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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】緑茶組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/38 20060101AFI20241203BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241203BHJP
   C07D 311/62 20060101ALI20241203BHJP
   A61K 31/353 20060101ALN20241203BHJP
   A61P 39/06 20060101ALN20241203BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20241203BHJP
   A61P 3/06 20060101ALN20241203BHJP
   A61K 36/82 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
A23F3/38
A23L33/105
C07D311/62
A61K31/353
A61P39/06
A61P31/04
A61P3/06
A61K36/82
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020080150
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172634
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新納 仁
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-175978(JP,A)
【文献】特開平06-009607(JP,A)
【文献】Process|Bymode|Sec|,The Wayback Machine [online],2016年02月12日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20160212175245/http://separations.asia.tosohbioscience.com:80/productjp/process/bymode/sec>,[検索日2024.07.03]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23F
C07D 311/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素を失活させた茶葉を溶媒で抽出し、カテキン類濃度0.5~10.0質量%の緑茶抽出液を得(抽出工程)、
前記緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し0.1~5.0倍の液量を通液し、さらに移動相としての液を通液し(通液工程)、
ガレート型カテキン類を前記合成樹脂に吸着させ、合成樹脂に吸着されずに通過してきた成分を含有する液を通液時間に応じて複数のフラクションに分けて回収し、カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液を得る(精製工程)、緑茶組成物の製造方法において、
前記合成樹脂は、メタクリル樹脂であり、その排除限界分子量が1,000~120,000Daであり、平均細径孔が1~30nmであり、粒子径が45~500μmであることを特徴とする緑茶組成物の製造方法。
【請求項2】
得られたEGC・EC溶液を乾燥して緑茶組成物を得る(乾燥工程)ことを特徴とする、請求項1に記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項3】
前記合成樹脂は、メタクリル樹脂製多孔性硬質ハイドロゲルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項4】
カラムに充填された合成樹脂の樹脂量(ml)に対する、カラムに通液する前記緑茶抽出液の可用性固形分濃度(質量%/100)をその通液量(ml)に乗じた値の比率((Brix×通液量)/樹脂量))が、0.010~0.300であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項5】
製造物である緑茶組成物のエピガロカテキン(EGC)含有量が30.0~90.0質量%であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項6】
製造物である緑茶組成物のエピカテキン(EC)含有量が0.1~80.0質量%であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項7】
製造物である緑茶組成物のガレート型カテキン類含有量が10.0質量%未満であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項8】
製造物である緑茶組成物において、EGC及びECの合計含有量(質量%)に対するカフェイン含有量(質量%)の比率(カフェイン/(EGC+EC))が0.05未満であることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項9】
製造物である緑茶組成物のカフェイン含有量が1.0質量%未満であることを特徴とする請求項1~8の何れかに記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項10】
製造物である緑茶組成物のアミノ酸類含有量が0.01~10.0質量%であることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項11】
製造物である緑茶組成物の糖類含有量が0.01~10.0質量%であることを特徴とする請求項1~10の何れかに記載の緑茶組成物の製造方法。
【請求項12】
酵素を失活させた茶葉を溶媒で抽出し、カテキン類濃度0.5~10.0質量%の緑茶抽出液を得(抽出工程)、
前記緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し0.1~5.0倍の液量を通液し、さらに移動相としての液を通液し(通液工程)、
ガレート型カテキン類を前記合成樹脂に吸着させ、合成樹脂に吸着されずに通過してきた成分を含有する液を通液時間に応じて複数のフラクションに分けて回収し、カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液を得(精製工程)、
前記合成樹脂に吸着されたガレート型カテキン類をガレート型カテキン類溶液としてとして回収し(ガレート型カテキン類回収工程)、
前記EGC・EC溶液と、前記ガレート型カテキン類溶液とを混合する(混合工程)、緑茶組成物の製造方法において、
前記合成樹脂は、メタクリル樹脂であり、その排除限界分子量が1,000~120,000Daであり、平均細径孔が1~30nmであり、粒子径が45~500μmであることを特徴とする緑茶組成物の製造方法。
【請求項13】
緑茶組成物のカフェイン分離方法であって、
酵素を失活させた茶葉を溶媒で抽出し、カテキン類濃度0.5~10.0質量%の緑茶抽出液を得(抽出工程)、
前記緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し0.1~5.0倍の液量を通液し、さらに移動相としての液通液し(通液工程)、
ガレート型カテキン類を前記合成樹脂に吸着させ、合成樹脂に吸着されずに通過してきた成分を含有する液を通液時間に応じて複数のフラクションに分けて回収し、カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液を得る(精製工程)、緑茶組成物のカフェイン分離方法において、
前記合成樹脂は、メタクリル樹脂であり、その前記合成樹脂の排除限界分子量が1,000~120,000Daであり、平均細径孔が1~30nmであり、粒子径が45~500μmであることを特徴とする、緑茶組成物のカフェイン分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶葉由来の成分を含有する緑茶組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉中に多く含まれている茶カテキン類は、ポリフェノール化合物の一種であって、(-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、ならびにこれらの没食子酸エステルである(-)-エピカテキンガレート(ECG)および(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)の4種類が主なものであり、乾燥茶葉中にはこれら茶カテキン類が10~15wt%含まれており、茶(茶浸出液としての茶)の渋味の主体となっている。
【0003】
これらの茶カテキン類には、抗酸化作用、抗菌作用、消臭作用、血中コレステロール抑制作用、α-アミラーゼ活性阻害作用などの様々な化学的・生理的活性作用が知られている。しかし、茶カテキン類のこのような生理効果を発現させるためには、多量の茶カテキン類を摂取することが必要である。この際、高濃度にカテキン類を含有する緑茶組成物を食品や飲料に配合し、カテキン類を摂取し易い形態とすれば、お茶(茶浸出液としてのお茶)を飲用して摂取するよりも、より一層効率的に多量のカテキン類を摂取することが可能となる。
【0004】
このようなカテキン類を高濃度で含有する緑茶組成物を茶葉から製造するには、茶葉中にカテキン類と共存する夾雑物、例えばプリン塩基、糖類、アミノ酸、有機酸、無機塩類、カテキンの酸化重合物などの夾雑物をできるだけ分離除去するように精製し、カテキン類をより高濃度で含有する緑茶組成物を得る必要がある。
【0005】
従来、この種の緑茶組成物、すなわち高濃度でカテキン類を含有する緑茶組成物を得るための方法として、有機溶媒を用いた液液抽出法やクロマト分離法などを利用する技術が知られていた。例えば特許文献1には、クロロホルムでカフェインを除去し、酢酸エチルにより茶タンニン類を抽出することで、天然抗酸化剤を工業的に製造する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2や特許文献3には、クロマト分離を用いて茶カテキン類を選択的に充填剤に吸着させ、吸着成分を親水性有機溶媒により溶出させて茶カテキン類を精製する方法が開示されている。
特許文献4には、陽イオン交換樹脂に茶抽出物を接触させてカフェインを除去した後、エタノールを添加して沈殿物を生じさせ、該沈殿物を濾別除去することで、茶葉タンニン類を精製する方法が開示されている。
【0007】
さらに特許文献5には、高濃度で非重合体カテキン類を含有する、不快な苦味の少ないカテキン組成物として、(A)ガレート型カテキン類と(B)非重合体カテキン類の含有重量比[(A)/(B)]が0.50~0.75で、(B)非重合体カテキン類と(C)総ポリフェノール類の含有重量比[(B)/(C)]が0.80~0.97で、(D)フラボノールアグリコンと(B)非重合体カテキン類の含有重量比[(D)/(C)]が0.002未満で、(E)カフェインと(B)非重合体カテキン類の含有重量比[(E)/(C)]が0.1未満であり、C00型センサを用いたCPA測定法により測定される水溶液のCPA値が、非重合体カテキン濃度当たり5μV/ppm以上を示すカテキン組成物が開示されている。また、このようなカテキン組成物を得る方法として、茶抽出物又は茶抽出液を、N-アルキルグルカミン基を有する構造体に接触させ、該構造体に吸着されて成分を回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許1561043号公報
【文献】特許2703241号公報
【文献】特許3052175号公報
【文献】特開平11-228565号公報
【文献】特開2007-1893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来から、緑茶抽出物に含まれる成分、中でも(-)-エピカテキン(EC)及び(-)-エピガロカテキン(EGC)などの非ガレート型カテキンには、血圧上昇抑制作用などの様々な薬理作用が報告されている。
同じく緑茶抽出物に含まれるカフェインには、中枢神経を興奮させる神経興奮作用があり、子供や妊婦、過敏症の方や不眠症の方などは、カフェインの摂取は避けるべきである。また、カフェインを含有しない飲料の需要も高まっている。
そのため、緑茶葉由来の成分を含有する緑茶組成物に関しては、非ガレート型カテキンを高濃度で含み、且つ、カフェインを含まない緑茶組成物が、様々な用途に有効に利用することができ有用である。
ところが、非ガレート型カテキンを高濃度で含み、且つ、カフェインを含まない組成物を緑茶抽出物から精製することは容易なことではなかった。
【0010】
そこで本発明の目的は、非ガレート型カテキンを高濃度で含み、且つ、カフェインを含まない新たな緑茶組成物と、それを得ることができる新たな製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、酵素を失活させた茶葉を溶媒で抽出し、カテキン類濃度0.5~10.0質量%の緑茶抽出液を得(抽出工程)、
前記緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し0.1~5.0倍の液量を通液し、さらに移動相としての液を通液し(通液工程)、
ガレート型カテキン類を前記合成樹脂に吸着させ、合成樹脂に吸着されずに通過してきた成分を含有する液を通液時間に応じて複数のフラクションに分けて回収し、カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液を得る(精製工程)ことを特徴とする緑茶組成物の製造方法を提案する。
【0012】
本発明はまた、酵素を失活させた茶葉を溶媒で抽出し、カテキン類濃度0.5~10.0質量%の緑茶抽出液を得(抽出工程)、
前記緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し0.1~5.0倍の液量を通液し、さらに移動相としての液を通液し(通液工程)、
ガレート型カテキン類を前記合成樹脂に吸着させ、合成樹脂に吸着されずに通過してきた成分を含有する液を通液時間に応じて複数のフラクションに分けて回収し、カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液を得(精製工程)、
前記合成樹脂に吸着されたガレート型カテキン類をガレート型カテキン類溶液として回収し(ガレート型カテキン類回収工程)、
前記EGC・EC溶液と、前記ガレート型カテキン類溶液とを混合する(混合工程)、ことを特徴とする緑茶組成物の製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明が提案する製造方法によれば、非ガレート型カテキンを高濃度で含み、且つ、カフェインを含まない新たな緑茶組成物を得ることができる。
また、通液工程において合成樹脂に吸着されたガレート型カテキン類をガレート型カテキン類溶液として回収し、精製工程で得られたEGC・EC溶液とを混合するようにすれば、ガレート型カテキンと非ガレート型カテキンとを所望の比率で含有し、且つカフェインを含まない新たな緑茶組成物を得ることができる。例えば、ガレート型カテキンを20.0~80.0質量%質量%含有し、非ガレート型カテキン20.0~80.0質量%含有し、カフェイン含有量が1.0質量%未満である緑茶組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図2】実施例2で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図3】比較例1で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図4】実施例3で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図5】比較例2で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図6】実施例4で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図7】実施例5で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図8】実施例6で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図9】実施例7で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図10】実施例8で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
図11】実施例9で得られた各フラクションのカテキン類及びカフェインの含有量を棒グラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<本製造方法A>
本発明の実施形態の一例に係る緑茶組成物の製造方法(「本製造方法A」と称する)は、原料茶葉を溶媒で抽出して緑茶抽出液を得(抽出工程)、
前記緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに、カラムの体積に対して所定液量を通液し、さらに移動相としての液を通液し、合成樹脂に吸着されずに通過してきた成分を含有する液を通液時間に応じて複数のフラクションに分けて回収し(通液工程)、
カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液を得(精製工程)、
必要に応じて該EGC・EC溶液を乾燥して(乾燥工程)、緑茶組成物(「本緑茶組成物A」と称する)を得る製造方法である。
【0017】
<原料茶葉>
原料茶葉の茶としては、茶樹(学名:Camellia sinensis)から摘採した葉や茎であれば、その品種、産地、摘採時期、摘採方法、栽培方法などに限られず、どのような茶も使用することができる。
【0018】
原料茶葉は、生茶葉を殺青した茶葉、すなわち、酵素を失活させた茶葉であればよい。この際、殺青方法としては、蒸熱、釜炒り、熱風加熱など任意である。例えば蒸し茶、煎茶、玉露、抹茶、番茶、玉緑茶、釜炒り茶、蒸製玉緑茶、釜炒製玉緑茶、中国緑茶など、不発酵茶に分類される茶を広く包含し、これら2種類以上をブレンドしたものも用いることができる。
また、上記の茶に現在公知の荒茶加工、さらには仕上加工を施したものも原料茶葉として用いることができる。
【0019】
<抽出工程>
原料茶葉を溶媒で抽出し、カテキン類濃度0.5~10.0質量%の緑茶抽出液を得るように抽出するのが好ましい。
カテキン類濃度0.5質量%以上の緑茶抽出液を得ることができれば、カテキン量を十分に回収できるから好ましい。かかる観点から、中でもカテキン類濃度0.6質量%以上、その中でも0.7質量%以上の緑茶抽出液を得るように抽出するのがさらに好ましい。他方、カテキン類濃度10.0質量%以下の緑茶抽出液を得ることができれば、効率的にカテキンの分離ができるから好ましい。かかる観点から、中でもカテキン類濃度8.0質量%以下、その中でも5.0質量%以下の緑茶抽出液を得るように抽出するのがさらに好ましい。
【0020】
なお、本発明において「カテキン類」とは、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECG)、エピカテキン(EC)、ガロカテキンガレート(GCg)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)及びカテキン(C)の何れか、或いはこれらのうちの二種類以上の組み合わせからなる混合物を包含する意であり、「カテキン類の含有量」若しくは「カテキン類濃度」とは、これらの含有量の合計量若しくは合計濃度の意味である。
また、「ガレート型カテキン類」とは、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキンガレート(ECG)、ガロカテキンガレート(GCg)及びカテキンガレート(Cg)の何れか、或いはこれらのうちの二種類以上の組み合わせからなる混合物を包含する意であり、「ガレート型カテキン類の含有量」とは、これらの含有量の合計量の意味である。
「非ガレート型カテキン類」とは、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキン(EC)、ガロカテキン(GC)及びカテキン(C)の何れか、或いはこれらのうちの二種類以上の組み合わせからなる混合物を包含する意であり、「非ガレート型カテキン類の含有量」とは、これらの含有量の合計量の意味である。
各ガレート型カテキン類の含有量は、HPLCによる分離分析により定量することができる(詳しくは実施例参照)。
【0021】
(溶媒)
茶葉を抽出するのに用いる溶媒としては、例えば水、温水、熱水、或いはエタノール、メタノール、アセトンなどの有機溶媒、或いは当該有機溶媒と水との混合溶液(例えば30~80%エタノール水溶液、30~80%メタノール水溶液、30~80%アセトン水溶液など)などを挙げることができる。但し、該溶媒をこれらに限定するものではない。
【0022】
(抽出方法及び条件)
上述した所定範囲のカテキン類濃度の緑茶抽出液が得られるように、抽出方法及び抽出条件を調整するのが好ましい。
【0023】
抽出方法は、通常行われている方法を採用すればよい。例えば、カラムに原料を充填し、当該カラムに熱水等の抽出溶媒を順次送液して抽出液を得る装置、或いは、抽出釜に原料を充填し所定量の熱水等の抽出溶媒で一定時間浸漬するニーダーと呼ばれる抽出装置など、処理する原料の量などに応じて適宜好ましい抽出装置を選択して抽出を行い、通常の方法にて固液分離すればよい。その方法に格別の制限はなく、所望又は目的により選択することができる。
【0024】
茶葉の抽出は、70~100℃の加温水にて抽出すればよい。例えば、常法に従ってニーダーと呼ばれる抽出装置を用いて、原料茶に対して20~100倍量、70~100℃の抽出水で約1分~20分間、必要に応じて1回~数回攪拌して、常圧で抽出を行えばよい。但し、抽出方法及び抽出条件等を特に限定するものではなく、例えば加圧抽出などの抽出方法を行うこともできる。
抽出温度すなわち抽出する温水の温度は70~100℃であるのが好ましく、中でも70℃以上或いは90℃以下であるのがさらに好ましい。
【0025】
上述のように抽出して得られた抽出液を固液分離して、例えばろ過して、ろ液としての緑茶抽出液を得ることができる。
さらに、前記ろ過残渣としての茶殻を、再度前述のように抽出し、前者と同様にろ過し、このろ液を前に得られたろ液と混合して緑茶抽出液を得るようにしてもよい。
【0026】
<通液工程>
次に、前記抽出工程で得られた緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに通液し、さらに移動相としての液を通液し、ガレート型カテキン類を前記合成樹脂に吸着させるのが好ましい。
【0027】
(合成樹脂)
吸着させる合成樹脂としては、分子量によって吸着する樹脂であるのが好ましい。
中でも、メタクリレート系充填剤、例えばメタクリル樹脂(アクリル樹脂)、言い換えます、メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート=MMA)のポリマー、又は、メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート=MMA)とアクリル酸エステル(アクリレート)とのコポリマー(共重合体)が好ましい。
市販の合成樹脂としては、例えばその他のメタクリル樹脂製多孔性硬質ハイドロゲルとしては、HW-50F(東ソー社製、排除限界分子量80,000Da、平均細径孔が12.5nm、粒径45μm)、HW-55F(東ソー社製、排除限界分子量700,000Da、平均細径孔が50nm、粒径45μm)、HW-40F(東ソー社製、排除限界分子量10,000Da、平均細径孔が5nm、粒径45μm)及びHW―40C(東ソー社製、排除限界分子量10,000Da、平均細径孔が5nm、粒径75μm)を使用してもよい。
【0028】
中でも、分子量によって分離することができる多孔性硬質ハイドロゲルからなるものが好ましい。
その中でも、排除限界分子量が1,000~120,000Da、中でも5,000Da以上或いは100,000Da以下、その中でも10,000Da以上或いは80,000Da以下であり、且つ、平均細径孔が1~30nm、中でも2nm以上或いは20nm以下、その中でも5nm以上或いは12.5nm以下であり、且つ、粒子径が45~500μm、中でも50μm以上或いは400μm以下、その中でも80μm以上或いは300μm以下、その中でも100μm以上であるものが好ましい。
【0029】
(緑茶抽出液)
カラムに通液する緑茶抽出液は、上述したようにカテキン類濃度0.5~10.0質量%であって、且つ、可溶性固形分(Bx:質量%)は2.0~15.0であるのが好ましい。
カラムに通液する緑茶抽出液の可溶性固形分(質量%)が2.0以上であれば、カテキン量を十分に回収できるから好ましい。かかる観点から、当該可溶性固形分(質量%)が3.0以上であるのがさらに好ましく、5.0以上であるであるのがさらに好ましい。他方、15.0以下であれば、カテキンを効率的に分離できるから好ましい。かかる観点から、10.0以下であるのがさらに好ましく、8.0以下であるであるのがさらに好ましい。
【0030】
(通液量)
カラムに充填された合成樹脂の体積に対して0.1~5.0倍の液量の緑茶抽出液を通液するのが好ましい。
カラムに充填された合成樹脂の体積に対して0.1倍以上の液量の緑茶抽出液を通液すれば、カテキンとカフェインを分離することが可能であるから好ましい。かかる観点から、2.0倍以上の液量とするのがさらに好ましく、3.0倍以上の液量とするのがさらに好ましい。他方、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し5.0倍以下の液量を通液すれば、カフェインを分離することができる点で好ましい。かかる観点から、4.5倍以下の液量とするのがさらに好ましく、4.0倍以下の液量とするのがさらに好ましい。
【0031】
(通液速度)
緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに通液する際の通液速度は、1~10mL/minとするのが好ましい。
該通液速度を1mL/min以上とすることにより、効率よく回収することができる。よって、1mL/min以上とするのが好ましく、中でも2mL/min以上、その中でも3mL/min以上とするのがさらに好ましい。他方、通液速度を10mL/min以下とすることにより、カラム内の圧力を抑えることができる。よって、10mL/min以下とするのが好ましく、中でも7mL/min以下、その中でも6mL/min以下とするのがさらに好ましい。
【0032】
また、SV(Space velocity)としては、1~10とするのが好ましい。
通液速度(SV)を1以上とすることにより、ガレート型カテキン類を効率よく回収することができる。他方、通液速度を10以下とすることにより、カラム内の圧力を抑えることができる。
かかる観点から、緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに通液する際の通液速度(SV)は、1以上とするのが好ましく、中でも2以上、その中でも3以上とするのがさらに好ましい。他方、10以下とするのが好ましく、中でも7以下、その中でも6以下とするのがさらに好ましい。
【0033】
(移動相)
移動相として通液する液は、水、又は、エタノール、メタノール、アセトンなどの有機溶媒、又は、当該有機溶媒と水との混合溶液(例えば0~25%(V/V)、中でも1~21%(V/V)エタノール水溶液、1~25%(V/V)メタノール水溶液、1~10%(V/V)アセトン水溶液など)などを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0034】
((Brix×通液量)/樹脂量)
例えばテーブル試験のスケール(カラム容量50~400(ml))を想定した場合、カラムに充填された合成樹脂の樹脂量(ml)に対する、カラムに通液する前記緑茶抽出液の可用性固形分濃度(質量%/100)をその通液量(ml)に乗じた値の比率((Brix×通液量)/樹脂量))は、0.010~0.300とすることが好ましい。
当該比率((Brix×通液量)/樹脂量))を、上記範囲に調整することにより、緑茶抽出液中のガレート型カテキンを効率的に合成樹脂に吸着させることができる一方、緑茶抽出液中の非ガレート型カテキンは、合成樹脂中を通過させることができる。かかる観点から、当該比率((Brix×通液量)/樹脂量))を0.050以上或いは0.280以下とすることがより好ましく、中でも0.090以上或いは0.250以下とするのがさらに好ましい。
【0035】
この際、すなわち、例えばテーブル試験のスケール(カラム容量50~400(ml))を想定した場合、カラムに充填する合成樹脂量は、30~200mlであるのが好ましく、50ml以上であるのがさらに好ましく、80ml以上であるのがさらに好ましい。他方、200ml以下であるのが好ましく、150ml以下であるのがさらに好ましく、100ml以下であるのがさらに好ましい。
【0036】
また、同じく例えばテーブル試験のスケール(カラム容量50~400(ml))を想定した場合、緑茶抽出液の通液量は、50~500mlであるのが好ましく、中でも80ml以上であるのがさらに好ましく、100ml以上であるのがさらに好ましい。他方、500ml以下であるのが好ましく、400ml以下であるのがさらに好ましく、300ml以下であるのがさらに好ましい。
【0037】
<精製工程>
合成樹脂に吸着されずに通過してきた成分を含有する液を通液時間に応じて複数のフラクションに分けて回収し、カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液として本緑茶組成物Aを得ることができる。
【0038】
カラム容量に対して1~10bed毎に各フラクションに分画するのが好ましく、中でも1bed以上或いは5bed以下、その中でも1bed以上或いは3bed以下毎に各フラクションに分画するのがさらに好ましい。
【0039】
カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めるのが好ましく、中でも0.003質量%未満、その中でも0.001質量%未満のフラクションを選択して集めるのがさらに好ましい。
【0040】
<乾燥工程>
必要に応じて前記EGC・EC溶液を濃縮し、必要に応じて乾燥させて粉体としての本緑茶組成物Aを得るようにしてもよい。
【0041】
濃縮方法としては、例えば減圧濃縮、凍結濃縮、逆浸透膜濃縮などの周知の濃縮方法を採用することができる。
乾燥方法としては、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥または噴霧乾燥といった、当該分野において周知の乾燥方法を採用することができる。
【0042】
<本緑茶組成物A>
本製造方法Aにより、本緑茶組成物AのEGC含有量を30.0~90.0質量%、中でも50.0質量%以上或いは90.0質量%以下、その中でも60.0質量%以上或いは80.0質量%以下とすることができる。
【0043】
本緑茶組成物AのEC含有量は0.1質量%~80.0質量%、中でも20.0質量%以上或いは60.0質量%以下、その中でも30.0質量%以上或いは50.0質量%以下とすることができる。
【0044】
本緑茶組成物AのEGCG含有量は10.0質量%以下、中でも5.0質量%以下、その中でも1.0質量%以下とすることができる。
【0045】
本緑茶組成物AのECG含有量は10.0質量%以下、中でも5.0質量%以下、その中でも1.0質量%以下とすることができる。
【0046】
本緑茶組成物Aのガレート型カテキン類含有量は、10.0質量%未満とすることができ、中でも5.0質量%以下、中でも1.0質量%以下とすることができる。
他方、本緑茶組成物Aの非ガレート型カテキン類含有量は、30.0~90.0質量%とすることができ、中でも50.0質量%以上或いは80.0質量%以下、その中でも60.0質量%以上或いは70.0質量%以下とすることができる。
【0047】
本緑茶組成物Aのカフェイン含有量は1.0質量%未満、中でも0.5質量%未満、その中でも0.1質量%未満とすることができる。
【0048】
本緑茶組成物Aにおいて、EGC及びECの合計含有質量に対するカフェインの合計含有質量の比率(カフェイン/(EGC+EC))を0.05未満、中でも0.01未満、その中でも0.001未満とすることができる。
【0049】
本緑茶組成物Aのアミノ酸類含有量を0.01~10.0質量%、中でも0.02質量%以上或いは5.0質量%以下、その中でも0.03質量%以上或いは3.0質量%以下とすることができる。
ここで、「アミノ酸類」とは、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン、アルギニン、アラニン及びテアニンを意味し、「アミノ酸類含有量」とはこれらの含有量の合計を意味する。
【0050】
本緑茶組成物Aの糖類含有量を0.01~10.0質量%、中でも0.02質量%以上或いは8.0質量%以下、その中でも0.03質量%以上或いは6.0質量%以下とすることができる。
ここで、「糖類」とは、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、スクロース(蔗糖)、マルトース(麦芽糖)を意味し、「糖類含有量」とはこれらの含有量の合計を意味する。
【0051】
(その他の含有物)
本緑茶組成物Aは、上記成分以外の茶抽出成分を含んでいてもよい。例えばカテキン類以外のポリフェノール類、テオフィリン、キサンチンなどのプリン塩基類(プリン環のメチル誘導体)、フラボノールアグリコン、その他の成分を挙げることができる。但し、これらの成分に限定されるものではない。
【0052】
<本製造方法B>
本発明の実施形態の別の一例に係る緑茶組成物の製造方法(「本製造方法B」と称する)は、原料茶葉を溶媒で抽出し、カテキン類濃度0.5~10.0質量%の緑茶抽出液を得(抽出工程)、
前記緑茶抽出液を、合成樹脂が充填されたカラムに、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し0.1~5.0倍の液量を通液し、さらに移動相としての液を通液し(通液工程)、
ガレート型カテキン類を前記合成樹脂に吸着させ、合成樹脂に吸着されずに通過してきた成分を含有する液を通液時間に応じて複数のフラクションに分けて回収し、カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液を得(精製工程)、
前記合成樹脂に吸着されたガレート型カテキン類をガレート型カテキン類溶液として回収し(ガレート型カテキン類回収工程)、
前記EGC・EC溶液と、前記ガレート型カテキン類溶液とを混合し(混合工程)、
必要に応じてさらに得られたEGC・EC溶液を乾燥して(乾燥工程)、
緑茶組成物(「本緑茶組成物B」と称する)を得る製造方法である。
【0053】
本製造方法Bの原料茶葉、抽出工程、通液工程、精製工程及び乾燥工程は、上記本製造方法Aと同様である。
【0054】
<ガレート型カテキン類回収工程>
本工程では、カラム内に溶液を通液して、合成樹脂に吸着されたガレート型カテキン類をガレート型カテキン類溶液として回収すればよい。
【0055】
ガレート型カテキン類の回収に用いる溶液、すなわち合成樹脂に吸着されている成分を該合成樹脂から離脱させる溶液としては、エタノール、メタノール、アセトンなどの有機溶媒、或いは当該有機溶媒と水との混合溶液(例えば30~80%エタノール水溶液、30~80%メタノール水溶液、30~80%アセトン水溶液など)を挙げることができる。
この際、有機溶媒、或いは有機溶媒と水との混合溶液は、構造体の容量の1~20倍、特に3倍量以上を用いることが好ましい。
【0056】
<混合工程>
混合工程では、前記EGC・EC溶液と、前記ガレート型カテキン類溶液とを混合して、本緑茶組成物Bを調製することができる。
この際、前記EGC・EC溶液と、前記ガレート型カテキン類溶液とをそれぞれ全量混合するようにしてもよいし、また、両者の比率を調整して混合するようにしてもよい。
【0057】
<本緑茶組成物B>
本製造方法Bにより、茶を抽出して得られる成分からカフェイン等を低減乃至除去した成分を含む本緑茶組成物Bを得ることができる。
【0058】
本緑茶組成物Bは、ガレート型カテキンを20.0~80.0質量%含有し、非ガレート型カテキン20.0~80.0質量%含有し、カフェイン含有量が1.0質量%未満である緑茶組成物とすることができる。
【0059】
本緑茶組成物BのEGC含有量は10.0~80.0質量%、中でも20質量%以上或いは70質量%以下、その中でも30質量%以上或いは60質量%以下とすることができる。
【0060】
本緑茶組成物BのEC含有量は1.0~50.0質量%、中でも10.0質量%以上或いは40.0質量%以下、その中でも20.0質量%以上或いは30.0質量%以下とすることができる。
【0061】
本緑茶組成物Bのカフェイン含有量は1.0質量%未満、中でも0.5質量%未満、その中でも0.1質量%未満とすることができる。
【0062】
本緑茶組成物Bにおいて、EGC及びECの合計含有量に対するカフェイン含有量の比率(カフェイン/(EGC+EC))が5.0未満、中でも1.0未満、その中でも0.1未満とすることができる。
【0063】
本緑茶組成物Bのアミノ酸類含有量は0.01~10.0質量%、中でも0.02質量%以上或いは3.0質量%以下、その中でも0.03質量%以上或いは1.0質量%以下とすることができる。
【0064】
(その他の含有物)
本緑茶組成物Bは、ガレート型カテキンなどの上記成分以外の茶抽出成分を含んでいてもよい。
【0065】
<用途>
本緑茶組成物A及びBは、カフェインが少なく、且つ、所望するカテキン類を含有しているから、様々な用途に用いることができる。
例えば、本緑茶組成物A及びBが含有するカテキン類を有効成分として医薬品、医薬部外品などの薬剤を調製することができる。具体的には経口投与剤を調製することができ、その際、技術常識に基づき配合及び剤型を調製すればよい。
剤型について言えば、液剤、錠剤、散剤、顆粒、糖衣錠、カプセル、懸濁液、乳剤、丸剤などの形態に調製することができる。
また、配合(製剤)について言えば、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、潤滑剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤などを用いて常法により製造することができる。また、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウムなどの無毒性の添加剤を配合することも可能である。
【0066】
また、本緑茶組成物A及びBを有効成分として、薬理効果を備えた健康食品・健康飲料・特定保健用食品・機能性食品、食品添加剤、その他ヒト以外の動物に対する薬剤や餌、餌用添加剤などを調製することもできる。
特に本緑茶組成物A及びBは、苦味及び渋みが低減されているため、飲食品材料や飲食品に添加して、健康食品、健康飲料、特定保健用食品、機能性食品、その他ヒト以外の動物に対する餌(飼料含む)を好適に調製することができる。
この際に配合する「飲食品材料」としては、水、炭酸、賦形剤(造粒剤含む)、希釈剤、或いは更に甘味剤、フレーバー、小麦粉、でんぷん、糖、油脂類等の各種タンパク質、糖質原料やビタミン、ミネラルなどの飲食品材料群から選ばれた一種或いは二種以上を挙げることができる。例えば、精製水や生理食塩水などに所望濃度となるように溶解してカテキン含有飲料とすることも可能である。
また、配合する「飲食品」として、現在公知の飲食品、例えばスポーツ飲料、果実飲料、乳飲料、茶飲料、野菜ジュース、乳性飲料、アルコール飲料、ゼリー、ゼリー飲料、炭酸飲料、チューインガム、チョコレート、キャンディ、ビスケット、スナック、パン、乳製品、魚肉練り製品、畜肉製品、冷菓類、菓子類、乾燥食品、各種麺類、加工食品、サプリメントなどを挙げることができる。
【0067】
さらにまた、本緑茶組成物A及びBを、練り歯磨き、口紅、リップクリーム、内服薬、トローチ、口中清涼剤、うがい薬などの各種の口腔衛生品、化粧品、医薬品等に添加することで、その風味や呈味を大きく損なうことなく茶カテキン類の生理作用を付加し、その付加価値を高めることもできる。
但し、本緑茶組成物A及びBの用途を上述した用途に限定するものではない。
【0068】
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例
【0069】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。但し、次に説明する実施例は本発明を限定することを意図するものではない。
【0070】
<実施例1>
緑茶粉末(総カテキン262mg/g、ガレート型カテキン137mg/g、非ガレート型カテキン125mg/g、EGC89mg/g、EC18mg/g、カフェイン68mg/g)5gを85℃のイオン交換水に添加して1分間撹拌し、25℃まで冷却した後、1μmフィルターでろ過し、表1に記載の液量の緑茶抽出液を得た。
メタクリル樹脂製多孔性硬質ハイドロゲル(東ソー社製「HW-40EC」、排除限界分子量10000Da、平均細径孔が5nm、粒径200μm)を充填したカラム(カラム内径2.5cm×30cm、100mL)に、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し2.1倍の液量の前記緑茶抽出液を、流速8mL/minで通液した。その後、移動相としてイオン交換水10bed(茶抽出液の通液量を含む)、続いて15%エタノール溶液を流速8mL/minで通液し、1bed毎にフラクションに分けて回収し、各フラクションのカテキン量及びカフェイン量を測定した。フラクション毎の成分量を図1に示した。
カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液を得た。このEGC・EC溶液をエバポレーターで濃縮後、凍結乾燥して緑茶組成物(サンプル)を得た。
なお、表1には、カラムに充填された合成樹脂を「樹脂」、その充填量を「樹脂量」、カラムに通液した緑茶抽出液の量を「液量」と表示している。
【0071】
<実施例2~9及び比較例1~2>
実施例1において、緑茶粉末の種類、樹脂量、通液量を表1に示すように変更した以外、実施例1と同様にして各フラクションごとのカテキン量及びカフェイン量を測定した。
また、実施例1と同様にカフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めて緑茶組成物(サンプル)を得た。
各実施例及び比較例の移動相は、樹脂量と同等の液量を1bedとし、1~10bedにはイオン交換水(茶抽出液の通液量を含む)、10bed以降には15%エタノール溶液を通液させた。
また、試験効率を上げるために2bed以上まとめて回収したサンプルも含まれ、フラクション毎の成分量は図2~11に示した通りである。
【0072】
なお、表1の「緑茶粉末C」は、総カテキン130mg/g、ガレート型カテキン2mg/g、非ガレート型カテキン128mg/g、EGC100mg/g、EC21mg/g、カフェイン70mg/gである。
【0073】
[可溶性固形分の測定]
測定装置の温度を所定の温度に調整し、測定装置(屈折計)を校正し、実施例及び比較例で得られた緑茶抽出液を測定装置のプリズム上に薄く塗布し、可溶性固形分(Bx:質量%)を測定した。
【0074】
[(Bx×液量)/樹脂量]
カラムに充填された合成樹脂の樹脂量(ml)に対する、カラムに通液する前記緑茶抽出液の可用性固形分濃度(質量%/100)をその通液量(ml)に乗じた値の比率((Brix×通液量)/樹脂量))を算出して、「(Bx×液量)/樹脂量」として示した。
【0075】
[カテキン類、カフェイン、糖類、アミノ酸類の定量]
カテキン類、カフェイン、糖類の含有量は、高速液体クロマトグラム(HPLC)を以下の条件で操作し、検量線法により定量して測定した。
【0076】
未希釈,2倍希釈,5倍希釈の標準液を用いて下記条件にてHPLCにかけ、得られたクロマトグラムの各成分のピーク面積と成分濃度で検量線を作成し、それを用いて分析試料溶液中の各成分の含有量(質量%)を求めた。
なお、「カテキン類」の含有量は、EGCG、EGC、ECG、EC、GCg、GC、Cg及びCの合計含有量(質量%)であり、「ガレート型カテキン類」の含有量は、EGCG、ECG、GCg及びCgの合計含有量(質量%)であり、「非ガレート型カテキン類」の含有量は、EGC、EC、GC及びCの合計含有量(質量%)である。
「糖類」の含有量は、グルコース、フルクトース、スクロース及びマルトースの合計含有量(質量%)である。
また、「アミノ酸類」の含有量は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン、アルギニン、アラニン及びテアニンの合計含有量(質量%)である。
【0077】
(HPLC条件)
HPLC装置:Watersワークステーションシステム アライアンスPDAシステム
カラム:Wakosil-II 3C18 HG(3.0mm I.D.×100mm)
カラム温度:35℃
移動相A:水-アセトニトリル-りん酸(95:5:0.1)
移動相B:水-アセトニトリル-りん酸(50:50:0.1)
検出:UV 230nm
注入量:5μL
流速:0.43mL/分
グラジエントプログラム:
【0078】
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
(結果)
実施例1~9で得られた緑茶組成物におけるアミノ酸類含有量は0.03~0.30質量%であり、糖類含有量は検出限界以下であった。
【0082】
また、カラムに充填された合成樹脂に吸着されたガレート型カテキン類を回収し、カフェイン濃度が0.005質量%未満のフラクションを選択して集めてEGC・EC溶液に添加し、EGC・EC及びガレート型カテキンを含有する溶液をエバポレーターで濃縮後、凍結乾燥して緑茶組成物を得ることによって、カフェインが低減されつつ、緑茶抽出液本来のカテキン組成である緑茶組成物が得られた。
【0083】
上記実施例・比較例の結果、並びに、これまで本発明者が行ってきた試験結果から、カラムに充填された合成樹脂の体積に対し0.1~5.0倍の液量の緑茶抽出液を通液した場合、初めの幾つかのフラクション(上記実施例の場合は初めの1~8のフラクション)はカフェイン濃度0.005質量%以上である一方、その後のフラクションは全てカフェイン濃度0.005質量%未満とすることができ、カフェイン濃度が1.0質量%未満の緑茶組成物を得ることができることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11