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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】防振構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20241203BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20241203BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20241203BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F16F15/04 A
E04B1/98 E
E04F15/18 601C
E04B5/43 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020117814
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015144
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297820(JP,A)
【文献】特開2019-071013(JP,A)
【文献】特開2018-193671(JP,A)
【文献】特開平09-077481(JP,A)
【文献】特開2009-235806(JP,A)
【文献】特開2003-020817(JP,A)
【文献】特開2011-012464(JP,A)
【文献】特開2017-115323(JP,A)
【文献】実開平04-018141(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
E04B 1/98
E04F 15/18
E04B 5/43
B66F 1/00- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体と、
前記構造体の上に設けられた床部と、
前記構造体と前記床部とを連結し、前記床部を前記構造体に対して鉛直方向に変位可能に支持する支持ばねと、
前記構造体に対する前記床部の鉛直方向変位を拘束可能なロック機構と、を有し、
前記ロック機構は、前記支持ばねと並列に配置されたジャッキを有し、
前記ジャッキは、
前記構造体に固定されたシリンダ部と、
前記シリンダ部に対して上下方向に変位可能なピストン部と、を有し、
前記ロック機構は、前記ピストン部が上昇位置にあり前記床部に接触すると前記床部の前記構造体に対する鉛直方向変位を拘束し、前記ピストン部が下降位置にあり前記床部から離れると前記床部の前記構造体に対する鉛直方向変位を可能にし、
前記ピストン部が前記床部に接触すると、前記床部は固定床となり、
前記ピストン部が前記床部から離れると、前記床部は浮き床となり、
前記固定床または前記浮き床に切替可能に構成されており、
前記床部に鉛直振動が想定される場合は前記浮き床として使用し、
前記床部に鉛直振動が想定されない場合は前記固定床として使用することを特徴とする防振構造。
【請求項2】
前記ジャッキは、遠隔操作可能な電動式のジャッキであることを特徴とする請求項1に記載の防振構造。
【請求項3】
ロック機構は、前記ピストン部と前記床部とが接触したことを検知可能なセンサを有し、前記センサが前記ピストン部と前記床部とが接触したことを検知すると、前記ピストン部の上昇を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の防振構造。
【請求項4】
前記ジャッキは、ウォームホイールを回転させるウォームねじと、前記ウォームホイールを介して前記ウォームねじの回転が伝達されるねじ軸と、を有し、前記ねじ軸が前記ピストン部となるスクリュージャッキであり、
前記ねじ軸は、台形ねじであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の防振構造。
【請求項5】
前記ジャッキは、ウォームホイールを回転させるウォームねじと、前記ウォームホイールを介して前記ウォームねじの回転が伝達されるねじ軸と、を有し、前記ねじ軸が前記ピストン部となるスクリュージャッキであり、
前記ねじ軸は、ボールねじであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の防振構造。
【請求項6】
前記ジャッキは、油圧ジャッキであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の防振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽ライブホールやダンススタジオ等の施設では、多人数客の屈伸運動による鉛直振動(いわゆるタテノリ振動)が生じることがあり、これに対応するため当該部分の床を構造躯体と絶縁した浮き床とする防振構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような防振構造では、構造躯体を部分的に凹ませ、凹ませた凹部にばね支持された浮き床を設けている。
浮き床は、ばねの変位により、構造躯体に対して鉛直方向に相対変位可能に構成されている。
【0003】
加振力に対する反力の倍率が「反力低減比」である。浮き床の固有振動数fに対する加振振動数が大きいほど反力低減比は小さくなる(防振効果が高くなる)ことから、浮き床の重量を増したりばね剛性を小さくしたりすればよいが、重量を増すとコストアップになり、ばね剛性を小さくすると所謂フカフカばね状態になってしまう問題がある。そのため、実用化されている防振構造の浮き床では厚さ1m程度の巨大なRC床版で床自重(m×g、gは重力加速度)を加振力の10倍以上とし、固有振動数を1Hz程度としている。これにより、通常使用時の鉛直変位は2cm程度以下に留められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-178555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような防振構造の施設をライブやダンス以外(例えば展示会やスポーツイベント等)に使用する場合は、床部の鉛直変位はない方が望ましく固定床にしたいというニーズがある。このように、施設の利用目的により床部を防振効果の高い浮き床にしたり、鉛直変位しない固定床にしたりと任意に切り替えできる仕組みが望まれている。浮き床を支持する支持ばねを手動でロックして(支持ばねを剛にして)固定床とすることが考えられるが、浮き床の下部のピット内ですべての支持ばねを手動でロックする作業は手間がかかり現実的でない。
【0006】
本発明は、床部を防振効果の高い浮き床と、鉛直変位しない固定床とに容易に切り替えることができる防振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る防振構造は、構造体と、前記構造体の上に設けられた床部と、前記構造体と前記床部とを連結し、前記床部を前記構造体に対して鉛直方向に変位可能に支持する支持ばねと、前記構造体に対する前記床部の鉛直方向変位を拘束可能なロック機構と、を有し、前記ロック機構は、前記支持ばねと並列に配置されたジャッキを有し、前記ジャッキは、前記構造体に固定されたシリンダ部と、前記シリンダ部に対して上下方向に変位可能なピストン部と、を有し、前記ロック機構は、前記ピストン部が上昇位置にあり前記床部に接触すると前記床部の前記構造体に対する鉛直方向変位を拘束し、前記ピストン部が下降位置にあり前記床部から離れると前記床部の前記構造体に対する鉛直方向変位を可能にし、前記ピストン部が前記床部に接触すると、前記床部は固定床となり、前記ピストン部が前記床部から離れると、前記床部は浮き床となり、前記固定床または前記浮き床に切替可能に構成されており、前記床部に鉛直振動が想定される場合は前記浮き床として使用し、前記床部に鉛直振動が想定されない場合は前記固定床として使用することを特徴とする。
【0008】
本発明では、ロック機構は、ピストン部が上昇位置にあり床部に接触すると構造体に対する床部の鉛直方向変位を拘束し、ピストン部が下降位置にあり床部から離れると構造体に対する床部の鉛直方向変位を可能にする。これにより、ロック機構が床部を構造体に対し鉛直方向に変位拘束すると床部は固定床になり、ロック機構が床部を構造体に対し鉛直方向に変位可能とすると床部は浮き床になる。
このように本発明に係る防振構造では、同一の床部を浮き床としても、固定床としても使用することもできる。また、ピストン部を昇降させることにより床部を浮き床と固定床とに容易に切り替えることができる。
【0009】
また、本発明に係る防振構造では、前記ジャッキは、遠隔操作可能な電動式のジャッキであってもよい。
このような構成とすることにより、床部の浮き床と固定床との切り替えを、構造体と床部との間のスペース(床部の下方のスペース)で行う必要が無く、床部の上方や床部から離れた位置から行うことができる。そのため、構造体と床部との間のスペースが暗くて狭い場合でも、このようなスペースで作業を行う必要が無い。
【0010】
また、本発明に係る防振構造では、ロック機構は、前記ピストン部と前記床部とが接触したことを検知可能なセンサを有し、前記センサが前記ピストン部と前記床部とが接触したことを検知すると、前記ピストン部の上昇を停止するようにしてもよい。
このような構成とすることにより、荷重により鉛直変位した床部を高さによらず固定床とすることができ、ジャッキのピストン部に作用する荷重は固定後に増加した分だけとなり固定前の荷重は支持ばねが負担することとなる。これにより、床部を固定床とする際に、ピストン部の位置が正位置よりも低くピストン部が床部から離れていることを防止できるとともに、ピストン部が想定以上の床部の荷重を負担することを防止できる。
【0011】
また、本発明に係る防振構造では、前記ジャッキは、ウォームホイールを回転させるウォームねじと、前記ウォームホイールを介して前記ウォームねじの回転が伝達されるねじ軸と、を有し、前記ねじ軸が前記ピストン部となるスクリュージャッキであり、前記ねじ軸は、台形ねじであってもよい。
このように、スクリュージャッキのねじ軸に台形ねじを使用することでセルフロック機能が働き、ジャッキを上下するときだけモータを駆動させればよく、それ以外はモータを駆動させなくても床部の上に作用する荷重により床部が変位することなく位置保持できる。
【0012】
また、本発明に係る防振構造では、前記ジャッキは、ウォームホイールを回転させるウォームねじと、前記ウォームホイールを介して前記ウォームねじの回転が伝達されるねじ軸と、を有し、前記ねじ軸が前記ピストン部となるスクリュージャッキであり、前記ねじ軸は、ボールねじであってもよい。
このような構成とすることにより、ねじ軸とウォームホイールとの摩擦を軽減することができ、効率よくかつ精度よくねじ軸(ピストン部)を昇降させることができる。
【0013】
また、本発明に係る防振構造では、前記ジャッキは、油圧ジャッキであってもよい。
このような構成とすることにより、効率よくピストン部を昇降させることができる。この場合、油圧ジャッキの油圧ホースに逆止弁を設けることでセルフロック機能を付与できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、床部を防振効果の高い浮き床と、鉛直変位しない固定床とに容易に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による防振構造を示す鉛直断面図である。
図2】床部を浮き床とする場合のロック機構を示す図である。
図3】床部を固定床とする場合のロック機構を示す図である。
図4】スクリュージャッキを示す斜視図である。
図5】ウォームねじおよびウォームホイールの平面図である。
図6】第2実施形態による防振構造のジャッキを示す斜視図である。
図7】第3実施形態による防振構造のジャッキを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態による防振構造について、図1図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による防振構造1は、構造体2と、構造体2の上方に設置される床部3と、構造体2と床部3との間に設けられる支持ばね4と、構造体2と床部3との間に設けられるロック機構5と、を有している。
支持ばね4は、ばね軸方向を鉛直方向とし、構造体2と床部3をと連結している。支持ばね4は、構造体2に対して床部3を鉛直方向に変位可能(振動可能)に支持している。ロック機構5は、構造体2に対する床部3の鉛直方向変位を拘束可能に構成されている。
【0017】
本実施形態による防振構造1は、例えば、大規模なホールなどの建物に採用され、床部3の上に人や物が載るように想定されている。この建物を、音楽ライブやダンス等に使用する場合には、床部3の上部で多人数客が曲に合わせて屈伸運動するなどして床部3が加振された際に、床部3に鉛直振動(いわゆるタテノリ振動)が生じる浮き床として使用する。また、この建物を展示会やスポーツイベント等に使用する場合には、床部3が鉛直振動しない固定床として使用する。
【0018】
構造体2は、例えば、基礎などで、RC造で構築されている。本実施形態では、構造体2は、上方に開口する凹部21が形成されている。構造体2は、凹部21の下側に位置する底板部22と、凹部21の側方に位置し底板部22の周縁部から上方に延びる側壁部23と、を有している。
底板部22の上面は、水平面に形成されている。底板部22の上には、支持ばね4およびロック機構5が複数設けられている。
【0019】
床部3は、平板状に形成され、板面が水平面になる向きで構造体2の凹部21に配置されている。床部3は、底板部22の上方に間隔をあけて重なって配置されている。底板部22と床部3との間には、支持ばね4およびロック機構5が設けられている。
複数の支持ばね4は、水平方向に間隔をあけて並列に設けられている。複数の支持ばね4は、底板部22と床部3とを連結している。
【0020】
ロック機構5は、支持ばね4と並列に設けられている。
ロック機構5は、ジャッキ51と、ジャッキ51に取り付けられたセンサ52と、ジャッキ51の動作を制御する制御部(不図示)と、を有している。
ジャッキ51は、複数設けられていて、複数の支持ばね4それぞれの近傍に配置されている。制御部は、複数のジャッキ51を同時に制御可能に構成されている。センサ52は、複数のジャッキ51それぞれに対して設けられている。
【0021】
ジャッキ51は、遠隔操作可能な電動式のジャッキである。ジャッキ51は、構造体2の底板部22に固定されたシリンダ部53と、シリンダ部53に対して鉛直方向に変位可能(昇降可能)なピストン部54と、を有している。
本実施形態では、底板部22の上にRCの立ち上がり部24が設けられ、この立ち上がり部24には、上方に開口する孔部25が設けられている。シリンダ部53は、軸線方向を鉛直方向とする向きで、下部側が孔部25に挿入されている。
【0022】
図2に示すように、ピストン部54の上端面には、プレート56が取り付けられ、その上に不陸対応のゴムシート57が取り付けられている。
プレート56は、平板状の例えば鋼板などで、板面が水平面になる向きでピストン部54の上端面に取り付けられている。プレート56は、平面視形状がピストン部54の平面視形状よりも大きく形成され、周縁部がピストン部54の周縁部よりも外方に突出している。
ゴムシート57は、例えば厚さが10mm程度のシート状に形成され、板面が水平面になる向きでプレート56の上面に取り付けられている。ゴムシート57は、プレート56の周縁部を除く中央部分に取り付けられている。
【0023】
ピストン部54は、軸線方向を鉛直方向とする向きでシリンダ部53に鉛直方向に変位可能に挿入されている。ピストン部54は、図2に示すように、変位可能な範囲における上部側の上昇位置では上端部(ゴムシート57)が床部3の下面に接触し、図3に示すように、上昇位置よりも下方の下降位置では上端部(ゴムシート57)が床部3の下面から離れる。
【0024】
ロック機構5は、ピストン部54が上昇位置にあり床部3に接触すると、床部3を構造体2に対し鉛直方向に変位拘束し(図2参照)、ピストン部54が下降位置にあり床部3から離れると、床部3を構造体2に対し鉛直方向に変位可能とする(図3参照)ように構成されている。
ロック機構5が床部3の構造体2に対する鉛直方向変位を拘束すると、床部3は固定床になり(図2参照)、ロック機構5が床部3の構造体2に対する鉛直方向変位を可能とすると床部3は浮き床になる(図3参照)。
本実施形態では、床部3が固定床になった場合には、その後に加わる床部3および床部3の上の人や物の荷重をピストン部54が負担することとなる。
【0025】
図4に示すように、ジャッキ51は、スクリュージャッキ55である。スクリュージャッキ55(ジャッキ51)は、ウォームホイール551と、ウォームホイール551を回転させるウォームねじ552と、ウォームホイール551を介してウォームねじ552の回転が伝達されるねじ軸553と、これらを収容して支持するハウジング554と、を有している。
ハウジング554がジャッキ51のシリンダ部53に相当し、ねじ軸553がジャッキ51のピストン部54に相当する。ハウジング554は、底板部22の立ち上がり部24に固定されている。
【0026】
図4に示すように、ウォームねじ552は、外周面にネジ552aが形成された棒状のネジである。ウォームねじ552は、水平方向に延びる向きに配置される。すなわち、ウォームねじ552の軸線は水平方向に延びる水平軸線である。
ウォームねじ552は、モータ6に接続され、モータ6の駆動により軸線回りに回転する。モータ6の操作は遠隔操作可能である。ウォームねじ552は、ハウジング554に対して軸線回りに回転可能であるが、軸線方向の変位は拘束されている。
【0027】
ウォームホイール551は、中央部に孔部551aを有する円筒状に形成されている。ウォームホイール551は、外周面および内周面それぞれにネジ551b,551cが形成されている。ウォームホイール551は、軸線が鉛直方向に延びる向きに配置される。すなわち、ウォームホイール551の軸線は鉛直軸線である。
ウォームホイール551の外周面のネジ551bは、ウォームねじ552のネジ552aと螺合している。ウォームホイール551は、ハウジング554に対して軸線回りに回転可能であるが、軸線方向の変位は拘束されている。
【0028】
ねじ軸553は、外周面にネジ553aが形成された棒状のネジである。ねじ軸553のネジ553aは、台形ねじである。ねじ軸553は、鉛直方向に延びる向きに配置される。すなわち、ねじ軸553の軸線は鉛直方向に延びる鉛直軸線である。
ねじ軸553は、ウォームホイール551の孔部551aに挿通され、ウォームホイール551と同軸に配置されている。ねじ軸553の外周面のネジ553aは、ウォームホイール551の内周面のネジ551cと螺合している。
ねじ軸553は、ハウジング554に対して軸線方向に移動可能であるが、軸線回りの回転は拘束されている。
【0029】
このようなスクリュージャッキ55は、モータ6を駆動すると、図5に示すように、ウォームねじ552が水平軸線回りに回転すると、これにかみ合うウォームホイール551が鉛直軸回りに回転する。このとき、ウォームねじ552の回転数(回転速度)に比較するとウォームホイール551の回転数(回転速度)が極めて小さいため、このウォームホイール551にはウォームねじ552の数十倍ものトルクが生じる。
図4に戻り、ウォームホイール551が鉛直軸回りに回転すると、鉛直軸線回りの回転が拘束されたねじ軸553が鉛直方向に移動する。すなわち、ねじ軸553は、ピストン部54であるため、モータ6を駆動させると、ピストン部54が昇降する。
【0030】
図2図3に示すように、センサ52は、ピストン部54の上端部(ゴムシート57)が床部3に接触したことを検知可能に構成されている。
センサ52は、ピストン部54の上端部に設けられたプレート56の側方に取り付けられている。センサ52は、公知のマイクロスイッチで、外力によって押圧されるレバー521を有している。センサ52は、レバー521が押圧された押圧姿勢になるとスイッチがONになり、レバー521が押圧されていない初期姿勢になるとスイッチがOFFになる。
センサ52は、ピストン部54とともに上昇する。このため、図2に示すように、センサ52は、ピストン部54が上昇位置にあると、レバー521が床部3の下面に取り付けられたステンレスプレート31に接触して押圧姿勢になりスイッチがONになる。また、図3に示すように、センサ52は、ピストン部54が上昇位置よりも下側の下降位置にあると、レバー521がステンレスプレート31から離れた初期姿勢になりスイッチがOFFになる。
【0031】
上述しているように、本実施形態では、センサ52(マイクロスイッチ)のレバー521は、直接床部3の下面に接触せず、床部3の下面に取り付けられたステンレスプレート31に接触する。本実施形態では、ピストン部54が上昇し、ピストン部54の上端部のゴムシート57が床部3の下面に接触した後に、センサ52のレバー521がステンレスプレート31に接触して押圧姿勢になるようにセンサ52の位置が調整されている。
センサ52は、スイッチがONになることでピストン部54が床部3に接触したことを検知し、スイッチがOFFになることでピストン部54が床部3から離れたことを検知する。
【0032】
制御部は、センサ52の検知信号を受信可能に構成されている。制御部は、ピストン部54を上昇させる制御中に、ピストン部54が床部3に接触したことを検知した信号を受信すると、ピストン部54の上昇を停止させるように制御する。
ピストン部54を上昇させる制御は、床部3の上に展示物など積載物を積載する前に行うことが望ましい。また、床部3からジャッキ51に作用する荷重は、床部3の自重の1/10以下とすることが望ましい。
【0033】
次に、上記の本実施形態による防振構造1の作用・効果について説明する。
上記の本実施形態による防振構造1では、ロック機構5は、ピストン部54が上昇位置にあると床部3に接触して床部3の構造体2に対する鉛直方向変位を拘束し、ピストン部54が下降位置にあると床部3から離れて床部3の構造体2に対する鉛直方向変位を可能とする。そして、ロック機構5が床部3の構造体2に対する鉛直方向変位を拘束すると床部3は固定床になり、ロック機構5が床部3の構造体2に対する鉛直方向変位を可能にすると床部3は浮き床になる。
このように本実施形態による防振構造1では、同一の床部3を浮き床としても固定床としても使用することもできる。また、ピストン部54を昇降させることにより床部3を浮き床と固定床とに容易に切り替えることができる。
【0034】
また、床部3の浮き床と固定床とに切り替える作業は容易に行うことができ、防振構造1が採用された建物で開催されるイベントの開催前に行えばよいため、ジャッキ51を高速作動させる必要はない。そのため、モータ6の能力が小さくても浮き床と固定床との切り替えが可能になり、切り替え作業をローコストで行うことができる。
また、本実施形態の防振構造1は、既存の床部に対してロック機構5を追加すれば構築することができるため、既存構造物の床部に対しても容易に採用することができる。
【0035】
また、本実施形態による防振構造1では、ジャッキ51は、遠隔操作可能な電動式のジャッキである。
このような構成とすることにより、床部3の浮き床と固定床との切り替えを、構造体2と床部3との間のスペースで行う必要が無く、床部3の上方や床部3から離れた位置から行うことができる。そのため、構造体2と床部3との間のスペースが暗くて狭い場合でも、このようなスペースで作業を行う必要が無い。
【0036】
また、本実施形態による防振構造1では、ロック機構5は、ピストン部54と床部3とが接触したことを検知可能なセンサ52を有し、センサ52がピストン部54と床部3とが接触したことを検知すると、ピストン部54の上昇を停止するように構成されている。
このような構成とすることにより、床部3を固定床とする際のピストン部54の位置を床部3の上に載荷される重量に関わらず適切に制御することができる。これにより、床部3を固定床とする際に、ピストン部54が床部3から離れていることを防止できるとともに、ピストン部54が想定以上の床部3の荷重を負担することを防止できる。
【0037】
また、本実施形態による防振構造1では、ジャッキ51は、ウォームホイール551を回転させるウォームねじ552と、ウォームホイール551を介してウォームねじ552の回転が伝達されるねじ軸553と、を有し、ねじ軸553がピストン部54となるスクリュージャッキ55である。そして、ねじ軸553の外周面のネジ553aは、台形ねじである。
このように、スクリュージャッキ55のねじ軸553のネジ553aに台形ねじを使用することでセルフロック機能が働き、ジャッキ51を上下するときだけモータ6を駆動させればよく、それ以外はモータ6を駆動させなくても床部3の上に作用する荷重により床部3が変位することなく位置保持できる。
【0038】
また、ねじ軸553(ピストン部54)のネジ553aに使用される台形ねじは、ねじ効率が低いためストローク内のどこにあってもセルフロック機能(自己保持機能)が働く。これは、ねじの摩擦が大きいため、ジャッキ51に荷重が作用しても逆作動(荷重によりねじが逆回転)するおそれがないということである。そのため、ジャッキ51に作用する荷重が変化してもジャッキ51は変位せず、床部3の高さによらず鉛直方向に移動することなく荷重支持できるというメリットが得られる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
第2実施形態による防振構造では、図6に示すように、ロック機構5Bのジャッキ51Bにスクリュージャッキ55Bを使用しており、ねじ軸553Bがボールねじである。ねじ軸553Bの外周面のねじ553Baとウォームホイール551Bの内周面のネジ551Bcとの間にボール555が設けられている。
第2実施形態では、ねじ軸553Bの外周面のネジ553Baは、台形ねじではない。
ロック機構5Bが設けられる位置、ロック機構5Bの作用は第1実施形態のロック機構5と同様である。シリンダ部は図中に53Bで示す。
【0040】
第2実施形態による防振構造では、上記の第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、ジャッキ51Bのねじ軸553Bがボールねじであるため、ねじ軸553Bとウォームホイール551Bとの摩擦を軽減することができ、効率よくかつ精度よくねじ軸553B(ピストン部54B)を昇降させることができる。
また、ボールねじは、ねじ効率が高いため、ロスが小さくなりモータ6の負荷を小さくすることができる。
【0041】
なお、ボールねじは、ねじ効率が高いため、ねじ軸553Bに作用する荷重によりウォームねじ552Bが回転し、ねじ軸553Bが移動して(下方に沈んで)しまい、セルフロック機構が働かない場合がある。このため、別途、ウォームねじ552Bの回転を防止するブレーキ機構を追加することが好ましい。
【0042】
(第3実施形態)
第3実施形態による防振構造では、図7に示すように、ロック機構5Cのジャッキ51Cにスクリュージャッキではなく、油圧ジャッキ7を使用している。
油圧ジャッキ7(ジャッキ51C)は、油圧ポンプ71を作動させてピストン部54Cを上昇させ、油圧ポンプ71と油圧ジャッキ7とを連結するホース72に逆止弁73を設けることでセルフロック機構とし、ホース72に設けた電磁弁74(リリーフ弁)を作動することでピストン部54Cを下降させるように構成されている。
【0043】
ジャッキ51Cのピストン部54Cを上昇させるときは、油圧ポンプ71のモータ76を駆動させてタンク77の油を逆止弁73を介して油圧ジャッキ7に送る。油圧ジャッキ7に設けたリミットスイッチがONになる(ジャッキ51Cが床部3に接触する)と油圧ポンプ71を停止する。油圧ポンプ71を停止しても逆止弁73により油が逆流しないため、ジャッキ51は荷重を保持したまま移動しない。
ジャッキ51のピストン部54を下降させるときは、電磁弁74(リリーフ弁)を開いて油をタンク77に戻す。
ロック機構5Cが設けられる位置、ロック機構5Cの作用は第1実施形態のロック機構5と同様である。シリンダ部は図中に53Cで示す。
【0044】
第3実施形態による防振構造では、上記の実施形態と同様の効果を奏するとともに、効率よくピストン部54Cを昇降させることができる。第3実施形態による防振構造1では、ホース72に逆止弁73を設けることで、セルフロック機構を付与できる。
【0045】
以上、本発明による防振構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、床部は、構造体2の凹部21に設置され、側方に構造体2の側壁部23が設けられているが、構造体2の上に配置され、側方に側壁部23が設けられていなくてもよい。
また、上記の実施形態では、ジャッキ51は、遠隔操作可能な電動式のジャッキであるが、手動式のジャッキ51であってもよい。
また、上記の実施形態では、ジャッキ51は、複数の支持ばね4それぞれの近傍に配置されているが、必ずしも複数の支持ばね4それぞれの近傍に配置されている必要はない。また、ジャッキ51や支持ばね5の数は、適宜設定されてよい。
【符号の説明】
【0046】
1 防振構造
2 構造体
3 床部
5,5B,5C ロック機構
51,51B,51C ジャッキ
52 センサ
53 シリンダ部
54,54B,54C ピストン部
55,55B スクリュージャッキ
551,551B ウォームホイール
553,553B ねじ軸
555 ボール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7