(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】運用管理システム、及び運用管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0832 20230101AFI20241203BHJP
C01B 3/26 20060101ALI20241203BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G06Q10/0832
C01B3/26
B65G61/00 542
(21)【出願番号】P 2020060410
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】清家 匡
(72)【発明者】
【氏名】壱岐 英
(72)【発明者】
【氏名】前田 征児
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-238180(JP,A)
【文献】特開2017-009069(JP,A)
【文献】特開2017-171522(JP,A)
【文献】特開2017-171521(JP,A)
【文献】特開2015-113240(JP,A)
【文献】特開2017-194745(JP,A)
【文献】特開平04-192074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
C01B 3/26
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化物を含む原料を製造する原料製造拠点から、前記原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る複数の脱水素拠点への前記原料の配送を管理する運用管理システムであって、
複数の前記脱水素拠点での脱水素状況に関する第1の情報を取得する情報取得部と、
少なくとも前記第1の情報に基づいて、複数の前記脱水素拠点へ前記原料を配送する配送計画を作成する配送計画作成部と、
少なくとも前記第1の情報に基づいて、前記脱水素拠点に対して前記原料の供給が必要となるタイミングを予測する予測部と、を備え、
前記配送計画作成部は、前記予測部による予測結果に基づいて、前記配送計画を作成し、
前記予測部は、前記脱水素拠点における前記原料の供給量と前記水素含有ガスの製造量のファクターを算出し、
前記ファクターと前記脱水素拠点における脱水素装置の触媒の劣化状況に基づいて、前記脱水素拠点に対して前記原料の供給が必要となるタイミングを予測する、運用管理システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記原料製造拠点での前記原料の製造状況に関する第2の情報を取得し、
前記配送計画作成部は、前記第1の情報、及び前記第2の情報に基づいて、前記配送計画を作成する、請求項1に記載の運用管理システム。
【請求項3】
前記第1の情報は、前記脱水素拠点で用いられる前記原料の量に関する原料情報と、前記脱水素反応に伴って生成される脱水素生成物の量に関する脱水素生成物情報と、を含む、請求項1又は2に記載の運用管理システム。
【請求項4】
前記予測部は、前記脱水素拠点における水素の需要量に基づいて、前記脱水素拠点に対して前記原料の供給が必要となるタイミングを予測する、請求項
1に記載の運用管理システム。
【請求項5】
前記予測部は、前記脱水素拠点における前記原料の残量に基づいて、前記脱水素拠点に対して前記原料の供給が必要となるタイミングを予測する、請求項
1に記載の運用管理システム。
【請求項6】
前記第2の情報は、前記脱水素拠点から回収された脱水素生成物の前記原料製造拠点への供給量データを含む、請求項2に記載の運用管理システム。
【請求項7】
水素化物を含む原料を製造する原料製造拠点から、前記原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る複数の脱水素拠点への前記原料の配送を管理する運用管理方法であって、
運用管理装置は、複数の前記脱水素拠点での脱水素状況に関する第1の情報を取得する情報取得工程と、
運用管理装置は、少なくとも前記第1の情報に基づいて、複数の前記脱水素拠点へ前記原料を配送する配送計画を作成する配送計画作成工程と、
運用管理装置は、少なくとも前記第1の情報に基づいて、前記脱水素拠点に対して前記原料の供給が必要となるタイミングを予測する予測工程と、を備え、
前記配送計画作成工程では、運用管理装置は、前記予測工程による予測結果に基づいて、前記配送計画を作成し、
前記予測工程では、運用管理装置は、前記脱水素拠点における前記原料の供給量と前記水素含有ガスの製造量のファクターを算出し、
前記ファクターと前記脱水素拠点における脱水素装置の触媒の劣化状況に基づいて、前記脱水素拠点に対して前記原料の供給が必要となるタイミングを予測する、運用管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運用管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱水素反応させることによって水素含有ガスを得ることができる水素化物を含む原料を用いるシステムとして、例えば特許文献1に挙げるものが知られている。特許文献1の水素供給システムは、原料の芳香族炭化水素の水素化物を貯蔵するタンクと、当該タンクから供給された原料を脱水素反応させることによって水素を得る脱水素反応部と、脱水素反応部で得られた水素を気液分離する気液分離部と、気液分離された水素を精製する水素精製部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなシステムを備える脱水素拠点では、タンクローリーなどで配送されてきた原料が用いられる。また、このような原料は、原料を製造する原料製造拠点から配送される。ここで、一か所の原料製造拠点で製造された原料が、複数の脱水素拠点へ配送される場合がある。例えば、複数の脱水素拠点が広範囲にわたって存在している場合、各脱水素拠点に対して効率よく原料を配送しなくては、タンクローリーなどの移動体の配送頻度が高くなり、その結果配送コストが上がり、最終的に水素のコストが上昇するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、原料製造拠点から複数の脱水素拠点へ効率よく原料を配送することができる運用管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運用管理システムは、水素化物を含む原料を製造する原料製造拠点から、原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る複数の脱水素拠点への原料の配送を管理する運用管理システムであって、複数の脱水素拠点での脱水素状況に関する第1の情報を取得する情報取得部と、少なくとも第1の情報に基づいて、複数の脱水素拠点へ原料を配送する配送計画を作成する配送計画作成部と、を備える。
【0007】
本発明に係る運用管理システムにおいて、情報取得部は、複数の脱水素拠点での脱水素状況に関する第1の情報を取得する。この第1の情報は、それぞれの脱水素拠点において、どのような脱水素状況であるかを把握可能な情報であるため、どの脱水素拠点に対して、どのようなタイミングで原料を配送すればよいかを把握することが可能となる情報である。これに対し、配送計画作成部は、少なくとも第1の情報に基づいて、複数の脱水素拠点へ原料を配送する配送計画を作成する。従って、配送計画作成部は、それぞれの脱水素拠点の脱水素状況を総合的に判断した上で、適切な配送計画を作成することができる。以上より、原料製造拠点から複数の脱水素拠点へ効率よく原料を配送することが可能となる。
【0008】
情報取得部は、原料製造拠点での原料の製造状況に関する第2の情報を取得し、配送計画作成部は、第1の情報、及び第2の情報に基づいて、配送計画を作成してよい。この場合、配送計画作成部は、原料製造拠点での原料の製造状況も考慮した上で、配送計画を作成することができる。
【0009】
第1の情報は、脱水素拠点で用いられる原料の量に関する原料情報と、脱水素反応に伴って生成される脱水素生成物の量に関する脱水素生成物情報と、を含んでよい。この場合、配送計画作成部は、それぞれの脱水素拠点において生成された脱水素生成物の量も考慮した上で、配送計画を作成することができる。
【0010】
運用管理システムは、少なくとも第1の情報に基づいて、脱水素拠点に対して原料の供給が必要となるタイミングを予測する予測部を更に有し、配送計画作成部は、予測部による予測結果に基づいて、配送計画を作成してよい。この場合、配送計画作成部は、予測部による予測結果に基づくことで、実際に脱水素拠点において原料の供給が必要になるタイミングよりも早い段階で、予め配送計画を作成しておくことができる。
【0011】
予測部は、脱水素拠点における水素の需要量に基づいて、脱水素拠点に対して原料の供給が必要となるタイミングを予測してよい。この場合、予測部は、水素の需要量の推移などに基づいて、長期的な予測を行うことができる。
【0012】
予測部は、脱水素拠点における原料の残量に基づいて、脱水素拠点に対して原料の供給が必要となるタイミングを予測してよい。この場合、予測部は、脱水素拠点における原料の実際の残量に基づいて、実際の状況に即した予測を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原料製造拠点から複数の脱水素拠点へ効率よく原料を配送することができる運用管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る運用管理システムを備える水素サプライチェーンの概略図である。
【
図2】水素ステーションのブロック構成を示すブロック構成図である。
【
図3】MCH製造拠点のブロック構成を示すブロック構成図である。
【
図4】運用管理システムのブロック構成を示すブロック構成図である。
【
図5】運用管理システムの運用管理装置による処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】水素ステーションのMCHタンクの残量推移を示すグラフである。
【
図7】水素ステーションのトルエンタンクの残量推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る運用管理システムの好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る運用管理システム100を備える水素サプライチェーン1の概略図である。水素サプライチェーン1は、水素化物を含む原料を製造する原料製造拠点から、原料を脱水素反応させることによって水素含有ガスを得る複数の脱水素拠点への原料の配送を行うためのサプライチェーンであり、当該配送及び原料の運用は、運用管理システム100によって管理される。水素サプライチェーン1は、複数の水素ステーション10(脱水素拠点)と、MCH製造拠点30(原料製造拠点)と、運用管理システム100と、を備える。また、複数の水素ステーション10、MCH製造拠点30、及び運用管理システム100は、ネットワークNWに接続されている。水素サプライチェーン1においては、タンクローリーなどの移動体TRが原料の配送、及び脱水素生成物の回収を行う。なお、本実施形態では、水素ステーション内に脱水素装置が設置されているため、水素ステーションを脱水素拠点として例示している。しかし、脱水素装置を水素ステーションに隣接設置させる(すなわち、水素ステーションとは別に設置させる)場合もある。
【0017】
水素ステーション10は、有機化合物(常温で液体)を原料とするものである。なお、水素精製の過程では、原料である有機化合物(常温で液体)を脱水素した、脱水素生成物(有機化合物(常温で液体))が除去される。原料の有機化合物として、例えば、有機ハイドライドが挙げられる。有機ハイドライドは、製油所で大量に生産されている水素を芳香族炭化水素と反応させた水素化物が好適な例である。また、有機ハイドライドは、芳香族の水素化化合物に限らず、2-プロパノール(水素とアセトンが生成される)の系もある。有機ハイドライドは、ガソリンなどと同様に液体燃料としてタンクローリーなどの移動体TRによって水素ステーション10へ輸送することができる。本実施形態では有機ハイドライドとして、メチルシクロヘキサン(以下、MCHと称する)を用いる。その他、有機ハイドライドとしてシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、メチルデカリン、ジメチルデカリン、エチルデカリンなど芳香物炭化水素の水素化物を適用することができる(なお、芳香族化合物は特に水素含有量の多い好適な例である)。水素ステーション10は、燃料電池自動車(FCV)や水素エンジン車に水素を供給することができる。なお、メタンを主成分とした天然ガスやプロパンを主成分としたLPG、あるいはガソリン、ナフサ、灯油、軽油といった液体炭化水素原料から水素を製造する場合にも適用可能である。
【0018】
本実施形態では、原料として上述のようにMCHを採用し、水素精製の過程で除去される脱水素生成物がトルエンである場合を例として説明する。なお、実際には、トルエンのみならず、未反応のMCHと少量の副生成物及び不純物も存在するが、本実施形態中では、トルエンに混じって当該トルエンと同じ挙動を示す。従って、以下の説明において、「トルエン」と称して説明するものには、未反応のMCHや副生成物も含むものとする。
【0019】
図2を参照して、水素ステーション10の構成について詳細に説明する。
図2は、水素ステーション10のブロック構成を示すブロック構成図である。
図2に示すように、水素ステーション10は、脱水素装置11と、MCHタンク12と、トルエンタンク13と、圧縮機14と、高圧蓄圧器16と、中間蓄圧器17と、プレクーラ18と、水素充填装置19と、統合制御部20と、水素ステーションクライアント端末21と、を備える。なお、中間蓄圧器17は省略されてもよい。
【0020】
脱水素装置11は、MCHタンク12から供給されたMCHを脱水素反応させることによって水素を得る機器である。脱水素装置11は、脱水素触媒を用いた脱水素反応によってMCHから水素を取り出す機器である。脱水素触媒は、特に制限されないが、例えば、白金触媒、パラジウム触媒及びニッケル触媒から選ばれる。これら触媒は、アルミナ、シリカ及びチタニア等の担体上に担持されていてもよい。有機ハイドライドの反応は可逆反応であり、反応条件(温度、圧力)によって反応の方向が変わる(化学平衡の制約を受ける)。一方、脱水素反応は、常に吸熱反応で分子数が増える反応である。従って、高温、低圧の条件が有利である。脱水素反応は吸熱反応であるため、脱水素装置11は、燃料タンク25に貯留された燃料を燃焼させることで得られる熱によって、加熱される。
【0021】
脱水素装置11は、脱水素反応によって得られた水素含油ガスを気液分離処理、及び精製処理することによって、純度の高い水素ガスを得る。水素ガスから分離されたトルエンは、トルエンタンク13で回収されて貯留される。脱水素装置11で製造された水素ガスは、圧縮機14によって圧送されて、高圧蓄圧器16及び中間蓄圧器17に蓄圧される。なお、中間蓄圧器17に蓄圧された水素ガスは、圧縮機14に戻される。なお、MCHタンク12は、移動体TRからMCHを補給される。また、トルエンタンク13は、移動体TRによりトルエンを回収される。
【0022】
水素充填装置19は、燃料電池自動車(FCV)や水素エンジン車に水素を充填する装置である。水素充填装置19は、高圧蓄圧器16に蓄圧された水素ガスをプレクーラ18で冷却させた後に、車両へ充填を行う。
【0023】
統合制御部20は、水素ステーション10全体の制御を行うと共に、水素ステーション10内の各種状態を示す情報を取得して統合する装置である。また、水素ステーションクライアント端末21は、ネットワークNWに接続されることにより(
図1参照)、外部と通信することによって、情報の送受信を行う端末である。
【0024】
統合制御部20は、液面計22を介してMCHタンク12内のMCHの量を取得する。統合制御部20は、液面計23を介してトルエンタンク13内のトルエンの量を取得する。統合制御部20は、装置運転負荷取得部24を介して脱水素装置11の装置運転負荷(%)を取得する。統合制御部20は、水素製造量取得部26を介して、脱水素装置11と圧縮機14との間のラインの水素量、すなわち脱水素装置11の水素製造量を取得する。統合制御部20は、圧力計27,28を介して高圧蓄圧器16及び中間蓄圧器17の蓄圧量を取得する。統合制御部20は、水素充填量取得部29を介して水素充填装置19の水素充填量を取得する。
【0025】
統合制御部20は、取得した情報から、水素ステーション10での脱水素状況に関する水素ステーション情報(第1の情報)を編集すると共に、当該水素ステーション情報を水素ステーションクライアント端末21を介してネットワークNW(
図1参照)上へ送信する。統合制御部20が編集する水素ステーション情報は、MCHタンク12のMCHの残量データ、及び脱水素装置11でのMCH消費量データを含む。このように、水素ステーション情報は、水素ステーション10で用いられるMCHの量に関するMCH情報(原料情報)を含む。また、水素ステーション情報は、トルエンタンク13のトルエンの残量データ、及び脱水素装置11からのトルエン回収量データを含む。このように、水素ステーション情報は、脱水素反応に伴って生成されるトルエンの量に関するトルエン情報(脱水素生成物情報)と、を少なくとも含んでいる。更に、水素ステーション情報は、水素充填装置19による水素供給量データ、及び水素ステーション10の位置情報も含んでいる。
【0026】
次に、
図3を参照して、MCH製造拠点30の構成について詳細に説明する。
図3は、MCH製造拠点30のブロック構成を示すブロック構成図である。
図3に示すように、MCH製造拠点30は、MCH製造装置31と、副生水素供給部32と、トルエンタンク33と、MCHタンク34と、出荷設備36と、統合制御部40と、MCH製造拠点クライアント端末41と、を備える。
【0027】
MCH製造装置31は、トルエンタンク33から供給されたトルエンと副生水素供給部32から供給された水素とを触媒反応させることによって、MCHを製造する装置である。なお、副生水素供給部32は、工場などで生じた副生水素を供給する。MCH製造装置31は、製造したMCHをMCHタンク34に供給して貯留する。出荷設備36は、MCHタンク34に貯留されたMCHを各移動体TRを介してそれぞれの水素ステーション10へ出荷する。なお、MCH製造装置31は、副生水素のみならず、再生可能エネルギーによる電力を用いて水電解装置で生成した水素を用いて、MCHを製造してもよい。
【0028】
統合制御部40は、MCH製造拠点30全体の制御を行うと共に、MCH製造拠点30内の各種状態を示す情報を取得して統合する装置である。また、MCH製造拠点クライアント端末41は、ネットワークNWに接続されることにより(
図1参照)、外部と通信することによって、情報の送受信を行う端末である。
【0029】
統合制御部40は、液面計42を介してトルエンタンク33内のトルエンの量を取得する。統合制御部40は、液面計43を介してMCHタンク34内のMCHの量を取得する。統合制御部40は、装置運転負荷取得部44を介してMCH製造装置31の装置運転負荷(%)を取得する。統合制御部40は、MCH製造量取得部46を介して、MCH製造装置31とMCHタンク34との間のラインのMCHの量、すなわちMCH製造装置31のMCH製造量を取得する。統合制御部40は、MCH出荷量取得部47を介して出荷設備36によるMCH出荷量を取得する。
【0030】
統合制御部40は、取得した情報から、MCH製造拠点30でのMCHの製造状況に関するMCH製造拠点情報(第2の情報)を編集すると共に、当該MCH製造拠点情報をMCH製造拠点クライアント端末41を介してネットワークNW(
図1参照)上へ送信する。統合制御部40が編集するMCH製造拠点情報は、MCHタンク34のMCHの残量データ、トルエンタンク33のトルエンの残量データ、出荷設備36によるMCH出荷データ、トルエンタンク33からのトルエン供給量データ、各水素ステーション10からのトルエン回収量データ、及びMCH製造拠点30の位置情報を含んでいる。
【0031】
また、統合制御部40は、ネットワークNW及びMCH製造拠点クライアント端末41(
図1参照)を介して、運用管理システム100から、配送計画、及びMCH製造計画を受信する。そして、統合制御部40は、当該MCH製造装置運転計画に基づいてMCH製造装置31を制御し、配送計画に基づいて出荷設備36を制御する。また、統合制御部40は、配送計画、及びMCH製造計画をMCH製造拠点30内でモニタなどに表示することで、作業者への指示も行う。
【0032】
次に、
図4を参照して、運用管理システム100の詳細な構成について説明する。
図4は、運用管理システム100のブロック構成を示すブロック構成図である。
図4に示すように、運用管理システム100は、運用管理装置101と、データサーバ102と、を備える。データサーバ102は、ネットワークNW(
図1参照)を介して、水素サプライチェーン1の各種情報を取得して記憶するサーバである。データサーバ102は、複数の水素ステーション10からの水素ステーション情報を記憶し、MCH製造拠点30からのMCH製造拠点情報を記憶する。また、データサーバ102は、ネットワークNW(
図1参照)を介して、運用管理装置101に情報を送る。
【0033】
運用管理装置101は、MCH製造拠点30から、複数の水素ステーション10へのMCHの配送を管理すると共に、水素サプライチェーン1全体でのMCHの運用を管理する装置である。運用管理装置101は、情報取得部121と、予測部122と、配送計画作成部123と、MCH製造計画作成部124と、補正部126と、を備える。
【0034】
情報取得部121は、複数の水素ステーション10での脱水素状況に関する水素ステーション情報を取得する。また、情報取得部121は、MCH製造拠点30でのMCHの製造状況に関するMCH製造拠点情報を取得する。情報取得部121は、ネットワークNWを介して、データサーバ102から、複数の水素ステーション10の水素ステーション情報、及びMCH製造拠点30のMCH製造拠点情報を取得する。
【0035】
予測部122は、水素ステーション情報、及びMCH製造拠点情報に基づいて、水素ステーション10に対してMCHの供給が必要となるタイミングを予測する。また、予測部122は、水素ステーション情報、及びMCH製造拠点情報に基づいて、水素ステーション10からトルエンを回収するタイミングを予測する。予測部122は、水素ステーション10における水素の需要量に基づいて、水素ステーション10に対してMCHの供給が必要となるタイミング、及びトルエンの回収が必要となるタイミングを予測してよい。また、予測部122は、水素ステーション10におけるMCHの残量に基づいて、水素ステーション10に対してMCHの供給が必要となるタイミングを予測してよい。また、予測部122は、水素ステーション10におけるトルエンの残量(トルエンがタンクに貯まった量)に基づいて、水素ステーション10からのトルエンの回収が必要となるタイミングを予測してよい。予測部122の詳細な予測方法については、後述する。
【0036】
配送計画作成部123は、水素ステーション情報、及びMCH製造拠点情報に基づいて、複数の水素ステーション10へMCHを配送する配送計画を作成する。当該配送計画には、複数の水素ステーション10からトルエンを回収する計画も含まれている。配送計画作成部123は、水素ステーション情報及びMCH製造拠点情報に基づく予測部122での予測結果に基づいて配送計画を作成する。配送計画は、どの水素ステーション10に対してどのようなタイミングでMCHの配送を行うか、どの水素ステーション10からどのようなタイミングでトルエンの回収を行うか、などの情報を含む。配送計画作成部123は、配送に用いられる移動体TRの数、各水素ステーション10までの距離(すなわち、配送に要する時間)などを考慮して配送計画を作成する。配送計画作成部123は、作成した配送計画をMCH製造拠点30へネットワークNWを介して送信する。これにより、MCH製造拠点30では、当該配送計画に基づいて、移動体TRによるMCHの分配が行われる。
【0037】
MCH製造計画作成部124は、MCH製造拠点30におけるMCH製造計画を作成する。MCH製造計画作成部124は、水素ステーション情報、MCH製造拠点情報、及び配送計画に基づいて、MCH製造計画を作成する。MCH製造計画作成部124は、どのようなタイミングで、どの程度の量のMCHが配送されるかを考慮して、MCH製造計画を作成する。MCH製造計画作成部124は、作成したMCH製造計画をMCH製造拠点30へネットワークNWを介して送信する。これにより、MCH製造拠点30では、当該MCH製造計画に基づいて、MCHの製造が行われる。
【0038】
補正部126は、複数の水素ステーション10における実際の運用状況を考慮して、配送計画、及びMCH製造計画を補正する。例えば、補正部126は、ある水素ステーション10でのMCHタンク12のMCHの実際の残量、トルエンタンク13のトルエンの実際の残量が予測と異なっている場合などに、配送計画、及びMCH製造計画を補正する。補正部126は、補正した配送計画、及びMCH製造計画をMCH製造拠点30へネットワークNWを介して送信する。
【0039】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る運用管理システム100による管理方法について説明する。
図5は、運用管理システム100の運用管理装置101による処理内容を示すフローチャートである。まず、運用管理方法の一例として、水素の需要予測から配送計画を作成する方法について説明する。
【0040】
まず、運用管理装置101の情報取得部121は、データサーバ102から、MCH製造拠点30のMCH製造拠点情報、及び複数の水素ステーション10の水素ステーション情報を取得する(ステップS10)。次に、予測部122は、水素ステーション情報、及びMCH製造拠点情報に基づいて、水素ステーション10に対してMCHの供給が必要となるタイミング、及び水素ステーション10からトルエンを回収するタイミングを予測する(ステップS20)。
【0041】
具体的には、予測部122は、所定の時間範囲の水素ステーション10での水素の充填量推移に基づいて、それぞれの水素ステーション10における水素需要量予測を作成する。なお、所定の時間範囲は、予測を作成出来る程度の情報量が含まれる長さであることが好ましい。また、所定の時間範囲は、リアルタイム性を担保できる程度に、長すぎないことが好ましい。所定の時間範囲として、例えば、直近の一週間の範囲が設定されてよい。その他、所定の時間範囲として、数日~数週間の範囲が設定されてよい。なお、予測部122は、水素需要量の予測に用いるデータとして、直近の時間範囲に限らず、季節によって水素の需要量が変動するような場合は、例えば過去の同じ季節における水素需要量も考慮してよい。
【0042】
また、予測部122は、それぞれの水素ステーション10における水素製造量データ、MCH供給量、及びトルエン回収量から、脱水素転化率及び水素回収率を求め、MCH供給量と水素製造量のファクターを算出する。なお、予測部122は、触媒劣化等によってファクターが変化するので、当該変化を考慮してファクターを都度更新する。予測部122は、それぞれの水素ステーション10の水素需要量予測と、上記ファクターとに基づいて、MCH消費量及びトルエン回収量の一週間分の予測データ(他の時間範囲を設定した場合は、当該時間範囲に対応する長さの予測データ)を作成する。MCH消費量及びトルエン回収量の一週間分の予測データは、一週間においてMCHの供給が必要となるタイミング、及びトルエンを回収するタイミングを把握可能な予測データである。
【0043】
予測部122は、ステップS20でそれぞれの水素ステーション10について作成した予測データを統合する(ステップS30)。例えば、一週間のうち、MCHの供給が必要になる水素ステーション10が多い日もあれば、少ない日もある。従って、予測部122は、予測データを統合することで、水素サプライチェーン1内の複数の水素ステーション10の状況を総合的に考慮して、一週間においてMCHの供給が必要となるタイミング、及びトルエンを回収するタイミングを把握可能な予測データを作成することができる。
【0044】
配送計画作成部123は、ステップS30で統合された予測データに基づいて、複数の水素ステーション10へMCHを配送する配送計画を作成する(ステップS40)。配送計画作成部123は、それぞれの水素ステーション10においてMCHの供給が必要となるタイミングと、水素ステーション10の位置情報とを総合的に考慮して、効率的な配送計画を作成する。例えば、遠距離の水素ステーション10については、すぐにMCHを配送することができないため、MCHが不足するタイミングに対して、前倒しで移動体TRを出発させる。また、遠距離の水素ステーション10は、頻繁に移動体TRを向かわせると輸送コストがかかるため、なるべく頻度が少なくなるように計画する。その一方、近距離の水素ステーション10は、不足してもすぐにMCHを配送できるため、例えば、遠距離の水素ステーション10へ向かう途中などで、MCHを供給してもよい。また、移動体TRは、MCHを水素ステーション10に供給してタンクが空になったら、その空になったタンクにトルエンを収容して、MCH製造拠点30へトルエンを輸送する。従って、配送計画作成部123は、移動体TRが所定の水素ステーション10へMCHを配送したら、当該水素ステーション10のトルエンをそのまま回収したり、帰り道などに他の水素ステーション10へ立ち寄って、ついでにトルエンの回収を行うなど、効率良くトルエンの回収を行えるような配送計画が作成される。このように、配送計画作成部123は、トルエンの回収も考慮した効率的な配送計画を作成する。
【0045】
MCH製造計画作成部124は、MCH製造拠点30におけるMCH製造計画を作成する(ステップS50)。MCH製造計画作成部124は、ステップS30で統合された予測データ、及びステップS40で作成された配送計画に基づいて、MCH製造計画を作成する。次に、運用管理装置101は、作成した配送計画及びMCH製造計画をMCH製造拠点30へ送信し、これらの計画に基づいた運用を実行する(ステップS60)。
【0046】
なお、運用実行後は、運用管理装置101は、水素サプライチェーン1内のそれぞれの水素ステーション10を監視し、必要に応じて補正部126によって配送計画及びMCH製造計画を補正する。例えば、水素ステーション10のMCHタンク12及びトルエンタンク13の残量に対して閾値を設定し、当該閾値に達したときにアラームを発するようにしてよい。例えば、水素ステーション10は、MCHタンク12のMCHの残量が補給閾値(例えば30%)にまで減ったら、MCHの補給が必要であるとし、アラーム閾値(例えば50%)にまで減ったタイミングでアラームを発生するようにする。水素ステーション10は、トルエンタンク13のトルエンの残量が回収閾値(例えば70%)にまで増加したら、トルエンの回収が必要であるとし、アラーム閾値(例えば50%)にまで増加したタイミングでアラームを発生するようにする。運用管理装置101は、それぞれの水素ステーション10からのアラームを受信し、予測よりもMCHの減少度合いやトルエンの増加度合いが早い場合、補正部126によって配送計画及びMCH製造計画を補正する。
【0047】
次に、運用管理方法の他の例として、それぞれのMCHタンク12及びトルエンタンク13の残量に基づいて、配送計画を作成する方法について説明する。なお、前述の水素の需要予測から配送計画を作成する方法と同趣旨の内容については、説明を省略する。
【0048】
まず、ステップS10において、運用管理装置101の情報取得部121は、データサーバ102を介して水素サプライチェーン1内のそれぞれの水素ステーション10のMCHタンク12及びトルエンタンク13の残量データを、常時取得する。なお、ここでの「残量データを常時取得」とは、MCHの運用という観点でみた時において、実質的にリアルタイムで残量データを把握できている状態を意味する。従って、運用管理装置101が、残量データを数秒、数分に一回の間隔などの時間間隔で取得するような状態のみならず、残量データを一日に一回、または数時間に一回の間隔など、実質的に影響のない範囲でタイムラグを許容した時間間隔で取得しているような状態も「常時取得」に該当するものとする。勿論、運用管理装置101は、ネットワークNWの通信速度などが許容する範囲で、最も高頻度で残量データを所得してもよい。
【0049】
ステップS20において、予測部122は、ステップS10で収集した残量データに基づいて、各水素ステーション10のMCHタンク12及びトルエンタンク13の残量の推移予測を作成する(例えば、
図6の実測線RL1及び
図7の実測線RL2を参照)。ここで、予測部122は、MCHタンク12及びトルエンタンク13の残量に対して閾値を設定しておく。例えば、予測部122は、MCHタンク12の残量が閾値(例えば10%)以下になる前に、MCHを受け入れる必要があるものとする。予測部122は、トルエンタンク13の残量が閾値(例えば90%)以上となる前に、トルエンを回収する必要があるものとする。そして、予測部122は、MCHタンク12の残量が閾値(10%)に到達するまで減少する日程と、トルエンタンク13の残量が閾値(90%)に到達するまで増加する日程と、を水素サプライチェーン1内の全ての水素ステーション10について予測する。
【0050】
ステップS30において、予測部122は、全ての水素ステーション10の予測データを統合する。ステップS30において、配送計画作成部123は、上述の統合された予測データに基づいて、水素ステーション10の位置情報を考慮して効率よく配送できるように、配送計画を作成する。また、ステップS40において、MCH製造計画作成部124は、統合された予測データに基づいて、MCH製造計画を作成する。なお、配送計画作成部123及びMCH製造計画作成部124は、AIを利用して配送計画及びMCH製造計画を作成してよい。
【0051】
図6は、ある水素ステーション10のMCHタンク12の残量推移を示すグラフである。
図7は、ある水素ステーション10のトルエンタンク13の残量推移を示すグラフである。ここでは、MCHタンク12及びトルエンタンク13がいずれも50m
3であり、移動体TRがローリー容量30tのタンクローリーであるものとする。また、水素ステーション10の一日のMCH使用量が約18m
3であり、一日のトルエン生成量が約16m
3であり、100%負荷で運転しているものとする。
【0052】
図6に示すように、予測部122は、一日目のMCHタンク12の残量データを取得する。すると予測部122は、実測線RL1の「0日」から「1日」へ至るような推移で残量が推移していることを把握する。予測部122は、当該実測線RL1の残量推移に基づいて、予測線EL1を設定する。これにより、予測部122は「1日」以降の残量推移を予測する。予測部122は、予測線EL1がタンク下限ラインDL(10%)に達する日程を「受入日」として認定する。ここでは、「2日」と「3日」との間に「受入日」が設定されている。従って、配送計画作成部123は、「2日」と「3日」の間の何れかの時点でMCHタンク12にMCHが補給されるように、配送計画を作成する。これにより、「3日」では、MCHタンク12の残量が「100%」となっている。以降は、運用管理装置101は同様の処理を繰り返す。これにより、実測線RL1に示すように、MCHタンク12の残量は、タンク下限ラインDLに到達する前段階に100%に回復するような推移が繰り返される。
【0053】
図7に示すように、予測部122は、一日目のトルエンタンク13の残量データを取得する。すると予測部122は、実測線RL2の「0日」から「1日」へ至るような推移で残量が推移していることを把握する。予測部122は、当該実測線RL2の残量推移に基づいて、予測線EL2を設定する。これにより、予測部122は「1日」以降の残量推移を予測する。予測部122は、予測線EL2がタンク上限ラインUL(90%)に達する日程を「回収日」として認定する。ここでは、「2日」と「3日」との間に「回収日」が設定されている。従って、配送計画作成部123は、「2日」と「3日」の間の何れかの時点でトルエンタンク13からトルエンが回収されるように、配送計画を作成する。これにより、「3日」では、トルエンタンク13の残量が「0%」となっている。以降は、運用管理装置101は同様の処理を繰り返す。これにより、実測線RL2に示すように、トルエンタンク13の残量は、タンク上限ラインULに到達する前段階に0%に回復するような推移が繰り返される。
【0054】
次に、本実施形態に係る運用管理システム100の作用・効果について説明する。
【0055】
運用管理システム100において、情報取得部121は、複数の水素ステーション10での脱水素状況に関する水素ステーション情報を取得する。この水素ステーション情報は、それぞれの水素ステーション10において、どのような脱水素状況であるかを把握可能な情報であるため、どの水素ステーション10に対して、どのようなタイミングでMCHを配送すればよいかを把握することが可能となる情報である。これに対し、配送計画作成部123は、少なくとも水素ステーション情報に基づいて、複数の水素ステーション10へMCHを配送する配送計画を作成する。従って、配送計画作成部123は、それぞれの水素ステーション10の脱水素状況を総合的に判断した上で、適切な配送計画を作成することができる。以上より、MCH製造拠点30から複数の水素ステーション10へ効率よくMCHを配送することが可能となる。
【0056】
情報取得部121は、MCH製造拠点30でのMCHの製造状況に関するMCH製造拠点情報を取得し、配送計画作成部123は、水素ステーション情報、及びMCH製造拠点情報に基づいて、配送計画を作成してよい。この場合、配送計画作成部123は、MCH製造拠点30でのMCHの製造状況も考慮した上で、配送計画を作成することができる。例えば、多数の移動体TRが同時に出荷を行うとMCH製造拠点30での製造が間に合わなくなる場合など、配送計画作成部123は、移動体TRが時間差で出荷するなどの配送計画を作成できる。
【0057】
水素ステーション情報は、水素ステーション10で用いられるMCHの量に関する原料情報と、脱水素反応に伴って生成されるトルエンの量に関する脱水素生成物情報と、を含んでよい。この場合、配送計画作成部123は、それぞれの水素ステーション10において生成されたトルエンの量も考慮した上で、配送計画を作成することができる。
【0058】
運用管理システム100は、少なくとも水素ステーション情報に基づいて、水素ステーション10に対してMCHの供給が必要となるタイミングを予測する予測部122を更に有する。配送計画作成部123は、予測部122による予測結果に基づいて、配送計画を作成してよい。この場合、配送計画作成部123は、予測部122による予測結果に基づくことで、実際に水素ステーション10においてMCHの供給が必要になるタイミングよりも早い段階で、予め配送計画を作成しておくことができる。例えば、
図6に示す例において、実測線RL1がタンク下限ラインDLに近づいたタイミングで、移動体TRが出荷を開始したとする。この場合、遠隔地の水素ステーション10などでは、到着までのタイムラグによって、MCHタンク12へのMCHの補給が遅くなりすぎ、実測線RL1がタンク下限ラインDLを下回ってしまう可能性がある。これに対し、予測部122が予測線EL1を用いて予測を行うことで、実測線RL1がタンク下限ラインDLを下回る前段階で、MCHの補給が可能となる。
【0059】
予測部122は、水素ステーション10における水素の需要量に基づいて、水素ステーション10に対してMCHの供給が必要となるタイミングを予測してよい。この場合、予測部122は、水素の需要量の推移などに基づいて、長期的(例えば一週間)な予測を行うことができる。
【0060】
予測部122は、水素ステーション10におけるMCHの残量に基づいて、水素ステーション10に対してMCHの供給が必要となるタイミングを予測してよい。この場合、予測部122は、水素ステーションにおけるMCHの実際の残量に基づいて、実際の状況に即した予測を行うことができる。
【0061】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0062】
例えば、上述の実施形態では、運用管理システム100は予測部122を備えていたが、予測部122を省略してもよい。この場合、配送計画作成部123は、実測データのみに基づいて、配送計画を作成してよい。例えば、それぞれの水素ステーション10のMCHタンク12及びトルエンタンク13に対してアラーム閾値を設定しておき、配送計画作成部123は、アラームが鳴った水素ステーション10を把握し、当該水素ステーション10の位置情報を考慮して、配送計画を作成してよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、運用管理システム100は、MCH残量データとトルエン残量データの両方を考慮して配送計画を作成していたが、MCH残量データだけを考慮してもよい。例えば、運用管理システム100は、MCHの配送については効率の良い配送計画を作成し、トルエンの回収については、一定のルールに従った回収を行うことにしてもよい。
【0064】
また、運用管理システム100の配送計画作成部123は、水素ステーション情報に加え、MCH製造拠点情報も考慮して、配送計画を作成したが、MCH製造拠点情報を考慮しなくてもよい。例えば、ある地域にする配送に使用できる移動体TRの数に比べて、MCH製造拠点30の製造量が大規模であり、MCH製造拠点のMCHの残量を実質的に考慮しなくてよいような場合、配送計画作成部123は、MCH製造拠点情報を考慮しなくともよい。
【符号の説明】
【0065】
10…水素ステーション(脱水素拠点)、30…MCH製造拠点(原料製造拠点)、100…運用管理システム、121…情報取得部、122…予測部、123…配送計画作成部。