(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】バイオフィルムの除去方法
(51)【国際特許分類】
A01N 59/00 20060101AFI20241203BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20241203BHJP
A01N 37/36 20060101ALI20241203BHJP
A01N 43/08 20060101ALI20241203BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241203BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20241203BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A01N37/06
A01N37/36
A01N43/08 H
A01P3/00
C02F1/50 510C
C02F1/50 531Q
C02F1/50 532C
C02F1/50 540B
(21)【出願番号】P 2020079175
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019089995
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】細川 賢人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雅史
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲司
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝典
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/028757(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1140217(KR,B1)
【文献】特開昭56-078695(JP,A)
【文献】特公昭48-010204(JP,B1)
【文献】特開2004-231671(JP,A)
【文献】特開昭50-012848(JP,A)
【文献】特公昭54-028447(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P,C02F,C11D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系システムで形成された金属を含むバイオフィルムに、(a)ヒドロキシルラジカル生成能を有する化合物(以下、(a)成分ともいう)と(b)還元剤(以下、(b)成分ともいう)と(c)第一解離定数が1.2以上4.6以下の、1価又は2価の有機酸又はその塩(以下、(c)成分ともいう)
及び水を含有する液体組成物を接触させる、バイオフィルムの除去方法であって、
(b)成分が、アスコルビン酸又はその塩であり、
(c)成分が、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上の有機酸又はその塩である、
バイオフィルムの除去方法。
【請求項2】
前記液体組成物中、(a)成分の濃度が50ppm以上5000ppm以下、(b)成分の濃度が50ppm以上50000ppm以下
、(c)成分の濃度が50ppm以上5000ppm以下である、請求項
1記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項3】
前記液体組成物中、(a)成分の濃度が50ppm以上5000ppm以下、(b)成分の濃度が50ppm以上5000ppm以下
、(c)成分の濃度が50ppm以上5000ppm以下である、請求項
1又は
2記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項4】
前記液体組成物の接触をpH2.0以上10.0以下で行う、請求項1~
3の何れか1項記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項5】
(a)成分が、過酸化水素、過炭酸塩、及び有機過酸から選ばれる1種以上である、請求項1~
4の何れか1項記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項6】
前記液体組成物中の(a)成分
の濃度と(b)成分
の濃度の質量比である(a)/(b)
が0.01以上100以下
である、請求項1~
5の何れか1項記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項7】
前記液体組成物中の(a)成分
の濃度と(c)成分
の濃度の質量比である(a)/(c)
が0.01以上100以下
である、請求項1~
6の何れか1項記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項8】
前記バイオフィルムが、鉄、マンガン、ニッケル及び銅から選ばれる1種以上の金属を含む、請求項1~
7の何れか1項記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項9】
水系システムが、水冷式水冷塔を備えた冷却システムである、請求項1~
8の何れか1項記載のバイオフィルムの除去方法。
【請求項10】
水系システムが、水の流通経路及び/又は水の貯蔵槽を含む、請求項1~
9の何れか1項記載のバイオフィルムの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系システムに発生したバイオフィルム除去するバイオフィルムの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオフィルムは生物膜又はスライムともいわれ、一般に菌等の微生物が物質の表面に付着して増殖する際に、微生物が産生する多糖、タンパク質及び核酸などの高分子物質により微生物を包み込むように形成された構造体を指す。バイオフィルムが形成されると、微生物による種々の問題が発生するため、様々な産業分野で問題となっている。例えば、食品プラントの配管内にバイオフィルムが形成されると、このバイオフィルムが剥がれ落ちて製品内へ異物として混入されたり、菌に由来する毒素により食中毒が発生する原因となったりする。更に、金属表面へのバイオフィルム形成は金属腐食の原因となり、設備の老朽化を促進する。
【0003】
水冷式冷却塔を用いた工場設備やビルの冷却システムや、冷却プールなど、水媒体を利用したシステムが従来使用されている。このようなシステムにおいて、使用する水の微生物汚染は問題である。例えば、水冷式冷却塔を用いた冷却システムにおいて、冷却水に混入した微生物は、配管中、特に熱交換器においてバイオフィルムを形成する。熱交換器に形成されたバイオフィルムは、熱交換の効率を低下させ、冷却システムの電力使用量を増加させる。バイオフィルム形成防止のためには、定期的な水の入れ替えや清掃が必要であるが、これらはシステムのメンテナンスコストを上昇させる。水冷式冷却塔などの冷却水を用いる設備や装置などでは、冷却水にスライムコントロール剤と呼ばれる微生物殺菌剤や増殖抑制剤を添加して、バイオフィルムを抑制することも行われることがあるが、安全性、金属配管の腐食、薬剤コストなどの観点からは、スライムコントロール剤を用いない処理の方が望ましい。
【0004】
微生物により被る汚染などへの対策として、従来、種々の提案がされている。
特許文献1には、ビタミン、金属イオン、表面活性化合物、及び所定の抗微生物性作用物質を含む消毒-及び汚染除去剤を、バイオフィルムの分解のために使用できることが開示されている。
特許文献2には、冷却塔で冷却された冷却水が熱交換器に循環通水され、該冷却塔に補給水が供給される冷却水系におけるバイオフィルムを防止する方法において、補給水中のリン酸を除去し、かつ防食剤として非リン系防食剤を用いる、冷却水系における水処理方法が開示されている。
特許文献3には、内部オレフィンスルホン酸塩を1質量%以上、40質量%以下含有する硬質表面用バイオフィルム除去剤組成物が開示されている。
特許文献4には、特定の環状アルデヒド化合物と有機溶媒とを含有するバイオフィルム形成抑制用組成物が開示されている。
特許文献5には、バイオフィルムにより影響される表面を、界面活性剤水酸化物の容量モル濃度が2~9の所定の水性アルカリ界面活性剤組成物と接触させる工程を含む、処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2012-512199号公報
【文献】特開2016-102227号公報
【文献】特開2016-035009号公報
【文献】特開2018-168097号公報
【文献】特表2017-518432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水冷塔、浴槽配管などの水と接触する部材を含んだ装置、設備などの水系システムで形成されたバイオフィルムを効果的に除去できる、バイオフィルムの除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水系システムで形成された金属を含むバイオフィルムに、(a)ヒドロキシルラジカル生成能を有する化合物(以下、(a)成分ともいう)と(b)還元剤(以下、(b)成分ともいう)とを接触させる、バイオフィルムの除去方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水系システムで形成されたバイオフィルムを効果的に除去できる、バイオフィルムの除去方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のバイオフィルムの除去方法による効果発現機作は、必ずしも全てが解明されたわけではないが、以下のように考えられる。本発明者らは、水系システム中のバイオフィルムがヒドロキシルラジカルによって分解あるいは水中に分散することによって設備からのバイオフィルム除去に寄与できることを見出した。ヒドロキシルラジカルと設備に形成しているバイオフィルムの作用効率において、バイオフィルム表面にヒドロキシルラジカルが存在しても効率が悪く、設備に形成しているバイオフィルム内部に広くヒドロキシルラジカルを発生させることができれば高いバイオフィルム除去効率が期待できる。本発明の(a)成分、(b)成分、更には(c)成分は、いずれも低分子であるため設備に形成しているバイオフィルム内部に広く移動しやすい。水系システムで発生するバイオフィルムには、例えば、設備素材や水系システムに供給される水に起因する金属イオンが塩や酸化物等として水に不溶化して蓄積されることが分かった。この蓄積された金属イオンに還元剤((b)成分)が接近して反応することで還元された金属イオンとなる(例えば、Fe3+→Fe2+)。そして、この還元された金属イオンと近傍に存在すると考えられるヒドロキシルラジカル生成能を有する化合物((a)成分)がフェントン様反応することによりヒドロキシルラジカルを生成し、バイオフィルムを分解あるいは水中に分散できる程度の大きさにちぎれていくものと考えられる。フェントン様反応によって酸化された金属イオンは更に(b)成分により還元されるため、(a)成分との間でのフェントン様反応が連続的に起こるため持続的にバイオフィルム除去効果が発現するものと考えられる。また、(c)成分を用いる場合、特定の構造の有機酸((c)成分)が金属イオンと錯形成することによりバイオフィルム中に存在する不溶化した金属がより水溶化しやすくなり、その結果、バイオフィルム内に金属イオンがより均一に存在できるようになり、金属イオンと(b)成分による還元が促進されるため、(a)成分からのヒドロキシルラジカルの生成も促進されるため、より高いバイオフィルム除去効果が発現するものと考えられる。
以上のように本発明のバイオフィルム除去方法では、バイオフィルム中に蓄積された微量な金属イオンを利用するがためにバイオフィルムの広範囲な場所で連続的に起こるヒドロキシルラジカルの生成により効率的なバイオフィルム除去効果が得られるものと考えられる。なお、後述の比較例で示したように、金属イオンを(a)成分と(b)成分と共に用いて金属イオンを含まないバイオフィルムに接触させてもバイオフィルムを除去することができない。このことから、バイオフィルム中に金属イオンが存在した状態で(a)成分と(b)成分とが共存して作用することが、本発明の効果を得るために必要であると推察される。
尚、本発明の効果は上記作用機作に制限されるものではない。
【0010】
〔(a)成分〕
(a)成分は、ヒドロキシルラジカル生成能を有する化合物である。
(a)成分としては、フェントン様反応によりヒドロキシルラジカルを生成する化合物が挙げられる。
(a)成分としては、過酸化水素、過炭酸塩、及び有機過酸から選ばれる1種以上の化合物が挙げられ、入手容易性、経済性及びヒドロキシルラジカル生成能の観点から、過酸化水素及び過炭酸塩から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。過炭酸塩としては、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなどの過炭酸アルカリ金属塩が挙げられ、入手容易性、経済性及びヒドロキシルラジカル生成能の観点から、過炭酸ナトリウムが好ましい。
【0011】
本発明において、「フェントン様反応」とは、フェントン反応と、鉄イオン以外の金属種と過酸化水素との反応によるヒドロキシルラジカルの生成反応(便宜的に擬フェントン反応という)とを指すことができる。すなわち、本発明において、「フェントン様反応」とは、鉄イオンによるフェントン反応と、鉄イオン以外の金属種によるフェントン反応に準じたヒドロキシルラジカルの生成反応を含めた概念であってよい。擬フェントン反応は、鉄イオン以外の金属イオンを触媒としてヒドロキシルラジカルを生成する化合物からヒドロキシルラジカルが発生する化学反応であってよい。
フェントン反応は、二価鉄を触媒として過酸化水素からヒドロキシルラジカルが発生する化学反応とされる。
一方、擬フェントン反応は、金属種として、二価鉄と同様の反応が起こすことが知られている金属種、又は、本発明によって見出した周期表の第4周期の遷移元素(スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅)から選ばれる金属種を、ヒドロキシルラジカルを生成する化合物として、前記金属種に対して過酸化水素と同様の反応を起こすことが知られている化合物、又は、本発明によって見出した過酸化水素、過炭酸塩、及び有機過酸から選ばれる化合物を、用いた反応である。
【0012】
〔(b)成分〕
(b)成分は、還元剤である。
(b)成分は、金属、例えば鉄の還元作用を有する化合物であってよい。尚、本発明の(b)成分が還元作用を及ぼす金属は、還元されうる状態の金属を示す。
(b)成分としては、
(b-1)エンジオール構造を有する化合物:例えばアスコルビン酸又はその塩、天然物から抽出したビタミンC、タンニン酸、エリソルビン酸又はその塩、
(b-2)ヒドロキシルアミン:例えばN,N-ジエチルヒドロキシルアミン、
(b-3)フェノール系還元剤:例えば没食子酸、メチルヒドロキノン、ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、クロロヒドロキノン、
(b-4)その他の還元剤:アスコルビン酸誘導体又はその塩、ハイドロサルファイト、ピロ亜硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、
から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。これらの化合物の塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩が挙げられる。
(b)成分としては、入手容易性及びバイオフィルムの除去効果を高める(以下、バイオフィルム除去性ともいう)観点から、アスコルビン酸又はその塩、天然物から抽出したビタミンCが好ましく、アスコルビン酸又はその塩がより好ましい。
【0013】
〔(c)成分〕
本発明では、バイオフィルム除去効果がより高くなる観点から、(a)成分及び(b)成分と共に(c)第一解離定数(以下、pKa1という)が1.2以上4.6以下の、1価又は2価の有機酸又はその塩((c)成分)をバイオフィルムに接触させることが好ましい。かかる有機酸又はその塩のうち、還元作用を有する化合物は、(b)成分として取り扱う。
【0014】
(c)成分のpKa1は、バイオフィルム除去性の観点から、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.5以上、そして、好ましくは3.9以下、より好ましくは3.3以下である。
【0015】
(c)成分の有機酸の分子量は、バイオフィルム除去性の観点から、例えば、70以上更に75以上、更に95以上、そして、200以下、更に180以下、更に165以下、更に160以下であってよい。(c)成分の有機酸は、炭素数は、バイオフィルム除去性の観点から、好ましくは2以上、そして、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。(c)成分の有機酸は、バイオフィルム除去性の観点から、カルボン酸が好ましく、モノカルボン酸又はジカルボン酸がより好ましい。
【0016】
(c)成分としては、分子量70以上200以下、更に180以下の炭素数2又は3のヒドロキシモノカルボン酸、分子量70以上200以下、更に180以下の炭素数3又は4のジカルボン酸、分子量70以上200以下の炭素数5以上8以下のヒドロキシカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上の有機酸又はその塩が挙げられる。
【0017】
分子量70以上200以下の炭素数2又は3のヒドロキシモノカルボン酸としては、グリコール酸(pKa1:3.83、Mw:76.1)、乳酸(pKa1:3.86、Mw:90.1)、3-ヒドロキシプロピオン酸(pKa1:4.5、Mw:90.1)が挙げられる。
【0018】
分子量70以上200以下の炭素数3又は4のジカルボン酸としては、酒石酸(pKa1:2.98、Mw:150.1)、フマル酸(pKa1:3.02、Mw:116.1)、マレイン酸(pKa1:1.92、Mw:116.1)、リンゴ酸(pKa1:3.4、Mw:134.1)、コハク酸(pKa1:4.19、Mw:118.1)、マロン酸(pKa1:2.9、Mw:104.1)が挙げられる。
【0019】
分子量70以上200以下の炭素数5以上8以下ヒドロキシカルボン酸としては、グルコン酸(pKa1:3.86、Mw:196)が挙げられる。
【0020】
(c)成分は、バイオフィルム除去性の観点から、マロン酸、リンゴ酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上の有機酸又はその塩が好ましい。
(c)成分は、バイオフィルム除去性の観点から、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上の有機酸又はその塩がより好ましい。
【0021】
(c)成分の有機酸の塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0022】
〔バイオフィルムの除去方法〕
本発明のバイオフィルムの除去方法では、(a)成分と(b)成分と、必要により更に(c)成分とを、水系システムで形成された金属を含むバイオフィルムに接触させる。本発明では、(a)成分、(b)成分及び水を含有する液体組成物を前記バイオフィルムに接触させることが好ましい。前記液体組成物は、更に(c)成分を含有することが好ましい。
【0023】
前記液体組成物中、(a)成分の濃度は、バイオフィルム除去性の観点から、上限値と下限値とを、例えば、50ppm以上、更に60ppm以上、更に80ppm以上、そして、50000ppm以下、更に30000ppm以下、更に10000ppm以下、更に5000ppm以下、更に3000ppm以下、更に1000ppm以下、更に600ppm以下、更に500ppm以下から選択して組み合わせて設定することができる。
前記液体組成物中、(b)成分の濃度は、バイオフィルム除去性の観点から、上限値と下限値とを、例えば、50ppm以上、更に60ppm以上、更に80ppm以上、そして、5000ppm以下、更に3000ppm以下、更に1000ppm以下、更に600ppm以下、更に500ppm以下から選択して組み合わせて設定することができる。
(c)成分を用いる場合、前記液体組成物中、(c)成分の濃度は、バイオフィルム除去性の観点から、上限値と下限値とを、例えば、50ppm以上、更に60ppm以上、更に80ppm以上、そして、5000ppm以下、更に3000ppm以下、更に1000ppm以下、更に600ppm以下、更に500ppm以下から選択して組み合わせて設定することができる。
【0024】
本発明では、バイオフィルム除去性の観点から、(a)成分と(b)成分とを、(a)成分/(b)成分で0.01以上、更に0.1以上、そして、100以下、更に10以下、更に9.5以下、更に4.5以下、更に1.5以下、更に0.5以下の質量比で接触させることが好ましい。
前記液体組成物を用いる場合、バイオフィルム除去性の観点から、該組成物中の(a)成分の濃度と(b)成分の濃度の質量比である(a)/(b)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9.5以下、より更に好ましくは4.5以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは0.5以下である。
【0025】
本発明では、(a)成分と(c)成分とを、バイオフィルム除去性の観点から、(a)成分/(c)成分で0.01以上、更に0.1以上、そして、100以下、更に10以下の質量比で接触させることが好ましい。
前記液体組成物を用いる場合、該組成物中の(a)成分の濃度と(c)成分の濃度の質量比である(a)/(c)が、バイオフィルム除去性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは10以下である。
【0026】
本発明では、(b)成分と(c)成分とを、バイオフィルム除去性の観点から、(b)成分/(c)成分で0.01以上、更に0.1以上、そして、100以下、更に10以下の質量比で接触させることが好ましい。
前記液体組成物を用いる場合、該組成物中の(b)成分の濃度と(c)成分の濃度の質量比である(b)/(c)が、バイオフィルム除去性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは10以下である。
【0027】
本発明では、バイオフィルムに接触させる界面活性剤が少量でも優れたバイオフィルム除去効果を示す。起泡によるキャビテーション等の不具合を起こさない設備管理、経済性、バイオフィルム除去性を満足させる観点から、前記液体組成物は、界面活性剤の濃度が、例えば、100ppm未満、更に50ppm以下、更に10ppm以下、更に0ppmであってよい。前記液体組成物は、界面活性剤を実質的に含有しないものであってよい。ここで、界面活性剤を実質的に含有しないとは、界面活性剤の濃度が前記範囲であることを意味してよい。
【0028】
前記液体組成物は、フェントン様反応に関与する金属イオン、具体的には、鉄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅から選ばれる金属のイオン、更には金属イオンを含有しないもの又は実質的に含有しないものであってよい。ここで、前記金属イオンを実質的に含有しないとは、前記金属イオンを含有していたとしてもその量が極めて微量であり、フェントン様反応が十分に生じない状態の意味であってよい。
【0029】
本発明では、(a)成分及び(b)成分の接触を、例えば、機材損傷防止の観点で、pH2.0以上、更に2.5以上、更に3.0以上、更に3.5以上、そして、バイオフィルム除去効果の観点で、10.0以下、更に8.0以下、更に7.5以下、更に6.5以下で行うことができる。すなわち、本発明は、(a)成分及び(b)成分を、pH2.0以上、更に2.5以上、更に3.0以上、そして、10.0以下、更に8.0以下、更に7.5以下、更に6.5以下の条件でバイオフィルムと接触させる方法であってよい。
前記液体組成物を用いる場合、同様の観点で、該組成物のpHが2.0以上、更に2.5以上、更に3.0以上、更に3.5以上、そして、10.0以下、更に8.0以下、更に7.5以下、更に6.5以下であってよい。
【0030】
本発明により除去する、水系システムで形成されたバイオフィルムは、形成されたバイオフィルム内に金属を含む。バイオフィルムが含む金属としては、(a)成分及び(b)成分と反応してヒドロキシルラジカルを生成させるものが好ましい。そのような金属としては、特に限定するものではないが、周期表の第4周期の遷移元素、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅から選ばれる1種以上の金属が挙げられ、効率よくヒドロキシルラジカルを生成する観点から、鉄、マンガン、ニッケル及び銅から選ばれる1種以上の金属が好ましい。水系システムに流通、循環及び滞留する水は、水道水や井戸水等が使用されその水の中に緑膿菌などの微生物が含まれるが同時に天然界、或いは水系システムを構成する金属でできた配管や槽などの設備材質から微量に溶けだした金属イオンが存在する。この微生物が金属を溶解した水と微生物が産生する糖やタンパク等の化合物とともにバイオフィルムを形成するため、更に形成されたバイオフィルムにシステム中の水から新たに金属を取り込むためバイオフィルム中に金属が含まれるものと考えられる。金属は、水中ではイオンとして存在すると考えられるが、バイオフィルム中では微生物が排出する化合物との塩や酸化物となってバイオフィルム中に蓄積されるものと考えられる。
【0031】
配管設置における材料選定等での入手容易性の観点から、水系システムの構成材料には鉄などの金属を含むものが多く、水系システムで形成されるバイオフィルムには、構成材料からの金属が取り込まれる場合もある。そのため、本発明の対象となるバイオフィルムは鉄を含有するものであってよい。
【0032】
本発明の対象となるバイオフィルムは、バイオフィルム除去性の観点から、湿潤状態のバイオフィルム1mgあたり、金属を、好ましくは0.5ng以上、より好ましくは1.5ng以上、更に好ましくは5ng以上、そして、上限としてはバイオフィルム中に蓄積できる量であれば特に制限されるものではないが、必要以上に急激なフェントン様反応を起こさず効率的に反応を進行させる観点から、好ましくは50000ng以下、より好ましくは20000ng以下、更に好ましくは10000ng以下含有する。バイオフィルム中の金属の量は、後述する実施例の方法で測定できる。
【0033】
本発明の対象となる水系システムは、水系液体との接触が起こるシステムであれば特に限定されるものではないが、例えば水系液体の流通や貯留によって機能するシステムをいい、配管、タンク、プールなどの水が接触する部材を含んで構成される装置及びそれを含む設備などであってよい。水は、水そのものの他、水と他の物質とを含む水性媒体であってよい。一例として、水系システムは、水冷式水冷塔を備えた冷却システムである。また、他の例として、水系システムは、配水管のような水の流通経路、例えば、ボイラーの温水配管部、及び貯湯槽より温水が供給される循環給湯管の温水配管部から選ばれる温水配管部を含んでよい。また、水系システムは、水の貯蔵槽を含んでよい。更に、水系システムの他の例としては、工業用の冷却プール、工業用の給水、貯水もしくは排水経路、排水処理設備、流湯式暖房システム、タンク、プール、浴場、ろ過設備、製紙工場の製紙設備、水族館の水槽及び水循環経路、超純水装置、養殖設備、植物工場などが挙げられる。
【0034】
本発明は、水系システムで形成された、金属を含むバイオフィルムを除去するものである。とりわけ、本発明は、水系システムの水が接触する部位で形成された、金属を含むバイオフィルムを除去するものである。
本発明の対象となる水系システムは、水との接触が生じる機構、例えば水を定期的に流通させる機構や水を循環させる機構を備えたものが好ましい。その場合、接触させる水に本発明の(a)成分、(b)成分、必要により(c)成分を添加して当該水系システムを作動させて水を接触させることで、(a)成分、(b)成分、必要により(c)成分がバイオフィルムに接触し、当該水系システムに発生したバイオフィルムを除去することができる。
【0035】
(a)成分及び(b)成分をバイオフィルムに接触させる時間は、設備管理の作業性、簡便性の観点から、例えば、3分以上、更に5分以上、更に10分以上、更に30分以上、そして、48時間以下、更に30時間以下である。前記液体組成物を用いる場合、該液体組成物とバイオフィルムとの接触時間がこの範囲であってよい。
【0036】
また、(a)成分及び(b)成分をバイオフィルムに接触させる温度は、例えば、5℃以上、更に10℃以上、そして、85℃以下、更に60℃以下である。前記液体組成物を用いる場合、該液体組成物の温度がこの範囲であってよい。
【0037】
本発明の(a)成分、(b)成分、必要により(c)成分を水系システムに適用するに際しては、予めこれらの成分を接触に適した濃度で含む組成物として製造したものを使用してもよいし、これらの成分を高濃度で含む組成物を製造してこれを水で希釈したものを使用してもよいし、(a)成分、(b)成分、必要により(c)成分を個別に、又は、プレミックス、プレ溶解したものを水系システム中に流通、循環もしくは滞留する水に溶解させて使用してもよい。その必要に応じてpHを調整してもよい。(a)成分、(b)成分、及び(c)成分は、化合物によって、液体、固体、また、水溶液などの形態で供給することが可能であるが、前記液体組成物を用いる場合、該組成物の液安定性の観点から、水系システムに適用する直前に該組成物を製造することが好ましい。また、本発明の(a)成分、(b)成分、必要により(c)成分を、水系システム中に流通、循環もしくは滞留する水に溶解させて、これらの成分をバイオフィルムに接触させることも好ましい。
【0038】
本発明のバイオフィルムの除去方法では、水系システムで形成されたバイオフィルムに、金属、好ましくは鉄、マンガン、ニッケル及び銅から選ばれる1種以上の金属を含む組成物を接触させて、金属を含むバイオフィルムあるいは金属の含有量を増やしたバイオフィルムとした後、(a)成分と(b)成分とを接触させてもよい。具体的には、水系システムで形成されたバイオフィルムに、鉄、マンガン、ニッケル及び銅から選ばれる1種以上の金属を含む組成物、更に、前記金属を例えば1ppm以上100ppm以下の濃度で含む水性組成物を、所定期間、例えば3分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上、より更に好ましくは1時間以上、より更に好ましくは2時間以上、そして作業性の観点から例えば3日以内の期間、接触、例えば水系システムに流通、循環あるいは滞留させて接触させた後、前記組成物を必要により、通常の水道水や井戸水等の、ごく微量程度の金属しか含まない水に置き換え、所定期間水系システムに流通、循環あるいは滞留させた後、(a)成分と(b)成分とを接触させることができる。(a)成分と(b)成分とを接触させる前に、通常の水道水や井戸水等よりも高濃度で金属イオンを含む組成物をバイオフィルムに接触させることにより、バイオフィルム内に金属がより蓄積され、バイオフィルムの除去効果をより向上できるものと考えられる。
【0039】
尚、(a)成分と(b)成分とをバイオフィルムに接触させる際に金属を同時に接触させても本発明の効果は発現しない。この場合、金属の濃度を、通常の水道水や井戸水等が含む濃度よりも高濃度にしても本発明の効果は発現しない。これは、水中でフェントン様反応が一時に爆発的に起こってしまうことにより、バイオフィルムに作用、分解できずバイオフィルム除去効果が発現できないものと考えられる。従って、本発明では、フェントン様反応がバイオフィルム内部で起こることで優れた効果を示すものと推察され、バイオフィルムに(a)成分と(b)成分とを接触させる際に水を用いるのであれば、当該水は、フェントン様反応に関与する金属イオン濃度をできる限り下げることが望ましい。
【0040】
本発明の方法では、例えば、前記液体組成物を、水系システム中に流通、循環もしくは滞留する水に溶解させて、バイオフィルムに接触させる。その際、外力を与えてもよい。前記液体組成物は、配水管内部等直接手に触れることができない部分に関しては、流通や循環等により、バイオフィルムと接触することで、充分にバイオフィルムを除去することができる。一方、プールや浴場等直接手に触れることができる部分に関しては、前記液体組成物を滞留等する水に溶解させて、バイオフィルムに接触させるだけでもバイオフィルムを除去することができるが、モップや雑巾等で擦る等の軽い外力を与えることにより、更にバイオフィルムの除去を確実なものとすることができる。
【実施例】
【0041】
<実施例1及び比較例1>
表1に示す成分を用いて水系システムに接触させる液体組成物を調製し、以下の試験を行った。結果を表1に示す。なお、表1の組成物のpHは、10mM酢酸緩衝液(pH4.0にする場合)又は10mMリン酸緩衝液(pH7.0にする場合)により調整し、その後、各成分が所定の濃度になるよう調製した。また、表1の組成物は、残部が水である。
【0042】
〔バイオフィルム除去試験(水冷塔モデル)〕
(1)バイオフィルムの作製
バイオフィルム作製には、100mL容量の培養槽を有するアニュラーリアクター(アート科学社製)を用いた水系システムモデルを使用した。アニュラーリアクターの培養槽には、毎分160回転の速度で回転する円筒形の回転体が設置され、この回転体にテストピース(SUS304)を予め取り付けた。化学工場の反応槽設備冷却のための水冷式水冷塔から採集した冷却水をアニュラーリアクター培養槽(30℃に維持)に供給し、3週間培養しテストピース上にバイオフィルムを形成させた。
【0043】
(2)バイオフィルム中の金属量測定
(1)で形成させたバイオフィルムから、表面の水分を濾紙により取り除いた湿潤状態として、サンプル量のバイオフィルムを採取し、金属をリン酸緩衝生理食塩水で抽出し、ICP-MSにて金属量を測定した後、湿潤状態で1mgのバイオフィルムに含まれる金属量を算出した。
その結果、このバイオフィルムは、Feを68ng/mg、Niを4.6ng/mg、Cuを3.7ng/mg含有することが確認された。
【0044】
(3)バイオフィルム除去試験
表1の成分を表1の濃度で含有する液体組成物又はコントロール(超純水)5mLを添加した6wellプレートの各wellに、バイオフィルムが形成されたテストピースを浸し、30℃、60rpmで16時間振とうした。各テストピースを0.1%クリスタルバイオレットで染色した後、超純水で洗浄し、1mLのエタノールで染色液を抽出し、吸光度(OD570)を測定した。測定したOD570をもとに、下記式に従ってバイオフィルム除去率を測定した。尚、ブランクはエタノールのOD570を指す。
バイオフィルム除去率(%)={(コントロールOD570-ブランクOD570)-(実施例又は比較例のOD570-ブランクOD570)}×100/(コントロールOD570-ブランクOD570)
尚、本試験におけるバイオフィルム除去率は、その値が大きいほど効果が高く、本試験におけるバイオフィルム除去率の5%の差は有意差として認識でき、10%の差はより明確な差として認識できる。
【0045】
【0046】
外力を利用してバイオフィルムを除去する場合、例えば、モップ、雑巾などを用いて擦り洗いでバイオフィルムを除去するような場合には、この評価によるバイオフィルム除去率が33%以上であれば、充分に効果が発現する。外力がより小さい場合、例えば、表1の組成物の流通や循環等によるバイオフィルム除去の場合には、バイオフィルム除去率が40%以上であれば充分にバイオフィルムの除去が可能であり、より好ましい。
【0047】
<実施例2及び比較例2>
表2に示す成分を用いて水系システムに接触させる液体組成物を調製し、以下の試験を行った。結果を表2に示す。なお、表2の組成物のpHは、10mM酢酸緩衝液又は10mMリン酸緩衝液により調整し、その後、各成分が所定の濃度になるよう調製した。また、表2の組成物は、残部が水である。
【0048】
〔バイオフィルム除去試験(浴槽配管モデル)〕
(1)バイオフィルムの作製
バイオフィルム作製には、100mL容量の培養槽を有するアニュラーリアクター(アート科学社製)を用いた水系システムモデルを使用した。アニュラーリアクターの培養槽には、毎分160回転の速度で回転する円筒形の回転体が設置され、この回転体にテストピース(SUS304)を予め取り付けた。循環式浴槽から採集した浴槽水をアニュラーリアクター培養槽(40℃に維持)に供給しつつ、汚れ負荷処理として毎日濃度が10ppmずつ上昇するようにR2A培地を供給水に添加し、1週間培養してテストピース上にバイオフィルムを形成させた。
【0049】
(2)バイオフィルム中の金属量測定
(1)で形成させたバイオフィルムに含まれる金属量を実施例1と同様に算出した。
その結果、このバイオフィルムは、Feを220ng/mg、Mnを6.8ng/mg含有することが確認された。
【0050】
(3)バイオフィルム除去試験
表2の成分を表2の濃度で含有する液体組成物又はコントロール(超純水)5mLを添加した6wellプレートの各wellに、バイオフィルムが形成されたテストピースを浸し、40℃、60rpmで30分間振とうした。各テストピースを0.1%クリスタルバイオレットで染色した後、超純水で洗浄し、1mLのエタノールで染色液を抽出し、吸光度(OD570)を測定した。測定したOD570をもとに、下記式に従ってバイオフィルム除去率を測定した。尚、ブランクはエタノールのOD570を指す。
バイオフィルム除去率(%)={(コントロールOD570-ブランクOD570)-(実施例又は比較例のOD570-ブランクOD570)}×100/(コントロールOD570-ブランクOD570)
【0051】
【0052】
<実施例3及び比較例3>
実施例1、2で作製したバイオフィルムが形成されたテストピースを用いて、実施例1と同様にバイオフィルム除去率を測定した。
また、下記の方法で、緑膿菌によるバイオフィルム又はスフィンゴモナス科細菌によるバイオフィルムに対するバイオフィルム除去率を測定した。
結果を表3に示した。
【0053】
(1)バイオフィルムの作製(緑膿菌)
緑膿菌PAO1株(ATCC 15692)をR2A培地で30℃、16時間振とう培養を行った。得られた培養液をR2A培地で1/100に希釈し、96wellマイクロプレートの各wellに200μLずつ添加して30℃で3日間培養してバイオフィルムを作製した。
【0054】
(2)バイオフィルムの作製(スフィンゴモナス科細菌)
水冷塔冷却水より単離したスフィンゴモナス科細菌を、R2A培地で30℃、16時間振とう培養を行った。得られた培養液を、0.1μMの塩化鉄(III)、又は100μMの塩化マンガン(II)、又は100μMの塩化ニッケル(II)、又は100μMの塩化銅(II)を含むR2A培地で1/100に希釈し、96wellマイクロプレートの各wellに200μLずつ添加して30℃で3日間培養してバイオフィルムを作製した。
【0055】
(3)バイオフィルム中の金属量測定
(1)、(2)で形成させたバイオフィルムに含まれる金属量を実施例1と同様に算出した。
その結果、(1)のバイオフィルムは、金属を含んでおらず、(2)のバイオフィルムは、それぞれFeを19.8ng/mg、Mnを7.8ng/mg、Niを1.8ng/mg、Cuを12.9ng/mg含有することが確認された。
【0056】
(4)バイオフィルム除去試験
前記well中の培養液を、表3の成分を表3の濃度で含有する液体組成物又はコントロール(超純水)に交換し、30℃で16時間作用させた。その後、液体組成物又は超純水を捨て、各wellを0.1%クリスタルバイオレットで染色した後、超純水で2回洗浄し、200μLのエタノールを添加し、吸光度(OD570)を測定した。測定したOD570をもとに、下記式に従ってバイオフィルム除去率を測定した。尚、ブランクはエタノールのOD570を指す。
バイオフィルム除去率(%)={(コントロールOD570-ブランクOD570)-(実施例又は比較例のOD570-ブランクOD570)}×100/(コントロールOD570-ブランクOD570)
【0057】
【0058】
表3中、実施例3-1、3-2、3-3に示されるように、(a)成分と(b)成分とを含有する液体組成物を、金属を含むバイオフィルムに接触させた場合は、バイオフィルム除去率が非常に高くなり、良好に除去できることがわかる。一方、比較例3-1のように、前記液体組成物を、金属を含まないバイオフィルムに接触させてもバイオフィルムは除去できないことがわかる。また、比較例3-2から、金属(Fe)を前記液体組成物中に存在させて金属を含まないバイオフィルムに接触させても、バイオフィルムを除去できないことがわかる。
【0059】
<実施例4>
表4に示す成分を用いて、水系システムに接触させる液体組成物を調製し、以下の試験を行った。結果を表4に示す。
【0060】
(1)バイオフィルムの作製(スフィンゴモナス科細菌)
実施例3の(2)のバイオフィルム作製法を、金属を添加せずに行い作製した。
【0061】
(2)バイオフィルム中の金属量の測定
(1)で形成させたバイオフィルムに含まれる金属量を実施例1と同様に算出した。
その結果、(1)のバイオフィルムは、金属を含んでいなかった。
【0062】
(3)バイオフィルム除去試験
well中の培養液を、1.6ppmとなるように超純水に溶解した塩化鉄(III)溶液に交換し、1分、又は5分、又は10分、又は30分、又は120分の間静置した後、リン酸緩衝生理食塩水に置き換えて残った塩化鉄(III)溶液を洗浄した。その後、表4の液体組成物を10mMリン酸緩衝液で調製し、実施例3と同様の方法でバイオフィルム除去試験を実施し除去率を測定した。
【0063】
【0064】
<実施例5>
実施例2で作製したバイオフィルムが形成されたテストピースと、表5に示す成分を用いて調製した水系システムに接触させる液体組成物とを用いて、実施例2と同様にバイオフィルム除去試験を行った。ただし、液体組成物の残部を超純水とし、洗浄時間を60分とした。結果を表5に示した。
【0065】