは、ISO 9050標準に基づいて計算されたものであり、カラーインデックスL、a、bは1976 CIE、D65照明光源の規格に準拠して計算されたものである。
【表3】
【0056】
以上の表から分かるように、本発明により製造されたソーラー深緑ガラスは、その日射透過率がほとんど65%以下であり、さらには50%以下であり、赤外線透過率が45%以下であり、さらには30%以下であり、さらには20%以下であり、紫外線透過率が35%以下であり、さらには30%以下、さらには25%以下であり、可視光線透過率が70%以上であり、さらにはさらには80%以上である。
【0057】
上表からもわかるように、ソーラー深緑ガラスの色特徴は以下の通りである。1976 CIEの標準光源D65によって計算すると、L の範囲は87.51~92.82の間であり、a の範囲は-9.62~-3.93の間であり、b の範囲は0~3.19の間であり、L 、a 及びb はソーラー深緑ガラスの色指数である。CIE LAB色空間(L とも呼ばれ、1976年にCIEが定義した色空間)によると、色は3つの値で表される。L は知覚的な明度を表し、a は赤と緑という人間視覚における2つの独特な色を表し、b は青と黄という人間視覚における2つの独特な色を表す。具体的には、L は0から100に対応する黒から白までの明度を表し、a とb は特定の数値制限のない色度を表す。負のa は緑に対応し、正のa は赤に対応し、負のb は青に対応し、正のb は黄に対応する。
【0058】
以上述べたのは、本発明の実施例にすぎず、それをもって本発明の技術的範囲を制限するものではなく、本発明の明細書による均等変換や関連する技術分野への直接的又は間接的な運用は全て、本発明の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
100…車両
110…車両本体
120…車窓
121…ソーラー深緑ガラス
図1