(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】可動リップ付きルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 91/00 20060101AFI20241203BHJP
A01K 85/16 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A01K91/00 B
A01K85/16
(21)【出願番号】P 2024081296
(22)【出願日】2024-04-26
【審査請求日】2024-04-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520086184
【氏名又は名称】織野 泉
(72)【発明者】
【氏名】織野 泉
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08438776(US,B2)
【文献】米国特許第03999324(US,A)
【文献】米国特許第04215507(US,A)
【文献】米国特許第06101758(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0269112(US,A1)
【文献】特開2001-258429(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211651(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 91/00
A01K 85/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルアーにおける、糸で曳く側の端部近傍に、一方の端部が前記ルアー本体内に収納され、他方の端部が前記ルアー本体の外部に突出した状態で、板状のリップが配され、前記リップの前記ルアー本体から突出した部分の長さの調整機構を有することを特徴とするルアー
において、前記調整機構は、前記ルアー本体における、前記リップが収納されている部分に、回転可能に配されてなる雄ネジまたは歯車と、前記リップの、前記雄ネジまたは前記歯車が配された側の面に、前記雄ネジまたは前記歯車のピッチと同じ間隔で設けられた、前記雄ネジのネジ山または前記歯車の歯が篏合する形状の、複数の溝を有し、前記溝と、前記雄ネジのネジ山または前記歯車の歯が、係合した状態で配されてなる構成を有し、前記リップにおける、前記溝が配されている面の反対側の表面には、前記反対側の表面から突出した、ストッパーが設けられ、前記ルアー本体の、前記リップにおける前記反対側の表面と接する部分には、前記ルアーの長さ方向に、前記ストッパーが摺動可能に篏合するガイド溝が設けられてなることを特徴とするルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りに用いられるルアーに関し、特に、ルアーの水中における運動を制御するためのリップを具備するルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣りの対象となる魚には、小魚などを餌として捕食するものがある。ルアーは、水中に投入された後、連結される釣り糸の操作により、餌となる小魚などと同じように動かされることで、魚がルアーを餌と勘違いして食いつくことを目的として使用され、その動作の制御のため、リップと称される板状の部品が取り付けられることがある。
【0003】
従来のリップ付ルアーには投入された後に浮力をもって沈まないフローティングのものがあり、リップが水の抵抗を受け潜航するものであるが、ルアーの潜航深度はリールの回転速度と回転数を調整し、ルアーを潜航させながら泳がせ、リールの回転を止めてルアーを浮上させるアクションを数回繰り返していた。ルアーを泳がせる深度が深い場合は、ルアーをより深く潜航させることが必要で、そのためにはリールの回転速度を早く、回転数を多くする事が求められていた。しかし、ルアー本体の重量が軽いため飛距離が限られ、リールの回転数を多くした場合は、より多くの糸を巻き取ることになり、そのアクションの繰り返しの回数が少なくなり、魚にアプローチする機会を損ねてしまうことがあった。
【0004】
これに対処するために、リール回転速度に依存することなく、ルアーの潜航深度を増加するには、リップのルアー本体から突出する長さを延長させて、水の抵抗を多くすることでルアーの潜航深度をより深くする方法がある。このような観点で、従来技術を概観すると、特許文献1には、ルアー本体に装着されるリップ本体が着脱自在に構成されていることを特徴とする着脱自在なリップ交換ルアーが開示されている。
【0005】
しかし、ここに開示されているリップ交換ルアーは、多数のリップを準備し、状況に応じて使い分けることが必要となり、コストの観点から改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献2には、ルアー本体と、ルアー本体の先端部に取り付けられたリップを有するルアーにおいて、リップがゴム状弾性を有する素材で構成され且つリールのリトリーブ速度によって前記リップが水圧で弾性変形自在な柔軟性を有することを特徴とする、ルアーが公開され、リールのリトリーブ速度によって、リップが水中で弾性変形し、その変形状態によって当該ルアーの水中におけるS字系挙動等の度合いを適宜変更可能としている。しかし、ここに開示されているルアーの機能は、リップに用いる材質への依存性が大きく、使用条件が限定されると考えられる。
【先行技術技術】
【特許文献】
【0007】
【文献】登録実用新案第3029154号公報
【文献】特開2019-187248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の課題は、ルアー本体に取り付けられるリップの長さを、一定範囲で任意の長さに調整することが可能なルアーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題の解決のため、ルアー本体へのリップの接合構造を、鋭意検討した結果、なされたものである。
【0010】
上記課題を解決するための、本発明の一態様に係るルアーは、ルアーにおける、糸で曳く側の端部近傍に、一方の端部が前記ルアー本体内に収納され、他方の端部が前記ルアー本体の外部に突出した状態で、板状のリップが配され、前記リップの前記ルアー本体から突出した部分の長さの調整機構を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係るルアーは、前記調整機構が、前記ルアー本体における、前記リップが収納されている部分に、回転可能に配されてなる雄ネジまたは歯車と、前記リップの、前記雄ネジまたは前記歯車が配された側の面に、前記雄ネジまたは前記歯車のピッチと同じ間隔で設けられた、前記雄ネジのネジ山または前記歯車の歯が篏合する形状の、複数の溝を有し、前記溝と、前記雄ネジのネジ山または前記歯車の歯が、係合した状態で配されてなる構成を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係るルアーは、前記リップにおける、前記溝が配されている面の反対側の表面には、前記反対側の表面から突出した、ストッパーが設けられ、前記ルアー本体の、前記リップにおける前記反対側の表面と接する部分には、前記ルアーの長さ方向に、前記ストッパーが摺動可能に篏合するガイド溝が設けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るルアーは、リップのルアー本体の外部に突出した部分の長さが、ルアー本体に内蔵される調整機構により、一定範囲内で任意に調整できるので、ルアー本体のサイズを変えることなく、しかも、従来のルアー本体の動きを損なわずに、ルアー本体の潜航深度が調整可能で、ルアー本体の潜航深度を深くするために、従来のように、リール回転速度を早く、回転数を多くする必要がなく、ルアーを早く深く潜航させ糸の残りを長く保つことができることから、ルアーの飛距離は同じでも、水中における、そのアクション回数を多くすることが可能となる。
【0014】
また、このルアーの主な使用場所として想定されるのは、海岸や河口周辺であるが、波や風の状況で、海底は一定の形状を維持しておらず、日々変化し海面から海底までの深度も変化することを踏まえると、潜航深度をリップ長で調整できる本発明は、海底形状の変化に対し、ルアー本体の潜航深度を調整することで、柔軟に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】 本発明に係るルアーの一例を示す図、
図1(a)は側面図、
図1(b)は平面図
【
図2】 本発明に係るルアーの一例の断面図で、
図2(a)は、
図1(b)のAA断面の一部を拡大した図、
図2(b)は、
図1(a)のBB断面
【
図3】 本発明に係るルアーに用いられる雄ネジ3aの一例を示す図
【
図4】 本発明に係るルアーに用いられるリップ2の一例を示す図で、
図4(a)は平面図、
図4(b)は側面図、図(c)は底面図
【
図5】 本発明に係るルアーに用いられるリップ2の溝2aと雄ネジ3aのネジ山が係合した状態を示す図
【
図6】 本発明に係るルアーのリップ2の長さを調整した状態の一例を示す図
【
図7】 本発明に係るルアーで、リップ2の長さ調整に、歯車を用いる構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、具体的な図を参照しながら、本発明に係るルアーの実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るルアーの一例を示す図で、
図1(a)は側面図、
図1(b)は平面図である。
図1において、1は、ルアー本体、2は、リップ、3はリップ突出部長さ調整機構、4aは、釣り糸接合環、4b、4cは、釣り針接合環である。
【0018】
図2は、本発明に係るルアーの一例の断面図で、
図2(a)は、
図1(b)のAA断面の一部を拡大した図、
図2(b)は、
図1(a)のBB断面である。ここに示した例は、ルアー本体1の釣り糸接合環4aの近傍に、ルアー本体1と、リップ2の厚み分の空隙を隔てて設けられた、リップ突出部長さ調整機構収納筐体1aの内部に、回転可能な状態で、雄ネジ3aが、ルアー本体1の長さ方向に平行に配されていて、リップ突出部長さ調整機構収納筐体1aの外部に露出した、雄ネジヘッド3bの六角穴にレンチを係合して、回転できるように構成されている。
【0014】
リップ2の、図における上側の面には、雄ネジ3aのピッチと同じ間隔で、雄ネジ3aのネジ山が篏合可能な複数の溝2aが設けられ、雄ネジ3aのネジ山と溝2aを係合させた状態で、雄ネジ3aを回転させることにより、リップ2を、図における左右の方向に移動させることが可能であり、リップ2のルアー本体1から突出する部分の長さを一定の範囲内で、任意に調整できる。
【0015】
また、リップ2の図のおける下側には、下方に突出したストッパー2bが設けられ、ルアー本体1のストッパー2bに対向する部分の表面には、ストッパー2bが摺動可能なガイド溝1bが設けられ、ストッパー2bの可動範囲、つまりリップ2の可動範囲を限定し、リップ2がルアー本体から脱落するのを防止し得る構成となっている。
【0016】
図3は、本発明に係るルアーに用いられる雄ネジ3aの一例を示す図である。ここに示した例では、ネジ山の形状が、角ネジとなっているが、台形ネジ、丸ネジなどを用いることが可能である。また、雄ネジヘッド3bとして六角穴を有するものを採用しているが、マイナス溝、プラス溝を用いることも可能である。ただし、耐久性を考慮すると六角穴が望ましい。
【0017】
図4は、本発明に係るルアーに用いられるリップ2の一例を示す図で、
図4(a)は平面図、
図4(b)は側面図、図(c)は底面図である。ここに示したように、リップ2全体の形状には、特徴はないが、一方の面には、溝2aが等間隔で並べられた状態で設けられ、他方の面には、ストッパー2bが設けられている。また、
図5は、本発明に係るルアーに用いられるリップ2の溝2aと雄ネジ3aのネジ山が係合した状態を示す図である。リップ2と雄ネジ3aをこのように配することで、リップ2がルアー本体1から突出する長さを一定範囲で、任意に設定できることは前述のとおりである。
【0018】
図6は、本発明に係るルアーのリップ2の位置を調整した状態の一例を示す図で、
図1(a)はリップ2をルアー本体1内に収納した状態、
図6(b)はリップ2をルアー本体1の外部に突出させた状態を示す。ここに示したようにリップ2の移動距離は、ガイド溝1bの長さによって限定される。
【0019】
図7は、本発明に係るルアーで、リップ2の駆動と位置調整を、雄ネジではなく歯車を用いて行う構成を示す図である。このように本発明においては、リップ突出部長さ調整機構収納筐体に歯車5を回転可能に配し、リップ2の一方の面に、歯車5の歯が篏合する形状の溝を、歯車の歯のピッチと同じ間隔で設け、歯車5を外部から回転させ、リップ2の、ルアー本体1から突出する部分の長さを調整可能である。
【0020】
以上に説明したように、本発明によれば、リップを備えたルアーにおいて、リップのルアー本体から突出した部分の長さを、簡単に調整できる。これによって、釣りを行う人の意図に従って、水中におけるルアーの動きを多様にすることが可能となり、従来のルアーよりも、魚の食いつき機会を増加できる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・ルアー本体 1a・・・リップ突出部長さ調整機構収納筐体
1b・・・ガイド溝
2・・・リップ 2a・・・溝 2b・・・ストッパー
3・・・リップ突出部長さ調整機構
3a・・・雄ネジ 3b・・・雄ネジヘッド
4a・・・釣り糸接合環 4b,4c・・・釣り針接合環
5・・・歯車
【要約】
【課題】 ルアー本体に取り付けられるリップの長さを、一定範囲で任意の長さに調整することが可能なルアーを提供する。
【解決手段】 ルアー本体の、釣り糸が接合される部分の近傍に、外部から回転可能に配された雄ネジまたは歯車を配し、雄ネジまたは歯車のピッチと同じ間隔で設けられた溝を表面に有し、溝と雄ネジまたは歯車が係合した状態の板状のリップを、少なくとも一部が、ルアー本体の外部に突出した状態で、ルアー本体内に収納した構造とする。ルアーをこのような構成とし、雄ネジまたは歯車を回転させることにより、リップのルアー本体から突出した部分の長さが調整可能となり、水中におけるルアーの動きの多様性を向上できる。
【選択図】
図1