(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】クレーン制御装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20241203BHJP
B66C 23/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B66C13/22 M
B66C23/00 C
(21)【出願番号】P 2020214947
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】石坂 仁
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 光男
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-235249(JP,A)
【文献】特開2012-131586(JP,A)
【文献】特開平06-072692(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148241(WO,A1)
【文献】特開2018-150088(JP,A)
【文献】特開2020-132316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/22
B66C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームの先端に支持されたブーム側滑車にかけ渡された荷役用ロープにより荷物を吊り下げて当該荷物を水平方向に移動可能なクレーンを制御するクレーン制御装置であって、
作業者からの前記荷物の移動操作を受け付ける移動操作部と、
前記作業者による前記移動操作部の操作速度に基づいて前記荷物の振動量を推定する振動量推定部と、
前記荷物の移動開始時および移動終了時に前記荷物に振動が発生
し、推定された前記荷物の前記振動量が所定量以上の場合、前記荷物が前記ブーム側滑車の真下に位置するよう
に前記ブームの位置を変化させることにより前記振動を抑制する振動抑制制御を行う振動抑制制御部と、
を備えることを特徴とするクレーン制御装置。
【請求項2】
前記振動抑制制御部は、前記荷物の重量に基づいて前記振動抑制制御時の前記ブームの移動量を決定する、
ことを特徴とする請求項
1記載のクレーン制御装置。
【請求項3】
前記振動抑制制御部は、前記クレーン周辺の風向および風速に基づいて前記振動抑制制御時の前記ブームの移動量を決定する、
ことを特徴とする請求項1
または2記載のクレーン制御装置。
【請求項4】
前記振動抑制制御部は、前記荷物の吊り上げ時および吊り下げ時には、前記ブームの起伏角度を変更することにより前記振動を抑制する、
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項記載のクレーン制御装置。
【請求項5】
前記振動抑制制御部は、前記クレーンの走行停止時には、前記クレーンの走行を停止した直後に、前記クレーンを前進させて前記ブームを前方に移動させることにより前記振動を抑制する、
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項記載のクレーン制御装置。
【請求項6】
前記振動抑制制御部は、前記クレーンの旋回停止時には、前記クレーンの旋回を停止した直後に、前記クレーンの上部旋回体を回転させて前記ブームを旋回方向に移動させることにより前記振動を抑制する、
ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項記載のクレーン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンを制御するクレーン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物を吊り上げた上で水平方向に移動可能なクレーンが建設現場等で用いられている。例えば、下記特許文献1は、稼動効率を確保する上で有利な建設機械(クレーン)を提供することを目的とており、クローラクレーンの荷役用ウインチが動作して、荷役用ウインチによって荷役用ロープの巻取り、繰り出しが行なわれると、ブーム側滑車が回転される。ブーム側滑車の回転力は動力伝達機構を介してロータに伝達され、これにより発電部が発電し、充電池部が充電される。給電部は、充電池部の電力を監視カメラおよび測位部に給電する。監視カメラは、ブーム先端の下方を撮像して画像情報を生成し、無線回線を介して情報処理部に供給する。測位部は、ブーム先端の位置を検出して位置情報を生成し、無線回線を介して情報処理部に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、クレーンは重量が大きい荷物を取り扱っているのに加え、高所での作業の頻度も多く、その操作には熟練した技術が必要である。一方で、少子高齢化による労働人口の減少等により、熟練した作業者を確保するのが困難になっており、建設現場での作業効率の低下が懸念される。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、クレーンを用いた作業をより効率的に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の一実施形態は、ブームにかけ渡された荷役用ロープにより荷物を吊り下げて当該荷物を水平方向に移動可能なクレーンを制御するクレーン制御装置であって、作業者からの前記荷物の移動操作を受け付ける移動操作部と、前記荷物の移動開始時および移動終了時に前記荷物に振動が発生する場合、前記ブームの位置を所定方向に変化させることにより前記振動を抑制する振動抑制制御を行う振動抑制制御部と、を備えることを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記作業者による前記移動操作部の操作速度に基づいて前記荷物の振動量を推定する振動量推定部を更に備え、前記振動抑制制御部は、前記荷物の前記振動量が所定量以上の場合に前記振動抑制制御を行う、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記振動抑制制御部による振動抑制制御の実行の有無を指定する振動抑制操作部を更に備え、前記振動抑制制御部は、前記振動抑制操作部に対して振動抑制制御の実行が指定された場合に前記振動抑制制御を行う、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記振動抑制制御部は、前記荷物の重量に基づいて前記振動抑制制御時の前記ブームの移動量を決定する、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記振動抑制制御部は、前記クレーン周辺の風向および風速に基づいて前記振動抑制制御時の前記ブームの移動量を決定する、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記振動抑制制御部は、前記荷物の吊り上げ時および吊り下げ時には、前記ブームの起伏角度を変更することにより前記振動を抑制する、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記振動抑制制御部は、前記クレーンの走行停止時には、前記クレーンを前進させて前記ブームを前方に移動させることにより前記振動を抑制する、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記振動抑制制御部は、前記クレーンの旋回停止時には、前記クレーンの上部旋回体を回転させて前記ブームを旋回方向に移動させることにより前記振動を抑制する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、荷物の移動開始時および移動終了時に荷物に振動が発生する場合、ブームの位置を所定方向に変化させることにより荷物の振動を抑制する(振動抑制制御を実施する)。これにより、荷物が周囲の物体や作業者に接触するのを防止し、クレーンを用いた作業の作業効率および安全性を向上させる上で有利となる。このようなブームの取り回しは、従来熟練した作業者が行っているものであるが、クレーン制御装置により自動的に行うことにより、熟練した作業者が不足する場合でも効率的にクレーンを用いた作業を行うことができる。
また、本発明の一実施形態によれば、移動操作部の操作速度に基づいて荷物の振動量を推定し、振動量が所定量以上の場合に振動抑制制御を行う。これにより、例えば周囲に影響を及ぼす程度に振動が生じる場合にのみブームを動かし、それより小さい振動の場合にはブームを動かさないので、クレーンの不要な動きを抑制する上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、振動抑制操作部に対して振動抑制制御の実行が指定された場合にのみ振動抑制制御を行う。これにより、振動抑制制御の実施の有無を確実に指定し、クレーンの操作安定性を向上させる上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、荷物の重量に基づいて振動抑制制御時のブームの移動量を決定するので、荷物にかかる慣性力の大きさを考慮してより効果的に荷物の振動を抑制する上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、クレーン周辺の風向および風量に基づいて振動抑制制御時のブームの移動量を決定するので、荷物がクレーンから受ける力および重力以外の力を考慮してより効果的に荷物の振動を抑制する上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、荷物の吊り上げ時および吊り下げ時には、ブームの起伏角度を変更することにより荷物の振動を抑制するので、クレーンの動きに合わせて効果的に振動を抑制する上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、クレーンの走行停止時には、クレーンを前進させてブームを前方に移動させることにより振動を抑制するので、クレーンの動きに合わせて効果的に振動を抑制する上で有利となる。
また、本発明の一実施形態によれば、クレーンの旋回停止時には、クレーンの上部旋回体を回転させてブームを旋回方向に移動させることにより振動を抑制するので、クレーンの動きに合わせて効果的に振動を抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】クローラクレーンの構成を示すブロック図である。
【
図4】地切り時の荷物およびクローラクレーンの動きを模式的に示す図である。
【
図5】荷下ろしの荷物およびクローラクレーンの動きを模式的に示す図である。
【
図6】走行停止時の荷物およびクローラクレーンの動きを模式的に示す図である。
【
図7】旋回時の荷物およびクローラクレーンの動きを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態では、クレーン制御装置(クレーン制御部40)の制御対象となるクレーンがクローラクレーン10である場合について説明する。
図1は、クローラクレーンの外観図である。
クローラクレーン10は、移動式クレーンであり、下部走行体102と、上部旋回体104と、ブーム106とを含んで構成されている。クローラクレーン10は、ブーム106にかけ渡された荷役用ロープ108により荷物Fを吊り下げて走行や旋回を行うことにより当該荷物Fを水平方向に移動可能である。
【0009】
下部走行体102は、クローラ1020の回転により地面を走行する。本実施の形態では、左右に1つずつクローラ1020が設けられている。クローラ1020は、走行用アクチュエータ310(
図3参照)によって駆動される。
【0010】
上部旋回体104は、下部走行体102の上部に旋回軸を中心に水平旋回可能に設けられている。
すなわち、上部旋回体104の下部には、旋回軸を中心とする円形状のギアが設けられており、下部走行体102に設けられたピニオンギアが上記の円形状のギアに噛み合っている。これらギアで構成される旋回機構を旋回用アクチュエータ312で任意の方向に回動させることで、旋回軸を中心に上部旋回体104を回動させることができる。
【0011】
上部旋回体104には操作室20が設けられ、操作室20には、下部走行体102
の走行、上部旋回体104の旋回、荷役用ロープ(荷役用ワイヤロープ)108の巻取り、繰り出し、ブーム106の起伏などを操作するための操作部(
図2参照)が設置されている。
【0012】
また、上部旋回体104には、荷役用ロープ108の巻取り、繰り出しを行なう荷役用ウインチ110と、ブーム起伏用ロープ(ブーム起伏用ワイヤロープ)112の巻取り、繰り出しを行なう起伏用ウインチ114とが設けられている。荷役用ウインチ110および起伏用ウインチ114は、それぞれ荷役用アクチュエータ316および起伏用アクチュエータ318(
図3参照)によって駆動される。
【0013】
ブーム106は、その基端が水平方向に延在する支軸を介して上部旋回体104に対して起伏可能(揺動可能)に支持されている。また、ブーム106は、複数のアーム部材が入れ子となるように構成されておいり、外側の部材から内側の部材を押し出すことによってブーム106を伸長し、内側の部材を外側の部材に収容することによりブーム106を縮小する。ブーム106の押し出しおよび収容は、ブーム用アクチュエータ314(
図3参照)によって図示しない伸縮機構を駆動することによって行われる。
【0014】
ブーム106の先端の後部には、起伏用ウインチ114から繰り出されたブーム起伏用ロープ112の先部が取着されている。
したがって、起伏用ウインチ114によってブーム起伏用ロープ112の巻取り、繰り出しがなされることによりブーム106が起伏される。
【0015】
ブーム106の先端には、ブーム側滑車116が回転可能に支持されている。
ブーム側滑車116には、荷役用ウインチ110から繰り出された荷役用ロープ108が掛け渡されている。
荷役用ロープ108の先部は、フックブロック118に設けられたフックブロック側滑車120に掛け回されたのちブーム106の先端の箇所に取着されている。
したがって、荷役用ウインチ110によって荷役用ロープ108の巻取り、繰り出しがなされることによりフックブロック118の上下方向への移動がなされる。
図中、符号122はフックブロック118に設けられたフックであり、符号Fは、フックに吊り下げられた荷物を示す。
【0016】
図2は、操作室の内部構成を示す図である。
操作室20には、運転席200、走行レバー202(202A,202B)、左作業レバー204、右作業レバー206、アクセルペダル208、ディスプレイ212が設けられている。これら走行レバー202、左作業レバー204、右作業レバー206、アクセルペダル208は、作業者からの操作(荷物Fの移動操作を含む)を受け付ける移動操作部210(
図3参照)として機能する。
運転席200は、クローラクレーン10の操縦を行う作業者が着席する座席である。
【0017】
走行レバー202(202A,202B)は、左走行レバー202Aおよび右走行レバー202Bを備え、クローラクレーン10の前後進、停車、進路変更および走行速度を調整する際に使用する。
左走行レバー202Aは左側のクローラ1020の動きを調整するものであり、右走行レバー202Bは右側のクローラ1020の動きを調整するものである。
左走行レバー202Aおよび右走行レバー202Bはそれぞれ、中立位置から前後方向に揺動可能である。左走行レバー202Aおよび右走行レバー202Bは、非操作時(作業者による前方または後方への揺動操作がない時)には中立位置に戻るように構成されている。
【0018】
クローラクレーン10を前進させる場合、作業者は左右の走行レバー202A,202Bを揃えて前方に傾ける。すると、左右のクローラ1020が前方に向かって回転し、クローラクレーン10が前方に直進する。左右の走行レバー202A,202Bの前方への傾斜量(傾斜角度)が大きいほど、クローラクレーン10の前進速度(左右のクローラ1020の回転速度)が速くなる。
クローラクレーン10を後進させる場合、作業者は左右の走行レバー202A,202Bを揃えて後方に傾ける。すると、左右のクローラ1020が後方に向かって回転し、クローラクレーン10が後方に直進する。左右の走行レバー202A,202Bの後方への傾斜量(傾斜角度)が大きいほど、クローラクレーン10の後進速度(左右のクローラ1020の回転速度)が速くなる。
クローラクレーン10を停止させる場合、作業者は左右の走行レバー202A,202Bから手を放し、中立位置に戻す。すると、左右のクローラ1020の回転が停止し、クローラクレーン10が停止する。
【0019】
クローラクレーン10を前進で左折させる場合、作業者は右走行レバー202Bのみを前方に傾ける。すると、右側のクローラ1020のみが前方に向かって回転し、左側のクローラ1020が軸のように作用し、クローラクレーン10の向きが前方左方向に変化する。
クローラクレーン10を後進で左折させる場合、作業者は右走行レバー202Bのみを後方に傾ける。すると、右側のクローラ1020のみが後方に向かって回転し、左側のクローラ1020が軸のように作用し、クローラクレーン10の向きが後方左方向に変化する。
クローラクレーン10を前進で右折させる場合、作業者は左走行レバー202Aのみを前方に傾ける。すると、左側のクローラ1020のみが前方に向かって回転し、右側のクローラ1020が軸のように作用し、クローラクレーン10の向きが前方右方向に変化する。
クローラクレーン10を後進で右折させる場合、作業者は左走行レバー202Aのみを後方に傾ける。すると、左側のクローラ1020のみが後方に向かって回転し、右側のクローラ1020が軸のように作用し、クローラクレーン10の向きが後方右方向に変化する。
【0020】
左作業レバー204は、上部旋回体104の旋回操作およびブーム106の伸縮操作を行う際に使用する。
左作業レバー204は、中立位置から前後方向および左右方向に揺動可能である。左作業レバー204は、非操作時(作業者による前後左右方向への揺動操作がない時)には中立位置に戻るように構成されている。
【0021】
上部旋回体104を右旋回させる場合、作業者は左作業レバー204を右方向に傾ける(左作業レバー204の先端を作業者に近づけるように引く)。すると、上部旋回体104が旋回軸を中心に右方向に(時計周りに)回動する。
上部旋回体104を左旋回させる場合、作業者は左作業レバー204を左方向に傾ける(左作業レバー204の先端を作業者から遠ざけるように押す)。すると、上部旋回体104が旋回軸を中心に左方向に(反時計周りに)回動する。
【0022】
ブーム106を伸長させる場合、作業者は左作業レバー204を前方向に傾ける。すると、ブーム106を構成する内側のアーム部材が外側のアーム部材から押し出され、ブーム106が伸長する。
ブーム106を縮小させる場合、作業者は左作業レバー204を後方向に傾ける。すると、ブーム106を構成する内側のアーム部材が外側のアーム部材の内部に収容され、ブーム106が縮小する。
【0023】
なお、左作業レバー204を中立位置に戻すと、上部旋回体104の旋回またはブーム106の伸縮は停止し、上部旋回体104の旋回状態およびブーム106の伸縮状態はそのまま維持される。
【0024】
右作業レバー206は、フックブロック118(荷物F)の昇降操作およびブーム106の起伏操作を行う際に使用される。
右作業レバー206は、中立位置から前後方向および左右方向に揺動可能である。右作業レバー206は、非操作時(作業者による前後左右方向への揺動操作がない時)には中立位置に戻るように構成されている。
【0025】
フックブロック118(荷物F)を上昇させる場合、作業者は右作業レバー206を後方向に傾ける。すると、荷役用ウインチ110によって荷役用ロープ108が巻き上げられ、フックブロック118が上昇する。
フックブロック118(荷物F)を下降させる場合、作業者は右作業レバー206を前方向に傾ける。すると、荷役用ウインチ110によって荷役用ロープ108が巻き下げられ、フックブロック118が下降する。
【0026】
ブーム106を起立させる(地面に対して垂直姿勢に近づける場合)場合、作業者は右作業レバー206を左方向に傾ける(左作業レバー204の先端を作業者に近づけるように引く)。すると、起伏用ウインチ114によりブーム起伏用ロープ112が巻取られ、ブーム106が起立する。
ブーム106を伏せる(地面に対して平行姿勢に近づける場合)場合、作業者は右作業レバー206を右方向に傾ける(左作業レバー204の先端を作業者から遠ざけるように押す)。すると、起伏用ウインチ114によりブーム起伏用ロープ112が繰り出され、ブーム106が平伏する。
【0027】
なお、右作業レバー206を中立位置に戻すと、フックブロック118の昇降またはブーム106の起伏は停止し、フックブロック118の昇降状態およびブーム106の起伏状態はそのまま維持される。
【0028】
アクセルペダル208は、クローラクレーン10の走行時やクレーン作業時に、エンジン320(
図3参照)の回転数や出力の調整を行う際に使用する。
具体的には、エンジン320を駆動した状態でアクセルペダル208を踏み込むと、踏み込み量に比例してエンジン320の出力が大きくなる。アクセルペダル208の踏み込みがない場合には、エンジン320はアイドリング状態となる。
【0029】
ディスプレイ212は、作業者に各種情報を表示する。各種情報とは、例えばクローラクレーン10の周辺に設置されたカメラ330(
図3参照)の撮影画像や、クローラクレーン10の状態(ブーム長、ブーム高、ブーム角、荷重量、エンジン回転数、走行速度等)などである。
【0030】
図3は、クローラクレーンの構成を示すブロック図である。
クローラクレーン10は、上述した構成(
図3には、走行レバー202、左作業レバー204、右作業レバー206、アクセルペダル208、クローラ1020、上部旋回体104、ブーム106、荷役用ウインチ110、起伏用ウインチ114のみを示す)の他、第1検出部300、第2検出部302、第3検出部304、第4検出部306、走行用アクチュエータ310、旋回用アクチュエータ312、ブーム用アクチュエータ314、荷役用アクチュエータ316、起伏用アクチュエータ318、エンジン320、カメラ330、クレーン制御部(クレーン制御装置)40を備える。
【0031】
第1検出部300は、走行レバー202に対する操作状況を検知する。より詳細には、第1検出部300は、左右の走行レバー202A,202Bそれぞれへの操作量(レバーの揺動量)を検知する。
第2検出部302は、左作業レバー204に対する操作状況を検知する。より詳細には、第2検出部302は、左作業レバー204の前後方向および左右方向への操作量(レバーの揺動量)を検知する。
第3検出部304は、右作業レバー206に対する操作状況を検知する。より詳細には、第3検出部304は、右作業レバー206の前後方向および左右方向への操作量(レバーの揺動量)を検知する。
第4検出部306は、アクセルペダル208に対する操作状況を検知する。より詳細には、第4検出部306は、アクセルペダル208の操作量(ペダルの踏み込み量)を検知する。
各検出部で検出された操作状況は、クレーン制御部40に出力される。
【0032】
走行用アクチュエータ310、旋回用アクチュエータ312、ブーム用アクチュエータ314、荷役用アクチュエータ316および起伏用アクチュエータ318は、油圧ポンプ321とともに油圧回路319を形成する。走行用アクチュエータ310、旋回用アクチュエータ312、ブーム用アクチュエータ314、荷役用アクチュエータ316および起伏用アクチュエータ318は、油圧ポンプ321から供給される高圧の作動油によって駆動する。
走行用アクチュエータ310は、例えば油圧モータであり、クローラ1020を回転させるための駆動力を出力する。
旋回用アクチュエータ312は、例えば油圧モータであり、上部旋回体104を回転させるための駆動力を出力する。
ブーム用アクチュエータ314は、例えば油圧シリンダであり、ブーム106を伸縮させるための駆動力を出力する。
荷役用アクチュエータ316は、例えば油圧モータであり、荷役用ウインチ110を回転させるための駆動力を出力する。
起伏用アクチュエータ318は、例えば油圧モータであり、起伏用ウインチ114を回転させるための駆動力を出力する。
エンジン320は、燃料を燃焼させた際の燃焼エネルギーを用いて油圧ポンプ321を回転させるための駆動力を出力する。
これら走行用アクチュエータ310、旋回用アクチュエータ312、ブーム用アクチュエータ314、荷役用アクチュエータ316、起伏用アクチュエータ318、油圧ポンプ321、エンジン320の稼働状態は、クレーン制御部40により制御される。
【0033】
カメラ330は、クローラクレーン10周辺の画像を撮影する。カメラ330は、例えばクローラクレーン10の周囲全周が撮影可能なように例えば複数設けられているのが好ましい。本実施の形態では、カメラ330は、少なくともクローラクレーン10が運搬する荷物Fを撮影可能であるものとする。
カメラ330の撮影画像は、例えばディスプレイ212に表示され、作業者が自身で目視できない領域の安全を確認しながらクローラクレーン10の操作を行うために利用される。
【0034】
クレーン制御部40は、クローラクレーン10を制御する制御部であり、請求項におけるクレーン制御装置に対応する。
クレーン制御部40は、CPUと、制御プログラムなどを格納・記憶するROMと、制御プログラムの作動領域としてのRAMと、各種データを書き換え可能に保持するEEPROMと、周辺回路や他の構成部とのインターフェースとを含んで構成される。
クレーン制御部40は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、駆動制御部400、振動量推定部402、振動抑制制御部404として機能する。
【0035】
駆動制御部400は、移動操作部210(走行レバー202(202A,202B)、左作業レバー204、右作業レバー206、アクセルペダル208)に対して作業者が行った運転操作に従って、クローラクレーン10の各駆動部(走行用アクチュエータ310、旋回用アクチュエータ312、ブーム用アクチュエータ314、荷役用アクチュエータ316、起伏用アクチュエータ318、油圧ポンプ321、エンジン320)を駆動させる。
より詳細には、駆動制御部400は、第1検出部300、第2検出部302、第3検出部304、第4検出部306で検出された移動操作部210の操作量に基づいてクローラクレーン10の各駆動部の駆動量を決定し、各駆動部を駆動する。
【0036】
振動量推定部402は、荷物Fの移動開始時および移動終了時における荷物Fの振動量を推定する。なお、荷物Fの移動とは、荷物Fの吊り上げや吊り下げなどの垂直方向の移動や荷物Fを吊り上げた状態でのクローラクレーン10の走行、旋回などの水平方向の移動を含んでいる。
【0037】
荷物Fの移動開始時および移動終了時における荷物Fの振動について説明する。荷物Fの移動開始時および移動終了時には、荷物Fやクローラクレーン10の各部にかかる力(重力や推力など)が変化し、荷物Fやクローラクレーン10の各部が意図しない方向に移動する場合がある。
【0038】
具体的には、例えば
図4Aに示すように、地面Gに置かれている荷物Fを吊り上げて地面Gから浮かせる場合(地切り時)について考える。この場合、理想的には
図4Aの点線に示すように、荷物Fが地面Gから垂直上方向に移動し、水平方向への移動、すなわち振動はしないのが好ましい。
一方、実際には、
図4Bに示すように、荷物Fが地面Gから離れる際に、ブーム側滑車116を介してブーム106にかかる荷重が増大し、
図4Bの点線に示すように、ブーム106が地面方向に引っ張られる(お辞儀する)状態となる。この結果、荷物Fがクローラクレーン10の旋回中心から遠い方向に振れ、荷物Fの支点であるブーム106先端のブーム側滑車116の位置と荷物Fの位置とが水平方向にずれるため、水平方向の振動が生じる。
【0039】
また、例えば
図5Aに示すように、吊り上げられている荷物Fを地面Gに置く場合(荷下ろし時)について考える。この場合、理想的には
図5Aの点線に示すように、荷物Fが地面Gに対して垂直下方向に移動し、荷物Fを吊り下げる荷役用ロープ108やフックブロック118はそのまま静止するのが好ましい。
一方、実際には、
図5Bに示すように、荷物Fが地面Gに置かれた際に、ブーム側滑車116を介してブーム106にかかる荷重が減少し、
図5Bの点線に示すように、ブーム106が上方に起きる。この結果、ブーム106に吊り下げられたフックブロック118がクローラクレーン10の旋回中心に近い方向に振れ、フックブロック118の支点であるブーム106先端のブーム側滑車116の位置とフックブロック118の位置とが水平方向にずれて水平方向の振動が生じる。
【0040】
また、図示は省略するが、例えば荷物Fを吊り下げた状態でクローラクレーン10がクローラ1020を回転させ走行を開始する場合について考える。この場合、理想的には荷物Fが地面Gに対して垂直に吊り下げられた状態を維持して走行が行われるのが好ましい。
一方、実際には、クローラクレーン10が走行を開始する際に水平方向に慣性力が働き、荷物Fの移動開始タイミングがクローラクレーン10の走行開始タイミングより遅れ、荷物Fが進行方向と逆側に振れる。このため、荷物Fの支点であるブーム106先端のブーム側滑車116の位置と荷物Fの位置とが水平方向にずれて水平方向の振動が生じる。
【0041】
また、例えば
図6Aに示すように、荷物Fを吊り下げた状態で走行していたクローラクレーン10がクローラ1020の回転を停止させ走行を停止する場合について考える。この場合も、理想的には荷物Fが地面Gに対して垂直に吊り下げられた状態を維持して停止するのが好ましい。
一方、実際には、
図6Aの点線に示すように、クローラクレーン10が走行を停止する際に水平方向に慣性力が働き、荷物Fの移動停止タイミングがクローラクレーン10の走行停止タイミングより遅れ、荷物Fが進行方向側に振れる。このため、荷物Fの支点であるブーム106先端のブーム側滑車116の位置と荷物Fの位置とが水平方向にずれて水平方向の振動が生じる。
【0042】
また、例えば
図7Aに示すように、荷物Fを吊り下げた状態のクローラクレーン10が上部旋回体104を回転させる場合について考える。
図7Aは、クローラクレーン10を上方から見た上面視図であり、紙面右方向を向いていたクローラクレーン10(点線で示す)が90度回転し、紙面下方向を向く(実線で示す)場合を例にしている。この場合も、理想的には荷物Fが地面Gに対して垂直に吊り下げられた状態を維持して停止するのが好ましい。
一方、実際には、
図7Aの点線に示すように、クローラクレーン10が旋回を停止する際に旋回方向に慣性力が働き、クローラクレーン10が旋回を停止しても荷物Fは旋回方向への移動を継続し、荷物Fが旋回方向側に振れる。このため、荷物Fの支点であるブーム106先端のブーム側滑車116の位置と荷物Fの位置とが水平方向にずれて水平方向の振動が生じる。
なお、旋回開始時も同様に、クローラクレーン10の旋回開始タイミングに対して荷物Fの移動開始タイミングが遅れ、荷物Fが旋回方向と逆側に振れ、水平方向の振動が生じる。
【0043】
熟練した作業者は、移動操作部210の操作速度を抑えてゆっくりと行うことにより、このような移動開始時および移動終了時における荷物F等(荷物Fやフックブロック118)の振動が生じないようにする。すなわち、荷物F等にかかる力の状態をなるべくゆっくりと変化させることにより、重力以外に荷物F等にかかる力を最小限にし、荷物Fの支点であるブーム106先端のブーム側滑車116の位置と荷物Fの位置との水平方向のずれを抑えることによって荷物F振動を抑える。反対に、荷物F等にかかる力の変化速度が速いと荷物F等の振動が大きくなる。
このため、振動量推定部402は、例えば作業者による移動操作部210の操作速度に基づいて移動開始時および移動終了時における荷物F等の振動量を推定する。すなわち、移動操作部210の操作速度が速いほど荷物Fの振動量が大きいと推定する。
【0044】
振動抑制制御部404は、荷物Fの移動開始時および移動終了時に荷物F等に振動が発生する場合、ブーム106の位置を所定方向に変化させることにより荷物F等の振動を抑制する振動抑制制御を行う。
なお、ブーム106の位置を変化させる、とは、例えば地面を基準に設定された固定座標内をブーム106が移動すること指し、例えばブーム106の起伏角度を変更するなどブーム106自体を動かすのみならず、クローラクレーン10を走行させたり、旋回させたりすることによってブーム106の位置が変化することを含んでいる。
【0045】
上述のように、移動操作部210の操作速度を抑えてゆっくりと行うことによって荷物F等の振動をある程度抑制することは可能である。一方で、クローラクレーン10の機種や荷物Fの重量や形状などによって適切な操作速度は異なるため、荷物F等の振動を完全に抑えるのは難しい。よって、振動抑制制御部404は、荷物Fの移動開始時および移動終了時に荷物Fに振動が発生する場合、ブーム106を変化させ、荷物Fがブーム106の先端にあるブーム側滑車116の直下に位置するように調整する。このようなブーム106の取り回しは、熟練した作業者にもみられるものである。
【0046】
振動抑制制御部404は、例えば振動量推定部402で推定された荷物Fの振動量が所定量以上の場合に振動抑制制御を行う。これは、熟練した作業者が慎重に操作を行っても荷物Fの振動が完全にゼロになることはないと考えられるためであり、例えば周囲に影響があるほどの振動が生じる場合にのみ、振動抑制制御部404による振動抑制制御を行う方が現実的なためである。周囲に影響があるほどの振動(所定量以上の振動量)とは、例えば振幅が振動方向における荷物Fの寸法のα分の1以上(αは任意の正数)などと定めてもよい
【0047】
また、例えば振動抑制制御部404による振動抑制制御の実行の有無を指定する振動抑制操作部(オンオフスイッチなど)を操作室20に設け、振動抑制操作部に対して振動抑制制御の実行が指定された場合に振動抑制制御を行うようにしてもよい。
これにより、作業者が自身のクレーン操作熟練度を考慮して(または作業管理者が作業者のクレーン操作熟練度を考慮して)振動抑制制御部404による振動抑制制御の実行の有無を決定することができる。
【0048】
振動抑制制御時の具体的な動作について説明する。
振動抑制制御部404は、例えば
図4に示す地切り時のように、ブーム106がお辞儀することによりクローラクレーン10の旋回中心から遠い方向に荷物Fが振れる可能性がある場合、
図4Bの点線に示すように、ブーム106を少し起こし(垂直方向に動かして)、荷物Fの振動を防止する。
また、振動抑制制御部404は、例えば
図5に示す荷下ろし時のように、ブーム106が起きることによりフックブロック118がクローラクレーン10の旋回中心に近い方向に振れる可能性がある場合、
図5Bの点線に示すようにブーム106を少し寝かせて(水平方向に動かして)、フックブロック118の振動を防止する。
すなわち、振動抑制制御部404は、荷物Fの吊り上げ時および吊り下げ時には、ブーム106の起伏角度を変更することにより荷物Fまたはフックブロック118の振動を抑制する。なお、この時の起伏角度の変更量は、荷物Fの上げ下げに伴うブーム106の起伏量を相殺する程度とする。
【0049】
また、振動抑制制御部404は、例えば
図6に示すクローラクレーン10の走行停止時のように、荷物Fの移動停止タイミングがクローラクレーン10の走行停止タイミングより遅れて荷物Fが進行方向側に振れる可能性がある場合、
図6Bの点線に示すように、クローラクレーン10が走行停止した後、クローラ1020をわずかに前方向に回転させてクローラクレーン10を前進させて、走行停止による荷物Fの振れにブーム106を追従させる。
すなわち、振動抑制制御部404は、クローラクレーン10の走行停止時には、クローラクレーン10を前進させてブーム106を前方に移動させることにより荷物Fの振動を抑制する。
【0050】
また、振動抑制制御部404は、例えば
図7に示すクローラクレーン10の旋回時のように、荷物Fの移動停止タイミングがクローラクレーン10の走行停止タイミングより遅れて荷物Fが旋回方向側に振れる可能性がある場合、
図7Bの点線に示すように、クローラクレーン10が旋回停止した後、上部旋回体104をわずかに旋回方向に回転させて旋回停止による荷物Fの振れにクローラクレーン10を追従させる。
すなわち、振動抑制制御部404は、クローラクレーン10の旋回停止時には、クローラクレーン10の上部旋回体104を回転させてブーム106を旋回方向に回転させることにより荷物Fの振動を抑制する。
【0051】
なお、振動抑制制御部404は、荷物Fの重量に基づいて振動抑制制御時のブーム106の移動量を決定してもよい。これは、荷物Fの重量が大きい(重い)ほど、荷物Fの慣性力が大きくなり振動が大きくなると推定されるためである。すなわち、振動抑制制御部404は、荷物Fの重量が大きいほどブーム106の移動量を大きくする。
荷物Fの重量は、例えばカメラ330の撮影画像から得られる荷物Fの大きさや素材の情報に基づいて画像解析により推定する。また、荷物Fの重量が既知の場合(例えば荷物Fの外面に印字されている場合など)には、作業者が重量を入力するようにしてもよい。さらに、例えばクローラクレーン10に重量センサが搭載されている場合には、荷物Fの吊り上げ時に測定した重量値を利用してもよい。
【0052】
また、振動抑制制御部404は、例えばクローラクレーン10の周囲の風向および風速に基づいて振動抑制制御時のブーム106の移動量を決定してもよい。
すなわち、荷物Fの振動方向に向いた風が強い(風速が大きい)ほど、荷物Fの振動量は大きくなると推定されるので、ブーム106の移動量を大きくする。また、荷物Fの振動方向と反対向きの風が強い(風速が大きい)ほど、荷物Fの振動量は小さくなると推定され、風速によっては風の方向に荷物Fが流される可能性もある。よって、この場合には、ブーム106の移動量を小さくしたり、振動とは異なる方向に移動させたりする。なお、実際には、荷物Fの振動方向と風向が一致することはほとんどないので、風向のうち荷物Fの振動方向と一致する成分を用いて振動量を推定することになる。
クローラクレーン10の周囲の風向および風速の情報は、例えばクローラクレーン10自体またはクローラクレーン10が使用されている建設現場に設置された風向風速計から取得する。また、例えばインターネットを介してクローラクレーン10周辺のリアルタイムの風向および風速の情報を取得してもよい。
【0053】
以上説明したように、実施の形態にかかるクレーン制御部40(クレーン制御装置)によれば、荷物Fの移動開始時および移動終了時に荷物に振動が発生する場合、ブーム106の位置を所定方向に変化させることにより荷物Fの振動を抑制する(振動抑制制御を実施する)。これにより、荷物Fが周囲の物体や作業者に接触するのを防止し、クローラクレーン10を用いた作業の作業効率および安全性を向上させる上で有利となる。このようなブーム106の取り回しは、従来熟練した作業者が行っているものであるが、クレーン制御部40により自動的に行うことにより、熟練した作業者が不足する場合でも効率的にクローラクレーン10を用いた作業を行うことができる。
また、実施の形態にかかるクレーン制御部40において、移動操作部210の操作速度に基づいて荷物Fの振動量を推定し、振動量が所定量以上の場合に振動抑制制御を行うようにすれば、例えば周囲に影響を及ぼす程度に振動が生じる場合にのみブーム106を動かし、それより小さい振動の場合にはブーム106を動かさないので、クローラクレーン10の不要な動きを抑制する上で有利となる。
また、実施の形態にかかるクレーン制御部40において、図示しない振動抑制操作部に対して振動抑制制御の実行が指定された場合にのみ振動抑制制御を行うようにすれば、振動抑制制御の実施の有無を確実に指定し、クローラクレーン10の操作安定性を向上させる上で有利となる。
また、実施の形態にかかるクレーン制御部40において、荷物Fの重量に基づいて振動抑制制御時のブーム106の移動量を決定するようにすれば、荷物Fにかかる慣性力の大きさを考慮してより効果的に荷物Fの振動を抑制する上で有利となる。
また、実施の形態にかかるクレーン制御部40において、クレーン周辺の風向および風量に基づいて振動抑制制御時のブーム106の移動量を決定するようにすれば、荷物Fがクローラクレーン10から受ける力および重力以外の力を考慮してより効果的に荷物Fの振動を抑制する上で有利となる。
また、実施の形態にかかるクレーン制御部40は、クローラクレーン10の動きに合わせて効果的に振動を抑制する上で有利となる。具体的には、例えば荷物Fの吊り上げ時および吊り下げ時には、ブーム106の起伏角度を変更する。また、クローラクレーン10の走行停止時には、クローラクレーン10を前進させてブーム106を前方に移動させる。また、クローラクレーン10の旋回停止時には、クローラクレーン10の上部旋回体104を回転させてブーム106を旋回方向に移動させることにより振動を抑制する。
【0054】
なお、本実施の形態では、クレーン制御装置(クレーン制御部40)の制御対象となるクレーンがクローラクレーン10である場合について説明したが、本発明は、例えばトラックに架装されたトラッククレーンや建設対象物の近傍に設置されたマスト上に設置されるタワークレーン等、クローラクレーン10以外のクレーンにも適用可能である。トラッククレーンやタワークレーンは、荷物の旋回動作のみが行われ、クレーン自体の移動は行われない。
【符号の説明】
【0055】
10 クローラクレーン
102 下部走行体
104 上部旋回体
106 ブーム
108 荷役用ロープ
110 荷役用ウインチ
112 ブーム起伏用ロープ
114 起伏用ウインチ
116 ブーム側滑車
118 フックブロック
120 フックブロック側滑車
122 フック
20 操作室
202(202A,202B) 走行レバー
204 左作業レバー
206 右作業レバー
208 アクセルペダル
210 移動操作部
40 クレーン制御部(クレーン制御装置)
400 駆動制御部
402 振動量推定部
404 振動抑制制御部
F 荷物