(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】回転繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A45D40/04 Z
(21)【出願番号】P 2020194612
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019217924
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205106739(CN,U)
【文献】特開2003-204823(JP,A)
【文献】特開2000-060637(JP,A)
【文献】特開2016-220916(JP,A)
【文献】実開平05-089280(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00~40/30
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の先軸と筒状の後軸とが相対回転可能に構成された軸筒と、前記軸筒内の後方に配置されて、前記先軸と前記後軸との相対回転により軸筒内を前進または後退動作するネジ棒と、前記軸筒内の前方に配置されて、前記ネジ棒の前進または後退動作に依存して、前記先軸内で軸方向に移動する棒状部材とを備えた回転繰出容器であって、
前記棒状部材は、当該棒状部材の外周を覆うホルダー内に装着されると共に、前記棒状部材の後部に位置する前記ネジ棒の前端部外周に沿って、輪環状の弾性部材が装着され、
前記ネジ棒の前進移動に押されて、前記棒状部材がホルダー内を移動することで、前記棒状部材が先軸の前端部より繰り出されると共に、前記ネジ棒の後退移動により、ネジ棒に装着された前記弾性部材が前記ホルダーの内面に圧接した状態で、前記ホルダーと共に前記棒状部材が先軸内を後退し、
前記後軸内には、前記ネジ棒に形成された雄ネジに螺合して、前記ネジ棒を軸筒内で前進または後退動作させる雌ネジを備えたネジ体が配置され、前記ネジ棒と後軸との間に弾発部材が収容され、
前記棒状部材、前記ホルダー、前記先軸の少なくとも棒状部材の収容部分は、軸方向に直交する断面が、それぞれ楕円形状または長円形状を構成し
、
前記弾性部材は、ネジ棒が前進移動するときに、ホルダーの内面に摺接してホルダー内を前進すると共に、ネジ棒の先端部でピストンを介して、棒状部材をホルダーから前方に押し出すように作用し、ネジ棒が後退移動するときには、前記弾性部材がホルダーの内面に圧接した状態で、ホルダーと共に前記棒状部材を先軸内で後退させるように動作し、
前記弾性部材はネジ棒と共に前記ホルダーの後部を閉塞していることを特徴とする回転繰出容器。
【請求項2】
前記先軸に装着されて先軸を覆うキャップが備えられ、前記先軸もしくはキャップの少なくともいずれか一方における先軸とキャップとが接する位置には、凹み空間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転繰出容器。
【請求項3】
前記棒状部材は固形棒状化粧料であって、該固形棒状化粧料は少なくとも粉体成分を60~90質量%と、固着樹脂成分と、シリコーン溶剤と、ワックス成分とを含有し、該粉体成分が顔料及び体質材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棒状化粧料、棒状筆記体、棒状塗布体等の棒状部材を容器から繰り出して使用する棒状化粧料容器、筆記具、塗布具等に利用する回転繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
回転繰出容器内に、例えば棒状化粧料を収容し、必要量の棒状化粧料を先軸の前端部から繰り出して利用するようにした各種の化粧具が提供されている。
このうち、眉毛などに化粧料を塗布する固形芯アイライナーおいては、固形芯の軸方向に直交する断面形状が楕円形状または長円形状になされたものが提案されており、これによると、固形芯の向きを変えることにより、一度に塗布される化粧料によるラインの太さを、好みに応じて選択することができる。
【0003】
この様に断面形状が楕円または長円形状の固形芯アイライナーを収容する回転繰出容器は、特許文献1および2に開示されている。
しかし、特許文献1および2に開示された回転繰出容器においては、固形芯は一方向に繰り出されるように構成されており、したがって繰り出し操作によって先軸の前端部から繰り出された固形芯を、先軸内に戻すことは不可能であった。
【0004】
一方、固形芯の断面形状が前記したように楕円または長円形状を構成するものではないものの、繰り出した固形芯を先軸内に戻すことができる回転繰出容器について提案されており、これは特許文献3に開示されている。
この特許文献3に開示された回転繰出容器によると、先軸に対して後軸を相対回転させることで、前進または後退動作をするロッドが具備され、ロッドの前進により固形芯は、ロッドに押されて先軸から繰り出される。
またロッドの後退により、ロッドの前端部が固形芯の外側に配置された内筒を牽引することで、この牽引作用により固形芯は先軸内に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-220916号公報
【文献】特開2016-220917号公報
【文献】特開2003-204823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の回転繰出容器に収容される固形芯としては、揮発性成分を含むものが多く、前記した固形芯アイライナーにおいても、溶剤等の揮発により固形芯が硬化して、機能低下を招く問題を有している。
したがって、前記した回転繰出容器内に収容される固形芯の揮発抑制の対策も備えることは、重要な課題となる。
【0007】
この発明は、前記した課題に着目してなされたものであり、回転繰出容器の先軸から繰り出された固形芯を、先軸内に戻して収容できる機能を備えると共に、揮発性成分を含む固形芯に対する揮発抑制機能(シール性)も備え、さらに先軸の前端部における固形芯の出没作用も円滑になし得る回転繰出容器を提供することを主要な目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る回転繰出容器は、筒状の先軸と筒状の後軸とが相対回転可能に構成された軸筒と、前記軸筒内の後方に配置されて、前記先軸と前記後軸との相対回転により軸筒内を前進または後退動作するネジ棒と、前記軸筒内の前方に配置されて、前記ネジ棒の前進または後退動作に依存して、前記先軸内で軸方向に移動する棒状部材とを備えた回転繰出容器であって、前記棒状部材は、当該棒状部の外周を覆うホルダー内に装着されると共に、前記棒状部材の後部に位置する前記ネジ棒の前端部外周に沿って、輪環状の弾性部材が装着され、前記ネジ棒の前進移動に押されて、前記棒状部材がホルダー内を移動することで、前記棒状部材が先軸の前端部より繰り出されると共に、前記ネジ棒の後退移動により、ネジ棒に装着された前記弾性部材が前記ホルダーの内面に圧接した状態で、前記ホルダーと共に前記棒状部材が先軸内を後退することを特徴とする。なお、弾性部材とは、ゴム、エラストマー等の粘弾性を有する材料で形成された部材であることを示す。
【0009】
この場合、一つの好ましい形態においては、前記後軸内には、前記ネジ棒に形成された雄ネジに螺合して、前記ネジ棒を軸筒内で前進または後退動作させる雌ネジを備えたネジ体が配置され、前記ネジ棒と後軸との間に弾発部材が収容された構成が採用される。
【0010】
加えて、前記棒状部材、前記ホルダー、前記先軸の少なくとも棒状部材の収容部分は、軸方向に直交する断面が、それぞれ楕円形状または長円形状を構成していることが望ましい。
【0011】
さらに、前記先軸に装着されて先軸を覆うキャップが備えられ、前記先軸もしくはキャップの少なくともいずれか一方における先軸とキャップとが接する位置には、凹み空間が形成されていることが望ましい。
【0012】
また、好ましくは前記先軸の前端部内面には、前記ホルダーの前進を阻止するストッパーが形成され、前記ホルダーが前記ストッパーに当接した状態における前記ホルダーの前端部から前記先軸の前端部までの寸法Aが、未使用状態における前記棒状部材の長さ寸法Bに対して、10%未満に設定される。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る回転繰出容器によると、先軸と後軸との間の相対回転により、軸筒内を前進または後退動作するネジ棒が備えられ、ネジ棒の前端部外周に沿って輪環状の弾性部材が装着された構成が採用される。
そして、ネジ棒の前進移動に押されて、前記棒状部材がホルダー内を移動して、棒状部材が先軸の前端部より繰り出されると共に、前記ネジ棒の後退移動により、ネジ棒に装着された弾性部材が前記ホルダーの内面に圧接した状態で、前記ホルダーと共に前記棒状部材を先軸内に後退させることができる。
【0014】
この場合、ネジ棒に装着された弾性部材はネジ棒と共に、ホルダーの後部を確実に閉塞した状態になされるので、ホルダー内の棒状部材が含む揮発性成分に対する揮発抑制機能(シール性)を十分に果たすことができる。
また、ネジ棒に装着された前記弾性部材は、ホルダーの内面に圧接した状態で後退するので、先軸から繰り出された固形芯をホルダーと共に確実に引き込む動作を実現し、これにより、先軸の前端部における固形芯の出没作用も円滑になされる回転繰出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】この発明に係る回転繰出容器にキャップを装着した状態を示し、(A)は外観図であり、(B)は軸方向に沿った断面図である。
【
図2】キャップを外して棒状部材を繰り出した状態の回転繰出容器を示した斜視図である。
【
図3】
図2に示した状態の回転繰出容器の断面図であり、(A)と(B)は互いに90度異なる面で切断した状態の軸方向に沿った断面図である。
【
図4】
図3に示す状態から棒状部材を軸筒内に後退させた状態の回転繰出容器の断面図であり、(A)と(B)は互いに90度異なる面で切断した状態の軸方向に沿った断面図である。
【
図5】棒状部材を全て使用(消費)した状態の回転繰出容器の断面図であり、(A)と(B)は互いに90度異なる面で切断した状態の軸方向に沿った断面図である。
【
図6A】先軸の単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は視点を変えた斜視図である。
【
図6B】先軸の単品構成を示し、(A)と(B)は互いに90度異なる面で切断した状態の軸方向に沿った断面図であり、(C)は(B)における鎖線で囲まれたa部分の拡大断面図である。
【
図7】ホルダーの単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は視点を変えた斜視図、(C)と(D)は互いに90度異なる面で切断した状態の軸方向に沿った断面図である。
【
図8】中軸の単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は視点を変えた斜視図、(C)は上面図、(D)は軸方向に沿った断面図である。
【
図9】ネジ棒の単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は上面図、(D)は軸方向に沿った断面図である。
【
図10】ネジ体の単品構成を示し、(A)は斜視図、(B)は視点を変えた斜視図、(C)は正面図、(D)は軸方向に沿った断面図である。
【
図11】後軸の単品構成を示し、(A)は軸方向に沿った断面図、(B)は(A)に示すE-E線より矢印方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る回転繰出容器について、容器内に収容される棒状部材として、固形芯アイライナーを用いた化粧具の実施例に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示すが、一部の図面においては紙面の都合により代表的な部分に符号を付けて、その詳細については単品構成を示す各図に付けた符号を引用して説明する。
【0017】
この発明に係る回転繰出容器は、
図1Aに示すように、筒状に形成された先軸1に対して、有底筒状に形成された後軸2が、相対回転可能に取り付けられて、軸筒3を構成している。
そして、先軸1の前方を覆うようにして、先軸1に対して有底筒状に形成されたキャップ4が、軸方向に着脱可能に取り付けられて、
図1Aの(A)に示すように、その外観は長さ方向の径がほぼ等しい円柱体を形成するように構成されている。
【0018】
前記先軸1内には、棒状部材としての固形芯アイライナー5(以下においては、単に固形芯5と標記する場合もある。)が収容されている。なお、この固形芯5は、その外周を覆うホルダー6内に装着されており、ホルダー6の一部が先軸1内に接した状態で配置されている。
そして、この実施例においては、ホルダー6の後端部には、ホルダー6の内面に接して摺動可能なピストン7が収容されており、このピストンは後述するネジ棒8に押されて、ホルダー6内の固形芯5を、先軸1の前端部から繰り出すように作用する。すなわち、このピストン7は固形芯5の後部側のシール部材としての機能も果たすものとなる。
【0019】
前記した固形芯5およびピストン7の後部には、ネジ棒8が配置されており、このネジ棒8は先軸1に対する後軸2の相対回転により、軸筒3内を前進または後退するように動作する。このネジ棒8の前進または後退動作には、後軸2内に配置されたネジ体9および先軸1の後端部に圧入されて取り付けられた中軸11が作用する。
なお、この実施例においては後で説明するとおり、前記した先軸1における固形芯5が収容される部分、固形芯5およびホルダー6、前記ピストン7およびネジ棒8の前半部は、軸方向に直交する断面が、それぞれ楕円形状を構成している。
【0020】
また、ネジ棒8の前端部外周に沿って、輪環状の弾性部材(Oリング)12が装着されており、このOリング12は、ネジ棒8が前進移動するときに、ホルダー6の内面に摺接してホルダー6内を前進すると共に、ネジ棒8の先端部でピストン7を介して、固形芯5をホルダー6から前方に押し出すように作用する。
また、ネジ棒8が後退移動するときには、前記Oリング12がホルダー6の内面に圧接した状態で、ホルダー6と共に前記固形芯5を先軸1内で後退させるように動作する。
【0021】
なお、後軸2の内周面とネジ棒8との間の空間部には、後軸2の底部(後端部)とネジ体9の後端部との間で、弾発部材(コイルバネ)13が装着されている。
この弾発部材13は、適度な重さを後軸2に与えることで、棒状部材(固形芯アイライナー)5の先端部で、眉毛にアイラインを描く際に、安定した塗布動作を与えることができるものとなる。
なお、この弾発部材に代えて、例えば金属製の重りを用いることも可能であるが、弾発部材13としてコイルバネを若干収縮させた状態で用いることで、軸方向の遊びをなくして、後軸2との間で衝突音などの騒音を発することのない安定した重りとして利用することができる。
【0022】
図6A~
図11は、
図1Aに示した回転繰出容器に用いられる各部材の単品ごとの構成をそれぞれ示しており、以下
図6A~
図11にしたがって、個々の構成について説明する。
図6Aおよび
図6Bは、先軸1の単品構成を示しており、この先軸1は後端部に円筒部1aを形成し、円筒部1aに続く前方は、径を若干縮小した小径部1bを形成している。そして、小径部1bの先端部には開口1cが形成されており、前記小径部1bの軸に直交する断面、および前記開口1cは、楕円形状になされている。
そして、小径部1bの内面から開口1cに向かって内径を縮小する段部1dが形成されており、これは先軸1内に装着されるホルダー6の前端部が係止して、ホルダー6の前進を拒むストッパーとしての機能を果たす。したがって、以下においては前記段部1dを、ストッパーと称する。
【0023】
前記円筒部1aにおける小径部1b側の内面には、環状のオーバハング部1eが形成されており、これは後で説明する中軸11が、圧入により取り付けられる際に嵌合部として利用される。また、円筒部1aの内面における180度対向する位置には、前方に向かって幅を狭くするガイド部を備えた位置決め凹部1fが、それぞれ形成されている。この一対の位置決め凹部1fは、前記中軸11が円筒部1aに圧入される際の軸回り方向の位置合わせに利用される。
なお、前記小径部1bにおける前記円筒部1aに近接した位置には、軸方向に沿って等しい内径にされた円筒状内面1gが形成されている。
【0024】
図7は、
図6Aおよび
図6Bに示した先軸1内に収容されるホルダー6の単品構成を示している。このホルダー6は楕円形状に形成されて、内部に固形芯5を収容する固形芯収容部6aと、その後端部にOリングの装着溝6bを形成した短軸状の円筒部6cを備えている。
前記Oリングの装着溝6bには、
図1Aおよび
図3~
図5に示したOリング14が装着されて、先軸1の一部に形成された前記した円筒状内面1gに摺接するように配置される。
【0025】
前記ホルダー6内に装填される固形芯5は、アイライナーとして揮発性成分を含有し、一例として揮発性シリコーン(シクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチコン他)、揮発性炭化水素(イソドデカン、軽質イソパラフィン他)等と、これらの溶剤に溶解するフィルム形成樹脂を含むものが用いられる。なお、アイライナーとして用いられる固形芯5の好ましい例については、後で説明する。
【0026】
図8は、前記した先軸1の後端部に、圧入により取り付けられる中軸11の単品構成を示している。
この中軸11は、その前端部にネジ棒挿通孔11aが形成されており、このネジ棒挿通孔11aは、後述するネジ棒8の前半部に形成された楕円形状の軸体8aが挿通できるように、同様の楕円形状または長方形状に形成されている。
【0027】
また、中軸11には前端部から後端部に向かって、周方向に突出した環状リブ11b、軸の両外側に向けて形成した一対の突起11c、Oリングの装着溝11d、周方向に突出した環状リブ11eが、順に形成されている。
前記環状リブ11bは、先軸1の円筒部1a内に形成されたオーバハング部1eに係止して、中軸11が先軸1の後端部に圧入により取り付けられて嵌合するように作用する。
【0028】
一対の突起11cは、先軸1の円筒部1a内に形成された一対の位置決め凹部1fにそれぞれ挿入されて、先軸1と中軸11との間の軸回り方向の位置合わせを行うために利用される。
さらに、Oリングの装着溝11dには、
図1Aおよび
図3~
図5に示すOリング15が装着されて、後で説明する後軸2の内周面に対して、軸回転方向で摺接される。
さらにまた、中軸11の後端部付近の周方向に突出した環状リブ11eは、中軸11の後端部に装着される後軸2の抜け止めとして作用するものとなる。
【0029】
図9は、ネジ棒8の単品構成を示している。このネジ棒8は、前半部が軸に直交する断面が楕円形状になされた楕円軸体8aを構成しており、その先端部にはOリングの装着溝8bが形成されている。この装着溝8bには
図1Aに示したように輪環状弾性部材(Oリング)12が装着される。また、ネジ棒8の後半部は、断面がほぼ正円形状に形成されて上下の両面に沿って雄ネジ8cが形成されると共に、両側面に沿って長手方向に平面部8dが形成されている。
【0030】
図10は、ネジ体9の単品構成を示しており、このネジ体9は筒状に形成されて、ネジ体9の後端部の内周面には雌ネジ9aが形成されている。この雌ネジ9aは、
図9に示すネジ棒8の雄ネジ8cに螺合するものとなる。
また、ネジ体9の前端部の外周には、複数の回り止め用リブ9bがそれぞれ軸方向に沿って形成されると共に、これらの各リブ9bは、周方向にほぼ等間隔に形成されている。
【0031】
図11は、後軸2の単品構成を示しており、この後端2は後端部が閉じて円筒状に形成されている。そして、前端部の開口に近い内周面には、複数本の縦リブ2aが、内周面に沿ってほぼ等間隔となるように形成されている。
この複数本の縦リブ2aは、前記したネジ体9の雌ネジ9aが形成された後端部側を頭にして、後軸2内に挿入したとき、ネジ体9の回り止め用リブ9bが、後軸2内の縦リブ2aに係止する。
これにより、ネジ体9は後軸2内において回り止めされた状態で、係止される。
【0032】
前記複数本の縦リブ2aの形成位置よりも、前端開口により近い位置には、内周面に突出するようにして円環状のリブ2bが形成されている。
この内周面に突出する円環状のリブ2bは、前記した中軸11の後端部に形成された環状リブ11eを、軸方向で乗り越えることで、中軸11と後軸2は抜け止めされると共に、相対回転が可能となるように連結される。
なお、前記中軸11の前端部は、先軸1に対して圧入嵌合されるので、結果として先軸1と後軸2は、相対回転が可能に構成される。
【0033】
図6A~
図11に示す各部材を用いて、
図1Aに示す回転繰出容器を組み上げるには、先ず固形芯5およびピストン7が装填されたホルダー6に、Oリング14を取り付け、先軸1内に挿入する。続いて先軸1の後端部に対して、予めOリング15を装着した状態の中軸11を圧入する。これにより、先軸ユニットが形成される。
【0034】
一方、ネジ棒8の先端部にOリング12を取り付けると共に、ネジ棒8にネジ体9を螺合させて取り付け、ネジ棒8の周囲に弾発部材(コイルバネ)13を装着した状態で、後軸2内に挿入する。これにより、ネジ体9の回り止め用リブ9bが、後軸2内の縦リブ2aに係止されて、後軸ユニットが形成される。
【0035】
後軸ユニットを構成するネジ棒8の先端部を、先軸ユニットを構成する中軸11のネジ棒挿通孔11aに通して、後軸ユニットを先軸ユニットに対して軸方向に押し込む。
これにより、後軸ユニットを構成する後軸2に形成された円環状リブ2bが、先軸ユニットを構成する中軸11の環状リブ11eを乗り越えて、先軸ユニットと後軸ユニットは直線状に連結される。
そして、先軸1に対してキャップ4を装着することで、
図1に示す回転繰出容器を組み上げることができる。
【0036】
図2および
図3は、キャップ4を外して先軸1から棒状部材としての固形芯5を繰り出した状態を示している。この様に固形芯5を繰り出すには、先軸1に対して後軸2を右回転させる。これにより、後軸2内のネジ体9も同方向に回転する。このネジ体9に螺合したネジ棒8は、前端部の楕円軸体8aが、中軸11のネジ棒挿通孔11aに挿入されて、軸回転が阻止されているので、ネジ体9の右回転に伴い、ネジ棒8は前進する。
【0037】
一方、固形芯5を収容するホルダー6の前端部は、先軸1に形成されたストッパー1dに当接して前進が拒まれるため、ホルダー6内の固形芯5は、ネジ棒8の前進に伴いピストン7を介して、ホルダー6内を前進移動する。
これにより、固形芯5の先端部は先軸1の前端部開口1cより、繰り出される。
【0038】
図4は、先軸1から繰り出された固形芯5を、先軸1内に戻した状態を示している。
この戻し操作においては、先軸1に対して後軸2を左回転させる。これにより、後軸2内のネジ体9も同方向に回転し、軸回転が阻止されたネジ棒8は、ネジ体9の左回転に伴って軸筒3内を後退する。
ネジ棒8の後退によりネジ棒8の先端部に装着された輪環状弾性部材(Oリング)12が、ホルダー6の内面に圧接した状態でホルダー6を牽引する。したがって、繰り出された固形芯5はホルダー6と共に先軸1内に後退して収容される。
【0039】
なお、
図4はネジ棒8が最も後退して、ネジ棒8の後端部が後軸2の底部に当接した状態を示している。しかし、ホルダー6も後退して中軸11の前端部に当接した状態になされるので、ネジ棒8の先端部に装着された弾性部材12は、後退したホルダー6内に位置して、ホルダー6の内面に圧接した状態を維持する。
したがって、この実施例によるとホルダー6の後端部側において、ホルダー6内の固形芯5が含む揮発性の溶剤に対する揮発抑制機能(シール性)を、十分に果たすことができるものとなる。
【0040】
なお
図5は、先軸1内に収容した固形芯5を全て使い終わった状態を示している。
すなわち、図に示すようにネジ棒8は最も前進した位置に配置され、この状態において、ピストン7は先軸1の前端開口1c付近に位置した状態になされる。
【0041】
ところで、前記した回転繰出容器内に収容される棒状部材として、固形芯アイライナーを用いて化粧具とした場合、化粧具の繰り返しの使用により、固形芯5としての化粧料(バルク)の一部が先軸1に付着する。そして、先軸1に対するキャップ4の着脱の繰り返しが加わることにより、先軸1におけるキャップ4の内面が接する位置に、バルクの一部が蓄積するという問題が発生する。
このバルクは時間経過と共に固化するために、先軸1にキャップ4が張り付いて、キャップ4の取り外しが困難になる場合が生ずる。
【0042】
前記した問題を解消するために、前記した回転繰出容器においては、先軸1とキャップ4とが接する先軸1側には、
図6Bの(C)に先軸1の一部を拡大して示したように、環状の凹み空間1hが形成されている。
すなわち、環状の凹み空間1hは、
図1Bにも示されているように、先軸1にキャップ4が装着された状態において、キャップ4の開口端部に対向する位置に形成されている。これにより、環状の凹み空間1hは、前記したバルクが入る逃げ溝として機能する。
この逃げ溝の存在により、先軸1とキャップ4との間の特に面として接する位置に、多量のバルクが蓄積するのを避けることができ、キャップ4が先軸1に張り付く問題を避けることができる。
【0043】
前記した凹み空間1hは、
図6Bの(C)に示された部分に限らず、先軸1とキャップ1の内面が接する他の位置に形成してもよい。さらに前記凹み空間は、キャップ4の内面側に形成されていてもよい。
すなわち、前記凹み空間は、先軸1もしくはキャップ4の少なくともいずれか一方における先軸1とキャップ4とが接する位置に形成することで、キャップ4が先軸1に張り付く問題を解消することに寄与できるものとなる。
【0044】
なお、前記したバルクが入る凹み空間1hを備えた前記実施例によると、バルクによる先軸1の汚れを軽減させることができるので、化粧具を利用するユーザーの手の汚れを軽減することができる。また先軸1の樹脂成形時において、前記凹み空間1hは、ヒケ防止として作用するので、成形安定性の向上を図ることができるなどの二次的な効果も得ることができる。
【0045】
一方、固形芯アイライナーを用いるこの実施例に示す化粧具においては、固形芯5を先軸1内に戻した場合には、
図4に示すように、固形芯5の先端部はホルダー6内から所定量突出した状態で、先軸1内に収容される。
これによると、化粧具を不用意に下落させるなどして衝撃が加わった場合には、ホルダー6内から突出した先端部分の固形芯5にクラックが入る、または折れるなどの問題を引き起こす。したがって、この芯折れなどの問題を解消するには、ホルダー6内から突出する固形芯5の長さ寸法は、なるべく小さくなるように設定されることが望まれる。
【0046】
図4に示す状態のホルダー6内から突出する固形芯5の長さ寸法は、
図1Bに示すように、ホルダー6が先軸1の内面に形成された前記ストッパー1dに当接した状態におけるホルダー6の前端部から先軸1の前端部1jまでの寸法Aに依存することになる。
すなわち前記寸法Aを、より小さく設定することが望まれるものとなり、この実施例においては、寸法Aが未使用状態における前記棒状部材5の長さ寸法Bに対して、10%未満に設定されている。
前記したような寸法Aと寸法Bの関係に設定することで、ホルダー6内から突出する固形芯5の量を少なくして、衝撃等による固形芯5の芯折れなどの障害の発生の少ない化粧具などを提供することに寄与できるものとなる。
【0047】
なお、前記した固形芯アイライナーを形成する固形棒状化粧料の好ましい実施形態は以下のとおりとなる。
この固形棒状化粧料は、少なくとも粉体成分を60~90質量%と、固着樹脂成分と、シリコーン溶剤と、ワックス成分とを含有する固形棒状化粧料であって、該粉体成分が顔料及び体質材であることを特徴とするものである。
実施形態に用いる顔料としては無機顔料、有機顔料など化粧料に用いられるものであれば特に制限なく用いることができるが、化粧料としてのパウダリーな塗布感を得るために平板状顔料が好んで用いられる。
【0048】
平板状顔料としては、例えば、マイカ、マイカチタン、カルミン被膜マイカチタン、酸化クロム被膜マイカチタン、酸化鉄被膜マイカチタン、酸化鉄・カルミン被膜マイカチタン、酸化鉄・紺青被膜マイカチタン、青被覆マイカチタン、紺青被膜マイカチタン、ベンガラ被膜マイカ、ベンガラ被膜マイカチタン、ベンガラ・カルミン被膜マイカチタン、ベンガラ・酸化鉄被膜マイカチタン、ベンガラ・紺青被膜マイカチタン、ベンガラ・酸化鉄・紺青被膜マイカチタンなど、また、ガラスフレーク又は塊状フレークを母材とした上に、金属もしくは金属酸化物をコートした光輝性顔料、などの少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
【0049】
好ましくは、塗膜の均一性及び塗布性の点から、酸化鉄被膜マイカチタン、マイカチタン、青被覆マイカチタンが挙げられ、特に、酸化鉄被膜マイカチタン、マイカチタンの使用が望ましい。更に好ましくは、これらの平板状顔料を親油化剤などにより親油性処理したものを挙げることができる。この親油性処理としては、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、ハイドロゲンジメチコン、ラウロイルリシン、ステアリン酸、ステアリン酸変性、アミノ酸、アミノ酸変性等の親油化剤により親油性処理することが好ましく、特に好ましくは、ジメチコンやハイドロゲンジメチコン等のシリコーン系オイルにより処理することが好ましい。
【0050】
これらの平板状顔料において、好ましくは、平均粒子径は5~100μmとすることが望ましく、更に好ましくは、5~20μmであるものが望ましい。なお、実施形態(後述する実施例等も含む)において、「平均粒子径」は、光学顕微鏡または電子顕微鏡による観察による、粒子径を平均粒子径としたものであり、平板状顔料では、平板状方向、大径での粒子径を平均粒子径としたものである。
これらの平板状顔料の含有量は、通常、加えすぎると強度低下、塗布性能低下、使用感低下が懸念されるが、他の配合成分との相互作用などにより、これらの性能低下を克服し、逆に、好ましい強度、塗布性能、使用特性を得るために、固形棒状化粧料全量に対して、10~50質量%(以下、「質量%」を単に「%」という)好ましいことを見出した。更に好ましくは、15~35%が望ましいことも見出した。
この平板状顔料の含有量が10%未満では、実使用可能な強度を確保しながら、眉毛の上からのボカシ描画の塗布性の良好な物が得られず、一方、皮膚上への(ラインの)塗布性能、使用特性の点から50%以下とすることが望ましい。
【0051】
また、化粧料としての着色の点から、該平板状顔料以外の顔料も用いることができる。 用いることができる顔料としては、例えば、酸化チタン、鉄黒、カーボンブラック、紺青、群青、青色1号、ベンガラ、黄酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、青色2号、青色404号、赤色201号、赤色202号、赤色220号、赤色102号、赤色104号、黄色4号、黄色4号Alレーキなどの顔料などの少なくとも1種が挙げられる。また、これらの顔料も上記親油性処理ができるものであれば、親油性処理した顔料であってもよい。
この顔料(上記平板状顔料を除く)の含有量の範囲は、後述するように、該顔料と上記平板状顔料及び体質材との合計含有量の範囲内で好適な量が調整される。
【0052】
実施形態の固形棒状化粧料に使用される体質材としては、従来の固形棒状化粧料に使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、いずれも使用することができる。例えば、球状樹脂粒子、窒化ホウ素、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、セリサイト、酸化亜鉛、ヒドロキシアパタイト、ラウロイルリシン等の白色系体質材や、棒状化粧料の色相によっては、有色系の体質材も使用することができ、当然これら数種類の混合物も使用できる。特に、好ましくは、体質材として、その物性、形状から球状樹脂粒子、例えば、シリコーンゴムパウダー、ナイロンパウダー、またこれらを被覆したシリコーン複合パウダー〔(ビニルジメチコン/ビニルメチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー〕などの少なくとも1種を単独で、または、他の体質材と併用することが望ましい。特に、球状樹脂粒子は、その平均粒子径は、5~30μm、より好ましくは、5~20μmが望ましい。
【0053】
この体質材、上記平板状顔料及び上記顔料からなる粉体成分の合計含有量は、固形棒状化粧料全量に対して、60~90%、好ましくは、70~85%とすることが望ましい。 この体質材、上記平板状顔料及び上記顔料のからなる粉体成分の合計含有量が60%未満では、眉毛上へのボカシラインの塗布性の良好な物が得られず、一方、90%超過では、強度が弱すぎたり、脆すぎたりして実使用に耐えられなくなり、好ましくない。
好ましい体質材の含有量は、固形棒状化粧料全量に対して、5~15%が望ましい。
【0054】
実施形態に用いる固着樹脂成分は、粉体の高分散性を示し、皮膜形成助剤として用いるものであり、例えば、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸などを挙げることができる。好ましくは固着性、塗布性などの点からアクリルシリコーンが挙げられる。
具体的に用いることができる固着樹脂成分としては、例えば、(アクリレーツ/アクリル酸ベヘニル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、トリメチルシロキシケイ酸などを少なくとも1種を挙げることができる。
【0055】
これらの固着樹脂成分の合計含有量は、粉体成分全量に対して、好ましくは、1~15%、更に好ましくは、3~10%とすることが望ましい。
この固着樹脂成分の合計含有量が1%未満であると、均一で固着力のある塗膜が得られず、一方、15%超過では、脆い塗膜の描線となる。
実施形態に用いるシリコーン溶剤としては、例えば、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、アミノプロピルジメチコン、(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマー、シメチコン等のシリコーン溶剤を挙げることができる。
これらのシリコーン溶剤の含有量は、固形棒状化粧料全量に対して、好ましくは、使用性、化粧持ちの点から、1~20%、更に好ましくは、1~10%とすることが望ましい。このシリコーン溶剤の含有量が1%未満であると、眉毛上へのボカシラインの塗布性の良好な物が得られず、一方、20%超過では、強度が弱すぎたり、脆すぎたりして実使用に耐えられなくなる。また、シリコーン溶剤は25℃環境下における、粘度10mPa・s以上1,000mPa・s未満としたものを用いるのが好ましい。なお、測定は東機産業製のB型粘度計(TVB-10)、スピンドルTM3、30回転で30秒後の粘度である。
【0056】
実施形態に用いるワックス成分としては、固形棒状化粧料に用いられるワックス成分であれば特に限定されず、例えば、炭素数26~33などの炭化水素系ワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ホホバワックス、カルナバワックス、合成ワックス、脂肪酸トリグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ベヘン酸、ステアリン酸、ベヘニルアルコール、トリベヘン酸グリセリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、モクロウ、ワセリン、モノステアリン酸エチレングリコール、水添ひまし油、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、モノステアリン酸エチレングリコールなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0057】
好ましくは、塗布性、光沢付与の点から、上記炭化水素系ワックスなどが挙げられる。 これらのワックス成分の含有量は、固形棒状化粧料全量に対して、0.5~10%、好ましくは、1~5%とすることが望ましい。
これらのワックス成分の含有量が0.5%未満では、固形棒状化粧料の芯としての保形性が困難となり、一方、10%超過では、眉上への良好な塗布感が得られず、好ましくない。
【0058】
更に、実施形態の固形棒状化粧料には、前記各成分の他に、好ましくは、ゲル化剤、油性成分などを含有せしめることが望ましく、更に、通常の固形棒状化粧料に用いられる任意成分、例えば、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、ビタミンE(酢酸トコフェロール)などの酸化防止剤、美容成分、香料などを、実施形態の効果を損なわない範囲で適宜量含有せしめることができる。
用いることができるゲル化剤としては、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、キャンデリラロウ炭化水素などが挙げられる。
このゲル化剤の含有量は、固形棒状化粧料全量に対して、好ましくは、0.1~5%、更に好ましくは、0.5~2.0%とすることが望ましい。
【0059】
また、用いることができる油性成分としては、特に限定されるものではなく、リンゴ酸ジイソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ひまわり油、ひまし油、スクワラン、トリ2-エチルヘキサングリセリル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、オリーブ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、エイコセン酸カプリル、ジノール酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルなどの少なくとも1種などを挙げることができる。 この油性成分の合計含有量は、固形棒状化粧料全量に対して、好ましくは、使用性- 滑らかな塗布感付与の点から、0~15%、更に好ましくは、2~10%とすることが望ましい。
【0060】
実施形態の固形棒状化粧料は、上記粉体成分(体質材、平板状顔料、平板状顔料以外の顔料)、固着樹脂成分、シリコーン溶剤、ワックス成分、ゲル化剤、油性成分などを加えて混練し、この混練物を押し出し成形などにより、直方体状、円柱状、角柱状などの任意の形状・大きさとなる目的の固形棒状化粧料を製造することができる。また、上記平板状顔料及び該平板状顔料以外の顔料と、上記親油化剤、即ち、ジメチコン、ラウロイルリシンなどから選ばれる親油化剤とを良く混練し、更に、体質材、固着樹脂成分、シリコーン溶剤、ワックス成分、ゲル化剤、油性成分などを加えて混練し、この混練物を押し出し成形などにより、直方体状、円柱状、角柱状などの任意の形状・大きさとなる目的の固形棒状化粧料を製造してもよいものである。
特に、実施形態の固形棒状化粧料では、直径6mm未満の芯繰り出し容器に使用した場合にでも、実使用特性を損なわない強度を備えたアイブロウ等に好適な固形棒状化粧料が得られることとなる。
【0061】
このように構成される実施形態の固形棒状化粧料では、少なくとも顔料及び体質材を含む粉体成分60~90%と、固着樹脂成分と、シリコーン溶剤と、ワックス成分とを混練し、固形棒状化粧料に成形することにより、折損強度などの機械的強度は実用的な範囲であるとともに、眉毛の上からのボカシ描画に優れると共に、眉毛への付着力に優れ、しかも、皮膚上へラインを引けて、経時安定性に優れ、特に高温での安定性に優れ、かつ、経時後の表面の発粉現象が起きない固形棒状化粧料が得られることとなる。また、平板状顔料を含む顔料に親油性処理を施し、体質材とともに、上記粉体以外の材料と混練、成形することにより、更に上記特性を向上させた固形棒状化粧料が得られることとなる。
【0062】
実施形態の固形棒状化粧料は、顔料及び体質材を含む粉体成分が60~90%と多いにもかかわらず、何故、上記特性を発揮できるものとなるかは以下のように推測される。
すなわち、実施形態の固形棒状化粧料は、少なくとも顔料及び体質材を含む粉体成分を60~90質量%と、固着樹脂成分と、シリコーン溶剤と、ワックス成分とを含有するものであり、固着樹脂成分が各成分を均一に分散する事により、折損強度などの機械的強度は実用的な範囲とすることができ、更に、均一に分散された多量の粉体成分が、ワックス成分により、点接着されており、塗布と言う軽い摩擦力により崩れる事により、眉毛上へのボカシ描画に優れると共に、眉毛への付着力に優れ、しかも、その形状により皮膚上へラインを引けることができ、経時安定性に優れ、特に高温での安定性に優れ、かつ、粉体成分が多く、芯表面へのワックス成分の分布が少ない事により、経時後の表面の発粉現象が起きないものとなる。
【0063】
以上説明したこの発明に係る回転繰出容器の実施例においては、ホルダー6内に配置されたピストン7を、固形芯5に含む揮発性成分のシール部材として利用しているが、これは必ずしも必要ではなく、ネジ棒8の先端部に装着した弾性部材12がホルダー6内に摺接することで、十分な揮発抑制機能を果たすことができる。
加えて、ネジ棒8の先端部に装着した弾性部材12は、ネジ棒8の後退に伴ってホルダー6の内周面に圧接した状態で、ホルダー6の牽引動作を行うことができる。
これにより、先軸1の前端部における固形芯5の出没作用も円滑になし得る回転繰出容器を提供することができる。
【0064】
なお、前記した実施例においては、棒状部材としての固形芯5、固形芯5を収容するホルダー6、先軸1の少なくとも固形芯5の収容部分、ネジ棒8の前半部の楕円軸体8aは、軸方向に直交する断面がそれぞれ楕円形状になされた例を示しているが、これらは例えば長円形状を構成しても同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
以上説明したこの発明に係る回転繰出容器は、化粧品のアイブロウ、アイライナー、リップライナーなどの固形化粧料や、色鉛筆、鉛筆などの筆記具、或いは口角、唇などの保湿を目的とした医薬部外品など用途を選ばず対応可能なものであり、これらを収容し適宜使用可能な回転繰出容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 先軸
1d ストッパー(段部)
1h 凹み空間
1j 先軸前端部
2 後軸
3 軸筒
4 キャップ
5 棒状部材(固形芯)
6 ホルダー
7 ピストン(シール部材)
8 ネジ棒
8c 雄ネジ
9 ネジ体
9a 雌ネジ
11 中軸
12 輪環状弾性部材(Oリング)
13 弾発部材(コイルバネ)