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特許7597562静的及び動的オブジェクトを含む確率的フリー空間地図を作成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】静的及び動的オブジェクトを含む確率的フリー空間地図を作成するための方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241203BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20241203BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20241203BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
B60W30/10
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020202006
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2021111366
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】10 2020 200 183.9
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】フランク・エドリング
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ルクス
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン・シュテュビング
(72)【発明者】
【氏名】グンナー・ユルゲンス
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-117082(JP,A)
【文献】特開2019-075055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G09B 29/00
G09B 29/10
B60W 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを有することを特徴とする静的(2a,2b,3)及び動的オブジェクト(V1-V7)を含む確率的フリー空間マップを作成するための方法:
-既存の周辺モデルから静的オブジェクト(2a,2b,3)と認識領域ポリゴン(WP)を呼び出すステップ(S1);
-動的オブジェクト(V1-V7)の予測された軌道(T1,T2)を集めるステップ(S2);
-静的オブジェクト(2a,2b,3)、認識領域ポリゴン(WP)及び予測された軌道(T1,T2)を一枚のマップに統合するステップ(S3);
-最長予測時間を設定するステップ(S4);
-予測時間ステップを設定するステップ(S5);
-最新の予測時間を設定し、設定された予測期間のスタート時点を設定するために、該最新の予測時間の値を0にセットするステップ(S6);
-信頼性領域(K)を静的(2a,2b,3)及び動的オブジェクト(V1-V7)の周りにオブジェクト(2a,2b,3,V1-V7)の存在確率、位置ベクトル並びに速度ベクトルの分散、及び、速度ベクトルと加速ベクトルの値に基づいて設定するステップ(S7);
-少なくとも一つの静的(2a,2b,3)乃至動的オブジェクト(V1-V7)の周りに少なくとも一つの不確実な領域(U)を設定するステップ(S8);
-最新の予測時間用に第一確率的フリー空間マップを作成するステップ(S9);
-少なくとも一つの予測時間ステップ用に少なくとも一枚の更なるフリー空間マップを作成するステップ(S10);
-作成されたフリー空間マップを評価するステップ(S11)
において、全対象期間用の確率的フリー空間マップの評価後に、少なくとも一つの走行機能が、適合される、及び/或いは、快適性、効率および安全性に関して最適化された自車両(1)の軌道(Te1,Te2)が、計画されることを特徴とする方法
【請求項2】
最長予測時間に達するまで、予測時間ステップ毎に一枚のフリー空間マップが作成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの不確定な領域(U)が、既存の周辺モデルと動的オブジェクト(V1-V7)の軌道予測に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの不確定な領域(U)が、ある動的オブジェクト(V1-V7)の少なくとも一本の予測された軌道(T1,T2)にそって拡張されることを特徴とする請求項1から3に記載の方法。
【請求項5】
不確定な領域(U)が、タイムステップ毎に適合されることを特徴とする請求項1から4のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
自車両(1)の軌道(Te1,Te2)の計画のために、認識領域ポリゴン(WP)も考慮されることを特徴とする請求項1からのうち何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの走行機能及び/或いは自車両(1)の軌道(Te1,Te2)を、コスト・ファンクションによって最適化することを特徴とする請求項1から5のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
不確定な領域が、軌道の確率、最後に予測されたオブジェクト(V1-V7)の軌道ポイントの位置、速度、加速の分散の値に基づいて設定されることを特徴とする請求項1から7のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
フリー空間マップの評価の前に、同じ占有確率を有するグリッドセルをそれぞれ、お互いからポリゴントラックによって区分される領域に統合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機能の確立に基づく反応に関わる、静的及び動的オブジェクトを含む確率的フリー空間マップを作成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術からは、例えば、アダプティブ速度調整(adaptive cruise control,ACC)とレーン維持アシスタントの組み合わせに基づく所謂「渋滞アシスタント」が既知である。更に昨今、車線変更アシスタントも導入されるようになったが、これは、ドライバーが、能動的に作動させる乃至始動させる必要があるものである。交通情報やレーン情報(オブジェクト)に対する反応は、オブジェクトまでの相対的距離を測定し、(例えば、ACCやレーン維持アシスタントによって)間隔を制御すること、或いは、グリッドセルが占有されている確率に関する情報を有するグリッドマップ(例えば、自動駐車用のデンプスター・シェーファー・グリッドマップ)を作成することのいずれかによって実施されている。
【0003】
しかし、従来の解決策(占有グリッドマップや自車両に対する相対的なオブジェクトのリスト)は、現時点のフリー空間の状態に関する情報を提供しているに過ぎない。要するに、特定の領域(例えば、グリッドセル)は、「フリーとして測定された」/「占有されているとして測定された」、或いは、「未測定」としてマークされることができる。このようにして得られるその時点における最新のマップは、他の交通参加者の今後の挙動に基づいて予測されるフリーな空間/占有される空間に関する情報は、包含していない。安全、快適、且つ、効率的な走行の実現を目的とし、ある走行ストラテジーを計画する場合、この先ある領域内を動くことが賢明か否かを知らなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明の課題は、改善されたフリー空間マップを作成できる、従来の技術の弱点を克服する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記目的は、独立請求項1に記載されている対象によって達成される。更らに、好ましい形態は、従属請求項の対象である。
【0006】
本質的に、本発明は、周辺捕捉と交通参加者予測における不確実性を回避することを目指している。自律走行では、周辺捕捉の際に、常に、周辺モデル内の不確実な領域が残る。この機能につながれている走行機能にとっての問題は、ドライバーは、タイムリーで穏やかな反応を実施する代わりとして、例えば、質の低い予測機能を有するシステムが取るであろうと思われる挙動を:即ち、典型的なシナリオとしては、「割り込む形で車線変更をする交通参加者が突然認識され、緊急ブレーキが作動する」と言った、緊急的な介入を、容認しないということにある。要するにそのドライバーは、例えば、この様な「割り込む形の車線変更」を数秒前には察知しているであろうことから、該ドライバーは、システムが、穏やかに減速する、或いは、タイムリーに車線変更することを期待しているであろう。本発明の目標は、数秒後になって緊急介入のみが可能になる前に、早期かつ快適に「不確実な領域」に反応することである。ドライバーは、後に必要が無かったことが明らかになろうとも快適な反応(例えば、実際に車線変更があろうがなかろうが、割り込む形での車線変更を可能にするためにブレーキを用いずに軽く減速すること)は、質の低い車線変更の予測に基づいた遅い時点における緊急ブレーキよりも、容認する。
【0007】
しかしながら、希であっても、セーフティ・クリティカルなケースにおいては、緊急反応は、正当であることから、低い存在確率を有するオブジェクトも無視することはできない。
【0008】
本発明は、上述の問題を、予測された挙動と予測に包含される不確定要素を含む、確率的フリー空間マップを作成することによって回避することができると言う基本アイデアに基づいている。
【0009】
よって、本発明に係る、静的及び動的オブジェクトを含む確率的フリー空間マップを作成するための方法は、以下のステップを包含している:
-既存の周辺モデルから静的オブジェクトと認識領域ポリゴンを呼び出すステップ;
-動的オブジェクトの予測された軌道を集めるステップ;
-静的オブジェクト、認識領域ポリゴン及び予測された軌道を一枚のマップに統合するステップ;
-最長予測時間を設定するステップ;
-予測時間ステップを設定するステップ;
-最新の予測時間を設定し、設定された予測期間のスタート時点を設定するために、該最新の予測時間の値を0にセットするステップ;
-信頼性領域を静的及び動的オブジェクトの周りに設定するステップ;
-少なくとも一つの静的乃至動的オブジェクトの周りに少なくとも一つの不確実な領域を設定するステップ;
-最新の予測時間用に第一確率的フリー空間マップを作成するステップ;
-少なくとも一つの予測時間ステップ用に少なくとも一枚の更なるフリー空間マップを作成するステップ;
-作成されたフリー空間マップを評価するステップ
【0010】
ここにおいて用いられた周辺モデルは、少なくとも二つの周辺センサ、例えばレーダセンサとカメラセンサのセンサデータから、例えばセンサデータ統合法によって生成されたものである。但し、静的なオブジェクトに関しては、保存されている周辺モデル、例えば、意味論的グリッドマップであっても良いが、これらに対応するデータは、GPS及び/或いはランドマーク認識を用いた自車両の自己トラッキングに基づいて呼び出される。保存されている周辺モデルを用いる場合、静的オブジェクトの如何なる変化をも信頼性高く考慮することができるように、規則的に予め定められたサイクルで更新することが好ましい。
【0011】
該認識領域ポリゴンとは、本発明の範囲においては、自車両の周りのポリゴントラックのことであり、要するに、その時点における最新の360°FOV(Field-of-view)を意味している。このポリゴンに対して影響を与える値としては、センサの到達距離も然り、道路のジオメトリ(カーブや峠など)も挙げられる。
【0012】
自車両の周りに動的オブジェクトや他の交通参加者が検出された場合、各々の動的オブジェクトに対して一本乃至複数本の軌道が、予測される。各々の軌道の予測は、例えば、移動方向、速度、及び/或いは、加速に基づいて実施される。
【0013】
これら上記のデータは、後の方法ステップの基となる共通のマップに記入される。
【0014】
更には、動的オブジェクト乃至他の交通参加者が動き得る軌道を最長どれ程予測できるかを示す最長予測時間も設定される。また、予測時間ステップも設定される。これは、どれ程の間隔で予測が更新されるかを設定できるため、好ましい。即ち、最長予測時間を、例えば10秒として、各々の予測ステップを、例えば0.5秒毎に実施することができる。
【0015】
予測を開始するためには、先ず、最新の予測時間を設定し、値を0にセットする。この時点からは、予め定められた予測時間ステップ内において複数の予測が、最長予測時間に達するまで、実施される。ここでは、最新の予測時間から、予測時間ステップ毎に、一枚の確率的フリー空間マップが、作成される。各々の予測時間ステップは、最長予測時間に達するまで、最新の予測時間に加算される。最新の予測時間に加えて、静的及び動的オブジェクトの周りに信頼性領域が、設定される。この信頼性領域は、この際、グリッドセル毎に、各々のオブジェクトによって、ある確率をもって占有されていると見ることができる範囲を記述している。付加的に、少なくとも動的オブジェクトの周りには、少なくとも一つの不確実な領域が、設定される。但し、複数の動的オブジェクトに対して、少なくとも一つの不確定な領域を設定することも考え得る。
【0016】
この不確定な領域は、ここでは、この領域への動きによって、今後、動的オブジェクトによって占有される可能性を有している領域を記述している。また、確率的フリー空間マップも評価される。これは、必要とあれば、後続の走行機能に合わせることができるため好ましい。
【0017】
予測を実施するためには、例えば、ベイジアン・ネットワークを用いることができる。ある動的オブジェクトやある交通参加者が取り得る一つの軌道の確率を計算するための入力値としては、例えば、周辺部における静的乃至動的オブジェクトの有無、該当する交通参加者の速度、加速、移動方向、及び、道路の推移などが考慮される。更には、天候などの環境ファクタも考慮できるであろう。
【0018】
ある特に好ましい実施形態においては、予測時間ステップ毎に、フリー空間マップが、最長予測時間に達するまで、作成される。これは、予測時間ステップから次の予測時間ステップまでに、周辺が変化し得るため、有利である。この様にすることで、全ての変化の可能性を捕捉することを確実にできる。
【0019】
ある特に好ましい実施形態においては、少なくとも一つの不確定な領域が、既存の周辺モデルと動的オブジェクトの軌道予測に基づいて設定される。
【0020】
ある他の好ましい実施形態においては、少なくとも一つの不確定な領域は、ある動的オブジェクトの少なくとも一本の予測された軌道にそって拡張される。尚、該不確定な領域は、最長予測時間において、全ての予測し得る軌道が、不確定な領域によって少なくとも部分的に覆われるように拡張されることが特に好ましい。これは、予測が、該不確定な領域によって考慮され得る、ある程度の不確実性を、常に有しているため有利である。
【0021】
但し、不確定な領域は、タイムステップ毎に適合されることが特に好ましい。予測された軌道に沿って不確定性が増すため、予測時間が増すにつれ、不確定な領域も大きくなる。例えば、車両が、前方を走行中の車両に接近すると、時間の増加と間隔の減少により、車線変更の確率が増すため、不確定性も増加する。しかしながら、該車両は、減速することもあり得るため、予測の不確定性にもつながり得る。
【0022】
また、全対象期間用の確率的フリー空間マップの評価後に、快適性、効率および安全性に関して最適化された自車両の軌道が計画されることも好ましい。そうすることで、不確実性が大きい場合、後になって急激な制動介入や操舵介入を回避するために、自車両の車線変更を、先を見越して実施することも可能になる。そのために、例えば、不確実性のための閾値を設定することが可能である。この閾値を超えた場合、予防的な運転マヌーバが実施される。代案的に、不確定な領域の占有確率を、最適化のためのコスト・ファンクションにおいて直接的に用いる事も可能である。車線変更の代わりに、自車両の減速を予防的な対策とすることも考え得る。
【0023】
尚、少なくとも一つの走行機能及び/或いは自車両の軌道を、該コスト・ファンクションによって最適化することは、特に好ましい。この様なコスト・ファンクションを用いることにより、自車両の軌道は、例えば、目標速度、前後方向加速や前後方向の揺れ(jolt)、横方向の加速や横方向の揺れ、他の交通参加者に対する間隔、他の交通参加者に対して必要な反応(例えば、急ブレーキ)を達成すると言う観点から、及び、この先、他の交通参加者の占有領域を通過する確率、乃至、後になって快適でない介入を実施する確率と言う観点から最適化される。尚、代案的乃至付加的に、該最適化を、車線維持の正確性や車両のコース角度の車線中央のコース角度に対するずれと言う観点から実施することも考え得る。
【0024】
ある更なる特に好ましい実施形態においては、軌道の最適化のために認識領域ポリゴンも考慮される。尚、例えば、(右側通行の)アウトバーンの左カーブ内においては、センサ類が十分に先を見越せない道路の最も左縁までは、走行しないことも好ましい。道路縁に突然、例えば、失われたタイヤの一部が落ちていたと言った場合、衝突は、緊急マヌーバによってのみ回避し得る。しかしながら、動的オブジェクトによって覆われている場合の評価は、これとは異なる:ある車両の後方を追走する場合、該車両の前方の領域は、覆われている可能性はあるが、該他のオブジェクトがその走行曲線上を移動している最中であることから、そこには、数秒間走行し得るフリー空間は、存在していると仮定することができる。
【0025】
尚、方向、加速、速度及び予測された軌道は、グローバル座標系で出力することは、考え得る。また、該座標を一般的な座標系に転換することも考え得る。即ち、座標を道路座標系において出力することも好ましく可能である。
【0026】
特に、信頼性領域は、オブジェクトの存在確率、位置ベクトル並びに速度ベクトルの分散、及び、速度ベクトルと加速ベクトルの値に基づいて設定されることが、好ましい。これにより、速度と加速なども考慮されるため、静的オブジェクト用の信頼性領域のみならず、動的オブジェクト用のものも設定することが可能になる。
【0027】
ある更なる好ましい実施形態においては、不確定な領域は、軌道の確率、最後に予測されたオブジェクト(V1-V7)の軌道ポイントの位置、速度、加速の分散の値に基づいて設定される。
【0028】
更には、フリー空間マップの評価の前に、同じ占有確率を有するグリッドセルをそれぞれ、お互いから対応するポリゴントラックによって区分される領域に統合することも好ましい。ここで言う占有確率は、必ずしも、固定された値である必要はなく、ある確率の値が含まれる範囲であると解釈される。即ち、該範囲は、例えば、90%を超える占有確率を有する全てのグリッドセルを包含していることができる。この様にすることで、例えば、交通参加者の周りの信頼性領域を考慮することができる。グリッドセルの統合は、領域に統合することにより評価に必要な計算能力を低減できることからも好ましい。
【0029】
更なる構成と実施形態は、添付されている図面によって示される。図の説明:
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明のある実施形態に係るフリー空間マップの概略的な描写であり;
図2】本発明のある実施形態に係る拡張されたフリー空間マップの概略的な描写であり;
図3】本発明のある実施形態に係る拡張されたフリー空間マップの更なる概略的な描写であり;
図4】本発明のある実施形態に係る拡張されたフリー空間マップの更なる概略的な描写であり;
図5】本発明のある更なる実施形態に係る拡張されたフリー空間マップ類の更なる概略的な描写であり;
図6】本発明の実施形態の概略的フローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明のある実施形態に係るフリー空間マップの概略的な描写を示している。この描写において、自車両1は、他の複数の交通参加者V1 - V7と共に、3車線F1-F3からなる道路上を動いている。自車両1は、この時点において、最新の軌道Taに沿って動いている。交通参加者V1-V7の他、それぞれ、例えば、ガードレールなどの車線境界3、及び、更なる静的オブジェクト2a,2bが示されている。交通参加者V1-V7に対しては、少なくとも二本の軌道T1,T2が、予測されている。尚、T1は、最も確率の高い軌道を示している。軌道T2は、低めの確率を有する取り得る軌道を記述している。ここでT1は、実線の矢印で示され、軌道T2は、破線の矢印で示されている。見易さを確保するため、全ての交通参加者V1-V7の全ての軌道T1,T2にではなく、それぞれ一度のみ軌道T1とT2の符号がつけられている。また、認識領域ポリゴンWPも示されている。この認識領域ポリゴンWPは、本発明では、自車両の周り360°視野を示すものである。静的オブジェクト2a,2b,3及び認識領域ポリゴンWPは、ここでは、例えば、周辺モデルから呼び出されることができる。
【0032】
図2は、本発明のある実施形態に係る拡張されたフリー空間マップの概略的な描写を示している。ここに示されている描写では、静的オブジェクト2a,2b,3と動的オブジェクト乃至交通参加者V1-V7の周りに、信頼性領域Kが設定されている。この概略的な描写では、各々の静的オブジェクト2a,2b,3と各々の交通参加者V1-V7に対して、長方形の信頼性領域Kが想定されており、この描写では、複数の信頼性領域が、重なり合っている。この信頼性領域は、フリー空間マップにおいて、占有されていると仮定される。更には、交通参加者V1の取り得る軌道T1,T2に沿って不確定な領域Uが設定されている。この不確定な領域Uは、交通参加者V1の挙動に応じて占有され得る、乃至、フリーであり続ける。この文脈において、代案的乃至付加的に、他の交通参加者V2-V7の各々一つの不確定な領域Uも設定される。図2では、例えば、第一予測時間ステップに対応する時点が示されている。不確定な領域Uは、この際、自車両1の車線F2に少しだけしかかかっていない。即ち、運転マヌーバを実施する必要性が、まだ十分にはないことから、この先自車両1が取り得る軌道Te1は、現在走行しているTaに対応している。
【0033】
図3は、本発明のある実施形態に係る拡張されたフリー空間マップの更なる概略的な描写を示している。図3は、図2の内容に対応している。但し、この描写は、後の時点における予測時間ステップのものであるため、不確定な領域Uは、図2のそれよりも大きくなっている。それは、V1は、時間が経つにつれ、例えば、V2に接近し、車線変更の可能性が高まるが、V1が制動することもあり得るため、100%とは言えないことに起因している。よって、不確定な領域Uは、大きくなっている。同時に、自車両1から、もう一本の取り得る軌道Te2が、先ほどの軌道Te1に加えて、現在走行中の方向に沿って、予定される。この更なる軌道Te2は、実施されるかもしれない車線F3への車線変更に対応するものである。
【0034】
図4は、本発明のある実施形態に係る拡張されたフリー空間マップの更なる概略的な描写を示している。この図でも、描写は、図2と3のそれに相当するものである。図4は、図3よりも後の予測時間ステップを記述している。よって、不確定な領域Uも、図2と3と比較すると拡大され、自車両1の車線F2の全幅まで既に広がっている。自車両1のここで計画されている軌道Te2では、V1が実施し得る車線変更の前によけてしまうために、車線変更が想定されている。これにより、タイムリーに穏やかな運転マヌーバが実施され、自車両1のドライバーにとって快適でない操舵介入や制動介入には、至らない。
【0035】
図5は、本発明のある更なる実施形態に係る拡張されたフリー空間マップの更なる概略的な描写を示している。この描写では、同じ占有確率Bを有するグリッドセルが、対応する領域4に統合されている。該領域4は、それぞれ、ポリゴントラックPによって区分されている。図に示されている如く、領域には、占有確率Bが0.1未満である領域4、占有確率Bが10%未満の領域4、占有確率Bが50%を超える領域4、及び、占有確率Bが90%を超える領域4がある。占有確率が90%を超える領域4は、例えば、その中に交通参加者が検出された、及び、交通参加者の周りの信頼性領域Kであるグリッドセルであることができる。更に、複数の領域4をまたぐ不確定な領域Uも示されている。
【0036】
図6は、本発明の実施形態の概略的フローチャートを示している。ステップS1では、静的オブジェクト2a,2b,3と認識領域ポリゴンWPが、既存の周辺モデルから呼び出される。ステップS2では、動的オブジェクトV1-V7の予測された軌道T1,T2が集められる。それに続くステップS3では、静的オブジェクト2a,2b,3、認識領域ポリゴンWP及び予測された軌道T1,T2が、第一フリー空間マップに統合される。ステップS4では、最長予測時間が設定され、ステップS4と並行して実施されても良いステップS5では、対応する予測時間ステップが設定される。その後、ステップS6では、最新の予測時間が設定され、最新の予測時間の値が、設定された予測期間のスタートを設定するために、0にセットされる。ステップS7では、静的オブジェクト2a,2b,3と動的オブジェクトV1-V7の周りに、信頼性領域Kが設定される。更に、ステップS8では、少なくとも一つの不確定な領域Uが、少なくとも一つの静的オブジェクト2a,2b,3乃至動的オブジェクトV1-V7の周りに設定される。ステップS9では、第一確率的フリー空間マップが、最新の予測時間用に作成される。ステップS10では、少なくとも一つの更なるフリー空間マップが、一つの予測時間ステップ用に作成される。このステップS10は、最長予測時間に達するまで、反復される。更なるステップS11では、作成されたフリー空間マップ、特に、最長予測時間に至った時点において作成されたフリー空間マップが、評価される。
なお、本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
以下のステップを有することを特徴とする静的(2a,2b,3)及び動的オブジェクト(V1-V7)を含む確率的フリー空間マップを作成するための方法:
-既存の周辺モデルから静的オブジェクト(2a,2b,3)と認識領域ポリゴン(WP)を呼び出すステップ(S1);
-動的オブジェクト(V1-V7)の予測された軌道(T1,T2)を集めるステップ(S2);
-静的オブジェクト(2a,2b,3)、認識領域ポリゴン(WP)及び予測された軌道(T1,T2)を一枚のマップに統合するステップ(S3);
-最長予測時間を設定するステップ(S4);
-予測時間ステップを設定するステップ(S5);
-最新の予測時間を設定し、設定された予測期間のスタート時点を設定するために、該最新の予測時間の値を0にセットするステップ(S6);
-信頼性領域(K)を静的(2a,2b,3)及び動的オブジェクト(V1-V7)の周りに設定するステップ(S7);
-少なくとも一つの静的(2a,2b,3)乃至動的オブジェクト(V1-V7)の周りに少なくとも一つの不確実な領域(U)を設定するステップ(S8);
-最新の予測時間用に第一確率的フリー空間マップを作成するステップ(S9);
-少なくとも一つの予測時間ステップ用に少なくとも一枚の更なるフリー空間マップを作成するステップ(S10);
-作成されたフリー空間マップを評価するステップ(S11)。
2.
最長予測時間に達するまで、予測時間ステップ毎に一枚のフリー空間マップが作成されることを特徴とする上記1に記載の方法。
3.
少なくとも一つの不確定な領域(U)が、既存の周辺モデルと動的オブジェクト(V1-V7)の軌道予測に基づいて設定されることを特徴とする上記1に記載の方法。
4.
少なくとも一つの不確定な領域(U)が、ある動的オブジェクト(V1-V7)の少なくとも一本の予測された軌道(T1,T2)にそって拡張されることを特徴とする上記1から3に記載の方法。
5.
不確定な領域(U)が、タイムステップ毎に適合されることを特徴とする上記1から4のうち何れか一項に記載の方法。
6.
全対象期間用の確率的フリー空間マップの評価後に、少なくとも一つの走行機能が、適合される、及び/或いは、快適性、効率および安全性に関して最適化された自車両(1)の軌道(Te1,Te2)が、計画されることを特徴とする上記1から5のうち何れか一項に記載の方法。
7.
自車両(1)の軌道(Te1,Te2)の計画のために、認識領域ポリゴン(WP)も考慮されることを特徴とする上記1から6のうち何れか一項に記載の方法。
8.
少なくとも一つの走行機能及び/或いは自車両(1)の軌道(Te1,Te2)を、コスト・ファンクションによって最適化することを特徴とする上記6に記載の方法。
9.
信頼性領域(K)を、オブジェクト(2a,2b,3,V1-V7)の存在確率、位置ベクトル並びに速度ベクトルの分散、及び、速度ベクトルと加速ベクトルの値に基づいて設定することを特徴とする上記1から8のうち何れか一項に記載の方法。
10.
不確定な領域が、軌道の確率、最後に予測されたオブジェクト(V1-V7)の軌道ポイントの位置、速度、加速の分散の値に基づいて設定されることを特徴とする上記1から9のうち何れか一項に記載の方法。
11.
フリー空間マップの評価の前に、同じ占有確率を有するグリッドセルをそれぞれ、お互いからポリゴントラックによって区分される領域に統合することを特徴とする上記1に記載の方法。
【符号の説明】
【0037】
1 EGO車両
2a,2b 静的オブジェクト
3 車線境界
4 領域
B 占有確率
F1-F3 車線
K 信頼性領域
P ポリゴントラック
S1-S11 方法ステップ
Ta 自車両の最新の軌道
Te1,Te2 自車両の代案となり得る軌道
T1,T2 動的オブジェクトが取り得る軌道
U 不確定な領域
V1-V7 動的オブジェクト/交通参加者
WP 認識領域ポリゴン
図1
図2
図3
図4
図5
図6