(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】不定傾斜軌道上で乗客を輸送するための衝撃吸収機能を備えた車両及び同車両を備える設備
(51)【国際特許分類】
B61B 9/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B61B9/00 A
(21)【出願番号】P 2020213818
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-10-18
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515238552
【氏名又は名称】ポマ
【氏名又は名称原語表記】POMA
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】モレット,アラン
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-166791(JP,A)
【文献】特開2000-264555(JP,A)
【文献】実開平01-063568(JP,U)
【文献】中国実用新案第207581104(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル輸送設備の傾斜軌道(V)上で人を輸送するための車両(1)であって、前記輸送設備の少なくとも1つの牽引ケーブル(C1)によって引かれながら前記軌道(V)上を走るのに適した運び台(10)と、前記運び台(10)によって担持された客室支持体(120)と、車載制動デバイス(14)と、前記車載制動デバイス(14)に、また前記客室支持体(120)につなげられたショックアブソーバ(13)であって、前記客室支持体(120)が、使用可能位置から衝撃吸収軌道に沿って衝撃吸収方向に、前記車載制動デバイス(14)に対して移動するときに、前記客室支持体(120)の運動エネルギを熱に変換するのに適している、ショックアブソーバと、を備え、前記車載制動デバイス(14)が、前記運び台(10)に強固に接続され、前記車両が、前記衝撃吸収軌道に沿って、前記運び台(10)に対する前記客室支持体(120)の移動を誘導するように、前記客室支持体(120)と前記運び台(10)との間にスライドリンク(12)も備える、ことを特徴とする、車両(1)。
【請求項2】
前記衝撃吸収軌道が、直線状であることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記運び台(10)には、前記軌道(V)上を走るための1セット以上の車輪(1a、1b)が備えられ、前記1セット以上の車輪(1a、1b)が、走行平面を画定
することを特徴とする、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記運び台には、前記牽引ケーブル(C1)への接続境界面が設けられている、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記車両がまた、客室(11)と、前記客室(11)と前記客室支持体(120)との間の枢動リン
クと、を備える、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記枢動リン
クが、前記客室(11)の床の下に取り付けられている、ことを特徴とする、請求項5に記載の車両。
【請求項7】
客室姿勢維持デバイスを備え、前記客室
姿勢維持デバイスが、前記設備の少なくとも1つの補助レール(C2)と連携して、前記客室(11)の姿勢を誘導し、正すことが意図された少なくとも1セットの1つ以上のローラ(111)を備えることが好ましい、請求項5又は請求項6のいずれかに記載の車両。
【請求項8】
前記運び台(10)には、緊急の場合に、前記軌道(V)の下端の停止部(B)に最終的に接触することが意図された緩衝体(101)が設けられている、ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の車両。
【請求項9】
前記ショックアブソーバ(13)が、1m超、好ましくは1.8m超のストロークを有する長ストローク油圧シリンダである、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の車両。
【請求項10】
前記運び台(10)上の前記車載制動デバイス(14)が、安全ブレーキ又はリターダを含む、ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の車両。
【請求項11】
前記ショックアブソーバ(13)をロックするための、又は引き金を引く条件が満たされていない場合に前記運び台(10)に対して使用可能位置に前記客室支持体(120)をロックし、また前記引き金を引く条件が満たされている場合に前記ショックアブソーバ(13)又は前記運び台支持体(120)を解放するための、ロッキングデバイス(204)を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記ロッキングデバイスが、前記運び台(10)と前記客室支持体(120)との間に直に配置されたロックを含む、ことを特徴とする、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記ロッキングデバイスが、前記ショックアブソーバ(13)の本体(201)に対して所定位置に前記ショックアブソーバ(13)の可動構成要素(202)をロックするためのロック(204)を含み、前記ショックアブソーバ(13)の前記可動構成要素(202)と前記ショックアブソーバ(13)の前記本体(201)とが、1セットの2つの衝撃吸収要素(202、201)を形成し、前記2つの衝撃吸収要素のうちの一方が、前記運び台(10)に取り付けられ、前記2つの衝撃吸収要素(202、201)のうちの他方が、前記客室支持体(120)に取り付けられている、ことを特徴とする、請求項11又は請求項12のいずれかに記載の車両。
【請求項14】
前記衝撃吸収方向と反対方向に前記運び台(10)に対して前記客室支持体(120)を前記使用可能位置に移動させるのに適した前記ショックアブソーバ(13)をリセットするためのデバイス(206、207)を備える、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の車両。
【請求項15】
下部駅(S1)と、上部駅(S2)と、前記下部駅(S1)と前記上部駅(S2)とを接続する傾斜軌道(V)と、少なくとも1つの牽引ケーブル(C1)と、前記牽引ケーブルを駆動するための少なくとも1つの定置デバイスと、前記傾斜軌道(V)上を走り、前記牽引ケーブルによって引かれるのに適した少なくとも1つの車両(1)と、を備える、人を輸送するための設備(T)であって、前記車両が、請求項1~14のいずれか一項に記載の輸送車両(1)である、ことを特徴とする、設備(T)。
【請求項16】
前記輸送車両が、請求項10に記載のものであり、前記安全ブレーキ又はリターダ(14)が、前記輸送設備の定置制動レールと連携するのに適している、ことを特徴とする、請求項15に記載の設備。
【請求項17】
前記輸送車両が、少なくとも請求項8に記載のものであり、前記軌道(V)の下端には、緩衝体(101)に接触して、前記車両(1)を最終的に止めるのに適した停止部(B)が設けられている、ことを特徴とする、請求項15又は請求項16のいずれかに記載の設備。
【請求項18】
前記車両が、少なくとも請求項5~7のいずれか一項に記載のものであり、前記軌道が、一定ではない傾斜を有する、ことを特徴とする、請求項15~17のいずれか一項に記載の設備。
【請求項19】
前記車両が、請求項7に記載のものであって、前記設備が、前記1セットの1つ以上のローラ(111)が連携する少なくとも1つの姿勢維持レール(C2)を備える、ことを特徴とする、請求項18に記載の設備。
【請求項20】
前記定
置デバイスが、前記牽引ケーブル(C1)用の制動システムを含む、ことを特徴とする、請求項15~19のいずれか一項に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、乗客輸送の分野に関し、より具体的には、輸送設備に提供された車両に関し、車両の動きは、一様な又は可変の傾斜の軌道上で誘導される、滑動する、又は走るものであり、1つ以上のケーブルによって動くようになっている。
【0002】
[0002] この種の輸送設備は、線路を走るケーブルカー設備、タイヤ付き車両を使用した線路以外の軌道を走る同等の設備、あるいは垂直又は傾斜したリフト設備であり得る。
【背景技術】
【0003】
[0003] 本発明は、より正確には、車両の駆動機構の大規模な機能不良の場合、又は超過速度の場合、又は車両が牽引ケーブルのうちの1つ以上の破損に続いて落下した場合など、異例の事態又は緊急時の突然の制動の間に特に起こる減速時に車両の運動力を弱めることに関する。
【0004】
[0004] このように、特許文献FR3012121には、傾斜軌道上を移動し、それぞれが軌道に平行に位置付けられたけラックと連携して安全ブレーキを成す、2つの格納式クランプを備える、少なくとも1つのケーブル牽引式車両を備える、輸送設備用の緊急制動システムについて記載されている。該車両には、それぞれが、2つのラックのそれぞれに専用である2つの同一のショックアブソーバユニットを含む車載組立体が装備されている。これらのユニットは、少なくとも、待機位置と移動位置の衝撃吸収端との間の線形軌道でショックアブソーバ本体に対して案内される、車両及び可動構成要素への接続用に、ショックアブソーバ本体によって形成されている。2つのユニットは、車両の基準速度を超えたことを検出すると、該ユニットを作動させる共通の安全コントローラによって制御される。安全ブレーキが掛かっている場合、ショックアブソーバユニットは有効であるが、安全ブレーキを掛けることのない緊急制動の場合、例えば、車両が軌道の下端に位置付けられた緩衝体に当って止まる場合、又は車両の牽引ケーブルが急に減速する場合には使用することができない。
【0005】
[0005] 特許文献JPH10167626には、ケーブルにつなげられ、客室を担持する車台部分と、安全ブレーキを担持し、ショックアブソーバによって前部分に接続された車台部分との間に、衝撃吸収手段が位置付けられている、これまでの傾斜リフトの変形形態について記載されている。安全ブレーキを担持する車台部分は、ケーブルを担持する部分の下であり、車両が軌道の下端にある移動止め緩衝体の端に接触すると、必要に応じて、客室が減衰されることを可能にする。ただし、ショックアブソーバは、牽引ケーブルの停止による突然の減速には影響を及ぼさない。
【0006】
[0006] また、本明細書に記載の衝撃吸収手段は、軌道が確かに傾斜しているが、その傾斜が全体にわたり一定ではない、輸送設備を対象としている。
【0007】
[0007] ただし、軌道が不定傾斜であるが、客室の姿勢が行程全体にわたり水平を維持しなければならない設備では、緊急制動又は急停止の場合に、衝撃吸収が進行し、確実で効果的であり、軌道上の位置に関係なく、水平及び垂直両方の加速度に対して規定された範囲内に留まることを確実にすることが必要になる。
【発明の概要】
【0008】
[0008] この背景において、本発明の目的は、これらの要件からもたらされる機械的応力及び運動学的応力を管理することを可能にする、技術的解決策を提案することにある。
【0009】
[0009] したがって、本発明は、傾斜軌道上を移動し、1つ以上のケーブルによって引かれる、車両を備える輸送設備、例えば、傾斜リフト設備又はケーブルカーにエネルギ吸収手段を組みことを目指し、このエネルギ吸収手段は、例えば、1つ以上の牽引ケーブルを減速させることによって、安全ブレーキを掛けることによって、又は、車両が設備の緩衝体に当って限界停止に達するか、もしくは軌道上で障害物に出くわすことによって、開始される様々な緊急制動シナリオで車両が徐々に減速されることを可能にする。
【0010】
[0010] 本発明はまた、これらのエネルギ吸収手段が、一定ではない斜面を有する設備に組み込まれることを可能にすることも求める。この目標は、ケーブル輸送設備の斜面軌道上で人を輸送するための車両を用いて本発明により達成され、該車両は、輸送設備の牽引ケーブルによって引かれながら軌道上を走るのに適した運び台と、運び台によって担持された客車支持体と、車載制動デバイスと、車載制動デバイスと客車支持体とにつなげられたショックアブソーバであって、客室支持体が、衝撃吸収方向に衝撃吸収軌道に沿って、車載制動デバイスに対して移動するとき、客室支持体の運動エネルギを熱に変換するのに適した、ショックアブソーバと、を備え、車載制動デバイスが運び台に強固に接続され、車両が、衝撃吸収軌道に沿って運び台に対する客室支持体の動きを案内するように、客室支体と運び台との間にスライドリンクも備える、ことを特徴とする。
【0011】
[0011] 有利な特徴によれば、衝撃吸収軌道は、直線的である。
【0012】
[0012] 本発明の好ましい実施形態によれば、運び台には、軌道上を走るための少なくとも1セットの車輪が備えられており、この車輪のセットは、走行平面を画定し、衝撃吸収軌道が走行平面に平行であるのが好ましい。
【0013】
[0013] 別の特徴によれば、運び台には、牽引ケーブルへの接続境界面が設けられている。
【0014】
[0014] 任意選択の変形形態によれば、車両はまた、客室と、客室と客室支持体との間の枢動リンクと、を備える。
【0015】
[0015] 該枢動リンクが客室の床の下に取り付けられるのが好ましい。
【0016】
[0016] 他の任意選択の特徴によれば、車両は、車両姿勢維持デバイスを備え、車両姿勢維持デバイスが、設備の少なくとも1つの補助レールと連携して、客室の姿勢を案内し、正すことが意図された少なくとも1セットの1つ以上のローラを含むのが好ましい。
【0017】
[0017] ある変形形態によれば、運び台には、緊急時に、最終的に軌道の下端の止め具に接触することが意図された緩衝体が備えられている。
【0018】
[0018] ショックアブソーバは、特に固体摩擦、材料の塑性変形によって、又は電磁手段もしくは油圧手段によって、エネルギが消散するのを可能にする、どのようなタイプのものであってもよい。もちろん、該手段の引き金となる緊急停止に続いて、使用可能位置に客室支持体を戻すことによってリセットされ得る、多用途エネルギ消散手段が好ましいであろう。特に有利な実施形態によれば、ショックアブソーバは、1m超、好ましくは1.8m超のストロークを有するロングストローク油圧シリンダである。もちろん、このストロークは、具体的には速度及び傾斜の点からだけではなく、規制要件の点からも見た、設備の特徴に応じて、例えば、それが傾斜リフト設備であるか、ケーブルカーであるか、又は娯楽施設であるかに応じて、かなり変わってくる可能性がある。
【0019】
[0019] 他の特定の変形形態によれば、運び台上の車載制動デバイスは、安全ブレーキ又はリターダを含む。
【0020】
[0020] 一実施形態によれば、車両は、引き金を引く条件が満たされていない場合、ショックアブソーバをロックするか又は運び台に対して客車支持体を所定位置にロックし、また引き金を引く条件が満たされている場合、ショックアブソーバ又は客車支持体をロック解除する、ロッキングデバイスを備える。したがって、ショックアブソーバは、必要な場合のみ有効になり、例えば、乗り降り段階又は規定の加速度限度を下回まわる動き段階における、設備の正常な運転を妨げることはない。
【0021】
[0021] 引き金を引く条件は、1つ以上のセンサ、具体的には、速度センサ、垂直加速度センサ、水平加速度センサ、もしくは傾斜センサ、又は単なる機能不良警告、によって定められ得る。引き金を引く条件は、センサの閾値を超えること、又は、例えば、速度又は加速度及び傾斜など、2つのパラメータに応じた、より複雑な条件であり得る。引き金を引く条件は、ロッキングデバイスと、車両上の車載制動機構、具体的には、緊急ブレーキ、安全ブレーキ、リターダ、又は速度リミッタとの間、又はロッキングデバイスと衝突検出装置(例えば、運び台の下端にぴんと張った検出ケーブル)との間のガードロッキングによっても定められ得る。センサは、ロックに組み込まれてもよく、ロックの所与の閾値を超える応力が、好ましくは可逆的に、ロックの状態の変化につながることをもたらす。
【0022】
[0022] センサはまた、車載制動デバイスの引き金を引く押しボタン又は任意の引き金を引く制御デバイスに組み込まれ得る。
【0023】
[0023] ロッキングデバイスは、運び台と客室支持板との間に直に配置されたロックを含み得る。代替として追加として、ロッキングデバイスは、ショックアブソーバの本体に対して所定位置にショックアブソーバの可動構成要素をロックするためのロックも含み得、2つのショックアブソーバ要素のうちの1つがショックアブソーバの可動構成要素、及び運び台に取り付けられたショックアブソーバの本体によって形成され、2つのショックアブソーバ要素のうちのもう1つが、客室支持体に取り付けられている。
【0024】
[0024] 衝撃吸収方向と反対方向に、運び台に対して客室支持体を使用可能位置に移動させるのに適した、ショックアブソーバをリセットするためのデバイスが備えられているのが好ましい。該デバイスにモータ手段があるのが好ましく、モータ手段は、ショックアブソーバから独立していても独立していなくてもよい。このデバイスは、例えば、運び台と客室支持体との間で運動機械的伝達チェーンによって作用する電動モータであり得る。このデバイスはまた、ショックアブソーバに直に作用するデバイスであり得る。例えば、ショックアブソーバに油圧シリンダが備わっている場合、ポンプで油圧シリンダの油圧室に供給することが可能である。
【0025】
[0025] 本発明の別の目的は、人を輸送するための設備であり、この設備は、下部駅、上部駅、下部駅と上部駅とを接続する傾斜軌道、少なくとも1つの牽引ケーブル、牽引ケーブルを駆動するための少なくとも1つの定置デバイス、及び傾斜軌道上を走り、牽引ケーブルによって引かれるのに適した少なくとも1つの車両を備え、車両が上記の特徴を有する輸送車両であることを特徴とする。「下部駅(lower station)」及び「上部駅(upper station)」という用語は、この場合、ターミナル駅があるか又は中間駅があるか応じて、異なる高度で位置する2つの駅を指す。
【0026】
[0026] この設備の変形形態によれば、輸送車両には、安全ブレーキ又はリターダが備えられ、輸送設備の定置制動レールと連携するのに適している。該制動レールは、具体的には、車両の摩擦ブレーキ用の摩擦表面を有するレール、又は運び台に強固に接続されたピン又は格納式固定フックが差し込まれる、ラックを有するレールであり得る。
【0027】
[0027] 別の変形形態によれば、軌道の下端には、緊急時、輸送車両の運び台によって担持された緩衝体と接触するようになるのに適した、止め具が設けられている。
【0028】
[0028] さらに別の変形形態によれば、軌道の傾斜は、一定ではない。該当する場合、車両は、この仮説では、客室と、客室と客室支持体との間の客室の床の下に取り付けられた枢動リンクと、客室姿勢維持デバイスであって、好ましくは、設備の少なくとも1つの補助レールと連携して、客室の姿勢を案内し、正すことが意図された、少なくとも1セットの1つ以上のローラを含む、客室姿勢維持デバイスと、を備え得る。
【0029】
[0029] 設備が、設備の姿勢維持レールと連携することが意図された少なくとも1セットの1つ以上のローラを含む、客室姿勢維持デバイスが連携する、少なくとも1つの姿勢維持レールを備えるのが好ましい。
【0030】
[0030] 設備の別の特定の変形形態によれば、ケーブルを駆動するための定置デバイスには、ケーブル用の制動システムが含まれる。
【0031】
[0031] 本発明による車両は、軌道上の客室に釣合いのとれた安定した支持をもたらすと同時に、制動又は急停止の場合に高性能衝撃吸収能力ももたらし、段階的で最適な減速を確実にする。
【0032】
[0032] 本発明による設備は、あらゆる状況で、乗客を快適に保ち、乗客の安全を確保しながら、複雑な輪郭及び幾何学的形状の上昇路又は軌道上で、具体的には、放射線状軌道などの一様な傾斜又は不定傾斜の軌道上で、乗客輸送がなされることを可能にする。
【0033】
[0033] 本発明の他の特徴及び利点は、以下に詳しく述べる添付図面を参照しながら、それに続く発明を実施するための形態に目を通す中で分かってくるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明による車両が移動する不定傾斜軌道を備える輸送設備の全体図である。
【
図2A】衝撃吸収前の最小限の傾斜しかない傾斜軌道の長さに対応する位置における本発明による車両の一実施形態の側面図である。
【
図2B】同じ位置であるが衝撃吸収後の
図2Aの車両の側面図である。
【
図3A】衝撃吸収前の最大限の傾斜がある傾斜軌道の長さに対応する位置における本発明による車両の一実施形態の側面図である。
【
図3B】同じ位置であるが衝撃吸収後の
図3Aの車両の側面図である。
【
図5】車両の衝撃吸収用の油圧ロッキングデバイスを組み込んだ、前の図の車両用の油圧衝撃吸収制御回路の概要図である。
【
図6】車両の衝撃吸収用のロッキングデバイスの別の実施形態の概略図である。
【
図7】車両の衝撃吸収用のロッキングデバイスの第3の実施形態の概略図である。
【0035】
[0043] 分かりやすくするために、同一又は同様である要素は、本文及び図では同一の参照符号で示している。
【0036】
[0044] もちろん、添付図面に示され、以下に説明される本発明の実施形態は、単に非制限的な例として与えられる。様々な実施形態を互いに組み合わせて、その他の実施形態を提案することができると、明示的に規定されている。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0045] 本発明による車両1は、この実施形態では、一様な又は不定の傾斜のリフト設備であるが、ケーブルカー又は娯楽設備であってもよい、輸送設備Tにおいて乗客輸送を行うように意図されている。
【0038】
[0046]
図1に示される実施形態では、この設備Tは、この場合、上部ターミナル駅S2と下部ターミナル駅S1との間に放射線状路の範囲を定める不定傾斜の曲線軌道Vを備える。駅S1の下の軌道Vの下端には、ケーブルが断線した、又は設備の大規模な機能不良が起こった場合に、車両1を最終的に停止させて、動かなくするための、この場合は停止部Bが設けられている。
【0039】
[0047] この実施形態では、具体的には
図2A、
図2B(急傾斜の場合)及び
図3A、
図3B(なだらかな傾斜の場合)に示されるように、軌道Vは、例えば、従来的には、車両1が走行する、2つの平行レールR1、R2の線路軌道を含む。
【0040】
[0048] 車両1は、輸送設備Tの少なくとも1つの牽引ケーブルC1によって引かれながら、軌道V上を走るのに適した運び台10、客室11と、運び台10によって担持される客室11用の支持体120と、を備える。したがって、運び台10には、牽引ケーブルC1への接続境界面が設けられている。車両1は、客室11と客室11用の支持体120との間に枢動リンク12も備える。
図2A及び3Aに特に示されるように、この枢動リンク12は、客室11の床の下に取り付けられている。
【0041】
[0049] 車両1の構造は、
図4に示されるように、以下に記載の手段が車両及び軌道のどちらの側でも同じであるように、その中央垂直平面に対して対称である。
【0042】
[0050] 必要であれば、車両1は、共通の支持体に結合された、又は強固に接続された複数の客室を備える。客室C1は、モータ(図示せず)などの少なくとも1つの定置駆動デバイスによって、従来方式で駆動される。
【0043】
[0051] 車両1はまた、
図2A及び
図3Aに特に示されるように、車載制動デバイス14と、車載制動デバイスに、また客室11の支持体120につなげられたショックアブソーバ13と、を備える。該ショックアブソーバ13は、該支持体が、この場合は下向きの衝撃吸収方向の衝撃吸収軌跡に沿って、車載制動デバイス14に対して移動するとき、客室支持体120の運動エネルギを熱に変換するのに適し、そのように意図されている。
【0044】
[0052] この場合のショックアブソーバ13は、1m超、好ましくは1.8m超のストロークを有する長ストローク油圧シリンダである。該ショックアブソーバの他のパラメータは、様々なパラメータ、具体的には、車両1の質量(その乗客を積んだ状態)、その慣性速度、及びその基準速度に従って決まってくる。
【0045】
[0053] 輸送設備Tには、車両1上の車載制動デバイスに付属し、その基礎に強固に接続され、牽引ケーブルC1を駆動するデバイスに結合された、固定式制動システム(図示せず)も備えられている。固定式である制動手段14及び車載式である制動手段14は、例えば、特許出願FR3079223A1に記載、図示されているものと一致する。
【0046】
[0054] このように、設備Tに組み込まれた固定式制動システムは、軌道Vの全長にわたって延在する2つの平行ラック(図示せず)で構成されており、各ラックは、軌道の2つのレールR1、R2のうちの1つに近くなっており、一方、車両1の車載制動デバイス14は、安全ブレーキで構成されている(特に
図2A及び
図3Aに見られる)。
【0047】
[0055] 本発明の特定の態様によれば、車載制動デバイス14が、運び台10に強固に接続され、車両1が、衝撃吸収軌道上で運び台10に対する客室支持体120の滑動移動を誘導するように、客室11の支持体120と運び台10との間にスライドリンク12も備える。図に示される本発明の実施形態では、衝撃吸収軌道は、直線状であり、スライドリンク12は、軌道Vに平行に延在する。
【0048】
[0056] 運び台10には、軌道V上を走る少なくとも1セットの車輪1a、1bが備えられ、走行平面及び衝撃吸収軌道を画定するこの車輪のセットが、該走行平面に平行であるのが好ましい。
【0049】
[0057] 本発明による車両には、客室11用の姿勢維持デバイスが備えられている。該デバイスが、設備の少なくとも1つの補助レールC2と連携して、客室11の姿勢を誘導し、正すことが意図された少なくとも1セットの1つ以上のローラ111を備えるのが好ましい。該ローラ111は、軌道Vに面する側面で、客室11の構造の下部に取り付けられている。
【0050】
[0058]
図1に示されるように、軌道Vの上部になるにつれて、牽引ケーブルC1と補助姿勢ケーブルC2との間隔がさらに空き、反対に、軌道Vの下部では、間隔が狭まる。結果として、ローラのセット111には、その曲線に沿ってケーブルC2に従うための傾き関節が備えられるのが好ましい。
【0051】
[0059] その下部では、運び台10には、緊急移動停止の終わりで、軌道Vの下端に位置する停止部Bと最終的に接触することが意図された、緩衝体101が備わっている。図に示される実施形態では、客室支持体120は、この場合、三角形輪郭を有し、その頂点は、スピンドルXを介して、客室11の床の下に延在する腕木110に接続されている。その部分用のスライド12は、運び台10に強固に接続されたリブ内で滑動可能に係合している支持体120の基部に作られた例えば溝で形成されている。ただし、本発明の範囲から逸脱しない限り、逆の構成も可能である。
【0052】
[0060] 緊急制動(運び台10の安全ブレーキ14を開く、又は設備Tの固定式制動システムの作動による)又は停止部Bでの運び台10の急停止場合、具体的には、設備の大規模な機能不良又はケーブルのうちの1つの断線の場合、また車両の1の運動エネルギを原因とする場合、客室11の支持体120が、スライド12を下向きに滑動する。この滑動は、その減速を制御するために、車両1の運動エネルギを吸収するショックアブソーバ13によって遅くされる。
【0053】
[0061] 支持体120の減速がスライド12を介してショックアブソーバ13によって制御されることから、車両1の釣り合い、具体的には、客室11の姿勢が、車両の緊急制動又は緊急停止の場合でも維持され、乗客の快適性及び安全を確保する。
【0054】
[0062]
図2A及び
図3Aでは、車両1は、水平面に対してそれぞれ、70°と20°との異なる傾斜を有する、軌道Vの2つの長さにおける通常の通過段階にある。支持体120は、スライド12の高位置にあり、したがって、ショックアブソーバ13は、休止している。
【0055】
[0063]
図2B及び
図3Bは、
図2A及び
図2Bのものと同じトラックVの長さを移動する同じ車両1に対応するが、急減速又は緊急停止の状況におけるものである。この場合、車両1の慣性を原因として、支持体120は、スライド12上を下向きに運ばれるが、ショックアブソーバ13は、熱消散によって部分的にその運動エネルギを吸収し、したがって、支持体120の移動、それにより客室の11の移動を遅くする。それにより、客室11が徐々に止まるようになる。
【0056】
[0064]
図5は、運び台10に強固に接続された可変容積チャンバ201を備える油圧ショックアブソーバ13を制御する油圧回路200を示し、可変容積チャンバ201では、客室11の支持体120に強固に接続されたピストン202が滑動する。可変容積チャンバ201は、衝撃吸収制御弁204及び制限205によって、タンク203に接続されている。場合に応じて、充填制御弁206が、可変容積チャンバ201がポンプ207に接続されることを可能にする。
【0057】
[0065] 初期設定では、衝撃吸収制御弁204が、可変容積チャンバ201を隔離し、もし備えられていれば充填制御弁206が、圧力喪失205に、衝撃吸収制御弁を接続する。運び台10上に位置付けられた加速度計209によって制御される制御回路208が、運び台10の減速閾値を超えた場合、衝撃吸収制御弁204に、状態を変えさせる。停止すると、手動制御装置210により、ポンプ207及び充填制御弁206が作動し、可変容積チャンバ201を満たし、客室11の可動支持体120を使用可能位置に戻すことが可能になる。
【0058】
[0066] したがって、これにより、必要な場合のみ油圧ショックアブソーバ13が作動することが可能になる。作動時間が数ミリ秒に過ぎないので、これは、客室11における許容加速度閾値を超えない程短時間である。
【0059】
[0067]
図5のデバイスは、突然減速することなく、使用可能位置の運び台10に対する所定位置に客室支持体120をロックするように考えられた様々なソリューションのうちのただ1つに過ぎない。ある変形形態では、衝撃吸収制御弁204が、可変容積チャンバ201内で油圧によって、より一般的には、可変容積チャンバ201とピストン202との間の応力閾値を超えたことを示す機械信号又は油圧信号によって、直に制御されるように規定することができる。
【0060】
[0068] チャンバ201とショックアブソーバ13のピストン202との間に、例えば、
図6に示されるように、油圧式ロックではなく機械式ロック304を用いて、他の類のロッキングがもたらされ得る。
図7に示されるように、客室支持体120と運び台10との間にも、ロック404が提供され、置かれ得る。あらゆる場合で、ロッキングの引き金を引くことは、ショックアブソーバの必要に関係付けられた引き金を引く条件によって制御される。この引き金を引く条件は、1つ以上のセンサ、具体的には速度センサ、垂直もしくは水平傾斜センサ、又は単に機能不良警告センサによって、又はより特定のセンサ、例えばケーブル断線センサもしくは障害物センサによって決まってくる可能性がある。また、ロック204、304、404と緊急ブレーキ、安全ブレーキ、リターダ、又は速度リミッタとの間にガードロッキングをもたらす機構も、センサの分野に入ると考えられている。
【0061】
[0069] もちろん、様々な修正形態が考えられ得る。
【0062】
[0070] 客室11の姿勢が、任意の適切な手段によって、具体的には受動的な単なる機械的手段によって、又は信号表現、例えば客室の水平状態によって制御される能動的な原動機付き手段によって維持され得る。このような変形形態は、乗車中に客室の姿勢が意図的に変えられる娯楽施設に本発明を設置するのに特に適しているであろう。