(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20241203BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60C11/03 100C
B60C11/03 C
B60C11/03 D
B60C11/13 B
B60C11/13 C
(21)【出願番号】P 2020079778
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 清香
(72)【発明者】
【氏名】▲くわ▼野 慎吾
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123447(JP,A)
【文献】特公昭45-000801(JP,B1)
【文献】国際公開第97/014946(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/193805(WO,A1)
【文献】特開平03-128705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドに設けられたタイヤ周方向に延びる2本の主溝と、
2本の前記主溝との間に形成されたタイヤ周方向に延びるセンター陸部と、
接地端と前記主溝との間に形成された一対のショルダー陸部と、
前記主溝より溝幅が狭くタイヤ周方向に延びる前記センター陸部に設けられたセンター副溝と、
前記主溝より溝幅が狭くタイヤ周方向に延びる前記ショルダー陸部に設けられたショルダー副溝とを備え、
前記センター副溝はタイヤ周方向に平行に延びるストレート状をなしており、
前記主溝の溝中心線は、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向一方側へ傾斜して延びる第1主溝中心傾斜部と、タイヤ周方向に対して前記第1主溝中心傾斜部と反対方向に傾斜して延び前記第1主溝中心傾斜部より短い第2主溝中心傾斜部とからなってジグザグ状にタイヤ周方向に延び、
前記ショルダー副溝の溝中心線は、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向一方側へ傾斜して延びる第1副溝中心傾斜部と、タイヤ周方向に対して前記第1副溝中心傾斜部と反対方向に傾斜して延び前記第1副溝中心傾斜部より短い第2副溝中心傾斜部とからなってジグザグ状にタイヤ周方向に延び、
前記第1副溝中心傾斜部の少なくとも一部は前記第1主溝中心傾斜部とタイヤ幅方向に対向し、前記第2副溝中心傾斜部の少なくとも一部は前記第2主溝中心傾斜部とタイヤ幅方向に対向し、
前記第1副溝中心傾斜部が前記第1主溝中心傾斜部とタイヤ幅方向に対向する位置において、タイヤ周方向に対する前記第1副溝中心傾斜部の角度が、タイヤ周方向に対する前記第1主溝中心傾斜部の角度よりも大き
く、
前記第2副溝中心傾斜部が前記第2主溝中心傾斜部とタイヤ幅方向に対向する位置において、タイヤ周方向に対する前記第2副溝中心傾斜部の角度が、タイヤ周方向に対する前記第1主溝中心傾斜部の角度よりも大きい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッドに設けられたタイヤ周方向に延びる2本の主溝と、
2本の前記主溝との間に形成されたタイヤ周方向に延びるセンター陸部と、
接地端と前記主溝との間に形成された一対のショルダー陸部と、
前記主溝より溝幅が狭くタイヤ周方向に延びる前記センター陸部に設けられたセンター副溝と、
前記主溝より溝幅が狭くタイヤ周方向に延びる前記ショルダー陸部に設けられたショルダー副溝とを備え、
前記ショルダー副溝は、溝幅が広がったディンプルをタイヤ周方向に間隔をあけて複数備え、
前記ショルダー副溝は、タイヤ周方向に対して傾斜して延びる第1溝部と、タイヤ周方向に対して前記第1溝部と反対方向に傾斜して延び前記第1溝部より短い第2溝部とからなってジグザグ状にタイヤ周方向に延び、
前記ディンプルは、前記第2溝部のタイヤ幅方向内側に設けられ、前記第2溝部の溝深さ以下の深さの凹みからなる、空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センター陸部は、タイヤ周方向に連続するリブ状の陸部からなり、
前記一対のショルダー陸部は、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の横溝を備える請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記一対のショルダー陸部は、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の横溝を備え、
タイヤ周方向に対する前記横溝の溝中心線の角度が、タイヤ幅方向外側に行くほど大きくなる請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー副溝は、前記ショルダー陸部の幅方向中心より接地端側に設けられている請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
接地幅内における前記センター陸部及び前記ショルダー陸部の面積の合計に対する前記センター陸部の面積の比率が30%以上35%以下であり、
前記合計に対する前記ショルダー陸部の面積の比率が30%以上35%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ドラッグレースなどの競技に使用される空気入りタイヤは、接地面積を拡大して高いグリップとトラクションを得るため、ボイド比と呼ばれるトレッドにおける溝部分の面積の割合を小さく抑えることがある。
【0003】
このような空気入りタイヤは、競技に使用される時においても、接地面積を拡大するため、タイヤ内圧を低く設定することがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボイド比が小さい空気入りタイヤにおいてタイヤ内圧を低く設定すると、タイヤ幅方向において局所的に接地しにくい箇所が生じやすく、充分な接地面積が得られないおそれがある。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑み、タイヤ内圧を低く設定しても接地面積を拡大することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、トレッドに設けられたタイヤ周方向に延びる2本の主溝と、2本の前記主溝との間に形成されたタイヤ周方向に延びるセンター陸部と、接地端と前記主溝との間に形成された一対のショルダー陸部と、前記主溝より溝幅が狭くタイヤ周方向に延びる前記センター陸部に設けられたセンター副溝と、前記主溝より溝幅が狭くタイヤ周方向に延びる前記ショルダー陸部に設けられたショルダー副溝とを備え、前記センター副溝はタイヤ周方向に平行に延びるストレート状をなしており、前記主溝の溝中心線は、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向一方側へ傾斜して延びる第1主溝中心傾斜部と、タイヤ周方向に対して前記第1主溝中心傾斜部と反対方向に傾斜して延び前記第1主溝中心傾斜部より短い第2主溝中心傾斜部とからなってジグザグ状にタイヤ周方向に延び、前記ショルダー副溝の溝中心線は、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向一方側へ傾斜して延びる第1副溝中心傾斜部と、タイヤ周方向に対して前記第1副溝中心傾斜部と反対方向に傾斜して延び前記第1副溝中心傾斜部より短い第2副溝中心傾斜部とからなってジグザグ状にタイヤ周方向に延び、前記第1副溝中心傾斜部の少なくとも一部は前記第1主溝中心傾斜部とタイヤ幅方向に対向し、前記第2副溝中心傾斜部の少なくとも一部は前記第2主溝中心傾斜部とタイヤ幅方向に対向し、前記第1副溝中心傾斜部が前記第1主溝中心傾斜部とタイヤ幅方向に対向する位置において、タイヤ周方向に対する前記第1副溝中心傾斜部の角度が、タイヤ周方向に対する前記第1主溝中心傾斜部の角度よりも大きく、前記第2副溝中心傾斜部が前記第2主溝中心傾斜部とタイヤ幅方向に対向する位置において、タイヤ周方向に対する前記第2副溝中心傾斜部の角度が、タイヤ周方向に対する前記第1主溝中心傾斜部の角度よりも大きい、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、タイヤ内圧を低く設定しても接地面積を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す図
【
図4】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンと接地形状を示す図
【
図5】比較例に係る空気入りタイヤのトレッドパターンと接地形状を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単にタイヤということがある。)は、左右一対のビード及びサイドウォールと、左右のサイドウォールの径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール間に設けられたトレッドとを備え、トレッドパターン以外については一般的なタイヤ構造を採用することができる。
【0012】
図1に示すように、トレッド10のトレッド表面には、タイヤ周方向CDに延びる主溝12がタイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向WDに間隔をあけて2本設けられている。
【0013】
主溝12は、タイヤ周方向に延びる太い溝であり、ストレート状のものだけでなくジグザグ状のものも主溝に含まれる。主溝12は、溝幅が10mm以上、溝深さが3mm以上であることが好ましく、本実施形態では、溝幅が14mm、溝深さが5mmに設定されている。
【0014】
なお、本明細書において、溝幅とは、溝を挟んだ開口端(タイヤ径方向外側端)の間隔であり、ジグザグ状の溝の場合、最も溝幅の狭い箇所における溝幅である。
【0015】
本実施形態においては、
図2に示すように主溝12は、タイヤ幅方向内側の溝壁12aがジグザグ状に屈曲すること無くタイヤ周方向CDに沿って延び、タイヤ幅方向外側の溝壁12bがタイヤ幅方向WDに屈曲しながらタイヤ周方向に延びている。これにより、主溝12の溝幅中心(主溝の長さ方向における各位置での幅方向の中心)を通る溝中心線Rmもタイヤ幅方向WDに屈曲しながらタイヤ周方向に延びている。
【0016】
トレッド10には、2本の主溝12の間に挟まれたセンター陸部14と、主溝12と接地端Eとの間に形成された左右一対のショルダー陸部16とが設けられている。
【0017】
なお、接地端Eとは、接地面におけるタイヤ幅方向WDの最外位置である。接地面は、タイヤを正規リムにリム組みし、140kPaの内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、ロードインデックスに対応する負荷荷重の88%の荷重を加えたときの路面に接地するトレッドの表面を指す。
【0018】
センター陸部14には、
図1~
図3に示すように、主溝12より溝幅が狭く、かつ、溝深さが浅いタイヤ周方向CDに延びるセンター副溝18が設けられている。センター副溝18は、溝幅が主溝12の50%以下、溝深さが主溝12の60%以下であることが好ましく、本実施形態では、溝幅が3mm、溝深さが2mmに形成されている。
【0019】
本実施形態に係るタイヤでは、センター副溝18がタイヤ周方向CDに平行に延びるストレート状をなしており、タイヤ幅方向WDに対向する位置において、タイヤ周方向CDに対する主溝12の溝中心線Rmの角度が、タイヤ周方向CDに対するセンター副溝18の溝幅中心を通る溝中心線Rcの角度より大きくなっている。
【0020】
センター副溝18は、センター陸部14をタイヤ幅方向WDに二等分するようにタイヤ赤道面CLに一致するように設けられることが好ましい。つまり、センター副溝18の溝中心線Rcが、タイヤ赤道面CLと一致するようにセンター副溝18がセンター陸部14に設けられることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態に係るタイヤでは、
図1に示すようにセンター副溝18と交差する溝がセンター陸部14に存在せず、センター陸部14がタイヤ周方向CDに連続するリブ状の陸部からなる。
【0022】
一対のショルダー陸部16には、
図1~
図3に示すように、主溝12より溝幅が狭く、かつ、溝深さが浅いタイヤ周方向CDに延びるショルダー副溝20,20が設けられている。ショルダー副溝20は、溝幅が主溝12の50%以下、溝深さが主溝12の60%以下であることが好ましく、本実施形態では、溝幅が3mm、溝深さが2mmに形成されている。
【0023】
ショルダー陸部16は、ショルダー副溝20によって内側ショルダー陸部16Aと外側ショルダー陸部16Bに区画されている。
【0024】
本実施形態に係るタイヤでは、ショルダー副溝20をショルダー陸部16の任意の位置に設けることができるが、ショルダー陸部16の幅方向中心より接地端側にショルダー副溝20を設けることが好ましい。つまり、内側ショルダー陸部16Aの面積が外側ショルダー陸部16Bの面積より大きくなるようにショルダー副溝20を設けることが好ましく、例えば、内側ショルダー陸部16Aの面積が外側ショルダー陸部16Bの1.1~1.6倍(提案書では1.5倍となっていました)となるようにショルダー副溝20を設けることが好ましい。
【0025】
ショルダー副溝20は、タイヤ周方向CDに対して傾斜して延びる第1溝部21と、タイヤ周方向CDに対して第1溝部21と反対方向に傾斜して延び第1溝部21より短い第2溝部22とからなるジグザグ状にタイヤ周方向CDに延びる溝であることが好ましい。
【0026】
第1溝部21及び第2溝部22の少なくとも一部は、タイヤ幅方向WDに対向する主溝12の溝壁12bとタイヤ周方向に対して同じ方向に傾斜していることが好ましい。より好ましくは、第1溝部21及び第2溝部22が、タイヤ幅方向WDに対向する主溝12の溝壁12bと平行に延びている。
【0027】
本実施形態に係るタイヤでは、タイヤ幅方向WDに対向する位置において、タイヤ周方向CDに対するショルダー副溝20の溝幅中心を通る溝中心線Rsの角度が、タイヤ周方向CDに対する主溝12の溝中心線Rmの角度より大きくなっていることが好ましい。
【0028】
ショルダー副溝20,20は、第2溝部22のタイヤ幅方向内側にディンプル23が設けられていることが好ましい。ディンプル23は、深さが第2溝部22の溝深さ以下の凹みであり、第2溝部22からタイヤ幅方向内側に延び第2溝部22の溝幅が広がるように形成されている。ディンプル23の深さは、特に限定しないが、例えば第2溝部22の深さの50~100%であることが好ましく、本実施形態では、2mmに形成されている。
【0029】
ショルダー陸部16は、
図1及び
図2に示すように、タイヤ幅方向WDに延びる横溝30,40,50がタイヤ周方向CDに間隔をあけて複数設けられていることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係るタイヤでは、ショルダー副溝20のタイヤ幅方向内側に設けられた内側ショルダー陸部16Aにタイヤ幅方向WDに延びる複数の第1横溝30がタイヤ周方向CDに間隔をあけて設けられている。第1横溝30は、主溝12とショルダー副溝20とを繋ぐように内側ショルダー陸部16Aを横断するように設けられている。第1横溝30は、溝幅中心を通る溝中心線R1がタイヤ幅方向外側に行くほどタイヤ幅方向WDに近づくようにタイヤ周方向CDに対する角度が大きくなっている。
【0031】
第1横溝30の溝幅及び溝深さは、特に限定しないが、例えば溝幅が主溝12の30~ 50%、溝深さが主溝12の50~100%であることが好ましく、本実施形態では、溝幅が5mm、溝深さが4mmに形成されている。
【0032】
また、本実施形態に係るタイヤでは、ショルダー副溝20のタイヤ幅方向外側に設けられた外側ショルダー陸部16Bにタイヤ幅方向WDに延びる複数の第2横溝40と複数の第3横溝50とがタイヤ周方向CDに間隔をあけて設けられている。第2横溝40及び第3横溝50は、タイヤ周方向CDに交互に配置されている。
【0033】
第2横溝40は、ショルダー副溝20からタイヤ幅方向外側に向かって延び接地端Eに達することなく外側ショルダー陸部16B内で終端している。第2横溝40の溝幅中心を通る溝中心線R2は、第1横溝30の溝中心線R1よりタイヤ周方向CDに対する角度が大きい。第2横溝40の溝中心線R2は、タイヤ幅方向外側に行くほどタイヤ幅方向WDに近づくようにタイヤ周方向CDに対する角度が大きくなっている。
【0034】
第2横溝40は、内側ショルダー陸部16Aに設けられた第1横溝30とショルダー副溝20を挟んで対向するように設けられてもよい。
【0035】
第2横溝40の溝幅及び溝深さは、特に限定しないが、例えば溝幅が主溝12の30~ 50%、溝深さが主溝12の30~50%であることが好ましい。
【0036】
第3横溝50は、接地端Eからショルダー副溝20に向かってタイヤ幅方向WDに延びショルダー副溝20に連通すること無く外側ショルダー陸部16B内で終端している。第3横溝50の溝幅中心を通る溝中心線R3は、第1横溝30の溝中心線R1や第2横溝40の溝中心線R2よりタイヤ周方向CDに対する角度が大きい。第3横溝50の溝中心線R3は、タイヤ幅方向外側に行くほどタイヤ幅方向WDに近づくようにタイヤ周方向CDに対する角度が大きくなっている。
【0037】
第3横溝50のタイヤ幅方向内側の端部は、ショルダー副溝20の第2溝部22とタイヤ幅方向WDに対向するように設けられてもよい。また、第3横溝50は、第2横溝40とタイヤ幅方向WDに重ならないように、第3横溝50のタイヤ幅方向内側の端部が第2横溝40のタイヤ幅方向外側の端部よりタイヤ幅方向外側に位置してもよい。
【0038】
第3横溝50の溝幅及び溝深さは、特に限定しないが、例えば溝幅が主溝12の30~ 50%、溝深さが主溝12の50~100%であることが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態に係るタイヤでは、トレッド10に設けられた主溝12、ショルダー副溝20、第1横溝30、第2横溝40及び第3横溝50が、タイヤ赤道面CLの両側でタイヤ周方向CDへ所定距離だけずれているが、各溝12,18,20,30,40,50及びこれらによって形成される陸部はタイヤ赤道面CLに対して対称な形状をなしている。
【0040】
トレッド10は、接地幅内(つまり、左右の接地端Eの間)におけるセンター陸部14、ショルダー陸部16の面積を、それぞれAc、Asとすると、接地幅内におけるセンター陸部14及び一対のショルダー陸部16の面積の合計(Ac+2As)に対するセンター陸部14の面積比率(Ac/(Ac+2As))が30~35%に設定され、前記合計(Ac+2As)に対するショルダー陸部16の面積比率(As/(Ac+2As))が30~35%に設定されることが好ましい。本実施形態では、センター陸部14の前記面積比率(Ac/(Ac+2As))が31%、一対のショルダー陸部16の前記面積比率(As/(As+2As))がそれぞれ34%に設定されている。
【0041】
また、トレッド10に設ける主溝12、センター副溝18、ショルダー副溝20、ディンプル23、第1横溝30、第2横溝40及び第3横溝50の開口面積の合計は、接地幅の内側(つまり、左右の接地端Eの間)の面積の25%以下であることが好ましい。
【0042】
また、トレッド10を構成するトレッドゴムは、特に限定されず任意のトレッドゴムを採用することができる。一例を挙げると、0℃のtanδが0.933であり、30℃のtanδと60℃のtanδとの差が0.13~0.17であるトレッドゴムを用いることが好ましい。
【0043】
なお、0℃、30℃、60℃のtanδは、K6394-2007に従い、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用いて、0℃、30℃、60℃の各温度で伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hzの条件で測定したときの値である。
【0044】
以上よりなる本実施形態に係るタイヤでは、タイヤ周方向CDに延びる2本の主溝12によって形成されたセンター陸部14とショルダー陸部16に、主溝12より溝幅が狭くタイヤ周方向CDに延びる副溝18,20がそれぞれ設けられている。そのため、各陸部14,16の剛性低下を抑えながら、タイヤ幅方向WDにおいて接地部分のタイヤ周方向長さ(接地長)を均一化することができ、高い接地圧を得つつ接地面積を拡大することができる。
【0045】
本実施形態に係るタイヤでは、センター陸部14を横溝が設けられていないタイヤ周方向に連続するリブ状の陸部とし、ショルダー陸部16にタイヤ周方向に間隔をあけて複数の横溝30,40,50が設けられているため、ショルダー陸部16が接地しやすくなり、タイヤ幅方向WDにおいて接地長を均一化することができる。
【0046】
本実施形態に係るタイヤでは、タイヤ周方向CDに対する主溝12の溝中心線Rmの角度がセンター副溝18の溝中心線Rcの角度より大きく、タイヤ周方向CDに対するショルダー副溝20の溝中心線Rsの角度が、主溝12の溝中心線Rmの角度より大きくなっており、接地端Eに近い位置に設けられたタイヤ周方向CDに延びる溝12,18,20ほどタイヤ周方向CDに対する傾斜角度が大きくなっている。これにより、トレッド10に設けられた陸部14,16は、接地端Eに向かうほど溝12,18,20による影響を受けやすくなり、タイヤ幅方向中央部に比べ接地長が短くなりやすいタイヤ幅方向外側部分において接地長が長くなり、タイヤ幅方向WDにおいて接地長を均一化することができる。
【0047】
本実施形態に係るタイヤでは、ショルダー陸部16に設けられた横溝30,40,50の溝中心線の角度が、タイヤ幅方向外側に行くほど大きくなっているため、ショルダー陸部16が接地端Eに向かうほど横溝30,40,50による影響を受けやすく接地端近傍において接地長が短くなりにくくなり、ショルダー陸部16における接地長を均一化することができる。
【0048】
本実施形態に係るタイヤでは、ショルダー陸部16の幅方向中心より接地端側にショルダー副溝20が設けられているため、ショルダー陸部16の幅方向中央部付近等に局所的に接地長が短い領域が生じにくくなり、タイヤ幅方向WDにおける接地長を均一化することができる。
【0049】
本実施形態に係るタイヤにおいて、接地幅内におけるセンター陸部14及び一対のショルダー陸部16の面積の合計(Ac+2As)に対するセンター陸部14の面積比率(Ac/(Ac+As))を30~35%、前記合計(Ac+2As)に対する一方のショルダー陸部16の面積比率(As/(Ac+2As))を30~35%に設定し、センター陸部14とショルダー陸部16の面積差を小さくすることで、接地圧を均一化することができる。
【0050】
本実施形態に係るタイヤでは、ショルダー副溝20にディンプル23を設けることで、トレッド10の表面積が拡大され排熱性能を確保することができる。
【0051】
本実施形態に係るタイヤは、乗用車用タイヤや重荷重用タイヤなど各種のタイヤに適用することができるが、ドラッグレースなどの競技車両用のタイヤに用いることが好ましい。
【0052】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲はこれに限定されない。以上の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。以上の実施形態やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等の範囲に含まれるものとする。
【実施例】
【0053】
上記実施形態の効果を示すために、実施例及び比較例の空気入りタイヤ(サイズ:315/40R18)を試作した。実施例及び比較例の各試作タイヤは、トレッドパターン以外については同一のタイヤ構造を有している。
【0054】
実施例のタイヤは、上記の実施形態に係るタイヤであり、
図1及び
図4に示すトレッドを有している。
【0055】
比較例のタイヤは、
図5に示すようなトレッドを有している。すなわち、比較例のタイヤのトレッド100には、タイヤ周方向CDに延びる2本の主溝112がタイヤ赤道面CLを挟んで設けられ、主溝112の間にセンター陸部114が形成され、主溝112と接地端Eとの間に形成された左右一対のショルダー陸部116、116が形成されている。センター陸部114及びショルダー陸部116には、タイヤ周方向に延びる副溝が設けられていない。
【0056】
また、比較例のタイヤは、接地幅内(つまり、左右の接地端Eの間)におけるセンター陸部114、ショルダー陸部116の面積を、それぞれBc、Bsとすると、接地幅内におけるセンター陸部114及び一対のショルダー陸部116の面積の合計(Bc+2Bs)に対するセンター陸部114の面積比率(Bc/(Bc+Bs))が43%、前記合計(Bc+2Bs)に対する一方のショルダー陸部116の面積比率(Bs/(Bc+2Bs))が29%に設定されている。
【0057】
実施例及び比較例の各試作タイヤについて、正規リムにリム組みし、140kPaの内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、ロードインデックスに対応する負荷荷重の88%の荷重を加えたときの路面に接地するトレッドの接地形状と、このときのセンター陸部の接地圧の平均値、ショルダー陸部の接地圧の平均値を測定した。
【0058】
比較例のタイヤの接地形状は、
図5において2点鎖線で示すように、センター陸部114の主溝112近傍や、ショルダー陸部116の幅方向中央部付近等に局所的に接地長が短い領域が生じ、タイヤ幅方向WDにおける接地長に偏りが生じた。また、センター陸部114の接地圧の平均値が14N/cm2、ショルダー陸部116の接地圧の平均値が22N/cm2となり、センター陸部114とショルダー陸部116との間で接地圧の偏りが生じた。
【0059】
実施例のタイヤの接地形状は、
図4において2点鎖線で示すように、センター陸部14の主溝12近傍や、ショルダー陸部16の幅方向中央部付近等に局所的に接地長が短い領域が生じることがなく、タイヤ幅方向WDにおける接地長を均一化することができ、接地面積を拡大することができた。また、センター陸部14及びショルダー陸部16の接地圧の平均値がいずれも24N/cm2となり、高い接地圧を得つつ各陸部間の接地圧を均一化することができた。
【符号の説明】
【0060】
10…トレッド、12…主溝、12a…内側溝壁、12b…外側溝壁、14…センター陸部、16…ショルダー陸部、16A…内側ショルダー陸部、16B…外側ショルダー陸部、18…センター副溝、20…ショルダー副溝、21…第1溝部、22…第2溝部、23…ディンプル、30…第1横溝、40…第2横溝、50…第3横溝