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特許7597507代替グルコーストランスポーターを使用してラムノリピドを製造するための細胞および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】代替グルコーストランスポーターを使用してラムノリピドを製造するための細胞および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20241203BHJP
   C12P 19/44 20060101ALI20241203BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
C12N1/21
C12P19/44
C12N15/53 ZNA
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019521393
(86)(22)【出願日】2017-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017076625
(87)【国際公開番号】W WO2018077701
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】16195195.9
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー トゥム
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン シャファー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ショアシュ
(72)【発明者】
【氏名】ミリヤ ヴェセル
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】小金井 悟
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-512024(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012201360(DE,A1)
【文献】ANDREAS,Wittgens et al.,MICROBIAL CELL FACTORIES,英国,BIOMED CENTRAL,2011年10月17日,10:80,pp.1-17,https://microbialcellfactories.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/1475-2859-10-80
【文献】DUBEAU,Danielle et al.,BMCMICROBIOLOGY,英国,BIOMED CENTRAL LTD,2009年12月17日,9:263,pp.1-12
【文献】REBELLO,S.et al.,Journal of Applied Microbiology,2015年,Vol.120,pp.638-646
【文献】CASTILLO,Teresa del et al.,JOURNAL OF BACTERIOLOGY,2007年07月,Vol.189,No.14,pp.5142-5152
【文献】POBLETE-CASTRO,Ignacio et al.,Metabolic Engineering,2013年,Vol.15,pp.113-123
【文献】PLETZER,Daniel et al.,Antonie van Leeuwenhoek,2016年03月19日,Vol.109,pp.737-753
【文献】DOBLER,Leticia et al.,NEW BIOTECHNOLOGY,NL,ELSEVIER BV,2016年01月,Vol.33,No.1,pp.123-135,http://dx.doi.org/10.1016/j.nbt.2015.09.005
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12P 1/00-41/00
C12M 1/00-3/10
C12N 1/00-7/08
CAPlus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムノリピド産生細胞において、該細胞は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)であり、その野生型と比較して、ABCグルコーストランスポーターの減少した活性を有するように、かつその野生型と比較して、少なくとも1つの非ABCグルコーストランスポーターの増大した活性を有するように遺伝子改変されており、
ここで前記遺伝子改変は、ABCグルコーストランスポーターをコードする遺伝子への外来DNAの挿入を含み、
ここで前記非ABCグルコーストランスポーターは、
galP、glf、iolT1、glcP、gluP、SemiSWEETもしくはglcU遺伝子によりコードされる酵素、ならびに
成分酵素I、HPr、酵素IIA、酵素IIBおよび酵素IICからなるPTS系であって、ここで、酵素IIA、IIBおよびIICは、融合タンパク質として存在できるものとするPTS系からなる群から選択され、
前記細胞は、その野生型と比較して、群E、EおよびEから選択される少なくとも1つの酵素の増大した活性を有するように遺伝子改変されており、ここで、E は、rhlA遺伝子によりコードされるか、あるいはrhlA遺伝子によりコードされる酵素に対してアミノ酸残基の10%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつrhlA遺伝子によりコードされる酵素の参照配列を有する酵素の酵素活性の90%超をなおも有する酵素であり、E は、rhlB遺伝子によりコードされるか、あるいはrhlB遺伝子によりコードされる酵素に対してアミノ酸残基の10%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつrhlB遺伝子によりコードされる酵素の参照配列を有する酵素の酵素活性の90%超をなおも有する酵素であり、E は、rhlC遺伝子によりコードされるか、あるいはrhlC遺伝子によりコードされる酵素に対してアミノ酸残基の10%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつrhlC遺伝子によりコードされる酵素の参照配列を有する酵素の酵素活性の90%超をなおも有する酵素である、ことを特徴とする、細胞。
【請求項2】
前記細胞は、その野生型と比較して、D-グルコースおよびキノンからD-グルコノ-1,5-ラクトンおよびキノールへの転化を触媒する少なくとも1つの酵素Eの減少した活性を有するように遺伝子改変されていることを特徴とする、請求項1記載の細胞。
【請求項3】
は、EC1.1.5.2のグルコース1-デヒドロゲナーゼであることを特徴とする、請求項記載の細胞。
【請求項4】
以下の方法工程:
I)請求項1記載の細胞を、炭素源を含有する培地と接触させる工程、
II)前記細胞が前記炭素源からラムノリピドを産生できるような条件下に前記細胞を培養する工程、および
III)必要に応じて、産生されたラムノリピドを単離する工程
を含む、ラムノリピドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ラムノリピドを産生し、かつその野生型と比較してABCグルコーストランスポーターの減少した活性を有するように、かつその野生型と比較して少なくとも1つの非ABCグルコーストランスポーターの増大した活性を有するように遺伝子改変された細胞、および本発明による細胞を用いたラムノリピドの製造方法に関する。
【0002】
従来技術
ラムノリピドは、経済的に重要な物質クラスのうちの1つである。それというのも、ラムノリピドを通常の石油系界面活性剤と潜在的に置き替えることができ、ひいては相応する配合物の環境適合性を改善できるためである。目下、ラムノリピドは、様々なヒト病原性および動物病原性細菌、特にシュードモナス属(Pseudomonas)およびバークホルデリア属(Burkholderia)の代表物の野生型分離株を使用して製造されている(Hydrocarbon and Lipid Microbiology, 2010, 3037~51頁参照)。
【0003】
国際公開第2012013554号(WO 2012013554)には、非病原性生物、例えばP.プチダ(P.putida)KT2440におけるラムノリピドの産生が開示されており、その際、例えばシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)遺伝子rhlA、rhlBおよびrhlCによりコードされる酵素が発現される。
【0004】
最大限効率的な製法の開発および確立には、特に可能な限り高い空時収率の達成が必要である。
【0005】
本発明の目的は、高い空時収率が達成される微生物細胞および該細胞を用いた方法を開発することである。
【0006】
発明の説明
驚くべきことに、ラムノリピドを産生し、かつその野生型と比較してABCグルコーストランスポーターの減少した活性を有するように、かつその野生型と比較して少なくとも1つの非ABCグルコーストランスポーターの増大した活性を有するように遺伝子改変された細胞によって、基質投入量が同等の場合には、機能的ABCトランスポーターを有する同等の株よりも高いラムノリピド空時収率が得られることが判明した。
【0007】
したがって本発明は、その野生型と比較して、ABCグルコーストランスポーターの減少した活性を有するように、かつその野生型と比較して少なくとも1つの非ABCグルコーストランスポーターの増大した活性を有するように遺伝子改変されていることを特徴とする、ラムノリピド産生細胞を提供する。
【0008】
本発明はさらに、上記細胞を生体触媒として使用するラムノリピドの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の利点の1つに、病原性ではなく、培養しやすい生物を使用することができるという点がある。
【0010】
本発明のもう1つの利点は、広範な炭素源の選択肢を利用できるという点にある。
【0011】
さらなる利点は、いかなる場合にも単独の基質としてまたは補助基質としての油を使用しなくてもよいことである。
【0012】
もう1つの利点は、本発明を用いることで、所定のおよび調整可能な特性を有するラムノリピドを製造できるという点にある。
【0013】
さらなる利点は、ラムノリピドを、その活性が変更されていない細胞を用いた場合よりも高い空時収率および高い炭素収率で製造できるという点にある。
【0014】
したがって本発明は、ラムノリピド産生細胞、有利には単離されたラムノリピド産生細胞であって、該細胞は、その野生型と比較して、ABCグルコーストランスポーターの減少した活性を有するように、かつその野生型と比較して少なくとも1つの非ABCグルコーストランスポーターの増大した活性を有するように遺伝子改変されていることを特徴とする細胞を提供する。
【0015】
本明細書において、細胞の「野生型」という用語は、そのゲノムが進化により自然に生じた状態で存在する細胞を意味する。この用語は、細胞全体と個々の遺伝子の双方に使用される。したがって「野生型」という用語には、その遺伝子配列がヒトにより組換え技法を用いて少なくとも部分的に改変された細胞または遺伝子は特に含まれない。「野生型」という用語は、特に生物の自然個体群の数で最も頻繁に生じる表現型、遺伝子型または遺伝子を意味する。
【0016】
本発明において、「ラムノリピド」という用語は、一般式(I)
【化1】
[式中、
mは、2、1または0、特に1または0であり、
nは、1または0、特に1であり、
は、2~24個、有利には5~13個の炭素原子を有し、特に場合により分岐状の、場合により置換された、特にヒドロキシで置換された、場合により不飽和の有機基、特に場合により一不飽和、二不飽和または三不飽和のアルキル基であり、有利にはペンテニル、ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニルおよびトリデセニルおよび(CH-CH(ここで、oは、1~23、有利には4~12である)からなる群から選択されるものであり、かつ
は、互いに独立して、2~24個、有利には5~13個の炭素原子を有する同一のまたは異なる有機基、特に場合により分岐状の、場合により置換された、特にヒドロキシで置換された、場合により不飽和の、特に場合により一不飽和、二不飽和または三不飽和のアルキル基であり、有利にはペンテニル、ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニルおよびトリデセニルおよび(CH-CH(ここで、oは、1~23、有利には4~12である)からなる群から選択されるものである]の化合物またはその塩を意味すると解釈される。
【0017】
本発明による細胞が、m=1のラムノリピドを産生できる場合には、RおよびRにより決定される基
【化2】
は、3-ヒドロキシオクタノイル-3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシオクタノイル-3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシオクタノイル-3-ヒドロキシデセン酸、3-ヒドロキシデセノイル-3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシオクタノイル-3-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシドデカノイル-3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシオクタノイル-3-ヒドロキシドデセン酸、3-ヒドロキシドデセノイル-3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデセン酸、3-ヒドロキシデセノイル-3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシデセノイル-3-ヒドロキシデセン酸、3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシドデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシドデセン酸、3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシテトラデセン酸、3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシデセン酸、3-ヒドロキシドデセノイル-3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシテトラデセン酸、3-ヒドロキシテトラデセノイル-3-ヒドロキシデカン酸、3-ヒドロキシドデカノイル-3-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシドデセノイル-3-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシドデカノイル-3-ヒドロキシドデセン酸、3-ヒドロキシドデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシドデカン酸、3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシヘキサデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸、3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシヘキサデカン酸または3-ヒドロキシヘキサデカノイル-3-ヒドロキシヘキサデカン酸から誘導されることが有利である。
【0018】
本発明による細胞が一般式(I)の種々のラムノリピドの混合物も産生し得ることは、当業者には自明である。
【0019】
これに関連して、本発明による細胞は、産生されたラムノリピドの80重量%超、有利には90重量%超、特に有利には95重量%超がn=1であり、かつRおよびRにより決定される基に関して、産生されたラムノリピドの20重量%未満、有利には15重量%未満が3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシオクタン酸または3-ヒドロキシオクタノイル-3-ヒドロキシデカン酸に由来することを特徴とする一般式(I)のラムノリピドの混合物を産生できることが有利であり、ここで、表示された重量%は、産生された一般式(I)の全ラムノリピドの合計を基準とする。
【0020】
本発明において列挙されたアクセッション番号は、2016年1月26日付のNCBIのタンパク質構造データベースのエントリに相応し、総じてこの場合には、エントリのバージョン番号は、例えば「.1」のように「.数」により特定される。
【0021】
別段の記載がない限り、所与のパーセンテージ(%)はいずれも、重量パーセントである。
【0022】
したがって、使用される「酵素Eの減少した活性」という表現は、有利には少なくとも0.5倍、特に有利には少なくとも0.1倍、さらに有利には少なくとも0.01倍、なおもさらに有利には0.001倍、最も有利には少なくとも0.0001倍に減少した活性を意味すると解釈される。「減少した活性」という表現には、検出不可能な活性も含まれる(「活性0」)。
【0023】
微生物において酵素活性を減少させる方法は、当業者に公知である。ここでは、分子生物学的技法が特に有効である。例えば特定の酵素の活性を、標的突然変異により、または特定の酵素の活性を減少させる当業者に公知の他の方法により減少させることができる。特にシュードモナス属(Pseudomonas)およびバークホルデリア属(Burkholderia)についての、特に特定の遺伝子を阻害するための、タンパク質発現を変更および減少させかつそれに付随して酵素活性を減少させる指示は、当業者により例えばDubeau et al. 2009. BMC Microbiology 9:263;Singh & Roehm. Microbiology. 2008. 154:797-809またはLee et al. FEMS Microbiol Lett. 2009. 297(1):38-48において見ることができる。以下に記載するABCグルコーストランスポーターの酵素活性を減少させるための有利な方法を、本発明においてさらなる酵素活性を減少させるために同様に有利に使用することができる。
【0024】
本発明による有利な細胞は、ABCグルコーストランスポーターをコードする遺伝子の遺伝子改変によって酵素活性の減少が達成されることを特徴とし、ここで、この改変は、遺伝子への外来DNAの挿入、遺伝子の少なくとも一部の欠失、遺伝子配列における点突然変異、特に例えばプロモーターやターミネーターといった制御配列中のもしくは該配列の遺伝子配列における点突然変異、またはリボソーム結合部位の遺伝子配列における点突然変異を含み、有利にはこれらからなる群から選択される。
【0025】
これに関連して、外来DNAとは、(生物にとってではなく)遺伝子にとって「外来」である任意のDNA配列を意味すると解釈され、すなわちこれに関連して、内因性DNA配列も「外来DNA」として機能し得る。これに関連して、選択マーカー遺伝子の挿入により、遺伝子は特に有利に中断される。したがって、外来DNAは選択マーカー遺伝子であり、挿入は有利には遺伝子座への相同組換えにより行われている。
【0026】
あるいは本発明による有利な細胞は、ABCグルコーストランスポーターをコードする遺伝子の目的の転写または転写後遺伝子サイレンシングにより、特にABCグルコーストランスポーターをコードする遺伝子のプロモーターへの少なくとも1つのリプレッサー結合を用いて、ナンセンスコドン介在的mRNA分解(NMD)およびRNA干渉(RNAi)を用いて酵素活性の減少が達成されることを特徴とし、その際、RNAiでは、有利にはマイクロRNA方法論(miRNA)または低分子干渉RNA法(siRNA)が利用され、これによって、ABCグルコーストランスポーターのmRNAが分解される。
【0027】
本発明による細胞は、その野生型と比較してABCグルコーストランスポーターの減少した活性を有するように遺伝子改変されている。
【0028】
本発明において「ABCグルコーストランスポーター」という用語は、共通の構造エレメントとしてATP結合カセット(ABC)を有し、かつ細胞膜を通してグルコースのような特定の基質を能動的に輸送する膜タンパクを意味すると解釈されるべきである。ACBトランスポーターは、4つのコアドメイン、すなわち2つの内在性膜ドメインと、2つの細胞質ATP結合ドメイン、いわゆるATP結合カセットとからなる。前記カセット(タンパク質中の機能的ドメイン/領域)は、濃度勾配に対する基質のエネルギー共役輸送をベースとする。
【0029】
本発明において、ABCグルコーストランスポーターの活性とは、細胞内に2-(N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ)-2-デオキシグルコース(2-NBDG)(グルコースの代わりであり、測定可能である)を取り込む能力と定義される。
【0030】
ABCグルコーストランスポーターの活性は、Cayman Chemicals社製Glucose Uptake Cell Base Assay kit(品番600470)を用いて、具体的には2015年10月9日付けの製造者の指示書にしたがって測定可能である。このために、ABCグルコーストランスポーターの活性が減少するように直接的に仕向けられた遺伝子改変の点でのみ異なっている細胞を互いに直接比較して、活性において相違があるか否かを調べることは、通常の当業者にとって自明である。
【0031】
本発明による細胞は、野生型と比較して、少なくとも1つの非ABCグルコーストランスポーターの増大した活性を有するように遺伝子改変されている。
【0032】
本発明における「非ABCグルコーストランスポーター」という用語は、上記で定義したABCグルコーストランスポーターではないグルコーストランスポーターと定義される。特に有利には、本発明においては、本発明による細胞にとって外来である非ABCグルコーストランスポーター、したがって野生型ゲノム中には存在しないものが利用される。
【0033】
有利な非ABCグルコーストランスポーターは、特にEC2.7.3.9のホスホエノールピルベート・ホスホトランスフェラーゼ系、ガラクトースパーミアーゼ、グルコースファシリテーター、ミオイノシトールトランスポーター、グルコースパーミアーゼおよびグルコース/ガラクトーストランスポーターからなる群から選択される。
【0034】
トランスポーターは、当業者により、トランスポーター分類データベース(www.tcdb.org.)にしたがって分類される。本発明において、この分類に従う有利な非ABCグルコーストランスポーターは、TCDBファミリーである、2.A.1メジャーファシリテータースーパーファミリー、2.A.123 The Sweetスーパーファミリーおよび2.A.7 DMTスーパーファミリーから選択されるものであり、TCDBトランスポータークラス2.A.1.1.1、2.A.1.1.4、2.A.1.1.53、2.A.1.7.3、2.A.1.1.81、2.A.123.2および2.A.7.5から選択されるものが特に有利である。
【0035】
有利な非ABCグルコーストランスポーターは、特に
galP、glf、iolT1、glcP、gluP、SemiSWEETもしくはglcU遺伝子によりコードされる酵素、およびPTS系(これは、成分酵素I、HPr、酵素IIA、酵素IIBおよび酵素IICからなり、ここで、酵素IIA、IIBおよびIICは、融合タンパク質として存在できるものとする)、または
galP、glf、iolT1、glcP、gluP、SemiSWEETもしくはglcU遺伝子がコードする酵素およびPTS系のアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつgalP、glf、iolT1、glcP、gluP、SemiSWEETもしくはglcU遺伝子がコードする酵素およびPTS系の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、とりわけ90%超をなおも有する酵素
から選択され、ここで、非ABCグルコーストランスポーターの酵素活性とは、2-(N-(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル)アミノ)-2-デオキシグルコース(2-NBDG)を細胞内に取り込む能力を意味すると解釈される。
【0036】
上記ポリペプチド配列に関して、iolT1遺伝子は特に、C.グルタミクム(C.glutamicum)由来のものであり、glcP遺伝子は特に、M.スメグマチス(M.smegmatis)、S.フリジディマリナ(S.frigidimarina)またはS.アマゾネンシス(S.amazonensis)由来のものであり、gluP遺伝子は特に、B.アボルツス(B.abortus)由来のものであり、SemiSWEET遺伝子は、L.ビフレクサ(L.biflexa)由来のものであり、かつglcU遺伝子は特に、B.サブチリス(B.subtilis)またはS.キシローサス(S.xylosus)由来のものである。
【0037】
非ABCグルコーストランスポーターの活性は、Cayman Chemicals社製Glucose Uptake Cell Base Assay kit(品番600470)を用いて、具体的には2015年10月9日付けの製造者の指示書にしたがって測定可能である。
【0038】
本発明による細胞は、原核生物であっても真核生物であってもよい。これらは、哺乳類細胞(例えばヒトの細胞)、植物細胞または微生物、例えば酵母、真菌または細菌であることができ、微生物は特に有利であり、細菌および酵母が最も有利である。
【0039】
さらに、本発明によれば、本発明による細胞が、野生型としてC~C16のモノアルカノエートの鎖長を有するポリヒドロキシアルカノエートを産生し得る細胞である場合に有利である。このような細胞は、例えばバークホルデリア種(Burkholderia sp.)、バークホルデリア・タイランデンシス(Burkholderia thailandensis)、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・シトロネロリス(Pseudomonas citronellolis)、シュードモナス・レシノボランス(Pseudomonas resinovorans)、コマモナス・テストステローニ(Comamonas testosteroni)、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、アルカリゲネス・レータス(Alcaligenes latus)およびラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)である。これに関連して、有利な本発明の細胞は、該細胞がその野生型と比較してより少ないポリヒドロキシアルカノエートしか産生できないように遺伝子改変されている。
【0040】
細菌の群のなかでは、特にシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、大腸菌およびバークホルデリア・タイランデンシス(Burkholderia thailandensis)が特に有利である。
【0041】
本発明による細胞の出発株は、天然のラムノリピド産生体であることができ、野生型として既にラムノリピドを産生する細胞であってもよいし、単に遺伝子工学によってラムノリピド産生が可能になったにすぎない細胞であってもよい。
【0042】
どちらの場合にも、本発明による有利な細胞は、該細胞がその野生型と比較してE、EおよびEの群から選択される少なくとも1つの酵素の増大した活性を有するように遺伝子改変されているということから有益性を得ており、ここで、酵素Eは、3-ヒドロキシアルカノイル-ACPから3-ヒドロキシアルカノイル-3-ヒドロキシアルカン酸-ACPを経由してヒドロキシアルカノイル-3-ヒドロキシアルカン酸への転化を触媒することができ、酵素Eは、ラムノシルトランスフェラーゼIであり、かつdTDP-ラムノースおよび3-ヒドロキシアルカノイル-3-ヒドロキシアルカノエートからα-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシアルカノイル-3-ヒドロキシアルカノエートへの転化を触媒することができ、かつ酵素Eは、ラムノシルトランスフェラーゼIIであり、かつdTDP-ラムノースおよびα-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシアルカノイル-3-ヒドロキシアルカノエートからα-L-ラムノピラノシル-(1-2)-α-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシアルカノイル-3-ヒドロキシアルカノエートへの転化を触媒することができる。
【0043】
酵素Eは、有利には、
rhlA遺伝子によりコードされる酵素、ならびに
rhlA遺伝子によりコードされる酵素に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつrhlA遺伝子によりコードされる酵素の参照配列を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する酵素
から選択される。
【0044】
酵素Eは、有利には、
rhlB遺伝子によりコードされる酵素、ならびに
rhlB遺伝子によりコードされる酵素に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつrhlB遺伝子によりコードされる酵素の参照配列を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する酵素
から選択される。
【0045】
酵素Eは、有利には、
rhlC遺伝子によりコードされる酵素、ならびに
rhlC遺伝子によりコードされる酵素に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつrhlC遺伝子によりコードされる酵素の参照配列を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する酵素
から選択される。
【0046】
、EおよびEに特に有利なもの:
酵素Eは、次のものからなる群から選択される:
少なくとも1つの酵素E1aであって、
ポリペプチド配列ADP06387.1を有するか、または
参照配列ADP06387.1に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつ参照配列ADP06387.1を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する
酵素E1aであり、ここで、酵素E1aの酵素活性とは、3-ヒドロキシデカノイル-ACPから3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸-ACPを経由してヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸へと転化させる能力を意味すると解釈される;
少なくとも1つの酵素E1bであって、
ポリペプチド配列AIP29471.1、CBI71021.1、NP_252169.1、ABR81106.1、YP_439272.1、YP_111362.1、YP_110557.1、YP_105231.1、ZP_02461688.1、ZP_02358949.1、ZP_01769192.1、ZP_04893165.1、ZP_02265387.2、ZP_02511781.1、ZP_03456835.1、ZP_03794633.1、YP_990329.1、ZP_02408727.1、YP_002908243.1、ZP_04884056.1、YP_004348703.1、ZP_04905334.1、ZP_02376540.1、EGC99875.1、ZP_02907621.1、YP_001811696.1、ZP_02466678.1、ZP_02891475.1、YP_776393.1、YP_002234939.1、YP_001778804.1、YP_371314.1、ZP_04943305.1、YP_623139.1、ZP_02417235.1もしくはZP_04892059.1を有するか、または
特定の前記アクセッション番号に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつ特定の前記アクセッション番号を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する
酵素E1bであり、ここで、酵素E1bの酵素活性とは、3-ヒドロキシテトラデカノイル-ACPを3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸-ACPを経由してヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸へと転化させる能力を意味すると解釈される。
【0047】
酵素Eは、次のものからなる群から選択される:
少なくとも1つの酵素E2aであって、
ポリペプチド配列ADP06388.1、YP_001347032.1、CBI71029.1、YP_002439138.1、CBI71031.1、NP_252168.1、CBI71034.1、CBI71028.1、AAA62129.1もしくはZP_04929750.1を有するか、または
特定の前記アクセッション番号に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつ特定の前記アクセッション番号を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する
酵素E2aであり、ここで、酵素E2aの酵素活性とは、dTDP-ラムノースおよび3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸をα-L-ラムノピラノシル-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸へと転化させる能力を意味すると解釈される;
少なくとも1つの酵素E2bであって、
ポリペプチド配列AJY01590.1、ABR84881.1、NP_252168.1、FN601364.1、YP_440074.1、ZP_05590657.1、ZP_04520374.1、ZP_00438360.2、ZP_00438209.2、YP_001074761.1、ZP_04811084.1、YP_110558.1、YP_111361.1、ZP_02492857.1、YP_337246.1、YP_001061811.1、YP_105607.1、ZP_02371503.1、ZP_02503962.1、ZP_03456839.1、ZP_02461690.1、ZP_03794634.1、ZP_01769736.1、ZP_01769308.1、ZP_02358948.1、ZP_02487736.1、ZP_02408758.1、YP_002234937.1、ZP_02891477.1、YP_001778806.1、YP_623141.1、YP_838721.1、ZP_04943307.1、YP_776391.1、YP_004348704.1、ZP_02907619.1、YP_371316.1、ZP_02389948.1、YP_001811694.1、YP_002908244.1、ZP_02511808.1、ZP_02376542.1、EGC99877.1、ZP_02451760.1もしくはZP_02414414.1を有するか、または
特定の前記アクセッション番号に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつ特定の前記アクセッション番号を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する
酵素E2bであり、ここで、酵素E2bの酵素活性とは、dTDP-ラムノースおよび3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸をα-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸へと転化させる能力を意味すると解釈される。
【0048】
酵素Eは、次のものからなる群から選択される:
少なくとも1つの酵素E3aであって、
ポリペプチド配列NP_249821.1を有するか、または
参照配列NP_249821.1に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつ参照配列NP_249821.1を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する
酵素E3aであり、ここで、酵素E3aの酵素活性とは、dTDP-ラムノースおよびα-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸をα-L-ラムノピラノシル-(1-2)-α-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸に転化させる能力を意味すると解釈される;
1つの酵素E3bであって、
ポリペプチド配列AJY02981.1、FN601387.1、FN601391.1 YP_440071.1、ZP_02375899.1、ZP_02466676.1、YP_001075863.1、ZP_02408796.1、YP_335530.1、ZP_01769176.1、YP_105609.1、ZP_01770867.1、ZP_04520873.1、YP_110560.1、YP_001024014.1、ZP_03450125.1、YP_001061813.1、YP_111359.1、ZP_00440994.2、ZP_03456926.1、ZP_02358946.1、ZP_00438001.2、ZP_02461478.1、ZP_02503929.1、ZP_02511832.1、YP_004348706.1、ZP_04898742.1、YP_002908246.1、ZP_02382844.1、EGD05167.1、YP_001778808.1、YP_001811692.1、YP_002234935.1、YP_371318.1、YP_623143.1、YP_776389.1、ZP_02891479.1、ZP_02907617.1、ZP_02417424.1もしくはZP_04898743.1を有するか、または
特定の前記アクセッション番号に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつ特定の前記アクセッション番号を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する
酵素E3bであり、ここで、酵素E3bの酵素活性とは、dTDP-ラムノースおよびα-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸をα-L-ラムノピラノシル-(1-2)-α-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸に転化させる能力を意味すると解釈される。
【0049】
酵素E1a~E3bに関して具体的に挙げた活性が、上記酵素の広範な様々な活性の特定の例示的な選択肢にすぎないことは明らかであり、それぞれ挙げた活性は、所与の酵素について該活性に関して信頼性のある測定法が利用可能な活性である。したがって、非分岐状の飽和C10-アルキル基を有する基質を転化させる酵素が、減少した活性を有する可能性があるにもかかわらず、C-またはC16-アルキル基(これらも分岐状または不飽和である可能性がある)を有する基質も同様に転化させることは明らかである。
【0050】
本発明による有利な細胞は、野生型としては、ラムノリピドを産生することができないかまたは検出可能な量では産生することができず、さらに有利には野生型としては、酵素E、EおよびEの活性を有しないかまたは検出可能な活性を有しない。
【0051】
本発明によれば、以下の酵素の組合せ:
、E、E、E、E、EおよびE
の増大した活性を有する細胞が好ましく、これらのうち、
、EおよびE、特にE
の組合せが特に有利である。
【0052】
酵素の組合せEの増大した活性を有する本発明による細胞の有利な実施態様では、nは有利には=1である。
【0053】
本発明において、「酵素の増大した活性」という用語は、有利には増大した細胞内活性を意味すると解釈されるべきである。
【0054】
原則として、酵素をコードする遺伝子配列のコピー数を増大することにより、強力なプロモーターもしくは改善されたリボソーム結合部位を使用することにより、遺伝子発現の負の制御の減衰を例えば転写レギュレーターを使用して行うことにより、または遺伝子発現の正の制御の促進を例えば転写レギュレーターを使用して行うことにより、遺伝子のコドン使用頻度を変更することにより、様々な方法でmRNAもしくは酵素の半減期を増大することにより、遺伝子の発現の制御を変更することにより、または増大した活性を有する相応の酵素をコードする遺伝子もしくは対立遺伝子を使用することにより、およびこれらの方法を適切に組み合わせることにより、酵素活性の増大を達成することができる。活性の増大は有利には、本発明によれば、野生型と比較して酵素をコードする遺伝子配列のコピー数を増大することにより増大される。以前は野生型では存在しなかった遺伝子配列のコピーの取り込みは、自明ながら0から1のコピー数における増大に相応する。
【0055】
本発明により遺伝子改変された細胞は、例えば形質転換、トランスダクション、コンジュゲーションまたはこれらの方法の組合せによって、所望の遺伝子と、該遺伝子の対立遺伝子またはその一部と、場合により遺伝子の発現を可能にするプロモーターとを含むベクターを用いて生成される。異種発現は、特に遺伝子もしくは対立遺伝子を細胞の染色体に組み込むか、または染色体外でベクターを複製することにより達成される。
【0056】
細胞における酵素活性の増大に関する選択肢の概要は、一例として独国特許出願公開第10031999号明細書(DE-A-10031999)にピルベートカルボキシラーゼに関して挙げられており、該刊行物の内容を本明細書において援用するものとし、その開示内容は、細胞における酵素活性の増大に関する選択肢に関して本発明の開示の一部を形成する。
【0057】
上記の酵素または遺伝子および下記のすべての酵素または遺伝子の発現は、1次元および2次元タンパク質ゲル分離およびその後の適切な評価ソフトウェアを用いたゲル中でのタンパク質濃度の光学的同定を用いて検出可能である。酵素活性の増大が、相応する遺伝子の発現の増大のみに基づいている場合には、野生型と遺伝子改変細胞の間で1次元または2次元タンパク質分離を比較することにより前記酵素活性の増大を容易に定量化できる。コリネ型細菌の場合にタンパク質ゲルを製造して該タンパク質を同定する通常の方法は、Hermann et al.により記載されている手法である(Electrophoresis, 22:1712.23(2001))。タンパク質濃度は、検出すべきタンパク質に特異的な抗体を使用したウエスタンブロットハイブリダイゼーション(Sambrook et al., Molecular Cloning:a laboratory manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. USA, 1989)およびその後の濃度測定のための適切なソフトウェアを使用した光学的評価(Lohaus and Meyer(1989)Biospektrum, 5:32-39;Lottspeich(1999)Angewandte Chemie 111:2630-2647)により同様に分析可能である。DNA結合タンパク質の活性は、DNAバンドシフトアッセイを用いることにより測定可能である(ゲルリターデーションとも称される)(Wilson et al.(2001)Journal of Bacteriology, 183:2151-2155)。その他の遺伝子の発現におけるDNA結合タンパク質の作用は、様々に十分に記載されているレポーター遺伝子アッセイ法により検出可能である(Sambrook et al., Molecular Cloning:a laboratory manual, 2nd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. USA, 1989)。細胞内酵素活性は、様々に記載されている方法により測定可能である(Donahue et al.(2000)Journal of Bacteriology 182(19):5624-5627;Ray et al.(2000)Journal of Bacteriology 182(8):2277-2284;Freedberg et al.(1973)Journal of Bacteriology 115(3):816-823)。特定の酵素の活性を測定するための具体的な方法が以下の説明に記載されていない場合には、酵素活性の増大および酵素活性の減少は、好ましくは、Hermann et al.、Electophoresis, 22:1712-23(2001)、Lohaus et al., Biospektrum 5 32-39(1998)、Lottspeich, Angewandte Chemie 111:2630-2647(1999)およびWilson et al., Journal of Bacteriology 183:2151-2155(2001)に記載の方法を用いて測定される。
【0058】
酵素活性の増大が内部遺伝子の突然変異により達成される場合には、このような突然変異を、伝統的な方法により間接的に、例えばUV照射または突然変異を引き起こす化学物質によって生じさせてもよいし、特に欠失、挿入および/またはヌクレオチド置換のような遺伝子工学法より生じさせてもよい。改変された細胞は、これらの突然変異により得られる。酵素の特に有利な突然変異体は、もはやフィードバック阻害、生産物阻害もしくは基質阻害下にはないか、または少なくとも野生型酵素と比較してそうしたものが少ない酵素である。
【0059】
酵素活性の増大が酵素の合成の増大により達成される場合には、例えば関連遺伝子のコピー数が増大するか、またはプロモーターおよび制御領域もしくは構造遺伝子の上流に位置するリボソーム結合部位が突然変異される。構造遺伝子の上流に組み込まれた発現カセットは、類似の効果を示す。さらに、誘導性プロモーターにより、所望のどの時点でも発現を増大させることができる。しかしさらに、いわゆる「エンハンサー」を制御配列として酵素遺伝子に与えることもでき、これも同様に、RNAポリメラーゼとDNAとの間での相互作用の改善によって増大した遺伝子発現を引き起こす。発現は、mRNAの寿命を延長する措置によっても改善される。さらに、酵素活性は、酵素タンパク質の分解を阻害することによっても強化される。ここで、遺伝子または遺伝子構築物は、種々のコピー数のプラスミド中に存在するかまたは染色体に組み込まれて増幅される。あるいはさらに、関連遺伝子の過剰発現は、培地組成物および培養の変更により達成できる。これに関する指示は、当業者により特にMartin et al.(Bio/Technology 5, 137-146(1987))、Guerrero et al.(Gene 138, 35-41(1994))、Tsuchiya and Morinaga(Bio/Technology 6, 428-430(1988))、Eikmanns et al.(Gene 102, 93-98(1991))、欧州特許出願公開第0472869号明細書(EP-A-0472869)、米国特許第4,601,893号明細書(US 4,601,893)、Schwarzer and Puehler(Bio/Technology 9, 84-87(1991))、Reinscheid et al.(Applied and Environmental Microbiology 60, 126-132(1994))、LaBarre et al.(Journal of Bacteriology 175, 1001-1007(1993))、国際公開第96/15246号(WO-A-96/15246)、Malumbres et al.(Gene 134, 15-24(1993))、特開平10-229891号公報(JP-A-10-229891)、Jensen and Hammer(Biotechnology and Bioengineering 58, 191-195(1998))、ならびに公知の遺伝子学および分子生物学的教書に見出すことができる。突然変異のような上記の手法によって、遺伝子改変された細胞が得られる。
【0060】
特定の遺伝子の発現を増大するために、例えばエピソーマルプラスミドが使用される。原則として、プラスミドまたはベクターとして、このために当業者に入手可能なすべての実施態様が可能である。このようなプラスミドおよびベクターは、例えばNovagen, Promega, New England Biolabs, Clontech or Gibco BRLのパンフレットから推論できる。さらに有利なプラスミドおよびベクターは、以下:Glover, D. M.(1985)DNA cloning:a practical approach, Vol. I-III, IRL Press Ltd., Oxford;Rodriguez, R.L. and Denhardt, D. T(eds)(1988)Vectors:a survey of molecular cloning vectors and their uses, 179-204, Butterworth, Stoneham;Goeddel, D. V.(1990)Systems for heterologous gene expression, Methods Enzymol. 185, 3-7;Sambrook, J.;Fritsch, E. F. and Maniatis, T.(1989), Molecular cloning:a laboratory manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに見出すことができる。
【0061】
次いで、増幅すべき遺伝子を含むプラスミドベクターは、コンジュゲーションまたは形質転換により所望の株に移される。コンジュゲーションの方法は、例えばSchaefer et al., Applied and Environmental Microbiology 60:756-759(1994)に記載されている。形質転換の方法は,例えばThierbach et al., Applied Microbiology and Biotechnology 29:356-362(1988), Dunican and Shivnan, Bio/Technology 7:1067-1070(1989)およびTauch et al., FEMS Microbiology Letters 123:343-347(1994)に記載されている。「交叉」事象による相同組換えの後に、得られた株は、該当する遺伝子の少なくとも2つのコピーを含む。
【0062】
本発明において、酵素の活性の増大は、特に有利には、考慮する酵素をコードする領域のコピー数を、特に強力なプロモーターと共役して野生型細胞と比較して増加させることによって達成され、野生型において既に存在する酵素の場合には、野生型遺伝子中に存在するものと比較して、より強力なプロモーターを使用することによって達成される。
【0063】
上記および以下の説明に使用される「酵素Eの、その野生型と比較して増大した活性」という表現は、特定の酵素Eの活性が有利には少なくとも2倍、特に有利には少なくとも10倍、さらに有利には少なくとも100倍、さらになお有利には少なくとも1000倍および最も有利には少なくとも10000倍増大することを意味すると常に解釈すべきである。さらに、「酵素Eの、その野生型と比較して増大した活性」を有する本発明による細胞には、特に、その野生型がこの酵素Eの活性を有しないかまたは少なくとも検出可能な活性を有しておらず、かつ例えば過剰発現により酵素活性が増大した後にのみ、この酵素Eの検出可能な酵素活性を示す細胞も含まれる。これに関連して、以下の説明で使用される「過剰発現」という用語または「発現を増大する」という表現には、出発細胞、例えば「野生型細胞」が発現を示さないかまたは少なくとも検出可能な発現を示さず、かつ組換え法によってのみ酵素Eの検出可能な合成が誘導される場合も含まれる。
【0064】
所与のポリペプチドの特性および機能の著しい変化を導かない所与のポリペプチド配列のアミノ酸残基の変更は、当業者に周知である。したがって、例えば保存されたアミノ酸を交換することができる。このような適切なアミノ酸置換の例は、以下のものである:アラニンとセリン;アルギニンとリジン;アスパラギンとグルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸とグルタミン酸;システインとセリン;グルタミンとアスパラギン;グルタミン酸とアスパラギン酸;グリシンとプロリン;ヒスチジンとアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシンとロイシンまたはバリン;ロイシンとメチオニンまたはバリン;リジンとアルギニンまたはグルタミンまたはグルタミン酸;メチオニンとロイシンまたはイソロイシン;フェニルアラニンとメチオニンまたはロイシンまたはチロシン;セリンとトレオニン;トレオニンとセリン;トリプトファンとチロシン;チロシンとトリプトファンまたはフェニルアラニン;バリンとイソロイシンまたはロイシン。特にポリペプチドのNまたはC末端における例えばアミノ酸の挿入または欠失の形での変更は、ポリペプチドの機能に著しい影響を及ぼさないことが多いことも公知である。
【0065】
本発明において使用される酵素と関連する「アミノ酸同一性」は、公知の方法を用いて決定される。一般的に、規定要求事項を考慮したアルゴリズムを用いた特別なコンピュータプログラムが利用される。
【0066】
同一性を決定するための有利な方法では、最初に、比較すべき配列の間での最大のアライメントが生成される。同一性を決定するためのコンピュータプログラムには、次のものを含むGCGプログラムパッケージが含まれるが、これらに限定されるわけではない:
GAP(Deveroy, J. et al., Nucleic Acid Research 12(1984),387頁), Genetics Computer Group University of Wisconsin, Medicine(Wi)、ならびにBLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul, S. et al., Journal of Molecular Biology 215(1990), 403-410頁)。BLASTプログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)およびその他の供給元から得ることができる(BLAST Handbuch, Altschul S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda ND 22894;上記Altschul S. et al.)。
【0067】
公知のSmith-Watermanアルゴリズムも同様に、同一性の決定に使用することができる。
【0068】
「アミノ酸同一性」を決定するための有利なパラメーターは、BLASTPプログラムを使用する場合は以下の通りである(Altschul, S. et al., Journal of Molecular Biology 215(1990), 403-410頁):
期待閾値: 10
ワードサイズ: 3
マトリックス: BLOSUM62
ギャップコスト: 存在:11;伸長:1
構成調整: 条件付きスコアマトリックス構成調整
上記のパラメーターは、アミノ酸配列比較用のデフォルトパラメーターである。GAPプログラムも同様に、上記パラメーターを用いた使用に適切である。本発明において、上記アルゴリズムによる60%の同一性は、60%同一性を意味する。より高い同一性についても、同一のことが該当する。
【0069】
酵素の活性は、前記活性を含む細胞を、当業者に公知の方法で、例えばビーズミル、フレンチプレスまたは超音波粉砕機を使用して破砕し、次に無傷細胞、細胞破壊片および破砕助剤、例えばガラスビーズを11000×gおよび4℃で10分間遠心分離して除去することにより測定可能である。次に、得られた細胞不含の粗抽出物を使用して酵素アッセイを行い、次いで産生物のLC-ESI-MS検出を実施することができる。また、酵素を富化させるか、または当業者に公知の方法でクロマトグラフ法(例えばニッケル-ニトリロ三酢酸アフィニティークロマトグラフィー、ストレプトアビジンアフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィー)により精製して均質にすることができる。
【0070】
些細なことであり万全を期すために述べるにすぎないが、細胞の野生型と比較して増大または減少した活性を測定するために、測定すべき試料と同一の条件に曝された野生型の参照培養物が使用される。
【0071】
上記のように得られた細胞不含の粗抽出物を使用して、酵素Eの活性を以下のように決定する:標準のアッセイは、100μMの大腸菌ACP、1mMのβ-メルカプトエタノール、200μMのマロニル-コエンザイムA、40μMのオクタノイル-コエンザイムA(E1aの場合)またはドデカノイル-コエンザイムA(E1bの場合)、100μMのNADPH、2μgの大腸菌FabD、2μgの結核菌(Mycobacterium tuberculosis)FabH、1μgの大腸菌FabG、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝剤(pH7.0)および5μgの酵素Eを、最終体積120μLで含有する。ACP、β-メルカプトエタノールおよびリン酸ナトリウム緩衝剤を37℃で30分間プレインキュベートして、ACPを完全に減少させる。酵素Eの添加により反応を開始させる。HClを使用してpH2.0に酸性化しておいた2mlの水を使用して反応を停止させ、かつ次に2mlのクロロホルム/メタノール(2:1(v:v))を使用して2回抽出する。相分離を遠心分離(16100g、5分、室温)により行う。下方の有機相を除去し、真空遠心分離で完全に蒸発させ、沈殿物を50μlのメタノール中にとる。不溶成分を遠心分離(16100g、5分、RT)により沈殿させ、試料をLC-ESI-MSにより分析する。相応する質量トレースおよびMSスペクトルの分析により生成物を同定する。
【0072】
次に、上記のようにして得られた細胞不含の粗抽出物を使用して、酵素Eの活性を以下のように決定する:標準的なアッセイは、10mMのTris-HCl(pH7.5)185μl、125mMのdTDP-ラムノース10μl、および溶解した粗タンパク質抽出物(全タンパク質約1mg)または精製タンパク質(精製タンパク質5μg)50μlからなることができる。3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸(E2aの場合)または3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸(E2bの場合)の10mMのエタノール溶液10μlの添加により反応を開始し、振盪(600rpm)しながら30℃で1時間インキュベートする。次に、この反応物を1mlのアセトンと混合する。不溶成分を遠心分離(16100g、5分、室温)により沈殿させ、LC-ESI-MSにより試料を分析する。相応する質量トレースおよびMSスペクトルの分析により生成物を同定する。
【0073】
次に、上記のようにして得られた細胞不含の粗抽出物を使用して、酵素Eの活性を以下のように決定する:標準的なアッセイは、10mMのTris-HCl(pH7.5)185μl、125mMのdTDP-ラムノース10μl、および溶解した粗タンパク質抽出物(全タンパク質約1mg)または精製タンパク質(精製タンパク質5μg)50μlからなることができる。α-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシデカノイル-3-ヒドロキシデカン酸(E3aの場合)またはα-L-ラムノピラノシル-3-ヒドロキシテトラデカノイル-3-ヒドロキシテトラデカン酸(E3bの場合)の10mMエタノール溶液10μlの添加により反応を開始し、かつ振盪(600rpm)しながら30℃で1時間インキュベートする。次に、この反応物をアセトン1mlと混合する。不溶成分を遠心分離(16100g、5分、室温)により沈殿させ、LC-ESI-MSにより試料を分析する。相応する質量トレースおよびMSスペクトルの分析により、生成物を同定する。
【0074】
本発明による有利な細胞は、該細胞がその野生型と比較して、D-グルコースおよびキノンからD-グルコノ-1,5-ラクトンおよびキノールへの転化を触媒する少なくとも1つの酵素Eの減少した活性を有するように遺伝子改変されていることにより特徴付けられる。
【0075】
本発明によれば、EがEC1.1.5.2のグルコース1-デヒドロゲナーゼであることが有利である。特に有利な酵素Eは、
gcd遺伝子によりコードされる酵素、および
gcd遺伝子によりコードされる酵素に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつgcd遺伝子によりコードされる酵素の参照配列を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、とりわけ90%超をなおも有する酵素
から選択される。
【0076】
特に、酵素Eは、
ポリペプチド配列AAN67066.1を有するか、または
AAN67066.1に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつ参照配列AAN67066.1を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、とりわけ90%超をなおも有する
酵素Eから選択される。
【0077】
酵素Eの活性は、Abcam社製Colorimetric Glucose Dehydrogenase Assay Kit(品番ab102532)を用いて、製造者の要求にしたがって細胞不含抽出物を使用して測定される。
【0078】
本発明によれば、以下の酵素の組合せ:
、E、E、E、E、E、EおよびEの変更された活性を有する細胞が好ましく、このうち、E、EおよびE、特にEの組合せが特に有利である。
【0079】
本発明による細胞がその野生型と比較して、該細胞から周辺の培地への一般式(I)のラムノリピドの排出を触媒する少なくとも1つの酵素Eの増大した活性を有するように遺伝子改変されている場合にさらに有利であり、したがって好ましい。
【0080】
本発明による有利な細胞の場合には、Eは、
次のポリペプチド配列:AAG04520.1、AJY02996.1、ZP_05590661.1、YP_439278.1、YP_440069.1、ZP_04969301.1、ZP_04520234.1、YP_335528.1、YP_001075859.1、YP_001061817.1、ZP_02487499.1、YP_337251.1、ZP_04897712.1、ZP_04810190.1、YP_990322.1、ZP_02476924.1、ZP_04899735.1、ZP_04893873.1、ZP_02365982.1、YP_001062909.1、YP_105611.1、ZP_03794061.1、ZP_03457011.1、ZP_02385401.1、ZP_02370552.1、YP_105236.1、ZP_04905097.1、YP_776387.1、YP_001811690.1、YP_004348730.1、YP_004348708.1、YP_371320.1、YP_623145.1、YP_001778810.1、YP_002234933.1、CCE52909.1、YP_002908248.1、ZP_04954557.1、ZP_04956038.1、ZP_02408950.1、ZP_02375897.1、ZP_02389908.1、YP_439274.1、YP_001074762.1、YP_337247.1、YP_110559.1、ZP_02495927.1、YP_111360.1、YP_105608.1、ZP_02487826.1、ZP_02358947.1、YP_001078605.1、ZP_00438000.1、ZP_00440993.1、ZP_02477260.1、YP_371317.1、YP_001778807.1、ZP_02382843.1、YP_002234936.1、YP_623142.1、ZP_02907618.1、ZP_02891478.1、YP_776390.1、ZP_04943308.1、YP_001811693.1、ZP_02503985.1、YP_004362740.1、YP_002908245.1、YP_004348705.1、ZP_02408798.1、ZP_02417250.1、EGD05166.1、ZP_02458677.1、ZP_02465793.1、YP_001578240.1、ZP_04944344.1、YP_771932.1、ZP_02889166.1、YP_002232614.1、ZP_03574808.1、ZP_02906105.1、YP_001806764.1、YP_619912.1、YP_001117913.1、YP_106647.1、YP_001763368.1、ZP_02479535.1、ZP_02461743.1、YP_560998.1、YP_331651.1、ZP_04893070.1、YP_003606714.1、ZP_02503995.1、ZP_06840428.1、YP_104288.1、ZP_02487849.1、ZP_02353848.1、YP_367475.1、ZP_02377399.1、ZP_02372143.1、YP_001897562.1、ZP_02361066.1、YP_440582.1、ZP_03268453.1、AET90544.1、YP_003908738.1、YP_004230049.1、ZP_02885418.1、CDH72316.1、WP_001297013.1、WP_010955775.1、WP_010955671.1、WP_010955672.1、WP_010955673.1、WP_010952401.1、WP_010952402.1、WP_010952403.1、WP_010952855.1、WP_010954573.1、WP_010954631.1、WP_010954632.1、WP_010954404.1、WP_004575310.1もしくはZP_02511831.1を有するか、または
特定の上記のアクセッション番号に対してアミノ酸残基の25%まで、有利には20%まで、特に有利には15%まで、とりわけ10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までが欠失、挿入、置換もしくはそれらの組合せにより改変されているポリペプチド配列を有し、かつ特に上記アクセッション番号を有する酵素の酵素活性の少なくとも10%、有利には50%、特に有利には80%、特に90%超をなおも有する
酵素Eからなる群から選択され、ここで、酵素Eの酵素活性とは、一般式(I)のラムノリピドを細胞から周辺培地に排出する能力を意味すると解釈される。
【0081】
次いで、上記のように得られた細胞不含の粗抽出物を使用して、産生された酵素Eの量を測定することにより、酵素Eの活性を決定することができる。これは、バイオマス1単位当たりに、より多くの酵素Eによって、一般式(I)のより多くのラムノリピドが細胞から周辺培地に排出され得るという仮定に基づいている。このような定量化は、酵素Eに特異的な抗体を用いた免疫学的検出により(Kurien, T. B., Scofield, R. H (Eds.). Protein Blotting and Detection: Methods and Protocols. Methods in Molecular Biology, Vol. 536. 1st Ed., Humana Press. N.Y. USA, 2009参照)またはマススペクトロメトリー法により(Schmidt, A., Kellermann, J. & Lottspeich, F. A novel strategy for quantitative proteornics using isotope-coded protein labels. Proteomics 5, 4-15(2005)参照)実施することができる。
【0082】
あるいは酵素Eの活性は、放射線によりラベルしたラムノリピドおよび本発明による細胞から産生された反転小胞を使用して取込みアッセイを実施することによっても決定できる。一般的な方法は、例えばNies DH, The cobalt, zinc, and cadmium efflux system CzcABC from Alcaligenes eutrophus functions as a cation-proton antiporter in Escherichia coli.J Bacteriol. 1995. 177(10):2707-12、またはLewinson O, Adler J, Poelarends GJ, Mazurkiewicz P, Driessen AJ, Bibi E. The Escherichia coli multidrug transporter MdfA catalyzes both electrogenic and electroneutral transport reactions. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Feb 18;100(4):1667-72に記載されている。
【0083】
本発明による細胞は、ラムノリピドの製造に有利に使用することができる。
【0084】
したがって本発明は、一般式(I)の化合物を製造するための本発明による細胞の使用をさらに提供する。
【0085】
本発明はさらに、ラムノリピド、特に一般式(I)
[式中、
mは、2、1または0、特に1または0であり、
nは、1または0、特に1であり、
およびRは、2~24個、有利には5~13個の炭素原子を有する同一のまたは異なる有機基、特に場合により分岐状の、場合により置換された、特にヒドロキシで置換された、場合により不飽和の、特に場合により一不飽和、二不飽和または三不飽和のアルキル基であり、有利にはペンテニル、ヘプテニル、ノネニル、ウンデセニルおよびトリデセニルおよび(CH-CH(ここで、oは、1~23、有利には4~12である)からなる群から選択されるものである]のラムノリピドの製造方法であって、以下の方法工程:
I)本発明による細胞を、炭素源を含有する培地と接触させる工程、
II)前記細胞が前記炭素源からラムノリピドを産生できるような条件下に前記細胞を培養する工程、および
III)必要に応じて、産生されたラムノリピドを単離する工程
を含む方法を提供する。
【0086】
本発明による遺伝子改変された細胞を培養培地と接触させて、上記産生物を産生する目的で連続的または非連続的に回分法または流加法でまたは流加法を繰り返すことにより培養することができる。
【0087】
また、英国特許出願公開第1009370号明細書(GB-A-1009370)に記載されているような半連続的方法も考え得る。公知の培養法の概要は、Chmielによる教書(“Bioprozesstechnik 1. Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik”[Bioprocess technology 1. Introduction to Bioprocess Technology](Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))またはStorhasによる教書(“Bioreaktoren und periphere Einrichtungen”[Bioreactors and Peripheral Devices](Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))に開示されている。
【0088】
使用すべき培養培地は、特定の株の要求を適切に満たさねばならない。様々な酵母株の培養培地の説明は、例えば“Nonconventional yeast in biotechnology”(Ed. Klaus Wolf, Springer-Verlag Berlin, 1996)に含まれる。
【0089】
使用される炭素源は、炭水化物、例えばグルコース、スクロース、アラビノース、キシロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、デンプン、セルロースおよびヘミセルロース、植物油および動物油ならびに脂肪、例えば大豆油、紅花油、落花生油、麻実油、ジャトロファ油、ココナッツ脂肪、パンプキンシード油、アマニ油、コーン油、ケシの実油、月見草油、オリーブ油、パーム核油、パーム油、菜種油、ゴマ油、ヒマワリ油、グレープシード油、クルミ油、小麦胚芽油およびココナッツ脂肪、脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトール酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸およびそれらのメチルもしくはエチルエステルならびに脂肪酸混合物、前述の脂肪酸を含有するモノ-、ジ-およびトリグリセリド、アルコール、例えばグリセロール、エタノールおよびメタノール、炭化水素、例えばメタン、炭素質ガスおよびガス混合物、例えばCO、CO、合成ガスまたは燃焼排ガス、アミノ酸、例えばL-グルタメートまたはL-バリンまたは有機酸、例えば酢酸であってよい。これらの物質を、個別に使用してもよいし混合物として使用してもよい。特に有利であるのは、米国特許第6,01,494号明細書(US 6,01,494)および米国特許第6,136,576号明細書(US 6,136,576)に記載の炭素源としての、炭水化物、特に単糖類、オリゴ糖類または多糖類、ならびに炭化水素、特にアルカン、アルケンおよびアルキンおよびそれらから誘導されるモノカルボン酸および前記モノカルボン酸から誘導されるモノ-、ジ-およびトリグリセリドおよびグリセロールおよびアセテートの使用である。極めて特に有利であるのは、グリセロールと、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトール酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸および/またはγ-リノレン酸とのエステル化生成物を含有するモノ-、ジ-およびトリグリセリドである。
【0090】
本発明の主な利点は、本発明による細胞が、例えばグルコース、スクロースまたはグリセロールといった非常に単純な炭素源からラムノリピドを産生できることであり、このことは、本発明による方法の間に培地中に長鎖炭素源を提供しなくてもよいことを意味する。したがって、入手可能性が不十分である場合には、本発明による方法の工程I)での培地が、炭素原子6個よりも長い鎖長を有するカルボン酸またはそれらから誘導可能なエステルもしくはグリセリドを含有しないかまたは検出可能な量を含有しないことが有利である。
【0091】
使用される窒素源は、含窒素有機化合物、例えばペプトン、酵母抽出物、肉抽出物、麦芽抽出物、コーンスティープリカー、大豆粉末および尿素または無機化合物、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウム、アンモニア、水酸化アンモニウムまたはアンモニア水であってもよい。窒素源を、個別に使用してもよいし混合物として使用してもよい。
【0092】
使用されるリン源は、リン酸、リン酸二水素カリウムまたはリン酸水素二カリウムまたは相応するナトリウム含有塩であってもよい。さらに、培養培地は、増殖に必要な金属の塩、例えば硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄を含有すべきである。最後に、上記の物質に加えてアミノ酸およびビタミンのような必須増殖物質を使用してもよい。さらに、適切な前駆物質を培養培地に添加してもよい。上記の出発材料を、1回バッチの形で培養物に添加してもよいし、培養の間に適切に供給してもよい。培養物のpHを調整するために、塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくはアンモニア水、または酸性化合物、例えばリン酸もしくは硫酸が適切に使用される。発泡を調整するために、消泡剤、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルを使用することができる。プラスミドの安定性を保持するために、培地に適切な選択物質、例えば抗生物質を添加することができる。好気条件を保持するために、酸素または酸素性ガス混合物、例えば空気が培養物に導入される。
【0093】
培養物の温度は、通常は20℃よりも高く、有利には25℃よりも高く、また40℃よりも高いこともでき、95℃の培養温度、とりわけ有利には90℃および最も有利には80℃を有利には超えない。
【0094】
本発明による方法の工程III)では、細胞により産生されるラムノリピドを、場合により細胞および/または培養培地から単離することができ、その際、単離の目的に使用するために、低分子量物質を複合的組成物から単離するための当業者に公知のあらゆる方法、例えばろ過、抽出、吸着(クロマトグラフィー)または結晶化を使用することができる。
【0095】
さらに、生成物相は、バイオマスの残留物および様々な不純物、例えば油、脂肪酸およびその他の培養培地成分を含有する。不純物は、有利には無溶媒の方法で除去される。例えば生成物相は、水で希釈してpH調節を容易に行うことができる。次に、酸またはアルカリを用いてpHを低下または上昇させてラムノリピドを水溶性の形態に移行させることにより、生成物相と水相とを均質化することができる。恐らく、水相へのラムノリピドの可溶化は、比較的に高温での、例えば60~90℃でのインキュベーションおよび一定の混合により支持することができる。引き続きアルカリまたは酸を用いてpHを上昇または低下させることにより、ラムノリピドを再び水に不溶性の形態に移行させることができ、このようにして、これらを容易に水相から分離することができる。次に、生成物相はさらに水で1回以上洗浄して、水溶性の不純物を除去することができる。
【0096】
油残留物は、例えば適切な溶媒を用いて、有利には有機溶媒を用いる抽出により除去できる。アルカン、例えばn-ヘキサンが溶媒として有利である。
【0097】
上記の無溶媒の方法に代わるものとして、適切な溶媒、例えばエステル、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチルを使用して水相から生成物を除去することができる。記載された抽出工程は、所望の順番で実施することができる。ここでは、溶媒、特に有機溶媒が有利に使用される。有利な溶媒は、n-ペンタノールである。溶媒は、例えば蒸留により除去される。その後、凍結乾燥生成物を例えばクロマトグラフ法によりさらに精製することができる。この点で挙げることができる例には、適切な溶媒を用いた沈殿、適切な溶媒を用いた抽出、例えばシクロデキストリンもしくはシクロデキストリン誘導体による錯体形成、結晶化、クロマトグラフ法による精製もしくは単離、またはラムノリピドを容易に除去可能な誘導体へと移行させることが含まれる。
【0098】
方法工程III)での特に適切なラムノリピド単離手法は、以下の部分工程:
A)ラムノリピドを6未満のpHを有する水性培地に移す工程、
B)前記培地を少なくとも1つの有機溶媒と接触させて多相系を得て、そして水相を除去する工程、
C)pHを6以上のpHに上昇させて、多相有機系を得る工程、
D)ラムノリピドが富化した有機相を除去する工程、および
E)場合によりラムノリピドをさらに精製する工程
の方法を含む。
【0099】
方法工程III)のこの有利な実施態様の実施方法の詳細な説明は、米国特許出願公開第20140148588号明細書(US 20140148588)に挙げられている。
【0100】
本発明は、同様に本発明による方法を用いて得ることができるラムノリピド、特にまた本発明による方法を用いて得ることができる上記ラムノリピド混合物を提供する。
【0101】
有利にも、本発明による方法を用いて得ることができるラムノリピドおよび混合物を、洗浄剤において、化粧品または医薬製剤において、および作物保護剤において使用することができる。
【0102】
したがって、本発明はさらに、化粧品、皮膚用製剤または医薬製剤、作物保護剤ならびにケア製品および洗浄剤および界面活性剤濃縮物を製造するための、本発明による方法を用いて得られたラムノリピドの使用を提供する。
【0103】
以下に提示する例によって本発明を例示により説明するが、本発明は例に明示された実施態様に限定されるものではなく、その適用範囲は、本発明の明細書および特許請求の範囲の全体から明らかである。
【0104】
例:
例1(本発明によらない):株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用した。
【0105】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}の構築
遺伝子rhlA、rhlBおよびrhlCならびに遺伝子rmlB、rmlD、rmlAおよびrmlC(双方ともP.エルギノーザ(P.aeruginosa)由来)を異種発現するために、プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を構築した。このプラスミドは、第一に、P.エルギノーザ(P.aeruginosa)DSM 1128(配列番号1)由来の遺伝子rhlAおよびrhlB(ラムノシルトランスフェラーゼ1をコード)ならびにrhlC(ラムノシルトランスフェラーゼ2をコード)からなる合成オペロンを含み、第二に、P.エルギノーザ(P.aeruginosa)DSM 19880(配列番号2)由来の遺伝子rmlB(dTDP-D-グルコース4,6-デヒドラターゼをコード)、rmlD(dTDP-4-デヒドロラムノースレダクターゼをコード)、rmlA(グルコース-1-ホスフェートチミジリルトランスフェラーゼをコード)およびrmlC(dTDP-4-デヒドロラムノース3,5-エピメラーゼをコード)からなるオペロンを含む。遺伝子rhlABCは、ラムノース誘導性PRhaプロモーターの制御下にあり、rmlBDAC遺伝子は、アラビノース誘導性PBADプロモーターの制御下にある。2つのオペロン構造の下流には、ターミネーター配列(rrnB T1T2)が位置している。rmlBDAC遺伝子を、P.エルギノーザ(P.aeruginosa)DSM 19880由来のゲノムDNAから増幅し、かつ合成rhlABCオペロンを遺伝子合成により得た。PRhaプロモーターカセット(配列番号3)およびPBADプロモーターカセット(配列番号4)ならびにターミネーター配列(配列番号5)をゲノム大腸菌DNAから増幅した。ジラムノリピドの合成にはrhlABC遺伝子が必要であるのに対して、活性化されたdTDP-L-ラムノースの提供にはrmlBDAC遺伝子が必要である。
【0106】
ベクターは、プラスミドpACYC184(New England Biolabs,フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)をベースとし、かつ大腸菌内で複製するためのp15A複製起点とP.プチダ(P.putida)内で複製するためのpVS1複製起点とを有する。pVS1複製起点を、シュードモナスプラスミドpVS1から増幅させた(Itoh Y, Watson JM, Haas D, Leisinger T, Plasmid 1984, 11(3), 206-20)。ベクター部分およびDNA断片を、市販のイン・ビトロDNAアセンブリキットを(例えばNEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって)使用してクローニングした。大腸菌10 betaケミカルコンピテントセル(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換した。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認した。得られたプラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)のサイズは、17337塩基対である。
【0107】
その後、このプラスミドを、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δuppに導入した。この株を、P.プチダ(P.putida)内でマーカーレス遺伝子欠失を構築するための出発株として使用する(Graf & Altenbuchner, 2011, Applied and Environmental Microbiology, Vol 77, No. 15, 5549-5552, DOI:10.1128/AEM.05055-11)。この方法は、P.プチダ(P.putida)に対するネガティブカウンターセレクション系に基づいており、これは、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼの活性および代謝拮抗剤5-フルオロウラシルに対するP.プチダ(P.putida)の感受性を利用する。upp遺伝子の欠失は、ラムノリピド生合成に影響を与えない。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δuppの形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施した。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離して分析した。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称した。
【0108】
バイオテクノロジーによる界面活性剤の製造を、Eppendorf社製の8重並行発酵系「DASGIP」において実施した。
【0109】
発酵のために、1L反応器を使用した。pHプローブを、pH4.0およびpH7.0の測定溶液を用いた2点校正により校正した。反応器に300mLの水を充填し、121℃で20分間オートクレーブ処理して、確実に無菌状態となるようにした。翌朝、クリーンベンチ内で水を取り除き、無菌発酵培地と取り換えた(オートクレーブ処理済み:2.2g/Lの(NHSO、0.02g/LのNaCl、0.4g/LのMgSO・7HO、0.04g/LのCaCl・2HO、別個に滅菌済み:2g/LのKHPO、15g/Lのグルコース、10mL/Lの微量元素溶液M12[滅菌ろ過済み:0.2g/LのZnSO・7HO、0.1g/LのMnCl・4HO、1.5g/Lのクエン酸三ナトリウム・2HO、0.1g/LのCuSO・5HO、0.002g/LのNiCl・6HO、0.003g/LのNaMoO・2HO、0.03g/LのHBO、1g/LのFeSO・7HO])。引き続き、pOプローブを1点校正により校正し(撹拌機:600rpm/通気:10sL/h空気)、フィード、校正剤および誘導剤のラインを定置洗浄により洗浄した。このために、チューブを70%エタノールで洗い流し、次に1MのNaOHで、次に滅菌した脱塩水で洗浄し、最後に特定の培地を充填した。
【0110】
凍結培養物から得た100μLを使用し、株(P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}をまず、50mg/Lのカナマイシンの入った250mLバッフル付フラスコ内のLB1培地(10g/Lのカゼイン加水分解物、5g/Lの酵母抽出物、1g/LのNaCl)25mL中で、一晩30℃、200rpmで約18時間増殖させた。この培養物の光学密度を測定した後に、500mLのバッフル付フラスコ内の滅菌シード培地50mL(オートクレーブ処理済み:4.4g/LのNaHPO・2HO、1.5g/LのKHPO、1g/LのNHCl、10g/Lの酵母抽出物、別個に滅菌済み:20g/Lのグルコース、0.2g/LのMgSO・7HO、0.006g/LのFeCl、0.015g/LのCaCl、1mL/Lの微量元素溶液SL6[滅菌ろ過済み:0.3g/LのHBO、0.2g/LのCoCl・6HO、0.1g/LのZnSO・7HO、0.03g/LのMnCl・4HO、0.01g/LのCuCl・2HO、0.03g/LのNaMoO・2HO、0.02g/LのNiCl・6HO])を、0.2の開始OD600を使用してLB予備培養物から植菌し、30℃、200rpmで約7時間インキュベートした。およそ8の光学密度OD600で、主要な培養物を0.7の開始OD600を使用して植菌した。
【0111】
0.7の光学密度を使用して反応器に植菌するために、約26mLを30mLシリンジ内に充填し、セプタムを通して針により反応器に植菌した。
【0112】
以下の標準プログラムを使用した:
【表1】
【0113】
アンモニア(12.5%)を使用して、pHを一方的にpH7.0に調節した。培養およびバイオトランスフォーメーションの間に、培養物中の溶存酸素を、撹拌機速度および通気速度により30%で一定に保持した。発酵をフェドバッチとして実施し、その際、供給開始から、500g/Lのグルコース供給による2.5g/Lhグルコースの供給を、DOピークをトリガとして行った。組換えにより導入された遺伝子の発現を、0.2%(w/v)ラムノースおよび0.2%(w/v)アラビノースの自動的な添加により供給開始の3時間後に誘導した。誘導糖の必要量は、発酵開始体積に基づく。双方の糖に、220g/Lのストック溶液を使用した。誘導の時点から界面活性剤の生成が始まった。pH、DO、CTR、OTR、また基質、例えばpH調節用のアンモニア溶液の流量および量、グルコース供給または誘導剤の流量といったすべてのオンライン測定データを、DASGIP発酵系により記録した。
【0114】
発酵分析のために、10mLシリンジを使用して、2mLを初留分として各容器から引き出し、かつ廃棄した。これに続いて、実際の分析用にもう一度6mLを反応器から取り出した。ラムノリピド含有量を求めた。発酵を65時間後に終了させた。
【0115】
HPLCを用いてラムノリピド濃度を求めた。100μLの発酵試料をエッペンドルフチューブ内で900μLの70%(v/v)n-プロパノールと混合し、レッチェミル内で30Hzで1分間振盪させた。その後、この試料を13000rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を新たなエッペンドルフチューブに移した。さらなる希釈が必要な場合には、これを55%n-プロパノールを使用して行った。すべてのチューブを即座に閉鎖して、蒸発を回避した。次に、この試料をHPLCバイアルに移し、測定するまで-20℃で貯蔵した。
【0116】
容積式ピペット(Combitip)を使用して2ml反応チューブに1mlのアセトンを充填し、この反応チューブを即座に閉鎖して蒸発を最小限にした。これに続いて、1mlの培養ブロスを添加した。この培養ブロス/アセトン混合物をボルテックス処理した後に、この混合物を13000rpmで3分間遠心分離し、800μlの上澄み液をHPLCバイアルに移した。蒸発光散乱検出器(Sedex LT-ELSD Model 85LT)をラムノリピドの検出および定量化に使用した。実際の測定は、Agilent Technologies 1200 Series(Santa Clara社、カルフォルニア)およびZorbax SB-C8 Rapid Resolution Column(4.6×150mm、3.5μm、Agilent社)を使用して実施した。注入体積は5μlであり、本方法の実施時間は20分であった。水性0.1%TFA(トリフルオロ酢酸、溶液A)およびメタノール(溶液B)を移動相として使用した。カラム温度は40℃であった。ELSD(検出器温度60℃)およびDAD(ダイオードアレイ、210nm)を検出器として利用した。本方法で使用した勾配は、次の通りであった:
【表2】
【0117】
3つの実験を、それぞれ例2と並行して行った。
【0118】
65時間後に測定した全RL濃度:34g/L。
【0119】
算定空時収率:0.53g/L・h。
【0120】
例2(本発明による)
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::galP_Ec+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}{rhlABC_Pa}{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用した。
【0121】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440 Δupp中にgalP遺伝子を挿入するためのベクターの構築
ガラクトース-HシンポーターGalPをコードする大腸菌K12由来のgalP遺伝子を挿入するためのベクターを、遺伝子のPCR増幅により調製する。使用したテンプレートは、大腸菌K12W3110のゲノムDNAである。galP遺伝子を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp内で、ABCトランスポーターパーミアーゼ、ABCトランスポーター結合タンパク質およびABCトランスポーターATP結合タンパク質をコードする遺伝子PP_1016-PP_1018と交換することを目的とする。このために、遺伝子PP_1016-PP_1018の上流および下流の約680塩基対をPCRにより増幅する。
【0122】
以下のプライマーをgalP遺伝子の増幅に使用した:
PCR1:galP
O.BF_FM_107 5’-CCAATACATGCCTGACGCTAAAAAACA-3’(配列番号7)
O.BF_FM_110 5’-TAGACGAGTTAATCGTGAGCGCCTATTT-3’(配列番号8)。
【0123】
以下のプライマーをPP_1016-PP_1018遺伝子の上流および下流の相同領域の増幅に使用した:
PCR2:PP_1016の上流領域
O.BF_FM_103 5’-GCCGCTTTGGTCCCGGCCGCCAAGGTCATTAAC-3’(配列番号9)
O.BF_FM_108 5’-TCAGGCATGTATTGGATCCCGAGGTAGT-3’(配列番号10)
PCR3:PP_1018の下流領域
O.BF_FM_102 5’-GCTTGCATGCCTGCAGGCGTGATGTTGTACTTC-3’(配列番号11)
O.BF_FM_109 5’-CGATTAACTCGTCTACACCATCAATAA-3’(配列番号12)。
【0124】
以下のパラメーターをPCRに使用した:
変性: 98℃ 30秒
変性: 98℃ 10秒 30x
アニーリング: 62℃ 12秒 30x
伸長: 72℃ 22秒 30x
最終伸長: 72℃ 5分。
【0125】
増幅には、NEB社(フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)製Phusion(商標)High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨にしたがって使用した。次に、PCR反応物各50μlを、1%TAEアガロースゲル上で溶解させた。PCR、アガロースゲル電気泳動、DNAの臭化エチジウム染色およびPCR断片サイズの決定を、当業者に公知の方法で実施する。予測されるサイズのPCR断片(PCR1、1410塩基対、(配列番号13);PCR2、675塩基対(配列番号14);PCR3、697塩基対(配列番号15))を増幅した。PCR産物を、Qiagen社製“QIAquick PCR Purification kit”を使用して製造者の規定通りに精製した。NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって使用し、精製したPCR産物をBamHI-およびSbfI-cut pKOPpベクターにクローニングした(配列番号16)。大腸菌10 betaケミカルコンピテントセル(NEB、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換した。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認した。得られたノックアウトベクターを、pKO_PP_1016-PP_1018::galP(配列番号17)と称した。
【0126】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::galP_Ecの構築
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::galP_Ecの構築を、プラスミドpKO_PP_1016-PP_1018::galPおよびGraf et al., 2011(Graf N, Altenbuchner J, Appl. Environ. Micorbiol., 2011 , 77(15):5549;DOI:10.1128/AEM.05055-11)に記載の方法を用いて実施した。遺伝子PP_1016-PP_1018をgalPに交換した後のDNA配列は、配列番号18に記載されている。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[ΡΡ_1016-1018]::galP_Ecの形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施した。その後、カナマイシン(50μg/ml)を補充したLBアガープレートに細胞を播種した。プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)は、既に例1に記載されている。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離し、制限分析を用いて分析した。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::galP_Ec pACYCATh5-{PrhaSR}{rhaSR_Ec}{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称した。技術的な具現化を、例1に記載の通りに実施した。
【0127】
3つの実験を、それぞれ例1と並行して行った。
【0128】
64時間後に測定した全RL濃度:44.5g/L。
【0129】
算定空時収率:0.70g/L・h。
【0130】
例3(本発明による)
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glf_Zm(co_Pp)+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用する。
【0131】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440 Δuppにglf遺伝子を挿入するためのベクターの構築
グルコースファシリテーターGlfをコードするザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)由来のglf遺伝子を挿入するためのベクターを、P.プチダ(P.putida)KT2440に最適化された遺伝子コドンのPCR増幅により調製する。合成DNA断片をテンプレートとして使用する。glf遺伝子を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp内で、ABCトランスポーターパーミアーゼ、ABCトランスポーター結合タンパク質およびABCトランスポーターATP結合タンパク質をコードする遺伝子PP_1016-PP_1018と交換することを目的とする。このために、遺伝子PP_1016-PP_1018の上流および下流の約690塩基対をPCRにより増幅する。
【0132】
以下のプライマーをglf遺伝子の増幅に使用する:
PCR4:glf
MW_18_02 5’-TACCTCGGGATCCAATACATGTCCAGCGAGTCGTCCCAG-3’(配列番号19)
MW_18_03 5’-TTACTTCTGCGAGCGCCACATC-3’(配列番号20)。
【0133】
以下のプライマーをPP_1016-PP_1018遺伝子の上流および下流の相同領域の増幅に使用する:
PCR5:PP_1016の上流領域
O.BF_FM_103 5’-GCCGCTTTGGTCCCGGCCGCCAAGGTCATTAAC-3’(配列番号9)
MW_18_01 5’-CATGTATTGGATCCCGAGGTAG-3’(配列番号21)
PCR6:PP_1018の下流領域
MW_18_04 5’-GCTCGCAGAAGTAACAATACCTCGTCTACACCATCAATAAGAAAAAG-3’(配列番号22)
O.BF_FM_102 5’-GCTTGCATGCCTGCAGGCGTGATGTTGTACTTC-3’(配列番号11)。
【0134】
以下のパラメーターをPCRに使用する:
変性: 98℃ 30秒
変性: 98℃ 10秒 30x
アニーリング: 62℃ 12秒 30x
伸長: 72℃ 22秒 30x
最終伸長: 72℃ 5分。
【0135】
増幅には、NEB社(フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)製Phusion(商標)High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨にしたがって使用する。次に、PCR反応物それぞれ50μlを、1%TAEアガロースゲル上で溶解させる。PCR、アガロースゲル電気泳動、DNAの臭化エチジウム染色およびPCR断片サイズの決定を、当業者に公知の方法で実施する。予測されるサイズのPCR断片(PCR4(配列番号23)、1440塩基対;PCR5(配列番号24)、670塩基対;PCR6(配列番号25)、710塩基対)を増幅する。PCR産物を、Qiagen社製“QIAquick PCR Purification kit”を使用して製造者の規定通りに精製する。NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって使用し、精製したPCR産物をBamHI-およびSbfI-cut pKOPpベクターにクローニングする(配列番号16)。大腸菌10 betaケミカルコンピテントセル(NEB、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換する。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認する。得られたノックアウトベクターを、pKO_PP_1016-PP_1018::glf_Zm(co_Pp)(配列番号26)と称する。
【0136】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glf_Zm(co_Pp)の構築
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glf_Zm(co_Pp)の構築を、プラスミドpKO_PP_1016-PP_1018::glf_Zm(co_Pp)およびGraf et al., 2011(Graf N, Altenbuchner J, Appl. Environ. Micorbiol., 2011,77(15):5549;DOI:10.1128/AEM.05055-11)に記載の方法を用いて行う。glfで遺伝子PP_1016-PP_1018を交換した後のDNA配列は、配列番号27に記載されている。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[ΡΡ_1016-1018]::glf_Zm(co_Pp)の形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施する。その後、カナマイシン(50μg/ml)を補充したLBアガープレートに細胞を播種する。プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)は、既に例1に記載されている。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離し、制限分析を用いて分析する。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glf_Zm(co_Pp)pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称する。技術的な具現化を、例1に記載の通りに実施した。
【0137】
3つの実験を、それぞれ例1と並行して行う。
【0138】
例1と比較して、64時間後の著しくより高い全RL濃度および著しくより高い算定空時収率が観察される。
【0139】
例4(本発明による)
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::[ptsH_Ec ptsl_Ec crr_Ec ptsG_Ec]+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用する。
【0140】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT 2440 Δupp中にpts遺伝子を挿入するためのベクターの構築
ホスホエノールピルベートホスホトランスフェラーゼ系PEP-PTSをコードする大腸菌K12由来のpts遺伝子を挿入するためのベクターを、遺伝子ptsH、ptsl、crrおよびptsGのPCR増幅により調製する。ptsHは、ホスホキャリアータンパク質HPrをコードし、ptslは、PTS酵素Iをコードし、crrは、酵素IIAGlcをコードし、かつptsGは、グルコース特異的PTS酵素IIBCをコードする。使用したテンプレートは、大腸菌K12W3110のゲノムDNAである。PTS系を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp内で、ABCトランスポーターパーミアーゼ、ABCトランスポーター結合タンパク質およびABCトランスポーターATP結合タンパク質をコードする遺伝子PP_1016-PP_1018と交換することを目的とする。このために、遺伝子PP_1016-PP_1018の上流および下流の約690塩基対をPCRにより増幅する。
【0141】
以下のプライマーをPTS遺伝子の増幅に使用する:
PCR7:オペロンptsH/ptsl/crr
O.BF_FM_123 5’-TCCAATACATGTTCCAGCAAGAAGTTACC-3’(配列番号28)
O.BF_FM_122 5’-CCTGAGTTTACTTCTTGATGCGGATAACC-3’(配列番号29)
PCR8:ptsG
O.BF_FM_121 5’-AGAAGTAAACTCAGGAGCACTCTCAATT-3’(配列番号30)
O.BF_FM_126 5’-AGACGAGTTAGTGGTTACGGATGTACTC-3’(配列番号31)。
【0142】
以下のプライマーをPP_1016-PP_1018遺伝子の上流および下流の相同領域の増幅に使用する:
PCR9:PP_1016の上流領域
O.BF_FM_103 5’-GCCGCTTTGGTCCCGGCCGCCAAGGTCATTAAC-3’(配列番号9)
O.BF_FM_124 5’-GGAACATGTATTGGATCCCGAGGTAGTG-3’(配列番号32)
PCR10:PP_1018の下流領域
O.BF_FM_125 5’-ACCACTAACTCGTCTACACCATCAATAAG-3’(配列番号33)
O.BF_FM_102 5’-GCTTGCATGCCTGCAGGCGTGATGTTGTACTTC-3’(配列番号11)。
【0143】
以下のパラメーターをPCRに使用する:
変性: 98℃ 30秒
変性: 98℃ 10秒 30x
アニーリング: 62℃ 12秒 30x
伸長: 72℃ 22秒 30x
最終伸長: 72℃ 5分。
【0144】
増幅には、NEB社(フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)製Phusion(商標)High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨にしたがって使用する。次に、PCR反応物それぞれ50μlを、1%TAEアガロースゲル上で溶解させる。PCR、アガロースゲル電気泳動、DNAの臭化エチジウム染色およびPCR断片サイズの決定を、当業者に公知の方法で実施する。予測されるサイズのPCR断片(PCR7(配列番号34)、2595塩基対;PCR8(配列番号35)、1469塩基対;PCR9(配列番号36)、674塩基対;PCR10(配列番号37)、698塩基対)を増幅する。PCR産物を、Qiagen社製“QIAquick PCR Purification kit”を使用して製造者の規定通りに精製する。NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって使用し、精製したPCR産物をBamHI-およびSbfI-cut pKOPpベクターにクローニングする(配列番号16)。大腸菌10betaケミカルコンピテントセル(NEB、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換する。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認する。得られたノックアウトベクターを、pKO_PP_1016-PP_1018::ptsH_Ec ptsl_Ec crr_Ec ptsG_Ec)(配列番号38)と称する。
【0145】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::ptsH_Ec ptsl_Ec crr_Ec ptsG_Ecの構築
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::ptsH_Ec ptsl_Ec crr_Ec ptsG_Ecの構築を、プラスミドpKO_PP_1016-PP_1018::ptsH_Ec ptsl_Ec crr_Ec ptsG_EcおよびGraf et al., 2011(Graf N, Altenbuchner J, Appl. Environ. Micorbiol., 2011 , 77(15):5549;DOI:10.1128/AEM.05055-11)に記載の方法を用いて実施する。遺伝子PP_1016-PP_1018をptsH_Ec ptsl_Ec crr_Ec ptsG_Ecに交換した後のDNA配列は、配列番号39に記載されている。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::ptsH_Ec ptsl_Ec crr_Ec ptsG_Ecの形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施する。その後、カナマイシン(50μg/ml)を補充したLBアガープレートに細胞を播種する。プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)は、既に例1に記載されている。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離し、制限分析を用いて分析する。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::[ptsH_Ec ptsl_Ec crr_Ec ptsG_Ec] pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称する。技術的な具現化を、例1に記載の通りに実施する。
【0146】
3つの実験を、それぞれ例1と並行して行う。
【0147】
例1と比較して、64時間後の著しくより高い全RL濃度および著しくより高い算定空時収率が観察される。
【0148】
例5(本発明による)
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::gluP_Bab+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用する。
【0149】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440 ΔuppにgluP遺伝子を挿入するためのベクターの構築
グルコース/ガラクトーストランスポーターGluPをコードするブルセラ・アボルツス(Brucella abortus)由来のgluP遺伝子を挿入するためのベクターを、遺伝子のPCR増幅により調製する。使用したテンプレートは、合成DNA断片である。gulP遺伝子を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp内で、ABCトランスポーターパーミアーゼ、ABCトランスポーター結合タンパク質およびABCトランスポーターATP結合タンパク質をコードする遺伝子PP_1016-PP_1018と交換することを目的とする。このために、遺伝子PP_1016-PP_1018の上流および下流の約680塩基対をPCRにより増幅する。
【0150】
以下のプライマーをgluP遺伝子の増幅に使用する:
PCR11:gluP
MW_18_05 5’-TACCTCGGGATCCAATACATGGCAACTTCCATCCCAAC-3’(配列番号40)
MW_18_06 5’-TCAGCTTTTGCTGCCGATGAG-3’(配列番号41)。
【0151】
以下のプライマーをPP_1016-PP_1018遺伝子の上流および下流の相同領域の増幅に使用する:
PCR5:PP_1016の上流領域
O.BF_FM_103 5’-GCCGCTTTGGTCCCGGCCGCCAAGGTCATTAAC-3’(配列番号9)
MW_18_01 5’-CATGTATTGGATCCCGAGGTAG-3’(配列番号21)。
PCR12:PP_1018の下流領域
MW_18_07 5’-TCATCGGCAGCAAAAGCTGACTCGTCTACACCATCAATAAGAAAAAG-3’(配列番号42)
O.BF_FM_102 5’-GCTTGCATGCCTGCAGGCGTGATGTTGTACTTC-3’(配列番号11)。
【0152】
以下のパラメーターをPCRに使用する:
変性: 98℃ 30秒
変性: 98℃ 10秒 30x
アニーリング: 62℃ 12秒 30x
伸長: 72℃ 22秒 30x
最終伸長: 72℃ 5分。
【0153】
増幅には、NEB社(フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)製Phusion(商標)High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨にしたがって使用する。次に、PCR反応物それぞれ50μlを、1%TAEアガロースゲル上で溶解させる。PCR、アガロースゲル電気泳動、DNAの臭化エチジウム染色およびPCR断片サイズの決定を、当業者に公知の方法で実施する。予測されるサイズのPCR断片(PCR11(配列番号43)、1257塩基対;PCR5(配列番号24)、670塩基対;PCR12(配列番号44)、710塩基対)を増幅する。PCR産物を、Qiagen社製“QIAquick PCR Purification kit”を使用して製造者の規定通りに精製する。NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって使用し、精製したPCR産物をBamHI-およびSbfI-cut pKOPpベクターにクローニングする(配列番号16)。大腸菌10 betaケミカルコンピテントセル(NEB、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換する。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認する。得られたノックアウトベクターを、pKO_PP_1016-PP_1018::gluP_Bab(配列番号45)と称する。
【0154】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::gluP_Babの構築
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::gluP_Babの構築を、プラスミドpKO_PP_1016-PP_1018::gluP_BabおよびGraf et al., 2011(Graf N, Altenbuchner J, Appl. Environ. Micorbiol., 2011, 77(15):5549;DOI:10.1128/AEM.05055-11)に記載の方法を用いて実施する。gluPで遺伝子PP_1016-PP_1018を交換した後のDNA配列は、配列番号46に記載されている。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::gluP_Babの形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施する。その後、カナマイシン(50μg/ml)を補充したLBアガープレートに細胞を播種する。プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)は、既に例1に記載されている。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離し、制限分析を用いて分析する。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::gluP_Bab pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称する。技術的な具現化を、例1に記載の通りに実施する。
【0155】
3つの実験を、それぞれ例1と並行して行う。
【0156】
例1と比較して、64時間後の著しくより高い全RL濃度および著しくより高い算定空時収率が観察される。
【0157】
例6(本発明による)
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::iolT1_Cg(co_Pp)+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用する。
【0158】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440 Δupp中にiolT1遺伝子を挿入するためのベクターの構築
ミオイノシトールファシリテーターIolT1をコードするコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)ATCC 13032由来のiolT1遺伝子を挿入するためのベクターを、P.プチダ(P.putida)KT2440にコドン最適化された遺伝子のPCR増幅により調製する。合成DNA断片をテンプレートとして使用する。iolT1遺伝子を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp内で、ABCトランスポーターパーミアーゼ、ABCトランスポーター結合タンパク質およびABCトランスポーターATP結合タンパク質をコードする遺伝子PP_1016-PP_1018と交換することを目的とする。このために、遺伝子PP_1016-PP_1018の上流および下流の約680塩基対をPCRにより増幅する。
【0159】
以下のプライマーをiolT1遺伝子の増幅に使用する:
PCR13:iolT1
MW_18_08 5’-TACCTCGGGATCCAATACATGGCAAGCACCTTTATCCAGGCCGACAG-3’(配列番号47)
MW_18_09 5’-TCAATGGACCTTGCCCTTGCGAATG-3’(配列番号48)。
【0160】
以下のプライマーをPP_1016-PP_1018遺伝子の上流および下流の相同領域の増幅に使用する:
PCR5:PP_1016の上流領域
O.BF_FM_103 5’-GCCGCTTTGGTCCCGGCCGCCAAGGTCATTAAC-3’(配列番号9)
MW_18_01 5’-CATGTATTGGATCCCGAGGTAG-3’(配列番号21)。
PCR14:PP_1018の下流領域
MW_18_10 5’-GCAAGGGCAAGGTCCATTGACTCGTCTACACCATCAATAAGAAAAAG-3’(配列番号49)
O.BF_FM_102 5’-GCTTGCATGCCTGCAGGCGTGATGTTGTACTTC-3’(配列番号11)。
【0161】
以下のパラメーターをPCRに使用する:
変性: 98℃ 30秒
変性: 98℃ 10秒 30x
アニーリング: 62℃ 12秒 30x
伸長: 72℃ 22秒 30x
最終伸長: 72℃ 5分。
【0162】
増幅には、NEB社(フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)製Phusion(商標)High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨にしたがって使用する。次に、PCR反応物それぞれ50μlを、1%TAEアガロースゲル上で溶解させる。PCR、アガロースゲル電気泳動、DNAの臭化エチジウム染色およびPCR断片サイズの決定を、当業者に公知の方法で実施する。予測されるサイズのPCR断片(PCR13(配列番号50)、1494塩基対;PCR5(配列番号24)、670塩基対;PCR14(配列番号51)、710塩基対)を増幅する。PCR産物を、Qiagen社製“QIAquick PCR Purification kit”を使用して製造者の規定通りに精製する。NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって使用し、精製したPCR産物をBamHI-およびSbfI-cut pKOPpベクターにクローニングする(配列番号16)。大腸菌10betaケミカルコンピテントセル(NEB、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換する。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認する。得られたノックアウトベクターを、pKO_PP_1016-PP_1018::iolT1_Cg(co_Pp)(配列番号52)と称する。
【0163】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[ΡΡ_1016-1018]::iolT1_Cg(co_Pp)の構築
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[ΡΡ_1016-1018]::iolT1_Cg(co_Pp)の構築を、プラスミドpKO_PP_1016-PP_1018::iolT1_Cg(co_Pp)およびGraf et al., 2011(Graf N, Altenbuchner J, Appl. Environ. Micorbiol., 2011, 77(15):5549;DOI:10.1128/AEM.05055-11)に記載の方法を用いて実施する。遺伝子ΡΡ_1016-PP-1018をiolT1_Cg(co_Pp)に交換した後のDNA配列は、配列番号53に記載されている。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[ΡΡ_1016-1018]::iolT1_Cg(co_Pp)の形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施する。その後、カナマイシン(50μg/ml)を補充したLBアガープレートに細胞を播種する。プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)は、既に例1に記載されている。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離し、制限分析を用いて分析する。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[ΡΡ_1016-1018]::iolT1_Cg(co_Pp)pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称する。技術的な具現化を、例1に記載の通りに実施する。
【0164】
3つの実験を、それぞれ例1と並行して行う。
【0165】
例1と比較して、64時間後の著しくより高い全RL濃度および著しくより高い算定空時収率が観察される。
【0166】
例7(本発明による)
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcP_Ms+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用する。
【0167】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440 Δupp中にglcP遺伝子を挿入するためのベクターの構築
アラビノースプロトンシンポーターGlcPをコードするマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)由来のglcP遺伝子を挿入するためのベクターを、遺伝子のPCR増幅により調製する。使用したテンプレートは、合成DNA断片である。glcP遺伝子を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp内で、ABCトランスポーターパーミアーゼ、ABCトランスポーター結合タンパク質およびABCトランスポーターATP結合タンパク質をコードする遺伝子PP_1016-PP_1018と交換することを目的とする。このために、遺伝子PP_1016-PP_1018の上流および下流の約680塩基対をPCRにより増幅する。
【0168】
以下のプライマーをglcP遺伝子の増幅に使用する:
PCR15:glcP
MW_18_11 5’-ACTACCTCGGGATCCAATACATGAATGTGATCGGTATCACTCTC-3’(配列番号54)
MW_18_12 5’-TCAGTGCCCCAGCGCTTCGG-3’(配列番号55)。
【0169】
以下のプライマーをPP_1016-PP_1018遺伝子の上流および下流の相同領域の増幅に使用する:
PCR5:PP_1016の上流領域
O.BF_FM_103 5’-GCCGCTTTGGTCCCGGCCGCCAAGGTCATTAAC-3’(配列番号9)
MW_18_01 5’-CATGTATTGGATCCCGAGGTAG-3’(配列番号21)
PCR16:PP_1018の下流領域
MW_18_13 5’-CCGAAGCGCTGGGGCACTGACTCGTCTACACCATCAATAAGAAAAAG-3’(配列番号56)
O.BF_FM_102 5’-GCTTGCATGCCTGCAGGCGTGATGTTGTACTTC-3’(配列番号11)。
【0170】
以下のパラメーターをPCRに使用する:
変性: 98℃ 30秒
変性: 98℃ 10秒 30x
アニーリング: 62℃ 12秒 30x
伸長: 72℃ 22秒 30x
最終伸長: 72℃ 5分。
【0171】
増幅には、NEB社(フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)製Phusion(商標)High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨にしたがって使用する。次に、PCR反応物それぞれ50μlを、1%TAEアガロースゲル上で溶解させる。PCR、アガロースゲル電気泳動、DNAの臭化エチジウム染色およびPCR断片サイズの決定を、当業者に公知の方法で実施する。予測されるサイズのPCR断片(PCR15(配列番号57)、1517塩基対;PCR5(配列番号24)、670塩基対;PCR16(配列番号58)、710塩基対)を増幅する。PCR産物を、Qiagen社製“QIAquick PCR Purification kit”を使用して製造者の規定通りに精製する。NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって使用し、精製したPCR産物をBamHI-およびSbfI-cut pKOPpベクターにクローニングする(配列番号16)。大腸菌10 betaケミカルコンピテントセル(NEB、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換する。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認する。得られたノックアウトベクターを、pKO_PP_1016-PP_1018::glcP_Ms(配列番号59)と称する。
【0172】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcP_Msの構築
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcP_Msの構築を、プラスミドpKO_PP_1016-PP_1018::glcP_MsおよびGraf et al., 2011(Graf N, Altenbuchner J, Appl. Environ. Micorbiol., 2011 , 77(15):5549;DOI:10.1128/AEM.05055-11)に記載の方法を用いて実施する。遺伝子PP_1016-PP_1018をglcPに交換した後のDNA配列は、配列番号60に記載されている。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[ΡΡ_1016-1018]::glcP_Msの形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施する。その後、カナマイシン(50μg/ml)を補充したLBアガープレートに細胞を播種する。プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)は、既に例1に記載されている。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離し、制限分析を用いて分析する。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcP_Ms pACYCATh5-{PrhaSR}{rhaSR_Ec}{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称する。技術的な具現化を、例1に記載の通りに実施する。
【0173】
3つの実験を、それぞれ例1と並行して行う。
【0174】
例1と比較して、64時間後の著しくより高い全RL濃度および著しくより高い算定空時収率が観察される。
【0175】
例8(本発明による)
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcU_Bs(co_Pp)+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用する。
【0176】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440 Δupp中にglcU遺伝子を挿入するためのベクターの構築
グルコース取り込みタンパク質GlcUをコードするバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)由来のglcU遺伝子を挿入するためのベクターを、P.プチダ(P.putida)KT2440用にコドン最適化された遺伝子のPCR増幅により調製する。使用したテンプレートは、合成DNA断片である。glcU遺伝子を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp内で、ABCトランスポーターパーミアーゼ、ABCトランスポーター結合タンパク質およびABCトランスポーターATP結合タンパク質をコードする遺伝子PP_1016-PP_1018と交換することを目的とする。このために、遺伝子PP_1016-PP_1018の上流および下流の約680塩基対をPCRにより増幅する。
【0177】
以下のプライマーをglcU遺伝子の増幅に使用する:
PCR17:glcU
MW_18_14 5’-TACCTCGGGATCCAATACATGGACTTGTTGCTGGCTCTG-3’(配列番号61)
MW_18_15 5’-CTAGCTGTTGGTCTTGGCGATG-3’(配列番号62)。
【0178】
以下のプライマーを、PP_1016-PP_1018の上流および下流の相同領域の増幅に使用する:
PCR5:PP_1016の上流領域
O.BF_FM_103 5’-GCCGCTTTGGTCCCGGCCGCCAAGGTCATTAAC-3’(配列番号9)
MW_18_01 5’-CATGTATTGGATCCCGAGGTAG-3’(配列番号21)
PCR18:PP_1018の下流領域
MW_18_16 5’-TCGCCAAGACCAACAGCTAGCTCGTCTACACCATCAATAAGAAAAAG-3’(配列番号63)
O.BF_FM_102 5’-GCTTGCATGCCTGCAGGCGTGATGTTGTACTTC-3’(配列番号11)。
【0179】
以下のパラメーターをPCRに使用する:
変性: 98℃ 30秒
変性: 98℃ 10秒 30x
アニーリング: 62℃ 12秒 30x
伸長: 72℃ 22秒 30x
最終伸長: 72℃ 5分。
【0180】
増幅には、NEB社(フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)製Phusion(商標)High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨にしたがって使用する。次に、PCR反応物それぞれ50μlを、1%TAEアガロースゲル上で溶解させる。PCR、アガロースゲル電気泳動、DNAの臭化エチジウム染色およびPCR断片サイズの決定を、当業者に公知の方法で実施する。予測されるサイズのPCR断片(PCR17(配列番号64)、882塩基対;PCR5(配列番号24)、670塩基対;PCR18(配列番号65)、710塩基対)を増幅する。PCR産物を、Qiagen社製“QIAquick PCR Purification kit”を使用して製造者の規定通りに精製する。NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって使用し、精製したPCR産物をBamHI-およびSbfI-cut pKOPpベクターにクローニングする(配列番号16)。大腸菌10betaケミカルコンピテントセル(NEB、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換する。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認する。得られたノックアウトベクターを、pKO_PP_1016-PP_1018::glcU_Bs(配列番号66)と称する。
【0181】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcU_Bsの構築
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcU_Bsの構築を、プラスミドpKO_PP_1016-PP_1018::glcU_BsおよびGraf et al., 2011(Graf N, Altenbuchner J, Appl. Environ. Micorbiol., 2011 , 77(15):5549;DOI:10.1128/AEM.05055-11)に記載の方法を用いて実施する。遺伝子PP_1016-PP_1018をglcUに交換した後のDNA配列は、配列番号67に記載されている。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcU_Bsの形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施する。その後、カナマイシン(50μg/ml)を補充したLBアガープレートに細胞を播種する。プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)は、既に例1に記載されている。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離し、制限分析を用いて分析する。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::glcU_Bs pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称する。技術的な具現化を、例1に記載の通りに実施する。
【0182】
3つの実験を、それぞれ例1と並行して行う。
【0183】
例1と比較して、64時間後の著しくより高い全RL濃度および著しくより高い算定空時収率が観察される。
【0184】
例9(本発明による)
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::SemiSWEET_Lb(co_Pp)+pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を使用する。
【0185】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)KT2440 Δupp中にSemiSWEET遺伝子を挿入するためのベクターの構築
糖トランスポーターsemisweetをコードするレプトスピラ・ビフレクサ(Leptospira biflexa)由来のSemiSWEET遺伝子を挿入するためのベクターを、P.プチダ(P.putida)KT2440用にコドン最適化された遺伝子のPCR増幅により調製する。使用したテンプレートは、合成DNA断片である。semiSWEET遺伝子を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp内で、ABCトランスポーターパーミアーゼ、ABCトランスポーター結合タンパク質およびABCトランスポーターATP結合タンパク質をコードする遺伝子PP_1016-PP_1018と交換することを目的とする。このために、遺伝子PP_1016-PP_1018の上流および下流の約680塩基対をPCRにより増幅する。
【0186】
以下のプライマーをsemiSWEET遺伝子の増幅に使用する:
PCR19:semiSWEET
MW_18_17 5’-TACCTCGGGATCCAATACATGGAAAACTTGATCGGCTATGTG-3’(配列番号68)
MW_18_18 5’-TCAGGTTTGGTTGCCCTCGGTCAG-3’(配列番号69)。
【0187】
以下のプライマーをPP_1016-PP_1018遺伝子の上流および下流の相同領域の増幅に使用する:
PCR5:PP_1016の上流領域
O.BF_FM_103 5’-GCCGCTTTGGTCCCGGCCGCCAAGGTCATTAAC-3’(配列番号9)
MW_18_01 5’-CATGTATTGGATCCCGAGGTAG-3’(配列番号21)
PCR20:PP_1018の下流領域
MW_18_19 5’-CCGAGGGCAACCAAACCTGACTCGTCTACACCATCAATAAGAAAAAG-3’(配列番号70)
O.BF_FM_102 5’-GCTTGCATGCCTGCAGGCGTGATGTTGTACTTC-3’(配列番号11)。
【0188】
以下のパラメーターをPCRに使用する:
変性: 98℃ 30秒
変性: 98℃ 10秒 30x
アニーリング: 62℃ 12秒 30x
伸長: 72℃ 22秒 30x
最終伸長: 72℃ 5分。
【0189】
増幅には、NEB社(フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)製Phusion(商標)High-Fidelity Master Mixを製造者の推奨にしたがって使用する。次に、PCR反応物それぞれ50μlを、1%TAEアガロースゲル上で溶解させる。PCR、アガロースゲル電気泳動、DNAの臭化エチジウム染色およびPCR断片サイズの決定を、当業者に公知の方法で実施する。予測されるサイズのPCR断片(PCR19(配列番号71)、276塩基対;PCR5(配列番号24)、670塩基対;PCR20(配列番号72)、710塩基対)を増幅する。PCR産物を、Qiagen社製“QIAquick PCR Purification kit”を使用して製造者の規定通りに精製する。NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kitを製造者(NEB;フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)の指示書にしたがって使用し、精製したPCR産物をBamHI-およびSbfI-cut pKOPpベクターにクローニングする(配列番号16)。大腸菌10betaケミカルコンピテントセル(NEB、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ)を、当業者に公知の方法で形質転換する。標的遺伝子の正確な挿入を制限分析によりチェックし、導入された相同領域の信頼性をDNAシーケンシングにより確認する。得られたノックアウトベクターを、pKO_PP_1016-PP_1018]::SemiSWEET_Lb(co_Pp)(配列番号73)と称する。
【0190】
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::semiSWEET_Lb(co_Pp)の構築
株P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::semiSWEET_Lb(co_Pp)の構築を、プラスミドpKO_PP_1016-PP_1018::semiSWEET_Lb(co_Pp)およびGraf et al., 2011(Graf N, Altenbuchner J, Appl. Environ. Micorbiol., 2011 , 77(15):5549;DOI:10.1128/AEM.05055-11)に記載の方法を用いて実施する。遺伝子PP_1016-PP_1018をsemiSWEETに交換した後のDNA配列は、配列番号74に記載されている。ベクターpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}を用いたP.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::semiSWEET_Lb(co_Pp)の形質転換を、Iwasaki et al.(Iwasaki K, Uchiyama H, Yagi O, Kurabayashi, T, Ishizuka K, Takamura Y, Biosci. Biotech. Biochem. 1994. 58(5):851-854)に記載の通りに実施する。その後、カナマイシン(50μg/ml)を補充したLBアガープレートに細胞を播種する。プラスミドpACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}(配列番号6)は、既に例1に記載されている。10クローンそれぞれからプラスミドDNAを単離し、制限分析を用いて分析する。このプラスミドを有する株を、P.プチダ(P.putida)KT2440 Δupp Δ[PP_1016-1018]::semisweet_Lb(co_Pp)pACYCATh5-{PrhaSR}[rhaSR_Ec]{PrhaBAD}[rhlABC_Pa]{Talk}[araC_Ec]{ParaBAD}[rmlBDAC_Pa]{Talk}と称する。技術的な具現化を、例1に記載の通りに実施する。
【0191】
3つの実験を、それぞれ例1と並行して行う。
【0192】
例1と比較して、64時間後の著しくより高い全RL濃度および著しくより高い算定空時収率が観察される。
【配列表】
0007597507000001.app