(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】セメント組成物及び超高強度・低収縮モルタル組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20241203BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20241203BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20241203BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20241203BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B22/06 A
C04B22/08 A
C04B22/14 B
C04B24/26 E
(21)【出願番号】P 2020036718
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-01-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕
(72)【発明者】
【氏名】中原 和彦
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-248828(JP,A)
【文献】特開2021-59474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高強度・低収縮モルタル組成物に用いるセメント組成物であって、
ポルトランドセメントと、下記の2種類のガラス質材料と、無水石膏とを含有し、
前記
ポルトランドセメントが50~85質量%、下記シリケートガラス粉末が5~15質量%、下記アルミノシリケートガラス粉末が5~15質量%、前記無水石膏が1~15質量%であ
って、
且つ、前記ポルトランドセメント100質量部に対して、前記シリケートガラス粉末と前記アルミノシリケートガラス粉末と前記無水石膏の合計量が42.8質量部以上90質量部以下であるセメント組成物。
(1)ガラス化率が80%以上であって、ガラス質部分の化学組成がSiO
290質量%以上であり、BET比表面積が10~25m
2/gであるシリケートガラス粉末
(2)ガラス化率が80%以上であって、ガラス質部分の化学組成がAl
2O
340~50質量%及びSiO
250~60質量%であるアルミノシリケートガラス粉末
【請求項2】
請求項1に記載のセメント組成物、分散剤、骨材及び水を含有し、
前記セメント組成物100質量部に対して、水が18~32質量部であって、材齢28日の圧縮強度が100N/mm
2を超え、且つ、JIS A 1129に準拠した手法で測定した材齢28日の収縮量が527×10
-6以下であることを特徴とする超高強度・低収縮モルタル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設用途などに用いる超高強度モルタル・コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建設用途などにおいて使用されるセメントペースト・モルタル・コンクリート等に関し、シリカフューム等の超微粉末を添加して高強度性を付与する技術は既に知られている(例えば特許文献1参照)。現状では、シリカフューム微粉末を添加し、低水結合材比とすることによって、圧縮強度100N/mm2を超えるような超高強度コンクリートが設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高強度コンクリートでは、圧縮強度確保のためにセメント等の結合材量を増やさざるを得ず、水和等に伴う材令初期からの収縮を抑制することが困難であった。
本発明は、圧縮強度100N/mm2を超えるような超高強度モルタル・コンクリートであっても、十分な圧縮強度を維持したまま収縮量を抑制可能な、超高強度・低収縮モルタル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポルトランドセメントに対して、2種類の異なる組成のガラス質材料を併用することにより、圧縮強度100N/mm2を超えるような超高強度を維持したまま、初期の収縮を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成によって上記課題を解決したセメント組成物及び超高強度・低収縮モルタル組成物に関する。
[1]セメントと、下記の2種類のガラス質材料と、無水石膏とを含有するセメント組成物。(1)ガラス化率が80%以上であって、ガラス質部分の化学組成がSiO290質量%以上であるシリケートガラス粉末、(2)ガラス化率が80%以上であって、ガラス質部分の化学組成がAl2O340~50質量%及びSiO250~60質量%であるアルミノシリケートガラス粉末
[2]前記セメント組成物、分散剤、骨材及び水を含有し、セメント組成物100質量部に対して、水が18~32質量部である超高強度・低収縮モルタル組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、建設用途などに用いる超高強度モルタル・コンクリートに関し、圧縮強度100N/mm2を超えるような超高強度を維持したまま、初期の収縮を低減可能なセメント組成物及びそれを用いた超強度・低収縮モルタル組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を具体的に説明する。
<セメント組成物>
本発明におけるセメント組成物は、セメントと、2種類のガラス質材料と、無水石膏とを含有する。
【0008】
本発明で用いるセメントとしては、ポルトランドセメント、混合セメント等が挙げられるが、強度発現性や収縮抑制の観点から、ポルトランドセメントであることが好ましい。セメントは一種を単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0009】
本発明で用いるガラス質材料は、2種類の異なる組成のガラス質材料が使用される。
第1のガラス質材料(1)は、ガラス化率は80%以上であって、ガラス質部分の化学組成がSiO290質量%以上であるシリケートガラス粉末である。
高強度を確保する観点から、ガラス化率は80%以上が必要であり、90%以上であることがより好ましい。また、ガラス質部分の化学組成は、低収縮性を確保す観点から、SiO290質量%以上であることが必要であり、95質量%以上であることが好ましい。このようなシリケートガラス粉末としては、シリカフューム等が該当する。シリケートガラス粉末の粉末度は、BET比表面積で10~25m2/gが好ましい。
【0010】
第2のガラス質材料(2)は、ガラス化率が80%以上であって、ガラス質部分の化学組成がAl2O340~50質量%及びSiO250~60質量%であるアルミノシリケートガラス粉末である。
高強度を確保する観点から、ガラス化率は80%以上が必要であり、90%以上であることがより好ましい。また、ガラス質部分の化学組成は、Al2O340~50質量%及びSiO250~60質量%であることが必要である。SiO2が50質量%未満であると、ガラス化することが困難であり、またAl2O3が40質量%未満であると収縮が過大となる虞がある。このようなアルミノシリケートガラス粉末としては、メタカオリン等が該当する。アルミノシリケートガラス粉末の粉末度は、BET比表面積で6~15m2/gが好ましい。
【0011】
本発明で用いる無水石膏としては、天然無水石膏、副生物として製造されるフッ酸無水石膏等、廃石膏ボードから製造される再生無水石膏等が挙げられる。無水石膏の形態としては、I型、II型、III型が挙げられるが、この中でII型無水石膏が好ましい。II型無水石膏を用いることによって、特に初期の収縮を抑制できる可能性がある。無水石膏の粉末度は、ブレーン比表面積で3000~20000cm2/gが好ましい。
【0012】
本発明のセメント組成物における各構成材料の配合は、セメントが50~85質量%、ガラス質材料(1)が5~15質量%、ガラス質材料(2)が5~15質量%、無水石膏が1~15質量%であることが好ましい。
【0013】
<高強度・低収縮モルタル組成物>
本発明における高強度・低収縮モルタル組成物は、上記セメント組成物、分散剤、骨材及び水を含有する。ここでモルタル組成物とは、骨材として粗骨材を使用したコンクリート組成物も含むものとする。
【0014】
本発明に用いる骨材としては、通常モルタル、コンクリートに用いる砕砂、川砂、海砂等の細骨材、砕石等の粗骨材を用いることができるが、強度発現性の観点より、骨材自体の圧縮強度が高いものを用いることが好ましく、圧縮強度の低い軽量骨材は除かれる。骨材の配合量としては、セメント組成物100質量部に対して、80~800質量部が好ましい。
【0015】
本発明で用いる分散剤としては、通常モルタル、コンクリートに用いる各種減水剤を用いることができるが、高強度配合とした際に流動性確保が容易である点より、ポリカルボン酸塩系のものであることが好ましい。分散剤の添加量としては、セメント組成物100質量部に対して、固形分換算で0.05~1質量部が好ましい。
【0016】
本発明に用いる水は、水道水、地下水など、任意のものを用いることができる。水の配合量としては、高強度及び施工性確保の観点から、セメント組成物100質量部に対して、18~32質量部が好ましく、20~30質量部がより好ましい。
【0017】
本発明の効果を損なわないものであれば、上記以外の成分を含有することができる。このような成分として、例えば、膨張材、収縮低減剤、消泡剤、AE剤、珪石粉や石灰石微粉末等の無機微粉末、繊維、顔料などが挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示すが、本発明は記載した実施例に限定されるものではない。
【0019】
<セメント組成物及びモルタル組成物の調製>
表1の配合割合で、20℃恒温度試験室内にて、ハンドミキサ(東芝製、回転速度1000rpm)で3分間混練し、試験用の試料を作製した。
以下に使用材料を示す。
なお、分散剤の添加量は、JIS R 5201に従って測定したフロー値が150±20mmとなるよう調整した。
・セメント;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
・ガラス質材料A;ガラス化率;>95%、ガラス質部分のSiO2;95%(市販シリカフューム)
・ガラス質材料B;ガラス化率;91%、ガラス質部分のSiO2;51%、ガラス質部分のAl2O3;47%
・ガラス質材料C;ガラス化率;80%、ガラス質部分のSiO2;52%、ガラス質部分のAl2O3;43%
・ガラス質材料D;ガラス化率;81%、ガラス質部分のSiO2;65%、ガラス質部分のAl2O3;20%
・ガラス質材料E;ガラス化率;45%、ガラス質部分のSiO2;51%、ガラス質部分のAl2O3;43%
・石膏a;II型無水石膏(太平洋マテリアル社製、フッ酸無水石膏)
・石膏b;III型無水石膏(ナコード社製、石膏ボード原料からの再生無水石膏)
・石膏c;I型無水石膏(石膏aを電気炉内で1200℃で焼成して作製)
・骨材;JIS R 5201 セメントの強さ試験用標準砂(セメント協会・研究所製)
・水;水道水
・分散剤;ポリカルボン酸系高性能減水剤コアフロー(太平洋マテリアル社製)
【0020】
【0021】
<評価試験>
1)圧縮強度の測定
直径5cm×10cmの型枠に各モルタル組成物を充填し、20℃の水槽内にて28日間養生した後、JIS A 1108に準拠して圧縮強度を測定した。
2)収縮量の測定
直径4cm×4cm×16cmの型枠に各モルタル組成物を充填し、20℃湿空箱内に静置して24時間後に脱型した後に、20℃で60%R.H.の恒温度試験室内にて試験体を静置し、28日後にJIS A 1129に準拠した手法で収縮量を測定し、初期収縮の指標とした。
【0022】
<試験結果>
試験結果を表2に示す。本発明品では、圧縮強度が100N/mm2を超え、かつ、収縮量が抑制されていることが分かる。
【0023】