(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】IL-4Rアンタゴニストを投与することによるワクチンの有効性を増強する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/39 20060101AFI20241203BHJP
A61K 39/10 20060101ALI20241203BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241203BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K39/10
A61P11/00
A61P37/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018543637
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(86)【国際出願番号】 US2017018487
(87)【国際公開番号】W WO2017143270
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-02-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-26
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】リサ・パーセル・ンガンボ
(72)【発明者】
【氏名】ニール・グラハム
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エヴァンス
【合議体】
【審判長】吉田 佳代子
【審判官】岡山 太一郎
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-534548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
百日咳に対するワクチン接種の方法において使用するための、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む医薬組成物であって、前記方法は、
前記IL-4Rアンタゴニスト
を含む前記医薬組成物を、無細胞百日咳ワクチンと併用して、それを必要とする対象に投与することを含み、
前記IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであり、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)ならびに3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、
前記HCDR1が、配列番号3のアミノ酸配列を含み;前記HCDR2が、配列番号4のアミノ酸配列を含み;前記HCDR3が、配列番号5のアミノ酸配列を含み;
前記LCDR1が、配列番号6のアミノ酸配列を含み;前記LCDR2が、配列番号7のアミノ酸配列を含み;前記LCDR3が、配列番号8のアミノ酸配列を含む、
上記医薬組成物。
【請求項2】
(a)前記IL-4Rアンタゴニストが、前記対象に、前記ワクチンの前、またはそれと同時に単回投与として投与される;または
(b)1または複数の前記IL-4Rアンタゴニストの用量がワクチンの前に投与される;または、
(c)前記IL-4Rアンタゴニストの1または複数の用量がワクチンの前に投与され、続いて前記IL-4Rアンタゴニストの用量がワクチンと同時に皮下投与される;または、
(d)前記IL-4Rアンタゴニストの1または複数の用量がワクチンの前に投与され、続いて前記IL-4Rアンタゴニストの用量がワクチンと同時に皮下投与され、続いてワクチンの後に前記IL-4Rアンタゴニストの1または複数の用量が投与される、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(a)前記IL-4Rアンタゴニストの各用量が、前記対象の体重1kg当たり約1~50mgの用量で皮下投与される;または、
(b)IL-4Rアンタゴニストの各用量は、10~600mgの用量で皮下投与される、
請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記IL-4Rアンタゴニストが
(a)50mg、100mg、200mg、または300mgの用量で;または
(b)1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回、または、
(c)600mgの開始用量とそれに続く、各二次用量が300mgを含む1回以上の二次用量で、または
(d)400mgの開始用量とそれに続く、各二次用量が200mgを含む1回以上の二次用量で、
投与される請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ワクチンが、開始用量で投与され、続いて、1または複数のその後の(追加免疫)用量が投与され、各その後の(追加免疫)用量が、直前の用量の2~24カ月後に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
(a)対象が18歳以下の子供または青年である、または
(b)対象は50歳以上の成人である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記IL-4Rアンタゴニストが
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む抗体またはその抗原結合フラグメント;
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体またはその抗原結合フラグメント;または
(c)デュピルマブまたはその生物学的同等物、
である請求項1~
6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
(a)前記医薬組成物は、シリンジに含まれる;または
(b)前記医薬組成物は、ペン型送達装置に含まれる;または
(c)前記医薬組成物は、自動注射送達装置に含まれる、
請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ペン型送達装置は、予め充填したペン型送達装置である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
無細胞百日咳抗原を含むワクチン成分、
および
前記ワクチン成分に対する、対象のTヘルパー1(Th1)型抗原特異的IgGアイソタイプ抗体を増加させるアジュバントを含む、ワクチン組成物であって、
アジュバントはIL-4Rアンタゴニストを含み、
前記IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rαに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであり、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含み、
前記HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号4のアミノ
酸配列を含み、HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含み、
前記IL-4Rアンタゴニストは10~600mgの量で存在する、
上記ワクチン組成物。
【請求項11】
前記
無細胞百日咳抗原は、不活化百日咳毒素、線維状赤血球凝集素、パータクチン、2型線毛、
または3型線
毛を含む、請求項
10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
前記
無細胞百日咳抗原は、不活化百日咳毒素を含む、請求項
10に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
第2のアジュバントをさらに含む、請求項
10~12のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
第2のアジュバントがミョウバンである、請求項
13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
前記IL-4Rアンタゴニストが:
(a)重鎖可変領域(HCVR)が、配列番号1のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域(LCVR)が、配列番号2のアミノ酸配列を含む;
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント;または
(c)デュピルマブまたはその生物学的均等物;
である、請求項
10~14のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
(a)前記
ワクチン組成物は、シリンジに含まれる;または
(b)前記
ワクチン組成物は、ペン型送達装置に含まれる;または
(c)前記
ワクチン組成物は、自動注射送達装置に含まれる、
請求項
10~15のいずれか1項に記載
のワクチン組成物。
【請求項17】
前記ペン型送達装置は、予め充填したペン型送達装置である、請求項
16に記載
のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、2017年2月10日に作成され、15,276バイトを含む、ファイル10209WO01-Sequence.txtとしてコンピューター可読フォーマットで提出された配列表を参照により組み込む。
【0002】
本発明は、ワクチンの有効性を増大させる方法に関する。より具体的には、本発明は、ワクチンとの併用でのインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストのそれを必要とする対象における投与に関する。
【背景技術】
【0003】
ワクチンは、疾患および感染性疾患に起因した死の予防において最も成功した公衆衛生介入の1つである。ワクチンは、典型的には、疾患の原因となる因子、疾患を引き起こすことなく(もしくは幾つかの場合では、軽度の疾患を引き起こす)抗原として作用するその産物またはその代用物を含有する。例えば、微生物病原体に対する幾つかの現行のワクチンは、弱毒生もしくは非病原性バリアント株の微生物、または殺傷もしくはそうでなければ不活化された生物からなる。他のワクチンは、表面炭水化物のような病原体溶解物、ときに他の分子に融合している組換え病原体由来タンパク質、もしくは病原体由来の抗原を産生する複製ウイルスのより精製された、またはより少なく精製された成分を利用する。ワクチンは、抗原特異的ナイーブリンパ球の活性化をもたらし、次に、抗体を分泌するB細胞もしくは抗原特異的エフェクターおよびメモリーT細胞または両方を生じる内部免疫応答を誘導することにより、機能する。このアプローチは、同じ抗原物質への新たな曝露により時々追加免疫化され得る、長続きする防御免疫をもたらすことができる。
【0004】
ワクチンは、一般に、抗原特異的免疫応答を加速し、延長し、および/または増強するのを助けるアジュバントを含有する。幾つかの一般に使用されるアジュバントは、アルミニウム塩(例えば、ミョウバン、リン酸アルミニウム、および水酸化アルミニウム)、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、Ribiアジュバント、スクアレン、ならびにMF59(登録商標)を含むが、これらに限定されない。
【0005】
どんな有害な副作用(例えば、アレルギー反応)も起こさないで、有効性を増強し、病原体曝露および負荷に対してより永続的な保護をもたらす、安全かつ有効なワクチンならびに/または改善されたワクチン接種ストラテジーが、依然として必要なままである。
【発明の概要】
【0006】
本発明のある種の態様によると、対象においてワクチンの有効性および/または安全性を増強する方法が提供される。対象においてワクチンに対する免疫応答を増大させる方法またはワクチンの防御免疫の持続時間を増大させる方法もまた含まれる。ある種の実施形態において、本発明は、対象において疾患に対する保護を増大させる方法、ならびに/または感染および前述の疾患の感染していない対象への伝播を予防する方法、または疾患の別の疾患への進行を予防する方法を提供する。これらの態様による方法は、それを必要とする対象にインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストをワクチンと併用して投与することを含む。ある種の実施形態において、方法は、微生物感染症に感染しやすい対象を選択すること、およびそれを必要とする対象にインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを前述の微生物感染症に対するワクチンと併用して投与することを含む。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、それを必要とする対象においてワクチンの前、後、またはそれと同時に投与される。
【0007】
ある種の態様によると、本発明は、それを必要とする対象においてワクチンの有害な副作用(例えば、アレルギー反応)を予防するか、処置するか、低減するか、または改善する方法を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、それを必要とする対象においてワクチンにより誘発されるTヘルパー2(Th2)応答を予防するか、低減するか、または改善する方法を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、それを必要とする対象においてワクチンにより誘導されるIgEを低減する方法を提供する。これらの態様による方法は、IL-4Rアンタゴニストをワクチンとの併用でそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0008】
ある種の態様によると、本発明は、IL-4Rアンタゴニストを前述のワクチンと併用してそれを必要とする対象に投与することを含む、ワクチン用量の総数を低減する方法を提供する。ある種の実施形態において、ワクチン用量の総数は、IL-4Rアンタゴニストを投与されない対象と比較して、1または複数用量、例えば、1用量、2用量、もしくはそれ以上低減される。
【0009】
ある種の態様によると、本発明は、ワクチンへの患者の応答と干渉することなく、患者においてアトピー性皮膚炎を処置する方法を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、ワクチンへの患者の応答を抑制することなく、患者においてアトピー性皮膚炎を処置する方法を提供する。これらの態様による方法は、ワクチンを最近接種されたか、または接種されるであろうアトピー性皮膚炎と診断された患者を選択すること;および患者にIL-4Rアンタゴニスト1または複数用量を投与することを含み、ここで、IL-4Rアンタゴニストは、ワクチンへの患者の応答を低減も、減弱もしない。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストの投与は、治験医師による包括的評価(IGA);アトピー性皮膚炎の体表面積病変(BSA);湿疹面積・重症度指数(EASI);アトピー性皮膚炎評価スコア(SCORAD);5-Dそう痒スケール;およびそう痒数値的評価スケール(NRS)からなる群から選択される1つまたは複数のアトピー性皮膚炎(AD)関連パラメーターにおける改善をもたらす。ある種の実施形態において、アトピー性皮膚炎を有する患者は、微生物感染症、例えば、百日咳、ジフテリア、破傷風、結核、髄膜炎などに感染しやすい。ある種の実施形態において、アトピー性皮膚炎を有する患者は、ワクチンのある種の成分にアレルギーがあるか、またはワクチンへのアレルギー反応(例えば、皮膚反応)を発症する。ある種の実施形態において、患者は、アトピー性皮膚炎と診断された、年齢約3歳未満の小児であり、感染性疾患(例えば、百日咳)に対するワクチンが必要である。
【0010】
ある種の実施形態において、ワクチンは、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diptheriae)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、プラスモディウム属(Plasmodium)菌種、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholera)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、ボレリア属(Borrelia)菌種、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococus pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、クロストリジウム属(Clostridium)菌種、マイコバクテリウム・レプラエ(Mycobacterium leprae)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、インフルエンザウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ポリオウイルス、痘瘡ウイルス、狂犬病ウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、エボラウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、リッサウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、および風疹ウイルスからなる群から選択される微生物により引き起こされる疾患または感染症に対するものである。
【0011】
ある種の実施形態において、ワクチンは、百日咳、ジフテリア、破傷風、結核、マラリア、炭疽、コレラ、チフス、ハンセン病、ライム病、連鎖球菌感染症、大腸菌感染症、ブドウ球菌感染症、ペスト、クロストリジウム感染症、髄膜炎菌感染症、肺炎球菌感染症、肺炎、髄膜炎、敗血症、インフルエンザ、水痘、HIV感染症、RSV感染症、ポリオ、天然痘、狂犬病、ロタウイルス感染症、乳頭腫、子宮頸癌、エボラ、肝炎、黄熱、麻疹、ムンプスおよび風疹感染症からなる群から選択される疾患または感染症に対するものである。1つの実施形態によると、ワクチンは、百日咳(百日咳(whooping cough))に対するものである。
【0012】
ある種の実施形態により、本発明の方法は、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量をワクチン1または複数用量と併用してそれを必要とする対象に投与することを含む。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量が投与され、ここで、各用量は、直前の用量の1~12週間後に投与される。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストの各用量は、対象の体重1kg当たり1~50mgを含む。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト各用量は、IL-4Rアンタゴニスト10~600mgを含む。ある種の実施形態において、各用量は、対象の体重1kg当たり0.1~10mgを含む。ある種の実施形態において、ワクチン1または複数用量が投与され、ここで、各用量は、直前の用量の2~24カ月後に投与される。ある種の実施形態において、ワクチン1または複数用量は、直前の用量の後、2~15年の間隔で投与される。ある種の実施形態において、ワクチンのその後の用量は、「追加免疫」用量として言及される。ある種の実施形態において、方法は、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量をワクチン各用量の前に投与すること、続いて、IL-4Rアンタゴニスト用量をワクチン用量と同時に投与することを含む。さらなる実施形態において、方法は、場合により、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量をワクチン用量を投与した後に投与することを含む。
【0013】
ある種の実施形態において、本発明の方法は、IL-4Rアンタゴニスト約10mg~約600mgを開始用量として、続いて、1または複数の二次用量を投与することを含む。ある種の実施形態において、開始用量および1または複数の二次用量は、それぞれ、IL-4Rアンタゴニスト約10mg~約600mgを含む。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、開始用量600mgで、続いて、1または複数の二次用量が投与され、ここで、各二次用量は300mgを含む。1つの実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、開始用量400mgで、続いて、1または複数の二次用量が投与され、ここで、各二次用量は200mgを含む。ある種の実施形態において、開始および1または複数の二次用量は、それぞれ、IL-4Rアンタゴニスト0.1~10mg/kgを含む。ある種の実施形態において、開始および1または複数の二次用量は、それぞれ、IL-4Rアンタゴニスト1、2、3、5、または6mg/kgを含む。本発明のこの態様によると、IL-4Rアンタゴニストは、対象に例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回または4週間に1回の投薬頻度で投与されてもよい。1つの実施形態において、各二次用量は、直前の用量の1週間後に投与される。ある種の実施形態において、ワクチンは、開始用量で、続いて、1または複数のその後の(追加免疫)用量で投与され、ここで、各その後の(追加免疫)用量は、直前の用量の1~104週間後に投与される。ある種の実施形態において、1または複数のその後の(追加免疫)用量は、直前の用量の2~20年後に投与される。
【0014】
ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、それを必要とする対象においてワクチンの前、後、またはそれと同時に投与される。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量は、ワクチン各用量の前、後、またはそれと同
時に投与される。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量は、ワクチン各用量の前に投与される。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量は、ワクチン各用量の後に投与される。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量は、ワクチン用量の前に投与され、続いて、IL-4Rアンタゴニスト用量が、ワクチン用量と同時に投与され、場合により、続いて、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量が、ワクチン投与後に投与される。
【0015】
ある種の態様によると、本発明は、ワクチン開始用量の投与、場合により、続いて、1または複数のその後の追加免疫用量の投与を含む、対象におけるワクチン接種計画を提供し、ここで、各ワクチン用量の投与は、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量の投与、続いて、前述のワクチンと共にIL-4Rアンタゴニスト用量の投与、続いて、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量の投与を含む。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量は、直前の用量の後、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回の間隔で投与される。
【0016】
本発明の方法の状況において使用することができる典型的なIL-4Rアンタゴニストは、例えば、IL-4Rまたはそのリガンド(IL-4および/もしくはIL-13)の小分子の化学阻害剤、あるいはIL-4Rまたはそのリガンドを標的にする生物学的薬剤を含む。ある種の実施形態によると、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rα鎖に結合し、IL-4、IL-13、またはIL-4とIL-13両方によりシグナル伝達を遮断する抗原結合タンパク質(例えば、抗体もしくはその抗原結合フラグメント)である。1つの実施形態において、IL-4Rに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1/2の重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)配列対中の相補性決定領域(CDR)を含む。ある種の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR(HCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR(LCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。本発明の方法の状況において使用することができる1つのかかるタイプの抗原結合タンパク質は、デュピルマブのような抗IL-4Rα抗体である。
【0017】
幾つかの実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、対象に皮下、静脈内、または腹腔内投与される。
【0018】
ある種の態様によると、本発明は、アジュバントを含むワクチン組成物を提供し、ここで、アジュバントは、IL-4Rアンタゴニストを含む。ある種の実施形態において、ワクチン組成物は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、不活化百日咳毒素、線維状赤血球凝集素、パータクチン、2型線毛、3型線毛、およびホルマリン不活化呼吸器多核体ウイルスからなる群から選択されるワクチン成分をさらに含む。ある種の実施形態において、ワクチン組成物は、第2のアジュバント(例えば、ミョウバン)を含む。
【0019】
ある種の実施形態において、本発明は、患者においてワクチンの有効性および/または安全性を増強するための医薬の製造における本発明のIL-4Rアンタゴニストの使用を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、ワクチンの有効性および/または安全性を増大させる方法におけるIL-4Rアンタゴニストの使用を提供し、ここで、IL-4Rアンタゴニストは、前述のワクチンと併用してそれを必要とする対象に投与される。
【0020】
本発明の他の実施形態は、以下の詳細な記載の説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1、2、3、または4における試験についての投薬および試料採取スケジュールを含む試験設計を示す。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、無細胞百日咳(aP)ワクチンを含むTDaP(
図2A)、または全細胞百日咳(wP)ワクチンを含むDTP(
図2B)のいずれかで免疫化し、アイソタイプ対照抗体で、または抗マウスIL-4R抗体(抗IL-4Rα)で処置したマウスにおける血清総IgEレベルを示す。結果は、1群当たり4~12匹のマウスについての値である。一元ANOVA統計的分析が行われた:
***p<0.001、
****p<0.0001。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、(
図3A)aP免疫化マウスにおける線維状赤血球凝集素(FHA)特異的総IgGタイター、および(
図3B)wP免疫化マウスにおける熱殺傷ボルデテラ・パータシス(HKBp)特異的総IgGタイターを示す。結果は、1群当たり4~12匹のマウスについての値である。
*p<0.05、
****p<0.0001。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、(
図4A)aP免疫化マウスにおけるFHA特異的IgG1タイター、および(
図4B)wP免疫化マウスにおけるHKBp特異的IgG1タイターを示す。結果は、1群当たり4~12匹のマウスについての値である。一元ANOVA統計的分析が行われた。
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、(
図5A)aP免疫化マウスにおけるFHA特異的IgG2aタイター、および(
図5B)wP免疫化マウスにおけるHKBp特異的IgG2aタイターを示す。結果は、1群当たり4~12匹のマウスについての平均値である。一元ANOVA統計的分析が行われた。
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、(
図6A)aP免疫化マウスにおけるFHA特異的IgG2cタイター、および(
図6B)wP免疫化マウスにおけるHKBp特異的IgG2cタイターを示す。結果は、1群当たり4~12匹のマウスについての値である。一元ANOVA統計的分析が行われた。
*p<0.05、
****p<0.0001。
【
図7】再刺激の際、aP免疫化マウスにおける抗IL-4Rα処置が、脾臓細胞によるFHA特異的インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)産生を増強することを示す。結果は、1群当たり4匹のマウスについての平均値である。二元ANOVA統計的分析が行われた:
***p<0.001。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、実施例4における試験において記載される、aP(
図8A)またはwP(
図8B)2用量のいずれかで免疫化され、エアロゾル曝露によりボルデテラ・パータシス(B.pertussis)を負荷されたマウスの肺当たりのボルデテラ・パータシスのコロニー形成単位(CFU)の総数を示す。結果は、各時間ポイントにおける1群当たり4~8匹のマウス[14日目のwP免疫化群(B)、n=3を除く]についての平均値である。二元ANOVAにより、
***p<0.001、aP+対照IgG対aP+抗IL-4Rα。
【
図9】実施例5における試験についての投薬および試料採取スケジュールを含む試験設計を示す。
【
図10】実施例5における試験において記載される、aPまたはwPワクチン1用量のいずれかで免疫化され、エアロゾル曝露によりボルデテラ・パータシスを負荷されたマウスの肺当たりのボルデテラ・パータシスのコロニー形成単位(CFU)の総数を示す。結果は、各時間ポイントにおける1群当たり4匹のマウス[7日目の無処置群、n=3を除く]についての平均値である。二元ANOVAにより、
***p<0.001、aP+対照IgG対aP+抗IL4Ra;ΔΔΔp<0.001、aP+対照IgG対wP+対照IgG。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明が記載される前に、本発明が、記載される特定の方法および実験条件に限定されず、したがって、方法および条件は変動し得ることは理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書において使用される専門用語は、ただ、特定の実施形態の記載の目的であり、限定することは意図されないことも理解されるべきである。
【0023】
別段定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該技術分野における当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において使用される、特定の引用される数値に関して使用されるときの用語「約」は、値が、引用される値と1%未満異なってもよいことを意味する。例えば、本明細書において使用される、表現「約100」は、99および101、ならびに間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。本明細書において使用される、用語「処置する」、「処置すること」などは、症状を緩和すること、一時的または永続的のいずれかで症状の原因を除去すること、あるいは名前を付けられた障害もしくは状態の症状の出現を予防するかまたは遅らせることを意味する。
【0024】
本明細書において記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施において使用することができるが、好ましい方法および材料がここで記載される。本明細書において言及される全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれて、全体が記載される。
【0025】
一般的な説明
バチルス・パータシス(Bacillus pertussis)は、幼児および小児において、高い伝染性の重篤かつときに致死的な呼吸性感染症である百日咳(百日咳(whooping cough)とも呼ばれる)を引き起こすグラム陰性細菌である。百日咳は、1943年の全細胞百日咳(wP)ワクチン(DTPまたはDPT)の導入後、大部分が制御された。wPワクチンは、典型的には、全細菌生物の不活化(熱殺傷または通常、ホルマリンにより化学的処理された)懸濁液を含む。しかしながら、wPワクチンは、ワクチンにより誘導される発熱、熱性痙攣および中枢神経系合併症を含む、様々な有害な副作用と関連することが見出された。それ故、wPワクチンは、かかる安全性の懸念のことで米国では中止され、1997年には無細胞百日咳(aP)ワクチンに完全に取って代わられた。aPワクチンは、ミョウバンに沈降させた、不活化百日咳毒素(PT)ならびに1つまたは複数の他の細菌成分[すなわち、線維状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(Pn)、および線毛(Fim)]を含有し、1990年以降、先進国において広く使用されてきた。しかしながら、aPワクチンがwPワクチンと取って代わって以降、百日咳は、公衆衛生上の懸念として再度浮かび上がってきた。報告された7~10歳の間での百日咳のケースは、報告されたケースの13%から23%に増大し、これは、2012年に小児において報告された百日咳42,000ケースと同等に多かった(Mills et al 2014; Trends Microbiol. 22: 49-52)。
【0026】
防御免疫に貢献する機序は、ヒトにおいておよびマウスモデルにおいてwPならびにaPワクチンについて研究されてきた。wPワクチンで観察される免疫応答は、自然に感染した個体または負荷されたマウスのものと非常によく似ている。wPは、Tヘルパー1(Th1)応答(すなわち、好中球の流入およびIL-1、IL-12の産生)を誘導する(Redhead et al 1993, Infect. Immun. 61: 3190-8;Ross et al 2013, PLoS Pathog 9(4): e1003264.doi:10.1371/journal.ppat.1003264)。しかしながら、wPはまた、IgEの形成およびアレルギー反応を引き起こす。他方、aPワクチンは、ヒトにおいてと前臨床マウスモデルにおいての両方で、十分に定義されたTヘルパー2(Th2)応答を有し、ここで、Th2応答はIL-4産生を介して誘導される(Mills et al 1998, Infect. Immun. 66: 596-602)。その後の研究により、Th2応答が、ヒトおよびマウスモデルにおいて防御免疫に必須ではないこと、ならびにwPワクチンおよび以前の感染は、それらがTh1応答を誘導するので、取得した防御免疫において現行のaPワクチンより良好であることが示された(Ross et al 2013, PLoS Pathog 9(4): e1003264.doi:10.1371/journal.ppat.1003264; Brummelmanet al 2015, FEMS Pathog. Dis. doi: 10.1093/femspd/ftv067)。aPワクチンは、有効な免疫学的メモリーを生じるのに失敗し、これが、防御免疫の衰えを引き起こす。加えて、aPワクチンにより誘発されるTh2応答は、4回目または5回目の追加免疫用量を有する小児において観察される望ましくないIgEおよび稀な過敏症反応を引き起こす(Brummelmanet al 2015, FEMS Pathog. Dis. doi: 10.1093/femspd/ftv067)。さらに、抗原変異が、百日咳毒素、パータクチンおよび線毛において見られ、これが、幾つかの現在流行している菌株に対する保護の喪失を引き起こす(Brummelmanet al 2015, FEMS Pathog. Dis. doi: 10.1093/femspd/ftv067)。
【0027】
ヒヒでの実験的百日咳の新規動物モデルは、aPワクチン接種により誘導される防御免疫における主な不足を明らかにした(Warfel et al 2014, PNAS 111: 787)。研究により、以前の感染を有する動物は、エアロゾル化負荷後にコロニー形成されず、一方、wPワクチンは、無処置の動物と比較して、疾患を予防し、細菌クリアランスを増強したことが示された。対照的に、aPワクチンは、ワクチン接種されたヒヒにおいて疾患を予防した最適以下の免疫応答を生じるが、無処置のヒヒへの感染または伝播を予防することができなかった。
【0028】
様々な分子、例えば、IL-1、IL-12およびGM-CSFのようなサイトカイン、ならびにToll様受容体アゴニストが、aPワクチンにより提供される免疫原性および免疫の持続時間を増大する可能性のあるアジュバント候補として研究されている(Dunne et al 2015, Mucosal Immunol. 8: 607-17; Allen & Mills 2014, Expert Rev. Vaccines 13: 1253-64)。ボルデテラ・パータシス感染および伝播を予防するワクチン組成物ならびにワクチン接種ストラテジーの改良についての満たされていない要求が、依然として存在する。本発明者らは、本明細書において、aPワクチンと一緒のIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の投与が、より多くのTh1型抗原特異的IgGアイソタイプ抗体(例えば、マウスにおいてIgG2aおよびb/c、またはヒトにおいてIgG1)の産生、ならびにIgEおよびTh2型抗原特異的IgGアイソタイプ抗体(例えば、マウスにおいてIgG1、またはヒトにおいてIgG4)の低減をもたらし、これにより、病原体負荷への応答においてより良好な保護を提供することを示す。より一般的には、本明細書において示される通り、ワクチンとの併用でのアジュバントとしてのIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の投与は、Th2応答の代わりにTh1応答を生じ、これにより、ワクチンのより良好な有効性を確かにし、および/またはワクチンの有害な副作用(例えば、アレルギー反応)を予防する。
【0029】
ワクチンの有効性および/または安全性を増強する方法
本発明は、それを必要とする対象にワクチンを、L-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物と併用して投与することを含む方法を含む。IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物は、医薬的に許容される担体または賦形剤を含む。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、ワクチンの前、後および/またはそれと同時に投与される。
【0030】
本明細書において使用される、表現「それを必要とする対象」は、微生物(例えば、細菌もしくはウイルス)感染症に感染しやすい、および/または微生物(例えば、細菌もしくはウイルス)感染症からの予防的保護を必要とするヒトあるいは非ヒト動物を意味する。本発明の状況において、用語「対象」は、百日咳、ジフテリア、破傷風、結核、マラリア、炭疽、コレラ、チフス、ハンセン病、ライム病、連鎖球菌感染症、大腸菌感染症、ブドウ球菌感染症、ペスト、クロストリジウム感染症、髄膜炎菌感染症、肺炎球菌感染症、肺炎、髄膜炎、敗血症、インフルエンザ、水痘、HIV感染症、RSV感染症、ポリオ、天然痘、狂犬病、ロタウイルス感染症、乳頭腫、子宮頸癌、エボラ、肝炎、黄熱、麻疹、ムンプスおよび風疹感染症からなる群から選択される感染症に感染しやすい対象を含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、用語「対象」は、3歳以下である小児を含む。例えば、本方法は、1カ月未満、約1カ月、約2カ月、約3カ月、約4カ月、約5カ月、約6カ月、約7カ月、約8カ月、約9カ月、約10カ月、約11カ月または約12カ月齢である幼児のため使用されてもよい。他の実施形態において、本発明の方法を使用して、約1歳、1歳未満、2歳未満、3歳未満、4歳未満、5歳未満、6歳未満、7歳未満、8歳未満、9歳未満、10歳未満、11歳未満、12歳未満、13歳未満、14歳未満、または15歳未満である小児が処置されてもよい。ある種の実施形態において、本発明の方法を使用して、約15歳、約16歳、約17歳、約18歳、約19歳、約20歳または20歳未満である青年が処置されてもよい。
【0032】
ある種の実施形態において、用語「対象」は、50歳より上、55歳より上、60歳より上、65歳より上、70歳より上または75歳より上である成人を含む。
【0033】
ある種の実施形態において、用語「対象」は、20歳より上、25歳より上、30歳より上、35歳より上、40歳より上、45歳より上または50歳より上である成人を含む。ある種の実施形態において、成人は、破傷風ワクチン、ジフテリアワクチン、または百日咳ワクチンンのようなワクチンで予め免疫化されていない。
【0034】
ある種の実施形態において、用語「対象]は、ワクチンで免疫化されているが、追加免疫用量のワクチンを受ける必要がない、成人または年齢が10歳より高い青年を含む。ある種の実施形態において、用語は、予め免疫化されていてもよいが、感染症に対して損なわれた免疫を発達させ、追加のワクチン用量(例えば、追加免疫用量)を受ける必要がある成人を含む。ある種の実施形態において、用語「対象」は、ワクチンの1つまたは複数の成分にアレルギーがある対象を含む。さらなる実施形態において、用語は、ワクチンへのアレルギー応答を発達させる増大したリスクのあり得る対象を含む。
【0035】
ある種の実施形態において、本発明は、前述のワクチン1または複数用量をIL-4Rアンタゴニスト1または複数用量と併用してそれを必要とする対象に投与することを含む、ワクチンの有効性および/または安全性を増強する方法を提供する。
【0036】
ある種の実施形態において、本発明は、前述のワクチン1もしくは複数用量をIL-4Rアンタゴニスト1もしくは複数用量と併用してそれを必要とする対象に投与することを含む、ワクチンへの免疫応答を増強するか、または強める方法を提供する。
【0037】
本明細書において使用される、用語「ワクチンの有効性および/または安全性を増強すること」は、ワクチン単独の投与と比較して、その後の病原体負荷への、IL-4Rアンタゴニストとの併用でのワクチンの投与により提供される増大した保護および/または保護の増大した持続時間を指す。ある種の実施形態において、用語は、以下の1つまたは複数を含む:ワクチン単独で投与された対象と比較して、(a)病原性細菌またはウイルスに起因する疾患の予防;(b)感染した宿主における低下した細菌もしくはウイルスタイターまたは感染した宿主における低下した病原体負荷;(c)感染した宿主からの病原体のより速いクリアランス;(d)病原体特異的Th1型IgGアイソタイプタイターの増大した産生;(e)ワクチン投与に起因する低減または抑止されたアレルギー応答;(f)ワクチン投与に起因する宿主における血清IgEの低減または抑制された産生;(g)Th2応答における低減;(h)病原体特異的Th2型IgGアイソタイプタイターの低下した産生;(i)保護に要求されるワクチン用量の総数における低下;(j)病原体の感染および伝播ならびに/または感染性疾患の予防;ならびに/あるいは(k)その後の病原体負荷への長続きする(永続的)抵抗性。ある種の実施形態において、用語は、ワクチンの安全性を増強することを含む。ある種の実施形態において、用語は、蕁麻疹、血管浮腫、アナフィラキシー、胃腸障害を含むが、これらに限定されない、ワクチンへの1つもしくは複数のIgEにより仲介される応答の予防または低減または抑止、およびそのワクチンへの準最適な免疫応答を引き起こす追加免疫用量のワクチンの中止を含む。1つの態様において、本発明は、IL-4Rアンタゴニストをワクチンと併用してそれを必要とする対象に投与することを含む、対象においてワクチンへの最適な免疫応答を生じさせる方法を提供する。
【0038】
1つの態様によると、本発明は、対象への感染性疾患の感染および/または伝播を予防する方法を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、感染性疾患に感染しやすい集団において集団免疫を増大させる方法を提供する。この態様による方法は、IL-4Rアンタゴニストをワクチンと併用してそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0039】
ある種の実施形態において、本発明は、それを必要とする対象におけるワクチンの投与により誘発される有害な副作用の重症度を抑えるか、処置するか、または低減するか、または改善する方法を提供する。ワクチンにより誘発される有害な副作用は、注射部位反応、アレルギー反応、限局性腫脹、リンパ節の腫脹、および過敏症を含むが、これらに限定されない。ある種の特定の実施形態において、本発明は、それを必要とする対象におけるワクチンの投与により誘発されるアレルギー応答の重症度を抑えるか、処置するか、または低減するかもしくは低下する方法を提供する。本明細書において使用される、語句「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などは、蕁麻疹(例えば、蕁麻疹(hives))、血管浮腫、鼻炎、喘息、嘔吐、くしゃみ、鼻水、副鼻腔炎、涙目、喘鳴、気管支けいれん、低減した最大呼気流量(PEF)、胃腸障害、潮紅、腫れた唇、腫れた舌、低減した血圧、アナフィラキシー、および臓器障害/不全からなる群から選択される1つもしくは複数の徴候または症状を含む。「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などはまた、例えば、増大したTh2応答、増大したIgE産生および/または増大したアレルゲン特異的免疫グロブリン産生のような免疫学的応答ならびに反応を含む。本明細書において使用される、用語「アレルギー応答を低下させること」は、アレルギー応答の不存在またはアレルギー応答の重症度における低減を指す。
【0040】
ある種の実施形態において、本発明は、ワクチン1または複数用量をIL-4Rアンタゴニスト1または複数用量と併用して投与することを含む、ワクチンの投与により誘導される血清総IgEレベルを低減する方法を含む。本明細書において使用される、血清IgEレベルにおける低減は、ワクチンを投与され、IL-4Rアンタゴニストで処置された対象の血清において測定されるIgEの量が、IL-4Rアンタゴニストで処置されていない同じもしくは同等の対象において測定される血清IgEレベルより少なくとも5%、10%、20%、50%、80%、または90%低いことを意味する。ある種の実施形態において、血清IgEレベルにおける低減は、存在しないまたは無視できる量のIgEが、対象の血清において検出されることを意味する。本明細書において使用される、血清IgEは、総血清IgEおよび/または抗原特異的IgE(例えば、アレルゲン特異的IgE)を含んでもよい。
【0041】
ある種の実施形態において、本発明は、ワクチン1または複数用量をIL-4Rアンタゴニスト1または複数用量と併用して投与することを含む、それを必要とする対象においてワクチンの投与の際に誘発されるTh2応答を低減する方法を提供する。ある種の実施形態において、Th2応答を低減することは、ワクチンにより誘発される血清IgEレベルにおける低減、および/または病原体特異的Th2型IgGアイソタイプタイター(例えば、マウスにおいてIgG1、もしくはヒトにおいてIgG4)の低下した産生を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明は、対象においてワクチンへのアレルギー応答への感受性を低減する方法を含む。本明細書において使用される、用語「対象」は、増大した感受性を有するか、またはアレルギー応答を発達させるより高いリスクのある対象、例えば、アトピー性皮膚炎を有する対象を指す。この態様において、用語「対象」は、アトピー性皮膚炎を有する対象、より高いアレルゲン感作を有する対象、およびアレルギー性鼻炎、喘息または食物アレルギーを有する対象を含む。ある種の実施形態において、本発明は、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量を前述のワクチンと併用して投与することを含む、アトピー性皮膚炎を有する患者においてワクチン投与と関連する毒性を低減する方法を含む。用語「対象」はまた、上昇したレベルの、血清総およびアレルゲン特異的IgE、または血清ケモカイン(例えば、CCL17もしくはCCL27)を有する対象を含む。
【0043】
ある種の態様によると、本発明は、それを必要とする対象においてワクチンにより誘導される免疫の持続時間を増大させる方法を含む。幾つかのワクチン、例えば、無細胞百日咳ワクチンが、より短い持続時間の保護を示し、これにより、より年齢の高い小児、青年、成人または高齢者のような対象において通常の追加免疫用量を必要とすることは、当該技術分野において公知である。これらの追加免疫用量は、対象において望ましくない過敏症反応をもたらす。したがって、ある種の実施形態において、本発明は、対象において病原体負荷に対する保護をもたらすのに必要とされる追加免疫用量の総数を低減する方法を提供する。この態様による方法は、ワクチンを、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物と併用して投与することを含む。本明細書において開示される方法は、低減した用量のワクチンででさえ、病原体負荷に対して同様またはより良好な免疫保護を引き起こす。ある種の実施形態において、本発明は、IL-4Rアンタゴニストが投与されない対象と比較して、ワクチン用量の総数を、1または複数用量、例えば、1用量、2用量、3用量またはそれ以上低減する方法を提供する。特定の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量と併用でのワクチン1用量の投与は、IL-4Rアンタゴニストを含まないワクチン2用量と少なくとも同じくらい有効である。別の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量と併用でのワクチン1または2用量の投与は、IL-4Rアンタゴニストを含まないワクチン3用量と少なくとも同じくらい有効である。
【0044】
ある種の実施形態による本発明の方法は、対象にワクチンをIL-4Rアンタゴニストと併用して投与することを含む。本明細書において使用される、表現「と併用して」は、ワクチンが、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の前、後、またはそれと同時に投与されることを意味する。用語「と併用して」はまた、IL-4Rアンタゴニストおよびワクチンの連続または付随投与を含む。
【0045】
例えば、ワクチンの投与の「前」に投与されるとき、IL-4Rアンタゴニストは、ワクチンの投与の約10週間、約9週間、約8週間、約7週間、約6週間、約5週間、約4週間、約3週間、約2週間、または約1週間前に投与されてもよい。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、ワクチンの投与の約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分、または約10分前に投与されてもよい。ワクチンの「後」に投与されるとき、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物は、ワクチンの投与の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間または約10週間後に投与されてもよい。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、ワクチンの投与の約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、または約72時間後に投与されてもよい。ワクチンとの「同時」または「付随」投与は、IL-4Rアンタゴニストが、ワクチンの投与の10分未満で(前、後、もしくは同じ時に)別々の投薬形態で対象に投与されるか、またはワクチンとIL-4Rアンタゴニスト両方を含む単一の複合投薬製剤として対象に投与されることを意味する。
【0046】
本発明は、前述のワクチンをIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の有効量と併用してそれを必要とする対象に投与することを含む、ワクチンの有効性および/または安全性を増大させる方法を含み、ここで、医薬組成物は、例えば、特定のワクチン接種計画の一部として、複数用量で対象に投与される。例えば、ワクチン接種計画は、医薬組成物複数用量を対象に1日に約1回、2日毎に1回、3日毎に1回、4日毎に1回、5日毎に1回、6日毎に1回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、1月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、4カ月毎に1回の頻度で、またはより少ない頻度で、続いて、ワクチン1または複数用量を投与することを含んでもよい。
【0047】
ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト各用量は、対象の体重1kg当たり1~50mgを含む。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニスト各用量は、IL-4Rアンタゴニスト10~600mgを含む。
【0048】
関連する態様において、本発明は、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量の投与、続いて、ワクチンと同時のIL-4Rアンタゴニスト用量の投与、場合により、続いて、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量の投与を含む、対象におけるワクチン接種計画を提供する。ある種の実施形態において、ワクチン接種計画は、IL-4Rアンタゴニスト毎週1~10用量の投与、続いて、ワクチンと同時のIL-4Rアンタゴニスト用量の投与、続いて、IL-4Rアンタゴニスト毎週1~3用量の投与を含む。ある種の実施形態において、ワクチン接種計画は、ワクチン1または複数追加免疫用量を含む。さらなる実施形態において、ワクチン各追加免疫用量は、IL-4Rアンタゴニスト1または複数用量に続き投与される。
【0049】
アトピー性皮膚炎の処置方法
ある種の態様によると、本発明は、ワクチンへの患者の応答と干渉することなく、患者においてアトピー性皮膚炎(AD)を処置する方法を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、ワクチンへの患者の応答を抑制することなく、患者においてADを処置する方法を提供する。ある種の実施形態において、本発明は、微生物感染症に感染しやすい患者、および/または感染性疾患に対するワクチンを必要とする患者においてADを処置する方法を提供する。この態様による方法は、それを必要とする対象にIL-4Rアンタゴニストを含む治療組成物を投与することを含む。ある種の実施形態において、方法は、ワクチンを最近接種されたか、または接種されるであろうアトピー性皮膚炎と診断された患者を選択すること、および患者にIL-4Rアンタゴニスト1または複数用量を投与することを含み、ここで、IL-4Rアンタゴニストは、ワクチンへの患者の応答を低減も、減弱もしない。本明細書において使用される、用語「ワクチンへの患者の応答」は、患者におけるワクチンへの保護免疫応答を指す。本発明の状況において、用語は、デュピルマブで処置されたか、または処置されていないADを有する患者において産生される抗体のレベルを指す。本明細書において使用される、表現「それを必要とする患者」は、アトピー性皮膚炎の1つもしくは複数の症状または徴候を示すヒト動物、および/あるいはアトピー性皮膚炎と診断されたヒト動物を意味する。ある種の実施形態において、本発明の方法を使用して、上昇したレベルの1つまたは複数のADと関連するバイオマーカー(例えば、IgE)を示す患者が処置されてもよい。ADと関連するバイオマーカーは、全体として本明細書に組み込まれる米国公開第20140072583号において記載される。例えば、本発明の方法は、IL-4Rアンタゴニストを上昇したレベルのIgEまたはTARCまたはペリオスチンを有する患者に投与することを含む。本発明の状況において、「それを必要とする患者」は、例えば、処置に先立ち、例えば、上昇したIGA、BSA、EASI、SCORAD、5D-そう痒、および/もしくはNRSスコアのような1つまたは複数のADと関連するパラメーター、ならびに/あるいは例えば、IgEおよび/もしくはTARCのような上昇したレベルの1つまたは複数のADと関連するバイオマーカーを示す(または示した)患者を含んでもよい。ある種の実施形態において、「それを必要とする対象」は、ADにより感染しやすいか、または上昇したレベルのADと関連するバイオマーカーを示し得る集団のサブセットを含んでもよい。例えば、「それを必要とする対象」は、集団に存在する人種または民族性により定義される集団のサブセットを含んでもよい。
【0050】
幾つかの実施形態において、本明細書における方法を使用して、1歳以下である小児においてADが処置されてもよい。例えば、本方法を使用して、1カ月未満、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月または12カ月未満である幼児が処置されてもよい。他の実施形態において、本方法を使用して、小児および/または18歳以下である青年が処置されてもよい。例えば、本方法を使用して、17歳未満、16歳未満、15歳未満、14歳未満、13歳未満、12歳未満、11歳未満、10歳未満、9歳未満、8歳未満、7歳未満、6歳未満、5歳未満、4歳未満、3歳未満、もしくは2歳未満である小児または青年が処置されてもよい。特定の実施形態において、本方法を使用して、感染性疾患(例えば、百日咳、ジフテリア、結核、RSV、麻疹、ムンプス、および風疹)に対するワクチンを必要とする小児においてADが処置されてもよい。
【0051】
ある種の実施形態において、それを必要とする患者は、追加免疫用量のワクチンを必要とし得る、ADを有し、かつ年齢が20歳より上の成人である。
【0052】
本明細書において使用される「アトピー性皮膚炎(AD)」は、強いそう痒(例えば、重度のかゆみ)により、ならびに鱗状および乾燥性湿疹病変により特徴付けられる炎症性皮膚疾患を意味する。用語「アトピー性皮膚炎」は、表皮バリア機能障害、アレルギー(例えば、ある種の食物、花粉、カビ、イエダニ、動物などへのアレルギー)、放射線曝露、および/もしくは喘息により引き起こされるか、またはそれと関連するADを含むが、これらに限定されない。本発明は、軽度、中等度から重度、または重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。本明細書において使用される、「中等度から重度のAD」は、持続性細菌、ウイルスまたは真菌感染症によりしばしば悪化する極度にそう痒の広範な皮膚病変により特徴付けられる。中等度から重度のADはまた、患者における慢性ADを含む。多くの場合において、慢性病変は、皮膚の肥厚した斑、苔癬化および線維性丘疹を含む。中等度から重度のADにより冒された患者はまた、一般に、20%より多くの冒された身体の皮膚、または目、手および身体のしわの改善に加えた皮膚面積の10%を有する。中等度から重度のADはまた、局所コルチコステロイドでの頻繁な処置を要求する患者に存在するとみなされる。患者はまた、患者が、局所コルチコステロイドもしくはカルシニューリン阻害剤もしくは当該技術分野において公知の任意の他の一般に使用される治療剤のいずれかによる処置に抵抗性または不応性であるとき、中等度から重度のADを有すると述べられてもよい。中等度から重度、または重度のADを有する患者はまた、疾患のさらなる増悪または再燃を示してもよい。
【0053】
本発明は、局所コルチコステロイド(TCS)もしくはカルシニューリン阻害剤での処置に抵抗性、不応答性または不十分に応答性の患者においてADを処置する方法を含む。本明細書において使用される、用語「TCSもしくはカルシニューリン阻害剤に抵抗性、不応答性または不十分に応答性」は、TCSもしくはカルシニューリン阻害剤で処置されたADを有する対象または患者を指し、ここで、TCS/カルシニューリン阻害剤は、治療効果を有しない。幾つかの実施形態において、用語は、ADの症状を低減するか、改善するかもしくは低下するために投与されたTCS/カルシニューリン阻害剤の低減された患者コンプライアンスおよび/あるいは毒性および副作用および/または無効性を指す。幾つかの実施形態において、用語は、TCS/カルシニューリン阻害剤による処置に不応性である中等度から重度のADに罹患している患者を指す。幾つかの実施形態において、用語は、TCSおよび/またはカルシニューリン阻害剤での処置にもかかわらず制御されないADを有する患者を指す。幾つかの実施形態において、「TCSもしくはカルシニューリン阻害剤に抵抗性、不応答性または不十分に応答性」である患者は、1つまたは複数のADと関連するパラメーターにおいて改善を示さなくてもよい。ADと関連するパラメーターの例は、本明細書において他の場所に記載される。例えば、TCS/カルシニューリン阻害剤での処置は、そう痒またはEASIスコアもしくはBSAスコアにおける低下をもたらさなくてもよい。幾つかの実施形態において、本発明は、TCS/カルシニューリン阻害剤で1月以上の間、先に処置され、1つまたは複数のADと関連するパラメーターにおいて低下を示さない患者において中等度から重度のADを処置する方法を含む。例えば、本方法を使用して、TCS/カルシニューリン阻害剤の安定した投与計画におり、BSAスコア10%以上またはIGAスコア3以上を有する、慢性ADを有する患者が処置されてもよい。
【0054】
ある種の実施形態において、本発明は、IL-4Rアンタゴニストの投与が、1つまたは複数のADと関連するパラメーターにおける改善をもたらす方法を提供する。「ADと関連するパラメーター」の例は、(a)治験医師による包括的評価(IGA);(b)アトピー性皮膚炎の体表面積病変(BSA);(c)湿疹面積重症度指数(EASI);(d)SCORAD;(e)5-Dそう痒スケール;および(f)そう痒数値的評価スケール(NRS)を含む。ADと関連するパラメーターは、全体として本明細書に組み込まれる米国公開第20140072583号において記載される。「ADと関連するパラメーターにおける改善」は、IGA、BSA、EASI、SCORAD、5-Dそう痒スケール、もしくはNRSの1つまたは複数のベースラインからの低下を意味する。本明細書において使用される、用語「ベースライン」は、ADと関連するパラメーターに関して、本発明の医薬組成物の投与に先立ち、または投与の時の対象についてのADと関連するパラメーターの数値を意味する。
【0055】
ADと関連するパラメーターが、「改善」されたかどうかを決定するために、パラメーターは、ベースラインにて、かつ本発明の医薬組成物の投与の後の1つまたは複数の時間ポイントにて定量される。例えば、ADと関連するパラメーターは、本発明の医薬組成物での最初の処置の後、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、14日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、85日目;もしくは1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目の終わりに、またはそれより後に測定されてもよい。処置の開始後の特定の時間ポイントでのパラメーターの値とベースラインでのパラメーターの値の間の差を使用して、ADと関連するパラメーターにおける「改善」(例えば、低下)が存在したかどうかが確立される。
【0056】
インターロイキン-4受容体アンタゴニスト
本発明の方法は、それを必要とする対象にインターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む治療組成物を投与することを含む。本明細書において使用される、「IL-4Rアンタゴニスト」(本明細書において「IL-4R阻害剤」、「IL-4Rαアンタゴニスト」、「IL-4R遮断薬」、「IL-4Rα遮断薬」などとしても言及される)は、IL-4RαもしくはIL-4Rリガンドに結合するか、またはそれと相互作用する任意の剤、ならびに通常の生物学的シグナル伝達機能である1型および/もしくは2型IL-4受容体を阻害するかまたは減弱する任意の剤である。ヒトIL-4Rαは、配列番号13のアミノ酸配列を有する。1型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびγc鎖を含む2量体の受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびIL-13Rα1鎖を含む2量体の受容体である。1型IL-4受容体は、IL-4と相互作用し、それにより刺激され、一方、2型IL-4受容体は、IL-4とIL-13両方と相互作用し、それらにより刺激される。従って、本発明の方法において使用することができるIL-4Rアンタゴニストは、IL-4により仲介されるシグナル伝達、IL-13により仲介されるシグナル伝達、またはIL-4とIL-13両方により仲介されるシグナル伝達を遮断することにより、機能し得る。これにより、本発明のIL-4Rアンタゴニストは、1型もしくは2型受容体とのIL-4および/またはIL-13の相互作用を予防し得る。
【0057】
IL-4Rアンタゴニストのカテゴリーの非限定的な例は、小分子IL-4R阻害剤、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドベースのIL-4R阻害剤(例えば、「ペプチボディ」分子)、「受容体ボディ」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む操作された分子)、およびヒトIL-4Rαに特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合フラグメントを含む。本明細書において使用される、IL-4Rアンタゴニストはまた、IL-4および/またはIL-13に特異的に結合する抗原結合タンパク質を含む。
【0058】
抗IL-4Rα抗体およびその抗原結合フラグメント
本発明のある種の典型的な実施形態によると、IL-4Rアンタゴニストは、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントである。本明細書において使用される、用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合により間で繋がった2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。典型的な抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存されている領域が分散する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、高頻度可変性の領域にさらに分けることができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。本発明の異なる実施形態において、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよいか、または天然もしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸共通配列は、2つまたはそれ以上のCDRの対照解析に基づき定義されてもよい。
【0059】
本明細書において使用される、用語「抗体」はまた、完全な抗体分子の抗原結合フラグメントを含む。本明細書において使用される、用語、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などは、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素で得られる、合成、もしくは遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、完全な抗体分子から、タンパク質消化のような任意の適当な標準的技術、または抗体可変および場合により定常ドメインをコードするDNAの操作ならびに発現を含む組換え遺伝子操作技術を使用して、もたらさてもよい。かかるDNAは、公知であり、および/または例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAは、配列決定され、化学的もしくは分子生物学的技術を使用することにより操作され、例えば、1つもしくは複数の可変および/または定常ドメインを適当な配置に並べるか、あるいはコドンを導入するか、システイン残基を創出するか、アミノ酸を修飾するか、付加するかもしくは欠損させてもよい。
【0060】
抗原結合フラグメントの非限定的な例は、(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)1本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の高頻度可変領域(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位、または拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチドを含む。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠損抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ミニボディ、ナノボディ(例えば、1価のナノボディ、2価のナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような、他の操作された分子はまた、本明細書において使用される、表現「抗原結合フラグメント」内に包含される。
【0061】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むだろう。可変ドメインは、任意の大きさまたはアミノ酸組成のものであってもよく、一般に、1つもしくは複数のフレームワーク配列に隣接するか、またはそれとインフレームである少なくとも1つのCDRを含むだろう。VLドメインと関連するVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VHおよびVLドメインは、任意の適当な配置でお互いに関連して置かれてもよい。例えば、可変領域は、2量体であり、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL2量体を含有してもよい。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVHまたはVLドメインを含有してもよい。
【0062】
ある種の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含有してもよい。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内で見られ得る可変および定常ドメインの非限定的な典型的な配置は、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLを含む。上で挙げられた典型的な配置のいずれかを含む、可変および定常ドメインの任意の配置において、可変および定常ドメインは、お互いに直接結合し得るか、あるいは完全もしくは部分的ヒンジまたはリンカー領域により結合されてもよい。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子において隣接する可変および/もしくは定常ドメイン間で可動性または半可動性の結合をもたらす少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上の)アミノ酸からなってもよい。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、お互いとのおよび/あるいは1つもしくは複数の単量体のVHまたはVLドメインとの(例えば、ジスルフィド結合による)非共有結合性会合での上で挙げられた可変ならびに定常ドメイン配置のいずれかのホモ2量体あるいはヘテロ2量体(あるいは他の多量体)を含んでもよい。
【0063】
本明細書において使用される、用語「抗体」はまた、多特異性(例えば、二重特異性)抗体を含む。多特異性抗体または抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むだろうし、ここで、各可変ドメインは、別々の抗原に、または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合する能力がある。任意の多特異性抗体フォーマットは、当該技術分野において利用可能な日常的な技術を使用して、本発明の抗体または抗体の抗原結合フラグメントの状況における使用に適合されてもよい。例えば、本発明は、免疫グロブリンの1つの腕が、IL-4Rαまたはそのフラグメントに特異的であり、免疫グロブリンの他の腕が、第2の治療標的に特異的であるか、または治療部分に抱合されている二重特異性抗体の使用を含む方法を含む。本発明の状況において使用することができる典型的な二重特異性フォーマットは、例えば、scFvベースまたは抗体二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合物、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ・イントゥ・ホール、共通軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、ならびにMab2二重特異性フォーマットを含むが、これらに限定されない(前述のフォーマットの総説については、例えば、Klein et al. 2012, mAbs 4:6, 1-11、およびそこで引用される参考文献を参照)。二重特異性抗体はまた、ペプチド/核酸抱合を使用して構築することができ、例えば、ここで、直交性化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド抱合体が創出され、次に、それが、定義された組成、原子価および幾何学を有する多量体複合体に自己組織化する。(例えば、Kazane et al., J. Am. Chem. Soc. [Epub: Dec. 4, 2012]を参照)。
【0064】
本発明の方法において使用される抗体は、ヒト抗体であってもよい。本明細書において使用される、用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。それにもかかわらず、本発明のヒト抗体は、例えば、CDRにおいておよび特定のCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発により、またはインビボでの体細胞突然変異により誘導される変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書において使用される、用語「ヒト抗体」は、マウスのような別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことは意図されない。
【0065】
本発明の方法において使用される抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。本明細書において使用される、用語「組換えヒト抗体」は、宿主細胞に遺伝子導入された組換え発現ベクターを使用して発現させる抗体(以下でさらに記載される)、組換え体から単離される抗体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(以下でさらに記載される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子の遺伝子導入である動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylor et al. (1992) Nucl. Acids Res. 20:6287-6295を参照)または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む任意の他の手段により調製されるか、発現されるか、創出されるか、もしくは単離される抗体のような、組換え手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される全てのヒト抗体を含むことが意図される。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかしながら、ある種の実施形態において、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(または、ヒトIg配列の遺伝子導入動物が使用されるとき、インビボ体細胞変異誘発)の対象にされ、これにより、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、関連する間、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内で天然に存在し得ない配列である。
【0066】
ある種の実施形態によると、本発明の方法において使用される抗体は、IL-4Rαに特異的に結合する。用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合フラグメントが、生理的条件下で比較的安定である、抗原と複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、本発明の状況において使用される、IL-4Rαに「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM未満もしくは約0.05nM未満のKDでIL-4Rαまたはその部分に結合する抗体を含む。しかしながら、ヒトIL-4Rαに特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種由来のIL-4Rα分子のような、他の抗原と交差反応性を有してもよい。
【0067】
本発明のある種の典型的な実施形態によると、IL-4Rアンタゴニストは、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/もしくは米国特許第7,608,693号において説明される抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む相補性決定領域(CDR)を含む、抗IL-4Rα抗体、またはその抗原結合フラグメントである。ある種の典型的な実施形態において、本発明の方法の状況において使用することができる抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。ある種の実施形態によると、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、ここで、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1を含むHCVRおよび配列番号2を含むLCVRを含む。ある種の典型的な実施形態によると、本発明の方法は、配列番号3-4-5-6-7-8のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列を含む抗IL-4R抗体(「デュピルマブ」として言及され、当該技術分野において公知である)、またはその生物学的均等物の使用を含む。ある種の実施形態において、本発明の方法は、抗IL-4R抗体の使用を含み、ここで、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。幾つかの実施形態において、抗IL-4R抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む典型的な抗体は、デュピルマブとして公知の完全なヒト抗IL-4R抗体である。ある種の典型的な実施形態によると、本発明の方法は、デュピルマブ、またはその生物学的均等物の使用を含む。本明細書において使用される、用語「生物学的均等物」は、吸収の割合および/または低度が、同様の実験条件で同じモル用量で、1回用量もしくは複数用量で投与されるとき、デュピルマブのものと有意な差を示さない医薬的均等物または医薬的代替物である、抗IL-4R抗体あるいはIL-4R結合タンパク質あるいはそのフラグメントを指す。本発明の状況において、用語は、それらの安全性、純度および/または効力においてデュピルマブと臨床的に意義のある差を有しない、IL-4Rに結合する抗原結合タンパク質を指す。
【0068】
ある種の特定の実施形態において、本発明の方法は、配列番号11のHCVR配列および配列番号12のLCVR配列を含む抗マウス抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を含む。典型的な実施形態において、本発明の方法は、ボルデテラ・パータシスエアロゾル負荷マウスモデルにおいて百日咳ワクチンの有効性および/または安全性を増大させる際の抗マウス抗IL-4R抗体の使用を含む。
【0069】
ある種の特定の実施形態において、本発明の方法は、配列番号14のHCVR配列および配列番号15のLCVR配列を含む抗サル抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を含む。典型的な実施形態において、本発明の方法は、臨床上関連性のある幼少のヒヒモデルにおいて百日咳ワクチンの有効性および/または安全性を増大させる際の抗サル抗IL-4R抗体の使用を含む。
【0070】
本発明の方法の状況において使用することができる他の抗IL-4Rα抗体は、例えば、AMG317として言及され、当該技術分野において公知である抗体(Corren et al., 2010, Am J Respir Crit Care Med., 181(8):788-796)、または米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,608,693号、もしくは米国特許第8,092,804号において説明される抗IL-4Rα抗体のいずれかを含む。
【0071】
本発明の方法の状況において使用される抗IL-4Rα抗体は、pH依存性結合特徴を有してもよい。例えば、本発明の方法における使用のための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して、酸性pHにてIL-4Rαへの低減した結合を示してもよい。あるいは、本発明の抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して、酸性pHにてその抗原への増強された結合を示してもよい。表現「酸性pH」は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満のpH値を含む。本明細書において使用される表現「中性pH」は、pH約7.0~約7.4を意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0072】
ある種の場合において、「中性pHと比較して、酸性pHにてIL-4Rへの低減された結合」は、中性pHでのIL-4Rαへの抗体結合のKD値に対する酸性pHでのIL-4Rαへの抗体結合のKD値の比に関して表される(または逆も同様)。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体またはその抗原結合フラグメントが、酸性/中性KD比約3.0またはそれ以上を示すなら、本発明の目的のため「中性pHと比較して、酸性pHにてIL-4Rαへの低減された結合」を示すとみなされてもよい。ある種の典型的な実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントについての酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0、またはそれ以上であることができる。
【0073】
pH依存性結合特徴を有する抗体は、中性pHと比較して、酸性pHにて特定の抗原への低減された(または増強された)結合について抗体の集団をスクリーニングすることにより、得られてもよい。加えて、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存性特徴を有する抗体を生じてもよい。例えば、抗原結合ドメイン(例えば、CDR内)の1つまたは複数のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHと比べて酸性pHにて低減された抗原結合を有する抗体が、得られてもよい。本明細書において使用される表現「酸性pH」は、pH6.0またはそれ未満を意味する。
【0074】
医薬組成物
本発明は、IL-4Rアンタゴニストを患者に投与することを含む方法を含み、ここで、IL-4Rアンタゴニストが、医薬組成物内に含有される。本発明の医薬組成物は、適当な担体、賦形剤、および適当な伝達、送達、耐性などをもたらす他の剤と共に製剤される。多数の適切な製剤を、全ての薬剤師に公知の処方:Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルベニア州において見ることができる。これらの製剤は、例えば、粉剤、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、小胞を含有する脂質(陽イオンまたは陰イオン)(例えば、LIPOFECTIN(商標))、DNA抱合体、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルション、エマルションカルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカルボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powell et al. "Compendium of excipients for parenteral formulations" PDA (1998) J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照のこと。
【0075】
本発明の方法により患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢および大きさ、症状、状態、投与経路などに依存して変動してもよい。用量は、典型的には、体重または身体表面積により計算される。状態の重症度に依存して、処置の頻度および持続時間を調節することができる。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物を投与するのに有効な投薬量およびスケジュールは、経験的に決定されてもよく;例えば、患者進行は、定期的評価によりモニターすることができ、それに従い、用量を調節することができる。さらに、投薬量の種間調整は、当該技術分野において周知の方法(例えば、Mordenti et al., 1991, Pharmaceut. Res. 8:1351)を使用して行うことができる。本発明の状況において使用することができる同じものを含む抗IL4R抗体および投与計画の特定の典型的な用量は、本明細書において他の場所に開示される。
【0076】
様々な送達システムが公知であり、これを使用して、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物、例えば、リポソーム中でのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルス、受容体により仲介されるエンドサイトーシスを発現する能力がある組換え細胞を投与することができる(例えば、Wu et al., 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)。投与方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路を含むが、これらに限定されない。組成物は、任意の便利な経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜層(例えば、経口粘膜、直腸および腸管粘膜など)を介した吸収により、投与されてもよく、他の生物学的に活性な剤と一緒に投与されてもよい。
【0077】
本発明の医薬組成物は、標準的な針とシリンジで皮下または静脈内送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達装置は、本発明の医薬組成物を送達する際に容易に適用される。かかるペン型送達装置は、再利用可能であるか、または使い捨てできる。再利用可能なペン型送達装置は、一般に、医薬組成物を含有する置き換え可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは、容易に廃棄され、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと置き換えることができる。次に、ペン型送達装置を、再利用することができる。使い捨てできるペン型送達装置において、置き換えることができるカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てできるペン型送達装置は、装置内の容器において保持された医薬組成物を予め充填させた状態である。容器は、医薬組成物が空になると、装置全体が廃棄される。
【0078】
多数の再利用可能なペンと自己注射送達装置は、本発明の医薬組成物の皮下送達において適用される。例は、ほんのわずか名前を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford, Inc.、ウッドストック、英国)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic
Medical Systems、バーグドーフ、スイス)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(イーライリリー・アンド・カンパニー、インディアナポリス、インディアナ州)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(ノボノルディスク、コペンハーゲン、デンマーク)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(ノボノルディスク、コペンハーゲン、デンマーク)、BD(商標)ペン(ベクトン・ディッキンソン、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、ならびにOPTICLIK(商標)(サノフィ・アベンティス、フランクフルト、ドイツ)を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達において適用する使い捨てできるペン型送達装置の例は、ほんのわずか名前を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(サノフィ・アベンティス)、FLEXPEN(商標)(ノボノルディスク)、およびKWIKPEN(商標)(イーライリリー)、SURECLICK(商標)自己注射器(アムジェン、サウザンドオークス、カリフォルニア州)、PENLET(商標)(Haselmeier、シュトゥットガルト、ドイツ)、EPIPEN(Dey, L.P.)、およびHUMIRA(商標)Pen(アボット・ラボラトリーズ、アボット・パーク、イリノイ州)を含むが、これらに限定されない。
【0079】
ある種の状況において、医薬組成物は、放出制御システムにおいて送達することができる。1つの実施形態において、ポンプが使用されてもよい(Langer、上記;Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201を参照)。別の実施形態において、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), 1974, CRC Pres., Boca Raton, Floridaを参照。さらに別の実施形態において、放出制御システムは、組成物の標的の近くに置かれ、これにより、全身用量のごく一部を必要とすることができる(例えば、Goodson, 1984, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138を参照)。他の放出制御システムは、Langer, 1990, Science 249:1527-1533による総説において考察されている。
【0080】
注射可能な調製物は、静脈内、皮下、皮内および筋内注射、点滴注入などのための投薬形態を含んでもよい。これらの注射可能な調製物は、公知の方法により調製されてもよい。例えば、注射可能な調製物は、注射のため通常使用される無菌の水性媒体もしくは油性媒体において、上で記載された抗体またはその塩を溶解すること、懸濁すること、または乳化することにより、調製されてもよい。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースおよび補助剤を含有する等調溶液などが存在し、それは、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などのような適当な溶解剤と組み合わせて使用されてもよい。油性媒体としては、利用される、例えば、ゴマ油、大豆油などが存在し、それは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどのような溶解剤と組み合わせて使用されてもよい。これにより調製された注射薬を、適当なアンプルに充填することができる。
【0081】
有利には、上で記載された経口または非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に合った単位用量で投薬形態に調製される。単位用量でのかかる投薬形態は、例えば、錠剤、ピル、カプセル剤、注射薬(アンプル剤)、座薬などを含む。
【0082】
本発明の状況において使用することができる抗IL-4R抗体を含む典型的な医薬組成物は、例えば、米国特許第8,945,559号において開示される。
【0083】
ワクチン組成物
ある種の実施形態において、本発明は、ワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を提供し、ここで、ワクチンアジュバントは、IL-4Rアンタゴニストを含む。本明細書において使用される、用語「アジュバント」は、特異的なワクチン抗原と組み合わせて使用されるとき、抗原特異的な免疫応答を加速するか、引き延ばすか、または増強するよう作用する任意の物質を指す。本発明の状況において、アジュバント(例えば、IL-4Rアンタゴニスト)は、IL-4Rアンタゴニストを含まないワクチンを投与されている対象と比較して、対象においてワクチンの有効性を増大させる特性を有する。ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストの使用は、例えば、ワクチン成分へのアレルギー反応のリスクを低下させることにより、投与されたワクチンの安全性を増大させる。ある種の実施形態において、アジュバントとしてのIL-4Rアンタゴニストの使用は、ワクチンの投与される用量の総数を減らすことができる。例えば、本発明によるアジュバント(すなわち、IL-4Rアンタゴニスト)とのワクチン組成物1用量の投与は、本発明によるアジュバントを含まないワクチン2用量の投与と同じくらい効率的である。同様に、本発明によるアジュバントとの本発明によるワクチン1または2用量の投与は、本発明によるアジュバントを含まないワクチン3用量の投与と同じくらい効率的である。ある種の実施形態において、ワクチン組成物は、第2のアジュバント(例えば、ミョウバン)を含む。
【0084】
ある種の実施形態において、IL-4Rアンタゴニストは、本明細書において記載される抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある種の典型的な実施形態において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。ある種の実施形態において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)ならびに3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、ここで、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0085】
本発明のワクチン組成物における使用に適した免疫原または抗原は、不活化病原体、減弱された病原体、免疫原サブユニット(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン)、または免疫原インサートを有するプラスミドを含む組換え発現ベクターからなる群から選択されてもよい。本発明の1つの実施形態において、免疫原は、不活化または殺傷された微生物である。ある種の実施形態において、ワクチン組成物は、ボルデテラ・パータシス、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diptheriae)、クロストリジウム・テタニ、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、プラスモディウム属菌種、バチルス・アントラシス、ビブリオ・コレラエ、サルモネラ・チフィ、ボレリア属菌種、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococus pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス、エシェリキア・コリ、クロストリジウム属菌種、マイコバクテリウム・レプラエ、エルシニア・ペスティス、インフルエンザウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ポリオウイルス、痘瘡ウイルス、狂犬病ウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、エボラウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、リッサウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、および風疹ウイルスからなる群から選択される微生物由来の成分を含む。ある種の実施形態において、ワクチン組成物は、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、不活化百日咳毒素、線維状赤血球凝集素、パータクチン、2型線毛、3型線毛、およびホルマリン不活化呼吸器多核体ウイルスからなる群から選択されるワクチン成分を含む。
【0086】
本発明のワクチン組成物は、少なくとも1つの医薬的に許容し得る担体を含む。用語「医薬的に許容し得る担体」は、患者に抗原と一緒に投与され得、その薬理活性を壊さず、医薬的に有効量の化合物を送達するのに十分な用量で投与されたとき、無毒性である担体を指す。有用な医薬的に許容し得るビークルまたは賦形剤が、標準である。E. W. Martin、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、15th Edition (1975)によるRemington's Pharmaceutical Sciencesには、ワクチンの医薬送達に適した組成物および製剤が記載されている。一般に、ビークルまたは賦形剤の性質は、利用される投与の特定の様式に依存するだろう。例えば、非経口製剤は、通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどのような医薬的かつ生理的に許容し得る注射可能な液体をビークルとして含む。固体組成物(例えば、凍結乾燥トローチ、粉剤、ピル、錠剤、またはカプセル剤形態)について、従来の無毒性固体ビークルまたは賦形剤は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含んでもよい。生物学的に中性なビークルまたは賦形剤に加えて、投与されるべき免疫原組成物は、小量の、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤などのような無毒性補助物質、例えば、酢酸ナトリウムもしくはソルビタンラウリン酸モノエステルを含有することができる。
【0087】
当業者により理解されるであろう通り、ワクチンは、意図される投与経路と適合性であるよう適当に製剤化される。適当な投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口(例えば、口腔、吸入、鼻および肺スプレー)、皮内、経皮(局所)、経粘膜、ならびに眼内投与を含む。
【0088】
投与計画
ある種の実施形態による本発明の方法は、対象にワクチンをIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)と併用して投与することを含む。本明細書において使用される、表現「併用して」は、ワクチンが、IL-4Rアンタゴニストの前、後、またはそれと同時に投与されることを意味する。用語「併用して」はまた、IL-4Rアンタゴニストおよびワクチンの連続または同時投与を含む。
【0089】
例えば、IL-4Rアンタゴニストの「前」に投与されるとき、ワクチンは、IL-4Rアンタゴニストの投与の72時間未満、約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分、または約10分前に投与されてもよい。IL-4Rアンタゴニストの「後」に投与されるとき、ワクチンは、IL-4Rアンタゴニストの投与の約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、または約72時間より後に投与されてもよい。IL-4Rアンタゴニストとの「同時」投与は、ワクチンが、IL-4Rアンタゴニストの投与の5分未満内(前、後、もしくは同じ時)に別々の投薬形態で対象に投与されるか、またはワクチンとIL-4Rアンタゴニスト両方を含む単一複合投薬製剤として対象に投与されることを意味する。
【0090】
本発明は、治療応答が達成される限り、対象にIL-4Rアンタゴニストを、1週間に約4回、1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、8週間毎に1回、12週間毎に1回の投薬頻度で、またはより少ない頻度で投与することを含む方法を含む。抗IL-4R抗体の投与を含むある種の実施形態において、約25mg、50mg、150mg、または300mgの量での1週間に1回の投薬を利用することができる。
【0091】
本発明のある種の実施形態によると、IL-4Rアンタゴニスト複数用量が、対象に定義された時間経過に渡り投与されてもよい。本発明のこの態様による方法は、対象にIL-4Rアンタゴニスト複数用量を連続投与することを含む。 本明細書において使用される、「連続投与」は、IL-4Rアンタゴニスト各用量が、対象に、時間中の異なるポイントにて、例えば、予め決められた間隔(例えば、数時間、数日、数週または数カ月)により隔たれた異なる日に投与されることを意味する。本発明は、患者へのIL-4Rアンタゴニスト1回開始用量、続いて、IL-4Rアンタゴニスト1または複数の二次用量、および場合により、続いて、IL-4Rアンタゴニスト1つまたは複数の三次用量の連続投与を含む方法を含む。
【0092】
用語「開始用量」、「二次用量」、および「三次用量」は、IL-4Rアンタゴニストの投与の時系列を指す。したがって、「開始用量」は、処置計画の開始時に投与される用量であり(「ベースライン用量」としても言及される);「二次用量」は、開始用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。開始、二次、および三次用量は、全て、同じ量のIL-4Rアンタゴニストを含有してもよいが、一般に、投与の頻度に関してお互いに異なってもよい。しかしながら、ある種の実施形態において、開始、二次および/または三次用量に含有されるIL-4Rアンタゴニストの量は、処置の経過中にお互いに変動する(例えば、必要に応じて、上方または下方に調節される)。ある種の実施形態において、開始用量は、第1の量の抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、1または複数の二次用量は、それぞれ、第2の量の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。幾つかの実施形態において、第1の量の抗体またはそのフラグメントは、1.5×、2×、2.5×、3×、3.5×、4×、または5×第2の量の抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある種の実施形態において、1つまたは複数の(例えば、1、2、3、4、または5)用量が、処置計画の開始時に「負荷用量」として投与され、続いて、あまり頻繁でなく投与されるその後の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。例えば、IL-4Rアンタゴニストは、それを必要とする患者に負荷用量約300mg~約600mg、続いて、1または複数の維持用量約25mg~約300mgにて投与されてもよい。1つの実施形態によると、開始用量および1または複数の二次用量は、それぞれ、IL-4Rアンタゴニスト10mg~600mg、例えば、IL-4Rアンタゴニスト100mg~400mg、例えば、IL-4Rアンタゴニスト10mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mgまたは500mgを含む。
【0093】
本発明の1つの典型的な実施形態において、各二次および/または三次用量が、直前の用量の1~14(例えば、1、1と1/2、2、2と1/2、3、3と1/2、4、4と1/2、5、5と1/2、6、6と1/2、7、7と1/2、8、8と1/2、9、9と1/2、10、10と1/2、11、11と1/2、12、12と1/2、13、13と1/2、14、14と1/2、またはそれ以上)週間後に投与される。本明細書において使用される、語句「直前の用量」は、複数回の投与の連続において、介在する用量を有しない連続でのすぐ次の用量の投与に先立ち、患者に投与されるIL-4Rアンタゴニストの用量を意味する。
【0094】
本発明のこの態様による方法は、患者にIL-4Rアンタゴニストの二次および/または三次用量の任意の総数を投与することを含んでもよい。例えば、ある種の実施形態において、1回二次用量のみが、患者に投与される。他の実施形態において、2またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、もしくはそれ以上)の二次用量が、患者に投与される。同様に、ある種の実施形態において、1回三次用量のみが、患者に投与される。他の実施形態において、2またはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、もしくはそれ以上)の三次用量が、患者に投与される。
【0095】
複数の二次用量を含む実施形態において、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度にて投与されてもよい。例えば、各二次用量は、患者に直前の用量の1~6週間後に投与されてもよい。同様に、複数の三次用量を含む実施形態において、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度にて投与されてもよい。例えば、各三次用量は、患者に直前の用量の2~4週間後に投与されてもよい。あるいは、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、投与計画の経過に渡り変動することができる。
【0096】
投薬量
本発明の方法によりワクチンとの併用で対象に投与されるIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の量は、一般に、免疫学的有効量である。本明細書において使用される、語句「免疫学的有効量」は、ワクチンの有効性における増大、またはワクチンへの増強もしくは増大した免疫応答を引き起こすIL-4Rアンタゴニストの量を意味する。本発明の状況において、語句「免疫学的有効量」は、(a)感染した宿主からの微生物病原体のより速いクリアランス;(b)ワクチンにより誘発されるIgEレベルにおける低減;(c)Th1型抗原特異的IgGにおける増大;(d)Th2型抗原特異的IgGレベルにおける低減;(e)ワクチン用量の総数における低減;ならびに/もしくは(f)病原体負荷に対するより良好な保護および病原体負荷の際の感染の遅延の1つまたは複数をもたらすIL-4Rアンタゴニストの量を意味する。ある種の実施形態において、用語「免疫学的有効量」は、IL-4Rアンタゴニストの予防的有効量または治療上有効量を含み、それは、感染性疾患の症状もしくは徴候を予防するか、または治療するか、または緩和するのに有効な免疫応答に必要とされる量を意味する。ある種の実施形態において、語句「免疫学的有効量」は、アトピー性皮膚炎、喘息、鼻のポリープ症、慢性副鼻腔炎、好酸球性食道炎、もしくはアレルギーを有する患者において1つまたは複数の症状または徴候における検出可能な改善をもたらすIL-4Rアンタゴニストの量を意味する。
【0097】
抗IL-4R抗体の場合において、免疫学的有効量は、抗IL-4R抗体約0.05mg~約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgであることができる。ある種の実施形態において、抗IL-4R抗体10mg、25mg、50mg、75mg、150mg、または300mgが、対象に投与される。
【0098】
個々の用量内に含有されるIL-4Rアンタゴニストの量は、対象体重の1キログラム当たりの抗体のミリグラム(すなわち、mg/kg)に関して表されてもよい。例えば、IL-4Rアンタゴニストは、対象に対象体重1kg当たり約0.0001~約100mgの用量で投与されてもよい。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は、当業者に本発明の方法および組成物の製造ならびに使用方法の完全な開示ならびに記載を提供するために提示され、本発明者らが彼らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。使用した数(例えば、量、温度など)に関する正確さを確実にするために努力したが、いくらかの実験誤差および偏差を説明すべきである。別段示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏温度におけるものであり、圧は気圧またはその付近である。
【0100】
実施例1:抗IL-4R抗体の投与は百日咳ワクチンにより誘導される血清総IgEを有意に低減する
この実施例において、全細胞百日咳(wP)または無細胞百日咳(aP)ワクチンにより誘導される総血清IgEレベルに対する抗IL-4R抗体の効果を、ボルデテラ・パータシスエアロゾル負荷感染症モデルを使用して評価した。破傷風ならびにwPおよびaPワクチンが、幾人かの患者においてIgEのlogスケールでのブーストを誘導することは、当該技術分野において公知である。表1は、本明細書における実施例において使用したaPおよびwPワクチンの成分を載せる。
【0101】
【0102】
C57BL/6マウスを、ボルデテラ・パータシスの病原性株でのエアロゾル負荷(0日目)の前-42および-14日目に、TDaP[Adacel(登録商標)(Sanofi Pasteur)]またはDTPワクチン(Serum Institute of India、プネ、インド)のいずれかで免疫化した。抗マウスIL-4R抗体(「抗IL-4Rα」)またはアイソタイプ対照抗体での処置は、初回免疫化の1週間前に開始し、7日目まで週1回続けた。処置計画を
図1において要約する。この実施例において使用した抗IL-4Rα抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号12を含むアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗マウスIL-4R抗体であった。
【0103】
血清を、無処置のマウスおよび免疫化したマウス(1群当たり12匹のマウス)から0日目に集めた。総IgEレベルをELISAにより解析した。総血清IgEレベルを、ビオチン抱合抗マウスIgE抗体およびペルオキシダーゼ抱合ストレプトアビジンを使用したELISAにより決定した。抗体レベルを、標準曲線から決定した総IgE(μg/mL)として表す。
【0104】
抗IL-4Rαでのマウスの処置は、アイソタイプ対照抗体で処置したマウスと比較して、TDaP(aP)およびDTP(wP)ワクチンで免疫化したマウスにおいて総血清IgEレベルを有意に低下した(
図2)。血清IgEにおける低減は、ワクチンにより誘発される、Th2応答の低減および/またはアレルギー反応における予防もしくは低減を示す。
【0105】
実施例2:百日咳ワクチンでワクチン接種したマウスにおける抗原特異的血清IgG抗体に対する抗IL-4R抗体処置の効果
この実施例において、全細胞百日咳(wP;Th1免疫応答)または無細胞百日咳(aP;Th2免疫応答)ワクチンによる誘導される抗原特異的血清抗体に対する抗IL-4R抗体の効果を、ボルデテラ・パータシスエアロゾル負荷感染症モデルを使用して評価した。C57BL/6マウスを、ボルデテラ・パータシスの病原性株でのエアロゾル負荷(0日目)の前-42および-14日目に、無細胞百日咳(aP)ワクチン[Adacel(登録商標)TDaP(Sanofi Pasteur)]または全細胞百日咳(wP)(DTP、Serum Institute of India、プネ、インド)のいずれかで免疫化した。抗マウスIL-4R抗体(「抗IL-4Rα」)またはアイソタイプ対照抗体での処置は、開始免疫の1週間前に開始し、7日目まで週1回続けた。処置計画を
図1において要約する。この実施例において使用した抗IL-4Rα抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号12を含むアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗マウスIL-4R抗体であった。血清を、無処置のマウスおよび免疫化したマウス(1実験毎に1群当たり4匹のマウス)から負荷の日に集めた。抗原特異的血清抗体を、プレート結合熱殺傷ボルデテラ・パータシスまたはFHA(5mg/mL)を使用したELISAにより解析した。結合した抗体を、ビオチン抱合抗マウスIgG、IgG1、IgG2aまたはIgG2c抗体およびペルオキシダーゼ抱合ストレプトアビジンを使用して検出した。抗体レベルを、非免疫化マウス血清で得たバックグラウンド値より上の2SDへのタイトレーション曲線の直線部分の外挿により決定した平均エンドポイントタイターとして表す。
【0106】
熱殺傷ボルデテラ・パータシスに特異的な血清IgGを、wPで処置したマウスにおいて解析し、一方、線維状赤血球凝集素(FHA)に特異的な血清IgGを、aPで処置したマウスについて解析した。aPまたはwPでの免疫化は、ボルデテラ・パータシス特異的IgGを誘導し;総IgGタイターは、aPで免疫化したマウスにおいて抗IL-4Rαでの処置により変化せず、抗原特異的総IgGにおける非常に(有意であはるが)小さな増大を、wPで免疫化したマウスにおいて観察した(
図3)。aPでの免疫化は、IgG1抗FHA抗体を主に誘導し(Th2特異的応答を示す)、抗IL-4Rα処置により有意に低減した(
図4)。FHA特異的IgG2aおよびIgG2cタイター(Th1応答を示す)を、抗IL-4Rαでの処置により有意に増強し;タイターは、アイソタイプ対照抗体で処置したaP免疫化マウスと比較したとき、抗IL-4Rαで処置したaP免疫化マウスにおいて有意に高かった(
図5および6)。wPで免疫化した実験群間での熱殺傷ボルデテラ・パータシス(HK-BP)特異的IgG1抗体タイターにおいて有意な差は存在しなかったが、アイソタイプ対照抗体と比較して、抗IL4Rαで処置した群においてHK-BP特異的IgG2aおよびIgG2cタイターにおいてわずかに有意な増大が存在した。IgG2aおよびIgG2cタイターにおけるこの増大は、個々の実験(それぞれ、1群当たり4匹のマウスからなる)について有意ではないが、複数の実験の結果をためたとき有意である。
【0107】
したがって、抗IL-4Rα処置は、aPワクチンでの免疫化により誘導されるTh2応答を低減し、Th1応答を増強し;これは、血清IgG1からIgG2a/c抗体への切り替えおよびIgE濃度における低下に反映された。
【0108】
実施例3:サイトカインの抗原特異的産生に対する抗IL-4R抗体の効果
この実施例において、脾細胞エクスビボ再刺激後のサイトカインの抗原特異的産生に対する抗IL-4R抗体の効果を、ボルデテラ・パータシスエアロゾル負荷感染症モデルを使用して試験した。C57BL/6マウスを、ボルデテラ・パータシスの病原性株でのエアロゾル負荷(0日目)の前-42および-14日目に、無細胞百日咳(aP)ワクチン[Adacel(登録商標)TDaP(Sanofi Pasteur)]または全細胞百日咳(wP)(DTP、Serum Institute of India、プネ、インド)のいずれかで免疫化した。抗マウスIL-4R抗体(「抗IL-4Rα」)またはアイソタイプ対照抗体での処置は、初回免疫化の1週間前に開始し、7日目まで週1回続けた。処置計画を
図1において要約する。この実施例において使用した抗IL-4Rα抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号12を含むアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗マウスIL-4R抗体であった。血清を、無処置のマウスおよび免疫化したマウス(1実験毎に1群当たり4匹のマウス)から負荷の日(0日目)に集めた。脾臓細胞による抗原特異的サイトカイン産生を、ELISAにより解析した。脾細胞を、マウスの脾臓から脾臓組織の機械的破砕により調製した。脾細胞を、示した数もしくは濃度の熱殺傷ボルデテラ・パータシスまたは精製FHAと培養した。上清を、72時間後に取り出し、IL-13、IL-17およびIFNγ濃度を、ELISAにより決定した。
【0109】
抗IL-4Rαで処置したaP免疫化マウス由来の脾臓細胞は、アイソタイプ対照で処置したマウスより、FHA刺激への応答において用量依存性の有意に高いインターフェロン-ガンマ(IFNγ)を産生した(
図7)。IFNγ濃度を、全ての抗IL-4Rαで処置したマウス由来の脾臓細胞において検出したが、アイソタイプ対照で処置したaP免疫化マウスにおいて4匹のうち1匹のマウスにおいて低い濃度であった。抗IL-4Rαで処置したaP免疫化マウス由来の脾臓細胞において、IL-13の低減傾向が存在した(データを示していない)。FHA特異的IL-17を検出しなかった。再刺激後のwP免疫化マウス由来の脾細胞によるボルデテラ・パータシス特異的IL-17およびIFNγ産生は、全ての免疫化群に渡り同様であった(データを示していない)。
【0110】
実施例4:抗IL-4R抗体での処置は百日咳ワクチンの有効性を増強する
この実施例において、全細胞百日咳(wP)または無細胞百日咳(aP)ワクチンについてアジュバントとしての抗IL-4R抗体の保護有効性を、ボルデテラ・パータシスエアロゾル負荷感染症モデルを使用して評価した。C57BL/6マウスを、ボルデテラ・パータシスの病原性株でのエアロゾル負荷(0日目)の前-42および-14日目に、無細胞百日咳(aP)ワクチン[Adacel(登録商標)TDaP(Sanofi Pasteur)]または全細胞百日咳(wP)(DTP、Serum Institute of India、プネ、インド)のいずれかで免疫化した。抗マウスIL-4R抗体(「抗IL-4Rα」)またはアイソタイプ対照抗体での処置は、初回免疫化の1週間前に開始し、7日目まで週1回続けた。処置計画を
図1において要約する。この実施例において使用した抗IL-4Rα抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号12を含むアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗マウスIL-4R抗体であった。
【0111】
肺当たりのコロニー形成単位(CFU)レベルを、ボルデテラ・パータシス負荷の0、3、7、10および14日後に評価した。簡単に言うと、感染症経過に続き、負荷後複数の間隔で4匹のマウスの群由来の肺においてCFUカウントを行った。肺を無菌的に取り出し、氷上で無菌の食塩水1mLにおいてホモジナイズした。個々の肺由来の無希釈および連続希釈ホモジネートを、ボルデー・ジャング寒天プレートにトリプリケートで斑点をつけ、CFUの数を、5日間のインキュベーション後に計算した。検出限界は、各時間ポイントにて4匹のマウスの群について肺当たりおよそ0.3log10CFUであった。
【0112】
wPワクチンでの免疫化は、生きたボルデテラ・パータシスでのエアロゾル負荷に対する最高レベルの保護を与えた(
図8)。wP免疫化マウスにおける抗IL-4Rα処置は、アイソタイプ対照で処置したwP免疫化マウスと同様に、感染症を排除した。抗IL-4Rα処置は、aPワクチンの有効性を有意に増強し;aPワクチンで免疫化し、抗IL-4αで処置したマウスは、アイソタイプ対照で処置したマウスと比較したとき、3日目に有意により少ない肺細菌負荷を有していた。抗IL-4Rα処置は、aPワクチンの有効性を、クリアランス曲線下面積に基づき3分の1増大させた。この実施例の結果は、IL-4R遮断が、一般に、Th2応答を誘発するワクチンの保護効果を増強するのに有用な治療ストラテジーであることを示唆する。
【0113】
実施例5:抗IL-4R抗体の投与はワクチンの1回用量の有効性を増強する
この実施例において、ボルデテラ・パータシスエアロゾル負荷感染症モデルを使用して、ワクチンの1回用量の有効性に対する抗IL-4R抗体の効果を評価した。
【0114】
C57BL/6マウスを、ボルデテラ・パータシスの病原性株でのエアロゾル負荷の3週間前に、aPワクチン(Adacel(登録商標)TDaP;Sanofi Pasteur)またはwPワクチン(DTP、Serum Institute of India、プネ、インド)のいずれかで1回免疫化した。抗マウスIL-4R抗体(「抗IL-4Rα」)またはアイソタイプ対照抗体での処置は、免疫化の1週間前に開始し、試験の期間中、週1回続けた。処置計画を
図9において要約する。この実施例において使用した抗IL-4Rα抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号12を含むアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗体であった。
【0115】
次に、マウスにボルデテラ・パータシスを負荷し;肺CFUを、感染後の0、3、7、14および21日目に評価した。簡単に言うと、感染症経過に続き、負荷後複数の間隔で4匹のマウスの群由来の肺においてCFUカウントを行った。肺を無菌的に取り出し、氷上で無菌の食塩水1mLにおいてホモジナイズした。個々の肺由来の無希釈および連続希釈ホモジネートを、ボルデー・ジャング寒天プレートにトリプリケートで斑点をつけ、CFUの数を、5日間のインキュベーション後に計算した。検出限界は、各時間ポイントにて4匹のマウスの群について肺当たりおよそ0.3log10CFUであった。
【0116】
wPワクチンでの免疫化は、生きたボルデテラ・パータシスでのエアロゾル負荷に対する最高レベルの保護を与え(
図10)、wPワクチンの有効性は、抗IL-4Rα処置により変化しなかった。抗IL-4Rα処置は、ワクチンを1回用量まで低減したときでさえ、aPワクチンの有効性を有意に増強した。aPで免疫化し、抗IL-4αで処置したマウスは、14日目までに細菌感染症を排除し、一方、aPで免疫化し、アイソタイプ対照で処置したマウスは、依然として、14日目において4log
10細菌を有し、21日までに感染症を完全には排除しなかった。抗IL-4Rα処置は、aPワクチンの有効性を、クリアランス曲線下面積に基づき3分の1増大させた。
【0117】
抗IL-4Rαは、14日目までに完全に排除されたボルデテラ・パータシス感染症を伴い、aPワクチンの有効性を有意に増強した。1用量免疫化プロトコールは、抗IL4Rα処置との併用でaPワクチンの増大した有効性を明確に説明する。
【0118】
実施例6:無細胞百日咳ワクチンへのTh1応答に対する低用量の抗IL-4R抗体の効果
この実施例において、aPワクチンにより誘導される血清総および抗原特異的抗体に対する抗IL-4R抗体の効果を、マウスモデルにおいて評価する(本明細書において実施例1~5において記載する)。C57BL/6マウスを、無細胞百日咳(aP)ワクチン[Adacel(登録商標)TDaP(Sanofi Pasteur)]で免疫化する。マウスを、初回免疫化前に、抗マウスIL-4R抗体(「抗IL-4Rα」)またはアイソタイプ対照抗体で処置する(以下を参照)。この実施例において使用した抗IL-4Rα抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号12を含むアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗マウスIL-4R抗体である。
【0119】
第1の実験において、抗IL-4R抗体1~5用量を、aPでのワクチン接種の前に異なる群における動物にマウス体重1kg当たり25mgにて投与する。1つの群の動物に、aPワクチンと同時に抗IL-4R抗体をさらに投与する。1つの群の動物に、予備刺激用量の4週間後に、aPワクチン追加免疫用量をさらに投与する。
【0120】
別の実験において、抗IL-4R抗体1~5用量を、aPでのワクチン接種の前に異なる群における動物にマウス体重1kg当たり10mgにて投与する。1つの群の動物に、aPワクチンと同時に抗IL-4R抗体をさらに投与する。1つの群の動物に、予備刺激用量の4週間後に、aPワクチン追加免疫用量をさらに投与する。
【0121】
別の実験において、抗IL-4R抗体1~5用量を、aPでのワクチン接種の前に異なる群における動物にマウス体重1kg当たり1mgにて投与する。1つの群の動物に、aPワクチンと同時に抗IL-4R抗体をさらに投与する。1つの群の動物に、予備刺激用量の4週間後に、aPワクチン追加免疫用量をさらに投与する。
【0122】
血清を、無処置マウスおよび免疫化したマウスから、ワクチン投与の7日後および21日後に集める。抗原特異的血清抗体を、プレート結合熱殺傷ボルデテラ・パータシスまたはFHA(5mg/mL)を使用したELISAにより解析する。結合した抗体を、ビオチン抱合抗マウスIgG、IgG1、IgG2aまたはIgG2c抗体およびペルオキシダーゼ抱合ストレプトアビジンを使用して検出する。抗体レベルを、非免疫化マウス血清で得たバックグラウンド値より上の2SDへのタイトレーション曲線の直線部分の外挿により決定した平均エンドポイントタイターとして表す。
【0123】
aPワクチン投与に先立ち、および/またはそれと同時に低用量の抗IL-4R抗体を投与したマウスは、血清IgG1から血清IgG2a/c抗体への切替およびIgE濃度における低下を示すことが予想される。さらに、aPワクチンでのワクチン接種の前に投与した抗IL-4R抗体1回用量でさえ、血清IgG1レベルの低減および血清IgG2a/cレベルにおける増大およびIgEレベルにおける低下(すなわち、Th2からTh1応答への切替)をもたらすであろうことが予想される。したがって、ワクチン投与の前および/または最中の低用量での抗IL-4Rα処置は、aPワクチンでの免疫化により誘導されるTh2応答を低減し、Th1応答を増強する。
【0124】
実施例7:幼少のヒヒモデルにおけるaPワクチンのアジュバントとしてのIL-4R遮断
無細胞百日咳(aP)ワクチンのアジュバントとしての抗IL-4R抗体の有効性を、臨床上関連する幼少のヒヒモデルにおいて評価した(Warfel et al 2014, PNAS 111: 787)。この実施例において使用した抗IL-4Rα抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号15を含むアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗サルIL-4R抗体であった(本明細書において「mAb1」として言及される)。
【0125】
試験設計を表2において要約する。
【0126】
【0127】
ヒヒを、ヒト用量のaPまたはwPで、2、4および6月齢にて筋肉内免疫化する。aPを使用する研究のため、動物に、Daptacel(Sanofi Pasteur)またはInfanrix(グラクソ・スミスクライン)でワクチン接種する。wPを使用する研究のため、動物に、トリプル抗原(Serum Institute of India)でワクチン接種する。ワクチン接種しない動物も年齢を合わせる。mAb1を2、4および6カ月齢にて固定用量で受け取る群5を除き、全ての動物は、プラセボまたはmAb1を皮下で1、2、3、4、5、および6カ月齢にて固定用量で受け取る(表2)。全血を、血清およびPBMCのため1、2、3、4、5および6カ月齢にて採取する。血清は、mAb1レベルについて、および百日咳特異的総IgG、IgG1、IgG4およびIgEレベルについて上昇する。動物に、ボルデテラ・パータシスにより6~8カ月齢にて負荷する。
【0128】
aPでのワクチン接種に先立ち抗IL-4R抗体で処置した動物は、百日咳特異的IgG1レベル(Th1特異的)における増大および百日咳特異的IgG4レベル(Th2特異的)における低下を示すことが予想される。より重要なことに、肺からの細菌感染症のより速いクリアランスにより証明される通り、aPワクチンでのワクチン接種に先立ち抗IL-4R抗体で処置した動物は、ボルデテラ・パータシス負荷の際に疾患に対して保護される。
【0129】
実施例8:年齢10~15歳の青年における抗IL-4R抗体と併用での無細胞百日咳ワクチンの臨床試験
アジュバントとしての抗IL-4R抗体の有効性を、年齢10~15歳の青年における臨床試験において測定する。試験の1つの目的は、デュピルマブとの併用での無細胞百日咳ワクチン(TDaP、Adacel(登録商標)、Sanofi Pasteur)の有効性を研究することである。デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対;ならびに配列番号3~8を含む重および軽鎖CDR配列を含む完全なヒト抗IL-4R抗体である。
【0130】
試験処置は、1日目に400mg負荷用量のデュピルマブ、続いて、200mg週1回の用量;または1日目にプラセボ2倍用量、続いて、週1回のプラセボ用量を含む。試験対象は、デュピルマブ200mgの注射、またはプラセボを皮下に8、15、22、29、36、および43日目に受け取る。29日目に、全対象は、TDaP(Adacel(登録商標)、sanofi)ワクチン1回用量を受け取る。対象を、ワクチンへのアレルギー反応についてモニターする。ワクチン特異的血清Igタイターを、ワクチン注射の1、4、8、16および24週間後にチェックする。
【0131】
この試験において測定する変動可能な有効性は、(a)IgEタイター;(b)FHA特異的総IgGタイター;ならびに(c)FHA特異的IgG1、およびIgG4タイターを含む。
【0132】
試験のプライマリーエンドポイントは、43日目のワクチンへの陽性応答を有するデュピルマブで処置した対象の割合である。陽性応答を、プラセボと比較して、(i)デュピルマブで処置した試験対象におけるより低いIgEタイター;(ii)デュピルマブで処置した試験対象におけるより高いワクチン特異的(例えば、抗FHA)IgG4タイター;および(iii)デュピルマブで処置した試験対象におけるより少ない数の有害な現象(アレルギー反応)の1つまたは複数として定義する。
【0133】
試験終了時に、デュピルマブで処置した対象は、以下:(a)プラセボと比較して、より低いIgEタイター;(b)プラセボと比較して、より高い抗FHA総IgGタイター;(c)プラセボと比較して、より低いIgG4およびより高いIgG1タイターの1つまたは複数を有する。試験における50%より多くの対象が、ワクチンへの陽性応答を示す。
【0134】
実施例9:年齢10歳未満の小児における抗IL-4R抗体と併用での無細胞百日咳ワクチン追加免疫用量の臨床試験
アジュバントとしての抗IL-4R抗体の有効性を、年齢10歳未満の小児における臨床試験において測定する。試験の1つの目的は、デュピルマブとの併用での無細胞百日咳ワクチン(DTaP、Sanofi Pasteur)の有効性を試験することである。デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対;ならびに配列番号3~8を含む重および軽鎖CDR配列を含む完全なヒト抗IL-4R抗体である。
【0135】
試験処置は、1日目に50mg負荷用量のデュピルマブ、続いて、用量25mg;または1日目にプラセボ2倍用量、続いて、プラセボ用量を含む。試験対象は、デュピルマブ25mg(またはプラセボ)の皮下注射を隔週で15、29、43、57、71、85、99、および113日目に受け取り;続いて、二次用量の注射を141、155、162、169、176および183日目に受け取る。全対象は、ワクチン用量(DTaP)を43日目に、続いて、追加免疫用量を113および176日目に受け取る。
【0136】
対象を、ワクチンへのアレルギー反応についてモニターする。ワクチン特異的血清Igタイターを、各ワクチン用量の1、4および8週間後にチェックする。
【0137】
この試験において測定する変動可能な有効性は、(a)IgEタイター;(b)FHA特異的総IgGタイター;ならびに(c)FHA特異的IgG1、およびIgG4タイターを含む。
【0138】
試験のプライマリーエンドポイントは、日目のワクチンへの陽性応答を有するデュピルマブで処置した対象の割合である。陽性応答を、プラセボと比較して、(i)デュピルマブで処置した試験対象におけるより低いIgEタイター;(ii)デュピルマブで処置した試験対象におけるより高いワクチン特異的(例えば、抗FHA)IgG1タイター;および(iii)デュピルマブで処置した試験対象におけるより少ない数の有害な現象(アレルギー反応)の1つまたは複数として定義する。
【0139】
試験終了時に、デュピルマブで処置した対象は、以下:(a)プラセボと比較して、より低いIgEタイター;(b)プラセボと比較して、より高い抗FHA総IgGタイター;(c)プラセボと比較して、より低いIgG4およびより高いIgG1タイターの1つまたは複数を有する。試験における50%より多くの対象が、ワクチンへの陽性応答を示す。50%より多くのデュピルマブで処置した対象が、より高いIgG1タイターを示す。
【0140】
実施例10:デュピルマブで処置したアトピー性皮膚炎を有する成人におけるワクチン応答を調べるための臨床試験
これは、皮下投与したデュピルマブで処置した中等度から重度のADを有する成人において、沈降破傷風トキソイドAdacel(登録商標)(破傷風、ジフテリア、および無細胞百日咳[TDaP])ならびにMenomune(髄膜炎菌多糖体ワクチン)ワクチン接種への免疫応答を評価する、32週間の無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間試験であった。適格患者(194人の患者)を、16週間デュピルマブまたはプラセボを受け取るよう比1:1で無作為化した。無作為化を、ベースラインの疾患重症度(中等度対重度のIGA)により階層化した。処置期間は16週間であり、その後の追跡期間16週間を伴った。
【0141】
試験目的
試験の主要な目的は、週1回皮下(SC)のデュピルマブ300mgで処置した、局所医薬で十分に制御されなかった、中等度から重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する患者のT細胞依存性ワクチン応答を評価することであった。
【0142】
試験の二次的な目的は、(i)週1回SCのデュピルマブ300mgで処置した中等度から重度のADを有する患者のT細胞依存性ワクチン応答;(ii)中等度から重度のADを有する患者における同時投与したワクチンおよびSCのデュピルマブの安全性;ならびに(iii)中等度から重度のADを有する患者におけるデュピルマブの有効性を評価することであった。
【0143】
試験におけるプライマリーエンドポイントは、試験16週目(すなわち、免疫化の4週間後)にて破傷風トキソイド(Adacel[TDaP]ワクチン)への陽性応答を有する患者の割合であった。陽性応答を、ベースラインタイター≧0.1IU/mLを有する患者についてのAdacelの投与の4週間後の抗破傷風IgGタイターにおけるベースライン、またはベースラインタイター<0.1IU/mLを有する患者についてのタイター≧0.2IU/mLからの4倍以上の増大として定義した。
【0144】
セカンダリーエンドポイントは、(i)ワクチン接種前の破傷風抗体タイター≧0.1IU/mlを有する患者についての抗破傷風IgGタイターにおけるワクチン接種前のベースライン、またはワクチン接種前タイター<0.1IU/mlを有する患者についてのタイター≧0.2IU/mlからの2倍以上の増大として定義した陽性応答を含む、試験16週目での陽性応答を有する患者の割合;(ii)Menomune応答:血清型CについてSBAタイター≧8(Immunological Basis for Immunization Series Module 15: Meningococcal Disease, World Health Organization 2010);(iii)16週目での治験医師による包括的評価([IGA](0-1))に達する患者の割合;(iv)16週目での湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアにおいて少なくとも50%の低減に達する患者の割合;(v)16週目での湿疹面積・重症度指数(EASI)スコアにおいて少なくとも75%の低減に達する患者の割合;(vi)16週目での最大そう痒数値的評価スケール(NRS)におけるベースラインからの変化;(vii)16週目でのBSAにおけるベースラインからの変化;(viii)1週目での全般症状スコア(GISS)の紅斑におけるベースラインからの変化;(ix)16週目でのGISSの浸潤/丘疹形成におけるベースラインからの変化;(x)16週目でのGISSの剥脱におけるベースラインからの変化;(xi)16週目でのGISSの苔癬化におけるベースラインからの変化;(xii)患者向け湿疹評価スコア(POEM)におけるベースラインから16週までの変化;(xiii)20週の間の重大な緊急処置を要する有害事象(TEAE)の発生;(xiv)20週の間のTEAEに起因する試験薬物中止の発生;および(xv)20週の間の皮膚感染症の発生であった。
【0145】
試験設計
試験は、スクリーニング期間、処置期間、および追跡期間からなるものであった。患者は、デュピルマブの週1回の注射を1日目から15週の間受け取った。自己注射の適切なトレーニングを提供した後、患者/介護者は、数週間の間デュピルマブを自己注射し、クリニック訪問はスケジュールになかった(5、6、7、9、10、11、13、14、および15週目)。サイトは、5、6、7、9、10、11、13、14、および15週目にて訪問を行うための電話により、患者とコンタクトを取った。12週目にて、患者は、Adacel(TDaP)ワクチンおよびMenomuneワクチンを受け取った。ワクチン接種への応答(抗破傷風IgGタイターおよび髄膜炎菌血清群に対する血清殺菌抗体(SBA)タイター)を、4週間後に評価した。
【0146】
緩和剤、軽度からより高い効力の局所コルチコステロイド、および/もしくは局所カルシニューリン阻害剤を使用した患者、または使用しなかった患者が、潜在的に登録に適格であった。患者は、試験中の任意の時間にて、局所AD療法で、および/または低用量全身性コルチコステロイド(プレドニゾンもしくはその均等物≦10mg)での処置を受け、試験薬物を続けることができた。高用量全身性コルチコステロイド(任意のステロイド用量プレドニゾンまたはその均等物>10mg)の単一治療単位を、開始後最大14日間、緊急薬として使用し、試験の間の1日目から10週の間に完了したが、試験薬物をこの時間の間一時的に中止した。ADのため高用量全身性コルチコステロイドで処置した患者は、全身性コルチコステロイドを止めた後、患者が、特定の免疫抑制剤と関連する臨床上有意な有害事象(AE)を経験しない限り、かつ医療モニターでの診察と同意の後、試験薬物5半減期を再度開始することができた。10週~16週後、高用量全身性コルチコステロイドを禁止した。
【0147】
デュピルマブコホートについて、患者は、負荷用量600mg、SCを1日目に、続いて、300mg、qwを1週目~15週目に受けた。
【0148】
プラセボコホートについて、患者は、負荷用量、SCを1日目に、続いて、週1回、プラセボSC用量を1週目~15週目に受けた。
【0149】
Adacel(TDaP)ワクチン:患者に、Adacel(TDaP)ワクチン、IMを12週目にワクチン接種した。
【0150】
Menomuneワクチン:患者に、Menomuneワクチン、SCを12週目にワクチン接種した。
【0151】
Sanofi Pasteurが製造したAdacel(Tdap)を、予め充填したシリンジにおいて提供した。用量各0.5mLは、破傷風トキソイド(T)5Lf(凝集単位)、ジフテリアトキソイド(d)2Lf、および無細胞百日咳抗原(解毒化百日咳毒素2.5μg、線維状赤血球凝集素[FHA]5μg、パータクチン[PRN]3μg、2および3型線毛[FIM]5μg)を含有していた。用量0.5mL当たりの他の成分は、アジュバントととしてリン酸アルミニウム1.5mg(アルミニウム0.33mg)、残存ホルムアルデヒド≦5μg、残存グルタルアルデヒド<50ng、および2フェノキシエタノール(保存剤としてではない)3.3mg(0.6%v/v)を含んでいた。抗原は、DAPTACELR、ジフテリアおよび破傷風トキソイド、ならびに沈降無細胞百日咳ワクチン(DTaP)におけるものと同じであるが、Adacel(Tdap)ワクチンを、低減下量のジフテリアおよび解毒化百日咳毒素で製剤化した。Sanofi Pasteurが製造したMenomuneを、SC使用のための1回用量バイアルとして提供した。1回用量投与用の希釈液(0.6mL)は、保存剤を含まない、無菌の発熱物質を含まない蒸留水を含有していた。複数用量投与用の希釈液(6mL)は、無菌の発熱物質を含まない蒸留水、および再構成したワクチンのための保存剤として加えた、水銀誘導体であるチメロサールを含有していた。
【0152】
試験集団
標的集団は、有効な局所療法での処置の適切な候補でなかったものを含む、疾患が局所性医薬で十分に制御されていない中等度から重度のADを有する成人を含んでいた。
【0153】
包含基準:患者は、試験における包含に適格であるには以下の基準に合致しなければならなかった:(1)スクリーニング訪問前少なくとも3年間存在した慢性AD(American Academy of Dermatology Consensus Criteria, [Eichenfeld 2004]による)を有する年齢18~64歳の男性または女性の成人;(2)局所性AD医薬での外来処置の十分な経過に不十分な応答の実証された最近の病歴(スクリーニング訪問前6カ月以内)を有するか、またはそうでなければ、局所性AD療法が勧められなかった(例えば、副作用もしくは安全性のリスクのため)患者;(3)スクリーニング訪問およびベースライン訪問時に湿疹面積・重症度指数(EASI)スコア≧16;(4)スクリーニング訪問およびベースライン訪問時に治験医師による包括的評価(IGA)スコア≧3(IGAスケール0~4);ならびに(5)スクリーニング訪問およびベースライン訪問時にAD改善の体表面積病変≧10%。
【0154】
第2の基準について注意:不十分な応答を、どちらか短い方である、少なくとも28日間、または製品処方情報により推奨される最大継続時間(例えば、超強力な局所性コルチコステロイドについて14日)適用した、中等度からより高い効力の局所性コルチコステロイド(必要に応じて、局所性カルシニューリン阻害剤ありまたはなし)の毎日の投与計画での処置にもかかわらず、寛解または低い疾患活性状態(IGA0=排除~2=軽度に匹敵する)に達し、維持するのに失敗したと定義した。過去6カ月においてADについての実証された全身性処置を有する患者も、局所処置への不十分な応答者とみなし、適当な決議後にデュピルマブでの処置に適格であった。重大な副作用または安全性のリスクは、可能性のある処置の恩恵を上回り、調査者または患者の主治医が評価した、処置への不寛容、過敏症反応、有意な皮膚萎縮、および全身性作用を含んだものであった。同時に存在するチャートに含まれる容認可能な証拠書類は、記録された局所処方薬および処置結果、または患者の主治医とのコミュニケーションに基づく調査者の証拠書類を記述する。証拠書類が不十分であったなら、可能性のある患者を、かかる証拠書類を得た(例えば、中程度からより高い効力の局所性コルチコステロイド[局所性カルシニューリン阻害剤ありまたはなし]の28日間の経過に失敗したことを示した患者)後、再度スクリーニングした。
【0155】
患者は、軟化剤、局所性コルチコステロイド+/-局所性カルシニューリン阻害剤ありまたはなしの試験に加わることが可能であったが、以下の要件に合致しなければならなかった:(i)ベースラインで局所性AD薬剤で処置した患者は、どちらか短い方である、少なくとも14日間、または処方情報により推奨される処置の最大継続時間、安定な投与計画にいなければならない;および(ii)ベースラインで局所性AD薬剤で処置しなかった患者は、ベースラインの訪問に先立ち7日以内はそれらを使用しなかったかもしれない。
【0156】
方法および評価
この集団におけるデュピルマブの有効性を、破傷風IgGタイターおよび髄膜炎菌血清群へのSBAタイターの測定、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)アンケート、ならびに患者が報告した結果により評価した。ワクチンへの応答を、破傷風IgGタイターおよび髄膜炎菌血清群へのSBAタイターの測定により評価した。
【0157】
解析変数
以下の人口統計学的およびベースライン特徴変数を要約した。
【0158】
人口統計学的変数:スクリーニング時の年齢(年)、年齢群(<65、>=65)、性別、民族性、人種、ベースラインの体重(kg)、身長(m)、およびBMI(kg/m2)。
【0159】
ベースライン特徴:(i)AD疾患の継続期間、(ii)免疫グロブリンアイソタイプ(総IgG、IgM、IgA、およびIgE)、抗破傷風IgGタイター、ならびに群A、C、Y、ならびにW-135多糖抗原についてのSBAタイター、(iii)そう痒数値的評価スケール(NRS)、治験医師による包括的評価(IGA)スコア、湿疹面積・重症度指数(EASI)スコア、全般症状スコア(GISS)、アトピー性皮膚炎の体表面積(BSA)病変、疾患状態の患者包括的評価、および患者向け湿疹評価スコア(POEM)を含む、アトピー性皮膚炎(AD)関連パラメーター。AD関連パラメーターは、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国公開第2014/0072583号において記載される。
【0160】
統計プラン
フル・アナリシス・セット(FAS)は、任意の試験薬物を受けた全ての無作為化患者を含んだ;それは、割当(無作為化)処置に基づく。有効性エンドポイントをFASを使用して解析した。セーフティ・アナリシス・セット(SAF)は、任意の試験薬物を受けた全ての無作為化患者を含んだ;それは、受けた(処置した)処置に基づく。処置コンプライアンス/投与および全ての臨床上の安全性変数を、SAFを使用して解析した。試験の16週目にて破傷風ワクチンへの応答者を、無作為化階層(疾患重症度)により層別化したコクラン・マンテル・ヘンツェル(CMH)検定を使用したデュピルマブとプラセボの間の陽性応答者の割合の比較により調査した。90%CIを、予備p値で提示した。連続するエンドポイントのため、反復測定を含む混合効果モデル(MMRM)を使用した。このモデルは、処置についての因子(固定効果)、無作為化階層(疾患重症度)、試験訪問、訪問交流による処置、および関連するベースライン値を含む。統計的推測を、MMRMから導いた。最小二乗平均および90%CIを、MMRMモデルから導き、p値を提供しなかった。
【0161】
結果
人口統計学的およびベースライン特徴を、表3~6において提示する。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
デュピルマブ処置治療群において16週目にて破傷風トキソイドへの陽性応答を有する
患者の割合(83.3%)は、プラセボ処置治療群におけるもの(83.7%)と同様であった。処置群間の差の90%CIは、(-9.41%、8.69%)であった。
【0167】
応答の二次性測定は、以下を含むものであった:ワクチン接種の4週間後(16週目)での抗破傷風IgGタイターにおける2倍以上の増大として定義した、破傷風ワクチン接種への陽性応答を有する患者の割合;およびワクチン接種の4週間後(16週目)での血清群Cへの血清殺菌抗体(SBA)応答≧8として定義した、Menomuneへの陽性応答を有する患者の割合。
【0168】
デュピルマブで処置した群において同様の割合の患者(95.6%)が、プラセボで処置した患者(94.6%)と比較して、抗破傷風IgGタイターにおいて2倍以上の増大に達した。Menomuneワクチンへの一様な応答も、両方の処置群について観察し;デュピルマブで処置した患者の86.7%が、プラセボで処置した患者についての87.0%と比較して、SBA>8に達した。破傷風トキソイド(2倍以上の増大)およびMenomune応答における処置群間の差の90%CIは、それぞれ、(-4.29%、6.27%)および(-8.54%、7.96%)であった。しかしながら、デュピルマブで処置した患者は、プラセボと比較して、破傷風トキソイドと関連する低減した毒性を示した(例えば、皮膚反応)。
【0169】
他のセカンダリー有効性エンドポイントの結果を、表7において提示する。
【0170】
【0171】
さらなる解析は、プラセボで処置した患者およびデュピルマブで処置した患者における、総IgE、ならびにFHA特異的IgG1ならびにIgG4タイターを含む。デュピルマブで処置した患者は、プラセボと比較して、より低いIgEタイターを有すると予想される。
【0172】
デュピルマブ中の患者は、プラセボと比較して、有意に低い総IgEを有していた(表8)。
【0173】
【0174】
TDaPワクチン成分[百日咳毒素(PT)、百日咳パータクチン(PRN)および破傷風トキソイド(TT)]への応答におけるIgEレベルを解析した。ワクチン特異的IgEに加えて、2つのアレルゲンを解析に含めた(Fel d 1;ネコアレルゲン、およびBet v 1;カバノキアレルゲン)。アレルゲンおよびTDaP抗原へのアレルギー抗体応答を、改変Luminex(登録商標)抗体アッセイを介してFel d 1、Bet v 1、破傷風トキソイド(TT)、百日咳毒素(PT)、および百日咳パータクチン(PRN)IgEレベルを測定することにより評価した。12週目(TDaP免疫化の時)、16週目(処置期間終了)、および32週目(試験終了)の血清を、GullSORB(商標)で処理し、Fel d 1、Bet v 1、TT、PT、またはPRNコート微粒子とインキュベーションした。結合した特異的IgEレベルを、R-フィコエリトリン(PE)と抱合した抗hIgE抗体を介して検出し、TDaP TT-、PT-、またはPRN-またはアレルゲンFel d 1-もしくはBet v 1-特異的IgE平均蛍光強度(MFI)として表した。陰性対照血清の平均より3SD上の値を、それぞれのTDaP抗原またはアレルゲンについてIgE陽性とみなした。
【0175】
Fel d 1へのIgE応答は、低くなる傾向があり、Bet v 1へのIgE応答は、デュピルマブで処置した個体において、特に、32週目(試験終了)にて有意に低かった。デュピルマブで処置した個体の54および12.1%対プラセボで処置した個体の65.2%および30.4%は、32週目にて、それぞれ、Fel d 1特異的IgE(p=0.067)およびBet v 1特異的IgE(p<0.001)について陽性であった。これらのアレルゲンへの患者のアレルギー状態は分かっていなかった。
【0176】
デュピルマブで処置した患者およびプラセボで処置した患者は、類似のTDaP特異的IgE MFIを有したが、プラセボで処置した患者は、TDaP特異的IgE応答のより高い頻度の誘発を示した。表9は、12週目(TDaP免疫化の時)、16週目(処置期間終了)、および32週目(試験終了)でのプラセボで処置した患者とデュピルマブで処置した患者のTDaP特異的IgE血清陽性を示す。
【0177】
【0178】
表9において示した通り、デュピルマブで処置した患者の大部分(62.16%)は、試験終了時に(32週目)プラセボ(34.78%)と比較してワクチン特異的IgEについて血清陰性であった。
【0179】
全体として、デュピルマブで処置した個体は、試験終了までに、プラセボで処置した個体(-7.2%)と比較して、総IgEにおける有意な低下(ベースラインから-54.7%)を有する(p=<0.0001)。デュピルマブで処置した患者は、TDaP特異的IgE応答をあまり発達させないようであった。32週目(試験終了)までに、37.8%デュピルマブで処置した患者対65.22%プラセボで処置した患者が、TDaP特異的IgE抗体を生じた(患者の大部分は、測定した全3つのワクチン抗原についてTDaP IgE陽性であった)。
【0180】
FHA特異的IgG1およびIgG4タイターを、プラセボで処置した患者およびデュピルマブで処置した患者において、4、16ならびに32週目にて決定した。デュピルマブ中の患者は、ワクチン接種の4週および16週後にてFHA特異的IgG1において有意な増大を示したが、処置特異的応答を観察しなかった。彼らの年齢により、患者は、彼らの子供時代にwPの全コースを受けていてもよいことは、概説した。真実なら、これは、wPで予備刺激した患者においてTh1バイアスが存在し、それは、成人期まで維持されたことを示していた。
【0181】
安全性
処置緊急AE(TEAE、処置中および追跡期間中に生じ、ベースラインと比較して、重症度が悪化したAE)、ならびに実験室の変数であるECGならびにバイタルサインにおける処置緊急である可能性のある臨床上有意な値(PCSV)を試験した。3人のデュピルマブ患者(3.1%)において、3つの重大なTEAEが存在した。ステージIVの菌状息肉腫1件、扁平上皮癌1件、および血清病様反応1件が存在した。プラセボ群において、重大な処置緊急である有害な現象は存在しなかった。処置緊急である有害な現象の発生率は、プラセボ群と比較して、デュピルマブ群においてより低かった(それぞれ、55.7%対61.9%)。MedDRA器官別大分類(SOC)による有害な現象の概説は、特定の器官システムに対する有害な薬物作用の示唆的なパターンを示さなかった。最も一般に報告したSOCは、「感染症および寄生」(プラセボについて32.0%対デュピルマブについて35.1%)、「一般的な障害および投与部位の状態」(プラセボについて7.2%対デュピルマブについて16.5%)、「皮膚および皮下組織の障害」(プラセボについて16.5%対デュピルマブについて7.2%)、「呼吸性、胸部、縦隔の障害」(プラセボについて10.3%対デュピルマブについて7.2%)、「胃腸の障害」(プラセボについて5.2%対デュピルマブについて11.3%)であった。最も一般的なTEAEは、上気道感染症(プラセボについて14.4%対デュピルマブについて11.3%)、アトピー型皮膚炎(プラセボについて11.3%対デュピルマブについて1.0%)、および上咽頭炎(プラセボについて5.2%対デュピルマブについて4.1%)を含んでいた。デュピルマブで処置した群は、プラセボと比較して、ワクチン注射と関連する注射部位反応、限局性腫脹またはリンパ節の腫脹のより低い発生率を示した。
【0182】
結論
デュピルマブは、T細胞依存性ワクチン(dTap)およびT細胞非依存性ワクチン(Menomune)への患者の応答を抑制しなかった。T細胞依存性ワクチン(dTap)およびT細胞非依存性ワクチン(Menomune)へのデュピルマブ300mg、qwで処置した患者の応答は、プラセボで処置した患者の応答と匹敵した。全てのセカンダリー有効性エンドポイントが、統計上有意な好ましいデュピルマブ群を示した。デュピルマブ300mg、qwは、安全であり、十分に許容された。デュピルマブの安全性特性は、従前の研究から見られたものと一致することが明らかになった。
【0183】
実施例11:ヒト対象における百日咳ワクチンへのTh1対Th2応答の持続時間
【0184】
この実施例は、小児時代に全細胞(wP)または無細胞百日咳(aP)ワクチンで予備刺激されたヒト対象において百日咳ワクチンに対するTh1/Th2応答の持続時間を調べる。wPまたはaPワクチンで予備刺激された個体を、6つの群に分けた。wPまたはaPで予備刺激された個体を、wP、aPまたはワクチンなし(対照)で追加免疫化する。抗体アイソタイプ(総ならびに抗原特異的IgGアイソタイプおよびIgE)を、群において試験する。初期研究では、これらの個体においてT細胞応答を調べた(Bancroft et al 2016; 304-305: 35-43)。
【0185】
wPで予備刺激された個体は、aPまたはwPにより追加免疫化したかにかかわらず、Th1応答に特異的な抗体アイソタイプ(抗原特異的血清IgG1レベルにおける増大)を示すと予想される。同様に、aPで予備刺激された個体は、aP/wP追加免疫に関りなく、Th2応答に特異的な抗体アイソタイプ(抗原特異的血清IgG4レベルにおける増大)を示す。これは、aP(Th2特異的応答)またはwP(Th1特異的応答)による開始ワクチン接種への応答において引き金を引かれた応答が、成人期を通じて存続することを示す。
【0186】
結果に基づき、予備刺激用量のときおよび/またはその前にIL-4Rアンタゴニストを投与することが示唆される。aPワクチンを投与した個体に、aPワクチンの前および/またはそれと同時に抗IL-4R抗体を投与して、開始ワクチン接種のときにTh1応答を刻み込む。
【0187】
実施例12:他のアジュバントとのアジュバントとしての抗IL-4R抗体の比較
【0188】
この実施例は、他のアジュバントと比較した、アジュバントとしての抗IL-4R抗体の有効性を調べる。この実施例において使用した抗IL-4Rα抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有するHCVRおよび配列番号12を含むアミノ酸配列を有するLCVRを含む抗マウスIL-4R抗体であった(「抗IL-4Rα」)。
【0189】
マウスを、ミョウバン、AS04、AS03、MF59および抗IL-4Rαの様な異なるアジュバントと組み合わせたモデル抗原として卵白アルブミンで免疫化する。血清総および抗原特異的抗体を解析する。抗IL-4Rαの投与は、卵白アルブミン自体と比較して、卵白アルブミン免疫を追加免疫化し、Th1応答を誘導すると予想される。
【0190】
別の実験において、抗IL-4Rαを、卵白アルブミンおよびミョウバンと組み合わせて投与する。ミョウバンがTh2応答を誘導することは、当該技術分野において公知である。ここで、抗IL4Rαの投与が、ミョウバンに対して特異的な免疫学的モジュレーター/遮断薬として働き、Th1応答における切替を引き起こすと予想される。
【0191】
本発明は、本明細書において記載される特有の実施形態により、範囲において限定されるべきではない。実際に、本明細書において記載されるものに加えて本発明の様々な修飾は、前述の記載および添付の図面から当業者に明らかとなるだろう。かかる修飾は、添付の請求の範囲内にあることが意図される。
【配列表】