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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】集電装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 39/00 20060101AFI20241203BHJP
   B66C 13/12 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01R39/00
B66C13/12 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020166203
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057778
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】506002823
【氏名又は名称】古河ユニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雅人
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-060976(JP,A)
【文献】特表2008-526262(JP,A)
【文献】特開2009-096560(JP,A)
【文献】特開昭57-158978(JP,A)
【文献】米国特許第04380341(US,A)
【文献】実公昭48-036667(JP,Y1)
【文献】特表2020-525230(JP,A)
【文献】特開2015-082461(JP,A)
【文献】実開昭63-143884(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/00-39/64
H02K 13/00-13/14
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に収容され、且つ前記筐体と相対回転可能な回転部材と、
前記回転部材に取り付けられて前記筐体に収容され、且つ前記回転部材と共に回転するスリップリングと、
前記筐体に固定されて収容され、且つ前記スリップリングに接触するブラシと、
前記スリップリングの前記ブラシと接触する面のうち、前記ブラシと異なる位置で前記スリップリングと接触するように前記筐体に収容された氷着防止部材と、を備える集電装置。
【請求項2】
筐体に収容され、且つ前記筐体と相対回転可能な回転部材と、
前記回転部材に取り付けられて前記筐体に収容され、且つ前記回転部材と共に回転するスリップリングと、
前記筐体に固定されて収容され、且つ前記スリップリングに接触するブラシと、
前記ブラシと異なる位置で前記スリップリングと接触するように前記筐体に収容された氷着防止部材と、
前記スリップリングと共に前記氷着防止部材を挟み、且つ前記筐体に収容される押さえ部材と、を備え、
前記押さえ部材は、前記ブラシが貫通するブラシ貫通孔を有する集電装置。
【請求項3】
無負荷の状態における前記氷着防止部材の厚さは、前記スリップリングと前記押さえ部材との距離よりも大きい請求項に記載した集電装置。
【請求項4】
前記氷着防止部材は、前記押さえ部材に固定されている請求項又は請求項に記載した集電装置。
【請求項5】
無負荷の状態における前記氷着防止部材の厚さと、前記押さえ部材の厚さとを合計した厚さは、前記筐体のうち前記スリップリングと対向する部分とスリップリングとの距離よりも大きい請求項に記載した集電装置。
【請求項6】
前記押さえ部材は、前記筐体に固定されている請求項から請求項のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【請求項7】
無負荷の状態における前記氷着防止部材の厚さは、前記筐体のうち前記スリップリングと対向する部分とスリップリングとの距離よりも大きい請求項から請求項6のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【請求項8】
前記氷着防止部材は、多孔質構造で形成されている請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【請求項9】
前記氷着防止部材は、吸湿性を有する請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【請求項10】
前記スリップリングの前記ブラシが接触する面に、メッキ加工が施されている請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【請求項11】
複数の前記スリップリングを備え、
複数の前記スリップリングは、互いに径が異なり、且つ間隔を空けて同軸に配列されている請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【請求項12】
複数の前記スリップリングを備え、
複数の前記スリップリングは、互いに同径であり、且つ同軸に配列されている請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【請求項13】
前記回転部材は、信号の伝送及び電力の供給のうち少なくとも一方を行うケーブルが巻かれたケーブルリールを含み、
前記スリップリングは、前記ケーブルリールと共に同軸で回転する請求項1から請求項12のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【請求項14】
前記氷着防止部材は、前記スリップリングと対向する部分がスリップリングと全面的に密接して接触する請求項1から請求項13のうちいずれか1項に記載した集電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部においてスリップリングにブラシが接触しながら回転する集電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両搭載型等のクレーンは、伸縮するブームの長さを検出するブーム長検出装置と、作業中におけるクレーンの転倒を未然に防止するモーメントリミッタを備える。モーメントリミッタは、ブーム長検出装置が検出したブームの長さを用いて、クレーンの作業半径を演算し、作業中におけるクレーンの転倒を未然に防止するための制御を行う。
ブーム長検出装置は、ブームが伸長した長さを検出するために、ケーブルを巻いたケーブルリールと、電線を用いて形成されたケーブルを備える。ケーブルを形成する電線は、ケーブルの長さを示す信号の伝送に加え、吊荷の質量を検出するロードセルの荷重信号を出力する信号の伝送や、ブームの先端に取り付けられたセンサ類への電力の供給等に用いられる。
【0003】
信号の伝達や電力の供給を行うために、ブーム長検出装置の内部には、ケーブルリールと共に回転するスリップリングと、スリップリングと常に接触するブラシを備える集電装置が配置されている。ブラシは、信号を伝送するためのコネクタや、センサ類へ電力を供給するためのコネクタとして機能する。そのため、ケーブルリールが連続して回転する状況であっても、通信の伝送や電力の供給が継続して行われる。
ところで、寒冷地等、極寒の屋外でクレーンを使用する場合、クレーンを停止させている夜間(深夜)等の時間帯には、例えば、気温が-20[℃]を下回ることがあり、クレーンが低温環境に置かれることとなる。したがって、日中に、スリップリングの周辺へ湿気を帯びた空気が滞留し、日が暮れて気温が低下すると、湿気を帯びた空気が、スリップリングの表面に結露を発生させる状況が発生する。さらに、気温が0[℃]を下回ると、スリップリングの表面に発生した結露が氷となって、スリップリングの表面を覆う状況が発生する。
【0004】
そして、スリップリングの表面を覆った氷が溶けていない状態で、屋外等の低温環境でクレーンを使用する場合、回転するブラシがスリップリングの表面を覆った氷に乗り上げ、通信の伝送や電力の供給が断絶して、クレーンに作動不良が発生するおそれがある。
寒冷地における作動不良を防止する技術としては、例えば、特許文献1に開示されているように、クレーンが備える電装品や電気機器にヒーターを取り付け、クレーンを使用する前にヒーターを加熱させることで、安定して作動させる技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】ロシア国特許第2523870号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、スリップリングの表面を覆った氷が溶けるまでに時間を要するため、クレーンを使用する前に、暖気運転の時間を必要十分に要することとなる。したがって、暖気運転に要する時間によって、作業を迅速に開始することが困難となるという問題が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を鑑み、寒冷地等の低温環境において、作業を開始するまでに要する時間を短縮することが可能な、集電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る集電装置は、回転部材と、スリップリングと、ブラシと、氷着防止部材とを備える。回転部材は、筐体に収容され、且つ筐体と相対回転可能である。スリップリングは、回転部材に取り付けられて筐体に収容され、且つ回転部材と共に回転する。ブラシは、筐体に固定されて収容され、且つスリップリングに接触する。氷着防止部材は、ブラシと異なる位置でスリップリングと接触するように筐体に収容されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明であれば、寒冷地等の低温環境において、作業を開始するまでに要する時間を短縮することが可能な、集電装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】集電装置を備えたクレーン搭載車両の左側面図である。
図2】ブーム長検出装置を備えるクレーンの斜視図である。
図3】ブーム長検出装置の構成を示す分解斜視図である。
図4】メータ側筐体の構成を示す図である。
図5】押さえ部材の構成を示す図である。
図6】氷着防止部材と押さえ部材の構成を示す図である。
図7】変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る集電装置を備える作業車両の一実施形態であるクレーン搭載車両について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚さと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0012】
(実施形態)
(構成)
図1に示すように、集電装置を備えるクレーン搭載車両100は、荷台101と、運転室102と、シャーシフレーム103と、クレーン200を備える。
実施形態では、図1に示すように、クレーン搭載車両100を、トラックとした場合について説明する。なお、以降の説明及び図面では、クレーン搭載車両100が前進する方向(シフトがDレンジ等に選択されている状態で走行する方向)を、「前方」と記載する場合がある。同様に、以降の説明及び図面では、クレーン搭載車両100が後退する方向(シフトがRレンジに選択されている状態で走行する方向)を、「後方」と記載する場合がある。また、以降の説明及び図面では、「左側」を、クレーン搭載車両100を運転する運転者における左側とし、「右側」を、クレーン搭載車両100を運転する運転者における右側とする。したがって、以降の説明及び図面では、「左側面視」を、クレーン搭載車両100を運転する運転者を左側から見た視点とし、「右側面視」を、クレーン搭載車両100を運転する運転者を右側から見た視点とする。
【0013】
荷台101には、例えば、クレーン200によって吊り下げる荷物(建材等)を載せる。
運転室102には、クレーン搭載車両100の運転者等が座る。
シャーシフレーム103は、クレーン搭載車両100の骨格を構成する。
クレーン200は、シャーシフレーム103の上に搭載されている。
また、クレーン200は、ベース201と、コラム202と、ブーム203と、フック204と、各種アクチュエータ(図示略)を備える。
ベース201は、角筒状に形成されており、アウトリガ205を備える。
コラム202は、ベース201の上へ旋回自在に設けられている。
ブーム203は、伸縮式の多段ブーム(多段伸縮ブーム)であり、コラム202の上端部へ起伏自在に取り付けられている。
【0014】
ワイヤロープ206は、基端側からコラム202に設けられたウインチ(図示略)に巻かれている。また、ワイヤロープ206の先端側は、フック204内の図示しない滑車に掛け渡され、ブーム203の先端部に固定されている。これにより、フック204は、ブーム203の先端部から吊り下げられている。
各種アクチュエータは、コラム202(ブーム203)の旋回、ブーム203の起伏と伸縮、ウインチによるフック204の巻上げ、巻下げ、アウトリガ205の伸縮を行うためのアクチュエータを含む。また、各種アクチュエータは、クレーン搭載車両100が備えるエンジンのパワーテイクオフ(PTO)に連結して駆動される油圧ポンプから、コントロールバルブを介して個別に圧油が供給されることにより作動する。
【0015】
多段伸縮ブームであるブーム203は、例えば、図2に示すように、多段化された入れ子式構造の3段ブームである。
また、ブーム203は、基端ブーム203aと、中間ブーム203bと、先端ブーム203cを備える。
基端ブーム203aは、ブーム203の基端を形成しており、コラム202に取り付けられている。
中間ブーム203bは、基端ブーム203aへ伸縮可能に収容されている。先端ブーム203cは、中間ブーム203bへ伸縮可能に収容されている。
【0016】
また、図2に示すように、ブーム203は、ブーム長検出装置300を備える。
ブーム長検出装置300は、集電装置1と、ケーブル(検出コード)2と、ポテンショメータ3を備える。
集電装置1は、図3に示すように、筐体10と、ケーブルリール20と、複数のスリップリング30と、複数のブラシ40と、氷着防止部材50と、押さえ部材60を備える。
【0017】
(筐体)
筐体10は、先端ブーム203cの内部において、先端ブーム203cを形成する板状の部材に取り付けられている。なお、図2では、説明のために、先端ブーム203cの一部を切り欠いて図示することで、先端ブーム203cの内部に配置されている筐体10を示している。
また、筐体10は、ドラム側筐体11と、メータ側筐体12を組み合わせることで形成されている。
ドラム側筐体11は、リール収容部11aと、ドラム側フランジ部11bを有する。
リール収容部11aは、一方の端部を閉塞した円筒形状に形成されている。
ドラム側フランジ部11bは、リール収容部11aの開口端(他方の端部)と連続しており、円環状に形成されている。ドラム側フランジ部11bの外径(直径)は、リール収容部11aの外径(直径)よりも大きい。
【0018】
メータ側筐体12は、図3及び図4に示すように、メータ収容部12aと、メータ側フランジ部12bと、突起軸部12cを有する。
メータ収容部12aは、一方の端部を閉塞した円筒形状に形成されている。
また、メータ収容部12aの側面からは、先端ブーム203cに配置されたセンサ類(不図示)に接続する信号線4が突出している。なお、図2では、信号線4の図示を省略している。
【0019】
メータ側フランジ部12bは、メータ収容部12aの開口端(他方の端部)と連続しており、円環状に形成されている。メータ側フランジ部12bの外径(直径)は、例えば、ドラム側フランジ部11bの外径と同じ値とし、リール収容部11aの外径(直径)よりも大きい値とする。これにより、メータ側フランジ部12bとドラム側フランジ部11bとを同軸で組み合わせると、メータ収容部12aの開口端及びリール収容部11aの開口端は、筐体10の内部に配置される。
突起軸部12cは、円筒形状に形成されてメータ収容部12aの開口端と連続しており、メータ側フランジ部12bよりも内側に配置されている。
また、突起軸部12cの外周面には、三箇所の突起爪12dが形成されている。
三箇所の突起爪12dは、突起軸部12cの外周面から突出するブロック状に形成されており、例えば、等間隔に配置されている。
【0020】
(ケーブルリール)
ケーブルリール20は、筐体10と相対回転可能な回転部材を形成しており、ケーブルリールドラム21と、ドラム回転軸22を有する。
ケーブルリールドラム21は、円筒形状に形成されており、リール収容部11aの内部へ、回転可能に配置されている。
また、ケーブルリールドラム21の外周面(不図示)には、ケーブル2が基端側から巻かれている。すなわち、回転部材は、ケーブル2が巻かれたケーブルリール20を含む。また、ケーブルリールドラム21は、コイルスプリング等のスプリング(不図示)を内蔵しており、ケーブル2は、引っ張り力を受けていない状態では、スプリングの弾性力によって、自動でケーブルリールドラム21に巻き取られる。
ドラム回転軸22は、ケーブルリールドラム21に固定された円柱状に形成されており、ケーブルリールドラム21のうち、メータ側筐体12と対向する面において、中心から突出している。
また、ドラム回転軸22は、突起軸部12cが有する空隙部に挿入される。
【0021】
(スリップリング)
複数のスリップリング30は、円環状に形成されている。また、各スリップリング30は、ケーブルリール20に取り付けられて筐体10に収容されており、ケーブルリール20と共に回転する。
実施形態では、図3に示すように、筐体10の内部に、径が異なる三つのスリップリング30a~30cが収容されている場合について説明する。
三つのスリップリング30a~30cは、互いに隙間を空けて、同軸に配置されている。
また、スリップリング30は、ケーブルリール20と共に、ケーブルリール20と同軸で回転する。すなわち、スリップリング30の回転軸は、ケーブルリール20の回転軸と同軸である。
【0022】
(ブラシ)
ブラシ40は、メータ側筐体12に取り付けられて筐体10に収容されており、スリップリング30に接触する。
なお、スリップリング30のブラシ40が接触する面(メータ側筐体12と対向する面)には、メッキ加工が施されている。実施形態では、メッキ加工を、ニッケルメッキとした場合について説明する。
【0023】
実施形態では、図3に示すように、筐体10の内部に、三つのブラシ40a~40cが収容されている場合について説明する。
三つのブラシ40a~40cは、互いに干渉しない位置に配置されている。
各ブラシ40は、図4に示すように、装着部41と、二つの腕部42と、二つの接点部43と、二箇所の取付座部44を有する。なお、図4では、見易さを考慮して、三つのブラシ40a~40cのうち、ブラシ40bのみに、装着部41、腕部42、接点部43、取付座部44の符号を付す。
【0024】
装着部41は、平板状に形成されており、信号線4の端子(不図示)と電気的に接続した装着ねじ45を用いて、メータ側筐体12のうち、スリップリング30と対向する面に取り付けられている。
各腕部42は、例えば、ばね鋼を用いて形成されており、弾性力を有する。また、各腕部42は、長方形の板状に形成されている。
腕部42の一端は、装着部41の装着ねじ45を挟んで対向する二箇所と連続している。腕部42の他端は、メータ側筐体12からスリップリング30へ向かうにつれて、装着部41から離れる方向へ伸びている。これにより、各腕部42は、スリップリング30の径方向から見て、装着部41の厚さ方向に対して傾斜している。
【0025】
各接点部43は、腕部42の先端(他端)に取り付けられている。
また、各接点部43は、腕部42が有する弾性力によって、常に、スリップリング30へ押し付けられている。
各取付座部44は、装着部41のうち、装着ねじ45を間に挟む位置に形成されている。
また、取付座部44は、ブロック状に形成されており、装着部41よりもスリップリング30に近い側へ突出している。
【0026】
(氷着防止部材)
氷着防止部材50は、円弧状に形成された複数の部材を組み合わせて形成されている。
氷着防止部材50を形成する複数の部材は、ブラシ40と異なる位置でスリップリング30と接触するように配置されて筐体10に収容されている。
具体的に、氷着防止部材50は、スリップリング30と対向する部分が、スリップリング30と全面的に密接して接触している。すなわち、氷着防止部材50は、スリップリング30と余すところなく密接して接触するように配置されて、筐体10に収容されている。これにより、氷着防止部材50は、スリップリング30を余すところなく被覆するように、スリップリング30と接触している。
【0027】
また、氷着防止部材50は、多孔質構造で形成されている。
さらに、氷着防止部材50は、吸湿性を有する。
実施形態では、氷着防止部材50を、多孔質構造の不織布であるフェルトを用いて形成することで、氷着防止部材50の構成を、多孔質構造で形成されている構成と、吸湿性を有する構成とした場合について説明する。
無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さは、筐体10のうちスリップリング30と対向する部分とスリップリング30との距離よりも大きい。すなわち、無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さは、筐体10のうちスリップリング30と対向する部分とスリップリング30との間に配置された状態の、氷着防止部材50の厚さよりも大きい。
なお、図3には、スリップリング30の回転軸の軸方向を、双方向の矢印で示す。
【0028】
ここで、「無負荷の状態」とは、例えば、氷着防止部材50を筐体10に収容していない状態であり、氷着防止部材50に外力が加わっていない状態である。また、「無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さ」は、具体的には、「氷着防止部材50の、無負荷の状態における、スリップリング30の回転軸の軸方向に沿った長さ」である。
また、「筐体10のうちスリップリング30と対向する部分」とは、筐体10のうち、スリップリング30の回転軸の軸方向に沿って、スリップリング30と対向する部分である。さらに、「筐体10のうちスリップリング30と対向する部分とスリップリング30との距離」とは、筐体10のうち、スリップリング30の回転軸の軸方向に沿って、スリップリング30と対向する部分と、スリップリング30との、スリップリング30の回転軸の軸方向に沿った距離である。
したがって、筐体10に収容された状態の氷着防止部材50は、無負荷の状態から負荷を加えられた状態となるため、無負荷の状態への復元力を発生させることとなり、常に、スリップリング30へ押し付けられることとなる。
【0029】
(押さえ部材)
押さえ部材60は、円板状に形成されており、スリップリング30と共に氷着防止部材50を挟んだ状態で、筐体10に収容される。
また、押さえ部材60は、図5に示すように、回転軸貫通孔61と、回転軸リム部62と、複数の突起軸挿入部63と、複数のブラシ貫通孔64と、複数の爪部65を有する。
回転軸貫通孔61は、押さえ部材60の中心を貫通する孔であり、ドラム回転軸22が挿入される位置に形成されている。
回転軸リム部62は、押さえ部材60のメータ側筐体12と対向する面から突出する円筒形状に形成されており、押さえ部材60のメータ側筐体12と対向する面のうち、回転軸貫通孔61の内周面と連続している。
【0030】
複数の突起軸挿入部63は、回転軸リム部62の内周面と連続して形成された凹部であり、突起爪12dが挿入可能な形状に形成されている。また、複数の突起軸挿入部63は、三箇所の突起爪12dが挿入可能な位置に配置されている。したがって、押さえ部材60は、三箇所の突起軸挿入部63を有する。
ブラシ貫通孔64は、ブラシ40が貫通する位置及び形状に形成されている。実施形態では、図3等に示すように、押さえ部材60が、六箇所のブラシ貫通孔64を有する場合について説明する。六箇所のブラシ貫通孔64には、三つのブラシ40a~40cがそれぞれ有する合計六個の腕部42及び接点部43が貫通する。
【0031】
各爪部65は、押さえ部材60のメータ側筐体12と対向する面に形成されている。また、各爪部65は、押さえ部材60のメータ側筐体12と対向する面から突出している。実施形態では、図5等に示すように、押さえ部材60が、二箇所で一組の、合計四箇所の爪部65を有する場合について説明する。
また、一組を形成する二箇所の爪部65は、一箇所の取付座部44を間に挟む位置に形成されている。なお、図4には、合計四箇所の爪部65が二箇所の取付座部44を間に挟む位置を、符号HPを付して破線で示す。
【0032】
また、一組を形成する二箇所の爪部65が、一箇所の取付座部44を間に挟む位置は、突起軸部12cが有する空隙部に挿入されたドラム回転軸22の周方向に沿った位置に配置されている。
したがって、三箇所の突起軸挿入部63に、それぞれ、三箇所の突起爪12dを挿入することと、四箇所の爪部65が、それぞれ、二箇所の取付座部44を間に挟むことで、押さえ部材60は、メータ側筐体12に固定されている。
ここで、無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さは、スリップリング30と押さえ部材60との距離よりも大きい。すなわち、無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さは、スリップリング30と押さえ部材60との間に配置された状態の、氷着防止部材50の厚さよりも大きい。
ここで、「スリップリング30と押さえ部材60との距離」とは、「スリップリング30と押さえ部材60との、スリップリング30の回転軸の軸方向に沿った距離」である。
【0033】
また、無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さと、押さえ部材60の厚さとを合計した厚さは、筐体10のうちスリップリング30と対向する部分とスリップリング30との距離よりも大きい。すなわち、無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さと、押さえ部材60の厚さとを合計した厚さは、筐体10のうちスリップリング30と対向する部分とスリップリング30との間に配置された状態の、氷着防止部材50の厚さと押さえ部材60の厚さとを合計した厚さよりも大きい。
なお、「押さえ部材60の厚さ」とは、「押さえ部材60の、スリップリング30の回転軸と平行な長さ」である。
【0034】
したがって、筐体10に収容された状態の氷着防止部材50は、押さえ部材60によって、常に、スリップリング30へ押し付けられることとなる。さらに、押さえ部材60によってスリップリング30へ押し付けられた状態で、筐体10に収容された状態の氷着防止部材50は、無負荷の状態への復元力によって、常に、スリップリング30へ押し付けられることとなる。
押さえ部材60のスリップリング30と対向する面には、図6に示すように、接着剤等を用いて、氷着防止部材50が固定されている。したがって、氷着防止部材50は、押さえ部材60に固定されている。
【0035】
(ケーブル)
ケーブル2は、電線を用いて形成されており、リール収容部11aの内部に、繰り出し及び巻き取りが可能に収容されている。
ケーブル2の先端は、基端ブーム203aの内部に固定されている。
【0036】
(ポテンショメータ)
ポテンショメータ3は、メータ収容部12aに内蔵されており、内部に抵抗部が配置された構造を有することで、回転角度の検出器を形成している。また、ポテンショメータ3が出力した信号は、ケーブル2を介して、図外のコントローラに入力される。なお、ポテンショメータ3は、筐体10に内蔵されているが、図2では、説明のために、筐体10のうちポテンショメータ3が内蔵されている位置に、符号を付している。また、他の図面においても同様に、筐体10のうちポテンショメータ3が内蔵されている位置に符号を付す場合がある。
また、ポテンショメータ3は、ドラム回転軸22に連結されている。
したがって、ブーム203が伸縮し、ケーブル2が繰り出される、又は、巻き取られることで、ケーブルリールドラム21及びドラム回転軸22が回転すると、ポテンショメータ3の内部に配置された抵抗部の抵抗値が変化する。そして、変化した抵抗値に応じた信号が、ケーブル2を介してコントローラに入力される。
【0037】
(コントローラ)
コントローラは、ブーム203の長さを演算するプログラム等を含む所定の制御プログラムに基づいて、ポテンショメータ3から入力された信号に基づき、筐体10からケーブル2が繰り出されている長さ(ブーム203の長さ)を算出する。そして、コントローラは、算出したブーム203の長さを、モーメントリミッタ(不図示)へ出力する。モーメントリミッタは、ブーム長検出装置300が検出したブーム203の長さを用いて、クレーン200の作業半径を演算し、作業中におけるクレーン200の転倒を未然に防止するための制御を行う。
【0038】
<動作>
図1から図6を参照して、実施形態の動作を説明する。
クレーン200を低温環境で使用する場合、例えば、気温が氷点下までは下がらない日中では、筐体10の内部において、スリップリング30の周辺へ湿気を帯びた空気が滞留した状態であっても、スリップリング30に結露が発生することが抑制されている。しかし、低温環境では、日が暮れて気温が低下すると、日中にスリップリング30の周辺へ滞留した、湿気を帯びた空気が、スリップリング30の表面に結露を発生させる状況が発生する。さらに、気温が0[℃]を下回ると、スリップリング30の表面に発生した結露が氷となって、スリップリング30の表面を覆う状況が発生する可能性がある。
【0039】
ここで、実施形態では、氷着防止部材50が、ブラシ40と異なる位置でスリップリング30と接触するように、筐体10に収容されている。
このため、スリップリング30と接触する氷着防止部材50により、日中にスリップリング30の周辺へ滞留した、湿気を帯びた空気が、スリップリング30の表面に付着することが阻害される。
これにより、日が暮れて気温が低下した状況であっても、スリップリング30の表面に発生する結露を抑制することが可能となる。さらに、日中から気温が0[℃]を下回った状況であっても、スリップリング30の表面を氷が覆う状況の発生を抑制することが可能となる。
【0040】
さらに、実施形態では、氷着防止部材50のスリップリング30と対向する部分が、スリップリング30と全面的に密接して接触している。
このため、スリップリング30を余すところなく被覆する氷着防止部材50により、スリップリング30の氷着防止部材50と対向する面に、湿気を帯びた空気が付着することが阻害される。
また、実施形態では、ブラシ40と異なる位置でスリップリング30と接触する氷着防止部材50が、多孔質構造で形成されている。
このため、日中にスリップリング30の周辺へ滞留した、湿気を帯びた空気が、氷着防止部材50が有する多数の細孔へ入る。
【0041】
また、氷着防止部材50は、吸湿性を有する。
このため、日中にスリップリング30の周辺へ滞留した、湿気を帯びた空気から、氷着防止部材50によって湿気が吸収される。
そして、クレーン200を使用する前には、一般的に、ブーム203を最も短い長さまで収縮させた状態としているため、クレーン200の使用時には、クレーン200を用いた作業に応じた長さまで、ブーム203を伸長させる。
【0042】
収縮していたブーム203を伸長させると、基端ブーム203aと先端ブーム203cとの距離が長くなり、筐体10の内部でケーブルリールドラム21が回転し、ケーブルリールドラム21から繰り出されるケーブル2の長さも長くなる。
また、収縮していたブーム203を伸長させると、筐体10の内部において、ケーブルリールドラム21と共にドラム回転軸22も回転し、スリップリング30も回転する。
スリップリング30に接触しているブラシ40は、メータ側筐体12に固定されており、スリップリング30は、ブラシ40が押しつけられた状態で回転する。
【0043】
上述したように、実施形態では、スリップリング30の表面を氷が覆う状況の発生を抑制することが可能となるため、回転するブラシ40がスリップリング30の表面を覆った氷に乗り上げる状況の発生を抑制することが可能となる。これにより、ヒーター等を用いてスリップリング30を加熱せずに、クレーン200に発生する作動不良を抑制することが可能となる。
また、実施形態では、三箇所の突起軸挿入部63に、それぞれ、三箇所の突起爪12dを挿入することで、押さえ部材60がメータ側筐体12と固定されている。さらに、氷着防止部材50は、接着剤等を用いて、押さえ部材60に固定されている。このため、ブーム203を伸縮させて、ケーブルリールドラム21が回転しても、押さえ部材60と氷着防止部材50の回転が抑制されている。したがって、スリップリング30は、ケーブルリールドラム21の回転に応じて、氷着防止部材50と摺動する。
【0044】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0045】
<実施形態の作用及び効果>
実施形態の集電装置であれば、以下の作用及び効果を奏することが可能である。
【0046】
(1)筐体10に収容され、筐体10と相対回転可能な回転部材であるケーブルリール20と、ケーブルリール20に取り付けられて筐体10に収容され、且つケーブルリール20と共に回転するスリップリング30を備える。これに加え、筐体10に固定されて収容され、且つスリップリング30に接触するブラシ40と、ブラシ40と異なる位置でスリップリング30と接触するように筐体10に収容された氷着防止部材50を備える。
このため、スリップリング30と接触する氷着防止部材50により、日中にスリップリング30の周辺へ滞留した、湿気を帯びた空気が、スリップリング30の表面に付着することが阻害され、スリップリング30の表面に発生する結露を抑制することが可能となる。
【0047】
その結果、スリップリング30の表面を氷が覆う状況の発生を抑制することが可能となり、ヒーター等を用いてスリップリング30を加熱せずに、クレーン200に発生する作動不良を抑制することが可能となる。
これにより、寒冷地等の低温環境において、作業を開始するまでに要する時間を短縮することが可能な、集電装置を提供することが可能となる。
また、集電装置を、エンジンから遠く、熱が伝わりにくい位置である先端ブーム203cに取り付けた場合であっても、寒冷地等の低温環境において、作業を開始するまでに要する時間を短縮することが可能な、集電装置を提供することが可能となる。
【0048】
(2)無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さが、メータ側筐体12のうちスリップリング30と対向する部分とスリップリング30との距離よりも大きい。
その結果、メータ側筐体12が氷着防止部材50を押さえることで、氷着防止部材50とスリップリング30とが密着した状態の安定性を向上させることが可能となる。これにより、氷着防止部材50とスリップリング30との間に隙間が形成されることを抑制することが可能となる。
【0049】
(3)スリップリング30と共に氷着防止部材50を挟み、且つ筐体10に収容される押さえ部材60をさらに備える。これに加え、押さえ部材60は、ブラシ40が貫通するブラシ貫通孔64を有する。
その結果、メータ側筐体12と氷着防止部材50との間に配置した押さえ部材60により、氷着防止部材50とスリップリング30とが密着した状態の安定性を向上させることが可能となる。これにより、氷着防止部材50とスリップリング30との間に隙間が形成されることを抑制することが可能となる
【0050】
(4)無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さが、スリップリング30と押さえ部材60との距離よりも大きい。
その結果、押さえ部材60が氷着防止部材50を押さえることで、氷着防止部材50とスリップリング30とが密着した状態の安定性を向上させることが可能となる。これにより、氷着防止部材50とスリップリング30との間に隙間が形成されることを抑制することが可能となる。
【0051】
(5)氷着防止部材50が、押さえ部材60に固定されている。
その結果、氷着防止部材50を固定した押さえ部材60を、氷着防止部材50を備えていない構成の集電装置に後付けすることが可能となる。これにより、寒冷地仕様では無いクレーン200を、寒冷地仕様のクレーン200に変更することが容易となる。
また、押さえ部材60を備えていない構成と比較して、集電装置の組立が容易となる。
【0052】
(6)無負荷の状態における氷着防止部材50の厚さと、押さえ部材60の厚さとを合計した厚さが、筐体10のうちスリップリング30と対向する部分とスリップリング30との距離よりも大きい。
その結果、押さえ部材60と氷着防止部材50とが、筐体10及びスリップリング30と密着した状態の安定性を向上させることが可能となる。これにより、氷着防止部材50とスリップリング30との間に隙間が形成されることを抑制することが可能となる。
【0053】
(7)押さえ部材60が、筐体10に固定されている。
その結果、氷着防止部材50が、スリップリング30の回転等によってずれることを抑制することが可能となり、氷着防止部材50がスリップリング30と密着する状態の安定性を向上させることが可能となる。
【0054】
(8)氷着防止部材50が、多孔質構造で形成されている。
その結果、筐体10の内部において、スリップリング30の周辺へ滞留した、湿気を帯びた空気が、氷着防止部材50が有する多数の細孔へ入り、スリップリング30の表面に発生する結露を抑制することが可能となる。
【0055】
(9)氷着防止部材50が、吸湿性を有する。
その結果、筐体10の内部において、スリップリング30の周辺へ滞留した、湿気を帯びた空気から、氷着防止部材50によって湿気が吸収され、スリップリング30の表面に発生する結露を抑制することが可能となる。
【0056】
(10)スリップリング30のブラシ40が接触する面に、メッキ加工が施されている。
その結果、ブラシ40が摩耗して発生した粉等の異物が、スリップリング30に固着することを抑制することが可能となる。
【0057】
(11)スリップリング30を複数備え、複数のスリップリング30が、互いに径が異なり、且つ間隔を空けて同軸に配列されている。
その結果、複数のスリップリング30を積層した構成の集電装置と比較して、コンパクトな構成の集電装置に対し、寒冷地等の低温環境において、作業を開始するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0058】
(12)筐体10と相対回転可能な回転部材が、信号の伝送及び電力の供給のうち少なくとも一方を行うケーブル2が巻かれたケーブルリール20を含み、スリップリング30が、ケーブルリール20と共に同軸で回転する。
その結果、ブーム長検出装置300等の電気機器等に用いる集電装置に対し、寒冷地等の低温環境において、作業を開始するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0059】
(13)氷着防止部材50は、スリップリング30と対向する部分が、スリップリング30と全面的に密接して接触している。
その結果、スリップリング30を余すところなく被覆する氷着防止部材50により、スリップリング30の氷着防止部材50と対向する面に、湿気を帯びた空気が付着することが阻害される。これにより、スリップリング30の表面に発生する結露を抑制することが可能となる。
【0060】
<変形例>
(1)実施形態では、氷着防止部材50を、多孔質構造の不織布であるフェルトを用いて形成したが、これに限定するものではない。すなわち、氷着防止部材50は、例えば、多孔質構造の不織布であるナイロン不織布を用いて形成してもよい。また、吸湿性部材50は、例えば、多孔質構造ではない不織布、ポリウレタン等の合成樹脂としてのスポンジ、シリコーンを主原料とする柔軟性の高いゲル状素材、衝撃吸収素材、振動吸収素材等を用いて形成してもよい。
【0061】
(2)実施形態では、複数のスリップリング30が、互いに径が異なり、且つ間隔を空けて同軸に配列されている構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図7に示すように、複数のスリップリング30が、互いに同径であり、且つ同軸に配列されている構成(積層型の構成)としてもよい。この場合、押さえ部材60の形状は、円板状ではなく、ブラシ貫通孔64を有するリング(Cリング)形状となる。また、氷着防止部材50の形状も、ブラシ40と異なる位置でスリップリング30と接触する形状であり、Cリング形状となる。なお、積層型の構成では、図7に示すように、各スリップリング30を、例えば、円柱状に形成したブラケット70の外周面に取り付ける構成とする。
【0062】
(3)実施形態では、本発明の集電装置を車両搭載型クレーンに適用したが、この構成に限らず、スリップリング30とブラシ素材を備える集電装置を備えたものであれば、例えば、他のクレーンや、高所作業車等の他の作業車両に適用してもよい。
【0063】
(4)実施形態では、集電装置を先端ブーム203cに取り付けたが、これに限定するものではなく、集電装置を基端ブーム203aに取り付けてもよい。この場合、ケーブル2の先端は、先端ブーム203cに取り付ける。
【0064】
(5)実施形態では、氷着防止部材50のスリップリング30と対向する部分が、スリップリング30と全面的に密接して接触している構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、氷着防止部材50のスリップリング30と対向する部分の一部が、スリップリング30と全面的に密接して接触している構成としてもよい。
【0065】
<実施例>
実施形態を参照しつつ、以下、実施例1及び実施例2の集電装置を備えるクレーンと、比較例1及び比較例2の集電装置を備えるクレーンについて説明する。
【0066】
(実施例1)
実施形態と同様、スリップリングに、フェルトを用いて形成した氷着防止部材を接触させた構成の集電装置を備える構成のクレーンとした。
【0067】
(実施例2)
スリップリングに、スポンジを用いて形成した氷着防止部材を接触させた構成の集電装置を備える構成とした以外は、実施例1と同様の構成を備えるクレーンとした。
【0068】
(比較例1)
氷着防止部材を備えておらず、スリップリングとブラシに、界面活性剤を塗布した構成の集電装置を備える構成とした以外は、実施例1と同様の構成を備えるクレーンとした。
【0069】
(比較例2)
氷着防止部材を備えておらず、スリップリングとブラシに、グリスを塗布した構成の集電装置を備える構成とした以外は、実施例1と同様の構成を備えるクレーンとした。
【0070】
(性能評価、評価結果)
実施例1及び実施例2の集電装置と、比較例1及び比較例2の集電装置に対し、それぞれ、信号の伝送状態及び電力の供給状態を評価した。評価方法としては、常温(約25[℃])の環境下でクレーンを使用し、その後、ブームを収縮させた状態で、低温環境(約-20[℃])の環境下に置く。その後、ヒーター等による集電装置の加熱を行わずに、再度、常温の環境下でクレーンを使用した状況において、信号の伝送状態及び電力の供給状態を調査する方法を用いた。
そして、信号の伝送及び電力の供給が全く行われていない場合を「×」と評価した。また、信号の伝送及び電力の供給が、クレーンに作動不良が発生しない状態(90%程度)で行われた場合を「〇」と評価し、信号の伝送及び電力の供給が完全に行われた場合を「◎」と評価した。
【0071】
【表1】
【0072】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、表1に示すように、実施例1及び実施例2の集電装置は、クレーンに作動不良が発生しないことが確認された。一方、比較例1及び比較例2の集電装置は、クレーンに作動不良が発生することが確認された。
さらに、実施例1の集電装置は、実施例2の集電装置と比較して、信号の伝送状態と、電力の供給状態が良好であることが確認された。
【符号の説明】
【0073】
1 集電装置
2 ケーブル
3 ポテンショメータ
4 信号線
10 筐体
11 ドラム側筐体
11a リール収容部
11b ドラム側フランジ部
12 メータ側筐体
12a メータ収容部
12b メータ側フランジ部
12c 突起軸部
12d 突起爪
20 ケーブルリール
21 ケーブルリールドラム
22 ドラム回転軸
30 スリップリング
40 ブラシ
41 装着部
42 腕部
43 接点部
44 取付座部
45 装着ねじ
50 氷着防止部材
60 押さえ部材
61 回転軸貫通孔
62 回転軸リム部
63 突起軸挿入部
64 ブラシ貫通孔
65 爪部
70 ブラケット
100 クレーン搭載車両
101 荷台
102 運転室
103 シャーシフレーム
200 クレーン
201 ベース
202 コラム
203 ブーム
203a 基端ブーム
203b 中間ブーム
203c 先端ブーム
204 フック
205 アウトリガ
206 ワイヤロープ
300 ブーム長検出装置
HP 爪部が取付座部を間に挟む位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7