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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/90 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B66C23/90 F
B66C23/90 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020042910
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143051
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-01
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筧 宗和
(72)【発明者】
【氏名】山口 公輔
【合議体】
【審判長】中屋 裕一郎
【審判官】平城 俊雅
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-102589(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン装置の制御装置を備え、
該制御装置は、前記クレーン装置の状態が過負荷状態に達すると前記クレーン装置に対する操作を規制する過負荷防止機能を有し、
前記過負荷防止機能が働いている場合において、前記過負荷状態において許容される、クレーン装置の安全側への動作が行われると、
前記過負荷状態が維持された状態で、前記クレーン装置が吊っている荷物が、型式によってあらかじめ定められている荷物降下禁止エリアに到達する場合に、
前記制御装置が、前記安全側への動作の規制、または前記荷物降下禁止エリアに到達することの、前記クレーン装置の作業者への報知の少なくともいずれかを行う、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記安全側への動作が、
前記クレーン装置の収縮動作または前記クレーン装置の起立動作のいずれかのみである、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記クレーン装置の作業者への報知を行った後、
前記安全側への動作の規制を行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。さらに詳しくは、過負荷防止装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の一つである積載形トラッククレーンは、荷台を備えたトラックにクレーン装置を搭載した車両である。クレーン装置は、運転室と荷台との間に搭載されている。クレーン装置は、走行用の原動機から動力を取り出して動作させられる。積載形トラッククレーンでは、クレーン作業時にクレーン装置の基礎部分を中心として、クレーン装置のブームを旋回させるとともに、ブームを伸縮させたり、起伏させたりする。これらの動作により貨物を吊り上げ、この貨物を運搬する。
【0003】
特許文献1には、積載形トラッククレーンの過負荷防止装置が開示されている。また図8には、従来例の積載形トラッククレーン50の動作説明図を示す。過負荷防止装置は、積載形トラッククレーン50のクレーン装置61の状態が過負荷状態に達する(図8(A)に示す、例えば負荷率110%の状態)と、クレーン装置61の所定の動作を規制する。ここで、過負荷状態とは、クレーン装置61に作用する転倒モーメントが、クレーン装置61の安定に要する定格モーメントを超えた状態である。クレーン装置61を構成するブームの、旋回、伸縮、起伏操作により、転倒モーメントは変化する。荷物を吊った状態でブームの伸長動作を行うと転倒モーメントが増加する。同様に荷物を吊った状態でブームの倒伏動作を行うと転倒モーメントが増加する。また、荷物を吊った状態でブームを積載形トラッククレーン50の側方から前方に移動させると、前方での定格モーメントは側方の定格モーメントよりも小さいため、定格モーメントに対する転倒モーメントの割合は大きくなる。
【0004】
この過負荷防止装置が働いている状態では、転倒モーメントが増加する方向への動作が規制されているが、転倒モーメントが減少する方向への動作に対しては、なんら規制または警告をすることはなく、図8(B)に示す、負荷率102%の状態になるように動作させることが可能であった。すなわち、過負荷状態に達した場合に、ブームの収縮動作およびブームの起立動作は許容されていた。これは、クレーン装置61を、過負荷状態でない正常状態に戻すためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-58856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、積載形トラッククレーン50において、図8(A)に示す状態から、ブームの収縮動作または起立動作が行われ、図8(B)に示す状態に至った場合、ブーム先端のフックに吊られた荷物は、ブームの根元に近づく。ブームの根元の近傍には、運転室62、アウトリガ63、荷台柵などがあり、吊られた荷物を巻き下げると干渉するエリア、すなわち荷物降下禁止エリアが存在する。過負荷防止装置が働いている状態では転倒モーメントが増加する方向への動作が規制されているため、過負荷状態のまま荷物降下禁止エリアに荷物が到達すると、転倒モーメントが減少する方向へ荷物を動かせてもそこは荷物降下禁止エリアであり、荷物を下ろすことができず、さらに荷物降下禁止エリアを抜け出す方向は転倒モーメントが増加する方向であり、過負荷防止装置の機能によりクレーンを動作させることができないという、いわゆるデッドエンドの状態となることがあった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、積載形トラッククレーンなど作業車両の作業者が、クレーン装置をデッドエンドの状態とすることを防止する作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の作業車両は、クレーン装置の制御装置を備え、該制御装置は、前記クレーン装置の状態が過負荷状態に達すると前記クレーン装置に対する操作を規制する過負荷防止機能を有し、前記過負荷防止機能が働いている場合において、前記過負荷状態において許容される、クレーン装置の安全側への動作が行われると、前記過負荷状態が維持された状態で、前記クレーン装置が吊っている荷物が、型式によってあらかじめ定められている荷物降下禁止エリアに到達する場合に、前記制御装置が、前記安全側への動作の規制、または前記荷物降下禁止エリアに到達することの、前記クレーン装置の作業者への報知の少なくともいずれかを行うことを特徴とする。
第2発明の作業車両は、第1発明において、前記安全側への動作が、前記クレーン装置の収縮動作または前記クレーン装置の起立動作のいずれかのみであることを特徴とする。
第3発明の作業車両は、第1発明または第2発明において、前記制御装置は、前記クレーン装置の作業者への報知を行った後、前記安全側への動作の規制を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、過負荷防止機能が働いている状態で、クレーン装置の安全側への動作中に、荷物が荷物降下禁止エリアに入ると事前に判明した場合に、動作の規制等が行われることにより、クレーン装置をデッドエンドの状態とすることを防止できる。
第2発明によれば、安全側への動作が、クレーン装置の起立動作またはクレーン装置の収縮動作のいずれかのみであることにより、クレーン装置の動作が一つに絞られ、作業者がクレーン装置の動作を確認することが容易になる。また、クレーン装置が吊っている荷物が荷物降下禁止エリアに到達するという事前の計算が複雑にならず、制御装置の計算負荷を低減できる。
第3発明によれば、制御装置は、クレーン装置の作業者への報知を行った後、安全側への動作の規制を行うことにより、クレーン装置の作業者は、安全側への動作の規制が行われるまでは、安全側への動作を継続することができ、クレーン装置をデッドエンドの状態とするまで作業が継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る作業車両の動作フロー図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る作業車両の側面図である。
図3図2の作業車両の油圧回路図である。
図4図2の作業車両の制御回路図である。
図5図2の作業車両の動作説明図である。図5(A)は、安全側への動作前の状態を示す図であり、図5(B)は安全側への動作後の状態を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る作業車両の動作フロー図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る作業車両の動作フロー図である。
図8】従来の作業車両の動作説明図である。図8(A)は、安全側への動作前の状態を示す図であり、図8(B)は安全側への動作後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための作業車両を例示するものであって、本発明は作業車両を以下に記載のものに特定しない。例えば荷台の後部にクレーン装置が搭載されたものも含まれる。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0012】
<第1実施形態>
(積載形トラッククレーン10)
図2には本発明の第1実施形態に係る作業車両の側面図を示す。本実施形態での作業車両は、積載形トラッククレーン10である。図2に示すように、積載形トラッククレーン10は、汎用トラック20の運転室27と荷台28との間の車両フレーム29にクレーン装置21が搭載されたものである。荷台28の前端には荷台柵24が取り付けられている。汎用トラック20には、左右対称に前輪22が設けられている。さらに汎用トラック20には、左右対称に後輪23が設けられている。
【0013】
図2に示すように、クレーン装置21は、車両フレーム29上に固定されたベース30と、ベース30に対して旋回可能に設けられたポスト31と、ポスト31の上端部に起伏可能に設けられたブーム32と、ベース30に設けられ、ベース30から左右外側へ張出すアウトリガ装置33と、を備えている。すなわちアウトリガ装置33は、側面方向から見て運転室27と荷台28との間に位置している。アウトリガ装置33の左右先端には、油圧のジャッキ38(図3参照)がそれぞれ設けられている。ブーム32は、基端ブーム、中間ブーム、先端ブームなどにより、入れ子式に構成されており、内部のブーム伸縮用アクチュエータ46b(図3参照)を伸縮することによって伸縮する。
【0014】
ポスト31にはウインチが内蔵されている。このウインチからワイヤロープをブーム32の先端部に導いて、ブーム32先端部の滑車を介してフック34に掛け回すことにより、フック34をブーム32の先端部から吊り下げている。
【0015】
クレーン装置21は、後述する油圧回路40により油圧駆動される。この油圧回路40を操作するためのレバー群35がベース30の左右両側に設けられている。また、油圧回路40を電気的に制御し、作業車両を制御する制御装置12がベース30に設けられている。
【0016】
(油圧回路40)
図3には、積載形トラッククレーン10の油圧回路図を示す。図3に示すように、クレーン装置21の油圧回路40は、主に、油圧バルブユニット41と、油圧バルブユニット41にタンク42内の作動油を供給する油圧ポンプ43と、油圧ポンプ43と油圧バルブユニット41とを接続する主油路44と、油圧バルブユニット41とタンク42とを接続する戻油路45と、クレーン装置21の起伏動作、ブーム32の伸縮動作、ブーム32の旋回動作、ウインチの巻上げ巻下げなどを行うための、複数のクレーン装置用アクチュエータ46、および2つのジャッキ38を含んで構成されている。クレーン装置用アクチュエータ46およびジャッキ38は、油圧バルブユニット41に接続している。
【0017】
油圧ポンプ43はPTO(パワーテイクオフ)装置を介して汎用トラック20のエンジン36に接続されており、エンジン36により駆動される。
【0018】
油圧バルブユニット41には、ブーム旋回用制御弁47a、ブーム伸縮用制御弁47b、ブーム起伏用制御弁47c、ウインチ用制御弁47d、右側ジャッキ制御弁48a、左側ジャッキ制御弁48bが設けられている。ブーム旋回用制御弁47aはブーム旋回用アクチュエータ46aに、ブーム伸縮用制御弁47bはブーム伸縮用アクチュエータ46bに、ブーム起伏用制御弁47cは、ブーム起伏用アクチュエータ46cに、ウインチ用制御弁47dは、ウインチ用油圧モータ46dにそれぞれ接続されている。また、右側ジャッキ制御弁48aは右側に位置するジャッキ38に、左側ジャッキ制御弁48bは左側に位置するジャッキ38に、それぞれ接続されている。
【0019】
これらの切換制御弁には、それぞれレバーが取り付けられており、そのレバーを手動操作することにより、油圧ポンプ43から供給される作動油の方向および流量を切り換えることができるようになっている。制御弁に取り付けられたレバーは、レバー群35としてベース30の左右両側に設けられている(図2参照)。
【0020】
また、制御装置12は、エンジン36のECU(エンジンコントロールユニット)にも接続されており、少なくともエンジン36の回転数を制御できるよう構成されている。制御装置12は、エンジン36の回転数を制御することで油圧ポンプ43の回転数を制御でき、油圧ポンプ43の吐出量を調整できる。
【0021】
(制御回路)
図4には、積載形トラッククレーン10の制御回路図を示す。制御装置12の入力側には、ブーム長検出器15と、ブーム旋回角度検出器16と、ブーム起伏角度検出器17と、起伏支持力検出器18と、が電気的に接続されている。また、制御装置12の出力側には警報器14と、ブーム旋回用制御弁47a、ブーム伸縮用制御弁47b、ブーム起伏用制御弁47c、ウインチ用制御弁47d、右側ジャッキ制御弁48a、左側ジャッキ制御弁48bが電気的に接続されている。なお制御装置12の入力側、出力側との表記は便宜的なものであり、例えばブーム起伏用制御弁47cにおける圧力の値が、制御装置12へ入力される場合もある。
【0022】
ブーム長検出器15は、ブーム32の長さを検出するためのものであり、例えばコード繰出長さ検出器である。コード繰出長さ検出器は測長用コードの繰り出し長さをコード巻取器の回転変位量を検出することで検出する。
【0023】
ブーム旋回角度検出器16は、ブーム32の旋回角度を検出するためのものであり、ポスト31の根元側に配置されている。例えばブーム旋回角度検出器16はポテンショメータである。このポテンショメータの代わりにロータリエンコーダが用いられることもある。
【0024】
ブーム起伏角度検出器17は、ブーム32の起伏角度を検出するためのものであり、ブーム32の根元側に配置されている。例えばブーム起伏角度検出器17はポテンショメータである。このポテンショメータの代わりにロータリエンコーダが用いられることもある。
【0025】
警報器14は、例えば定格荷重を超えた吊り荷重となった場合など、あらかじめ定められた状態になった場合に、積載形トラッククレーン10の使用者にその状態を報知させるためのものである。本実施形態では、警報器14は、運転室27の外側に設けられている。
【0026】
起伏支持力検出器18は、フック34に吊られた荷重を検出するために設けられている。本実施形態では、起伏支持力検出器18はブーム起伏用のシリンダに設けられた差圧計である。起伏支持力検出器18で検出された差圧は、制御装置12へ出力される。なお、フック34に吊られた荷重の検出は、起伏支持力検出器18での検出に限定されない。例えばロードセルにより、ラインプル荷重から検出することも可能である。
【0027】
(過負荷防止機能と本実施形態の動作フロー)
制御装置12が有する過負荷防止機能は、クレーン装置21の状態が過負荷状態に達すると、クレーン装置21に対する操作を規制する機能である。積載形トラッククレーン10では、作業半径および起伏角ごとに、すなわちその場所において、フック34で持ち上げることができる荷重を定格荷重としている。これは、ブーム32の長さ、ブーム32の起伏角により、釣り上げることができる荷重が変わるからである。このため、定格モーメント、転倒モーメントという考え方を導入し、この転倒モーメントの値が定格モーメントの値を超えた場合、過負荷防止機能として、制御装置12が過負荷状態と判断し、例えば、ブーム32の伸長動作およびブーム32の倒伏動作を規制する。なお、過負荷判定の基準値として、モーメント以外に荷重値を用いて判断しても問題ない。
【0028】
例えば、定格モーメントおよび転倒モーメントは、ブーム32の長さ、ブーム32の起伏角度、ブーム32の旋回角度、ブーム起伏用制御弁47cの圧力などから計算される。
【0029】
図1には、本実施形態における積載形トラッククレーン10の動作フロー図、図5には、その動作説明図を示す。本実施形態は、クレーン装置21が過負荷状態に達した後の動作に関する。
【0030】
ステップ10(以下S10のような形で記載する)で、クレーン装置21の作業者は、過負荷状態にあるクレーン装置21(例えば、図5(A)にある状態のクレーン装置21)について、安全側への操作を開始する。この安全側への操作としては、ブーム32の収縮動作の操作およびブーム32の起立動作の操作が該当する。この操作は、それぞれの動作が単独で行われるようにしても問題ないし、2つの動作が同時に行われるようにしても問題ない。2つの動作が同時に行われる場合とは、一つのスイッチにより2つの動作が同時に行われるようにプログラムされていることが好ましい。
【0031】
作業者が安全側への操作を開始すると同時に、制御装置12は、その安全側への操作が継続すると、クレーン装置21のフック34に吊っている荷物が、例えば図5(B)に示す荷物降下禁止エリアに到達するかどうかを計算する。
【0032】
ここで荷物降下禁止エリアとは、荷物を降下させたときに、荷物が運転室27、アウトリガ装置33、荷台柵24などと干渉するエリアである。荷物降下禁止エリアは、積載形トラッククレーン10の型式等によりあらかじめ定められている。そしてこの荷物降下禁止エリアは、例えば制御装置12内の記憶部に記憶されている。
【0033】
S20において、制御装置12は、荷物降下禁止エリアにそのまま荷物が移動した場合に、その場所において、実際に吊っている荷重から算出される算出荷重が、定格荷重を超えているかどうか、すなわち過負荷状態が継続しているかどうか(転倒モーメントが定格モーメントを超えているかどうかと同義)を判断する。算出荷重が定格荷重以内に収まっている、すなわち安全側への操作により過負荷状態が解消されていると、制御装置12が判断すると、制御装置12は、過負荷状態ではない正常状態にあると判断し、そのまま作業者の操作に従った動作を行うように制御する。
【0034】
S20において、算出荷重が、定格荷重よりも大きくなる、すなわち過負荷状態が継続されていると制御装置12が判断した場合、S30において、制御装置12は、許容されている安全側への動作であっても、すなわち起立動作と収縮動作であってもそれらの少なくとも一方を規制したり、または荷物降下禁止エリアに荷物が到達することの、クレーン装置21の作業者への報知を行ったりする。動作の規制および作業者への報知は、両方を行うこともできるし、一方のみを行うこともできる。作業者への報知は、例えば制御装置12に接続されている警報器14を用いることも可能であるし、作業者が手元に持っている操作端末の画面に表示させることも可能である。
【0035】
過負荷防止機能が働いている状態で、クレーン装置21の安全側への動作により、荷物が荷物降下禁止エリアに入ると事前に判明した場合に、動作の規制等が行われることにより、クレーン装置21をデッドエンドの状態とすることを防止できる。
【0036】
<第2実施形態>
図6には、本発明の第2実施形態に係る作業車両の動作フロー図を示す。本実施形態でも、作業車両は積載形トラッククレーン10である。積載形トラッククレーン10の構成は、第1実施形態のものと同じである。本実施形態は、図1の動作フロー図のS10の部分が、第1実施形態のものと異なっている。
【0037】
図6に示すように、第2実施形態では、クレーン装置21が過負荷状態になると、S11で、制御装置12が、安全側への動作である、起立動作と収縮動作の2つの動作を、同時に行うことを禁止する。
【0038】
S12では、クレーン装置21の作業者が、起立動作または収縮動作のいずれかの操作を行うことにより、制御装置12は、起立動作または収縮動作のいずれかを選択する。
【0039】
S13で、制御装置12は、クレーン装置21の作業者が、起立動作を選択した場合は、起立動作での算出荷重を計算する。または制御装置12は、クレーン装置21の作業者が、収縮動作を選択した場合は、収縮動作での算出荷重を計算する。
【0040】
S20において、制御装置12は、荷物降下禁止エリアにそのまま荷物が移動した場合に、実際に吊っている荷重から算出される算出荷重が、定格荷重を超えているかどうか、すなわち過負荷状態が継続しているかどうかを判断する。算出荷重が定格荷重以内に収まっていると制御装置12が判断する、すなわち安全側への操作により過負荷状態が解消されていると制御装置12が判断すると、制御装置12は、過負荷状態ではない正常状態にあると判断し、第1実施形態と同様、そのまま作業者の操作に従った動作を行うように制御する。
【0041】
S20において、算出荷重が、定格荷重よりも大きくなる、すなわち過負荷状態が継続していると制御装置12が判断した場合、図1に示すように、第1実施形態と同様、S30において、制御装置12は、許容されている安全側への動作であっても、それらを規制したり、または荷物降下禁止エリアに荷物が到達することの、クレーン装置21の作業者への報知を行ったりする。動作の規制および作業者への報知は、両方を行うこともできるし、一方のみを行うこともできる。作業者への報知は、例えば制御装置12に接続されている警報器14を用いることも可能である。
【0042】
安全側への動作が、クレーン装置21の収縮動作またはクレーン装置21の起立動作のいずれかのみであることにより、クレーン装置21の動作が一つに絞られ、作業者がクレーン装置21の動作を確認することが容易になる。また、クレーン装置21が吊っている荷物が荷物降下禁止エリアに到達するとの事前の計算が複雑にならず、制御装置12の計算負荷を低減できる。
【0043】
<第3実施形態>
図7には、本発明の第3実施形態に係る作業車両の動作フロー図を示す。本実施形態においても、作業車両は積載形トラッククレーン10である。積載形トラッククレーン10の構成は、第1実施形態のものと同じである。本実施形態は、図1の動作フロー図のS30の部分が、第1実施形態のものと異なっている。
【0044】
図7に示すように、S20において、算出荷重が、定格荷重よりも大きくなる、すなわち過負荷状態が継続していると制御装置12が判断した場合、S31において、制御装置12は、クレーン装置21の作業者へ、過負荷状態が維持されたまま、荷物が荷物降下禁止エリアに到達することを報知する。この報知は、例えば制御装置12に接続された警報器14により行うことも可能であるし、作業者が手元に持っている操作端末の画面に表示させることも可能である。
【0045】
S32において、制御装置12が、荷物が荷物降下禁止エリアの境界上に達していないと判断した場合は、制御装置12は、過負荷状態で許容されている安全側への動作を許容し、クレーン装置21の作業者はその動作を継続する。
【0046】
S32において、制御装置12が、荷物が荷物降下禁止エリアの境界上に達したと判断した場合、制御装置12は、安全側への動作、すなわちクレーン装置21の起立動作および収縮動作の両方を規制する。加えて、S31において行われた報知とは異なる内容の音声を警報器14で流すことも可能である。なお、この場合であっても、クレーン装置21の作業者は、操作端末などにおける操作スイッチを、中立の位置に戻すことで再度クレーン装置21について、安全側への操作を可能にする構成とすることもできる。
【0047】
制御装置12は、クレーン装置21の作業者への報知を行った後、安全側への動作の規制を行うことにより、クレーン装置21の作業者は、安全側への動作の規制が行われるまでは、安全側への動作を継続することができ、クレーン装置21をデッドエンドの状態とするまで作業が継続できる。
【0048】
なお、第3実施形態では、第1実施形態と異なる点はS30のステップのみであったが、他の実施形態として、S10が第2実施形態のものであり、かつS30が第3実施形態のものとすることも可能である。
【0049】
また、第1実施形態から第3実施形態の作業車両については、積載形トラッククレーン10を作業車両の1つとして例示して説明したが、作業車両はこれに限定されない。例えば、通常のトラッククレーン、またはオールテレーンクレーンなど、クレーン装置21を有する作業車両が広く一般に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 積載形トラッククレーン
12 制御装置
21 クレーン装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8